JP2005102511A - 新規アルコール脱水素酵素、その遺伝子 - Google Patents

新規アルコール脱水素酵素、その遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、光学活性な2級アルコール等の合成に用いられ得る、新規な2級アルコール脱水素酵素、それをコードするDNA、このDNAを有するベクター、このベクターで形質転換された形質転換体細胞を、提供することにある。
【解決手段】 ゴルドニア属に属する微生物に由来し、NAD+を補酵素として、2−ブタノールを酸化する3種類の新規なアルコール脱水素酵素。及びそれをコードするDNA,該DNAを含む形質転換体。
【選択図】 なし。

Description

本発明は、アルコール脱水素酵素およびその製造方法、さらにはこれらの酵素をコードするDNA、このDNAを有するベクター、このベクターで形質転換された形質転換体細胞に関する。
微生物が産生するアルコール脱水素酵素のうち、補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NAD+と略す)を要求するアルコール脱水素酵素については数多くの報告がある。このうち、2−プロパノールを基質とする酵素としては、ピキア・エスピー(Pichia sp.)NRRL−Y−11328、およびシュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)ATCC21439、および、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)PNKb1由来の酵素が知られている。
上記の酵素のうち、ピキア・エスピー NRRL−Y−11328およびシュードモナス・エスピー ATCC21439由来の酵素は、ゲル濾過法およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による酵素蛋白質の分子量の測定値から、いずれも分子量約48,000のサブユニットからなる二量体であり、その基質特異性においては2−プロパノールの(R)体を優先的に酸化してアセトンを生成することを特徴とする。また、これらの酵素が2−プロパノールを酸化する際の至適pHは8−9と報告されている(非特許文献1、非特許文献2)。
また、ロドコッカス・ロドクロウス PNKb1由来の酵素は、プロパンの資化性を有する微生物が生産する酵素であるが、分子量約40,000の同一サブユニットからなる四量体である。本酵素の2−プロパノールを酸化する際のKm値は18mMと報告されている(非特許文献3)。
このほかに、プロパンの資化性を有する微生物が生産するアルコール脱水素酵素として、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)NRRL B−1244の生産するNAD+依存性アルコール脱水素酵素は四量体であると報告されている(非特許文献4)。
2−プロパノールのような2級アルコール化合物に作用するアルコール脱水素酵素は、カルボニル化合物の立体的還元反応による光学活性2級アルコール化合物の合成や、ラセミ体の2級アルコール化合物を立体選択的に酸化させ、光学活性2級アルコール化合物を合成する上で有用な酵素である。
Eur.J.Biochem.,101,401−406(1979) Eur.J.Biochem.,119,359−364(1981) Methods in Enzymology,188,21−26(1990) Appl.Environ.Microbiol.,46,98−105(1983)
本発明は、光学活性な2級アルコール化合物の合成に用いられ得る、新規な2級アルコール脱水素酵素、それをコードするDNA、このDNAを有するベクター、このベクターで形質転換された形質転換体細胞を提供することにある。
本発明者らは鋭意に研究を行なった結果、ゴルドニア(Gordonia)属に属する微生物が、3種類の新規な2級アルコール脱水素酵素を生産することを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はゴルドニア属に属する微生物に由来する新規な2級アルコール脱水素酵素Adh1、Adh2、及びAdh3である。
また、本発明は、これら2級アルコール脱水素酵素をコードするDNA、当該DNAを含む組換えベクター、及び当該組換えベクターを含む形質転換体でもある。
更に、本発明は、前記2級アルコール脱水素酵素を産生する能力を有するゴルドニア属に属する微生物、若しくは前記形質転換体を培養し、培養物から当該2級アルコール脱水素酵素を取得することを特徴とする、2級アルコール脱水素酵素の製造法でもある。
本発明により、新規なアルコール脱水素酵素、その遺伝子、該遺伝子を含む組換え体DNA、該組換え体DNAを含む形質転換体及び新規なアルコール脱水素酵素の製法が提供される。そして、新規なアルコール脱水素酵素を効率よく生産することができる。
以下、本発明について記述する。本発明でいう2級アルコール脱水素酵素とは、骨格が同一の1級アルコールおよび2級アルコールに対する活性を比較した場合、2級アルコールに対する活性の方が高い酵素を指す。具体的には、同一条件において2−プロパノールに対する酸化活性が1−プロパノールに対する酸化活性より高い脱水素酵素である。
本発明の2級アルコール脱水素酵素は、プロパンの資化性を有する微生物、好ましくはゴルドニア属に属する微生物、さらに好ましくはゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5株から得ることができる。
上記ゴルドニア・エスピー TY−5株は、本発明者らが自然界から分離、採取し、平成15年9月26日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターへ寄託したものであり、寄託番号はFERM P−19540である。上記菌株の菌学的性質は以下のとおりである。
(1)細胞形態:桿菌 rod−coccus cycleあり。
培養24時間(0.8−1.0 x 1.5−5.0μm)
培養72時間(0.8 x 0.8−1.0μm)
(2)グラム染色:陽性
(3)胞子形成:陰性
(4)運動性:陰性
(5)コロニー形態:円形、全縁滑らか、低凸状、光沢あり、淡黄色
(培地:Nutrient Agar、培養24時間、30℃)
(6)カタラーゼ:陽性
(7)オキシダーゼ:陰性
(8)酸/ガス産生:陰性/陰性
(9)O/Fテスト:陰性/陰性

以上の菌学的性状は、coryneform bacteriumの性状に属すると考えられる。また、本菌の16S rDNAの塩基配列を、FESTAによりその相同性の解析を行なった結果、Gordonia属への帰属が示唆された。従って、TY−5株はゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)に属することが判明した。
