JP4796323B2 - 新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、およびその利用法 - Google Patents

新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、およびその利用法 Download PDF

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Description

本発明は、式(1):
Figure 0004796323
で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、式(2):
Figure 0004796323
で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチド(カルボニル還元酵素)、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAを含むベクター、および該ベクターで形質転換された形質転換体に関する。
本発明はまた、該ポリペプチド、又は、該形質転換体を用いた、光学活性アルコール類、とりわけ前記式(2)で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの製造法に関する。(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルは、医薬品の中間体として有用な化合物である。
(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルをはじめとする3−ヒドロキシプロピオン酸エステル誘導体の製造法としては、1)パン酵母を用いて2−ホルミルへキサン酸エチルなどの2−ホルミル酢酸エステル誘導体を還元することにより、目的物を得る方法(非特許文献1)、2)パン酵母から単離した還元酵素(L−1酵素)を用いて2−ホルミルへキサン酸エチルなどの2−ホルミル酢酸エステル誘導体を還元することにより、目的物を得る方法(非特許文献2)、3)2−ホルミル酢酸エステル誘導体を還元する能力を有する酵素源を用いて還元することにより、目的物を得る方法(特許文献1)等が知られている。
しかし、上記方法のうち、1)については、高い光学純度の生成物を得るためにはパン酵母を熱および添加物により処理する必要があり、操作が煩雑で、かつ、反応収率も低い。2)については、反応収率が低く、特に、2−ホルミルヘキサン酸エチルに対する反応性が極めて低い。3)についても、反応収率、および生成物の光学純度が共に高くなるような反応条件は見出されていない。またいずれの方法も、使用される酵素の基質特異性の点で、他の光学活性アルコールの生産に使用できる汎用性のある製造方法とはいえない。
このようにいずれの方法も効率的な製造方法とは言い難く、工業的製法としては大きな課題を有している。
Bull.Chem.Soc.Jpn.,67,2244(1994) Bull.Chem.Soc.Jpn.,67,524(1994) WO 2004/052829
上記に鑑み、本発明は、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの製造において有用なポリペプチド、該ポリペプチドをコードするDNA、該DNAを含むベクター、および該ベクターで形質転換された形質転換体を提供することを課題とする。
また、本発明は、該ポリペプチド、または、該形質転換体を用いた、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを始めとする種々の光学活性アルコールの効率的な製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元し、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有する微生物より、該活性を有するポリペプチドを単離した。さらに、該ポリペプチドをコードするDNAを単離し、これを利用して、該ポリペプチドを高生産する形質転換体を創製することに成功した。そして、該ポリペプチドまたは該形質転換体を利用することにより、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを始めとする種々の有用な光学活性アルコールを効率良く製造することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドである。また、本発明は、該ポリペプチドをコードするDNAである。また、本発明は、該DNAを含むベクターである。また、本発明は、該ベクターを含む形質転換体である。さらに、本発明は、該ポリペプチドまたは該形質転換体を用いた、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを始めとする光学活性アルコール類の製造方法である。
本発明により、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを始めとする、有用な光学活性アルコール類の実用的な製造方法が提供される。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において記述されている、DNAの単離、ベクターの調製、形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)等の成書に記載されている方法により実施できる。また、本明細書の記述に用いられる%は、特に断りのない限り、%(w/v)を意味する。
本発明のポリペプチドは、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元し、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドであり、後述するようなアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元し、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有する微生物から単離することが出来る。当該活性を有する微生物は、例えば、各種の微生物の培養物、又はその処理物と2−ホルミルへキサン酸エチルを接触させ、生成した2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの光学純度を測定することにより見出すことが出来る。ここでいう「微生物の培養物」とは、菌体を含む培養液あるいは培養菌体を意味し、「その処理物」とは、例えば、粗抽出液、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、菌体の破砕物等を意味する。さらにそれらは、酵素自体あるいは菌体のまま公知の手段で固定化したものであってもよい。固定化は、当業者に周知の方法(例えば、架橋法、物理的吸着法、包括法等)で行うことができる。また、上記反応において生成した、2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの光学純度の測定は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(カラム:Cyclodex−β(φ0.25mm×60m;J&W Scientific社製)、カラム温度:110℃、キャリアガス:ヘリウム(300kPa)、検出:FID)を用いて実施できる。
