JP2006291884A - 内燃機関用部材及びその表面処理方法 - Google Patents

内燃機関用部材及びその表面処理方法 Download PDF

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誠之 鎌田
Hiroshi Kumagai
宏 熊谷
Kenji Kikuchi
賢司 菊池
Hideki Agata
秀樹 縣
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Abstract

【課題】デポジットの弾き性を上げ、デポジットの付着を防止し得る内燃機関用部材及びその表面処理方法をを提供すること。
【解決手段】基体部材の表面に次式、Gσ≦34J/m、RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2、RSm(MAX)≦0.2[mm]、0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm]を満たす炭素系膜が被覆された内燃機関用部材である。炭素系膜が、フッ素及び/又はケイ素を30atm%以上含む。基体部材が、燃料噴射弁、ピストン、インテークバルブ及び吸気コントロールバルブなどである。 内燃機関用部材の表面処理に当たり、基体部材の表面に、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工及び金型による転写加工などで表面粗さを調整する。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関用部材及びその表面処理方法に係り、更に詳細には、デポジットを抑制できる内燃機関用部材及びその表面処理方法に関する。
内燃機関の燃焼室部品においては、燃料の不完全燃焼時に「デポジット」と称する堆積物が生成する。このデポジットは燃料の炭化物(カーボン分)、燃料の酸化したガム状物質などが混ざった、粘着性の強い物質であり、燃焼室や吸気系部品に堆積することにより、燃費、排気などの性能低下を引き起こすことが問題となっていた。
例えば、ピストンの冠面やバルブの表面にデポジットが存在すると、燃料が濡れ状態となって付着し、燃料の燃焼効率が低下するため排気ガス中に含まれる未燃の炭素水分が増大する。また、吸気コントロールバルブに燃焼室からの吹き返しのデポジットが堆積すると、バルブが固着し、吸入空気のコントロールができず、燃費、排気の悪化、始動不良、制御不良を引き起こす。
このようなデポジットの付着を防止するため、例えば、燃焼室内壁、即ちシリンダヘッドの内壁面、ピストンヘッドの内壁面、ピストンヘッドの壁面及び吸入弁ヘッドの壁面にフッ素樹脂を被覆することが提案されている(特許文献1〜3参照)。
実開昭62−137360号公報 実開昭62−154250号公報 特開平 2−176148号公報
また、特に直噴エンジンの燃料噴射弁においては、部品の寸法精度が厳しく、噴射孔周辺へのデポジットの堆積がノズル細孔の目詰まりや噴霧制御の悪化を引き起こすことが問題となっていた。
このような噴霧孔へのデポジット付着防止の方策としては、フッ素樹脂コーティングを施したものや、PTFE粒子による分散めっきを施したものなどが知られている(特許文献4、5参照)。
実開昭59−82474号公報 特開平10−89199号公報
しかし、特許文献1〜5に記載されているような被膜では、デポジットの弾き性能として不十分であり、デポジットの堆積を防ぐことができなかった。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、デポジットの弾き性を上げ、デポジットの付着を防止し得る内燃機関用部材及びその表面処理方法をを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、コーティング表面の粗さの工夫により、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の内燃機関用部材は、基体部材の表面に炭素系膜が被覆されて成る内燃機関用部材であって、
該炭素系膜の表面は、平滑面で測定した際の表面自由エネルギーGσが以下の式(1)
σ≦34J/m …(1)
で表され、任意な方向で測定した際の被覆粗さが以下の式(2)〜(4)
RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2 …(2)
RSm(MAX)≦0.2[mm] …(3)
0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm] …(4)
(式中のRsmは輪郭曲線要素の平均長さ、Raは算術平均粗さ、MAXは最大値、MINは最小値を示す。)
で表されることを特徴とする。
また、本発明の内燃機関用部材の好適形態は、上記炭素系膜が、フッ素及び/又はケイ素を30atm%以上含むことを特徴とする。
更に、本発明の内燃機関用部材の他の好適形態は、上記炭素系膜を被覆する前の基体部材の表面は、任意な方向で測定した際の被覆粗さが以下の式(5)〜(7)
RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2 …(5)
RSm(MAX)≦0.2[mm] …(6)
0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm] …(7)
(式中のRsmは輪郭曲線要素の平均長さ、Raは算術平均粗さ、MAXは最大値、MINは最小値を示す。)
で表されることを特徴とする。
更にまた、本発明の内燃機関用部材の表面処理方法は、上記内燃機関用部材の表面処理に当たり、
該炭素系膜を被覆する前の基体部材の表面に、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工及び金型による転写加工から成る群より選ばれた少なくとも1種の加工方法を採用して表面粗さを調整することを特徴とする。
また、本発明の内燃機関用部材の表面処理方法の好適形態は、上記炭素系膜の成膜を気相成膜法で行い、膜厚を0.05〜5μとすることを特徴とする。
また、本発明の内燃機関用部材の表面処理方法の他の好適形態は、上記炭素系膜の表面粗さ調整を、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工及び金型による転写加工から成る群より選ばれた少なくとも1種の加工方法で行うことを特徴とする。
本発明によれば、適切な表面粗さとコーティングの選定により、デポジットの弾き性が良好となるため、デポジットの堆積・固着が抑制され、性能劣化が少なく効率の良い燃焼運転の持続が実現される。
以下、本発明の内燃機関用部材について詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「%」は特記しない限り質量百分率を示す。
本発明の内燃機関用部材は、基体部材の表面に炭素系膜が被覆されて成る。
また、この炭素系膜の表面は、平滑面で測定した際の表面自由エネルギーGσが以下の式(1)
σ≦34J/m …(1)
で表される。
以下に、上記式(1)を導いた過程を示す。
一般に、表面の濡れ性は、液体/固体/気体界面のつり合いによって生じ、接触角θで表される。θが大きいほど、弾き性の良い表面である。
また、固体表面を複数の溶媒で接触角θを測定することにより得られる「表面自由エネルギー」は、表面の非粘着性の指標となる。
表面自由エネルギーの算出にはowensの式、拡張fowkes式などの方法が知られている。どちらの方法を用いても良いが、ここではコーティング表面をRa0.02以下に調製した試料において、蒸留水、ヨウ化メチレンの2溶媒を用いowensの方法に従い算出した。
この結果、かかる表面自由エネルギーを34mJ/m以下とすることにより、良好なデポジット弾き性が得られる。好ましくは22mJ/m以下とすることができる。
更に、この炭素系膜の表面は、任意な方向で測定した際の被覆粗さが以下の式(2)〜(4)
RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2 …(2)
RSm(MAX)≦0.2[mm] …(3)
0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm] …(4)
(式中のRsmは輪郭曲線要素の平均長さ、Raは算術平均粗さ、MAXは最大値、MINは最小値を示す。)
で表される。
以下に、上記式(2)〜(4)を導いた過程を示す。
弾き性の向上には固体の表面積の増加が有効であることが知られており、Wenzelは表面が均一で微細な凹凸を持つ場合、次式
cosθ’=rcosθ
(r:実際の表面積/見かけの表面積、θ:真の接触角、θ’:見かけの接触角)
で表される関係式が成り立つとした。
今回、本発明者らは内燃機関用部材として応用可能な様々な粗面化手法とデポジット弾き性との関係を調査し、デポジットの良好な弾き性を得るための粗さの範囲を簡便な表面粗さパラメータ(JIS B0601−2001による)で規定するに至った。
良好なデポジットの弾き性を得るためには、異方性が少なく微細凹凸をもつ表面が有効となる。
具体的には、コーティング面の表面粗さは、任意の方向で測定した際のRSmの最大値/最小値が2以下、RSmの最大値が0.2mm以下、且つRaの最大値が0.1〜3μmの範囲とする。また、好ましくは、任意の方向で測定した際のRSmの最大値/最小値を1.5以下、RSmの最大値0.15mm以下、且つRaの最大値が0.3〜2μmの範囲とすることができる。
なお、表面粗さ測定法はJIS B0601−2001準拠とし、粗さ測定方向は部材中央を中心とし、図1のように均等に4方向、より望ましくは8方向以上のデータを採取して測定する。
上述のように、本発明の内燃機関用部材は、基体部材に被覆する炭素系膜について、上記式(1)を満足させることで、非粘着性が高いものとなる。また、式(2)〜(4)を満足させることで、膜表面の凹凸の異方性が少なくなり、凹凸間隔が一定以上に細かくなり、凹凸の高さが一定以上に高くなるように規定される。よって、良好なデポジットの弾き性が得られる。