本発明のポリペプチドを生産する微生物は、野生株または変異株のいずれでもあり得る。あるいは、細胞融合または遺伝子操作などの遺伝学的手法により誘導された微生物も用いられ得る。遺伝子操作された本発明のポリペプチドを生産する微生物は、例えば、これらの酵素を単離および/または精製して酵素のアミノ酸配列の一部または全部を決定する工程、このアミノ酸配列に基づいてポリペプチドはコードするヌクレオチド配列を決定する工程、このアミノ酸配列に基づいてポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を得る工程、このヌクレオチド配列を他の微生物に導入して組換え微生物を得る工程、およびこの組換え微生物を培養して、本発明の酵素を得る工程を包含する方法により得られ得る。
以下に、ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)TY−5株より、本発明の酵素を取得する方法の例を記載するが、本発明はこれに限定されない。
まず、本発明のアルコール脱水素酵素を生産する微生物を適切な培地で培養する。培養方法としては、その微生物が増殖する限り、通常の炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地が用いられ得る。培養は、例えば、温度25℃から37℃、pH4−8で振とうもしくは通気することで行い得る。
培養液から菌体を遠心分離した後、菌体を適当な緩衝液中に懸濁し、該菌体をガラスビーズ等の物理的手法、酵素などの生化学的手法などを用いて破砕または溶解し、更に遠心分離により該溶液中の固形物を除去することにより、酵素の粗酵素液を得ることができる。あるいは、培養液から、上記と同様の精製法で粗酵素液を得ることができる。また、粗酵素液を当業者が通常用いる手法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、透析、クロマトグラフィー等の方法を単独でまたは組み合わせて更に精製することができる。クロマトグラフィーは、疎水クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーを単独で、または組み合わせて用いることもできる。
なお、一旦精製した酵素が取得できれば、当業者であれば公知の方法により、該酵素をコードするDNAを取得することができる。このDNAを他の微生物に導入して組換え微生物を取得し、これを培養して本発明の酵素を取得し得る。
上記の操作により、ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)TY−5株から、本発明の3種類の2級アルコール脱水素酵素(Adh1、Adh2、及びAdh3)を取得することができる。以下に各酵素の理化学的性質を記す。
なお、酵素の酸化活性は、例えば、100mMの基質、1mMのNAD+、0.2Mの硫酸アンモニウムおよび酵素液を含む20mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)1mlの反応液を、30℃で1分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定することにより行ない得る。また、還元活性は、100mMの基質、0.25mMのNADH、0.2Mの硫酸アンモニウムおよび酵素液を含む20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)の反応液を、30℃で1分間反応させ、その間の340nmの吸光度の減少を測定することにより行い得る。
酵素の分子量の測定は、例えばSuperose12HRカラムを用いたゲル濾過分析により、標準蛋白質の相対溶出時間から算出することにより決定しうる。また、サブユニットの分子量は、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、標準蛋白質の相対移動度から算出することにより決定しうる。
また、酵素の至適pH、至適温度は、例えば、上記活性測定系において反応pH、反応温度を変えて活性を測定することによって決定し得る。
本発明の2級アルコール脱水素酵素Adh1は以下の(1)−(7)の理化学的性質を有する酵素である:
(1)作用:NAD+を補酵素として、2−プロパノールを酸化してアセトンを生成する、
(2)分子量:ゲル濾過法により67,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により36,000、
(3)至適温度:2−プロパノールの酸化時30℃、
(4)至適pH:2−プロパノールの酸化反応時pH10、アセトンの還元反応時pH6、
(5)基質特異性:2−ブタノールの(S)体を優先的に酸化して2−プロパノンを生成する、および、エタノールの酸化活性を有する、
(6)Km値:2−プロパノールに対するKm値が4.4mM、
(7)N末端アミノ酸配列:MRAVQVVGYHDKLQLNEIPD。
ここで、「エタノールの酸化活性を有する」とは、上記の活性測定系にてエタノールを基質として測定した場合、2−プロパノールを基質とした場合の5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上の活性を示すことを表す。
本発明の2級アルコール脱水素酵素Adh2は以下の(8)−(14)の理化学的性質を有する酵素である:
(8)作用:NAD+を補酵素として、2−プロパノールを酸化してアセトンを生成する、
(9)分子量:ゲル濾過法により72,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により37,000、
(10)至適温度:2−プロパノールの酸化時75℃、
(11)至適pH:2−プロパノールの酸化反応時pH10、アセトンの還元反応時pH4、
(12)基質特異性:1,2−プロパンジオールの(R)体を優先的に酸化してアセトールを生成する、および、エタノールの酸化活性を有する。
(13)Km値:2−プロパノールに対するKm値が0.024mM、
(14)N末端アミノ酸配列:MKALVFHGPGQKAWEDVPDP。
ここで、「エタノールの酸化活性を有する」とは、上記の活性測定系にてエタノールを基質として測定した場合、2−プロパノールを基質とした場合の5%以上、好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上の活性を示すことを表す。
本発明の2級アルコール脱水素酵素Adh3は以下の(8)−(7)の理化学的性質を有する酵素である:
(15)作用:NAD+を補酵素として、2−プロパノールを酸化してアセトンを生成する、
(16)分子量:ゲル濾過法により100,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により55,000、
(17)至適温度:2−プロパノールの酸化時60℃、
(18)至適pH:2−プロパノールの酸化反応時pH10、アセトンの還元反応時pH5.5、
(19)基質特異性:2−ヘプタノールの酸化活性、および、2−オクタノールの酸化活性を有する、
(20)Km値:2−プロパノールに対するKm値が4.3mM、
(21)N末端アミノ酸配列:TVYAKPGTEGSVMSFESRYD。
ここで、「2−ヘプタノールの酸化活性を有する」、あるいは、「2−オクタノールの酸化活性を有する」とは、上記の活性測定系にて2−ヘプタノールあるいは2−オクタノールを基質として測定した場合、2−プロパノールを基質とした場合の80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%以上の活性を示すことを表す。
