JP4197778B2 - 光学活性なα−メルカプトカルボン酸の製造方法 - Google Patents

光学活性なα−メルカプトカルボン酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学活性なα−メルカプトカルボン酸の製造方法に関する。詳しくは、チアゾリジン系化合物に微生物を作用させて光学活性なα−メルカプトカルボン酸を製造する方法に関する。
光学活性なα−メルカプトカルボン酸は、医薬、農薬、染料等の重要な合成中間体である。
【0002】
【従来の技術】
光学活性なα−メルカプトカルボン酸は、従来、光学活性なアミノ酸を原料として化学的な方法により製造されている(ビー.ストレイトフェーン(B.Strijtveen)ら、テトラヘドロン(Tetrahedron)、43,5039(1987)、エヌ.アクトン(N.Acton)ら、オーガニック プレパレイションズ アンド プロシーデュアズ インターナショナル(Organic Preparations and Procedures Int.)14,381(1982)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法は、高価な原料を用いる等工業的には不利であった。本発明は、光学活性なα−メルカプトカルボン酸を微生物を用いて従来法より安価に製造する方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、チアゾリジン系化合物に特定の微生物を作用させることにより光学活性なα−メルカプトカルボン酸が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、一般式(I)
【0005】
【化3】
【0006】
(式中、Rはベンジル基を示し、Xは酸素原子を示す)で表されるチアゾリジン化合物に、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アルスロバクター属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コマモナス属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、エルウィニア属、フラビモナス属、グルコノバクター属、コキュリア属、オクロバクトラム属、パントエア属、パラコッカス属、シュードモナス属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ヴァリオヴォラクス属、バークホルデリア属又はボセア属の微生物であって、該化合物を光学活性なα−メルカプトカルボン酸に変換する能力を有する微生物の菌体及び/又は該菌体処理物を作用させることを特徴とする一般式(II)
【0007】
【化4】
【0008】
(式中、Rは式(I)と同義である)で表される光学活性なα−メルカプトカルボン酸の製造方法、にある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に原料として用いられるチアゾリジン系化合物は、式(I)で表されるチアゾリジン化合物である。式(I)において、Rはベンジル基である。なお、本発明により製造される光学活性なα−メルカプトカルボン酸は、式(II)で表される化合物であるが、その具体例としては、例えばR−2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸、S−2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸、等が挙げられる。
【0010】
本発明に用いられる微生物は、式(I)で表されるチアゾリジン化合物を光学活性なα−メルカプトカルボン酸に変換する能力を有する微生物である。
その具体例としては、例えば微生物として、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アルスロバクター属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コマモナス属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、エルウィニア属、フラビモナス属、グルコノバクター属、コキュリア属、オクロバクトラム属、パントエア属、パラコッカス属、シュードモナス属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ヴァリオヴォラクス属、バークホルデリア属又はボセア属に属するする微生物が挙げられ、微生物の菌株としては、例えばアグロバクテリウム・ラジオバクター(Agrobacterium radiobacter)IAM12048 、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)IAM13570、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)MAFF03-01724、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)MAFF03-01222 、アルカリゲネス・ユウトロファス(Alcaligenes eutrophus)DSM428 、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)IFO13111、アルカリゲネス・エスピー(Alcaligenes sp.)IAM1015、アルスロバクター・アトロシアネウス(Arthrobacter atrocyaneus)JCM1329 、アルスロバクター・クリスタロポイエテス(Arthrobacter crystallopoietes)JCM2522、アルスロバクター・グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)IFO12137、アルスロバクター・オキシダンス(Arthrobacter