JP2002247987A - 新規なエノン還元酵素、その製造方法、およびこれを利用したα,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元する方法 - Google Patents
新規なエノン還元酵素、その製造方法、およびこれを利用したα,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元する方法Info
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Abstract
提供。 【解決手段】 Kluyveromyces属に由来する新規エノン
還元酵素が提供された。また本発明は、該酵素をコード
する遺伝子、該酵素を含むベクター、形質転換体をも提
供する。更に本発明は、酵母に由来するエノン還元酵素
を提供する。これらのエノン還元酵素により、α,β−
不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元する
方法が提供される。 【効果】医薬品原料などとして有用なケトンを、酵素的
な反応によって製造することができる。
Description
ン(エノン、enone)のα,β−不飽和結合の還元に有
用な、新規なエノン還元酵素、該酵素をコードするDN
A、該酵素の製造方法、該酵素ならびに該酵素に相同性
を有する蛋白質を用いたα,β−不飽和ケトンの炭素−
炭素2重結合を選択的に還元する方法に関する。
極めて汎用性の高い化合物である。また、ケトンは、医
薬品合成において重要な光学活性中間体である光学活性
アルコール、光学活性アミンの原料としても重要な化合
物である。これらのケトンの前駆体として、例えば、ア
ルデヒドとケトンの縮合反応により得られるα,β−不
飽和ケトンが有用である。
を縮合することにより3−メチル−3−ペンテン−2−
オン(3-methyl-3-penten-2-one; J. Amer. Chem. So
c., 81, 1117-1119 (1959))を容易に調製することがで
きる。
ル化合物の、α,β−不飽和結合を選択的に還元するこ
とにより得ることができる。カルボニル基の還元反応を
伴わずに、α,β−不飽和結合のみを選択的に還元する
方法としては、Ni触媒やPd-C触媒を用いた水素添加反応
などが知られている(「接触水素化反応」p135、東京化
学同人 (1987))。これらの方法は、反応を継続するこ
とによりカルボニル基も還元される、環境に対して負荷
の大きい金属を触媒として利用する、高圧の水素を利用
するなどの問題がある。カルボニル基の還元は、ケトン
の収率の低下を意味している。
飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元する方
法としては、次のような生物を用いた方法が報告されて
いる。 ・植物細胞(J. Nat. Prod. 56, 1406-1409 (1993)) ・パン酵母(Tetrahedron Lett. 52, 5197-5200 (1978)
, Bull. Chem. Soc. Jpn. 64, 3473-3475 (1991) , Te
trahedron Asym. 6, 2143-2144 (1995)他) ・カビ(J. Org. Chem. 47, 792-798 (1982)) しかしこれらの方法では、カルボニル基の還元反応を伴
う、反応性が低い、細胞の大量調製が困難など問題があ
る。また、これらの生物より各種のエノン還元酵素が報
告されているが、それをコードする遺伝子をクローニン
グした報告はなく、これらの酵素を容易に、かつ、大量
に調製することは困難であった。
の還元酵素としては、以下のような酵素が報告されてい
る。これらの酵素は、いずれも基質特異性が明らかにさ
れていない、あるいはα,β−不飽和結合に対する選択
的が低いといった理由により、工業的な利用には不向き
である。 クロストリジウム・チオブチリカム(Clostridium tyro
butyricum)由来の2−エノエート還元酵素 (2-enoate
reductase, E.C.1.3.1.31) (J. Biotechnol. 6, 13-29
(1987)) クロストリジウム・クライベリ (Clostridium kluyver
i) 由来のアクリロイル−CoA還元酵素 (acryloyl-CoA r
eductase) (Biol. Chem. Hoppe-Seyler 366, 953-961
(1985) ) パン酵母より精製されたエノン還元酵素YER−2(京
都大学・河合ら、第4回生体触媒シンポジウム講演要旨
集p58 (2001) ) パン酵母より精製されたエノン還元酵素EI及びEII
(Eur. J. Biochem. 255, 271-278 (1998)) タバコ(Nicotiana tabacum)細胞由来のエノン還元酵
素(ベルベノン還元酵素(verberone reductaee, 別名
p90)(J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1993,1426-1
427、Chem. Lett. 2000, 850-851) タバコ(Nicotiana tabacum)細胞由来のエノン還元酵
素であるカルボン還元酵素(別名、エノン還元酵素−
I)(Phytochemistry 31, 2599-2603 (1992)) タバコ(Nicotiana tabacum)細胞由来のエノン還元酵
素であるエノン還元酵素−II、p44、p74植物の
1種ユーグレナ・グラシリス(Euglena gracilis)やア
スタシア・ロンガ(Astasia longa)から精製されたエ
ノン還元酵素(Phytochemistry 49, 49-53(1998)) ラット肝臓より精製されたエノン還元酵素(Arch. Bioc
hem. Biophys. 282, 183-187 (1990))
飽和ケトンのα,β−不飽和結合を選択的に還元し、
α,β−飽和ケトンを生成する酵素活性を有する新規な
エノン還元酵素、該酵素をコードする遺伝子を提供する
ことを課題とする。さらに、本発明は、該酵素並びに該
酵素を生産する生物を利用してα,β−不飽和ケトンの
炭素−炭素2重結合を選択的に還元する方法の提供を課
題とする。
ニルケトンから2−ブタノンを生成する酵素をスクリー
ニングした結果、クライベロマイセス・ラクティス (Kl
uyveromyces lactis)が目的とする活性を有することを
見出した。次に、クライベロマイセス・ラクティスの菌
体より目的とする活性を有する酵素を精製し、その性質
を明らかにした。この酵素は、α,β−不飽和ケトンの
α,β−不飽和結合をβ−ニコチンアミドアデニンジヌ
クレオチドリン酸依存的に選択的に還元すること、ケト
ンの還元活性を実質的に持たないことを確認した。更に
本発明者らは、該酵素をコードする遺伝子をクローニン
グし、その構造を明らかにして、この遺伝子が新規な遺
伝子であることを確認した。また、この遺伝子を異種の
生物で高発現させて、α,β−不飽和ケトンのα,β−
不飽和結合をNADPH依存的に還元する高い選択性と高い
活性を併せ持つ形質転換株を得た。そしてこの酵素やそ
のホモログ、あるいはこれらを産生する細胞等によっ
て、α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合の選択
的な還元が可能となることを見出し本発明を完成した。
以下、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン
酸はNADP、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
はNAD、そしてこれらの還元型をNADPHあるいはNADHと記
載する。
該酵素をコードするDNA、該酵素の製造方法、該酵素な
らびに該酵素に相同性を有する蛋白質を用いたα,β−
不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元する
方法に関する。 〔1〕次の(A)から(C)に示す理化学的性質を有す
るエノン還元酵素。 (A)作用 NADPHを電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭
素−炭素2重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生
成する。 (B)基質特異性 (1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を還元
するが、実質的にケトンの還元活性は無い。 (2)電子供与体としては、NADHよりもNADPHに対して、有
意に高い活性を有する。 (3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素で
ない基質に対しては実質的に作用しない。 (4)炭素−炭素2重結合が環状構造中に存在する基質に
対しては実質的に作用しない。 (C)至適pH pH 6.5−7.0 〔2〕更に次に示す理化学的性質(D)−(E)を有す
る〔1〕に記載のエノン還元酵素。 (D)至適温度 37−45℃ (E)分子量 ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電
気泳動により約43,000。ゲル濾過により約42,
000。 〔3〕クライベロマイセス(Kluyveromyces)属に由来
する〔1〕に記載の新規エノン還元酵素。 〔4〕クライベロマイセス属に属し、〔1〕に記載のエ
ノン還元酵素生産能を有する微生物を培養することを特
徴とする〔1〕に記載のエノン還元酵素を取得する方
法。 〔5〕クライベロマイセス属に属する微生物が、クライ
ベロマイセス・ラクティス(Kluyveromayces lactis)
である、〔4〕に記載の方法。 〔6〕下記(a)から(e)のいずれかに記載のエノン
還元活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチ
ド。 (a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレ
オチド、(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコ
ードするポリヌクレオチド、(c)配列番号:2に記載
のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が