本発明のポリペプチドの起源となる微生物は、上述した如く、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元し、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するものであれば特に限定されないが、例えばオガタエア(Ogataea)属に属する酵母が挙げられ、特に好ましいものとしてはオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株を挙げることができる。当該微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC:〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)より入手することができる。
本発明のポリペプチドの起源となる微生物を培養するための培地としては、その微生物が増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いることができる。
本発明のポリペプチドの起源となる微生物からの該ポリペプチドの単離は、通常公知の蛋白質精製法を適当に組み合わせて用いることにより実施できる。例えば、以下のように実施できる。まず、当該微生物を適当な培地で培養し、培養液から遠心分離、あるいは、濾過により菌体を集める。得られた菌体を、超音波破砕機、あるいは、グラスビーズ等を用いた物理的手法で破砕した後、遠心分離にて菌体残さを除き、無細胞抽出液を得る。そして、塩析(硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(アセトンまたはエタノールなどによる蛋白質分画沈殿法)、透析、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾過等の手法を単独で、または組み合わせて用いることにより、該無細胞抽出液から本発明のポリペプチドを単離する。
単離されたポリペプチドの2−ホルミルへキサン酸エチルを還元する活性は、例えば、0.33%(v/v)のジメチルスルホキシドを含む100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、1.0mMの基質2−ホルミルへキサン酸エチル、2.0mMの補酵素NADPH、および粗酵素を添加し、30℃で1分間反応させた際の、波長340nmにおける吸光度の減少速度から算出できる。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPHをNADPに酸化する活性を1unitと定義する。
本発明のDNAは、上述の本発明のポリペプチドをコードするDNAであり、後述する方法に従って導入された宿主細胞内で該ポリペプチドを発現し得るものであればいかなるものでもよく、任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。該ポリペプチドが取得できれば、該ポリペプチドの起源となる微生物より、当業者であれば公知の方法で、このようなDNAを取得できる。例えば、以下に示した方法で取得できる。
単離された本発明のポリペプチドを適当なエンドペプチダーゼを用いて消化し、生じたペプチド断片を逆相HPLCにより分取する。そして、例えば、ABI492型プロテインシークエンサー(Applied Biosystems社製)により、これらのペプチド断片のアミノ酸配列の一部または全部を決定する。
上述のようにして得られた本発明のポリペプチドのアミノ酸配列情報をもとにして、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅するためのPCR(Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成する。次に、通常のDNA単離法、例えば、Visser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))により、該ポリペプチドの起源となる微生物の染色体DNAを調製する。この染色体DNAを鋳型として、先述のPCRプライマーを用いてPCRを行い、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅し、その塩基配列を決定する。塩基配列の決定は、例えば、 ABI373A型 DNA Sequencer(Applied Biosystems社製)等を用いて行うことができる。
該ポリペプチドをコードするDNAの一部の塩基配列が明らかになれば、例えば、i−PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988) )によりその全体の配列を決定することができる。
このようにして得られる本発明のDNAの例としては、オガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株由来のポリペプチドの情報を元にして配列が決定された配列表の配列番号1に示す塩基配列を含むDNAを挙げることができる。また、配列表の配列番号1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元し、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAも本発明のDNAに包含される。
配列表の配列番号1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を実施した際、配列表の配列番号1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAが、特異的にハイブリッドを形成するDNAを言う。
ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、75mMクエン酸三ナトリウム、750mM塩化ナトリウム、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、および、0.1%Ficoll 400(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)の組成からなる水溶液中、65℃でハイブリダイズさせた後に、15mMクエン酸三ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成からなる水溶液を用いて、60℃で洗浄が行われる条件を言う。好ましくは、上記条件でハイブリダイズさせた後に、15mMクエン酸三ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成からなる水溶液を用いて、65℃で洗浄が行われる条件であり、より好ましくは、1.5mMクエン酸三ナトリウム、15mM塩化ナトリウム、および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成からなる水溶液を用いて、65℃で洗浄が行われる条件である。
本発明のポリペプチドとして、具体的には、オガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株から単離された、配列表の配列番号1に示す塩基配列によってコードされる、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドが好ましい例として挙げられる。配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドは、公知の酵素(L−1)と比較して分子量が異なり、新規の酵素である(実施例2参照)。
また、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと一定値以上の相同性を有し、かつ、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元し、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドは、当該ポリペプチドと機能的に同等であり、本発明に含まれる。
ここで配列の相同性は、例えば、相同性検索プログラムFASTA(W.R. Pearson & D.J. Lipman P.N.A.S. (1988) 85:2444-2448)を用いて2つのアミノ酸配列を比較解析した場合に、配列全体に対するIdentityの値で表される。配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等なポリペプチドとしては、当該ポリペプチドとの相同性が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であるポリペプチドを挙げることができる。
このようなポリペプチドは、例えば、先述の、配列表の配列番号1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを、適当なベクターに連結した後、適当な宿主細胞に導入して発現させることにより得られる。また、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)等に記載の公知の方法に従い、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドに、アミノ酸の置換、挿入、欠失または付加を生じさせることによっても取得できる。
本発明のDNAを宿主微生物内に導入し、導入された宿主微生物内で発現させるために用いられるベクターは、適当な宿主微生物内で当該DNAがコードする遺伝子を発現できるものであれば、特に限定されない。このようなベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられ、さらに、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用できる。
このようなベクターは、通常、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に使用できる。例えば、pUCNT(WO94/03613)が好適に使用できる。
ここで用いる用語「制御因子」は、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。
ここで用いる用語「作動可能に連結」は、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本発明の発現ベクターの例としては、公知のプラスミドpUCNTに、配列番号1に示すDNAを導入した、pNTOF(実施例5)を挙げることができる。
本発明のDNAを含むベクターを導入する宿主細胞としては、細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、導入及び発現効率から細菌が好ましく、大腸菌が特に好ましい。本発明のDNAを含むベクターは、公知の方法により宿主細胞に導入できる。宿主細胞として大腸菌を用いる場合、例えば、市販のE.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を用いることにより、当該ベクターを宿主細胞に導入できる。
本発明の形質転換体の例としては、前述のプラスミドpNTOFを導入したE.coli HB101(pNTOF)が挙げられる。この形質転換体は、FERM BP−10230の受託番号で、2005年2月9日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に寄託されている。
本発明においては、本発明のポリペプチドを、カルボニル基を有する化合物と、NADPH等の補酵素の存在下、接触させて反応させることにより、当該カルボニル基を有する化合物を不斉的に還元し、光学活性アルコール類を製造することができる。この時、当該反応の進行に伴い、NADPH等の補酵素は酸化型に変換される。しかし、この酸化型の補酵素を還元型に変換する能力(以後、補酵素再生能と呼ぶ)を有するポリペプチド、および、当該ポリペプチドの基質となる化合物を、本発明のポリペプチドと共存させて当該反応を行うことにより、高価な補酵素の使用量を大幅に削減できる。補酵素再生能を有するポリペプチドとしては、例えば、ヒドロゲナーゼ、ギ酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素およびグルコース脱水素酵素などを使用できる。好適には、グルコース脱水素酵素が使用される。上記本発明のポリペプチド及び補酵素再生能を有するポリペプチドは、そのまま用いても良いし、公知の手段で固定化したものであってもよい。
