JP2005211042A - フマル酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオマスによるフマル酸の発酵生産方法として好適なプロセスであり、不飽和ポリエステル原料、食品添加物、L−アスパラギン酸原料、L−リンゴ酸原料、飼料添加物の種々の用途に好適に用いることができるフマル酸の収率が向上し、しかも生産性に優れる製造方法を提供する。
【解決手段】グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を嫌気性条件下での菌体の発酵工程により反応させてフマル酸を製造する方法であって、該フマル酸の製造方法は、好気培養による菌体培養工程の後に発酵工程を行うフマル酸の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、フマル酸の製造方法に関する。より詳しくは、バイオマスからのフマル酸の発酵生産方法に関する。
フマル酸は、不飽和脂肪族二塩基酸の1つで種々の工業原料に有用な化合物であり、有効な製造方法の開発が求められている。中でも、バイオマスによる発酵生産方法が近年のバイオ関連技術の発展にともなって注目されている。
従来のフマル酸の製造方法としては、グルコースを原料としてリゾパス等のカビを用いた好気培養による方法が古くから研究されており、例えば、リゾパス アリザス(Rhizopus arrhizus)を好気培養してフマル酸を生成することが開示されている。(例えば、非特許文献1参照。)。この方法は、工業化されていたが、グルコースからの収率は60%であることから、更に収率が向上した方法とするための工夫の余地があった。
また有機酸の製造方法に関し、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子やピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子で組み換えた好気性コリネ型細菌を、炭酸イオン、重炭酸イオン又は二酸化炭素ガスを含有する反応液中で嫌気的に作用させる方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。これらの方法においては、有機原料を用いるとされ、目的化合物である有機酸の生成速度が早いグルコースやエタノールがよいとされている。しかしながら、これらの製造方法では、フマル酸の収率を高めて製造するという点で有効な方法ではなく、また、バイオマスによる発酵生産方法としてより好適なプロセスとなるようにするための工夫の余地があった。
アプライド・ミクロバイオロジー(Appl.Microb.),1959年,第7巻,p.74−80 特開平11−196887号公報(第1、5頁) 特開平11−196888号公報(第1、4−5頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、バイオマスによるフマル酸の発酵生産方法として好適なプロセスであり、フマル酸の収率が向上し、しかも生産性に優れる製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者等は、発酵工程をともなうフマル酸の製造方法について種々検討したところ、グルコースとCOからコハク酸を発酵生産する場合における酸化還元バランスに先ず着目した。すなわち、酸化還元バランスを無視すると、グルコース1分子とCO2分子から2分子のコハク酸が生成することになるが、酸化還元バランスを考慮すると、1分子のコハク酸を生成するのに1分子の還元剤が不足することになる(図5)。このように、グルコースからコハク酸までの生成経路においては、NADHが1分子不足することになるが、生成物をコハク酸ではなく、その一段前の化合物であるフマル酸とすると、酸化還元的にバランスし、理論的にはグルコースから定量的にフマル酸を生成できることになる(図2)。
そして、このような酸化還元バランスをとった嫌気条件下での反応(発酵)をともなうフマル酸の製造方法において、発酵工程で菌体培養を行う場合、嫌気条件下で作用する菌体を、工業的な生産性を充分に向上できる程培養することができないが、好気培養による菌体培養工程の後に発酵工程を行うと、フマル酸の収率と生産性とにおいて有利なプロセスとなることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。
また発酵に用いる菌体について、オキサロ酢酸を生成する反応の酵素遺伝子を補強、導入したり、フマル酸からコハク酸へ還元する酵素遺伝子を破壊したりすることで、グルコースからフマル酸までの生成経路における反応を促進したり、フマル酸以外の化合物を生成する反応を抑制したりできることから、グルコースとCOから定量的にフマル酸を生成させることができ、収率を充分に向上させることができることも見いだした。更に、このような生産プロセスにおいて、発酵工程や分離工程を好適なものとしたり、菌体の特性を好適なものとしたりすると、本発明の作用効果をより充分に発揮することができることも見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を嫌気性条件下での菌体の発酵工程により反応させてフマル酸を製造する方法であって、上記フマル酸の製造方法は、好気培養による菌体培養工程の後に発酵工程を行うフマル酸の製造方法である。