置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配
列をコードするポリヌクレオチド、(d)配列番号:1
に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチ
ド、(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と60%
以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌ
クレオチド、 〔7〕〔6〕に記載のポリヌクレオチドによってコード
される蛋白質。 〔8〕〔6〕に記載のポリヌクレオチドが挿入された組
換えベクター。
ことができる脱水素酵素をコードするポリヌクレオチド
が挿入された、〔8〕に記載の組換えベクター。 〔10〕〔6〕に記載のポリヌクレオチド、または
〔8〕に記載のベクターを発現可能に保持した形質転換
体。 〔11〕〔10〕に記載の形質転換体を培養する工程を
含む〔7〕に記載の蛋白質の製造方法。 〔12〕下記(a)から(e)のいずれかに記載の、エ
ノン還元活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオ
チド。 (a)配列番号:3、配列番号:5、および配列番号:
7からなる群から選択されたいずれかに記載の塩基配列
を含むポリヌクレオチド、(b)配列番号:4、配列番
号:6、および配列番号:8からなる群から選択された
いずれかに記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコード
するポリヌクレオチド、(c)配列番号:4、配列番
号:6、および配列番号:8からなる群から選択された
いずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複
数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加
したアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3、配列番号:5、および配列番号:
7からなる群から選択されたいずれかに記載の塩基配列
からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下
でハイブリダイズするポリヌクレオチド、(e)配列番
号:4、配列番号:6、および配列番号:8からなる群
から選択されたいずれかに記載のアミノ酸配列と60%
以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌ
クレオチド、 〔13〕〔12〕に記載のポリヌクレオチドによってコ
ードされる蛋白質。 〔14〕〔12〕に記載のポリヌクレオチドが挿入され
た組換えベクター。 〔15〕更にNADPを補酵素とする酸化還元反応を触媒す
ることができる脱水素酵素をコードするポリヌクレオチ
ドが挿入された、〔14〕に記載の組換えベクター。 〔16〕〔12〕に記載のポリヌクレオチド、または
〔14〕に記載のベクターを発現可能に保持した形質転
換体。 〔17〕〔16〕に記載の形質転換体を培養する工程を
含む〔13〕に記載の蛋白質の製造方法。 〔18〕〔1〕に記載のエノン還元酵素、〔7〕に記載
の蛋白質、〔13〕に記載の蛋白質、該酵素または蛋白
質を産生する微生物、および該微生物の処理物、からな
る群から選択されるいずれかの酵素活性物質をα,β不
飽和ケトンに作用させる工程を含む、α,β−不飽和ケ
トンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元する方法。 〔19〕該酵素または蛋白質を産生する微生物が、〔1
1〕および/または〔16〕に記載の形質転換体である
〔18〕に記載の方法。
示す理化学的性質を有する酵素を提供する。 (A)作用 NADPHを電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭
素−炭素2重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生
成する。 (B)基質特異性 (1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を還元
するが、実質的にケトンの還元活性は無い。 (2)電子供与体としては、NADHよりもNADPHに対して、有
意に高い活性を有する。 (3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素で
ない基質に対しては実質的に作用しない。 (4)炭素−炭素2重結合が環状構造中に存在する基質に
対しては実質的に作用しない。 (C)至適pH pH 6.5−7.0
に次の理化学的的性質(D)−(E)を備える。 (D)至適温度 37−45℃ (E)分子量 ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気
泳動(以下、SDS-PAGEと略す)により約43,000。
ゲル濾過により約42,000。
Hに対する反応性に比較して有意に高いとは、少なくと
も2倍以上、好ましくは3倍以上、より好ましくは5倍
以上高い活性を言う。NADPHとNADHに対する反応性は、
実施例に示すような方法によって比較することができ
る。すなわち、同一のα,β−不飽和ケトンを基質と
し、両者を用いてケトンを生成させる。このときに消費
されるNADPH、あるいはNADHの量を比較すれば、反応性
を比較することができる。
質的にケトンの還元活性が無いこと、あるいは、エノン
還元酵素が基質に対して実質的に作用しないこととは、
具体的には、メチルビニルケトンにおけるオレフィンに
対する還元活性の1%以下であることを言う。
から通常の蛋白質の精製方法により、精製することがで
きる。例えば、菌体を破砕後、プロタミン硫酸沈澱を行
い、その遠心分離上清を硫酸アンモニウムを用いて塩析
し、更に、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロ
マトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、
ゲルろ過などを組み合わせることにより、精製すること
ができる。
は、次のようにして確認することができる。本発明にお
いてエノンとは、α,β不飽和ケトンを意味する。 エノンに対する還元活性測定法:50mM リン酸カリウム
緩衝液(pH 6.5)、0.2mM NADPH、20mM メチル
ビニルケトン及び酵素を合む反応液中30℃で反応さ
せ、NADPHの減少にともなう340 nmの吸光度の減少を
測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADPHの減少を触
媒する酵素量とした。また、蛋白質の定量は、バイオラ
ッド製蛋白質アッセイキットを用いた色素結合法により
行った。
元酵素は、たとえばクライベロマイセス属酵母の培養物
より精製することができる。クライベロマイセス属酵母
としては、クライベロマイセス・ラクティス(Kluyvero
myces lactis)が特に本発明によるエノン還元酵素の産
生能に優れる。本発明のエノン還元酵素を得るために利
用することができるクライベロマイセス・ラクティス
は、たとえば、IFO0433、IFO 1012、I
FO 1267、IFO 1673、IFO 1903と
して財団法人発酵研究所より入手することができる。
いられる一般的な培地で培養される。十分に増殖させた
後に菌体を回収し、2−メルカプトエタノールやフェニ
ルメタンフルホニルフルオリド等の還元剤やプロテアー
ゼ阻害剤を加えた緩衝液中で破砕して無細胞抽出液とす
る。無細胞抽出液から、蛋白質の溶解度による分画(有
機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)や、陽イ
オン交換、陰イオン交換、ゲルろ過、疎水性クロマトグ
ラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィ
ニティークロマトグラフィーなどを適宜組み合わせるこ
とにより精製することができる。たとえば、フェニル−
セファロースを用いた疎水クロマトグラフィー、MonoQ
を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、フェニル−
スーパーロースを用いた疎水クロマトグラフィー等を経
て電気泳動的にほぼ単一バンドにまで精製することがで
きる。
することができる本発明によるエノン還元酵素は、上記
理化学的性質(A)−(C)、および(D)−(E)を
有する。クライベロマイセス・ラクティスから精製する
ことができる本発明によるエノン還元酵素は、公知の
α,β−不飽和カルボニル化合物の還元酵素に対して、
明らかに新規な酵素である。
物の還元酵素としては、クロストリジウム・チオブチリ
カム(Clostridium tyrobutyricum)由来の2−エノエ
ート還元酵素 (2-enoate reductase, E.C.1.3.1.31) が
知られている。本酵素は、NADH依存的に(E)−2−メ
チル−2−ブテン酸を還元し、(R)−2−メチル酪酸
を生成する(J. Biotechnol. 6, 13-29 (1987))。また
本酵素は、カルボニル残基がカルボン酸、アルデヒド、
あるいはケト酸の場合に基質とするが、ケトン体に対す
る活性は報告されていない。更に、分子量は、ゲル濾過
において80万−94万であり、本発明の酵素(SDS-PA
GEで43,000、ゲル濾過で42,000)とは明確に異なる。
ostridium kluyveri) 由来のアクリロイル−CoA還元酵
素 (acryloyl-CoA reductase) がエチルビニルケトン還
元活性を有することが報告されている(Biol. Chem. Ho
ppe-Seyler 366, 953-961 (1985) )が、本酵素は補酵
素として還元型メチルビオローゲンを利用し、分子量は
ゲル濾過で28,400、SDS-PAGEで14,200であり本発明の酵
素とは異なる。
が精製され報告されている。京都大学の河合らは、パン
酵母よりエノン還元酵素(YER−2)を精製し、酵素
化学的性質を報告している(第4回生体触媒シンポジウ
ム講演要旨集p58 (2001) )。YER−2は、反応の至
適pHが7.5であり本発明の酵素(至適pH6.5−7.