また、本発明の2級アルコール脱水素酵素Adh1は、以下の(A)又は(B)のポリペプチドであってもよい。
(A)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(B)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ2級アルコール脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
本発明の2級アルコール脱水素酵素Adh2は、以下の(C)又は(D)のポリペスチドであってもよい。
(C)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(D)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ2級アルコール脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
また、本発明の2級アルコール脱水素酵素Adh3は(E)又は(F)のポリペプチドであってもよい。
(E)配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(F)配列番号11で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ2級アルコール脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
次に、本発明の2級アルコール脱水素酵素(ポリペプチド)をコードするDNAを取得する方法の例を記載するが、本発明はこれに限定されない。
まず、精製した酵素を適当なエンドペプチダーゼにより消化し、逆相HPLCにより切断された断片を精製後、プロテインシークエンサーにより部分アミノ酸配列の一部を決定する。そして、得られた部分アミノ酸配列をもとにして、PCR(Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成する。次に、該DNAの起源となる微生物より、通常のDNA単離法、例えばMurray等の方法(Nucl.,Acids Res.8,4321−4325,1980)により、該微生物の染色体DNAを調製する。この染色体DNAを鋳型として、先述のPCRプライマーを用いてPCRを行い、該酵素をコードするDNAの一部(コア配列)を増幅し、塩基配列決定を行う。塩基配列決定はジデオキシ・チェイン・ターミネーション法等により決定し得る。例えば、 ABI 373A DNA Sequencer(Applied Biosystems社製)等を用いて行われ得る。コア配列の周辺領域の塩基配列を明らかにするためには、該微生物の染色体DNAとベクター、例えばBluescriptII KS+(Stratagene社製)を、コア配列中にその認識配列が存在しない制限酵素により消化し、これらをライゲーションさせ、大腸菌に形質転換する。こうして得られたDNAの塩基配列を明らかにすることにより、目的酵素の全コード領域のDNA配列を明らかにし得る。
本発明の2級アルコール脱水素酵素をコードするDNAは、上記のAdh1、Adh2、又はAdh3をコードするDNAであれば、特に制限されないが、例えば、以下の3種類のDNA(adh1、adh2、及びadh3)を挙げることができる。
adh1は、以下の(a)又は(b)のDNAである:
(a)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2で示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつ、2級アルコール脱水素酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA。
adh2は、以下の(c)又は(d)のDNAである:
(c)配列番号6で示される塩基配列からなるDNA、
(d)配列番号6で示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつ、2級アルコール脱水素酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA。
adh3は、以下の(e)又は(f)のDNAである:
(e)配列番号12で示される塩基配列からなるDNA、
(f)配列番号12で示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつ、2級アルコール脱水素酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA。
また、本発明では、上記DNAを導入された形質転換微生物を培養することにより、本発明の2級アルコール脱水素酵素を生産することができる。
本発明の酵素のDNAを宿主微生物内に導入し、それをその導入された宿主微生物内で発現させるために用いられるベクターDNAとしては、適切な宿主微生物内で該酵素遺伝子を発現できるものであればいずれもが用いられ得る。このようなベクターDNAとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられる。また、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用され得る。このようなベクターは、作動可能に連結されたプロモーター(lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に用いられ得る。例えば、pET−23(+)(Novagen社製)等が好適に用いられ得る。
本明細書で用いる用語「制御因子」は、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。
本明細書で用いる用語「作動可能に連結」は、遺伝子が発現するように、DNAが、その発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントとが宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本発明のDNAを有するベクターを導入する宿主細胞としては、細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、大腸菌が特に好ましい。本発明のDNAは定法により宿主細胞に導入し得る。宿主細胞として大腸菌を用いた場合、例えば塩化カルシウム法により、本発明のDNAを導入することができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお。%は特に断らないかぎり重量%を表す。
(実施例1)Adh1の精製
培養以外のすべての操作は4℃で実施した。また、酵素活性(酸化活性)の測定は、100mMの2−プロパノール、1.0mMのNAD+、0.2mMの硫酸アンモニウム及び酵素液を含む20mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)1mlの反応液を30℃で1分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定することにより行ない、1分間に1μmolのNAD+をNADHに還元する酵素活性を1unitと定義した。以降の実施例2以降も、特にことわりのない場合は、この条件で活性を測定した。
ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp)TY−5を、リン酸水素二カリウム0.4%、リン酸ニ水素カリウム0.2%、塩化アンモニウム0.2%、硫酸マグネシウム7水和物0.02%、メタルソリューション1%(vol/vol)、2−プロパノール1%(vol/vol)、pH7.0からなる培地で30℃で振とう培養し、培養液10lを得た。なお、メタルソリューションとは、1l中に塩化カルシウム2水和物400mg、ホウ酸500mg、硫酸銅5水和物40mg、ヨウ化カリウム100mg、硫酸鉄7水和物200mg、硫酸マンガン4水和物400mg、硫酸亜鉛7水和物400mg、およびモリブデン酸二ナトリウム2水和物100mgを含む水溶液である。
培養液を遠心分離して菌体を集め、得られた菌体を500mlの20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)に懸濁し、Rannie社製圧力破砕機を用いて圧力80MPa下で菌体を破砕した。遠心分離により不溶物を除いた上清を無細胞抽出液とした。500mlの無細胞抽出液に40%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えて生じた不溶蛋白質を、遠心分離により取り除いた。
その上清565mlに対して80%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えて、生じた不溶蛋白質を遠心分離により回収した。回収した蛋白質を30%飽和した硫酸アンモニウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に再溶解し、1.2M硫酸アンモニウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)中の硫酸アンモニウム濃度が1.2Mから0Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い、活性画分を回収した。
活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析を行い、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したDEAE−トヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中の塩化カリウム濃度が0.2Mから0.5Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い、活性画分を回収した。活性画分を限外濾過により脱塩、濃縮し、0.1M塩化カリウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したSephacrylS−200カラムクロマトグラフィーによるゲル濾過に供した。溶出した活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析を行い、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したMonoQカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中の塩化カリウム濃度が0.1Mから0.5Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い、活性画分を回収した。この活性画分を精製酵素とした。以後、本酵素をAdh1と称する。
Adh1を0.1M塩化カリウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したSuperose12HRカラムクロマトグラフィーによるゲル濾過に供し、分子量標準蛋白質を用いて精製酵素の分子量を測定したところ、約67,000であった。また、Adh1をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、単一のバンドが見られた。また、分子量標準蛋白質との移動度の差から、その分子量は約35,000と算出された。従って、本菌の生産するAdh1は同一サブユニットからなる二量体であると考えられた。
(実施例2)Adh2の精製
培養以外のすべての操作は4℃で実施した。ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)TY−5を、実施例1に示した方法により培養した。培養液10lを遠心分離して菌体を集め、得られた菌体を500mlの20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)に懸濁し、Rannie社製圧力破砕機を用いて圧力80MPa下で菌体を破砕した。遠心分離により不溶物を除いた上清を無細胞抽出液とした。500mlの無細胞抽出液に40%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えて生じた不溶蛋白質を、遠心分離により取り除いた。その上清565mlに対して80%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えて、生じた不溶蛋白質を遠心分離により回収した。
回収した蛋白質を30%飽和した硫酸アンモニウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に再溶解し、1.2M硫酸アンモニウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)中の硫酸アンモニウム濃度が1.2Mから0Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い、活性画分を回収した。
活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析を行い、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したDEAE−トヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中の塩化カリウム濃度が0.2Mから0.5Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い、活性画分を回収した。
活性画分を限外濾過により脱塩、濃縮し、0.1M塩化カリウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したSephacrylS−200カラムクロマトグラフィーによるゲル濾過に供した。溶出した活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析を行い、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したMonoQカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中の塩化カリウム濃度が0.1Mから0.5Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行った。溶出した活性画分を70℃において20分間熱処理を行い、遠心分離により上清を得た。上清を精製酵素とした。以後、本酵素をAdh2と称する。
