JP3245254B2 - 新規微生物及びこれを用いるヌートカトンの製造法 - Google Patents
新規微生物及びこれを用いるヌートカトンの製造法Info
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Description
造法に関し、更に詳細には、ロドコッカス(Rhodococcu
s)属に属する微生物を利用するヌートカトンの製造法
に関する。
果皮に存在するセスキテルペンケトンであり、グレープ
フルーツの特徴的な香味を有するため非常に注目されて
いる光学活性形(+体)の天然香料物質である。
pbのオーダーで検出可能であるが、天然にはグレープ
フルーツ油成分中に1%以下しか含有されておらず、入
手が難かしく、その使用に際して量的な制限を受けてい
る高価な香料である。従って、ヌートカトンを経済的に
合成する方法の開発が強く要求されており、従来から種
々の合成法が研究されている。
は、4−アセチル−1−エトキシシクロヘキセン(Che
m. Commun. 1152貢、1968年)、4,4−ジエトキシカル
ボニルピメリン酸ジニトリル(Chem. Commun. 26貢、19
69年)、4−オキソピメリン酸ジメチル(J. Org. Che
m. 36巻、594貢、1971年)等から合成する方法が知られ
ている。しかしヌートカトンの全合成はその反応工程が
複雑で、多段階にわたり、収率も低く、学術的には興味
を持たれているが、工業的とは言えない。
式(II)
する方法も知られている。例えば、三重項酸素または一
重項酸素を用いて酸化した後、酸化生成物(ヒドロキシ
パーオキシド)を脱水し、ヌートカトンを合成する方法
(特公昭49−35263号)や、第三級ブチルクロメ
ート(J.Food.Sci.30巻、876項、1965年)、無水クロム
酸ピリジン錯体(J.Org.Chem.34巻、3587貢、1969年)
等の酸化剤を用いて酸化する方法、或いは、有機重金属
触媒を用いて酸素または酸素含有ガスで酸化する方法
(特公昭59−31728号)等の方法が知られてい
る。
(ヒドロキシパーオキシド)が不安定であること、酸化
剤自身が高価であること、種々の副生成物が生じるこ
と、収率が悪いこと等から工業化に適しているとは言え
ない。
を用いて物質生産に用いる場合、化学合成法の様な副反
応が起こらず、選択的に目的化合物が得られる利点があ
ることが知られている。 特に目的化合物がヌートカト
ンの様に光学活性体である場合((+)体は(−)体の
1000倍の香気を持つと言われている)、生体触媒に
よる生産は非常に有利な方法であると言える。
製された香料は天然香料として分類され、近年の天然物
志向の面からもその需要は大きい。
レンセンをヌートカトンへ変換する方法の例としては、
腸内細菌であるエンテロバクター(Enterobacter)を用
いる方法(Dragoco Rep. 20巻、 251貢、1974年)や、
かんきつ類(Citrus)を用いる方法(Plant Cell Rep.
3巻、37貢、1984年)が報告されている。
センの初発濃度が低く、工業的とは言えない。 また、
エンテロバクター等の腸内細菌を用いる方法には病原性
の心配があり、フレーバーとしての使用に支障をきたし
かねないという欠点もあった。
いてバレンセンをヌートカトンへ選択的に変換すること
ができ、しかも得られたヌートカトンをフレーバーとし
ての使用する際になんらの問題の無い方法の開発が求め
られていた。
分離した種々の微生物についてその性質、作用を検索し
た結果、徳島県内で採取した土壌から得られたロドコッ
カス(Rhodococcus)属に属する微生物がバレンセンを
ヌートカトンに変換することを見い出し、本発明を完成
した。
occus)属に属する微生物をバレンセンに作用させるこ
とを特徴とするヌートカトンの製造法を提供するもので
ある。
センのアリル位酸化能を有するものであり、その代表的
微生物であるロドコッカス・エスピー(Rhodococcus s
p.)KSM−5706株は、以下に示す様な菌学的性質
を有する。
多形性を有する。 すなわち、培養初期には菌糸を作
り、その後断裂し、短桿菌様となる。 また、本株は非
運動性で、鞭毛は無い。 胞子は認められず、グラム陽
性で抗酸性はない。
り、円錐型隆起のある集落を形成する。 集落の形状は
円形である。 (b)肉汁寒天斜面培養 良好に生育し、乳白色を呈する。 (c)肉汁液体培養 表面上層、下層ともに生育する。 (d)肉汁ゼラチン穿刺培養 良好に生育し、ゼラチンを液化した。 (e)リトマスミルク リトマス色素を紫色から青色に変化させる。 ミルクの
変化は認められなかった。
でも充分生育できる。 (r) OFテスト;無反応 (BTB指示薬で反応せ
ず) (s)NaCl含有培地における生育;食塩濃度が、5
%及び7%のいずれにおいても生育する。
シロースは検出されない。 (d)メナキノンシステム MK−8(H2)
