JP5333966B2 - (s)−3−キヌクリジノールの製造方法 - Google Patents

(s)−3−キヌクリジノールの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、(S)−3−キヌクリジノールを選択的に製造する方法に関する。(S)−3−キヌクリジノールは、医農薬中間体を始め、各種ファインケミカルの中間体として用いられ、産業上有用な化合物である。
微生物学的方法により不斉還元酵素を利用して、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールを製造する方法としては次の方法が知られている。
アルスロバクター(Arthrobacter)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ロドスポリディウム(Rhodosporidium)属に属する微生物からなる群から選ばれる微生物を作用させる方法(特許文献1)がある。この方法では、光学純度は4%eeから最高95%ee、蓄積濃度は1.2g/L〜1.6g/Lで(S)−3−キヌクリジノールを得ている(25mLの培養液を集菌し、0.5%の3−キヌクリジノンを含む反応液を2mL添加して、30℃、3日間反応した結果)が、光学純度と蓄積濃度がともに低いという問題点がある。
キャンディダ(Candida)属、ピチア(Pichia)属などに属する微生物からなる群から選ばれる微生物を作用させる方法(特許文献2)がある。この方法では、光学純度は18%eeから最高100%eeであり、光学純度が100%eeの微生物で蓄積濃度は0.3g/L(100mL培養液に、3−キヌクリジノンを808mg添加し、25℃で5日間培養を継続し、反応を行った結果)で、(S)−3−キヌクリジノールを得ているが、蓄積濃度が低いという問題点がある。
ミクロコッカス(Micrococcus)属に属する微生物を作用させる方法(特許文献3)がある。この方法では、光学純度は最高100%eeで、蓄積濃度は0.03g/L(100mL培養液を集菌し、0.5%の3−キヌクリジノンを含む反応液を15mL添加して、30℃、48時間反応した結果)で得ているが、蓄積濃度が低いという問題点がある。
特開平10−243795号 特開平11−196890号 特開2002−153293号
前述のように、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールを生産することのできる微生物が報告されているが、光学純度や蓄積濃度が低いという問題点を有していた。
本発明者らは、上記問題点を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、ロドコッカス(Rhodococcus)属、又はシュードクラビバクター(Pseudoclavibacter)属に属する微生物が、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールを選択的に著量生成し、蓄積する能力を有していることを見い出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
本発明は、3−キヌクリジノンに、ロドコッカス属、若しくはシュードクラビバクター属に属する微生物、又はその処理物を作用させることにより(S)−3−キヌクリジノールを得ることを特徴とする、(S)−3−キヌクリジノールの製造方法に関する。
また、本発明は、受託番号FERM P−21643であるロドコッカス クウィングシェンギ(Rhodococcus qingshengii) YGK−514、及び、受託番号FERM P−21642であるシュードクラビバクター エスピー(Pseudoclavibacter sp) YGK−032にも関する。
本発明によれば、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールを選択的にかつ高濃度で得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
3−キヌクリジノンに、ロドコッカス属、若しくはシュードクラビバクター属に属する微生物、又はその処理物を作用させることにより(S)−3−キヌクリジノールを選択的にかつ高濃度で製造することができる。
本発明における微生物としては、3−キヌクリジノンから(R)−3−キヌクリジノールを著量生成し、蓄積する能力を有する、ロドコッカス属、又はシュードクラビバクター属に属する微生物であればその種及びその起源は何ら問わない。
本発明における微生物として好ましくは、ロドコッカス クウィングシェンギ(Rhodococcus qingshengii)、シュードクラビバクター エスピーを挙げることができる。更に好ましくは、ロドコッカス クウィングシェンギ YGK−514(FERM P−21643)、シュードクラビバクター エスピー YGK−032(FERM P−21642)を挙げることができる。本菌株は平成20年8月7日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に上記受託番号で国内寄託されている。
本発明において使用することのできるロドコッカス クウィングシェンギ YGK−514(FERM P−21643)の菌学的性質は次のとおりである。

1−1.形態的性質
(1)細胞形態:不規則桿菌
(2)幅:0.8μm
(3)長さ:2.0〜3.0μm
(4)細胞多形成の有無:−
(5)運動性:−
(6)胞子形成:−

1−2.培養的性質
培養条件:Nutrient agar培地 30℃
(1)色:オレンジ色
(2)光沢:+
(3)色素生産:+
(4)表面発育の有無:+
(5)培地の混濁の有無:+
培養条件:ゼラチン穿刺培養 30℃
(6)生育状態:+
(7)ゼラチン液化:−
培養条件:リトマス・ミルク 30℃
(8)凝固:−
(9)液化:−

