JP2007228926A - グリオキシル酸製造用酵素及びそれを用いたグリオキシル酸の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 グリオキサールに作用しグリオキシル酸に作用しない酸化酵素又は微生物を提供し、安価なグリオキサールを原料にしてグリオキシル酸を効率的に製造すること。
【解決手段】 酸素存在下、グリオキサールに作用し、グリオキシル酸と過酸化水素を生成し、基質特異性が、グリオキサール、グリコールアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び、イソブチルアルデヒドに対して活性を示し、グリオキシル酸には実質的に活性を示さないものであり、作用最適pH:4.5−5.5であり、作用最適温度:65−75℃である酸化酵素。
【選択図】 なし
【解決手段】 酸素存在下、グリオキサールに作用し、グリオキシル酸と過酸化水素を生成し、基質特異性が、グリオキサール、グリコールアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び、イソブチルアルデヒドに対して活性を示し、グリオキシル酸には実質的に活性を示さないものであり、作用最適pH:4.5−5.5であり、作用最適温度:65−75℃である酸化酵素。
【選択図】 なし
Description
本発明は、グリオキサールに作用する新規な酸化酵素および当該酵素を用いて医薬品の原料として有用なグリオキシル酸を製造する方法に関する。
現在グリオキシル酸は化学的な方法で製造されているが、その製造方法は煩雑で、多量の副産物が生成されるため、グリオキシル酸の収率が低い欠点を有する。この化学的な製造方法の欠点を解決するために、グリコール酸を原料としてグリコール酸酸化酵素や微生物を用いる方法が開発された。例えば特許文献1、非特許文献1〜5などが挙げられる。しかし、これらの方法はいずれも高価なグリコール酸を原料として使用しなければならない問題点を有し、またこれら方法では、グリオキシル酸にも作用する植物由来の酵素が用いられているなどの問題点を有する。
最近、安価なグリオキサールを原料にしてグリオキシル酸を製造する方法が報告されたが、当該方法は、グリオキサールを化学的な方法でグリコール酸に変換し、生成されたグリコール酸に上記と同様の植物由来のグリコール酸酸化酵素を作用させる方法であり、この方法も化学的方法と酵素を組み合わせた煩雑である欠点を有する(非特許文献6)。
一方、グリオキサールに対し活性を有する酸化酵素として、Phanerochate chrysosporium由来のグリオキサールオキシダーゼ(非特許文献7−9)が報告されている。しかし、Phanerochate chrysosporium由来のグリオキサールオキシダーゼは、グリオキサールだけでなく、グリオキシル酸にも作用する酵素であり、本発明の目的であるグリオキシル酸の製造に使用することは困難である。一方、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属、ストレプロミセス(Streptomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)属、モルガネラ(Morganella)属微生物が産生する酸化酵素がグリオキサールをグリオキシル酸へ変換することが報告されている(特許文献2)。
グリオキシル酸の製造において、効率的にグリオキサールをグリオキシル酸へ変換し、生成物であるグリオキシル酸には作用しない酸化酵素が望まれており、更には、グリオキシル酸の生成により反応系のpHが低下するため、そのような条件、すなわち比較的低いpHでも活性を発現する酸化酵素の取得が望まれていた。
特開平5−501800号公報
国際公開第2004/072281号パンフレット
J.Org.Chem.,58,2253−2259(1993)
Bioorg.Medicin.Chem.,2,371−378(1994)
J.Org.Chem.,60,3957−3963(1995)
Gene,194,179−182(1997)
J.Biotechnol.,75,265−271(1999)
Process Biochem.,36,73−78(2000)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,2936−2940(1990)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,7411−7413(1993)
Enzyme Microbiol.Technol.,17,751−756(1995)
グリオキシル酸の製造において、効率的にグリオキサールをグリオキシル酸へ変換し、生成物であるグリオキシル酸には作用しない酸化酵素が望まれており、更には、グリオキシル酸の生成により反応系のpHが低下するため、そのような条件、すなわち比較的低いpHでも活性を発現する酸化酵素の取得が望まれていた。
したがって、本発明の目的は、グリオキサールに作用しグリオキシル酸に作用しない新規な酸化酵素、当該酸化酵素を産生する微生物、当該酸化酵素を製造する方法、及び、当該酸化酵素又は上記微生物を用いて安価なグリオキサールを原料にしてグリオキシル酸を効率的に製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上述の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、グリオキサールに作用しグリオキシル酸に作用せず、最適作用pHを5付近に持ち、低pH条件下でも高い活性を有する新規な酸化酵素をBurkholderia属細菌に見出した。そして、当該微生物から本酸化酵素を単離、精製し、グリオキシル酸の製造に有効であること、および既報のアルデヒドオキシダーゼとは明らかに異なる全く新しいアルデヒド酸化酵素であることを明らかにして、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の(1)、(2)、(3)及び(4)の性質を有する新規な酸化酵素を提供するものである。
(1)作用:
グリオキサールに作用し、グリオキシル酸と過酸化水素を生成する。
(2)基質特異性:
グリオキサール、グリコールアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び、イソブチルアルデヒドに対して活性を示し、グリオキシル酸には実質的に活性を示さない。(なお本願明細書において、「実質的に活性を示さない」とは、その化合物に対する活性が、グリオキサールに対する活性の5%未満であることをいう。)
また、好ましくは、エタノール、グリコール酸、乳酸などにも活性を示さない。
(3)作用最適pH:4.5−5.5。
(4)作用最適温度:65−75℃。
また、好ましくは本発明の酵素は、更に以下(5)及び(6)の性質を有する。
(5)分子量:ゲル濾過分析で1.5×105。
(6)阻害剤:フェニルヒドラジン、CuCl2、及び、CoCl2により阻害される。
また、本発明は、上記酸化酵素を産生する微生物を提供する。さらに、本発明は、上記酸化酵素の製造法も提供する。
更に本発明は、上記酸化酵素又は上記微生物をグリオキサールに作用させ、グリオキサールに存在する2つのアルデヒド基のうち、一方のアルデヒド基を酸化して、グリオキシル酸に変換することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法も提供する。
以下に本発明を詳述する。
(1)作用:
グリオキサールに作用し、グリオキシル酸と過酸化水素を生成する。
(2)基質特異性:
グリオキサール、グリコールアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び、イソブチルアルデヒドに対して活性を示し、グリオキシル酸には実質的に活性を示さない。(なお本願明細書において、「実質的に活性を示さない」とは、その化合物に対する活性が、グリオキサールに対する活性の5%未満であることをいう。)
また、好ましくは、エタノール、グリコール酸、乳酸などにも活性を示さない。
(3)作用最適pH:4.5−5.5。
(4)作用最適温度:65−75℃。
また、好ましくは本発明の酵素は、更に以下(5)及び(6)の性質を有する。
(5)分子量:ゲル濾過分析で1.5×105。
(6)阻害剤:フェニルヒドラジン、CuCl2、及び、CoCl2により阻害される。
また、本発明は、上記酸化酵素を産生する微生物を提供する。さらに、本発明は、上記酸化酵素の製造法も提供する。
更に本発明は、上記酸化酵素又は上記微生物をグリオキサールに作用させ、グリオキサールに存在する2つのアルデヒド基のうち、一方のアルデヒド基を酸化して、グリオキシル酸に変換することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法も提供する。
以下に本発明を詳述する。
本発明は、従来報告されていないグリオキサールに作用してグリオキシル酸に作用しない新規な酸化酵素を産生するバークホルデリア(Burkholderia)属細菌を自然界から見出し、当該酵素の諸性質を明らかにし、グリオキシル酸の製造に有効であることを明らかにすることにより完成された。このような微生物は、土壌サンプルをエチレングリコール、グリコールアルデヒド、グリオキサール、2−メトキシエタノールなどを炭素源とした培地に添加し、培養を行った後、生育してきた微生物について、グリオキサールに対する酸化活性を調べる事により得ることが出来る。
本発明の酵素の起源となる微生物は特に限定されないが、細菌などが好適であり、好ましくはバークホルデリア(Burkholderia)属に属する微生物が挙げられ、特に好ましくは北海道常呂郡佐呂間町の土壌から分離されたバークホルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp.)AIU 129株が挙げられる。当該AIU 129株は独立法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)にFERM P−20787として寄託されている。AIU 129株の菌学的諸性質を表1に示す。
また、AIU 129株の同定には、該菌株の16SリボゾーマルRNA遺伝子(16SrDNA)のうち5′末端側約1500bpの領域をPCRで増幅して、塩基配列を決定し、MicroSeq Bacterial Full Gene Library v.0001(Applied Biosystems社、CA、USA)データベース及び国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)に対し相同性検索を行い、分子系統樹を作製する方法で行った。
本発明の酸化酵素は、該酵素を産生する微生物より、下記のようにして取得することができる。例えば、本活性を有する微生物を好適な条件で培養し、培養終了後に培養液から遠心分離などにより菌体を集め、超音波破砕、ガラスビーズを用いた破砕などの方法により、菌体を破砕し、粗酵素液を得る。さらにこの粗酵素液から塩析、各種クロマトグラフィーなどの方法により精製し、本発明の酵素を得ることができる。
本発明の酸化酵素の作用最適pHまたは作用最適温度は、反応条件のpHまたは温度を変えて活性を測定することにより決定される。
本発明の酸化酵素の分子量は例えばTSK−G3000SW(7.8mm×30cm)(東ソー株式会社製)カラムを用いたゲル濾過分析により、標準タンパク質との相対溶出時間から算出することができる。
本発明の酸化酵素の分子量は例えばTSK−G3000SW(7.8mm×30cm)(東ソー株式会社製)カラムを用いたゲル濾過分析により、標準タンパク質との相対溶出時間から算出することができる。
本発明において、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する酸化酵素を産生する微生物を培養するための培地は、その微生物が増殖し得るものであれば特に限定されない。例えば、炭素源として、グルコース、シュークロースなどの糖類、エタノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、2−メトキシエタノールなどのアルコール類、グリオキサールなどのアルデヒド類、オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸ならびにそのエステル類、菜種油および大豆油などの油類;窒素源として、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、ペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、肉エキスおよびコーンスチープリカーなど;無機塩類として、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素ナトリウムなど;その他に麦芽エキス、肉エキスなどを有する通常の液体培地が使用され得る。