本発明はまた、グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を嫌気性条件下での菌体の発酵工程により反応させてフマル酸を製造する方法であって、上記菌体は、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が抑制されているものであるフマル酸の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のフマル酸の製造方法においては、好気培養による菌体培養工程の後に、嫌気性条件下での菌体の発酵工程を行うことになる。更に、発酵工程の後に菌体の分離工程やフマル酸の分離精製工程を行うことにより、目的とする生産物であるフマル酸を得ることが好ましい。このような本発明における好ましいプロセスを図1に概念的に示す。
図1において、発酵工程においては、グルコースと二酸化炭素(CO)及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を用いればよく(図1ではグルコース及びCO/炭酸塩が例示的に示されている)、その他の製造原料を用いてもよい。分離工程としては、菌体の分離工程を行った後に、フマル酸の分離精製工程を行うことが好ましい。これらのプロセスを順次行うことにより、フマル酸の収率や生産性を向上するとともに、品質の高い生産物を得ることが可能となり、バイオマスによるフマル酸の発酵生産方法として工業的に優れたプロセスとなる。
上記菌体培養工程においては、嫌気性条件下での発酵工程に用いる菌体を、好気条件下において培養することになる。このように菌体培養を行うことにより、菌体の数が効率的に増得ることに起因して、発酵工程における生産性を充分に向上することが可能となる。すなわち、発酵工程で菌体培養を行うと、嫌気条件であるために充分な培養を行うことができないが、発酵工程に先立って好気条件で菌体培養を行い、その後、嫌気性条件下で発酵工程を行うと、菌体培養と発酵によるフマル酸の生産とを共に充分に行うことができることとなる。
上記好気培養において、培地や培養条件等としては、菌体として用いる微生物によって適宜設定することができ、その微生物が増殖しやすい培地や条件とすることが好ましい。培地としては、菌体の生存に必須の物質が含まれていればよく、グルコース、グリセリン、エタノール、廃糖密、コーンスティプリカー等の炭素源、窒素源として硫安、アンモニア、その他酵母エキス、タンパク加水分解物、肉エキス等が含有されていたり、二酸化炭素が溶存していたり、炭酸塩が含有されているものであることが好ましい。
上記好気培養した菌体としては、遠心分離、膜分離等によって回収し、その後の発酵工程に用いられることが好ましい。また、本発明においては、例えば、菌体をポリマー溶液等で固定化した固定化菌体、菌体を破砕した破砕物、遠心分離で得られる上清、上清を部分精製して得られる活性を有する画分等を用いることも可能である。
本発明における発酵工程では、グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を含有する培地で菌体を嫌気条件下で発酵させてフマル酸を生成することとなる。
上記菌体を発酵させる培地としては、固形培地、半固形培地、液体培地等を挙げることができるが、菌体と生成物との分離が容易である点から、液体培地であることが好ましい。これらの培地には、グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を含有することになればよく、水、緩衝液、ビタミン類、微量金属等が含まれることが好ましい。
また製造原料には、グルコース以外のその他の化合物を含んでいてもよく、例えば、グリセリン等の炭素源となる物質、ATPやNADH等のエネルギー分子、アンモニア、硫安等の窒素源となる物質等を挙げることができる。
上記発酵を液体培地で行う場合において、グルコースの含有量としては、1g/L以上であることが好ましい。1g/L未満であると、生産性を充分に向上させることができないおそれがある。より好ましくは、5g/L以上であり、更に好ましくは、10g/L以上である。また、800g/L以下であることが好ましい。800g/Lを超えると、菌体の発酵に使用されないグルコースが多量に生じるおそれがある。より好ましくは、600g/L以下であり、更に好ましくは、500g/L以下である。