ここで、上記炭素系膜は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、FEP(パーフルオロエチレンプロピレン樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂、PFA(パーフロロアルコキシ樹脂)、ETFE(エチレン四フッ化エチレン共重合体)、シリコン樹脂、アクリル−シリコーン系樹脂、気相プラズマ重合膜、フッ化アルキルシランなどの薄膜が挙げられる。
また、上記炭素系膜は、フッ素(F)、ケイ素(Si)のいずれか一方又は双方を30atm%以上含むことが好適である。
これにより、デポジットの弾き性がより良好となる。
更に、上記炭素系膜を被覆する前の基体部材の表面は、任意な方向で測定した際の被覆粗さが以下の式(5)〜(7)
RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2 …(5)
RSm(MAX)≦0.2[mm] …(6)
0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm] …(7)
(式中のRsmは輪郭曲線要素の平均長さ、Raは算術平均粗さ、MAXは最大値、MINは最小値を示す。)
で表されることが好適である。
このように、炭素系膜の下地面の粗さを調整することにより、被覆する炭素系膜が上記表面粗さを満たすことが容易になる。また、アンカー効果により炭素系膜と下地面(基体部材の表面)との密着性も確保できる。
更にまた、上記基体部材としては、鉄系材料やアルミニウム系材料などが挙げられる。
上記鉄系材料としては、特に制限はなく、高純度の鉄だけでなく、各種の鉄系合金(ニッケル、銅、亜鉛、クロム、コバルト、モリブデン、鉛、ケイ素又はチタン、及びこれらを任意に組み合わせたもの等)を使用することができる。具体的には、例えば浸炭鋼SCM420やSCr420(JIS)などを挙げることができる。
また、上記アルミニウム系材料としては、特に制限はなく、高純度のアルミニウムだけでなく、各種のアルミニウム系合金を使用することができる。具体的には、例えばシリコン(Si)を4〜20%、銅(Cu)を1.0〜5.0%含む亜共晶アルミニウム合金又は過共晶アルミニウム合金等を用いることが望ましい。アルミニウム合金の好適例としては、例えばAC2A、AC8A、ADC12及びADC14(JIS)等を挙げることができる。
具体的には、図2及び図3に示すような、自動車用エンジンの吸気系〜燃焼室で使用される部品、例えば、燃料噴射弁、ピストン、インテークバルブ、吸気コントロールバルブなどを上記基体部材として表面処理することができる。
上記燃料噴射弁においては、図4に示すように、ノズルへ10のコーティングにより、デポジット付着による噴霧性能悪化が防止され、燃費、排気などの性能が安定化し得る。
上記ピストンにおいては、図5に示すように、冠面11へのコーティングにより、劣化ガソリン、エンジンオイル、デポジットの付着が防止され、燃料の濡れ状態での付着が抑制され、燃費、排気性能が安定化し得る。
上記バルブにおいては、図6に示すように、傘部12、燃焼室側面13へのコーティングが望ましい。なお、バルブシート面は、シリンダヘッドと当たり摩耗する部分であるからコーティングは不要であり、必要に応じマスキングを施す。
上記吸気コントロールバルブ(図2の2)においては、デポジットによるバルブ固着を防ぎ、燃費、排気、始動性、燃焼制御を安定化させ得る。
次に、本発明の内燃機関用部材の表面処理方法について詳細に説明する。
上述の内燃機関用部材の表面処理に当たり、該炭素系膜を被覆する前の基体部材の表面に、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工又は金型による転写加工、及びこれらを任意に組合わせた方法を採用して表面粗さを調整する。
これにより、凹凸の異方性の少ない、下地粗さの調製が容易になる。
ここで、上記エッチング加工は、液相エッチング、気相エッチングのいずれを採用しても良い。また、砥粒による加工としては、ブラスト加工、ラッピング加工、バレル加工などがある。更に、金型による転写加工では、粗さ調製された金型を用いることが良い。
また、上記基体部材を金属製とし、粗さを調整の際に化成処理、陽極酸化処理のいずれか一方又は双方を行うことが好適である。
このときは、粗さ調製時の寸法変化が少ないので、寸法精度が要求される部品、例えば燃料噴射弁などに有効である。
上記金属製の基体部材としては、代表的には、ステンレス鋼、その他の鉄鋼、アルミニウム、チタンなどの金属材料から成るものを使用できる。
更に、上記炭素系膜の成膜を気相成膜法で行い、膜厚を0.05〜5μとすることが好適である。
PVD法やCVD法を採用することで、膜厚の均一性が良好な薄膜を形成できる。また、被覆面(下地面となる基体部材の表面)の表面粗さの炭素系膜への転写性が優れるので、所望の炭素系膜表面を得ることが容易になる。
更にまた、炭素系膜の成膜後に、表面粗さを調整することが好適である。