本発明によるグリオキシル酸の製造方法は、本発明の酸化酵素、又は、当該酸化酵素を産生する微生物をグリオキサールに作用させ、グリオキシル酸へと変換蓄積せしめることを特徴とする。本発明で使用する酸化酵素としては、単一または部分的に精製された酵素であってもよい。本発明で使用する微生物としては、当該微生物の培養物またはその処理物を使用することも可能である。ここで、「微生物の培養物」とは、菌体を含む培養液あるいは培養菌体を意味し、「その処理物」とは、例えば粗酵素液、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、あるいはそれらの破砕物、これらの混合物などを意味する。更に上記酸化酵素又は上記微生物は、公知の手段(例えば、架橋法、物理的吸着法、包括法など)で固定化されて使用できる。本発明の微生物としては、上記酸化酵素の産生能を有している限り、野生株または変異株、あるいは本発明の酸化酵素をコードするDNAをベクターに組込み、これを宿主内に導入してなる形質転換体(組替え体)であってもよい。また、本発明で使用する酸化酵素の産生能を有する形質転換体は、酸化酵素をコードするDNAを宿主のゲノムに安定的に組み込むことによっても製造できる。
本発明の酸化酵素をグリオキサールに反応させる際の条件は、温度は5℃〜80℃、好ましくは5〜70℃の範囲、pHは4〜12、好ましくはpH5〜8の範囲である。反応は、酸素条件下で行うことが好ましい。また酸素の反応液への溶解を促進するため、反応は振とう、攪拌条件下で行なわれることが好ましい。さらに大気圧以上の加圧下で反応を行うことにより、反応液への酸素の溶解度が向上し、反応がより進む場合もある。
尚、本発明の酸化酵素による酸化反応により、過酸化水素が生成するが、この過酸化水素は酵素を失活させる場合がある。しかし、反応系にカタラーゼを添加することにより、生成した過酸化水素を分解、除去することが可能である。また、上述した形質転換体に酸化酵素と共にカタラーゼを組換え発現させることにより、効率良く過酸化水素を分解することが可能である。一方、形質転換体の宿主として、もともとカタラーゼを産生する能力を有する微生物を使用することが好ましい。使用するカタラーゼは、過酸化酵素を速やかに分解、除去するという観点から、使用する酸化酵素の活性の10倍以上、好ましくは100倍以上、さらに好ましくは1000倍以上の活性量を使用する事が望ましい。
本発明の新規な酸化酵素は、グリオキサールをグリオキシル酸に酸化するが、反応生成物であるグリオキシル酸には全く作用しない特異性の高い酸化酵素であり、本発明の酸化酵素を使用すれば、安価なグリオキサールからグリオキシル酸を効率的に製造することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)グリオキサールに作用してグリオキシル酸に作用しない酸化酵素を産生する能力を持つ微生物の分離
スクリーニングのための培地は、120℃で15分間加圧殺菌した表2に示す80mlの基礎培地に、5% 2−メトキシエタノール溶液20mlをメンブランフィルターで除菌して添加して調製した(培地中の2−メトキシエタノール濃度は1%)。この1% 2−メトキシエタノール含有培地5mlを分注した試験管に少量の土壌を添加し、30℃で2〜7日間振盪培養した。微生物の生育が確認された培養液について、その培養液0.1mlを上記と同一組成の培地に植菌し、同様に30℃で2〜7日間振盪培養した。この操作をもう一度繰り返した後、培養液を上記液体培地と同一組成に2%寒天を加えて調製した寒天平板培地にプレートアウトし、30℃で培養した。そして微生物の生育が確認された後、この寒天平板培地にグリオキサールと過酸化水素の生成を確認するためのグリオキサールを50mM添加した表3に示す発色液を摘下して、30℃で反応させた。この方法で、過酸化水素の生成が認められた微生物を、この平板培地と同一組成の斜面培地に植菌し、30℃で培養して保存した。
(実施例1)グリオキサールに作用してグリオキシル酸に作用しない酸化酵素を産生する能力を持つ微生物の分離
スクリーニングのための培地は、120℃で15分間加圧殺菌した表2に示す80mlの基礎培地に、5% 2−メトキシエタノール溶液20mlをメンブランフィルターで除菌して添加して調製した(培地中の2−メトキシエタノール濃度は1%)。この1% 2−メトキシエタノール含有培地5mlを分注した試験管に少量の土壌を添加し、30℃で2〜7日間振盪培養した。微生物の生育が確認された培養液について、その培養液0.1mlを上記と同一組成の培地に植菌し、同様に30℃で2〜7日間振盪培養した。この操作をもう一度繰り返した後、培養液を上記液体培地と同一組成に2%寒天を加えて調製した寒天平板培地にプレートアウトし、30℃で培養した。そして微生物の生育が確認された後、この寒天平板培地にグリオキサールと過酸化水素の生成を確認するためのグリオキサールを50mM添加した表3に示す発色液を摘下して、30℃で反応させた。この方法で、過酸化水素の生成が認められた微生物を、この平板培地と同一組成の斜面培地に植菌し、30℃で培養して保存した。
次に、斜面培地に分離した微生物を再度1% 2−メトキシエタノール含有液体培地で振盪培養した。そして培養液から遠心分離で集菌し、集めた菌体を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、グリオキサールまたはグリオキシル酸を20mMになるように添加した表4に示す酵素活性測定用発色液に添加し、反応を行った。この反応で、グリオキサール存在下で反応液が紫色に着色し(過酸化水素が生成した)、グリオキシル酸存在下では、反応液の色がほとんど変化しない(過酸化水素が生成しない)微生物を選抜した。