上記二酸化炭素としては、バブリング等により培地中に溶存させることが好ましく、液体培地1L当たりの含有量としては、0.1mg/L以上であることが好ましい。0.1mg/L未満であると、生産性を充分に向上させることができないおそれがある。より好ましくは、1mg/L以上であり、更に好ましくは、5mg/L以上である。また、30g/L以下であることが好ましい。30g/Lを超えると、菌体の発酵に使用されない炭酸が多量に生じるおそれがある。より好ましくは、10g/L以下であり、更に好ましくは、3g/L以下である。
上記炭酸塩としては、培地に添加することにより炭酸イオンや炭酸水素イオンを生成することができる化合物であればよく、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が好適である。
上記炭酸塩の使用量としては、製造原料において炭酸イオンや炭酸水素イオンの濃度が、5mmol/L以上となるように含有させることが好ましい。5mmol/L未満であると、生産性を充分に向上させることができないおそれがある。より好ましくは、10mmol/L以上であり、更に好ましくは、30mmol/L以上である。また、5mol/L以下であることが好ましい。5mol/Lを超えると、菌体の発酵に使用されない炭酸イオンや炭酸水素イオンが多量に生じるおそれがある。より好ましくは、2mol/L以下であり、更に好ましくは、1mol/L以下である。なお、二酸化炭素と炭酸塩とを併用する場合には、二酸化炭素の溶存量や炭酸塩の添加量を適宜設定すればよい。
本発明における嫌気条件は、培地中の溶存酸素濃度が低く抑えられていればよく、例えば、溶存酸素濃度が2ppm以下であることが好ましい。2ppmを超えると、通常のTCA回路における物質の代謝が行われるおそれがあり、生産性を充分に向上できなくなるおそれがある。より好ましくは、1ppm以下であり、更に好ましくは、0.5ppm以下であり、特に好ましくは、0ppm、すなわち実質的に溶存酸素がない場合である。嫌気条件とする方法としては、例えば、反応器を密閉する方法、窒素ガス等の不活性ガスを導入する方法、二酸化炭素ガス含有の不活性ガスを導入する方法等が好適である。
上記発酵の温度としては、15〜45℃であることが好ましい。より好ましくは、25〜37℃である。また、培地のpHとしては、5〜9であることが好ましい。より好ましくは、6〜8である。発酵の時間としては、バッチ式で製造する場合には、5〜240時間であることが好ましい。より好ましくは、12〜120時間である。また、連続式で製造する場合には、使用する装置等により適宜設定すればよいが、好ましくは、上述のバッチ式の場合と同様である。
上記菌体の使用量としては、例えば、1g/L以上であることが好ましい。1g/L未満であると、生産性を充分に向上させることができないおそれがある。より好ましくは、10g/L以上であり、更に好ましくは、50g/L以上である。また、250g/L以下あることが好ましい。250g/Lを超えると、生存環境に起因して充分に効率的に発酵が行われないおそれがある。より好ましくは、200g/L以下であり、更に好ましくは、150g/L以下である。
上記発酵工程は、バッチ式で行われてもよく、連続式で行われてもよく、また、発酵に用いられる槽としては、1つでもよいし、2つ以上を用いてもよい。発酵槽を2つ以上用いる場合において、バッチ式では、2つ以上の槽を並列に用いる形態が挙げられ、連続式では、2つ以上の槽を直列に接続して用いる形態が挙げられる。
本発明においては、発酵工程を2つ以上の槽を用いて連続して行うことが好ましい。このように連続して行うことにより、生産性をより充分に向上させることが可能となる。連続して行うとは、製造原料や菌体等を連続的に供給したり、連続して生成物であるフマル酸を含む液や菌体を抜き出したりすることにより、フマル酸を連続して生成させることである。2つ以上の槽を直列に接続して発酵を行う場合には、例えば、1槽目の培地を2槽目に供給して段階的に発酵させることとなり、1槽目で得られるフマル酸の収率よりも、2槽目以降で得られるフマル酸の収率の方が段階的に高くなることから、未反応物を充分に低減することが可能となる。
図2(a)及び(b)は、本発明におけるグルコースからフマル酸までの生成経路の一例を示す図であり、図2(a)は、グルコースからホスホエノールピルビン酸までの生成経路を示す図であり、図2(b)は、ホスホエノールピルビン酸からフマル酸までの生成経路を示す図である。グルコースを製造原料として用いる場合、フマル酸生成経路としては、グルコース、グルコース−6−リン酸、フラトース−6−リン酸、フラクトース−1,6−ビスリン酸、グリセルアルデヒドリン酸(ジヒドロキシアセトンリン酸)、グリセリン−1,3−2リン酸、3−ホスホグリセリン酸、2−ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、L−リンゴ酸、フマル酸の順に反応が進むこととなる。