1−3.生理学的性質(+wは弱い反応を表す)
(1)グラム染色:+
(2)硝酸塩の還元:−
(3)脱窒反応:−
(4)MRテスト:−
(5)VPテスト:−
(6)インドール生産:−
(7)硫化水素の生成:−
(8)デンプンの加水分解:−
(9)クエン酸の利用
Koser:−
Christensen:+
(10)無機窒素の利用
硝酸塩:+
アンモニウム塩:+
(11)ウレアーゼ活性:−
(12)カタラーゼ活性:+
(13)オキシダーゼ活性:−
(14)生育の範囲 pH
5:+
8:+
9:+
(15)生育の範囲 温度
20℃:+
30℃:+
37℃:+
45℃:−
(16)嫌気的生育性:+w
(17)O−Fテスト(酸化/発酵):+/−

1−4.糖類からの酸生産/ガス生産(+wは弱い反応を表す)
(1)L−アラビノース:−/−
(2)D−グルコース:+w/−
(3)D−フラクトース:−/−
(4)マルトース:−/−
(5)ラクトース:−/−
(6)D−ソルビトール:−/−
(7)イノシトール:−/−
(8)D−キシロース:−/−
(9)D−マンノース:−/−
(10)D−ガラクトース:−/−
(11)サッカロース:−/−
(12)トレハロース:−/−
(13)D−マンニトール:−/−
(14)グリセリン:−/−

1−5.その他生理学的性質
(1)β−ガラクトシダーゼ活性:−
(2)アルギニンジヒドロラーゼ活性:−
(3)リジンデカルボキシラーゼ活性:−
(4)トリプトファンデアミナーゼ活性:−
(5)ゼラチナーゼ活性:−
1−6.化学分類学的性質
本菌株よりゲノムDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の配列を解析した。決定された1478bpの塩基配列を配列表の配列番号1に示す。こうして得られた本菌株の16S rDNA塩基配列(配列番号1)を用いて、DNA塩基配列データベース(アポロンDB−BA4.0)に対する相同性検索の結果、ロドコッカス由来の16S rDNAに対し高い相同性を示し、ロドコッカス クウィングシェンギdjl−6株〔Accession No.DQ090961〕の16S rDNAに対し100%の最も高い相同性を示し、ついで、ロドコッカス バイコヌレンシス(Rhodococcus baikonurensis)GTC1041株〔Accession No.AB071951〕の16S rDNAに対し99.8%の相同性を示した。近縁菌群と系統樹を作製した結果、本菌株は、ロドコッカス クウィングシェンギ及び、ロドコッカス バイコヌレンシス(Rhodococcus baikonurensis)の16S rDNAとクラスターを形成し近縁であることが示され、さらに、ロドコッカス クウィングシェンギと同一の分子系統学的位置を示した。
以上の結果より、本菌株は、ロドコッカス クウィングシェンギであると判定した。
本発明において使用することのできるシュードクラビバクター エスピー YGK−032(FERM P−21642)の菌学的性質は次のとおりである。

1−1.形態的性質
(1)細胞形態:桿菌
(2)幅:0.7−0.8μm
(3)長さ:1.0〜1.5μm
(4)細胞多形成の有無:−
(5)運動性:−
(6)胞子形成:−

1−2.培養的性質
培養条件:Nutrient agar培地 30℃
(1)色:黄色
(2)光沢:+
(3)色素生産:+
(4)表面発育の有無:−
(5)培地の混濁の有無:+
培養条件:ゼラチン穿刺培養 30℃
(6)生育状態:+
(7)ゼラチン液化:−
培養条件:リトマス・ミルク 30℃
(8)凝固:−
(9)液化:−

1−3.生理学的性質(+wは弱い反応を表す)
(1)グラム染色:+
(2)硝酸塩の還元:−
(3)脱窒反応:−
(4)MRテスト:−
(5)VPテスト:−
(6)インドール生産:−
(7)硫化水素の生成:−
(8)デンプンの加水分解:−
(9)クエン酸の利用
Koser:−
Christensen:+
(10)無機窒素の利用
硝酸塩:−
アンモニウム塩:−
(11)ウレアーゼ活性:−
(12)カタラーゼ活性:+
(13)オキシダーゼ活性:−
(14)生育の範囲 pH
5:−
8:+
9:+
(15)生育の範囲 温度
20℃:+
30℃:+
37℃:−
45℃:−
(16)嫌気的生育性:+w
(17)O−Fテスト(酸化/発酵):+/−