Adh2を0.1M塩化カリウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したSuperose12HRカラムクロマトグラフィーによるゲル濾過に供し、分子量標準蛋白質を用いて精製酵素の分子量を測定したところ、約72,000であった。また、Adh2をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、2本のバンドが見られた。この2本のバンドはN末端アミノ酸シーケンスにより同一の蛋白質であることが分かった。また、分子量標準蛋白質との移動度の差から、その分子量は約40,000と算出された。従って、本菌の生産すAdh2は同一サブユニットからなる二量体であると考えられた。
(実施例3)Adh3の精製
培養以外のすべての操作は4℃で実施した。ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)TY−5を、実施例1に示した方法により培養した。培養液10lを遠心分離して菌体を集め、得られた菌体を500mlの20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)に懸濁し、Rannie社製圧力破砕機を用いて圧力80MPa下で菌体を破砕した。遠心分離により不溶物を除いた上清を無細胞抽出液とした。500mlの無細胞抽出液に40%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えて生じた不溶蛋白質を、遠心分離により取り除いた。その上清565mlに対して80%飽和となるように硫酸アンモニウムを加えて、生じた不溶蛋白質を遠心分離により回収した。回収した蛋白質を30%飽和した硫酸アンモニウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に再溶解し、1.2M硫酸アンモニウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したブチルトヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)中の硫酸アンモニウム濃度が1.2Mから0Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い活性画分を回収した。
活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析を行い、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したDEAE−トヨパールカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中の塩化カリウム濃度が0.2Mから0.5Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い活性画分を回収した。
活性画分を限外濾過により脱塩、濃縮し、0.1M塩化カリウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したSephacrylS−200カラムクロマトグラフィーによるゲル濾過に供した。溶出した活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)に対して透析を行い、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したMonoQカラムクロマトグラフィーに供した。溶出は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)中の塩化カリウム濃度が0.1Mから0.5Mまでになるようにしたリニアグラジエントにて行い活性画分を回収した。溶出した活性画分を60℃において20分間熱処理を行い、遠心分離により上清を得た。上清を精製酵素とした。以後、本酵素をAdh3と称する。
Adh3を0.1M塩化カリウムを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)により平衡化したSuperose12HRカラムクロマトグラフィーによるゲル濾過に供し、分子量標準蛋白質を用いて精製酵素の分子量を測定したところ、約100,000であった。また、Adh3をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、単一のバンドが見られた。また、分子量標準蛋白質との移動度の差から、その分子量は約58,000と算出された。従って、本菌の生産するAdh3は同一サブユニットからなる二量体であると考えられた。
(実施例4)基質特異性
100mMの各種基質、10mMNAD+、0.2Mの硫酸アンモニウム及び酵素液を含む20mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)1mlの反応液を30℃で1分間反応させ、その間の340nmの吸光度の増加を測定して酵素の酸化活性を測定した。
また、100mMの各種基質、0.25mMのNADH、0.2Mの硫酸アンモニウムおよび酵素液を含む20mMの酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.0)の反応液を、30℃で1分間反応させ、その間の340nmの吸光度の減少を測定して酵素の還元活性を測定した。
各種基質に対する酸化活性、還元活性を、2−プロパノールに対する酸化活性を100とした相対活性で表し、結果を表1にまとめた。
Figure 2005102511
(実施例5)要求する補酵素
実施例1に示した酵素活性測定条件で、NAD+をNADP+に変えて酸化活性を測定したところ、NADP+による酵素反応は認められなかった。
(実施例6)pHの影響
実施例1に示した酵素活性測定条件で、緩衝液のpHを変化させることにより酸化反応の至適pHを求めた。また、100mMのアセトン、0.25mMのNADH、0.2Mの硫酸アンモニウム及び酵素液を含む種々のpHの緩衝液1mlの反応液を30℃で1分間反応させ、その間の340nmの吸光度の減少を測定することにより還元反応の至適pHを求めた。酸化反応時の至適pHは、Adh1でpH10、Adh2でpH10、Adh3でpH10、また、還元反応時の至適pHは、Adh1でpH6、Adh2でpH4、Adh3でpH5.5であった。
(実施例7)温度の影響
実施例1に示した酵素活性測定条件で、反応温度を変化させることにより酸化反応の至適温度を求めた。その結果、Adh1で30℃、Adh2で75℃、Adh3で60℃であった。
(実施例8)N末端アミノ酸配列の解析