0)とは明らかに異なる。Wannerらは、同じパン酵母よ
り2種類のエノン還元酵素(EI及びEII)の精製と
性質を報告している(Eur. J. Biochem. 255, 271-278
(1998))。EIIは補酵素としてNADHを利用し、EIは
SDS-PAGEにより34,000と37,000のサブニットからなる分
子量75,000のヘテロダイマーであり、本発明の酵素とは
異なる。
の細胞より多数のエノン還元酵素(ベルベノン還元酵素
(別名p90)、カルボン還元酵素(別名、エノン還元
酵素−I)、エノン還元酵素−II、p44、p74)
が精製され、その性質が報告されている。ベルベノン還
元酵素 (verberone reductaee, p90) 、p44は環
状のα,β−不飽和ケトンに対する活性を有すること
(J. Chem. Soc., Chem.Commun. 1993, 1426-1427、Che
m. Lett. 2000, 850-851)から本発明の酵素とは異な
る。カルボン (carbone) 還元酵素は補酵素としてNADH
を利用すること(Phytochemistry 31, 2599-2603 (199
2))、エノン還元酵素−IIは、α,β−不飽和ケトン
のβ位炭素に水素を有さない化合物( (R) -pulegone)
も基質になること(Phytochemistry 31, 2599-2603 (19
92))、p74は分子量が74,000であることから、これ
らの酵素は明らかに本発明の酵素とは異なる。
(Euglena gracilis)やアスタシア・ロンガ(Astasia
longa)からもエノン還元酵素が精製されている(Phyto
chemistry 49, 49-53 (1998))が、これらの酵素はいず
れも補酵素としてNADHを利用するため、本発明の酵素と
は異なる。
酵素が精製されている(Arch. Biochem. Biophys. 282,
183-187 (1990))。この酵素は、分子量39,500のモノ
マー酵素だが、環状基質への反応性、β位2置換基質へ
の反応性、至適pHなどが報告されていない。
ログをコードするポリヌクレオチドに関する。本発明に
おいて、ポリヌクレオチドは、DNAやRNAのような天然に
存在するポリヌクレオチドであることもできるし、人工
的に合成されたヌクレオチド誘導体を含むポリヌクレオ
チドであっても良い。
ヌクレオチドは、たとえば配列番号:1に示す塩基配列
を含む。配列番号:1に示す塩基配列は、配列番号:2
に示すアミノ酸配列を含む蛋白質をコードしており、こ
のアミノ酸配列を含む蛋白質は、本発明によるエノン還
元酵素の好ましい態様を構成する。なお本発明のポリヌ
クレオチドは、配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコ
ードすることができるあらゆる塩基配列を含む。1つの
アミノ酸に対応するコドンは、1〜6存在することから、
配列番号:2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコ
ードするDNAは、配列番号:1のみとは限らず、配列番
号:1に記載されるDNAと等価とみなすことができるDNA
は複数存在する。
2に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のア
ミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたア
ミノ酸配列を含み、かつ、エノン還元酵素活性を有する
蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。当業者で
あれば、配列番号:1に記載のDNAに部位特異的変異導
入法(Nucleic Acid Res. 10,pp.6487 (1982) , Method
s in Enzymol. 100, pp.448 (1983), Molecular Clonin
g 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (19
89) , PCR A Practical Approach IRL Press pp.200 (1
991) )などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および
/または付加変異を導入することが可能である。
番号:1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェ
ントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドで
あって、かつ、エノン還元酵素活性を有する蛋白質をコ
ードするポリヌクレオチドも含む。ストリンジェントな
条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配
列番号:1に記載中の任意の少なくとも20個、好まし
くは少なくとも30個、たとえば40、60または10
0個の連続した配列を一つまたは複数選択したDNAをプ
ローブDNAとし、たとえばECL direct nucleic acid lab
eling and detection system (Amersham Pharmaica Bio
tech社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(wash:4
2℃、0.5x SSCを含むprimary wash buffer)において、
ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。
に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするこ
とができるポリヌクレオチドには、配列番号:1と類似
する塩基配列を含むものが含まれる。このようなポリヌ
クレオチドは、配列番号:2のアミノ酸配列からなる蛋
白質と機能的に同等な蛋白質をコードしている可能性が
高い。したがって当業者は、このようなポリヌクレオチ
ドの中から、本明細書の記載に基づいて、エノン還元酵
素活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドを
選択することができる。
列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも60
%、好ましくは少なくとも70%または80%、より好ま
しくは90%以上のホモロジーを有する蛋白質をコード
するポリヌクレオチドを含む。蛋白質のホモロジー検索
は、たとえばSWISS-PROT、PIRなどの蛋白質のアミノ酸
配列に関するデータベースやDNA Databank of JAPAN(DD
BJ)、EMBL、Gene-BankなどのDNAに関するデータベー
ス、DNA配列を元にした予想アミノ酸配列に関するデー
タベースなどを対象に、FASTA programやBLAST program
などを用いて、たとえば、インターネット上で行うこと
ができる。配列番号:2に記載のアミノ酸配列を用いて
SWISS-PROTを対象にBLAST programを用いてホモロジー
検索を行った結果、既知の蛋白質の中でもっとも高いホ
モロジーを示したのは、Cochliobolus carbonum toxD p
roteinの36%(Identity)、54%(Positives)であった。本
発明の60%以上のホモロジーとは、たとえば、BLAST pro
gramを用いたPositiveの相同性の値を示す。
還元酵素にホモロジーを有する機能未知の予想オープン
リーディングフレーム(ORF)が見いだされた。具体的
には、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces
cerevisiae)のゲノム解析の結果より得られた3種類の
予想ORFであり、それぞれYNN4、YL60、およびYCZ2と命
名されている。これらの予想アミノ酸配列の本発明のエ
ノン還元酵素に対するホモロジーは、54%, 51%, 53% (i
dentity) , 69%, 68%, 69% (Positive) であった。これ
らの予想蛋白質が本発明のエノン還元酵素活性を有する
か否かを明らかにするために、DDBJに登録されているDN
A配列を基にプライマーを合成し、サッカロマイセス・
セレビジエのゲノムDNAより予想ORF部分をPCRクローニ
ングした。各ORFを発現ベクターに導入し、大腸菌を形
質転換して得られた形質転換株を培養して、それぞれの
蛋白質を発現させた結果、YNN4、YL60、およびYCZ2がい
ずれもエノン還元活性を有することを確認した。これら
の結果は、配列番号:2に記載のアミノ酸配列に対して
60%以上のホモロジーを有する蛋白質が、本発明のエ
ノン還元活性を有すると推測するに十分な蓋然性がある
ことを示している。YNN4、YL60、およびYCZ2の塩基配
列、およびアミノ酸配列を、以下の配列番号に示した。
これらのORFによってエノン還元酵素活性を有する蛋白
質がもたらされることは知られていない。 配列番号:3、配列番号:5、および配列番号:7に記
載の塩基配列からなるポリヌクレオチドは、本発明のポ
リヌクレオチドに含まれる。またこれらのポリヌクレオ
チドによってコードされるアミノ酸配列、配列番号:
4、配列番号:6、および配列番号:8に記載されたア
ミノ酸配列をコードする全ての塩基配列からなるポリヌ
クレオチドは、本発明に含まれる。更に、配列番号:
4、配列番号:6、および配列番号:8に記載されたア
ミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコ
ードするポリヌクレオチドは、本発明に含まれる。
列番号:4、配列番号:6、および配列番号:8に記載
のアミノ酸配列のいずれかにおいて、1もしくは複数の
アミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加された
アミノ酸配列を含み、かつ、エノン還元酵素活性を有す
る蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含む。このよ
うなポリヌクレオチドは、先に述べたような方法に基づ
いて取得することができる。また、本発明のポリヌクレ
オチドは、配列番号:3、配列番号:5、および配列番
号:7に記載の塩基配列のいずれかからなるDNAとスト
リンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレ
オチドであって、かつ、エノン還元酵素活性を有する蛋
白質をコードするポリヌクレオチドも含む。ストリンジ
ェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチド
とは、配列番号:3、配列番号:5、および配列番号:
7に記載中の任意の少なくとも20個、好ましくは少な
くとも30個、たとえば40、60または100個の連
続した配列を一つまたは複数選択したDNAをプローブDNA
とし、たとえばECL direct nucleic acid labeling and
detection system (Amersham Pharmaica Biotech社製)
を用いて、マニュアルに記載の条件(wash:42℃、0.5x
SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリ
ダイズするポリヌクレオチドを指す。
3、配列番号:5、あるいは配列番号:7に記載の塩基
配列からなるDNAとハイブリダイズすることができるポ
リヌクレオチドには、これらの塩基配列と類似する塩基
配列を含むものが含まれる。このようなポリヌクレオチ
ドは、配列番号:4、配列番号:6、あるいは配列番
号:8のアミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な
蛋白質をコードしている可能性が高い。
列番号:4、配列番号:6、あるいは配列番号:8に示
されるアミノ酸配列と少なくとも60%、好ましくは少
なくとも70%または80%、より好ましくは90%以上
のホモロジーを有する蛋白質をコードするポリヌクレオ
チドを含む。蛋白質のホモロジー検索は、既に述べたよ
うな方法によって行うことができる。
ノン還元酵素の遺伝子工学的な製造に有用である。ある
いは本発明のポリヌクレオチドによって、α,β−不飽
和ケトンからのα,β―飽和ケトンの製造に有用なエノ
ン還元酵素活性を有する微生物を遺伝子工学的に作り出
すことができる。
配列を有し、かつエノン還元酵素活性を有する蛋白質、
及びそのホモログを含む。配列番号:2に示すアミノ酸
配列を含む蛋白質は、本発明によるエノン還元酵素の好
ましい態様を構成する。
配列番号:2に記載のアミノ酸配列において、1もしく
は複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付
加されたアミノ酸配列を含む。当業者であれば、配列番
号:1に記載のDNAに部位特異的変異導入法(Nucleic A
cid Res. 10,pp.6487 (1982) , Methods in Enzymol.10
0,pp.448 (1983), Molecular Cloning 2ndEdt., Cold S
pring Harbor Laboratory Press (1989) , PCR A Pract
ical Approach IRL Press pp.200 (1991) )などを用い
て、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を
導入することによりエノン還元酵素のホモログをコード