1−4.糖類からの酸生産/ガス生産
(1)L−アラビノース:−/−
(2)D−グルコース:+/−
(3)D−フラクトース:+/−
(4)マルトース:−/−
(5)ラクトース:−/−
(6)D−ソルビトール:−/−
(7)イノシトール:−/−
(8)D−キシロース:−/−
(9)D−マンノース:+/−
(10)D−ガラクトース:−/−
(11)サッカロース:+/−
(12)トレハロース:−/−
(13)D−マンニトール:−/−
(14)グリセリン:+/−

1−5.その他生理学的性質
(1)β−ガラクトシダーゼ活性:+
(2)アルギニンジヒドロラーゼ活性:−
(3)リジンデカルボキシラーゼ活性:−
(4)トリプトファンデアミナーゼ活性:−
(5)ゼラチナーゼ活性:−
1−6.化学分類学的性質
本菌株よりゲノムDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)の配列を解析した。決定された1481bpの塩基配列を配列表の配列番号2に示す。こうし
て得られた本菌株の16S rDNA塩基配列(配列番号2)を用いて、DNA塩基配列データベース(アポロンDB−BA4.0)に対して相同性を検索し、近縁菌群と系統樹を作製した結果、本菌株はシュードクラビバクター属に属すると推定された。最も近縁であった基準株はシュードクラビバクター ヘルボラス(Pseudoclavibacter helvolus)DSM20419株〔Accession No.X77440〕であり、99.7%の相同性を示した。以上の結果より、本菌株は、シュードクラビバクター属に含まれ、既知種では、シュードクラビバクター ヘルボラス(Pseudoclavibacter helvolus)に最も近縁と考えられる。しかし、両者の16S rDNAは完全に一致しておらず、本菌株とシュードクラビバクター ヘルボラス(Pseudoclavibacter helvolus)は種として異なる菌株である可能性も否定できない。これらのことから、本菌株をシュードクラビバクター エスピーであると判定した。
次に、本発明方法において使用するロドコッカス属、及びシュードクラビバクター属に属する微生物の培養方法について説明する。
前記微生物の培養液の調整方法としては、(ア)炭素源及び窒素源を適宜添加した培地に微生物の菌体を接種して同一の該培地中で増殖させて培養液を得る方法、(イ)培養を段階的に行って培養液を得る方法、すなわち、前培養と本培養を組み合わせて培養液を得る方法が挙げられるが、好ましくは(イ)の方法である。(イ)の方法は、まず、前培養として、炭素源及び窒素源を適宜添加した培地に前記微生物の菌体を接種して微生物を増殖させて、本培養で使用する微生物の確保を目的として第一段階の培養液(以下、前培養液という。)を得た後、次に本培養として、容量を増大させた培地に前培養液を加えて、炭素源及び窒素源を適宜添加して微生物を培養することで蓄積反応に十分な酵素の産生を目的として第二段階の培養液(以下、本培養液という。)を得る方法である。しかしながら、前記微生物の菌体を含む培養液の調製方法は、これらの方法に限定されるものではなく、更に、3回以上の培養を組み合わせて行うことも可能である。
前記微生物を培養するための培地は、通常これらの微生物が生育可能な培地であれば特に制限はなく、一般的な微生物用の任意の公知培地を用いることができる。培地の炭素源及び窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、アミノ酸、無機窒素、有機酸、糖類などを使用することができる。また、必要に応じて、微量金属塩、ビタミン類、核酸関連物質、無機塩類などを添加することもできる。
炭素源及び窒素源の供給方法としては、(1)培地作製時にあらかじめ添加しておく方法、(2)微生物の増殖にあわせて、炭素源及び窒素源を連続又は間欠的に供給していく方法を挙げることができる。前記(2)の方法は、微生物の増殖により消費した炭素源及び窒素源を追加していくため、高濃度の炭素源及び窒素源により微生物の生育阻害がある場合でも、微生物の濃度を高くすることができる利点がある。前記(2)の方法を更に具体的に説明すると、微生物が炭素源及び窒素源を消費する速度に合わせて炭素源及び窒素源を添加する方法などがある。例えば、微生物が生育するとともにpHが上昇し、かつ、炭素源及び窒素源を含む水溶液が酸性である場合、pHコントローラーを用いて、培養液のpHが一定になるように、炭素源及び窒素源を含む酸性の水溶液を添加すると、微生物の増殖の進行とともに、炭素源及び窒素源を少しずつ添加する方法を用いることができる。