実施例1〜3で得た各精製酵素標品のN末端アミノ酸配列を、フェニルチオヒダントインを用いるアミノ酸分析装置を装着したプロテインシークエンサーを用いて決定したところ、Adh1のそれは、MRAVQVVGYHDKLQLNEIPD、Adh2のそれは、MKALVFHGPGQKAWEDVPDP、Adh3のそれは、TVYAKPGTEGSVMSFESRYDであった。
(実施例9)Adh1をコードする遺伝子のクローニング
実施例8に示したAdh1のN末端アミノ酸配列解析の結果、Adh1はプロパンモノオキシゲナーゼクラスター下流に位置するアルコール脱水素酵素遺伝子のコードする蛋白質であることが明らかとなった。当該アルコール脱水素酵素遺伝子(以降、adh1遺伝子と称する)は、プロパンモノオキシゲナーゼクラスターをコロニーハイブリダイゼイションによりクローニングした際に同時にクローニングした遺伝子である。
(染色体DNAの取得)
ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)TY−5の菌体から、Biorad社製Aquapure Genomic DNA Kitを用い、そのプロトコールに従って染色体DNAを抽出した。
(adh1遺伝子を含む組換えベクターの作製)
大腸菌においてadh1遺伝子を発現させるために、形質転換に用いる組換えベクターを作製した。まず、adh1の構造遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加し、かつ終始コドンの直後にSmaI部位を付加した二本鎖DNAを以下の方法により取得した。adh1遺伝子の塩基配列に基づき、adh1の構造遺伝子の開始コドン部分にNdeII部位(下線部)を付加したプライマー1(配列表の配列番号3)とadh1の構造遺伝子の終始コドン下流にSmaI部位(下線部)付加したプライマー2(配列表の配列番号4)とを合成した。
上記のプライマー2種(プライマー1及びプライマー2)各12.5pmol、染色体DNA250ng、dNTP各5nmol、ExTaq(宝酒造社製)0.5Uを含むExTaq用緩衝液25μlを調製し、熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、15分)を25サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。この増幅断片をNdeII及びSmaIで消化し、プラスミドpET−23a(+)(Novagen社製)のT7プロモーターの下流のNdeI、HincII部位に挿入することにより、組換えベクターpET−adh1を得た。
(組換え大腸菌の作製)
上記で得た組換えベクターpET−adh1を用いて大腸菌Rosetta(DE3)(Novagen社製)を形質転換し、組換え大腸菌Rosetta(DE3)(pET−adh1)を得た。本組換え大腸菌は、平成15年9月26日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−19537として寄託されている。
(組換え大腸菌におけるadh1遺伝子の発現)
上記で得た組換え大腸菌Rosetta(DE3)(pET−adh1)を、バクト・トリプトン1.6%、バクト・イーストエキス1.0%、塩化ナトリウム0.5%、pH7.0)からなる2xYT培地で、37℃で10時間培養し、集菌後、20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.8)に懸濁し、0.1mmのビーズ破砕により無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液のAdh1活性を実施例1に示した方法により測定した。ベクタープラスミドのみの形質転換体である大腸菌Rosetta(DE)(pET−23a)では活性が認められなかったのに対し、大腸菌Rosetta(DE)(pET−adh1)では、比活性が0.217units/mgであった。
(実施例10)Adh2をコードする遺伝子のクローニング
(染色体DNAの取得)
実施例9と同様に、ゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)TY−5の菌体から染色体DNAを抽出した。
(Adh2をコードする遺伝子のPCR法によるクローニング)
実施例8で決定したAdh2のN末端アミノ酸配列から予想されるDNA配列を考慮し、2種類のPCRプライマー(プライマー3:配列表の配列番号7およびプライマー4:配列表の配列番号8)を合成した。プライマー2種(プライマー3及びプライマ4)各25pmol、染色体DNA250ng、dNTP各5nmol、ExTaq(宝酒造社製)0.5Uを含むExTaq用緩衝液25μlを調製し、熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、15分)を25サイクル行い、4℃で冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。
(PCR法により増幅したDNA断片のサブクローニング)
増幅DNAをpGEM−T Easy(Promega社製)にサブクローニングし、その塩基配列を決定した。その結果、増幅DNAはプライマー配列を含めて753塩基からなっていた。以後この配列を「コア配列」と記す。
(逆PCR法によるコア配列周辺配列のクローニング)
コア配列の5’側に近い部分の相補配列(プライマー5:配列表の配列番号9および3’側に近い部分の配列(プライマー6:配列表の配列番号10)を作製した。
逆PCRの鋳型として、染色体DNAを制限酵素SacIIにより消化し、消化物をT4DNAリガーゼを用いて自己閉環した。この自己閉環物250ng、プライマー2種(プライマー5及びプライマー6)各12.5pmol、dNTP各5nmol、ExTaq(宝酒造社製)0.5Uを含むExTaq用緩衝液25mlを調製し、熱変性熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、5分)をサイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。
増幅DNAをpGEM−T Easy(Promega社製)にサブクローニングし、その塩基配列を決定した。この結果とコア配列の結果より、Adh2をコードするDNA(以降、adh2遺伝子と称する)の全塩基配列を決定した。
(adh2遺伝子を含む組換えベクターの作製)
実施例9と同様に、プラスミドpET−23a(+)(Novagen社製)のT7プロモーター下流のNdeI、BamHI部位に、adh2遺伝子を挿入することにより、組換えベクターpET−adh2を得た。
(組換え大腸菌の作製)
上記で得た組換えベクターpET−adh2を用いて大腸菌Rosetta(DE3)(Novagen社製)を形質転換し、組換え大腸菌Rosetta(DE3)(pET−adh2)を得た。本組換え大腸菌は、平成15年9月26日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−19538として寄託されている。
(組換え大腸菌におけるadh2遺伝子の発現)