するDNAを得ることができる。そのエノン還元酵素のホ
モログをコードするDNAを宿主に導入して発現させるこ
とにより、配列番号:2に記載のエノン還元酵素のホモ
ログを得ることが可能である。
グとは、配列番号:2に示されるアミノ酸配列と少なく
とも60%、好ましくは少なくとも70%または80%、
より好ましくは90%以上のホモロジーを有する蛋白質
をいう。蛋白質のホモロジー検索は、たとえばSWISS-PR
OT、PIRなどの蛋白質のアミノ酸配列に関するデータベ
ースやDNA Databank of JAPAN(DDBJ)、EMBL、Gene-Bank
などのDNAに関するデータベース、DNA配列を元にした予
想したアミノ酸配列に関するデータベースなどを対象
に、FASTA programやBLAST programなどを用いて、たと
えば、インターネット上で行うことができる。配列番
号:2に記載のアミノ酸配列を用いてDDBJを対象にBLAS
T programを用いてホモロジー検索を行った結果、既知
の蛋白質の中でもっとも高いホモロジーを示したのは、
Cochliobolus carbonum toxD proteinの36%(Identit
y)、54%(Positives)であった。。本発明の60%以上の
ホモロジーとは、たとえば、BLAST programを用いたPos
itiveの相同性の値を示す。
還元酵素にホモロジーを有する機能未知の予想オープン
リーディングフレーム(ORF)が見いだされた。具体的
には、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccharomyces
cerevisiae)のゲノム解析の結果より得られた3種類の
予想ORFであり、それぞれYNN4、YL60、およびYCZ2と命
名されている。これらの予想アミノ酸配列の本発明のエ
ノン還元酵素に対するホモロジーは、54%, 51%, 53% (i
dentity) , 69%, 68%, 69% (Positive) であった。これ
らの予想蛋白質が本発明のエノン還元酵素活性を有する
か否かを明らかにするために、DDBJに登録されているDN
A配列を基にプライマーを合成し、サッカロマイセス・
セレビジエのゲノムDNAより予想ORF部分をPCRクローニ
ングした。各ORFを発現ベクターに導入し、大腸菌を形
質転換して得られた形質転換株を培養して、それぞれの
蛋白質を発現させた結果、YNN4、YL60、およびYCZ2がい
ずれもエノン還元活性を有することを確認した。これら
の結果は、配列番号:2に60%以上のホモロジーを有
する蛋白質が、本発明のエノン還元活性を有すると推測
するに十分な蓋然性があることを示している。
および配列番号:8に記載のアミノ酸配列のいずれかか
らなるアミノ酸配列を含む蛋白質は、本発明のエノン還
元酵素のホモログの好ましい態様を構成する。
ヌクレオチドは、たとえば、以下のような方法によって
単離することができる。本発明のポリヌクレオチドは、
配列番号:1に記載された塩基配列に基づいて他の生物
からPCRクローニングやハイブリダイズによって単離す
ることもできる。配列番号:1に記載の塩基配列は、ク
ライベロマイセス・ラクティスより単離された遺伝子の
ものである。配列番号:1に記載の塩基配列を利用して
PCR用プライマーをデザインし、クライベロマイセス
属酵母やサッカロマイセス属酵母等の微生物から、エノ
ン還元酵素活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレ
オチドを得ることができる。たとえば、サッカロマイセ
ス・セレビジエよりPCRによって単離することができ
る配列番号:3、配列番号:5、並びに配列番号:7に
記載された塩基配列を有するポリヌクレオチドが、本発
明のエノン還元酵素活性を有する蛋白質をコードしてい
ることは、既に述べたとおりである。あるいは、これら
の塩基配列が明らかにされたポリヌクレオチドをプロー
ブとして、この他の種に由来し、同様の酵素活性を有す
る蛋白質をコードするポリヌクレオチドを単離すること
もできる。
するエノン還元酵素を単離し、その構造的特徴をもと
に、本発明のポリヌクレオチドを得ることもできる。本
発明の酵素を精製後、N末端アミノ酸配列を解析し、さ
らに、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼな
どの酵素により切断後、逆相液体クロマトグラフィーな
どによりペプチド断片を精製後プロテインシーケンサー
によりアミノ酸配列を解析することにより複数のアミノ
酸配列を決めることができる。
それをコードする塩基配列を推定することができる。推
定された塩基配列、あるいは配列番号:1に示す塩基配
列を元にPCR用のプライマーを設計し、酵素生産株の染
色体DNAもしくは、cDNAライブラリーを鋳型として、PCR
を行うことにより本発明のDNAの一部を得ることができ
る。
て、酵素生産株の染色体DNAの制限酵素消化物をファー
ジ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得
られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コ
ロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイ
ゼーションなどにより、本発明のDNAを得ることができ
る。
列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸
長させるためのPCRプライマーを設計し、酵素生産株の
染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応に
よりDNAを鋳型として逆PCRを行うことにより(Genetics
120, 621-623 (1988))、また、RACE法(Rapid Amplif
ication of cDNA End、「PCR実験マニュアル」p25-33,
HBJ出版局)などにより本発明のDNAを得ることも可能で
ある。なお本発明のDNAは、以上のような方法によって
クローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合
成によって得ることもできる。
エノン還元酵素をコードするDNAを公知の発現ベクター
に挿入することにより、エノン還元酵素発現ベクターが
提供される。また、この発現ベクターで形質転換した形
質転換体を培養することにより、本発明のエノン還元酵
素を組換え体から得ることができる。
ン還元酵素をコードするDNAとともにNADPを補酵素とす
る酸化反応を触媒する脱水素酵素をコードするポリヌク
レオチドが挿入された組換えベクターも含む。これらの
脱水素酵素として、グルコース脱水素酵素、グルタミン
酸脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、
グルコース−6−リン酸脱水素酵素、ホスホグルコン酸
脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、グリセロール脱水
素酵素などが挙げられる。これらの酵素は、本発明のエ
ノン還元酵素の補酵素であるNADPHを、NADP+ から再生
する際に利用することができる。
ン還元酵素を発現させるために、形質転換の対象となる
微生物は、NADPHを補酵素とするエノン還元酵素活性を
有するポリペプチドをコードするDNAを含む組み換えベ
クターにより形質転換され、NADPHを補酵素とするエノ
ン還元酵素活性を発現することができる生物であれば特
に制限はない。利用可能な微生物としては、たとえば以
下のような微生物を示すことができる。 エシェリヒア(Escherichia)属 バチルス(Bacillus)属 シュードモナス(Pseudomonas)属 セラチア(Serratia)属 ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属 コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属 ストレプトコッカス(Streptococcus)属 ラクトバチルス(Lactobacillus)属など宿主ベクター系
の開発されている細菌 ロドコッカス(Rhodococcus)属 ストレプトマイセス(Streptomyces)属など宿主ベクター
系の開発されている放線菌 サッカロマイセス(Saccharomyces)属 クライベロマイセス(Kluyveromyces)属 シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属 チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属 ヤロウイア(Yarrowia)属 トリコスポロン(Trichosporon)属 ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属 ピキア(Pichia)属 キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発
されている酵母 ノイロスポラ(Neurospora)属 アスペルギルス(Aspergillus)属 セファロスポリウム(Cephalosporium)属 トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の
開発されているカビ
に適合した組み換えベクターの構築は、分子生物学、生
物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術
に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、モレ
キュラー・クローニング、Cold Spring Harbor Laborat
ories)。微生物中などにおいて、本発明のNADP+を補
酵素とするエノン還元酵素遺伝子を発現させるために
は、まず微生物中において安定に存在するプラスミドベ
クターやファージベクター中にこのDNAを導入し、その
遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのために
は、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモータ
ーを本発明のDNA鎖の5'-側上流に、より好ましくはター
ミネーターを3'-側下流に、それぞれ組み込めばよい。
このプロモーター、ターミネーターとしては、宿主とし
て利用する微生物中において機能することが知られてい
るプロモーター、ターミネーターを用いる必要がある。
これら各種微生物において利用可能なベクター、プロモ
ーター、ターミネータ−などに関して「微生物学基礎講
座8遺伝子工学・共立出版」、特に酵母に関しては、Ad
v. Biochem. Eng. 43, 75-102 (1990)、Yeast 8, 423-4
88 (1992)、などに詳細に記述されている。
リヒア・コリ(Escherichia coli)においては、プラスミ
ドベクターとして、pBR、pUC系プラスミドを利用でき、
lac(β−ガラクトシダーゼ)、trp(トリプトファンオペ
ロン)、tac、trc (lac、trpの融合)、λファージ PL、P
Rなどに由来するプロモーターなどが利用できる。ま
た、ターミネーターとしては、trpA由来、ファージ由
来、rrnBリボソーマルRNA由来のターミネーターなどを
用いることができる。これらの中で、市販のpSE420(In
vitrogen製)のマルチクローニングサイトを一部改変し
たベクターpSE420D(特開2000-189170に記載)が好適に
利用できる。
B110系プラスミド、pC194系プラスミドなどが利用可能
であり、染色体にインテグレートすることもできる。ま
た、プロモーター、ターミネーターとしてapr(アルカリ
プロテアーゼ)、npr(中性プロテアーゼ)、amy(α−アミ
ラーゼ)などが利用できる。
ナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・
セパシア(Pseudomonas cepacia)などで宿主ベクター系
が開発されている。トルエン化合物の分解に関与するプ
ラスミドTOLプラスミドを基本にした広宿主域ベクター
(RSF1010などに由来する自律的複製に必要な遺伝子を含
む)pKT240などが利用可能であり、プロモーター、ター
ミネーターとして、リパーゼ(特開平5-284973)遺伝子
などが利用できる。
リウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactof
ermentum)においては、pAJ43(Gene 39, 281 (1985))な
どのプラスミドベクターが利用可能である。プロモータ
ー、ターミネーターとしては、大腸菌で使用されている
プロモーター、ターミネーターがそのまま利用可能であ
る。
リウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)に
おいては、pCS11(特開昭57-183799)、pCB101(Mol. Gen.
Genet. 196, 175 (1984)などのプラスミドベクターが
利用可能である。
おいては、pHV1301(FEMS Microbiol.Lett. 26, 239 (19
85)、pGK1(Appl. Environ. Microbiol. 50, 94 (198
5))などがプラスミドベクターとして利用可能である。
ては、ストレプトコッカス属用に開発されたpAMβ1(J.