上記フマル酸生成経路では、グリセルアルデヒドリン酸がグリセリン−1,3−2リン酸になる反応において、NAD(酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)がNADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)となり、オキサロ酢酸がL−リンゴ酸になる反応において、NADHがNADになることから、生成経路全体においては、NADHの過不足はないことになる。
またグルコースがグルコース−6−リン酸になる反応、フラクトース−6−リン酸がフラクトース−1,6−ビスリン酸になる反応、及び、ピルビン酸がオキサロ酢酸になる反応においては、ATP(アデノシン5′−三リン酸)がADP(アデノシン5′−二リン酸)となり、グリセリン−1,3−2リン酸が3−ホスホグリセリン酸になる反応、及び、ホスホエノールピルビン酸がピルビン酸になる反応においては、それぞれADPがATPとなることから、ATPについても過不足はないことになる。このように本発明におけるフマル酸生成経路による発酵では、酸化還元的バランスがとれることになる。
上記図2におけるフマル酸生成経路では、ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸とオキサロ酢酸を経てL−リンゴ酸となるが、図3(a)及び(b)に示すように、ホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸を経てL−リンゴ酸となる生成経路についても本発明に適用できる。この場合には、ホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸になる反応において、ADPに相当するGDPが、ATPに相当するGTPになり、生成経路全体においては、ATP等が2分子生成することから、酸化還元的バランスにおいて有利となるだけでなく、エネルギー的にも有利である。従って、菌体を良好な状態で、好気培養工程から発酵工程に供給することも可能となり、より充分に生産性を向上させることができることになる。また、図2及び図3に示す生成経路を併用してフマル酸を生成することとなってもよい。更に、上述の生成経路以外の経路によりフマル酸を生成することになってもよい。
本発明においては、上述した工程以外にその他の工程を含んでいてもよく、菌体とフマル酸を含む培地との分離工程、フマル酸を含む培地からフマル酸を精製する分離精製工程等を含んでなることが好適である。
上記分離工程としては、ろ過分離、遠心分離等の方法を用いることが好適である。好ましくは、セラミックフィルターや焼結金属フィルター、ろ過膜を用いる方法である。本発明においては、発酵工程の後にセラミックフィルター、焼結金属フィルター及びろ過膜のうちの少なくとも1種を用いる菌体の分離工程を行うことが好ましい。
上記分離精製工程としては、酸性化させる、電気透析等の方法を用いることが好適である。本発明においては、分離工程の後に酸性化及び/又は電気透析による分離精製工程を行うことが好ましい。このような工程により純度の高いフマル酸を得ることが可能となる。
上記酸性化とは、培地のpHを小さくすることによりフマル酸を結晶化することであり、このように析出した結晶をろ過等することにより、フマル酸を容易に分離精製できることになる。酸性化の方法としては、例えば、鉱酸等を添加する方法等が挙げられる。鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が好適であり、pHが0.5〜3となるように培地に添加することが好ましい。より好ましくは、1.0〜2.5である。更に好ましくは、1.5〜2.0である。
以下では、本発明における菌体について説明する。
上記菌体としては、上述したような嫌気条件下でグルコースからフマル酸を生成することが可能である微生物等であればよく、例えば、大腸菌、枯草菌、酵母、コリネバクテリウム属微生物等の遺伝子組換えに常用されている微生物が好適である。
上記大腸菌としては、K−12株、B株等が好適であり、枯草菌としては、バチルス スブティリス 168株(Bacillus subtilis 168株、ATCC:23857)等が好適であり、酵母としては、サッカロマイセス セリビジェー(Saccharomyces cerevisiae)が好適であり、コリネバクテリウム属微生物としては、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum、NBRC:12168)が好適に用いられる。
上記菌体としてはまた、上述のフマル酸生成経路における各反応を触媒する酵素に対応する酵素遺伝子を必須として有するものであることが好ましい。このような酵素遺伝子は、微生物が既に有しているものであってもよく、他の生物が有するものを導入したものであってもよい。また、菌体の染色体上に有するものであってもよく、菌体内で発現可能なプラスミド等の形態で有するものであってもよい。また、上述のフマル酸生成経路における酵素以外の酵素に対応する酵素遺伝子を有していてもよい。
上記大腸菌としては、例えば、下記(1)及び(2)のいずれか酵素群に対応する酵素系遺伝子を有するものが好適であり、これらを組み合わせた形態であってもよい。
