JP2021092163A - レーザ点火装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】窓部材の表面へのデポジットの付着や面粗度の変化で、透過率が低下するのを抑制して、焦点での集光強度を維持可能なレーザ点火装置を提供する。【解決手段】レーザ点火装置1は、レーザ発振光学系2と、ハウジング4の内側に収容される集光光学素子3と、ハウジング4の燃焼室Cに面する端部に設けられ、パルスレーザLpを透過させる窓部材5とを備える。窓部材5は、燃焼室Cに面する側の表面に保護膜51を有しており、保護膜51を構成する化合物は、燃焼室Cの雰囲気中で安定であり、かつ、燃焼室Cの雰囲気中に含まれる金属成分由来の黒色デポジットD1との表面自由エネルギの差が、5mN/m以上の化合物である。【選択図】図1

Description

本発明は、レーザ点火装置に関する。
近年、コジェネレーションシステム等に用いられる内燃機関の点火手段として、レーザ光を用いて混合気に点火するレーザ点火装置がある。かかるレーザ点火装置は、集光光学素子をハウジング内に配置したレーザ点火プラグを有し、ハウジングには、集光光学素子よりも先端側に、レーザ光を透過させる窓部材が取り付けられる。窓部材は、例えば、透明なガラス材料によって構成されて、燃焼室内の熱、圧力、燃料、煤等による汚染等から集光光学素子を保護している。
例えば、特許文献1には、燃焼室に面して光学窓を含むプラグ構成部材を配置した点火装置が開示されている。プラグ構成部材は、光学窓とその燃焼室側の表面に設けられた超親水膜とからなる。超親水膜は、シリカを含む超親水性粒子とチタニア等を含む熱励起触媒粒子とを含有する膜であり、水との接触角がより小さくなるように規定されている。これにより、燃焼排気中の水分が表面に濡れ広がりやすくなり、また、熱により触媒作用を励起させて、オイルミスト由来の不燃成分や煤等がデポジットとなって光学窓の表面に付着するのを抑制している。
特開2016−109128号公報
特許文献1の構成において、超親水膜の成分となるチタニアは、例えば、約700℃を超えると、アナターゼ型からルチル型に相転移することが知られている。その場合には、燃焼室内の温度が相転移温度(約700℃)を超えると、チタニアの結晶構造が変化することによって、超親水膜に亀裂や剥離が発生するおそれがある。それに伴い、面粗度が粗くなると、レーザ光が散乱し、透過率が低下しやすくなる。
一方、近年、内燃機関の高効率化により、燃焼室内の温度が高くなる傾向にある。その場合には、想定されるプラグの耐熱目標温度が上昇することによって(例えば、800℃程度)、透過率の低下割合が大きくなることが判明した(例えば、22%程度の低下)。また、面粗度がより粗くなるために、デポジットが表面の凹凸にトラップされやすくなって、付着量が増加し、レーザ光の透過率がさらに低下することが懸念される。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、窓部材の表面へのデポジットの付着や構造変化等によって、透過率や集光強度が低下するのを抑制し、安定した点火性能を長時間維持することができるレーザ点火装置を提供しようとするものである。
パルスレーザ(Lp)を発振させるレーザ発振光学系(2)と、
上記パルスレーザを燃焼室(C)内に集光させる集光光学素子(3)と、
上記集光光学素子を内側に収容するハウジング(4)と、
上記ハウジングの上記燃焼室に面する端部に設けられると共に上記パルスレーザを透過させる窓部材(5)とを備える、レーザ点火装置(1)であって、
上記窓部材は、上記燃焼室に面する側の表面に保護膜(51)を有しており、
上記保護膜を構成する化合物は、上記燃焼室の雰囲気中で安定であり、かつ、上記燃焼室の雰囲気中に含まれる金属成分由来の黒色デポジット(D1)との表面自由エネルギの差が、5mN/m以上の化合物である、レーザ点火装置にある。
上記構成において、窓部材の表面に設けられた保護膜は、使用雰囲気において安定な化合物で構成されるので、使用に伴う膜構造や面粗度等の変化による透過率の低下を抑制することができる。また、透過率の低下に影響する黒色デポジットとの表面自由エネルギ差が5mN/m以上の化合物を用いることにより、分子間力を低減して黒色デポジットの付着を抑制し、透過率の低下を抑制することができる。これにより、雰囲気温度がより高くなる環境においても、透過率を保ちながら窓部材を保護し、集光強度の低下を抑制することができる。
