JP4796323B2 - 新規カルボニル還元酵素、その遺伝子、およびその利用法 - Google Patents
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Description
Bull.Chem.Soc.Jpn.,67,2244(1994) Bull.Chem.Soc.Jpn.,67,524(1994)
Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、
Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)。
以下の方法に従って、オガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株より、2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチドを分離し、単一に精製した。特に断りのない限り、精製操作は4℃で行った。
500ml容坂口フラスコに、グルコース5%、ペプトン1%、酵母エキス1%、アデカノールLG−109(日本油脂製)1滴からなる液体培地30mlを調製し、120℃で20分間蒸気殺菌をおこなった。この培地に、予め同培地にて前培養しておいたオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の培養液300μlを無菌的に接種し、30℃で72時間振とう培養した。
上記の培養方法で得られた培養液1200mlについて、遠心分離により菌体を集め、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて菌体を洗浄した。この菌体を、100mMリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、BEAD−BEATER model 1107900(Biospec Product,INC.製)で破砕した後、破砕物から遠心分離にて菌体残渣を除き、無細胞抽出液80mlを得た。
上記で得られた無細胞抽出液80mlを10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で1夜透析し、10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)で予め平衡化したDEAE−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラム(95ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、NaClのリニアグラジエント(0Mから0.5Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、終濃度が1.5Mとなるよう硫酸アンモニウムを溶解し、1.5Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて1夜透析を行った。
DEAE−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分を、1.5Mの硫酸アンモニウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したPhenyl−TOYOPEARL 650M(東ソー株式会社製)カラム(45ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、硫酸アンモニウムのリニアグラジエント(1.5Mから0Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて1夜透析を行った。
Phenyl−TOYOPEARLカラムクロマトグラフィーにより得られた活性画分を、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)で予め平衡化した2’,5’−ADP sepharose(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)カラム(20ml)に供し、活性画分を吸着させた。同一緩衝液でカラムを洗浄した後、NaClのリニアグラジエント(0Mから1Mまで)により活性画分を溶出させた。活性画分を集め、10mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて1夜透析を行い、ポリペプチドの精製標品を得た。
(実施例2)ポリペプチドの諸性質
実施例1で調製した精製ポリペプチドの酵素化学的性質について調べた。
NADPHを補酵素として、2−ホルミルへキサン酸エチルに作用して、光学純度99%e.e.の(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルへ還元した。
溶離液として200mMの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い、Superdex 200HR10/30(Pharmacia Biotech社製)による精製ポリペプチドのゲル濾過クロマトグラフィー分析を行った結果、標準タンパク質との相対保持時間から算出した分子量は約36,000であった。
作用至適温度を調べるため、20〜70℃における2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性を実施例1に記載した方法で測定した。その結果、至適温度は45℃付近であった。
作用至適pHを調べるため、pH3.5〜9.0における2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性を実施例1に記載した方法で測定した。緩衝液として100mM酢酸緩衝液(pH3.5〜5.5)、100mMリン酸緩衝液(pH5.0〜7.5)、及び100mMトリス塩酸緩衝液(pH7.0〜9.0)を用いて、pH3.5〜9.0の範囲で活性を測定した。その結果、至適pHは6.0であった。