Bacteriol. 137, 614 (1979))などが利用可能であ
り、プロモーターとして大腸菌で利用されているものが
利用可能である。
は、ロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodoch
rous)から単離されたプラスミドベクターが使用可能で
ある (J.Gen. Microbiol. 138,1003 (1992) )。
いては、HopwoodらのGenetic Manipulation of Strepto
myces: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Labo
ratories (1985)に記載の方法に従って、プラスミドを
構築することができる。特に、ストレプトマイセス・リ
ビダンス(Streptomyces lividans)においては、pIJ486
(Mol. Gen. Genet. 203, 468-478, 1986)、pKC1064(Gen
e 103,97-99 (1991) )、pUWL-KS (Gene 165,149-150 (1
995) )が使用できる。また、ストレプトマイセス・バー
ジニア(Streptomyces virginiae)においても、同様のプ
ラスミドを使用することができる(Actinomycetol. 11,
46-53 (1997) )。
にサッカロマイセス・セレビジアエ(Saccharomyces cer
evisiae) においては、YRp系、YEp系、YCp系、YIp系プ
ラスミドが利用可能であり、染色体内に多コピー存在す
るリボソームDNAとの相同組み換えを利用したインテグ
レーションベクター(EP 537456など)は、多コピーで
遺伝子を導入でき、かつ安定に遺伝子を保持できるため
極めて有用である。また、ADH(アルコール脱水素酵
素)、GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵
素)、PHO(酸性フォスファターゼ)、GAL(β−ガラクトシ
ダーゼ)、PGK(ホスホグリセレートキナーゼ)、ENO(エノ
ラーゼ)などのプロモーター、ターミネーターが利用可
能である。
イセス・ラクティス(Kluyveromyceslactis)において
は、サッカロマイセス・セレビジアエ由来2μm系プラス
ミド、pKD1系プラスミド(J. Bacteriol. 145, 382-390
(1981))、キラー活性に関与するpGKl1由来プラスミ
ド、クライベロマイセス属における自律増殖遺伝子KARS
系プラスミド、リボソームDNAなどとの相同組み換えに
より染色体中にインテグレート可能なベクタープラスミ
ド(EP 537456など)などが利用可能である。また、AD
H、PGKなどに由来するプロモーター、ターミネーターが
利用可能である。
es)属においては、シゾサッカロマイセス・ポンベ由来
のARS (自律複製に関与する遺伝子)及びサッカロマイセ
ス・セレビジアエ由来の栄養要求性を相補する選択マー
カーを含むプラスミドベクターが利用可能である(Mol.
Cell. Biol. 6, 80 (1986))。また、シゾサッカロマ
イセス・ポンベ由来のADHプロモーターなどが利用でき
る(EMBO J. 6, 729 (1987))。特に、pAUR224は、宝酒
造から市販されており容易に利用できる。
es)においては、チゴサッカロマイセス・ロウキシ (Zyg
osaccharomyces rouxii)由来の pSB3(Nucleic Acids R
es.13, 4267 (1985))などに由来するプラスミドベクタ
ーが利用可能であり、サッカロマイセス・セレビジアエ
由来 PHO5 プロモーターや、チゴサッカロマイセス・ロ
ウキシ由来 GAP-Zr(グリセルアルデヒド−3−リン酸脱
水素酵素)のプロモーター(Agri. Biol. Chem. 54, 252
1 (1990))などが利用可能である。
ストリス(Pichia pastoris)などにピキア由来自律複製
に関与する遺伝子 (PARS1、PARS2)などを利用した宿主
ベクター系が開発されており(Mol. Cell. Biol. 5, 33
76 (1985))、高濃度培養とメタノールで誘導可能な AO
X など強いプロモーターが利用できる(Nucleic Acids
Res. 15, 3859 (1987))。また、ピキア・アンガスタ(P
ichia angusta、旧名ハンゼヌラ・ポリモルファ Hansen
ula polymorpha)において宿主ベクター系が開発されて
いる。ベクターとしては、ピキア・アンガスタ由来自律
複製に関与する遺伝子(HARS1、HARS2)も利用可能であ
るが、比較的不安定であるため、染色体への多コピーイ
ンテグレーションが有効である(Yeast 7, 431-443 (19
91))。また、メタノールなどで誘導される AOX(アル
コールオキシダーゼ)、FDH(ギ酸脱水素酵素)のプロモ
ーターなどが利用可能である。
ャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンデ
ィダ・アルビカンス(Candida albicans)、キャンディダ
・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・
ウチルス (Candida utilis) などにおいて宿主ベクター
系が開発されている。キャンディダ・マルトーサにおい
てはキャンディダ・マルトーサ由来ARSがクローニング
され(Agri. Biol. Chem.51, 51, 1587 (1987))、これ
を利用したベクターが開発されている。また、キャンデ
ィダ・ウチルスにおいては、染色体インテグレートタイ
プのベクターは強力なプロモーターが開発されている
(特開平 08-173170)。
は、アスペルギルス・ニガー (Aspergillus niger)、ア
スペルギルス・オリジー (Aspergillus oryzae) などが
カビの中で最もよく研究されており、プラスミドや染色
体へのインテグレーションが利用可能であり、菌体外プ
ロテアーゼやアミラーゼ由来のプロモーターが利用可能
である(Trends in Biotechnology 7, 283-287 (198
9))。
は、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)を利
用したホストベクター系が開発され、菌体外セルラーゼ
遺伝子由来プロモーターなどが利用できる(Biotechnol
ogy 7, 596-603 (1989))。
て様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕を
用いた昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、ト
ウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種蛋白
質を発現させる系が開発されており、好適に利用でき
る。
ン還元酵素を発現する形質転換体は、本発明の酵素の製
造や、以下に述べるα,β−不飽和ケトンの炭素−炭素
2重結合の選択的還元によるα,β−飽和ケトンの製造
に用いることができる。
該酵素または蛋白質を産生する微生物、および該微生物
の処理物、からなる群から選択されるいずれかの酵素活
性物質をα,β不飽和ケトンに作用させる工程を含む、
α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に
還元する方法に関する。本発明の酵素、酵素を含む培養
物、その処理物が反応溶液と接触させることにより、目
的とする酵素反応を行わせることができる。
しては、配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からな
る蛋白質、そのホモログ、あるいは前記理化学的性質
(A)−(C)を有するエノン還元酵素を用いることが
できる。エノン還元酵素は、精製されたものの他、粗精
製酵素として用いることもできる。更に本発明において
は、エノン還元酵素として、エノン還元酵素の産生能を
有する細胞を用いることもできる。本発明において使用
するエノン還元酵素生産能を有する細胞は、NADPH依存
性エノン還元酵素生産能を有するクライベロマイセス属
に属するすべての菌株、突然変異株、変種、遺伝子操作
技術の利用により作成された本発明の酵素生産能を獲得
した形質転換体を含む。
の具体例に限定されるものではない。反応溶液は、基質
や酵素反応に必要な補酵素であるNADPHを酵素活性の発
現に望ましい環境を与える適当な溶媒に溶解したもので
ある。本発明におけるエノン還元酵素を含む微生物の処
理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機
溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、
あるいはガラスビーズや酵素処理によって菌体を破砕し
た無細胞抽出液やそれを部分精製したものなどが含まれ
る。
定されない。たとえば、次の一般式Iで表される化合物
を、α,β−不飽和ケトンとして示すことができる。
たは無置換のアルケニル基、置換または無置換のアラル
キル基、置換または無置換のアルコキシ基を示す。R2は
水素もしくは、置換又は無置換の短鎖アルキル基を示,
R3は、置換又は無置換の短鎖アルキル基を示す。) より具体的には、メチルビニルケトン、エチルビニルケ