以上のごとく、上記態様によれば、窓部材の表面へのデポジットの付着や構造変化等によって、透過率や集光強度が低下するのを抑制し、安定した点火性能を長時間維持するレーザ点火装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
本発明の実施形態1における、レーザ点火装置の主要部構成を示す軸方向断面図。 本発明の実施形態1における、レーザ点火装置を構成するレーザ点火プラグの先端部構成を示す拡大断面図。 本発明の実施形態1における、レーザ点火装置の全体概略構成を示す軸方向断面図。 従来のレーザ点火装置において、レーザ点火プラグに設けられる窓部材へのデポジットの付着プロセスを示す模式図。 本発明の試験例における、窓部材に付着したデポジットの成分分析結果を示すグラフ図。 本発明の試験例における、窓部材に設けられる保護膜の作用効果を説明するための模式図。 本発明の試験例における、保護膜を設けた窓部材の加熱処理後の表面自由エネルギを、デポジットの表面自由エネルギと比較して示す図。 本発明の試験例における、保護膜を設けた窓部材の表面自由エネルギ、透過率及び耐熱性の評価方法を示す模式図。 本発明の試験例における、窓部材に設けられる保護膜の表面自由エネルギ及び透過率を、他の材料を用いた場合と比較して示す図。 本発明の試験例における、従来の超親水膜を設けた窓部材について、温度を変化させたときの透過率及び面粗度の変化を示す図。 本発明の試験例における、保護膜を設けた窓部材を備えるレーザ点火装置の耐久試験結果を、保護膜を設けない場合と比較して示す図。 本発明の試験例における、膜厚と透過率の関係を示す図。
(実施形態1)
レーザ点火装置に係る実施形態について、図1〜図3を参照して説明する。
図1に示すように、本形態のレーザ点火装置1は、レーザ発振光学系2と、集光光学素子3と、ハウジング4と、窓部材5とを備える。レーザ発振光学系2は、パルスレーザLpを発振させる光学系であり、集光光学素子3は、パルスレーザLpを燃焼室C内に集光させる光学素子であり、ハウジング4は、その内側に集光光学素子3を収容する。
図2に示すように、窓部材5は、ハウジング4の燃焼室Cに面する端部に設けられると共に、パルスレーザLpを透過させる。窓部材5は、燃焼室Cに面する側の表面に保護膜51を有している。保護膜51を構成する化合物としては、燃焼室Cの雰囲気中で安定であり、かつ、燃焼室Cの雰囲気中に含まれる金属成分由来の黒色デポジットD1との表面自由エネルギの差が、5mN/m以上である化合物が用いられる。なお、表面自由エネルギの差は、絶対値とする。
好適には、燃焼室Cの雰囲気中で安定な化合物として、酸素を含まない無機化合物が用いられる。ここで、「雰囲気中で安定」とは、具体的には、燃焼室Cの雰囲気温度に対して熱的に安定であり、燃焼室Cの雰囲気中の成分に対して化学的に安定であることを示す。このような化合物を用いることで、使用環境において保護膜51の表面の面粗度が低下することが抑制され、また、黒色デポジットD1の付着が抑制されて、パルスレーザLpの透過率の低下が抑制される。
より好適には、保護膜51は、熱処理膜であることが望ましい。熱処理膜とすることにより、保護膜51を構成する化合物と、燃焼室Cの雰囲気中に含まれる金属成分由来の黒色デポジットD1との表面自由エネルギの差を、より大きくすることができる。好適には、表面自由エネルギの差は、10mN/m以上であることが望ましく、透過率の低下を抑制する効果が高まる。熱処理膜は、例えば、保護膜51を構成する化合物の薄膜が、400℃以上にて熱処理された膜とすることができる。
このような保護膜51を構成する化合物として、好適には、Crを含む窒化物を用いることができる。
Crを含む窒化物は、具体的には、CrN(窒化クロム)、Cr2N(一窒化二クロム)等が挙げられる。Cr以外の1又は2以上の金属元素(例えば、Al、Ti等)を含むクロム系窒化物であってもよい。これらCrを含む窒化物を、以下、Cr窒化物と称する。
ここで、黒色デポジットD1に含まれる金属成分は、例えば、Feである。
燃焼室Cの雰囲気中には、例えば、オイルミスト由来のFe成分が混入しており、その酸化により形成されたFe酸化物(FeO)が、窓部材5に付着して、黒色デポジットD1となると推測される。
Crを含む窒化物にて保護膜51を構成すると、このような黒色デポジットD1との表面自由エネルギの差を大きくして、その付着を抑制する効果が得られる。