続いて、選抜した微生物を、1% 2−メトキシエタノールを含む上記組成の液体培地150mlを入れた坂口フラスコを用いて30℃で振盪培養した。この培養で得られた900ml分の菌体を遠心分離で集め、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁してガラスビーズを用いて菌体を破砕した。そして、菌体破砕残渣を遠心分離で除去し、得られた上清液を10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化した20mlのDEAE−Toyopearlカラムに通液し、このカラムを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄した。吸着した酵素は、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)と0.5MNaClを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いた直線濃度勾配法で溶出し、全ての画分についてグリオキサールおよびグリオキシル酸に対するオキシダーゼ活性を調べた。そして、グリオキサールに良く作用してグリオキシル酸に対するオキシダーゼ活性を示さない酵素を産生する微生物を選抜した。このような方法で得られた菌株は、上記の菌学的性質を示す微生物であり、Burkholderia sp.AIU 129 と命名した。
(実施例2)グリオキサールに作用してグリオキシル酸に作用しない酸化酵素の製造
実施例1で分離した微生物を、1% 2−メトキシエタノールを含む実施例1と同一組成の液体培地を用いて、試験管で30℃,2日間振盪培養して種培養液を調製した。次に、この種培養液1.5mlを、種培養と同一組成の液体培地150mlを入れた500ml容フラスコに植菌し、30℃で振盪培養して、培養時間と酵素生産量との関係を調べた。その結果、グリオキサールに作用する酸化酵素の生産量は培養時間とともに増大し、当該酸化酵素の活性は培養5日付近でも高い値を維持した。
実施例1で分離した微生物を、1% 2−メトキシエタノールを含む実施例1と同一組成の液体培地を用いて、試験管で30℃,2日間振盪培養して種培養液を調製した。次に、この種培養液1.5mlを、種培養と同一組成の液体培地150mlを入れた500ml容フラスコに植菌し、30℃で振盪培養して、培養時間と酵素生産量との関係を調べた。その結果、グリオキサールに作用する酸化酵素の生産量は培養時間とともに増大し、当該酸化酵素の活性は培養5日付近でも高い値を維持した。
(実施例3)グリオキサールに作用してグリオキシル酸に作用しない酸化酵素の精製
実施例2の結果を基に、1% 2−メトキシエタノールを含む実施例1と同一組成の液体培地を用いて試験管で30℃,2日間振盪培養して一次種培養液を調製した。この一次種培養液1.5mlを同一組成の液体培地を150ml分注した500ml容フラスコに植菌し、30℃で2日間振盪培養して二次種培養液を調製した。続いて、この二次種培養液20mlを一次種培養と同一組成の液体培地2Lを入れた3L容フラスコに植菌し、30℃で5日間振盪培養した。このようにして培養した10Lの培養液から菌体を集めて、以下の方法で酵素を精製した。尚、酵素の精製にはpH7.5のリン酸緩衝液を用いた。
1)粗酵素液の調製
10L培養液から集菌した菌体(湿重量:25.5g)を10mMリン酸緩衝液に懸濁し、10℃以下の温度で0.5mmガラスビーズを用いて16分間(2分x8回)細胞破砕した。この細胞破砕液を遠心分離して菌体残渣を除去し、上清画分を粗酵素液として酵素の精製に用いた。
実施例2の結果を基に、1% 2−メトキシエタノールを含む実施例1と同一組成の液体培地を用いて試験管で30℃,2日間振盪培養して一次種培養液を調製した。この一次種培養液1.5mlを同一組成の液体培地を150ml分注した500ml容フラスコに植菌し、30℃で2日間振盪培養して二次種培養液を調製した。続いて、この二次種培養液20mlを一次種培養と同一組成の液体培地2Lを入れた3L容フラスコに植菌し、30℃で5日間振盪培養した。このようにして培養した10Lの培養液から菌体を集めて、以下の方法で酵素を精製した。尚、酵素の精製にはpH7.5のリン酸緩衝液を用いた。
1)粗酵素液の調製
10L培養液から集菌した菌体(湿重量:25.5g)を10mMリン酸緩衝液に懸濁し、10℃以下の温度で0.5mmガラスビーズを用いて16分間(2分x8回)細胞破砕した。この細胞破砕液を遠心分離して菌体残渣を除去し、上清画分を粗酵素液として酵素の精製に用いた。
2)DEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
細胞破砕液から菌体残渣を除去して調製した粗酵素液を、10mMリン酸緩衝液で平衡化したDEAE−Toyopearlカラム(2.5×20cm)に吸着させた。本カラムを50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液1Lで洗浄した後、酵素を50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(300ml)と0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(300ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
3)Phenyl−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
DEAE−Toyopearlカラムから溶出された酵素液に1M量の固形の硫安を添加し、生成した不溶物を除去した。この酵素液を1.0M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で平衡化した50mlのPhenyl−Toyopearlカラム(2.5x11cm)に通液した後、カラムを0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で十分洗浄した。次に目的とする酵素を0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液(200ml)と10mMリン酸緩衝液(200ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