また、本発明のポリペプチドのかわりに、該ポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体を使用しても、同様に光学活性アルコール類を製造することができる。また、本発明のポリペプチドをコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体を使用しても、同様に光学活性アルコール類を製造することができる。とりわけ、本発明のポリペプチドをコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体を使用した場合には、補酵素を再生するための酵素を別途調製・添加する必要がなく、光学活性アルコール類の製造をより効率良く行うことができる。
なお、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体、若しくは、本発明のポリペプチドをコードするDNAおよび補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体は、菌体を含む培養液や培養菌体は言うまでもなく、その処理物としても光学活性アルコール類の製造に使用することができる。ここで言う「形質転換体の処理物」とは、例えば、界面活性剤や有機溶媒で処理した細胞、乾燥細胞、破砕処理した細胞、細胞の粗抽出液等のほか、公知の手段でそれらを固定化したものを意味する。
本発明のポリペプチドをコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体は、本発明のポリペプチドをコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を、同一のベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られるほか、これら2種のDNAを不和合性グループの異なる2種のベクターにそれぞれ組み込み、それら2種のベクターを同一の宿主細胞に導入することによっても得られる。
本発明のポリペプチドをコードするDNA及び補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者が組込まれたベクターの例としては、前記発現ベクターpNTOFにバシラス・メガテリウム由来のグルコース脱水素酵素遺伝子を導入した、pNTOFG1(実施例6)が挙げられる。また、本発明のポリペプチドをコードするDNA、および、補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体の例としては、当該ベクターでE.coli HB101を形質転換して得られる、E.coli HB101(pNTOFG1)が挙げられる。この形質転換体は、FERM BP−10231の受託番号で、2005年2月9日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に寄託されている。
本発明のポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体の培養や本発明のポリペプチドをコードするDNAと補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者を含む形質転換体の培養は、それらが増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いて実施できる。
形質転換体中の本発明のポリペプチドの還元活性は、前述の単離されたポリペプチドの活性測定方法と同様にして算出することが出来る。また、形質転換体中の補酵素再生能を有するポリペプチドの活性は、常法により測定することができる。例えば、グルコース脱水素酵素の活性は、1Mのトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、100mMのグルコース、2mMの補酵素NADPまたはNAD、および酵素を添加し、25℃で1分間反応させた際の、波長340nmにおける吸光度の増加速度から算出できる。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPまたはNADを、NADPHまたはNADHに還元する活性を1unitと定義する。
本発明のポリペプチド、又は、該ポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体いずれかを用いた光学活性アルコール類の製造は、適当な溶媒中に、基質となるカルボニル基を有する化合物、NADPH等の補酵素、及び、本発明のポリペプチド又は該ポリペプチドをコードするDNAを含む形質転換体を添加し、pH調整下、攪拌することにより実施できる。
一方、本発明のポリペプチドと補酵素再生能を有するポリペプチドを組み合わせて反応を行う場合は、上記反応組成に、補酵素再生能を有するポリペプチド(例えば、グルコース脱水素酵素)と、その基質となる化合物(例えば、グルコース)をさらに添加する。なお、本発明のポリペプチドをコードするDNAと補酵素再生能を有するポリペプチド(例えば、グルコース脱水素酵素)をコードするDNAの両者を含む形質転換体、または、その処理物を用いる場合は、補酵素再生能を有するポリペプチド(例えば、グルコース脱水素酵素)を別途添加する必要はない。
反応には水系溶媒を用いてもよいし、水系と有機系の溶媒を混合して用いてもよい。有機系溶媒としては、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ヘキサン、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテル、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。反応は10℃〜70℃の温度で行われ、反応液のpHは4〜10に維持する。反応は、バッチ方式あるいは連続方式で実施できる。バッチ方式の場合、反応基質は0.1%から70%(w/v)の仕込み濃度で添加される。
本発明の還元反応の基質となるカルボニル基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(3):
Figure 0004796323
(式中、R1は置換基を有していても良い炭素数2〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数5〜15のアラルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数5〜15のアリール基を表す。R2は置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数5〜15のアラルキル基を表す。)で表される2−ホルミル酢酸エステル誘導体が挙げられる。さらに、好ましくは、上記2−ホルミル酢酸誘導体のうち、R1が置換基を有していても良い炭素数2〜10のアルキル基であり、かつ、R2が置換基を有していても良い炭素数1〜10のアルキル基である2−ホルミル酢酸誘導体が挙げられ、より好ましくは、下記式(1):