更に、培養の際に、前記微生物が有する、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールを生成する能力を最大限に引き出すために、糖類、有機酸又はアミノ酸を添加して培養することもできる。特に効果が得られる物質は、D−グルコース、D−フルクトース、スクロース、D−リボース、マンニトール、グリセロール、D−キシロース、ソルビトール、D−ラクトース、マルトース、L−リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、グルコン酸、L−グルタミン酸、L−グルタミンなどであり、培地に対して0.1〜5.0w/v%、好ましくは0.5〜2.0w/v%である。なお、本明細書において、w/vは質量/容積を、v/vは容積/容積を意味する。
前記微生物の培養温度は10〜37℃、好ましくは23〜32℃である。培養時の培地のpHは6.0〜10.0であり、好ましくはpH6.5〜9.0である。培養は、好気的条件下で行うことが好ましく、液体培養時には通気及び撹拌を行うことが望ましい。培養時間は10時間〜1週間であり、好ましくは1〜3日間であり、より好ましくは1〜2日である。
培養の進行とともに、酵素生産量も増加していくが、培養の後半には、生育速度の低下とともに、炭素源及び窒素源の消費速度、酵素生産速度も低下し、培養を終了する。炭素源及び窒素源の総添加量、培養時間、菌体の濃度、酵素生産量などから本培養の終了を判断することもできる。
以上のようにして、前記微生物の培養菌体を培養液中に蓄積させ、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールの蓄積反応に用いることができる。
[i]得られた培養液はそのまま以下に述べる蓄積反応に使用してもよいし、
[ii]微生物を培養液から回収して反応に使用したり、更に
[iii]微生物の処理物、例えば、破砕物、粗酵素、精製酵素などを反応に使用することもできる。
続いて、前記微生物又はその処理物により、3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールを生成する反応を行うことができる。この蓄積反応は、バッチ式でも、バイオリアクターなどを用いた連続式でも可能である。バッチ式反応の場合には、数時間から10日間で行うことができる。
上述の[i]の場合を具体的に説明すると、上記の培養方法で増殖させた前記微生物を含む培養液に、直接、3−キヌクリジノンと糖類、有機酸、アルコール類などを加え、(S)−3−キヌクリジノールを系内に蓄積させる反応を開始させることができる。
蓄積反応のpHは5.0〜10.0、好ましくはpH5.0〜8.0である。反応温度は10〜50℃、好ましくは20〜40℃である。基質の3−キヌクリジノンの添加量は、反応液に対して0.1〜10.0w/v%、好ましくは0.3〜5.0w/v%である。3−キヌクリジノンの添加は一度に行ってもよいが、高濃度の3−キヌクリジノンによる反応阻害が見られる場合には分割して添加してもよい。
一般的に、3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、3−キヌクリジノンの不斉還元反応において、3−キヌクリジノンと等量の還元型補酵素(還元型ニコチンアデニンジヌクレオチド(NADH)、又は還元型ニコチンアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)を還元剤として要求するとされている。3−キヌクリジノンの還元反応後は、補酵素はそれぞれ酸化型ニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)又は酸化型ニコチンアデニンジヌクレオチド(NADP)へと変換される。
触媒量の補酵素で3−キヌクリジノンの不斉還元反応を進行させるためには、酸化型補酵素のNAD又はNADPをそれぞれ還元型補酵素のNADH又はNADPHへと再生する反応が必要であり、一般的に、この補酵素再生反応には、グルコースデヒドロゲナーゼを用いたグルコースの酸化反応が利用されている。
また、一般的に、グルコースデヒドロゲナーゼなどの補酵素を再生する酵素の供給源として、市販酵素を使用したり、遺伝子組み替えにより補酵素を再生する酵素を生産させることが行われるが、本発明において、補酵素を再生する酵素を添加することなく、糖類、有機酸、アルコール類などを添加するのみで、効率よく3−キヌクリジノンから(S)−3−キヌクリジノールへの変換を行うことができる。
糖類、有機酸、アルコール類などとしては、D−グルコース、D−フルクトース、スクロース、D−リボース、D−キシロース、ソルビトール、D−ラクトース、マルトースなどの糖類、クエン酸などの有機酸、エタノールなどのアルコール類などを挙げることができる。糖類、有機酸、アルコール類などの添加量は、3−キヌクリジノンを還元して(S)−3−キヌクリジノールを生成する反応液に対して0.1〜15.0w/v%、好ましくは0.3〜10.0w/v%である。糖類、有機酸、アルコール類などの添加は一度に行ってもよいが、高濃度の糖類、有機酸、アルコール類などによる反応阻害が見られる場合には分割して添加してもよい。