oxydans)JCM2521、アルスロバクター・パラフィネウス(Arthrobacter paraffineus)ATCC15590 、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IFO12108 、ブレビバクテリウム・アセチリカム(Brevibacterium acetylicum)IAM1790、ブレビバクテリウム・ブタニカム(Brevibacterium butanicum)ATCC21196 、コマモナス・アシドボランス(Comamonas acidovorans)DSM6426、コマモナス・テストステロニ(Comamonas tesosteroni)ATCC11996、コリネバクテリウム・フラベセンス(Corynebacterium flavescens)JCM1317 、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)IFO12935、エルウィニア・ラポンチシ(Erwinia rhapontici)MAFF03-01331、フラビモナス・オリジハビタンス(Flavimonas oryzihabitans)IAM1568 、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)IAM1813、コキュリア・ロゼア(Kocuria rosea)IFO3764、オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ATCC49237、オクロバクトラム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)IFO15819 、オクロバクトラム・エスピー(Ochrobactrum sp.)IFO12950、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)IFO12686 、パラコッカス・デニトリフィカンス(Paracoccus denitrificans)IFO13301、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)IFO3904 、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)IFO3081、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)IFO12653、シュードモナス・スツゼリ(Pseudomonas stutzeri)JCM5965 、ロドバクター・スファエロイデス(Rhodobacter sphaeroides)IFO12203 、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)ATCC15960、ヴァリオヴォラクス・パラドクサス(Variovorax paradoxus)DSM30162、シュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)MCI3549株、バークホルデリア エスピー(Burkholderia sp.)MCI3550株、ボセア エスピー(Bosea sp.)MCI3551株又はアルスロバクター エスピー(Arthrobacter sp.) MCI3552株が挙げられる。
【0011】
MCI3549株、MCI3550株、MCI3551株及びMCI3552株は、本発明者らにより天然土壌から分離された細菌であり、それぞれ工業技術院生命工学技術研究所にFERM P−16487、FERM P−16488、FERM P−16489及びFERM P−16490として寄託されている。また、その他の菌株は、それぞれ(財)発酵研究所(IFO)、東京大学分子細胞生物学研究所(IAM)、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)、農林水産省農業生物資源研究所(MAFF)又はドイチュザムラングフォンミクロオルガニズメンウントツェルクルトゥレンGmbH(DSM)から入手することができる。
【0012】
MCI3549株の菌学的性質は以下の通りである。
【0013】
【0014】
【0015】
4.化学分類学的性質
(1)主要なイソプレノイドキノン ユビキノン Q9
(2)DNA中のG+C含量 59.9モル%
5.分類学的考察
(1)高次の同定
本菌株MCI3549株は1)グラム陰性桿菌、2)好気性、3)芽胞を形成しない、4)複数の極鞭毛による運動性を有する、5)主要なイソプレノイドキノンはユビキノンQ9を有する等の特徴を持っている。これらの特徴から、本菌株はバージェイズマニュアル・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual Systematic Bacteriology)第1巻、140〜219頁(1984)に記載されているシュードモナダーシ科(Pseudomonadaceae)に帰属することが示唆された。
【0016】
(2)属の同定
現在、シュードモナダーシ科(Pseudomonadaceae)にはシュードモナス属(Pseudomonas)、キサントモナス属(Xanthomonas)、ズーグレア属(Zoogloea)及びフラトリア属(Frateuria)の四属が含まれている。この内、本菌株はユビキノンQ9を持つことから、シュードモナス属(Pseudomonas)の特徴に一致することが分かった。更にキサントモナス属(Xanthomonas)とは黄色色素の生成、ズーグレア属(Zoogloea)とはウレアーゼの産生、フラトリア属(Frateuria)とはオキシダーゼの産生及び酸耐性の点でも明らかに区別された。