実施例1で調製した精製ポリペプチド溶液に、グルコース脱水素酵素(天野エンザイム社製)100U、グルコース20mg、NADP1.0mg、各種2−ホルミルアルカン酸エチル誘導体2mgを添加し、30℃で20時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、反応の進行をTLCで確認した後、生成物の光学純度を測定した。その結果を表2に示した。
(PCRプライマーの作成)
実施例1で得られた精製ポリペプチドを8M尿素存在下で変性した後、アクロモバクター由来のリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られたペプチド断片のアミノ酸配列をABI492型プロテインシーケンサー(パーキンエルマー社製)により決定した。このアミノ酸配列から予想されるDNA配列に基づき、該ポリペプチドをコードする遺伝子の一部をPCRにより増幅するためのプライマー1:5’−tayytnatgcaytggccngt−3’(配列表の配列番号3)、および、プライマー2:5’−tcytcnggrtcrttrtanac−3’(配列表の配列番号4)を合成した。
実施例1と同様に培養したオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の菌体からVisser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))に従って染色体DNAを抽出した。次に、上記で調製したDNAプライマー1および2を用い、得られた染色体DNAを鋳型としてPCRを行ったところ、目的遺伝子の一部と考えられる約0.6kbpのDNA断片が増幅された。PCRは、DNAポリメラ−ゼとしてTaKaRa Ex Taq(タカラバイオ社製)を用いて行い、反応条件はその取り扱い説明書に従った。このDNA断片を、プラスミドpT7Blue T−Vector(Novagen社製)にクローニングし、ABI PRISM Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer社製)およびABI 373A DNA Sequencer(Perkin Elmer社製)を用いてその塩基配列を解析した。その結果判明した塩基配列を、配列表の配列番号5に示した。
上記で調製したオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の染色体DNAを、制限酵素BglIIで完全消化し、得られたDNA断片の混合物をT4リガーゼにより分子内環化させた。これを鋳型として用い、i−PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988) )により、上述の配列番号5に示す塩基配列を含む遺伝子の全塩基配列を決定した。その結果を配列表の配列番号1に示した。また、配列番号1に示した塩基配列がコードするアミノ酸配列を配列番号2に示した。
プライマー3:5’−gggaattccatatgctttctatttgcac−3’(配列表の配列番号6)と、プライマー4:5’−atcgagctcttatcaagcctgaataatc−3’(配列表の配列番号7)を用い、実施例3で得たオガタエア・ミニュータ・バー・ミニュータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975株の染色体DNAを鋳型としてPCRを行った。その結果、配列表の配列番号1に示す塩基配列からなる遺伝子の開始コドン部分にNdeI認識部位が付加され、かつ終始コドンの直後にSacI認識部位が付加された二本鎖DNAを得た。このDNAをNdeI及びSacIで消化し、プラスミドpUCNT(WO94/03613)のlacプロモーターの下流のNdeI認識部位とSacI認識部位の間に挿入し、組換えベクターpNTOFを構築した。
プライマー5:5’−atcgagctctaaggaggttaacaatgtataaagatttagaagg−3’(配列表の配列番号8)と、プライマー6:5’−gcgctgcagttatccgcgtcctgcttgga−3’(配列表の配列番号9)を用い、プラスミドpGDK1(Eur. J. Biochem., 186, 389 (1989))を鋳型としてPCRを行い、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IAM1030株由来のグルコース脱水素酵素(以後、GDHと呼ぶ)遺伝子の開始コドンから5塩基上流に大腸菌のリボゾーム結合配列が、さらにその直前にSacI切断点が付加され、かつ、終止コドンの直後にPstI切断点が付加された、二本鎖DNAを取得した。得られたDNA断片をSacIおよびPstIで消化した。これを上記の組換えベクターpNTOFのSacI認識部位とPstI認識部位の間に挿入して、組み換えプラスミドpNTOFG1を構築した。pNTOFG1の作製法および構造を図1に示す。
実施例4で構築した組換えベクターpNTOFを用いて、E.coli HB101コンピテントセル(タカラバイオ社製)を形質転換し、E.coli HB101(pNTOF)を得た。この形質転換体は、FERM BP−10230の受託番号で、2005年2月9日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566 茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に寄託されている。
実施例7で得た2種の形質転換体、および、ベクタープラスミドpUCNTを含む形質転換体であるE.coli HB101(pUCNT)を、100μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)60mlに接種し、37℃で24時間振盪培養した。遠心分離により菌体を集め、60mlの100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁した。これを、UH−50型超音波ホモゲナイザー(SMT社製)を用いて破砕した後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液の2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性、および、GDH活性を測定したものを、表2に示した。実施例5で得られた2種の形質転換体のいずれにおいても、2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性の発現が認められた。また、GDH遺伝子を含むE.coli HB101(pNTOFG1)では、GDH活性の発現も認められた。2−ホルミルへキサン酸エチル還元活性は、実施例1に記載の方法で測定した。GDH活性は、1Mトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に、グルコース0.1M、補酵素NADP2mM、および粗酵素液を添加して25℃で1分間反応を行い、波長340nmにおける吸光度の増加速度より算出した。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPをNADPHに還元する酵素活性を1unitと定義した。