トン、3−ペンテン−2−オン、3−メチル−3−ペン
テン−2−オン等が好適に用いられる。
生する微生物もしくはその処理物をα−置換を有する
α,β−不飽和ケトンに作用させることにより、光学活
性な飽和ケトンの合成にも利用できる。
は、NADPHの再生系を組み合わせることができる。エノ
ン還元酵素による還元反応に付随して、NADPHからNADP+
が生成する。NADP+からNADPHへの再生は、微生物の含有
するNADP+からNADPHを再生する酵素(系)によって行う
ことができる。これらNADP+還元能は、反応系にグルコ
ースまたはエタノールを添加することにより、増強する
ことが可能である。また、NADP+からNADPHを生成する能
力を有する酵素、例えば、グルコース脱水素酵素、グル
タミン酸脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素
酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、ホスホグル
コン酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、グリセロー
ル脱水素酵素などを含む微生物、その処理物、ならびに
部分精製もしくは精製酵素を用いてNADPHの再生を行う
ことができる。例えば、上記グルコース脱水素酵素の場
合には、グルコースからδ−グルコノラクトンへの変換
を利用することにより、NADPHの再生が行われる。
る成分は、本発明によるケトンの製造のための反応系に
添加、もしくは固定化したものを添加することができ
る。あるいはNADPHの交換が可能な膜を介して接触させ
ることができる。
で形質転換した微生物を、生存した状態で前記ケトンの
製造方法に利用する場合には、NADPH再生のための付加
的な反応系を不要とできる場合がある。すなわち、NADP
H再生活性の高い微生物を宿主として用いることによ
り、形質転換体を用いた還元反応において、NADPH再生
用の酵素を添加することなく効率的な反応が行える。さ
らに、NADPH再生に利用可能なグルコース脱水素酵素、
ギ酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、アミノ酸脱水
素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)
などの遺伝子を、本発明のNADPH依存性エノン還元酵素
をコードするDNAと同時に宿主に導入することによっ
て、より効率的なNADPH再生酵素とNADPH依存性エノン還
元酵素の発現、還元反応を行うことも可能である。これ
らの2つもしくはそれ以上の遺伝子の宿主への導入に
は、大腸菌においては不和合性をさけるために複製起源
のことなる複数のベクターに別々に遺伝子を導入した組
み換えベクターにより宿主を形質転換する方法や、単一
のベクターに両遺伝子を導入する方法、片方、もしく
は、両方の遺伝子を染色体中に導入する方法などを利用
することができる。
ルコース脱水素酵素として、バシラス・サブチルス(Ba
cillus subtilis)に由来するグルコース脱水素酵素を
示すことができる。この酵素をコードする遺伝子は既に
単離されている。あるいは既に明らかにされているその
塩基配列に基づいて、PCRやハイブリダイズスクリーニ
ングによって、当該微生物から取得することもできる。
る場合には、プロモーター、ターミネーターなど発現制
御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法やラ
クトースオペロンのような複数のシストロンを含むオペ
ロンとして発現させることも可能である。
で、あるいは水に溶解しにくい有機溶媒と水との2相中
で実施することができる。水に溶解しにくい有機溶媒と
しては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、
クロロホルム、n-ヘキサン、イソオクタンなどを用いる
ことができる。あるいは、エタノール、アセトン、ジメ
チルスルホキシド、アセトニトリル等の有機溶媒と水性
媒体との混合系中で行うこともできる。
ー等を利用して行うことも可能である。特に、本反応の
基質となるα,β−不飽和ケトンは水に対して難溶性の
物が多いために、ポリプロピレンなどの疎水性の膜を介
して本発明の酵素、本発明の酵素を含む微生物、その処
理物を含む水相と基質α,β−不飽和ケトンを含む有機
溶媒相を接触させ、反応させることにより基質及び生成
物による阻害作用を低減させることができる。
は、以下の条件で行うことができる。 ・反応温度:4-55℃、好ましくは10-45℃ ・pH:4-9、好ましくは5.5-8、さらに好ましくはpH6.5-
7.0 ・基質濃度:0.01-90%、好ましくは0.1-20%
はNADPHを0.001 mM-100 mM、好ましくは、0.01-10 mM添
加することができる。また、基質は反応開始時に一括し
て添加することも可能であるが、反応液中の基質濃度が
高くなりすぎないように連続的、もしくは非連続的に添
加することが望ましい。
合物、例えばグルコース脱水素酵素を利用する場合のグ
ルコース、ギ酸脱水素酵素を利用する場合のギ酸、アル
コール脱水素酵素を利用する場合のエタノールもしくは
2-プロパノール、グルタミン酸脱水素酵素を利用する場
合のL−グルタミン酸、リンゴ酸脱水素酵素を利用する
場合のL−リンゴ酸、等は、基質α,β−不飽和ケトン
に対してモル比で0.1-20、好ましくは0.5-5倍過剰に添
加することができる。NADPH再生用の酵素、例えばグル
コース脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、アルコール脱水素
酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ
酸脱水素酵素など)等は、本発明のNADPH依存性エノン
還元酵素に比較して酵素活性で0.1-100倍、好ましくは
0.5-20倍程度添加することができる。
り生成するケトンの精製は、菌体、蛋白質の遠心分離、
膜処理等による分離、溶媒抽出、蒸留、クロマトグラフ
ィー等を適当に組み合わせることにより行うことができ
る。
素は、精製酵素に限定されず、部分精製酵素、本酵素を
含む微生物菌体、その処理物も含まれる。なお本発明に
おける処理物とは、菌体、精製酵素、あるいは部分精製
酵素などを様々な方法で固定化処理したものを総称して
示す用語である。以下、実施例により本発明を更に詳し
く説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。
1.2LのYM培地(グルコース20g/L、酵母エキス3g/
L、麦芽エキス3g/L、ペプトン5g/L、pH 6.0)で培
養し、遠心分離により菌体を調製した。得られた湿菌体
を50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)、0.02
%2−メルカプトエタノール及び2mMフェニルメタンス
ルホニルフルオリド(PMSF)で澱懸し、ビードビーター
(Biospec社製)により破砕後、遠心分離により菌体残
渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液に
プロタミン硫酸を添加し、遠心分離により除核酸した上
清を得た。その上清に硫安を30%飽和になるまで添加
し、30%硫安を含む標準緩衝液(10mMトリス−塩酸
緩衝液(pH8.5)、0.01% 2−メルカプトエタ
ノール、10% グリセロール)で平衡化したフェニル
−セファロースHP(2.6cm×10cm)に添加し、硫安
濃度を30%−0%の勾配溶出を行った。
性は、勾配溶出部分に2つのピークがみられた。これら
のピークのうち後方に溶出したピーク部分を回収し、限
外濾過により濃縮した。濃縮した酵素液を標準緩衝液に
対して透析した後、同緩衝液で平衡化したMonoQ(0.
5 cm× 5cm)に添加した。標準緩衝液でカラムを洗浄
した後、0−0.5M塩化ナトリウムの勾配溶出を行っ
た。溶出した活性画分を回収し、限外濾過により濃縮し
た。濃縮酵素液に硫安を30%飽和添加し、30%飽和
硫安を含む標準緩衝液で平衡化したフェニル−スーパー
ロース(0.5cm×5cm)に添加した。同緩衝液で洗浄
後、30%−0%飽和硫安で勾配溶出を行った。溶出し
た活性画分を回収した。
活性画分を、SDS-PAGEにより解析した結果、単一バンド
であった(図1)。精製酵素の比活性は約31.7 U/m
gであった。精製の要約を表1に示す。
定) 実施例1で得られた酵素のサブユニットの分子量をSDS-
PAGEにより求めた結果、4.3万であった。また、スー
パーデックスG200のゲルろ過カラムを用いて分子量を測
定したところ、約4.2万であった。これらの結果よ
り、本発明のエノン還元酵素はモノマー酵素と予想され
た。
) リン酸カリウム緩衝液、ブリットン・ロビンソンの広域
緩衝液を用いてpHを変化させて、実施例1で得られた酵
素のメチルビニルケトンの還元活性を調べ、最大活性を
100とした相対活性で表し、図2に示した。反応の至
適pHは6.5−7.0であった。
度) 実施例1で得られた酵素を標準反応条件のうち温度だけ
を変化させて、メチルビニルケトンの還元活性を測定
し、最大活性を100とした相対活性で表し、図3に示
した。反応の至適温度は37−45℃であった。
性) 実施例1で得られた酵素を種々のエノン、ケトン、およ
びアルデヒドと反応させ、その還元反応の活性をメチル
ビニルケトンの還元を100とした相対活性で表し、表
2に示した。