Figure 0004796323
で表される2−ホルミルへキサン酸エチルが挙げられるが、上述の反応条件において還元され、光学活性アルコールに変換されるものであれば、特に限定されない。
上述の反応条件において、前記一般式(3)で表される2−ホルミル酢酸エステル誘導体を基質とした場合、下記一般式(4):
Figure 0004796323
(式中、R1およびR2は前記と同じ。)で表される(R)−3−ヒドロキシプロピオン酸エステル誘導体が得られる。前記式(1)で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを基質とした場合、下記式(2):
Figure 0004796323
で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルが得られる。
反応で生じた光学活性アルコール類は、常法により精製できる。例えば、反応で生じた光学活性アルコール類を含む反応液を、酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出し、有機溶媒を減圧下で留去した後、蒸留、再結晶、または、クロマトグラフィー等の処理を行うことにより、精製できる。
2−ホルミルへキサン酸エチル、および、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの定量は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(カラム:HP−5(crosslinked 5% PHME Silicone)(φ0.32mm×30m;Agilent Technologies社製)、カラム温度:120℃、キャリアガス:ヘリウム(125kPa)、検出:FID)を用いて行うことができる。さらに、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの光学純度の測定は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(カラム:Cyclodex−β(φ0.25mm×60m;J&W Scientific社製)、カラム温度:110℃、キャリアガス:ヘリウム(300kPa)、検出:FID)を用いて行うことができる。
以上のように、本発明に従えば、本発明のポリペフチドの効率的生産が可能であり、それを利用することにより、(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを始めとする、有用な光学活性アルコール類の優れた製造法が提供される。
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例において用いた組み換えDNA技術に関する詳細な操作方法などは、次の成書に記載されている:
Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、
Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)。
(実施例1)ポリペプチドの精製
以下の方法に従って、オガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株より、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドを分離し、単一に精製した。特に断りのない限り、精製操作は4℃で行った。
2−ホルミルへキサン酸エチルに対する還元活性は、0.33%(v/v)のジメチルスルホキシドを含む100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、基質2−ホルミルへキサン酸エチルを終濃度1.0mM、補酵素NADPHを終濃度2.0mMとなるよう溶解し、さらに粗酵素液を添加して30℃で1分間反応を行った際の、当該反応液の波長340nmにおける吸光度の減少速度から算出した。本反応条件において、1分間に1μmolのNADPHをNADPに酸化する活性を、1unitと定義した。
(微生物の培養)
500ml容坂口フラスコに、グルコース5%、ペプトン1%、酵母エキス1%、アデカノールLG−109(日本油脂製)1滴からなる液体培地30mlを調製し、120℃で20分間蒸気殺菌をおこなった。この培地に、予め同培地にて前培養しておいたオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の培養液300μlを無菌的に接種し、30℃で72時間振とう培養した。
(無細胞抽出液の調整)
上記の培養方法で得られた培養液1200mlについて、遠心分離により菌体を集め、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて菌体を洗浄した。この菌体を、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、BEAD−BEATER model 1107900(Biospec Product,INC.製)で破砕した後、破砕物から遠心分離にて菌体残渣を除き、無細胞抽出液80mlを得た。
(DEAE−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィー)
上記で得られた無細胞抽出液80mlを10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で1夜透析し、10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したDEAE−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラム(95ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、NaClのリニアグラジエント(0Mから0.5Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、終濃度が1.5Mとなるよう硫酸アンモニウムを溶解し、1.5Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて1夜透析を行った。
(Phenyl−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィー)
