JP4318637B2 - 微生物由来新規(d)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、およびそれを用いたグリオキシル酸の生化学的製造方法 - Google Patents
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Description
(1)作用:2−ヒドロキシ酸に作用し、対応する2−ケト酸を生成する、
(2)基質特異性:グリコール酸、およびD−乳酸に活性を示し、L−乳酸に活性を示さない、
を有することを1つの大きな特徴とする(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼである。
(3)L−2−ヒドロキシイソカプロン酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、およびグリセリンには活性を示さない、
を有する前記(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼがあげられる。
(4)分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約60,000Da、
(5)安定性:pH7.2で40℃、20分間処理した後、90%以上の活性を保持している、
(6)至適反応pH:7〜10、
を有する前記(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼがあげられる。
細胞の形態 :桿菌
グラム染色 :+
胞子形成 :−
運動性 :−
コロニーの形態 :円形、全縁なめらか、低凸状、光沢あり、
クリーム色
生育(37℃) :+
(41℃) :−
カタラーゼ :+
オキシダーゼ :−
OFテスト(グルコース):−
グリコール酸 10mM、
4−アミノアンチピリン(以下4−AA) 0.67mM、
N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルフォプロヒル)−m−
トルイジン(以下TOOS) 1.09mM、
ワサビ由来ペルオキシダーゼ(以下POD) 2U/ml
グリコール酸10g、酵母エキス0.1g、硝酸アンモニウム2g、リン酸水素二カリウム1g、リン酸二水素ナトリウム1g、硫酸マグネシウム7水和物0.2g、および塩化カルシウム2水和物0.1g(いずれも1L当たり)の組成からなるS培地(pH7)5mlを試験管にいれて高圧蒸気殺菌した。そののち、該S培地に、日本国内より採取した土壌サンプル各2gを10mlの生理食塩水に懸濁しその上清液0.2mlを加えて、28℃で3〜7日間集積培養を行なった。菌が生育した培養液を2%の寒天を含むS培地プレートに0.1mlずつ塗布し、28℃で3〜7日間培養を行なった。生育したコロニーについて、それぞれの菌体を試験管中S培地5mlで28℃、3日間の振とう培養後、菌体を遠心分離により集め生理食塩水で洗浄したのち、100mMリン酸緩衝液(pH7)0.5mlに懸濁した。その菌体懸濁液0.1mlをグリコール酸100mM、4−AA 1.34mM、TOOS 2.18mM、およびペルオキシダーゼ 4U/mlを含有する100mMリン酸緩衝液0.1mlに添加し、28℃で2時間振とうした。振とう後に反応液が紫色になったもの、すなわちグリコール酸に対する反応により過酸化水素が生じたものをグリコール酸酸化活性陽性株として取得した。
土壌より分離したKNK−GA1株(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年3月7日、受託番号 FERM BP−8375)を500ml容坂口フラスコ中、グリコール酸5g、酵母エキス1g、リン酸二水素カリウム3.5g、リン酸水素二アンモニウム6.5g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、硫酸亜鉛7水和物0.02g、硫酸第一鉄7水和物0.03g、硫酸銅5水和物0.002g、塩化カルシウム2水和物0.1g、および塩化ナトリウム0.3g(いずれも1Lあたり)の組成よりなる培地(pH7)50mlに植菌し、28℃で2日間振とう培養を行なった。得られた培養液10mlより菌体を遠心分離により試験管中に集め、菌体を2mlの100mMリン酸緩衝液(pH7)に懸濁し、その菌体懸濁液0.9mlに1Mグリコール酸溶液0.1mlを添加し、試験管中、28℃、16時間振とう反応を行なった。得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、30mMのグリオキシル酸が生成していた。
実施例2記載の方法により得たKNK−GA1株(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年3月7日、受託番号 FERM BP−8375)の培養液50mlより菌体を遠心分離により集め、0.1Mリン酸緩衝液(pH7)で洗浄後、菌体を0.1Mリン酸緩衝液(pH7)4mlに懸濁した。該菌体懸濁液をミニビートビーター(BIOSPEC社製)で破砕後、遠心分離により上清液(無細胞抽出液)を得た。試験管中で、無細胞抽出液1.7mlに1Mグリコール酸溶液を0.2ml、40,000U/mlのカタラーゼ溶液を0.1ml添加し、28℃で4時間振とうした。反応後の反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、40mMのグリオキシル酸が生成していた。
実施例3で得た無細胞抽出液2mlを0.1Mリン酸緩衝液4Lにより透析を行なった。そののち、透析後の無細胞抽出液1.7mlに1Mグリコール酸溶液を0.2ml、40,000U/mlのカタラーゼ溶液を0.1ml添加し、試験管中で、28℃で4時間振とうした。反応後の反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、32mMのグリオキシル酸が生成していた。