(1)ヘキソキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、6−ホスホフルクトキナーゼ、フラクトースビスリン酸アルドラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、エノラーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ
(2)ヘキソキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、6−ホスホフルクトキナーゼ、フラクトースビスリン酸アルドラーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、エノラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、フマラーゼ
上記酵素遺伝子はそれぞれ、上記酵素と同様の作用を示すようなその他の酵素に対応する酵素遺伝子と置き換わっていてもよく、例えば、上記(2)におけるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼに対応する遺伝子が、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼに対応する遺伝子となっていてもよい。また、枯草菌、酵母、コリネバクテリウム属微生物等のその他の菌体においても、上記酵素や同様の作用を示すようなその他の酵素に対応する遺伝子(酵素子)を有しているものが好適である。
上記菌体は、変異株を含んでなることが好ましく、例えば、野生株と比較して、上述のフマル酸生成経路における反応の酵素活性が増強されるように変異した菌体であることが好ましい。変異株とは、野生株とは異なる配列を含む遺伝子を有する菌体を意味し、突然変異によるものであってもよく、遺伝子工学的な操作により得られるものであってもよいが、遺伝子組換え微生物であることが好ましい。
上記菌体としては、ピルビン酸カルボキシラーゼ及び/又はホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの活性が増強されているものであることが好ましい。これらの酵素の活性を増強することにより、ピルビン酸やホスホエノールピルビン酸と二酸化炭素との反応性を向上させ、TCA回路におけるオキサロ酢酸を充分に生成させることが可能となる。また、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼの活性を増強させることも好ましい形態である。
上記酵素の活性を増強させる方法としては、(I)該酵素に対応する遺伝子であって菌体が保有しているものを2つ以上重複させることにより酵素の生成を強化する方法、(II)菌体が有する遺伝子よりも強力に発現する他の生物の遺伝子を1つ又は2つ以上導入する方法、(III)酵素の生成や活性を促すように発現する遺伝子を導入する方法等が好適であり、これらの方法を2以上組み合わせてもよい。
上記遺伝子を導入する方法としては、通常用いられる方法が好適であり、(i)細胞内で複製可能なプラスミド等のベクターに、導入したい遺伝子を挿入して細胞内に導入する方法、(ii)微生物のゲノムDNAに、相同組換え等によって導入する方法等を用いることができる。
上記菌体としてはまた、フマル酸以外の化合物への代謝変換をできるだけ少なくするために、上述のフマル酸生成経路における反応には寄与しない酵素であって、例えば他の化合物へと分岐する代謝系の酵素の活性が抑制されているものであることが好ましい。
通常微生物は、嫌気条件下ではピルビン酸から乳酸、酢酸、エタノール等への変換反応が起こることになり、これらの生成経路としては、(1)ピルビン酸から乳酸への生成経路、(2)ピルビン酸からアセチルCoA(アセチル補酵素A)を経た酢酸への生成経路、(3)ピルビン酸からアセトアルデヒドを経たエタノールへの生成経路等を挙げることができる。
本発明においては、これらの生成経路における反応の酵素活性を抑制することにより、フマル酸の収率をより充分に向上させることが可能となる。すなわち、本発明における菌体は、乳酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、アセチルCoAシンターゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される1種以上の酵素の活性が抑制されているものであることが好ましい。