上記で得た組換え大腸菌Rosetta(DE3)(pET−adh2)を、終濃度50μg/mlのアンピシリンおよび終濃度34μg/mlのクロラムフェニコールを含む実施例11に記載の2xYT培地で、37℃で一夜培養した。これを同培地組成からなる培地に植菌後、610nmにおける濁度が0.8−1.0に達した時点で、IPTGを終濃度が5mMとなるように添加し、さらに5時間培養した。培養後、実施例10に記載の方法により無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液のAdh2活性を実施例1に示した方法により測定した。ベクタープラスミドのみの形質転換体である大腸菌Rosetta(DE)(pET−23a)では活性が認められなかったのに対し、大腸菌Rosetta(DE)(pET−adh2)では、比活性が6.30munits/mgであった。また、SDS−ポリアクリルアミノゲル電気泳動に供したところ、目的蛋白質に相当する蛋白質の過剰発現が認められた。
(実施例11)Adh3をコードする遺伝子のクローニング
(染色体DNAの取得)
実施例9と同様に、ゴルドニア・スピーシーズ TY−5(Gordonia sp.TY−5)の菌体から染色体DNAを抽出した。
(Adh3をコードする遺伝子のPCR法によるクローニング)
実施例8で決定したAdh3のN末端アミノ酸配列から予想されるDNA配列を考慮し、2種類のPCRプライマー(プライマー7:配列表の配列番号13およびプライマー8:配列表の配列番号14)を合成した。プライマー2種(プライマー7及びプライマー8)各25pmol、染色体DNA250ng、dNTP各5nmol、ExTaq(宝酒造社製)0.5Uを含むExTaq用緩衝液25mlを調製し、熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、2分)を25サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。
(PCR法により増幅したDNA断片のサブクローニング)
増幅DNAをpGEM−T Easy(Promega社製)にサブクローニングし、その塩基配列を決定した。その結果、増幅DNAはプライマー配列を含めて1413塩基からなっていた。以後この配列を「コア配列」と記す。
(逆PCR法によるコア配列周辺配列のクローニング)
コア配列の5’側に近い部分の相補配列(プライマー9:配列表の配列番号15および3’側に近い部分の配列(プライマー10:配列表の配列番号16)を作製した。
逆PCRの鋳型として、染色体DNAを制限酵素BglIIにより消化し、消化物をT4DNAリガーゼを用いて自己閉環した。この自己閉環物250ng、プライマー2種(プライマー9及びプライマー10)各12.5pmol、dNTP各5nmol、ExTaq(宝酒造社製)0.5Uを含むExTaq用緩衝液25mlを調製し、熱変性熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、5分)を25サイクル行い、4℃まで冷却後、アガロースゲル電気泳動により増幅DNAを確認した。
増幅DNAをpGEM−T Easy(Promega社製)にサブクローニングし、その塩基配列を決定した。この結果とコア配列の結果より、Adh3をコードするDNA(以降、adh3遺伝子と称する)の全塩基配列を決定した。
(adh3遺伝子を含む組換えベクターの作製)
実施例9と同様に、プラスミドpET−23a(+)(Novagen社製)のT7プロモーター下流のNdeI、BamHI部位に、adh2遺伝子を挿入することにより、組換えベクターpET−adh3を得た。
(組換え大腸菌の作製)
上記で得た組換えベクターpET−adh3を用いて大腸菌Rosetta(DE3)(Novagen社製)を形質転換し、組換え大腸菌Rosetta(DE3)(pET−adh3)を得た。本組換え大腸菌は、平成15年9月26日に独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、寄託番号FERM P−19539として寄託されている。
(組換え大腸菌におけるadh3遺伝子の発現)
上記で得た組換え大腸菌Rosetta(DE3)(pET−adh3)を、実施例11に記載の方法で培養した。培養後、実施例10に記載の方法により無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液のAdh3活性をを実施例1に示した方法により測定した。ベクタープラスミドのみの形質転換体である大腸菌Rosetta(DE)(pET−23a)では活性が認められなかったのに対し、大腸菌Rosetta(DE)(pET−adh3)では、比活性が14.3munits/mgであった。また、SDS−ポリアクリルアミノゲル電気泳動に供したところ、目的蛋白質に相当する蛋白質の過剰発現が認められた。
組換えプラスミドpET−adh2およびpET−adh3の構造を示す。

Claims (33)

  1. 次の理化学的性質を有する2級アルコール脱水素酵素:
    (1)作用:NAD+を補酵素として、2−プロパノールを酸化してアセトンを生成する、
    (2)分子量:ゲル濾過法により67,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により36,000、
    (3)至適温度:2−プロパノールの酸化時30℃。
  2. さらに以下の理化学的性質を有する請求項1記載の2級アルコール脱水素酵素:
    (4)至適pH:2−プロパノールの酸化反応時pH10、アセトンの還元反応時pH6、
    (5)基質特異性:2−ブタノールの(S)体を優先的に酸化して2−プロパノンを生成する、および、エタノールの酸化活性を有する、
    (6)Km値:2−プロパノールに対するKm値が4.4mM、
    (7)N末端アミノ酸配列:MRAVQVVGYHDKLQLNEIPD。
  3. ゴルドニア属に属する微生物由来である請求項1または2記載の2級アルコール脱水素酵素。
  4. ゴルドニア属に属する微生物が、ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5(FERM P−19540)である請求項1〜3のいずれかに記載の2級アルコール脱水素酵素。
  5. ゴルドニア属に属し、請求項1記載の2級アルコール脱水素酵素を産生する微生物を培養し、培養物から該酵素を取得することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
  6. ゴルドニア属に属する微生物が、ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5(FERM P−19540)である請求項5記載の製造方法。
  7. 以下の(A)又は(B)のポリペプチド:
    (A)配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (B)配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ2級アルコール脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
  8. 以下の(a)又は(b)のDNA:
    (a)配列番号2で示される塩基配列からなるDNA、