アル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Be
rgey's Manual of Systematic Bacteriology)、第2巻
(1986)に照らし、本菌株の分類学的位置を調べたとこ
ろ、KSM−5706株はロドコッカス属に属する微生
物であることが判明した。
質は、公知のロドコッカス属微生物の何れとも異なって
いるので、本発明者らはこれを新規な菌株と判断し、工
業技術院生命工学工業技術研究所に寄託した(受託番号
FERM P−13450)。
ッカス属微生物は、バレンセンのアリル位を特異的に酸
化し、これをヌートカトンに変換する能力を有するの
で、当該微生物をバレンセンに作用させることにより有
利にヌートカトンを得ることが出来る。
カス属微生物の作用方法については特に制限に無く、バ
レンセンを含有する培地にて当該微生物を培養する方
法、当該微生物の培養菌体にバレンセンを添加する方
法、当該微生物の休止菌体または固定化菌体、破砕菌体
等にバレンセンを接触させる方法によりヌートカトンを
得ることが出来る。
地としては、炭素源として、フラクトース、マルトー
ス、トレハロース、ソルビトール、マンニトール、グリ
セロール、グルコース、シュクロース、リボース、イノ
シトール等、窒素源としてペプトン、酵母エキス、尿
素、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、アミノ酸等
を、無機塩としては、リン酸カリウム、硫酸マグネシウ
ム、塩化カルシウム等や、また必要に応じてMn2+、Z
n2+、Ni2+等の金属塩、ビオチン、チアミン等のビタ
ミン類等を適宜加えたものが用いられる。
般的に20〜30℃程度の温度、5〜7程度のpHで振
盪撹拌または通気撹拌を行いつつ実施すれば良い。
養菌体を休止菌体とする方法としては、通常の方法を用
いれば良く、例えば、培養菌体を適当な緩衝液または脱
イオン水で洗浄する方法が挙げられ、具体的には、遠心
分離或いは濾過等により培養液から分離した菌体を緩衝
液もしくは脱イオン水に再懸濁させる方法が挙げられ
る。
レンセンに作用させるには、菌体数を増加させた培養液
にバレンセンを加えた後、または休止菌体を適当な緩衝
液または脱イオン水に懸濁させこれにバレンセンを加え
た後、振盪撹拌または通気撹拌し、変換反応を行わしめ
れば良い。
はないが、一般には、菌体懸濁液の濃度が600nm
における吸光度で20〜80程度になるように調整すれ
ば良い。 また、この反応における撹拌は、100〜4
00rpm程度、懸濁液の温度は20〜30℃程度と
し、約72〜120時間程度反応させれば良い。
目的物であるヌートカトンを分離、採取するには公知の
精製手段、例えば、カラムクロマトグラフィー、高速液
体クロマトグラフィー等の精製手段を単独または組み合
わせて用いれば良い。
るような種々の副反応を生起させることなくバレンセン
からヌートカトンを選択的に製造することができる。
また、これまでに報告されている腸内細菌によるヌート
カトンへの変換反応と異なり、病原性の懸念のないヌー
トカトンの製造が可能となる。
明するが、本発明はこれら実施例になんら制約されるも
のではない。
を10mlの滅菌脱イオン水に懸濁後、適当に希釈す
る。 後記培地A、10mlを含む大型試験管にこの希
釈物を添加し、30℃で5日間、振盪培養することによ
り集積培養を行った。 この培養物を培地Aに5%寒天
を加えて調製した平板培地に塗布し、バレンセン質化能
を有する菌株を分離した。
記培地A 10mlを含む大型試験管に接種し、30℃
で5日間、振盪培養を行った。 得られた培養液を酢酸
エチルで抽出した後、酢酸エチル可溶画分をガスクロマ
トグラフィーに付し、生産物の定量を行った(図1)。
その結果、バレンセンを資化し、ヌートカトンを生産
する菌株としてKSM−5706株を得た。
とする。
行い、これをヌートカトンであると決定した。 分析デ
ータのうち、GC−MS スペクトルを図2に、生成物
とヌートカトンとのMSスペクトルの比較を図3に示
す。
寒天斜面培地で3日間、30℃で培養した。 これを前
記培地A、10mlを含む大型試験管に接種した。 3
0℃で2日間振盪培養し、これを前培養液とした。 こ
の前培養液0.5ml を前記培地Aを50ml含む50
0ml 容坂口フラスコに接種し、30℃で4日間振盪
培養を行った。 得られた培養液を酢酸エチルで抽出
し、その酢酸エチル可溶画分をガスクロマトグラフィー
で定量した結果、ヌートカトン 0.5mgが得られた。
KSM−5706株を下記培地C10mlを含む大試験
管に接種した。 30℃で2日間振盪培養し、これを前
培養液とした。 この前培養液1.0mlを後記培地Cを
それぞれ100ml含む2本の500ml容坂口フラス
コに接種し、30℃で2日間振盪培養行った。
2,000×g、10分間)し、得られた菌体を50m