上記酵素の活性を抑制する方法としては、(a)該酵素に対応する遺伝子を破壊(ノックアウト)する方法、(b)酵素の生成を低減する又は生成しないように調節できるように遺伝子を操作する方法、(c)酵素の活性を抑制するように発現可能な遺伝子を導入する方法、(d)アンチセンス法により遺伝子の発現を阻害して、酵素の生成を低減する又は生成しないようにする方法等が好適であり、これらの方法を2以上組み合わせてもよい。上記方法を達成するための手法としては、通常行われる手法を用いることができる。なお、酵素活性を抑制する場合には、菌体を好気培養する場合において増殖することができるように行われることになる。例えば、好気条件で作用する酵素と嫌気条件で作用する酵素とが同じである場合には、当該酵素に対応する遺伝子を破壊すると好気条件で生存することができなくなることから、遺伝子を発現改変する等の手段により、嫌気条件のみで活性が抑制されるようにすることになる。また、好気条件で作用する酵素と嫌気条件で作用する酵素とが異なる場合には、嫌気条件で作用する酵素に対応する遺伝子のみを破壊する等の手段により、嫌気条件のみで活性が抑制されるようにすることになる。
本発明はまた、グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を嫌気性条件下での菌体の発酵工程により反応させてフマル酸を製造する方法であって、上記菌体は、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が抑制されているものであるフマル酸の製造方法でもある。菌体におけるコハク酸デヒドロゲナーゼの活性が抑制されていると、フマル酸からコハク酸への反応の進行を充分に低減することができることから、フマル酸の収率が向上された製造方法とすることができることになる。該製造方法は、上述したフマル酸の製造方法と組み合わせた形態としてもよく、このような形態とすることにより、本発明の作用効果を充分に発揮することができることになる。
上記発酵原料やその使用量、発酵条件、菌体の種類や使用量等は、上述と同様である。また、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性の抑制方法としては、上述のような酵素の活性を抑制する方法等が好適である。例えば、嫌気条件下と好気条件下でそれぞれ別の酵素が働いている大腸菌等の場合には、嫌気条件下でこの反応を触媒する酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼが発現しないように、発現改変する又は破壊しておくことが好ましい。また、嫌気条件下と好気条件下で同一の酵素が働いている枯草菌、酵母、コリネバクテリウム等の場合には、嫌気条件下でこの反応を触媒する酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼが発現しないように、発現改変することが好ましい。このように、フマル酸からコハク酸への還元が起こらないようにするために、例えば、フマル酸からコハク酸への還元反応の酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼを破壊したり、嫌気条件で発現しないように改変したりする方法により、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性を抑制することができる。
本発明のフマル酸の製造方法は、上述の構成よりなり、バイオマスによるフマル酸の発酵生産方法として好適なプロセスであり、フマル酸の収率が向上し、しかも生産性に優れるものであることから、不飽和ポリエステル原料、食品添加物、L−アスパラギン酸原料、L−リンゴ酸原料、飼料添加物の種々の用途に好適に用いることができる方法である。
以下に本発明の製造方法の好ましい形態について更に詳細に説明するが、本発明の製造方法はこれらの形態のみに限定されるものではない。
図3(a)及び(b)は、本発明におけるグルコースからフマル酸までの生成経路の他の一例を示す図であり、図3(a)は、グルコースからホスホエノールピルビン酸までの生成経路を示す図であり、図3(b)は、ホスホエノールピルビン酸からフマル酸までの生成経路を示す図である。
図4は、フマル酸からコハク酸への生成経路と、ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸を経て、フマル酸以外の化合物(乳酸、酢酸及びエタノール)に代謝変換される経路とを示す図である。
上記図3及び図4において、(1)〜(18)は、各反応を触媒する酵素を表し、表1は、本発明の製造方法に用いる菌体(大腸菌、枯草菌、酵母及びコリネバクテリウム)において、(1)〜(18)の酵素に対応した酵素遺伝子の状態等を表す。なお、菌体は、グリセルアルデヒドリン酸とジヒドロキシアセトンリン酸とを変換する酵素(トリオースリン酸イソメラーゼ)遺伝子を有していることが好ましい。
Figure 2005211042
表1中、「既存」とは、酵素に対応する遺伝子が、菌体の野生株が保有しているものであることを意味する。また、「増強」とは、酵素活性が増強されるように遺伝子を操作することであり、「破壊」とは、酵素に対応する遺伝子が発現しないように遺伝子を破壊することであり、「発現改変」とは、好気条件では発現するが、嫌気条件では発現しないように遺伝子を操作することを意味する。また、「なし」とは、菌体が遺伝子をもともと保有していないことを意味する。