−ペンタノンの合成) 200mMリン酸カリウム緩衝液(pH 6.5)、44mg
NADH、エノン還元酵素1U、0.2%エチルビニルケト
ンを含む反応液中で、25℃で終夜反応させた。生成し
た3−ペンタノンをガスクロマトグラフィーで定量し、
出発原料であるエチルビニルケトンに対する収率を求め
た。ガスクロマトグラフィーの条件は以下のとおりであ
る。すなわち、Porapak PS(Waters、mesh 50-80、3.2
mmx210cm)を用い、カラム温度を130℃とし、水素
炎イオン化検出器(FID)を利用して分析した。その結
果、反応の収率は100%であった。
ノ酸配列) 実施例1で得られた酵素を用いて、SDS−PAGEのゲルよ
り、エノン還元酵素を含むゲル断片を切り出し、2回洗
浄後、リジルエンドペプチダーゼを用いて、35℃で終夜
イン・ゲル・ダイジェションを行った。消化したペプチ
ドを逆相HPLC (東ソー製TSK gel ODS-80-Ts、2.0mm
× 250mm) を用い、0.1% トリフルオロ酢酸 (TFA)
中でアセトニトリルのグラジエント溶出によりペプチド
を分離し、分取した。
ep_65とし、それぞれプロテインシーケンサー(Hewlett
Packard G1005A Protein Sequencer System)によりア
ミノ酸配列の解析を行った。lep_64、lep_65のアミノ酸
配列をそれぞれ配列番号:9,10で示した。
ティスからの染色体DNAの精製) クライベロマイセス・ラクティス IFO 1267株を
YM培地で培養し、菌体を調製した。菌体からの染色体DN
Aの精製は、Meth. Cell Biol. 29, 39-44 (1975) に記
載の方法により行った。
ア領域のクローニング) lep_64、lep_65のアミノ酸配列を元にそれぞれセンスプ
ライマー、アンチセンスプライマーを計3種類合成し
た。それぞれの塩基配列を配列番号:11(KR2-64U)、
12(KR2-65D)、13(KR2-65E)に示した。
マーを選び、プライマーを各50pmol、dNTP10nmol、
クライベロマイセス・ラクティス由来染色体DNA50n
g、AmpliTaq用緩衝液 (宝酒造製)、AmpliTaq2U (宝酒
造製)を含む50μLの反応液を用い、変性(94℃、30
秒)、アニール(45℃、30秒)、伸長(70℃、1分)を30
サイクル、GeneAmp PCR System 2400 (パーキンエルマ
ー製)を用いて行った。
動により解析した結果、KR2-64UとKR2-65Dの組み合わせ
において特異的と思われるバンドが検出できた。得られ
たDNA断片を、フェノール/クロロホルム抽出後、エタ
ノール沈殿として回収した。得られたDNA断片を、pT7Bl
ue(R) Tベクター(Novagen社)とTakara Ligation Kit
を用いて、ライゲーションし、大腸菌JM109株を形質転
換した。
を含むLB培地(1%バクト−トリプトン、0.5%バ
クト−酵母エキス、1%塩化ナトリウム、以下、LB培地
と略す)プレート上で生育させ、Blue/Whiteセレクショ
ン法により選別されたいくつかの白色のコロニーより市
販のM13-21(TGTAAAACGACGGCCAGT(配列番号:2
8))、M13-RP(CAGGAAACAGCTATGACC(配列番号:2
9))プライマーを用いてコロニーダイレクトPCRを行
い、挿入断片のサイズを確認した。目的とするDNA断片
が挿入されていると考えられるコロニーをアンピシリン
を含む液体LB培地で培養し、Flexi-Prep (ファルマシ
ア製) によりプラスミドを精製し、pKLR2とした。
塩基配列を解析した。DNA塩基配列の解析には、BigDye
Terminator Cycle Sequencing FS ready Reaction Kit
(パーキンエルマー製)を用いてPCRを行い、DNAシーケン
サーABI PRISMTM 310(パーキンエルマー製)により行っ
た。決定されたコア領域の塩基配列を配列番号:14と
して示した。
コア領域周辺の塩基配列の解析) クライベロマイセス・ラクティス由来染色体DNAを制限
酵素HaeII、またはPstIで消化し、T4リガーゼを用いて1
6℃で終夜セルフ・ライゲーション反応により、各断片
を環化させた。次に、プライマーKL2-5U(配列番号:1
5)およびKL2-3D(配列番号:16)を各100pmol、
環化DNAを25ng、Ex-Taq用緩衝液 (宝酒造製)、Ex-Taq
2U (宝酒造製)を含む50μLの反応液を用い、変性(9
4℃、30秒) 、アニール(55℃、30秒)、伸長(72℃、
7分)を30サイクル、GeneAmp PCRSystem 2400 (パーキ
ンエルマー製)を用いて行った。PCR反応液の一部をアガ
ロースゲル電気泳動により解析した結果、5000bp
あたりに特異的と思われるバンドが検出できた。このDN
A断片をSephaglas BandPrep Kit(ファルマシア製)によ
り精製し、塩基配列をプライマーウォーキング法により
解析した。用いたプライマーは、KL2-5U、KL2-3D、KL2-
Sq1(配列番号:17)、KL2-Sq2(配列番号:18)、
KL2-Sq3(配列番号:19)の5種類。DNA塩基配列の解
析には、BigDye Terminator Cycle Sequencing FS read
y Reaction Kit (パーキンエルマー製)を用いてPCRを行
い、DNAシーケンサーABI PRISMTM 310 (パーキンエルマ
ー製)により行った。その結果、エノン還元酵素のORF配
列を決定することができた。決定したDNA配列は配列番
号:1に、コードする蛋白質の配列は配列番号:2に示
す。DNA配列からのORF検索、予想アミノ酸配列への翻訳
などは、Genetyx-WIN(ソフトウェア開発株式会社製)
を用いて行った。 配列番号:15:KL2-5U TCCGGTACCGACAACTGTACCAGCAATGTC 配列番号:16:KL2-3D ATCGGTACCTATACTAAGATTGTAACTGTTGC 配列番号:17:KL2-Sq1 CCGGGTACCCTTTTAGGGTGA 配列番号:18:KL2-Sq2 TCATGAAGCCACAGTTAAATTCG 配列番号:19:KL2-Sq3 ATATTCATATGATGGATATCACCG
クローニング) エノン還元酵素の構造遺伝子配列を元にORFクローニン
グ用のプライマーKLCR2-N(配列番号:20)、KLCR2-C
(配列番号:21)を合成した。プライマーを各50pm
ol、dNTP10nmol、クライベロマイセス・ラクティス由
来染色体DNA50ng、Pfu Turbo-DNA polymerase用緩衝
液 (STRATAGENE製)、Pfu Turbo-DNA polymerase 2.5 U
(STRATAGENE製)を含む50μLの反応液を用い、変性(9
5℃、2分30秒)、アニール(55℃、1分)、伸長(75
℃、1分30秒)を30サイクル、GeneAmp PCR System 2400
(パーキンエルマー製)を用いて行った。 配列番号:20:KLCR2-N CTGGAATTCTACCATGGCTTCAGTTCCAACCACTCAAAAAG 配列番号:21:KLCR2-C GACAAGCTTCTAGATTATAACCTGGCAACATACTTAACA
動により解析した結果、特異的と思われるバンドが検出
できた。得られたDNA断片を、フェノール/クロロホル
ム抽出後、エタノール沈殿として回収した。DNA断片を
制限酵素NcoI、XbaIで2重消化し、アガロースゲル電気
泳動を行い、目的とするバンドの部分を切り出し、Sepa
glas BandPrep Kit(ファルマシア製)により精製した。
得られたDNA断片を、NcoI、XbaIで2重消化したpSE420D
とTakara Ligation Kitを用いて、ライゲーションし、
大腸菌JM109株を形質転換した。
を含むLB培地プレート上で生育させ、いくつかのコロニ
ーよりKLCR2-N、KLCR2-Cプライマーを用いてコロニーダ
イレクトPCRを行い、挿入断片のサイズを確認した。目
的のサイズである事が確認できたコロニーよりプラスミ
ドを精製し、挿入断片の塩基配列を解析した。目的とす
るエノン還元酵素遺伝子を持つプラスミドをpSE-KLR1
(図4) とした。
大腸菌による生産) エノン還元酵素を発現するプラスミドpSE-KLR1で形質転
換された大腸菌HB101株をアンピシリンを含む液体LB培
地で終夜30℃培養し、0.1mM IPTGを加え、さらに4時間
培養を行った。菌体を遠心分離により集菌した後、0.02
% 2-メルカプトエタノール、2mM PMSF、10%グリセリン
を含む50mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.0)に懸濁
し、密閉式超音波破砕装置UCD-200TM(コスモバイオ
製)を用いて3分間処理することで、菌体を破砕した。
菌体破砕液を遠心分離し、その上清を菌体抽出液中とし
て回収し、種々の基質に対する活性を測定した。また該
プラスミドを含まない大腸菌HB101株をLB培地で終夜培
養し、0.1mM IPTG添加後さらに4時間培養した菌体を、
同様に破砕して種々の基質に対する活性を測定した。結
果を表3に示す。
ビジエからの染色体DNAの精製) サッカロマイセス・セレビジエ X2180-1B (Yeast Genet
ic Stock Center) をYM培地で培養し、菌体を調製し
た。菌体からの染色体DNAの精製は、Meth. Cell Biol.