かかる表面粗さ調整としては、基体部材の表面処理と同様な方法、例えば、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工又は金型による転写加工、及びこれらを任意に組合わせた方法を採用できる。
このときは、表面粗さをコントロールしながら、コーティング膜厚を一定以上確保することが可能であり、耐久性が良好になる。また、凹凸の異方性の少ない、炭素系膜の調製が容易となる。
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
平滑なアルミニウム合金(AC2A)基材を樹脂金型に挿入、基材表面にポリプロピレン樹脂をインサート成形によりコーティングした。
コーティング表面はサンドブラスト加工した樹脂金型の転写により粗さ調整を行った。 膜厚は断面観察より最大部で1.5mmであった。なお、F、Siはコーティング樹脂中には含まれていない。
(実施例2)
平滑なアルミニウム合金(AC2A)を用い、実施例1と同様の樹脂金型を用い、FEP樹脂(パーフルオロエチレンプロピレン樹脂)をコーティングした。
膜厚は断面観察より最大部で1.5mmであり、F濃度はXPS分析より67atm%であった。
(実施例3)
ステンレス鋼(SUS420J2)基材表面をラッピング加工により粗さ調製した後、フロロアルキルアルコキシシラン、エタノール、塩酸、水を一定の割合で混合した処理剤により塗布、焼成乾燥を行った。
コーティング層の厚さは0.1μm未満であり、F+Siの濃度はXPS分析により31%であった。
(実施例4)
アルミニウム合金(AC2A)基材を、アルカリ脱脂した後、酸性フッ化アンモン+塩化アンモニウム水溶液によりエッチング処理し、粗さ調整を行った。その後、実施例3と同様の方法でコーティングを行った。
(実施例5)
ステンレス鋼(SUS420J2)基材表面を、化成処理+脱膜を基本工程とするエッチング処理である日本パーカライジング(株)の「ケミブラスト処理」を用い、粗さ調整を行った。その後、実施例3と同様の方法でコーティングを行った。
(実施例6)
ステンレス鋼(SUS420J2)基材を用い、実施例5と同様の粗さ調整を行った後、メタンプラズマ製膜→フッ化メタンプラズマ処理により、フッ素系炭素膜のコーティングを行った。
コーティング層のF濃度はXPSから50atm%、膜厚は断面観察から最大部で0.5μmであった。
(実施例7)
アルミニウム合金(AC2A)基材にプライマー塗布後、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)樹脂を粉体塗装し、380℃で焼成を行った後、サンドブラスト加工により粗面化を行った。
コーティング層F濃度はXPSから67atm%、膜厚は断面観察から最大部で30μmであった。
(実施例8)
日産自動車製QR20DDエンジン用燃料噴射弁のノズル部(SUS420J)先端に、実施例6と同条件で成膜を行った。QR20DDエンジンに装着、外気温23℃で24hの燃焼実験を行った。
燃焼実験前後の噴霧特性、排気性能に変化は見られず、ノズル部へのデポジットの付着はみられなかった。
(比較例1)
ステンレス鋼(SUS420J2)基材を用い、バフ研磨により鏡面仕上げを行った。
その後、実施例3と同様の方法でコーティングを行った。
(比較例2)
ステンレス鋼(SUS420J2)基材を用い、フライス加工により粗さ調整を行った。
その後、実施例3と同様の方法でコーティングを行った。
(比較例3)
ステンレス鋼(SUS420J2)基材表面を、化成処理+脱膜を基本工程とするエッチング処理である日本パーカライジング(株)の「ケミブラスト処理」を用い、粗さ調整を行い、試料とした。
(比較例4)
日産自動車製QR20DDエンジン用燃料噴射弁を同エンジンに装着、外気温23℃で24hの燃焼実験を行った。
燃焼実験前後の噴霧特性、排気性能に変化は見られなかったが、ノズル部へのデポジットの付着の兆候がみられた。なお、ノズル先端は旋盤加工である。
<評価試験>
各試験片について、以下に示すように、表面粗さ、表面エネルギー、デポジット付着高さ、デポジット剥がれ形態を測定した。これらの結果を表1に示す。
Figure 2006291884
1.表面粗さ
触針式表面粗さ測定機により粗さ測定を行った。測定の諸条件はJIS B0601−2001準拠とした。
2.表面エネルギー
コーティング表面をRa0.02以下に調製した試料において、蒸留水、ヨウ化メチレンの2溶媒を用い触媒測定を行い、owensの式に従い算出した。
3.デポジット付着高さ
ガソリンを酸化劣化させ、得られたガム分を抽出し固形の試験用デポジットを作製した。
この試験用デポジットを正確に20mg測り取り、試験片上に乗せ150℃で10分間加熱融解し、室温まで放冷した後、試験片上に付着したデポジットの高さを測定した。この値が大きいほどデポジットの弾き性が良好となる。
4.デポジット剥がれ性