細胞破砕液から菌体残渣を除去して調製した粗酵素液を、10mMリン酸緩衝液で平衡化したDEAE−Toyopearlカラム(2.5×20cm)に吸着させた。本カラムを50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液1Lで洗浄した後、酵素を50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(300ml)と0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(300ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
3)Phenyl−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
DEAE−Toyopearlカラムから溶出された酵素液に1M量の固形の硫安を添加し、生成した不溶物を除去した。この酵素液を1.0M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で平衡化した50mlのPhenyl−Toyopearlカラム(2.5x11cm)に通液した後、カラムを0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で十分洗浄した。次に目的とする酵素を0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液(200ml)と10mMリン酸緩衝液(200ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
4)DEAE−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
Phenyl−Toyopearlカラムから溶出された酵素活性画分を限外濾過膜で2ms/cmまで脱塩濃縮した後、50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液で平衡化したDEAE−Toyopearlカラム(1.5×20cm)に吸着させた。本カラムを50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液で十分洗浄した後、酵素を50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(150ml)と0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(150ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
5)硫安塩析
DEAE−Toyopearlカラムからの溶出液を限外濾過膜で濃縮し、この濃縮酵素液に45%飽和になるように硫安を添加した後、1時間攪拌放置し、生成した沈殿物を遠心分離で集めた。続いて、この上清画分に55%飽和まで硫安を添加し、生成した沈殿物を遠心分離で集め、さらに65%飽和まで硫安を添加し、生成した沈殿物を遠心分離で集めた。そして55%飽和と65%飽和の沈殿画分の酵素を0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で溶解した。
Phenyl−Toyopearlカラムから溶出された酵素活性画分を限外濾過膜で2ms/cmまで脱塩濃縮した後、50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液で平衡化したDEAE−Toyopearlカラム(1.5×20cm)に吸着させた。本カラムを50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液で十分洗浄した後、酵素を50mM NaClを含む10mMリン酸緩衝液(150ml)と0.3M NaClを含む10mMリン酸緩衝液(150ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
5)硫安塩析
DEAE−Toyopearlカラムからの溶出液を限外濾過膜で濃縮し、この濃縮酵素液に45%飽和になるように硫安を添加した後、1時間攪拌放置し、生成した沈殿物を遠心分離で集めた。続いて、この上清画分に55%飽和まで硫安を添加し、生成した沈殿物を遠心分離で集め、さらに65%飽和まで硫安を添加し、生成した沈殿物を遠心分離で集めた。そして55%飽和と65%飽和の沈殿画分の酵素を0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で溶解した。
6)Phenyl−Toyopearlカラムクロマトグラフィー
上述の硫安塩析で得た酵素液を1.0M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で平衡化した50mlのPhenyl−Toyopearlカラム(2.5x11cm)に通液し、カラムを0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で十分洗浄した。次に目的とする酵素を0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液(200ml)と10mMリン酸緩衝液(200ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
7)Toyopearl HW−55によるゲル濾過
Phenyl−Topopearlカラムからの溶出液を限外濾過膜で0.2mlまで濃縮した後、50mMリン酸緩衝液で平衡化したToyopearl HW−55カラム(1×45cm)でゲル濾過を行った。
以上の方法で得られた上記7)の酵素標品をスラブ電気泳動法で分析した結果、単一の蛋白バンドが得られた。尚、本精製法による酵素の精製収率は、表5の通りであった。
上述の硫安塩析で得た酵素液を1.0M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で平衡化した50mlのPhenyl−Toyopearlカラム(2.5x11cm)に通液し、カラムを0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液で十分洗浄した。次に目的とする酵素を0.6M硫安を含む10mMリン酸緩衝液(200ml)と10mMリン酸緩衝液(200ml)を用いて直線濃度勾配法で溶出した。
7)Toyopearl HW−55によるゲル濾過