Mリン酸緩衝液(pH7.0)で2回洗浄し、同緩衝液
50mlに懸濁し、休止菌体懸濁液とした。 この休止
菌体懸濁液50mlを500ml容三角フラスコにと
り、これにバレンセン500mgを加え、30℃で4日
間ロータリーシェーカーで振盪培養を行った。 得られ
た培養液を50ml酢酸エチルで抽出し、その酢酸エチ
ル可溶画分をガスクロマトグラフィーで定量した結果、
ヌートカトン2.5mgが得られた(図4)。
ラフィー(GC)を示す図面。
分のGC−MSスペクトルを示す図面。
分と、ヌートカトン標品のMSスペクトルの比較を示す
図面。
面。 以 上
Claims (4)
- 【請求項1】 バレンセンのアリル位酸化能を有し、下
記の菌学的性質を有するロドコッカス(Rhodococcus)
属に属する微生物。(1)形態的性質 菌体の大きさが0.8〜1μm×1〜10μmの桿菌で
多形性を有する。 すなわち、培養初期には菌糸を作
り、その後断裂し、短桿菌様となる。 また、本株は非
運動性で、鞭毛は無い。 胞子は認められず、グラム陽
性で抗酸性はない。 (2)培養的性質 (a)肉汁寒天平面培養 良好に生育し、乳白色不透明、表面滑らかで光沢があ
り、円錐型隆起のある集落を形成する。 集落の形状は
円形である。 (b)肉汁寒天斜面培養 良好に生育し、乳白色を呈する。 (c)肉汁液体培養 表面上層、下層ともに生育する。 (d)肉汁ゼラチン穿刺培養 良好に生育し、ゼラチンを液化した。 (e)リトマスミルク リトマス色素を紫色から青色に変化させる。 ミルクの
変化は認められなかった。 (3)生理学的性質 (a)硝酸塩の還元; 陽性 (b)脱窒反応; 陰性 (c)MRテスト; 陰性 (d)VPテスト; 陰性 (e)インドールの生成; 陰性 (f)硫化水素の生成; 陰性 (g)澱粉加水分解反応; 陽性 (h)クエン酸の作用; シモンズ培地; 陽性 クリステンセン培地; 陽性 (i)硝酸塩の利用; 陽性 (j)アンモニウム塩の利用;陽性 (k)色素の生成; キングA培地; 陰性 キングB培地; 陰性 (l)ウレアーゼ; 陽性 (m)オキシダーゼ; 陽性 (n)カタラーゼ; 陽性 (o)生育pH範囲; 生育pH 4.5〜10 至適pH 5〜7 (p)生育温度範囲; 生育温度 6〜37℃ 至適温度 20〜30℃ (q)酵素に対する態度; 好気的であるが、静置条件下でも充分生育できる。 (r) OFテスト; 無反応 (BTB指示薬で反応せず) (s)NaCl含有培地における生育; 食塩濃度が、5%及び7%のいずれにおいても生育す
る。 (t)炭素源の利用性; L−アラビノース − D−キシロース − D−グルコース + D−マンノース − D−フラクトース + D−ガラクトース − マルトース + (弱い)シュクロース + ラクトース − トレハロース + D−ソルビトール + D−マンニトール + イノシトール + グリセロール + スターチ +(弱い) D−リボース + ただし、+は利用する、−は利用しない。 (4)化学分類学的性質 (a)グリコレートテスト グリコリル型 (b)細胞壁の架橋アミノ酸 メソ(meso)−2,6−ジアミノピメリン酸 (c)アラビノース、ガラクトースが検出されるが、キ
シロースは検出されな い。 (d)メナキノンシステム MK−8(H 2 ) - 【請求項2】 ロドコッカス・エスピーKSM−570
6株(生命工学工業技術研究所 受託番号 FERM P
−13450)である請求項第1項記載の微生物。 - 【請求項3】 請求項第1項記載のロドコッカス属に属
する微生物をバレンセンに作用させることを特徴とする
ヌートカトンの製造法。 - 【請求項4】 ロドコッカス属に属する微生物が、ロド
コッカス・エスピーKSM−5706株(生命工学工業
技術研究所 受託番号 FERM P−13450)であ
る請求項第3項記載のヌートカトンの製造法。
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JP11112293A JP3245254B2 (ja) | 1993-04-15 | 1993-04-15 | 新規微生物及びこれを用いるヌートカトンの製造法 |
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-
1993
- 1993-04-15 JP JP11112293A patent/JP3245254B2/ja not_active Expired - Fee Related
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J.Agrlc.Food Chem.,Vol.41(1993 Oct.),No.10,p.1566−1569 |
Plant Cell Reports,Vol.3(1984),No.1,p.37−40 |
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