DEAE−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分を、1.5Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したPhenyl−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラム(45ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウムのリニアグラジエント(1.5Mから0Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて1夜透析を行った。
(2’,5’−ADP sepharoseカラムクロマトグラフィー)
Phenyl−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分を、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で予め平衡化した2’,5’−ADP sepharose(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)カラム(20ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、NaClのリニアグラジエント(0Mから1Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて1夜透析を行い、ポリペプチドの精製標品を得た。
(実施例2)ポリペプチドの諸性質
実施例1で調製した精製ポリペプチドの酵素化学的性質について調べた。
(1)作用
NADPHを補酵素として、2−ホルミルへキサン酸エチルに作用して、光学純度99%e.e.の(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルへ還元した。
(2)分子量
溶離液として200mMの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い、Superdex 200HR10/30(Pharmacia Biotech社製)による精製ポリペプチドのゲル濾過クロマトグラフィー分析を行った結果、標準タンパク質との相対保持時間から算出した分子量は約36,000であった。
(3)至適温度
作用至適温度を調べるため、20〜70℃における2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性を実施例1に記載した方法で測定した。その結果、至適温度は45℃付近であった。
(4)至適pH
作用至適pHを調べるため、pH3.5〜9.0における2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性を実施例1に記載した方法で測定した。緩衝液として100mM酢酸緩衝液(pH3.5〜5.5)、100mMリン酸緩衝液(pH5.0〜7.5)、及び100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を用いて、pH3.5〜9.0の範囲で活性を測定した。その結果、至適pHは6.0であった。
(実施例3)精製ポリペプチドを用いた(R)−2−ヒドロキシメチルアルカン酸エチルの合成
実施例1で調製した精製ポリペプチド溶液に、グルコース脱水素酵素(天野エンザイム社製)100U、グルコース20mg、NADP1.0mg、各種2−ホルミルアルカン酸エチル誘導体2mgを添加し、30℃で20時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、反応の進行をTLCで確認した後、生成物の光学純度を測定した。その結果を表2に示した。
2−ヒドロキシメチルアルカン酸エチルの光学純度の測定は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(カラム:Cyclodex−β(φ0.25mm×60m;J&W Scientific社製)、カラム温度:110℃、キャリアガス:ヘリウム(300kPa)、検出:FID)を用いて行った。なお、得られた2−ヒドロキシメチルアルカン酸エチルは全てR体であった。
Figure 0004796323
(実施例4)遺伝子のクローニング
(PCRプライマーの作成)
実施例1で得られた精製ポリペプチドを8M尿素存在下で変性した後、アクロモバクター由来のリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られたペプチド断片のアミノ酸配列をABI492型プロテインシーケンサー(パーキンエルマー社製)により決定した。このアミノ酸配列から予想されるDNA配列に基づき、該ポリペプチドをコードする遺伝子の一部をPCRにより増幅するためのプライマー1:5’−tayytnatgcaytggccngt−3’(配列表の配列番号3)、および、プライマー2:5’−tcytcnggrtcrttrtanac−3’(配列表の配列番号4)を合成した。
(PCRによる遺伝子の増幅)
実施例1と同様に培養したオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の菌体からVisser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))に従って染色体DNAを抽出した。次に、上記で調製したDNAプライマー1および2を用い、得られた染色体DNAを鋳型としてPCRを行ったところ、目的遺伝子の一部と考えられる約0.6kbpのDNA断片が増幅された。PCRは、DNAポリメラ−ゼとしてTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書に従った。このDNA断片を、プラスミドpT7Blue T−Vector(Novagen社製)にクローニングし、ABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer社製)およびABI 373A DNA Sequencer(Perkin Elmer社製)を用いてその塩基配列を解析した。その結果判明した塩基配列を、配列表の配列番号5に示した。
(i−PCR法による目的遺伝子の全長配列の決定)
上記で調製したオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の染色体DNAを、制限酵素BglIIで完全消化し、得られたDNA断片の混合物をT4リガーゼにより分子内環化させた。これを鋳型として用い、i−PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988) )により、上述の配列番号5に示す塩基配列を含む遺伝子の全塩基配列を決定した。その結果を配列表の配列番号1に示した。また、配列番号1に示した塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号2に示した。