Phenyl−Topopearlカラムからの溶出液を限外濾過膜で0.2mlまで濃縮した後、50mMリン酸緩衝液で平衡化したToyopearl HW−55カラム(1×45cm)でゲル濾過を行った。
以上の方法で得られた上記7)の酵素標品をスラブ電気泳動法で分析した結果、単一の蛋白バンドが得られた。尚、本精製法による酵素の精製収率は、表5の通りであった。
(実施例4)グリオキサールに作用してグリオキシル酸に作用しない酸化酵素の性質
実施例3の方法で精製した酵素標品は、電気泳動法を用いて分析した結果、蛋白的に単一であった。よって、本精製酵素標品を用いて諸性質を検討した。
実施例3の方法で精製した酵素標品は、電気泳動法を用いて分析した結果、蛋白的に単一であった。よって、本精製酵素標品を用いて諸性質を検討した。
1.作用
グリオキサールを53mMになるように添加し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の替わりに0.2Mリン酸緩衝液(pH5.5)を用いて調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、30℃で反応を行い、555nmの吸光度の増加を経時的に測定した。その結果、時間の経過と共に555nmの吸光度が増大し、グリオキサールと本酵素の反応によって、過酸化水素が生成されることが明らかになった。
また、反応生成物をIsobe and Nishiseの方法 [Biosci.Biotech.Biochem.,58,170−173,(1994)] に従ってN−methyl−2−benzothiazolinone hydrazone(MBTH)と反応させ、その吸収スペクトルおよびC18の逆相カラムからの溶出時間を分析した。まず、反応生成物を0.2Mグリシン−HCl緩衝液(pH4.0)0.75mlに溶解し、それに1.0%(w/v)MBTH液を0.3ml添加した(反応1)。さらに、前記反応液の一部(0.2ml)に0.2%FeCl3液を0.75ml添加した(反応2)。その後、反応1および反応2で得られた反応液について吸収スペクトルを測定した。その結果、グリオキシル酸の反応1および反応2で得られる反応液の吸収スペクトルと同様に、上記反応生成物の反応1の反応液では、350nm付近に極大吸収を持つ吸収スペクトルが得られ、反応2では620nm付近に極大吸収を持つ吸収スペクトルが得られた。そして、反応1および反応2の反応液をC18の逆相カラムで分析した場合も、グリオキシル酸の反応1および反応2で得られる生成物と同じ溶出位置にピークが得られた。よって、本酵素は、下記の式に従ってグリオキサールをグリオキシル酸に酸化することが明らかになった。次に、20mMグリオキシル酸を用いてグリオキサールと同様に精製酵素を作用させ、過酸化水素の生成を調べた。その結果、555nmの吸光度の増大は認められなかった。よって、本酵素は、グリオキサールをグリオキシル酸に酸化するが、反応生成物であるグリオキシル酸には作用しないことが明らかになった。
OHCCHO+O2+H2O→OHCCOOH+H2O2
グリオキサールを53mMになるように添加し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の替わりに0.2Mリン酸緩衝液(pH5.5)を用いて調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、30℃で反応を行い、555nmの吸光度の増加を経時的に測定した。その結果、時間の経過と共に555nmの吸光度が増大し、グリオキサールと本酵素の反応によって、過酸化水素が生成されることが明らかになった。
また、反応生成物をIsobe and Nishiseの方法 [Biosci.Biotech.Biochem.,58,170−173,(1994)] に従ってN−methyl−2−benzothiazolinone hydrazone(MBTH)と反応させ、その吸収スペクトルおよびC18の逆相カラムからの溶出時間を分析した。まず、反応生成物を0.2Mグリシン−HCl緩衝液(pH4.0)0.75mlに溶解し、それに1.0%(w/v)MBTH液を0.3ml添加した(反応1)。さらに、前記反応液の一部(0.2ml)に0.2%FeCl3液を0.75ml添加した(反応2)。その後、反応1および反応2で得られた反応液について吸収スペクトルを測定した。その結果、グリオキシル酸の反応1および反応2で得られる反応液の吸収スペクトルと同様に、上記反応生成物の反応1の反応液では、350nm付近に極大吸収を持つ吸収スペクトルが得られ、反応2では620nm付近に極大吸収を持つ吸収スペクトルが得られた。そして、反応1および反応2の反応液をC18の逆相カラムで分析した場合も、グリオキシル酸の反応1および反応2で得られる生成物と同じ溶出位置にピークが得られた。よって、本酵素は、下記の式に従ってグリオキサールをグリオキシル酸に酸化することが明らかになった。次に、20mMグリオキシル酸を用いてグリオキサールと同様に精製酵素を作用させ、過酸化水素の生成を調べた。その結果、555nmの吸光度の増大は認められなかった。よって、本酵素は、グリオキサールをグリオキシル酸に酸化するが、反応生成物であるグリオキシル酸には作用しないことが明らかになった。
OHCCHO+O2+H2O→OHCCOOH+H2O2
2.基質特異性
表6に示すアルデヒド類、有機酸類又はアルコール類を53mMになるように添加し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の替わりに0.2Mリン酸緩衝液(pH5.5)を用いて調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、30℃で反応を行い、555nmの吸光度の増加を分光光度計にて連続して測定し、時間あたりの555nmの増加量を算出し、各化合物に対する活性を調べた。
その結果、表6に示すように、本酵素は、グリオキサール、グリコールアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドに良く作用し、ホルムアルデヒドやイソブチルアルデヒドにも作用した。しかし、グリコール酸、グリオキシル酸、エタノール、乳酸には作用しなかった。