(S)−3−キヌクリジノールの蓄積反応は、前記微生物が十分に増殖して、変換能力が十分となった時点から開始することができるが、前記微生物の増殖が十分でない培養初期段階でも、生育阻害が起こらない濃度範囲で培地に3−キヌクリジノンを添加して、微生物の増殖と(S)−3−キヌクリジノールの蓄積反応を同時に行うことができる。
また、上述の[ii]の場合には、上記の培養方法で増殖させた微生物をろ過又は遠心分離により培養液から回収して蓄積反応に使用することができる。すなわち、得られた微生物は3−キヌクリジノンと糖類、有機酸、アルコール類などを含む生理食塩水、リン酸カリウム緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液などの水性溶媒に懸濁して反応に使用することができる。反応条件(pH、温度、3−キヌクリジノンと糖類、有機酸、アルコール類などの添加量)は[i]の場合と同じである。
更に、上述の[iii]の場合には、前記培養方法で増殖させ、回収した微生物の処理物(例えば、破砕物、粗酵素、精製酵素)は、3−キヌクリジノンと糖類、有機酸、アルコール類などを含む水性溶媒に懸濁して反応に使用することができる。あるいは、微生物又はその処理物を公知の方法で適当な担体に固定化し、その固定化物を水性溶媒と接触させて反応に使用してもよい。前記微生物又はその処理物を使用した蓄積反応に用いる水性溶媒としては、生理食塩水、リン酸カリウム緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ酸−水酸化ナトリウム緩衝液などを挙げることができる。反応条件は[i]の場合と同様である。
以上のようにして得られた蓄積反応後の反応液から、必要に応じて、ろ過、遠心分離などにより微生物を除去した後、溶媒で(S)−3−キヌクリジノールを抽出して、(S)−3−キヌクリジノールを回収することができる。粗酵素、精製酵素などの処理物を使用した場合などでは微生物除去操作を省略することができる。また、クロマトグラフィーなどの公知の精製方法により(S)−3−キヌクリジノールを回収することもできる。
以下に代表的な実施例を示し、本発明の具体的な説明を行うが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
実施例において使用する培地組成を以下に記載する。
(1)培地[A]
脱塩水1.0L中に酵母エキス5.0g、トリプトン2g、D−グルコース1.0g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物1.0g、リン酸二水素カリウム1.0g、硫酸マグネシウム七水和物0.05gを含み、水酸化ナトリウム水溶液によりpHを7.5に調整した培地。
(2)培地[B]
脱塩水1.0L中に酵母エキス15.0g、D−グルコース10.0g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物1.0g、リン酸二水素カリウム1.0g、硫酸マグネシウム七水和物0.2g、塩化カルシウム0.1g、塩化亜鉛0.1g、硫酸鉄七水和物0.1g、塩化マンガン(II)四水和物0.05gを含み、水酸化ナトリウム水溶液によりpHを7.0に調整した培地。
(3)培地[C]
脱塩水1.0L中に酵母エキス2.0g、D−グルコース10.0g、リン酸水素二ナトリウム十二水和物1.0g、リン酸二水素カリウム1.0g、硫酸マグネシウム七水和物0.2g、塩化マンガン(II)四水和物0.2g、塩化カルシウム0.1gを含み、水酸化ナトリウム水溶液によりpHを7.5に調整した培地。
次に、実施例で使用するGCの分析条件を以下に記載する。
[GCの分析条件]
カラム;CP−CHIRASIL−DEX CB(Varian社製) 25m×0.25mm、
流速;1mL/分、
カラム温度;140℃、
インジェクション温度;220℃、
検出;FID、220℃、
保持時間;3−キヌクリジノン6.9分、(S)−3−キヌクリジノール13.9分、(R)−3−キヌクリジノール14.4分
《実施例1:ロドコッカス クウィングシェンギ YGK−514の静止菌体を用いた(S)−3−キヌクリジノールの蓄積反応》
(1)培養
培地[A]100mLを500mL容の三角フラスコに入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌を実施した。この三角フラスコに、栄養寒天培地に維持したロドコッカス クウィングシェンギ YGK−514の菌体を1白金耳接種し、27℃で24時間振とう培養し、前培養液とした。