(実施例5)発現ベクターの構築
プライマー3:5’−gggaattccatatgctttctatttgcac−3’(配列表の配列番号6)と、プライマー4:5’−atcgagctcttatcaagcctgaataatc−3’(配列表の配列番号7)を用い、実施例3で得たオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、配列表の配列番号1に示す塩基配列からなる遺伝子の開始コドン部分にNdeI認識部位が付加され、かつ終始コドンの直後にSacI認識部位が付加された二本鎖DNAを得た。このDNAをNdeI及びSacIで消化し、プラスミドpUCNT(WO94/03613)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とSacI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNTOFを構築した。
(実施例6)グルコース脱水素酵素遺伝子をさらに含む発現ベクターの構築
プライマー5:5’−atcgagctctaaggaggttaacaatgtataaagatttagaagg−3’(配列表の配列番号8)と、プライマー6:5’−gcgctgcagttatccgcgtcctgcttgga−3’(配列表の配列番号9)を用い、プラスミドpGDK1(Eur. J. Biochem., 186, 389 (1989))を鋳型としてPCRを行い、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IAM1030株由来のグルコース脱水素酵素(以後、GDHと呼ぶ)遺伝子の開始コドンから5塩基上流に大腸菌のリボゾーム結合配列が、さらにその直前にSacI切断点が付加され、かつ、終止コドンの直後にPstI切断点が付加された、二本鎖DNAを取得した。得られたDNA断片をSacIおよびPstIで消化した。これを上記の組換えベクターpNTOFのSacI認識部位とPstI認識部位の間に挿入して、組み換えプラスミドpNTOFG1を構築した。pNTOFG1の作製法および構造を図1に示す。
(実施例7)形質転換体の作製
実施例4で構築した組換えベクターpNTOFを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNTOF)を得た。この形質転換体は、FERM BP−10230の受託番号で、2005年2月9日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に寄託されている。
また、同様に、実施例5で構築した組換えベクターpNTOFG1を用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNTOFG1)を得た。この形質転換体は、FERM BP−10231の受託番号で、2005年2月9日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に寄託されている。
(実施例8)形質転換体における遺伝子の発現
実施例7で得た2種の形質転換体、および、ベクタープラスミドpUCNTを含む形質転換体であるE.coli HB101(pUCNT)を、100μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)60mlに接種し、37℃で24時間振盪培養した。遠心分離により菌体を集め、60mlの100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁した。これを、UH−50型超音波ホモゲナイザー(SMT社製)を用いて破砕した後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液の2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性、および、GDH活性を測定したものを、表2に示した。実施例5で得られた2種の形質転換体のいずれにおいても、2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性の発現が認められた。また、GDH遺伝子を含むE.coli HB101(pNTOFG1)では、GDH活性の発現も認められた。2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性は、実施例1に記載の方法で測定した。GDH活性は、1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、グルコース0.1M、補酵素NADP2mM、および粗酵素液を添加して25℃で1分間反応を行い、波長340nmにおける吸光度の増加速度より算出した。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPをNADPHに還元する酵素活性を1unitと定義した。
Figure 0004796323
(実施例9)形質転換体を用いた(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの合成
実施例8と同様に調製したE.coli HB101(pNTOF)の無細胞抽出液1mlに、グルコース脱水素酵素(天野エンザイム社製)100U、グルコース20mg、NADP1.0mg、2−ホルミルへキサン酸エチル10mgを添加し、30℃で20時間振とうした。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、抽出物を分析した。その結果、収率99%で光学純度99%e.e.の(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルが得られた。
2−ホルミルへキサン酸エチル、および、2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの定量は、キャピラリーガスクロマトグラフィー(カラム:HP−5(crosslinked 5% PHME Silicone)(φ0.32mm×30m;Agilent Technologies社製)、カラム温度:120℃、キャリアガス:ヘリウム(125kPa)、検出:FID)を用いて行った。さらに、2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの光学純度の測定は、実施例3と同様の方法で行った。
(実施例10)形質転換体を用いた(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルの合成