従って、本菌株3549株をシュードモナス エスピー(Pseudomonas sp.)と同定した。
【0017】
次にMCI3550株の菌学的性質は以下の通りである。
【0018】
【0019】
【0020】
4.化学分類学的性質
(1)主要なイソプレノイドキノン ユビキノン Q8
(2)DNA中のG+C含量 67.6モル%
5.分類学的考察
(1)高次の同定
本菌株MCI3550株は1)グラム陰性桿菌、2)絶対好気性、3)芽胞を形成しない、4)単極鞭毛による運動性を有する、5)硝酸塩を還元しない、6)主要なイソプレノイドキノンはユビキノンQ8を有する等の特徴を持っている。また、本菌株よりDNAを抽出、16S rDNAの部分塩基配列の配列を決定した。その結果に基づいてデータベース検索を行ったところ、本菌株はマイクロバイオロジカル イムノロジー(Microbiological Immunology)第36巻、1251〜1275頁(1992)に記載されているバークホルデリア属(Burkholderia)に帰属することが判明した。(図1)
【0021】
現在、バークホルデリア属には十一種が知られているが、本菌株はDNA中のG+C含量及び糖からの酸の生成等の点で、いずれの種とも一致しなかった。 従って、本菌株MCI3550株をバークホルデリア エスピー(Burkholderia sp.)と同定した。
【0022】
次にMCI3551株の菌学的性質は以下の通りである。
【0023】
【0024】
【0025】
4.化学分類学的性質
(1)主要なイソプレノイドキノン ユビキノン Q10
(2)DNA中のG+C含量 66.5モル%
5.分類学的考察
(1)属の同定
本菌株MCI3551株は1)グラム陰性桿菌、2)絶対好気性、3)芽胞を形成しない、4)単極鞭毛による運動性を有する、5)無機窒素源としてNH4 及びNO3 を利用できない、6)生育範囲は20〜37℃、pH6〜9、7)主要なイソプレノイドキノンはユビキノンQ10を有する等の特徴を持っている。また、本菌株よりDNAを抽出、16S rDNAの部分塩基配列(690塩基)の配列を決定した。その結果に基づいてデータベース検索を行ったところ、本菌株はインターナショナル ジャーナル オブ システマティック バクテリオロジー(International Journal SystematicBacteriology)第46巻、981〜987頁(1996)に記載されているボセア属(Bosea)に帰属することが示唆された。(図2)
現在、ボセア属にはボセア チオキシダンス(Bosea thiooxidans)一種のみが知られているが、DNA中のG+C含量が68.2モル%であるのに対し、本菌株は66.5モル%と異なっていた。
従って以上の結果から、本菌株MCI3551株をボセア エスピー(Bosea sp.)と同定した。
【0026】
次にMCI3552株の菌学的性質は以下の通りである。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
5.分類学的考察
(1)属の同定
本菌株MCI3552株は1)グラム陽性桿菌、2)好気性、3)芽胞を形成しない、4)多形性を示す、5)グルコース等の糖類から酸を生成しない、6)細胞壁の主要アミノ酸としてリジンを有する、7)細胞壁のアシル基型はアセチン型、8)主要なイソプレノイドキノンはメナキノンMK9(H2 )を有する、等の特徴を持っている。これらの特徴から、本菌株はバージェイズマニュアル・システマティック・バクテリオロジー(Bergey’s Manual ofSystematic Bacteriology)第2巻、1288〜1301頁(1986)に記載されているアルスロバクター(Arthrobacter)属に帰属することが判明した。
【0031】
(2)種の同定
現在、アルスロバクター属は、細胞壁のアミノ酸及び糖組成、また、メナキノンの分子種によって種が区別されている。MCI3552株は細胞壁の架橋部分にアラニンのみを有していることから、表1に周辺種との比較を示した。本菌株は架橋部分にアラニン3モルを有する点で、アルスロバクター グロビフォルミス(Arthrobacter globiformis)と一致したが、糖組成において異なっていた。また、スターチの加水分解の有無においても異なることから、既存の種には帰属しないと思われる。
従って以上の結果から、本菌株MCI3552株をアルスロバクター エスピー(Arthrobacter sp.)と同定した。
【0032】
【表1】
【0033】
また、上記微生物は、変異株、或いは細胞融合若しくは遺伝子組換え法等の遺伝学的手法により誘導される組換え株等のいずれの株であってもよい。
本発明の製造方法においては、上記微生物の一種或いは二種以上が菌体及び/又は菌体処理物として用いられる。具体的には、上記微生物を培養して得られた菌体をそのまま、或いは培養して得られた菌体を公知の手法で処理したもの、即ち、アセトン処理したもの、凍結乾燥処理したもの、菌体を物理的又は酵素的に破砕したもの等の菌体処理物を用いることができる。また、これらの菌体又は菌体処理物から、式(I)で表されるチアゾリジン化合物に作用しこれを式(II)で表される光学活性なα−メルカプトカルボン酸へ変換する能力を有する酵素画分を粗製物或いは精製物として取り出して用いることも可能である。更には、このようにして得られた菌体、菌体処理物、酵素画分等をポリアクリルアミドゲル、カラギーナンゲル等の担体に固定化したもの等を用いることも可能である。そこで本明細書において、「菌体及び/又は該菌体処理物」の用語は、上述の菌体、菌体処理物、酵素画分、及びそれらの固定化物全てを含有する概念として用いられる。
【0034】
次に、本発明の製造方法について具体的に説明する。