デポジット付着性測定で使用した試験片に、ダイプラウィンテス製サイカス装置を用い、付着デポジットを剥離させ、そのときの剥離荷重と剥離形態を観察した。試験用の刃物には、厚さ4mmのボラゾン製を使用し、試験片とのクリアランス2μmに設定し、移動速度は2μm/secとした。この値が小さいほどデポジットの剥がれ性が良好となる。
表1より、実施例1〜8で得られた表面処理部材は、本発明の範囲内であるコーティングの表面自由エネルギーと表面粗さの組合せであることにより、良好なデポジット弾き性が得られ、また接触面積の減少により、剥がれ性にも効果が認められる。
以上、本発明を好適実施例により詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形が可能である。
例えば、本発明の内燃機関用部材は、ピストン、バルブ及び燃料噴射弁に限らず、燃焼室内の他の部品(スパークプラグ、シリンダヘッド、ピストンリングなど)に適用することもでき、部品性能を損なうことなく、燃焼室部品のデポジット付着を軽減できる。
表面粗さ測定方向の一例を示す概略図である。 自動車用エンジンの吸気系〜燃焼室の模式図である。 筒内噴射用エンジンの燃焼室の模式図である。 筒内噴射用燃料噴射弁のノズル部断面図である。 ピストンの一例を示す概略図である。 バルブの一例を示す概略図である。
符号の説明
1 コレクター
2 吸気コントロールバルブ
3 インテークマニホールド
4 バルブ
5 ピストン
6 燃料噴射弁
7 スパークプラグ
8 ニードルバルブ
9 バルブシート
10 噴射孔
11 ピストン冠面
12 バルブ傘部
13 燃焼室側面

Claims (9)

  1. 基体部材の表面に炭素系膜が被覆されて成る内燃機関用部材であって、
    該炭素系膜の表面は、Ra0.02以下の平滑面で測定した際の表面自由エネルギーGσが以下の式(1)
    σ≦34J/m …(1)
    で表され、任意な方向で測定した際の被覆粗さが以下の式(2)〜(4)
    RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2 …(2)
    RSm(MAX)≦0.2[mm] …(3)
    0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm] …(4)
    (式中のRsmは輪郭曲線要素の平均長さ、Raは算術平均粗さ、MAXは最大値、MINは最小値を示す。)
    で表されることを特徴とする内燃機関用部材。
  2. 上記炭素系膜が、フッ素及び/又はケイ素を30atm%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用部材。
  3. 上記炭素系膜を被覆する前の基体部材の表面は、任意な方向で測定した際の被覆粗さが以下の式(5)〜(7)
    RSm(MAX)/RSm(MIN)≦2 …(5)
    RSm(MAX)≦0.2[mm] …(6)
    0.1[μm]≦Ra(MAX)≦3[μm] …(7)
    (式中のRsmは輪郭曲線要素の平均長さ、Raは算術平均粗さ、MAXは最大値、MINは最小値を示す。)
    で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関用部材。
  4. 上記基体部材が、燃料噴射弁、ピストン、インテークバルブ及び吸気コントロールバルブから成る群より選ばれた少なくとも1種のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載の内燃機関用部材。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の内燃機関用部材の表面処理に当たり、
    該炭素系膜を被覆する前の基体部材の表面に、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工及び金型による転写加工から成る群より選ばれた少なくとも1種の加工方法を採用して表面粗さを調整することを特徴とする内燃機関用部材の表面処理方法。
  6. 上記基体部材が金属であり、粗さを調整の際に化成処理及び/又は陽極酸化処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の内燃機関用部材の表面処理方法。
  7. 上記炭素系膜の成膜を気相成膜法で行い、膜厚を0.05〜5μとすることを特徴とする請求項5又は6に記載の内燃機関用部材の表面処理方法。
  8. 上記炭素系膜の成膜後に、表面粗さを調整することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1つの項に記載の内燃機関用部材の表面処理方法。
  9. 上記炭素系膜の表面粗さ調整を、エッチング加工、砥粒による加工、切削加工及び金型による転写加工から成る群より選ばれた少なくとも1種の加工方法で行うことを特徴とする請求項5〜8のいずれか1つの項に記載の内燃機関用部材の表面処理方法。
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