実施例8と同様に調製したE.coli HB101(pNTOF)の無細胞抽出液1mlに、グルコース脱水素酵素(天野エンザイム社製)100U、グルコース20mg、NADP1.0mg、2−ホルミルへキサン酸エチル10mgを添加し、30℃で20時間振とうした。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、抽出物を分析した。その結果、収率99%で光学純度99%e.e.の(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルが得られた。
実施例8と同様に調製したE.coli HB101(pNTOFG1)の培養液100mlに、55%(w/v)のグルコース水溶液85ml、NADP6mg、2−ホルミルへキサン酸エチル30gを添加し、10Mの水酸化ナトリウムの滴下によりpH6.5に調整しつつ、30℃で35時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、抽出物を実施例9と同様の方法で分析した。その結果、収率96%で光学純度99%e.e.の(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルが得られた。
0.33%(v/v)のジメチルスルホキシドを含む100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、基質となるカルボニル化合物を終濃度1.0mM、補酵素NADPHを終濃度2.0mMとなるようそれぞれ溶解した。これに、実施例1で調製した精製ポリペプチドを適当量添加し、30℃で1分間反応を行った。当該反応液の波長340nmにおける吸光度の減少速度から、各カルボニル化合物に対する還元活性を算出し、これを2−ホルミルへキサン酸エチルに対する活性を100%とした場合の相対値で表し、表3に示した。表3から明らかなように本発明のポリペプチドは、広範なカルボニル化合物に対して還元活性を示した。
Claims (15)
- 以下の(a)又は(b)のDNA:
(a)配列表の配列番号1に示す塩基配列を含むDNA、
(b)配列表の配列番号1に示す塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAと、75mMクエン酸三ナトリウム、750mM塩化ナトリウム、0.5%ドデシル硫酸ナトリウム、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニルピロリドン、および、0.1%Ficoll 400の組成からなる水溶液中、65℃でハイブリダイズさせた後に、1.5mMクエン酸三ナトリウム、15mM塩化ナトリウム、および0.1%ドデシル硫酸ナトリウムの組成からなる水溶液を用いて、65℃で洗浄が行われる条件下でハイブリダイズし、かつ、式(1):
- 配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA。
- 請求項1記載のDNAにコードされ、かつ、前記式(1)で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、前記式(2)で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチド。
- 以下の(a)又は(b)のポリペプチド:
(a)配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(b)配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、前記相同性は相同性検索プログラムFASTAを用いて2つのアミノ酸配列を比較解析した場合に、配列全体に対するIdentityの値であり、かつ、前記式(1)で表される2−ホルミルへキサン酸エチルを不斉的に還元して、前記式(2)で表される(R)−2−ヒドロキシメチルへキサン酸エチルを生成する活性を有するポリペプチド。 - 請求項1又は2記載のDNAを含むベクター。
- E.coli HB101(pNTOF)(FERM BP−10230)に含まれるプラスミドpNTOFである請求項5記載のベクター。
- グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするDNAをさらに含む、請求項5に記載のベクター。
- グルコース脱水素酵素活性を有するポリペプチドがバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のグルコース脱水素酵素である、請求項7記載のベクター。
- 請求項5〜8のいずれかに記載のベクターにより宿主細胞を形質転換して得られる形質転換体。
- 宿主細胞が大腸菌である請求項9記載の形質転換体。
- E.coli HB101(pNTOF)(FERM BP−10230)である、請求項10記載の形質転換体。
- E.coli HB101(pNTOFG1)(FERM BP−10231)である、請求項10記載の形質転換体。
- 請求項3又は4に記載のポリペプチド、又は、請求項9〜12のいずれかに記載の形質転換体を、カルボニル基を有する化合物と反応させることを特徴とする光学活性アルコールの製造方法。
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