本発明の製造方法において微生物は、通常、培養して用いられるが、この培養については定法通り行うことができる。本微生物の培養の為に用いられる培地には本微生物が資化しうる炭素源、窒素源、及び無機イオン等が含まれる。炭素源としては、グルコース等の炭水化物、グリセロール等のアルコール類、有機酸その他が適宜使用される。窒素源としては、NZアミン、トリプトース、酵母エキス、ポリペプトンその他が適宜使用される。無機イオンとしては、リン酸イオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、マンガンイオン、モリブデンイオンその他が必要に応じ適宜使用される。更に、イノシトール、パントテン酸、ニコチン酸アミドその他のビタミン類を必要に応じ添加することは有効である。また、5−メチルヒダントイン等のヒダントイン類、イミド類、5−置換チアゾリジンジオン類、ラウシル等を添加することも有効である。培養は、好気的条件下に、pH約6〜8、温度約20〜35℃の適当な範囲に制御しつつ15〜100時間行う。
【0035】
式(I)で表されるチアゾリジン化合物に上記微生物を作用させて光学活性なα−メルカプトカルボン酸を製造する方法として、本微生物を培養し、得られた菌体懸濁液と式(I)で表されるチアゾリジン化合物を混合し反応させ光学活性なα−メルカプトカルボン酸を得る方法、培地に式(I)で表されるチアゾリジン化合物を添加し培養と反応を同時に行う方法、或いは培養終了後、式(I)で表されるチアゾリジン化合物を添加して更に反応を行う方法等を用いることができる。反応温度は15〜40℃が好ましく、pH5〜10の範囲である。式(I)で表されるチアゾリジン化合物の濃度は0.1〜3%の範囲が望ましく、必要ならば式(I)で表されるチアゾリジン化合物は反応の間、追補添加される。また、必要に応じて金属イオンを添加することにより反応が促進される場合がある。
培養及び反応で得られた光学活性なα−メルカプトカルボン酸の採取方法としては溶媒抽出等の通常の分離・精製方法を行うことができる。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りその技術分野における通常の変更をすることができる。
実施例1
硫酸アンモニウム1g/L、リン酸二水素カリウム1g/L、リン酸水素二カリウム1g/l、硫酸マグネシウム300mg/l、硫酸鉄100mg/l、イーストエキス3.0g/l、肉エキス3.0g/l、ポリペプトン2.0g/l、イソプロピルヒダントイン1.0g/l、ウラシル1.0g/l(pH7.0)の組成からなる液体培地50mLに、MCI3552株を接種し、30℃で20時間好気的に培養した。培養終了後、菌体を集め50mM塩化カリウム水溶液で洗浄した。これに2g/lの5−ベンジルチアゾリジンジオンを含む30mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を5mLとし30℃で24時間反応させた。反応終了時の2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸生成蓄積量は0.56g/lであった。上述反応液上清を酸性化した後、ジエチルエーテル50mlと混合し溶媒抽出操作を行い、分離したジエチルエーテルを減圧濃縮し生産物を得た。
【0037】
これをNMRにより分析したところ1H−NMR(CDCl3,500MHz):δ(p.p.m) 2.15(d,J=9Hz,1H,SH)、2.99(dd,J=14.7Hz,1H,benzylic)、3.25(dd,J=14,8Hz,1H,benzylic)、3.61(m,1H,α−H)、7.25(m,5H,aromatic)、8.25(br s,1H,COOH)であり、本生成物が2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸であることを確認した。本生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセルキラルセルOD−H)で分析し、絶対配置を求めた結果、生成物はR−2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸(光学純度87%e.e.)であった。
【0038】
実施例2
硫酸アンモニウム1g/L、リン酸二水素カリウム1g/L、リン酸水素二カリウム1g/l、硫酸マグネシウム300mg/l、硫酸鉄100mg/l、グリセロール10g/l、イーストエキス3.0g/L、肉エキス3.0g/l、ポリペプトン2.0g/l、イソプロピルヒダントイン1.5g/l、ウラシル1.5g/l、N−カルバメート−L−ロイシン1.5g/1(pH7.0)の組成からなる液体培地50mLに、MCI3551株を接種し、30℃で20時間好気的に培養した。培養終了後、菌体を集め50mM塩化カリウム水溶液で洗浄した。これに2g/lの5−ベンジルチアゾリジンジオンを含む30mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を5mLとし30℃で24時間反応させた。反応終了時の2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸生成蓄積量は0.45g/lであった。
【0039】
実施例1と同様の方法により生産物を分離同定し、本生成物が2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸であることを確認した。本生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセルキラルセルOD−H)で分析し、絶対配置を求めた結果、生成物はR−2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸(光学純度87%e.e)であった。
【0040】
実施例3