一方、撹拌、通気、温度及びpH調整が可能な2L容のジャーファーメンターに培地[B]1Lを入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌を実施した。このジャーファーメンターに、上記前培養液10mLを加え、撹拌及び通気を実施しながら27℃及びpH7.0で、22時間、培養を行い本培養液を得た。
(2)蓄積反応
上記本培養液250mLを遠心分離により集菌し静止菌体を得た。これに、3−キヌクリジノン塩酸塩3.0w/v%とD−グルコース10.0w/v%を含む、pH5.5の100mMリン酸カリウム緩衝液50mLを加えて懸濁した。この懸濁液を撹拌下27℃で反応を開始した。119時間後、反応速度が低下したため、反応を終了した。その後、遠心分離により、菌体を除去し、得られた上澄み液0.25mLに、50w/v%水酸化ナトリウム水溶液0.25mL、クロロホルム1mLを加え、抽出を行った。得られたクロロホルム層をGC分析した結果、(S)−3−キヌクリジノールを蓄積濃度2.16%、収率96%([反応後の(S)−3−キヌクリジノールのモル濃度]÷[添加した3−キヌクリジノンのモル濃度])で取得した。また、GC分析では(R)−3−キヌクリジノールは検出されず、光学純度は100%eeであった。
《実施例2:シュードクラビバクター エスピー YGK−032の静止菌体を用いた(S)−3−キヌクリジノールの蓄積反応》
(1)培養
培地[A]100mLを500mL容の三角フラスコに入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌を実施した。この三角フラスコに、栄養寒天培地に維持したシュードクラビバクター エスピー YGK−032の菌体を1白金耳接種し、27℃で24時間振とう培養し、前培養液とした。
一方、撹拌、通気、温度及びpH調整が可能な2L容のジャーファーメンターに培地[C]1Lを入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌を実施した。このジャーファーメンターに、上記前培養液10mLを加え、撹拌及び通気を実施しながら27℃及びpH7.5で、23時間、培養を行い本培養液を得た。
(2)蓄積反応
上記本培養液500mLを遠心分離により集菌し静止菌体を得た。これに、3−キヌクリジノン塩酸塩5.0w/v%とD−グルコース10.0w/v%、NADH0.06%、NADPH0.06%を含む、pH7.5の100mMリン酸カリウム緩衝液50mLを加えて懸濁した。この懸濁液を撹拌下27℃で反応を開始した。
反応50時間後、3−キヌクリジノン塩酸塩の濃度が0.9%まで低下し、さらに、反応が進行していたことから、25w/v%の3−キヌクリジノン塩酸塩水溶液を6mL(3−キヌクリジノン塩酸塩として1.5g)とD−グルコース2.5gを追加し、反応を継続させた。反応215時間後、反応速度が低下したため、反応を終了した。その後、遠心分離により、菌体を除去し、得られた上澄み液0.25mLに、50w/v%水酸化ナトリウム水溶液0.25mL、クロロホルム1mLを加え、抽出を行った。得られたクロロホルム層をGC分析した結果、(S)−3−キヌクリジノールを蓄積濃度5.46%、収率100%([反応後の(S)−3−キヌクリジノールのモル濃度]÷[反応前と追加分の3−キヌクリジノンのモル濃度])で取得した。また、GC分析では(R)−3−キヌクリジノールは検出されず、光学純度は100%eeであった。

Claims (5)

  1. 3−キヌクリジノンに、ロドコッカス(Rhodococcus)属、若しくはシュードクラビバクター(Pseudoclavibacter)属に属する微生物、又はその処理物を作用させることにより、(S)−3−キヌクリジノールを得ることを特徴とする、(S)−3−キヌクリジノールの製造方法。
  2. 前記微生物がロドコッカス クウィングシェンギ(Rhodococcus qingshengii) YGK−514(FERM P−21643)である、請求項1記載の(S)−3−キヌクリジノールの製造方法。
  3. 前記微生物がシュードクラビバクター エスピー(Pseudoclavibacter sp) YGK−032(FERM P−21642)である、請求項1記載の(S)−3−キヌクリジノールの製造方法。
  4. 受託番号FERM P−21643である、ロドコッカス クウィングシェンギ(Rhodococcus qingshengii) YGK−514。
  5. 受託番号FERM P−21642である、シュードクラビバクター エスピー(Pseudoclavibacter sp) YGK−032。
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