表6に示すアルデヒド類、有機酸類又はアルコール類を53mMになるように添加し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の替わりに0.2Mリン酸緩衝液(pH5.5)を用いて調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、30℃で反応を行い、555nmの吸光度の増加を分光光度計にて連続して測定し、時間あたりの555nmの増加量を算出し、各化合物に対する活性を調べた。
その結果、表6に示すように、本酵素は、グリオキサール、グリコールアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒドに良く作用し、ホルムアルデヒドやイソブチルアルデヒドにも作用した。しかし、グリコール酸、グリオキシル酸、エタノール、乳酸には作用しなかった。
3.グリオキサールに対するKm値
酵素活性測定用発色液2の組成を0.2Mリン酸緩衝液(pH5.5)に溶解して調製した発色液を用いて、グリオキサールの濃度を1mMから80mMの範囲で変えて、グリオキサールに対するKm値を測定した。その結果、グリオキサールに対するKm値は約15mMであった。
酵素活性測定用発色液2の組成を0.2Mリン酸緩衝液(pH5.5)に溶解して調製した発色液を用いて、グリオキサールの濃度を1mMから80mMの範囲で変えて、グリオキサールに対するKm値を測定した。その結果、グリオキサールに対するKm値は約15mMであった。
4.分子量
本酵素の分子量は、ゲル濾過法で約150,000であった。
精製酵素を高速液体クロマトグラフィーによるTSK−G3000SW(7.8mm×30cm)(東ソー株式会社製)カラムを用いたゲル濾過に供し、標準タンパクとの相対移動度より、その分子量を推定した。その結果、ゲル濾過法で約150,000であった
[ゲル濾過法による分子量測定条件]
カラム:TSK−G3000SW(7.8mm×30cm)(東ソー株式会社製)
溶離液:0.1Mリン酸緩衝液+0.3M塩化ナトリウム(pH7.0)
流 速:1.0ml/min
温 度:室温
検 出:220nm
本酵素の分子量は、ゲル濾過法で約150,000であった。
精製酵素を高速液体クロマトグラフィーによるTSK−G3000SW(7.8mm×30cm)(東ソー株式会社製)カラムを用いたゲル濾過に供し、標準タンパクとの相対移動度より、その分子量を推定した。その結果、ゲル濾過法で約150,000であった
[ゲル濾過法による分子量測定条件]
カラム:TSK−G3000SW(7.8mm×30cm)(東ソー株式会社製)
溶離液:0.1Mリン酸緩衝液+0.3M塩化ナトリウム(pH7.0)
流 速:1.0ml/min
温 度:室温
検 出:220nm
5.各種化合物の影響
酵素活性測定と同様にpH5.5で50mMグリオキサールに精製酵素を作用させ、この反応液に1.0mMの各種化合物を添加して、本酵素のグリオキサール酸化に対する各種化合物の影響を調べた。その結果、表7に示すように、本酵素は、フェニルヒドラジンで強く阻害され、CuCl2 および CoCl2でも阻害された。
酵素活性測定と同様にpH5.5で50mMグリオキサールに精製酵素を作用させ、この反応液に1.0mMの各種化合物を添加して、本酵素のグリオキサール酸化に対する各種化合物の影響を調べた。その結果、表7に示すように、本酵素は、フェニルヒドラジンで強く阻害され、CuCl2 および CoCl2でも阻害された。
6.最適pH
グリコールアルデヒドを21mMになるように添加し、緩衝液の種類を変更してpH5.5からpH8.5で調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、30℃で反応を行い、555nmの吸光度の増加を分光光度計にて連続して測定し、時間あたりの555nmの増加量を算出し、活性を調べた。
その結果、図1に示すように、本酵素は酸性領域から弱アルカリ性領域の広い範囲で活性を示し、反応の最適pHは5付近であった。
グリコールアルデヒドを21mMになるように添加し、緩衝液の種類を変更してpH5.5からpH8.5で調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、30℃で反応を行い、555nmの吸光度の増加を分光光度計にて連続して測定し、時間あたりの555nmの増加量を算出し、活性を調べた。
その結果、図1に示すように、本酵素は酸性領域から弱アルカリ性領域の広い範囲で活性を示し、反応の最適pHは5付近であった。
7.最適温度
グリコールアルデヒドを21mMになるように添加し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の替わりに0.2Mリン酸緩衝液(pH5.0)を用いて調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、25℃から70℃の範囲で反応を行い、555nmの吸光度の増加を分光光度計にて連続して測定し、時間あたりの555nmの増加量を算出し、活性を調べた。
その結果、図2に示すように、本酵素は測定したいずれの温度でも活性を示し、反応の最適温度は70℃付近であった。
グリコールアルデヒドを21mMになるように添加し、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)の替わりに0.2Mリン酸緩衝液(pH5.0)を用いて調製した表4に示す酵素活性測定用発色液0.95mlに精製酵素液0.05mlを添加し、25℃から70℃の範囲で反応を行い、555nmの吸光度の増加を分光光度計にて連続して測定し、時間あたりの555nmの増加量を算出し、活性を調べた。
その結果、図2に示すように、本酵素は測定したいずれの温度でも活性を示し、反応の最適温度は70℃付近であった。
8.等電点
アンフォラインpH3.3−10.0を用いて、400Vで48時間通電して本酵素の等電点を測定した。電気泳動終了後、泳動液を1mlずつ分画し、各分画液のpHと酵素活性を測定した。その結果、本酵素の等電点は4.2であることが明らかになった。
アンフォラインpH3.3−10.0を用いて、400Vで48時間通電して本酵素の等電点を測定した。電気泳動終了後、泳動液を1mlずつ分画し、各分画液のpHと酵素活性を測定した。その結果、本酵素の等電点は4.2であることが明らかになった。
(実施例5)