肉エキス7.0g/l、ペプトン10.0g/l、塩化ナトリウム3.0g/1、5−ベンジルチアゾリジンジオン0.1g/l(pH7.0)の組成からなる液体培地50mLに、MCI3550株を接種し、30℃で48時間好気的に培養した。培養終了後、菌体を集め50mM塩化カリウム水溶液で洗浄した。これに2g/lの5−ベンジルチアゾリジンジオンを含む30mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を5mLとし30℃で24時間反応させた。反応終了時の2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸生成蓄積量は0.71g/lであった。
【0041】
実施例1と同様の方法により生産物を分離同定し、本生成物が2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸であることを確認した。本生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセルキラルセルOD−H)で分析し、絶対配置を求めた結果、生成物はS−2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸(光学純度82%e.e)であった。
【0042】
実施例4
肉エキス7.0g/l、ペプトン10.0g/l、塩化ナトリウム3.0g/1,5−ベンジルチアゾリジンジオン0.1g/l(pH7.0)の組成からなる液体培地50mLに、MCI3549株を接種し、30℃で48時間好気的に培養した。培養終了後、菌体を集め50mM塩化カリウム水溶液で洗浄した。これに2g/lの5−ベンジルチアゾリジンジオンを含む30mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)を加え、全量を5mLとし30℃で24時間反応させた。反応終了時の2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸生成蓄積量は0.69g/lであった。
【0043】
実施例1と同様の方法により生産物を分離同定し、本生成物が2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸であることを確認した。本生成物を高速液体クロマトグラフィー(カラム:ダイセルキラルセルOD−H)で分析し、絶対配置を求めた結果、生成物はS−2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸(光学純度63%e.e.)であった。
【0044】
実施例5
下記表2に示す各種微生物を、それぞれ実施例3と同様にして培養した後、それぞれ反応を実施した。反応終了時の2−メルカプト−3−フェニルプロピオン酸の生成蓄積量を求めて、さらに実施例1と同様にして、光学純度を求めた。
得られた結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【発明の効果】
本発明の微生物を用いた光学活性なα−メルカプトカルボン酸の製造方法は従来の方法に比べ安価な方法であることから、光学活性なα−メルカプトカルボン酸の工業的な生産を行う際に非常に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】MCI3550の樹状図。
【図2】MCI3551の樹状図。

Claims (3)

  1. 一般式(I)
    (式中、Rはベンジル基を示し、Xは酸素原子を示す)で表されるチアゾリジン化合物に、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アルスロバクター属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コマモナス属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、エルウィニア属、フラビモナス属、グルコノバクター属、コキュリア属、オクロバクトラム属、パントエア属、パラコッカス属、シュードモナス属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ヴァリオヴォラクス属、バークホルデリア属又はボセア属の微生物であって、該化合物を光学活性なα−メルカプトカルボン酸に変換する能力を有する微生物の菌体及び/又は該菌体処理物を作用させることを特徴とする一般式(II)
    (式中、Rは式(I)と同義である)で表される光学活性なα−メルカプトカルボン酸の製造方法。
  2. 一般式(I)
    (式中、Rはベンジル基を示し、Xは酸素原子を示す)で表されるチアゾリジン化合物に、アグロバクテリウム属、アルカリゲネス属、アルスロバクター属、ブレビバクテリウム属、コマモナス属、コリネバクテリウム属、エンテロバクター属、エルウィニア属、フラビモナス属、グルコノバクター属、コキュリア属、オクロバクトラム属、パントエア属、シュードモナス属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ヴァリオヴォラクス属又はバークホルデリア属の微生物であって、該化合物を(S)−α−メルカプトカルボン酸に変換する能力を有する微生物の菌体及び/又は該菌体処理物を作用させることを特徴とする一般式(II)
    (式中、Rは式(I)と同義である)で表される(S)−α−メルカプトカルボン酸の製造方法。
  3. 一般式(I)
    (式中、Rはベンジル基を示し、Xは酸素原子を示す)で表されるチアゾリジン化合物に、アルスロバクター属、バチルス属、コマモナス属、パラコッカス属又はボセア属の微生物であって、該化合物を(R)−α−メルカプトカルボン酸に変換する能力を有する微生物の菌体及び/又は該菌体処理物を作用させることを特徴とする一般式(II)
    (式中、Rは式(I)と同義である)で表される(R)−α−メルカプトカルボン酸の製造方法。
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