実施例4で得た透析後の無細胞抽出液0.1mlに、4−AA 1.34mM、TOOS 2.19mM、POD 6U/mlを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7)0.05mlを添加し、さらに100mMグリコール酸溶液を0.05ml加え、試験管中で、28℃、2分間振とうした。その結果、反応液は濃い紫色を呈した。対照として100mMグリコール酸溶液の代わりに、0.1Mリン酸緩衝液0.05mlを添加した場合、反応液は変色しなかった。このことより、本無細胞抽出液によるグリコール酸の酸化により過酸化水素が生成していることが確認され、グリコール酸の酸化を触媒している酵素はオキシダーゼであることが確認された。
土壌より分離したアースロバクター・スピーシーズ KNK−GA1株(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年3月7日、受託番号 FERM BP−8375)を500ml容坂口フラスコ中グルコース20g、酵母エキス1g、Nutrient broth8g(いずれも1Lあたり)の組成よりなる培地(pH7)100mlに植菌し、28℃で1日間培養し、前培養液を得た。ついで、5リットル容ミニジャー中にグリコール酸5g、酵母エキス1g、リン酸二水素カリウム3.5g、リン酸水素二アンモニウム6.5g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、硫酸亜鉛7水和物0.02g、硫酸第一鉄7水和物0.03g、硫酸銅5水和物0.002g、塩化カルシウム2水和物0.1g、塩化ナトリウム0.3g(いずれも1Lあたり)の組成よりなる培地(pH7)3Lに、得られた前培養液を植菌し、0.5vvm、350rpm、pH7.2以下(水酸化ナトリウム水溶液でコントロール)で培養を行ない、培養開始から7、21、27、32時間後にグリコール酸をそれぞれ15gずつ添加し、45時間培養した。
実施例6において得られた酵素の酵素化学的性質について検討した。
表2に示す各種アルコールおよびアルデヒド化合物を基質として反応した結果、本願発明の酵素は表2に示すような基質特異性を示した。
0.05Mリン酸緩衝液(pH7)中、30〜70℃、20分間処理したのち、グリコール酸を基質として活性を測定した。その結果を図2に示す。30〜50℃では、処理前の90%以上の活性が残存していた。
1Mリン酸緩衝液、および0.1Mトリス−塩酸緩衝液を用いて、pH5〜10の範囲で基質としてグリコール酸を用いて活性測定を行なった。その結果を図3に示す。至適pHは7〜9であった。
pH5.4〜8.3の0.05Mリン酸緩衝液中、5℃、24時間保存したのち、グリコール酸を基質として活性を測定して、保存前の活性と比較した。その結果を図4に示す。
本精製酵素を1%の2−メルカプトエタノール存在下、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、標準タンパクとの相対移動度よりその分子量を推定した。その結果、本酵素は、分子量は約60000Daに相当するところに単一のバンドを形成した。
実施例6で得た精製酵素1U、グリコール酸15mg、およびカタラーゼ4000Uを含む200mMリン酸緩衝液(pH7)1mlを試験管中、20℃、5時間振とう反応を行ない、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析した。その結果、3.5mgのグリオキシル酸、および0.02mgのギ酸が生成していた。シュウ酸は検出できなかった。
実施例6で得た精製酵素1U、グリコール酸15mg、およびカタラーゼ0Uまたは4000Uを含む200mMリン酸緩衝液(pH7)1mlを試験管中、20℃、2時間振とう反応を行ない、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーで分析した。その結果、カタラーゼ4000Uを添加した場合、2.3mgグリオキシル酸および0.02mgのギ酸が生成したが、カタラーゼを添加しなかった場合、グリオキシル酸は0.08mgしか蓄積されず、1.6mgのギ酸が生成していた。
実施例7と同様に、ホウレンソウ由来のグリコール酸オキシダーゼ(シグマ社製)について各種2−ヒドロキシ酸化合物に対する活性を調べ、その結果を実施例7で得た本発明の酵素と比較した。
Claims (6)
- 下記(1)〜(5)の理化学的性質を有する(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ
(1)作用:2−ヒドロキシ酸に作用し、対応する2−ケト酸を生成する、
(2)基質特異性:グリコール酸およびD−乳酸に活性を示し、L−乳酸に活性を示さない、
(3)分子量:SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において60,000Da、
(4)熱安定性:pH7.2で40℃、20分間処理したのち、90%以上の活性を保持している、
(5)至適反応pH:7〜10。 - さらに、下記(6)の理化学的性質を有する請求項1記載の(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ
(6)L−2−ヒドロキシイソカプロン酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよびグリセリンには活性を示さない。 - アースロバクター属に属する微生物より得られる請求項1または2記載の(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ。
- アースロバクター属に属する微生物がアースロバクター・スピーシーズKNK−GA1(寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年3月7日、受託番号 FERM BP−8375)である請求項3記載の(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の(D)−2−ヒドロキシ酸オキシダーゼ、または該酵素を産生する微生物の培養液、該培養液より分離した微生物菌体、微生物菌体の処理物のいずれかをグリコール酸に作用させ、グリオキシル酸へと変換せしめ、グリオキシル酸を採取することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法。
- 前記反応をカタラーゼ存在下で行なう請求項5記載のグリオキシル酸の製造方法。
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