29, 39-44 (1975) に記載の方法により行った。
グ YNN4 のクローニング) DDBJに登録されている予想蛋白質YNN4 (SWISS-PROT Acc
ession No., P53912)に対応するDNA配列 (DDBJ Accessi
on No. Z46843) を基にPCR用プライマーYNN4-ATG1(配
列番号:22)、YNN-TAA1(配列番号:23)を合成し
た。
サッカロマイセス・セレビジエ由来染色体DNA50ng、P
fu DNA polymerase用緩衝液 (STRATAGENE製)、Pfu DNA
polymerase 2U (STRATAGENE製)を含む50μLの反応液
を用い、変性(95℃、45秒)、アニール(50℃、
1分)、伸長(75℃、6分)を30サイクル、GeneAmp
PCR System 2400 (パーキンエルマー製)をPCRを行った
結果、特異的な増幅産物が得られた。増幅産物をフェノ
ール処理後、制限酵素AflIII, XbaIで2重消化し、制限
酵素NcoI, XbaIで2重消化したベクターpSE420DとTAKARA
Ligation Kit によりライゲーションした。ライゲーシ
ョンしたDNAにより大腸菌JM109株を形質転換し、アンピ
シリン(50mg/L)を含むLB培地で生育し、得られた
形質転換株よりプラスミドをFlexiPrepにより精製し
た。得られたプラスミドをpSE-YNN4とした。
析し、その結果を配列番号:3に示した。得られた塩基
配列は、DDBJに登録されたいる塩基配列と完全に一致し
た。配列番号:3の塩基配列から予想されるアミノ酸配
列を配列番号:4に示した。 配列番号:22:YNN4-ATG1 CAAACATGTCTGCCTCGATTCCAGA 配列番号:23:YNN4-TAA1 CAGTCTAGATTATTTCAAGACGGCAACCAAC
グ YL60 のクローニング) DDBJに登録されている予想蛋白質YL60 (SWISS-PROT Acc
ession No., P54007)に対応するDNA配列 (DDBJ Accessi
on No. U22383) を基にPCR用プライマーYL60-ATG2(配
列番号:24)、YL60-TAA1(配列番号:25)を合成
した。プライマーを各25pmol、dNTP10nmol、サッカ
ロマイセス・セレビジエ由来染色体DNA50ng、Pfu DNA
polymerase用緩衝液 (STRATAGENE製)、Pfu DNA polyme
rase 2U (STRATAGENE製)を含む50μLの反応液を用
い、変性(95℃、45秒)、アニール(50℃、1
分)、伸長(75℃、6分)を30サイクル、GeneAmp PC
R System 2400 (パーキンエルマー製)をPCRを行った結
果、特異的な増幅産物が得られた。
oI, XbaIで2重消化し、制限酵素NcoI, XbaIで2重消化し
たベクターpSE420DとTAKARA Ligation Kit によりライ
ゲーションした。ライゲーションしたDNAにより大腸菌J
M109株を形質転換し、アンピシリン(50mg/L)を含む
LB培地で生育し、得られた形質転換株よりプラスミド
をFlexiPrepにより精製した。得られたプラスミドをpSE
-YL60とした。プラスミドの挿入DNA部分の塩基配列を解
析し、その結果を配列番号:5に示した。得られた塩基
配列は、DDBJに登録されている塩基配列と完全に一致し
た。配列番号:5の塩基配列から予想されるアミノ酸配
列を配列番号:6に示した。
グ YCZ2 のクローニング) DDBJに登録されている予想蛋白質YCZ2 (SWISS-PROT Acc
ession No., P25608)に対応するDNA配列 (DDBJ Accessi
on No. X59720) を基にPCR用プライマーYCZ2-ATG1(配
列番号:26)、YCZ2-TAA1(配列番号:27)を合成
した。プライマーを各25pmol、dNTP10nmol、サッカ
ロマイセス・セレビジエ由来染色体DNA50ng、Pfu DNA
polymerase用緩衝液 (STRATAGENE製)、Pfu DNA polyme
rase 2 U (STRATAGENE製)を含む50μLの反応液を用
い、変性(95℃、45秒)、アニール(50℃、1
分)、伸長(75℃、6分)を30サイクル、GeneAmp PC
R System 2400 (パーキンエルマー製)をPCRを行った結
果、特異的な増幅産物が得られた。
pHI, XbaIで2重消化し、制限酵素NcoI, XbaIで2重消化
したベクターpSE420DとTAKARA Ligation Kit によりラ
イゲーションした。ライゲーションしたDNAにより大腸
菌JM109株を形質転換し、アンピシリン(50mg/L)を
含むLB培地で生育し、得られた形質転換株よりプラス
ミドをFlexiPrepにより精製した。得られたプラスミド
をpSE-YCZ2とした。プラスミドの挿入DNA部分の塩基配
列を解析し、その結果を配列番号:7に示した。得られ
た塩基配列は、1089位のAがCに置換していたが、アミノ
酸は同じであった。塩基配列から予想されるアミノ酸配
列を配列番号:8に示した。 配列番号:26:YCZ2-ATG1 GAAATCATGAAAGCTGTCGTCATTGAA 配列番号:27:YCZ2-TAA1 GTTTCTAGATTAGTTTAATACGGCAACKAGTTTTTCA
グ YNN4、YL60、およびYCZ2 の活性確認) pSE-YNN4, pSE-YL60, pSE-YCZ2をそれぞれ含有する大腸
菌JM109株をアンピシリンを含むLB培地で培養し、0.1 m
M IPTGにより誘導を4時間行い、遠心分離により集菌菌
体を得た。それぞれの菌体を菌体破砕液(50mM KPB pH
8.0、1mM EDTA、0.02% 2-ME、2mM PMSF、10% Glycero
l)に懸濁し、超音波により菌体を破砕後、遠心分離に
より得られた上清を無細胞抽出液とした。各無細胞抽出
液を用いてエノン還元活性を測定した結果、0.268 U/mg
-protein, 0.198 U/mg-protein, 0.133 U/mg-proteinの
活性が得られ、本発明の酵素の3種類のホモログがいず
れもエノン還元酵素活性を有することが確認された。
結合を選択的に還元することができる新規なエノン還元
酵素が提供された。この酵素によって、医薬品の原料な
どに有用なケトンを酵素的に、製造することが可能とな
った。本発明のエノン還元酵素は、α,β−不飽和ケト
ンの炭素−炭素2重結合に対する選択性に優れる。した
がって、目的とするケトンを高い収率で得ることができ
る。
る。レーン1は分子量マーカー、レーン2は実施例1で
得られた酵素を示す。
ン還元活性のpH依存性を示す図である。
ン還元活性の温度依存性を示す図である。
KLR1を模式的に示した図である。
Claims (19)
- 【請求項1】次の(A)から(C)に示す理化学的性質
を有するエノン還元酵素。 (A)作用 還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン
酸を電子供与体として、α,β−不飽和ケトンの炭素−
炭素2重結合を還元し、対応する飽和炭化水素を生成す
る。 (B)基質特異性 (1)α,β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を還元
するが、実質的にケトンの還元活性は無い。 (2)電子供与体としては、還元型β−ニコチンアミドア
デニンジヌクレオチドよりも還元型β−ニコチンアミド
アデニンジヌクレオチドリン酸に対して、有意に高い活
性を有する。 (3)ケトンからβ位炭素の2つの置換基がともに水素で
ない基質に対しては実質的に作用しない。 (4)炭素−炭素2重結合が環状構造中に存在する基質に
対しては実質的に作用しない。 (C)至適pH pH 6.5−7.0 - 【請求項2】更に次に示す理化学的性質(D)−(E)
を有する請求項1に記載のエノン還元酵素。 (D)至適温度 37−45℃ (E)分子量 ドデシル硫酸ナトリウム −ポリアクリルアミドゲル電
気泳動により約43,000。ゲル濾過により約42,
000。 - 【請求項3】クライベロマイセス(Kluyveromyces)属
に由来する請求項1に記載の新規エノン還元酵素。 - 【請求項4】クライベロマイセス属に属し、請求項1に
記載のエノン還元酵素生産能を有する微生物を培養する
ことを特徴とする請求項1に記載のエノン還元酵素を取
得する方法。 - 【請求項5】クライベロマイセス属に属する微生物が、
クライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromayces lac
tis)である、請求項4に記載の方法。 - 【請求項6】下記(a)から(e)のいずれかに記載の
エノン還元活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレ
オチド。 (a)配列番号:1に記載の塩基配列を含むポリヌクレ
オチド、(b)配列番号:2に記載のアミノ酸配列をコ
ードするポリヌクレオチド、(c)配列番号:2に記載
のアミノ酸配列において、1若しくは複数のアミノ酸が
置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配
列をコードするポリヌクレオチド、(d)配列番号:1
に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリン
ジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチ
ド、(e)配列番号:2に記載のアミノ酸配列と60%
以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌ
クレオチド、 - 【請求項7】請求項6に記載のポリヌクレオチドによっ
てコードされる蛋白質。 - 【請求項8】請求項6に記載のポリヌクレオチドが挿入
された組換えベクター。 - 【請求項9】更にβ-ニコチンアミドアデニンジヌクレ
オチドリン酸を補酵素とする酸化還元反応を触媒するこ
とができる脱水素酵素をコードするポリヌクレオチドが
挿入された、請求項8に記載の組換えベクター。 - 【請求項10】請求項6に記載のポリヌクレオチド、ま
たは請求項8に記載のベクターを発現可能に保持した形
質転換体。 - 【請求項11】請求項10に記載の形質転換体を培養す
る工程を含む請求項7に記載の蛋白質の製造方法。 - 【請求項12】下記(a)から(e)のいずれかに記載
の、エノン還元活性を有する蛋白質をコードするポリヌ
クレオチド。 (a)配列番号:3、配列番号:5、および配列番号:
7からなる群から選択されたいずれかに記載の塩基配列
を含むポリヌクレオチド、(b)配列番号:4、配列番
号:6、および配列番号:8からなる群から選択された
いずれかに記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコード
するポリヌクレオチド、(c)配列番号:4、配列番
号:6、および配列番号:8からなる群から選択された
いずれかに記載のアミノ酸配列において、1若しくは複
数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加
したアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号:3、配列番号:5、および配列番号:
7からなる群から選択されたいずれかに記載の塩基配列
からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下
でハイブリダイズするポリヌクレオチド、(e)配列番
号:4、配列番号:6、および配列番号:8からなる群
から選択されたいずれかに記載のアミノ酸配列と60%
以上の相同性を有するアミノ酸配列をコードするポリヌ
クレオチド、 - 【請求項13】請求項12に記載のポリヌクレオチドに
よってコードされる蛋白質。 - 【請求項14】請求項12に記載のポリヌクレオチドが
挿入された組換えベクター。 - 【請求項15】更にβ-ニコチンアミドアデニンジヌク
レオチドリン酸を補酵素とする酸化還元反応を触媒する
ことができる脱水素酵素をコードするポリヌクレオチド
が挿入された、請求項14に記載の組換えベクター。 - 【請求項16】請求項12に記載のポリヌクレオチド、
または請求項14に記載のベクターを発現可能に保持し
た形質転換体。 - 【請求項17】請求項16に記載の形質転換体を培養す
る工程を含む請求項13に記載の蛋白質の製造方法。 - 【請求項18】請求項1に記載のエノン還元酵素、請求
項7に記載の蛋白質、請求項13に記載の蛋白質、該酵
素または蛋白質を産生する微生物、および該微生物の処
理物、からなる群から選択されるいずれかの酵素活性物
質をα,β不飽和ケトンに作用させる工程を含む、α,
β−不飽和ケトンの炭素−炭素2重結合を選択的に還元
する方法。 - 【請求項19】該酵素または蛋白質を産生する微生物
が、請求項11および/または請求項16に記載の形質
転換体である請求項18に記載の方法。
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