実施例2記載の方法で得たAIU 129株培養液250mlから集菌した菌体を0.1Mリン酸緩衝液5mlに懸濁し、10℃以下の温度で0.5mmガラスビーズを用いて16分間(2分×8回)細胞破砕した。この細胞破砕液を遠心分離して菌体残渣を除去し、上清分画を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液0.8mlに100mMグリオキサール水溶液0.1ml、5000U/mlカタラーゼ(Bovive Liver由来;ナカライ社製)溶液0.1mlを添加し、試験管中で28℃、24時間、振盪反応を行った。その後、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。その結果、反応液中に15mMのグリオキシル酸が生成していた。
実施例2記載の方法で得たAIU 129株培養液250mlから集菌した菌体を0.1Mリン酸緩衝液5mlに懸濁し、10℃以下の温度で0.5mmガラスビーズを用いて16分間(2分×8回)細胞破砕した。この細胞破砕液を遠心分離して菌体残渣を除去し、上清分画を粗酵素液として得た。得られた粗酵素液0.8mlに100mMグリオキサール水溶液0.1ml、5000U/mlカタラーゼ(Bovive Liver由来;ナカライ社製)溶液0.1mlを添加し、試験管中で28℃、24時間、振盪反応を行った。その後、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。その結果、反応液中に15mMのグリオキシル酸が生成していた。
[HPLC分析条件]
カラム:バイオラッド社製アミネックスHPX−87H(7.8mm×300mm)
カラム温度:25℃
溶離液:5mM H2SO4水溶液
流速:0.4ml/分
溶離時間:グリオキサール−16分、 グリオキシル酸−15分
検出:230mMの吸光度および示差屈折率
カラム:バイオラッド社製アミネックスHPX−87H(7.8mm×300mm)
カラム温度:25℃
溶離液:5mM H2SO4水溶液
流速:0.4ml/分
溶離時間:グリオキサール−16分、 グリオキシル酸−15分
検出:230mMの吸光度および示差屈折率
(実施例6)
実施例3で得た精製酵素0.1U、グリオキサール50mM、カタラーゼ(Bovive Liver由来;ナカライ社製)500Uを含む100mMリン酸緩衝液(pH7.0)1mlを試験管に加え、30℃、5時間、振盪し、反応を行った。その後、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、反応液中に27mMのグリオキシル酸が生成していた。
実施例3で得た精製酵素0.1U、グリオキサール50mM、カタラーゼ(Bovive Liver由来;ナカライ社製)500Uを含む100mMリン酸緩衝液(pH7.0)1mlを試験管に加え、30℃、5時間、振盪し、反応を行った。その後、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、反応液中に27mMのグリオキシル酸が生成していた。
Claims (8)
- 下記(1)、(2)、(3)及び(4)の性質を有する酸化酵素。
(1)作用:
酸素存在下、グリオキサールに作用し、グリオキシル酸と過酸化水素を生成する。
(2)基質特異性:
グリオキサール、グリコールアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、及び、イソブチルアルデヒドに対して活性を示し、グリオキシル酸には実質的に活性を示さない。
(3)作用最適pH:4.5−5.5。
(4)作用最適温度:65−75℃。 - 更に、下記(5)及び(6)の性質を有する請求項1記載の酸化酵素。
(5)分子量:ゲル濾過分析で1.5×105。
(6)阻害剤:フェニルヒドラジン、CuCl2、及び、CoCl2により阻害される。 - バークホルデリア(Burkholderia)属細菌が産生する請求項1〜2いずれか記載の酸化酵素。
- バークホルデリア(Burkholderia)属細菌がバークホルデリア・スピーシーズ(Burkholderia sp.)AIU 129(FERM P−20787)である請求項3記載の酸化酵素。
- 請求項1〜4いずれか記載の酸化酵素を産生する微生物。
- 請求項5記載の微生物を培養して請求項1〜4いずれか記載の酸化酵素を製造する方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の酸化酵素、又は、請求項5記載の微生物の培養物若しくはその処理物をグリオキサールに接触させてグリオキシル酸へと変換することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法。
- 反応時にカタラーゼを共存させることを特徴とする請求項7記載のグリオキシル酸の製造方法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014533937A (ja) * | 2011-10-18 | 2014-12-18 | インスティテュート フォー エンバイロメンタル ヘルス, インコーポレイテッド | スプラウトの成長のための改善された方法及び装置 |
CN113293109A (zh) * | 2021-06-01 | 2021-08-24 | 韩山师范学院 | 一种耐重金属铜的伯克霍尔德氏菌及应用 |
-
2006
- 2006-03-02 JP JP2006056944A patent/JP2007228926A/ja active Pending
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US10356984B2 (en) | 2011-10-18 | 2019-07-23 | Institute For Environmental Health, Inc. | Method and apparatus for growing sprouts |
US11219167B2 (en) | 2011-10-18 | 2022-01-11 | Institute For Environmental Health, Inc. | Method and apparatus for growing sprouts |
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