    (b)配列番号2で示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつ、2級アルコール脱水素酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  9. 請求項8記載のDNAを含有する組換えベクター。
  10. 請求項9記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  11. 請求項10記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物から2級アルコール脱水素酵素を採取することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
  12. 次の理化学的性質を有する2級アルコール脱水素酵素:
    (8)作用:NAD+を補酵素として、2−プロパノールを酸化してアセトンを生成する、
    (9)分子量:ゲル濾過法により72,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により37,000、
    (10)至適温度:2−プロパノールの酸化時75℃。
  13. さらに以下の理化学的性質を有する請求項12記載の2級アルコール脱水素酵素:
    (11)至適pH:2−プロパノールの酸化反応時pH10、アセトンの還元反応時pH4、
    (12)基質特異性:1,2−プロパンジオールの(R)体を優先的に酸化してアセトールを生成する、および、エタノールの酸化活性を有する、
    (13)Km値:2−プロパノールに対するKm値が0.024mM、
    (14)N末端アミノ酸配列:MKALVFHGPGQKAWEDVPDP。
  14. ゴルドニア属に属する微生物由来である請求項12または13記載の2級アルコール脱水素酵素。
  15. ゴルドニア属に属する微生物が、ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5(FERM P−19540)である請求項14記載の2級アルコール脱水素酵素。
  16. ゴルドニア属に属し、請求項12記載の2級アルコール脱水素酵素を産生する微生物を培養し、培養物から該酵素を取得することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
  17. ゴルドニア属に属する微生物が、ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5(FERM P−19540)である請求項16記載の製造方法。
  18. 以下の(C)又は(D)のポリペプチド:
    (C)配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (D)配列番号5で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ2級アルコール脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
  19. 以下の(c)又は(d)のDNA:
    (c)配列番号6で示される塩基配列からなるDNA、
    (d)配列番号6で示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつ、2級アルコール脱水素酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  20. 請求項19記載のDNAを含有する組換えベクター。
  21. 請求項20記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  22. 請求項21記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物からアルコール脱水素酵素を採取することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
  23. 次の理化学的性質を有する2級アルコール脱水素酵素:
    (15)作用:NAD+を補酵素として、2−プロパノールを酸化してアセトンを生成する、
    (16)分子量:ゲル濾過法により100,000、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により55,000、
    (17)至適温度:2−プロパノールの酸化時60℃。
  24. さらに以下の理化学的性質を有する請求項24記載のアルコール脱水素酵素:
    (18)至適pH:2−プロパノールの酸化反応時pH10、アセトンの還元反応時pH5.5、
    (19)基質特異性:2−ヘプタノールの酸化活性、および、2−オクタノールの酸化活性を有する、
    (20)Km値:2−プロパノールに対するKm値が4.3mM、
    (21)N末端アミノ酸配列:TVYAKPGTEGSVMSFESRYD。
  25. ゴルドニア属に属する微生物由来である請求項23または24記載の2級アルコール脱水素酵素。
  26. ゴルドニア属に属する微生物がゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5(FERM P−19540)である請求項25記載のアルコール脱水素酵素。
  27. ゴルドニア属に属し、請求項23記載の2級アルコール脱水素酵素を産生する微生物を培養し、培養物から該酵素を取得することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。
  28. ゴルドニア属に属する微生物が、ゴルドニア・エスピー(Gordonia sp.)TY−5(FERM P−19540)である請求項27記載の製造方法。
  29. 以下の(E)又は(F)のポリペプチド:
    (E)配列番号11で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (F)配列番号11で示されるアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ2級アルコール脱水素酵素活性を有するポリペプチド。
  30. 以下の(e)又は(f)のDNA:
    (e)配列番号12で示される塩基配列からなるDNA、
    (f)配列番号12で示される塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入もしくは付加された塩基配列からなり、かつ、2級アルコール脱水素酵素活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  31. 請求項30記載のDNAを含有する組換えベクター。
  32. 請求項31記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  33. 請求項32記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物からアルコール脱水素酵素を採取することを特徴とする2級アルコール脱水素酵素の製造方法。

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