上記菌体においては、(9)ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼの活性が増強されるように遺伝子操作していることから、ホスホエノールピルビン酸からオキサロ酢酸への反応が促進されることとなる。
またフマル酸からコハク酸となる反応の酵素であるコハク酸デヒドロゲナーゼに対応する遺伝子を破壊していることから、フマル酸からコハク酸に変換されなくなり、フマル酸の収率がより向上することとなる。
更にピルビン酸から乳酸となる反応の酵素である(14)乳酸デヒドロゲナーゼに対応する遺伝子を破壊している。更に、ピルビン酸からアセチルCoAとなる反応の酵素である(15)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、アセチルCoAから酢酸となる反応の酵素である(16)アセチルCoAシンターゼ、ピルビン酸からアセトアルデヒドとなる反応の酵素である(17)ピルビン酸デカルボキシラーゼ、及び、アセトアルデヒドからエタノールとなる反応の酵素である(18)アルコールデヒドロゲナーゼに対応する遺伝子を、好気条件では発現するが、嫌気条件では発現しないように遺伝子操作(発現改変)していることから、フマル酸の収率がより向上することとなる。
本発明においては、表1に示すような、フマル酸生成経路における各酵素に対応する遺伝子を有する菌体(大腸菌、枯草菌、酵母及びコリネバクテリウム)を好気培養することで充分に増殖させ、その後にグルコースを製造原料として用いて、嫌気条件下で発酵させることから、充分に生産性及び収率を向上させてフマル酸を製造することが可能となる。
図1は、本発明における好ましいプロセスの概念図である。 図2(a)及び(b)は、本発明におけるグルコースからフマル酸までの生成経路の一例を示す図である。 図3(a)及び(b)は、本発明におけるグルコースからフマル酸までの生成経路の他の一例を示す図である。 図4は、従来の菌体を嫌気条件下で発酵させた場合のフマル酸以外の化合物への代謝変換経路を示す図である。 図5は、従来におけるグルコースからコハク酸までの生成経路を示す図である。

Claims (8)

  1. グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を嫌気性条件下での菌体の発酵工程により反応させてフマル酸を製造する方法であって、
    該フマル酸の製造方法は、好気培養による菌体培養工程の後に発酵工程を行う
    ことを特徴とするフマル酸の製造方法。
  2. 前記発酵工程は、2つ以上の槽を用いて連続して行うことを特徴とする請求項1記載のフマル酸の製造方法。
  3. 前記フマル酸の製造方法は、発酵工程の後にセラミックフィルター、焼結金属フィルター及びろ過膜のうちの少なくとも1種を用いる菌体の分離工程を行うことを特徴とする請求項1又は2記載のフマル酸の製造方法。
  4. 前記フマル酸の製造方法は、分離工程の後に酸性化及び/又は電気透析による分離精製工程を行うことを特徴とする請求項3記載のフマル酸の製造方法。
  5. 前記菌体は、変異株を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフマル酸の製造方法。
  6. 前記菌体は、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ及びホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼからなる群より選択される1種以上の酵素の活性が増強されているものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のフマル酸の製造方法。
  7. 前記菌体は、乳酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、アセチルCoAシンターゼ及びアルコールデヒドロゲナーゼからなる群より選択される1種以上の酵素の活性が抑制されているものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のフマル酸の製造方法。
  8. グルコースと二酸化炭素及び/又は炭酸塩とを含む製造原料を嫌気性条件下での菌体の発酵工程により反応させてフマル酸を製造する方法であって、
    該菌体は、コハク酸デヒドロゲナーゼの活性が抑制されているものである
    ことを特徴とするフマル酸の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US10947522B2 (en) 2016-02-04 2021-03-16 Kao Corporation Mutant of genus Rhizopus

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