実施例8と同様に調製したE.coli HB101(pNTOFG1)の培養液100mlに、55%(w/v)のグルコース水溶液85ml、NADP6mg、2−ホルミルへキサン酸エチル30gを添加し、10Mの水酸化ナトリウムの滴下によりpH6.5に調整しつつ、30℃で35時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、抽出物を実施例9と同様の方法で分析した。その結果、収率96%で光学純度99%e.e.の(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルが得られた。
(実施例11)ポリペプチドの基質特異性
0.33%(v/v)のジメチルスルホキシドを含む100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、基質となるカルボニル化合物を終濃度1.0mM、補酵素NADPHを終濃度2.0mMとなるようそれぞれ溶解した。これに、実施例1で調製した精製ポリペプチドを適当量添加し、30℃で1分間反応を行った。当該反応液の波長340nmにおける吸光度の減少速度から、各カルボニル化合物に対する還元活性を算出し、これを2−ホルミルへキサン酸エチルに対する活性を100%とした場合の相対値で表し、表3に示した。表3から明らかなように本発明のポリペプチドは、広範なカルボニル化合物に対して還元活性を示した。
Figure 0004796323
組換えベクターpNTOF及びpNTOFG1の作製法および構造を示す

Claims (15)

  1. 以下の(a)又は(b)のDNA:
    (a)配列表の配列番号1に示す塩基配列を含むDNA、
    (b)配列表の配列番号1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、75mMクエン酸三ナトリウム、750mM塩化ナトリウム、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、および、0.1%Ficoll 400の組成からなる水溶液中、65℃でハイブリダイズさせた後に、1.5mMクエン酸三ナトリウム、15mM塩化ナトリウム、および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成からなる水溶液を用いて、65℃で洗浄が行われる条件下でハイブリダイズし、かつ、式(1):
    Figure 0004796323
    で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、式(2):
    Figure 0004796323
    で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
  2. 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA。
  3. 請求項1記載のDNAにコードされ、かつ、前記式(1)で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、前記式(2)で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチド。
  4. 以下の(a)又は(b)のポリペプチド:
    (a)配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記相同性は相同性検索プログラムFASTAを用いて2つのアミノ酸配列を比較解析した場合に、配列全体に対するIdentityの値であり、かつ、前記式(1)で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、前記式(2)で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチド。
  5. 請求項1又は2記載のDNAを含むベクター。
  6. E.coli HB101(pNTOF)(FERM BP−10230)に含まれるプラスミドpNTOFである請求項5記載のベクター。
  7. グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAをさらに含む、請求項5に記載のベクター。
  8. グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドがバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のグルコース脱水素酵素である、請求項7記載のベクター。
  9. 請求項5〜8のいずれかに記載のベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
  10. 宿主細胞が大腸菌である請求項9記載の形質転換体。
  11. E.coli HB101(pNTOF)(FERM BP−10230)である、請求項10記載の形質転換体。
  12. E.coli HB101(pNTOFG1)(FERM BP−10231)である、請求項10記載の形質転換体。
  13. 請求項3又は4に記載のポリペプチド、又は、請求項9〜12のいずれかに記載の形質転換体を、カルボニル基を有する化合物と反応させることを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。
  14. カルボニル基を有する化合物が、一般式(3)
    Figure 0004796323
    (式中、R1は置換基を有していても良い炭素数2〜10のアルキル基、置換基を有していても良い炭素数5〜15のアラルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数5〜15のアリール基を表す。R2は炭素数1〜10の置換基を有していても良いアルキル基、又は置換基を有していても良い炭素数5〜15のアラルキル基を表す。)で表される2−ホルミル酢酸エステル誘導体であり、光学活性アルコールが、一般式(4)
    Figure 0004796323
    (式中、R1およびR2は前記と同じ。)で表される(R)−3−ヒドロキシプロピオン酸エステル誘導体である、請求項13記載の製造方法。
  15. カルボニル基を有する化合物が、式(1)
    Figure 0004796323
    で表される2−ホルミルへキサン酸エチルであり、光学活性アルコールが、式(2)
    Figure 0004796323
    で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルである、請求項13記載の製造方法。
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