具体的には、窓部材5は、光学ガラスからなる光学窓部材(以下、適宜、光学窓と称する)50と、保護膜51との二層構造となっている。窓部材5は、光学窓50を基体とし、その燃焼室Cに面する側の表面を覆って、保護膜51が形成される。
好適には、光学窓50は、例えば、サファイアガラス等の光学材料を用いて構成することができる。サファイアガラスは、高純度Al23結晶からなる。
より具体的には、燃焼室Cの雰囲気中に含まれるオイルミスト成分は、窓部材5の基体である光学窓50を構成する金属成分よりもイオン化傾向の大きい金属成分を含む。
上述したように、光学窓50がサファイアガラスからなる場合には、光学窓50を構成する金属成分は、Alであり、その場合には、よりイオン化傾向の大きい金属成分として、例えば、Caが挙げられる。
オイルミストに含まれるCa成分は、イオン化傾向が大きく酸化しやすいことから、窓部材5が、よりイオン化傾向の小さい金属成分を含む場合には、オイルミストの付着によりCa酸化物(CaO)が形成されやすくなると推測される。このCa酸化物が生成すると後述する白色デポジットD2となり(図4参照)、黒色デポジットD1と共に、透過率に影響を与えるおそれがある。
本形態では、窓部材5の基体となる光学窓50の表面を、雰囲気中で安定な保護膜51で保護しているので、窓部材5にオイルミストが付着しても、Ca成分の酸化は生じにくい。例えば、Cr窒化物のように酸素を含まない化合物にて保護膜51を構成すると、酸化反応が抑制されるので、Ca酸化物の付着を抑制する効果が高くなる。
次に、レーザ点火装置1の詳細構成について、説明する。
図3に示すように、本形態のレーザ点火装置1は、レーザ点火プラグ10と、その外部に配置され、レーザ発振光学系2の一部となる励起光源21を備える。レーザ点火プラグ10は、ハウジング4内に、レーザ発振光学系2の主要部と、集光光学素子3と、窓部材5とを収容している。窓部材5は、燃焼室C(図2参照)に面して設けられ、燃焼室Cにおいて、パルスレーザLpが集光する。本形態において、集光光学素子3は、集光レンズである。
このようなレーザ点火装置1は、例えば、コジェネレーションシステム用の内燃機関(ガスエンジン)において、気体燃料への点火に用いることができる。
なお、レーザ点火プラグ10の軸方向X(すなわち、図1、図3の上下方向)において、燃焼室C側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、レーザ点火プラグ10の軸方向Xは、パルスレーザLpの光軸の方向と同等となっている。
ハウジング4は、略筒状の金属製部材であり、先端側の外周面に取付ネジ部41を備える。ハウジング4の筒内には、先端側の端部を閉鎖するように、窓部材5の基体となる光学窓50が配置されており、その外周部がハウジング4の内周面に当接保持されている。光学窓50の基端側には、集光光学素子3が、所定間隔で対向するように配置されており、その外周部がハウジング4の内周面に当接保持されている。集光光学素子3よりも基端側には、レーザ発振光学系2との間に、拡大レンズ11が保持されている。
図1、図2に示すように、レーザ点火プラグ10は、ハウジング4の外周面に設けた取付ネジ部41によって、エンジン燃焼室Cの室壁となるエンジンヘッドC1に取り付けられる。このとき、窓部材5は、集光光学素子3よりも先端側に配置されて、レーザ発振光学系2から発振するパルスレーザLpを透過させる。また、窓部材5により、ハウジング4の燃焼室C側の端部が気密封止されて、その基端側に位置する集光光学素子3を、燃焼室C内の熱や圧力、汚染物質等から保護している。
ハウジング4の筒内において、レーザ発振光学系2(図3参照)は、励起光源21に光学的に接続される光ファイバ22と、コリメートレンズ23と、レーザ共振器24とを有する。励起光源21は、ハウジング4の外部に配置されており、励起光L0を発生させて、光ファイバ22を介してコリメートレンズ23へ出射する。励起光源21は、例えば、固体レーザ、半導体レーザ等を用いることができる。
コリメートレンズ23は、出射光を光軸に平行な平行光に変換する。レーザ共振器24は、平行光として入射した励起光L0によって励起され、パルスレーザLpを出射する。
また、本形態においては、光軸方向におけるレーザ共振器24と集光光学素子3との間に、拡大レンズ11が配置されている。拡大レンズ11は、レーザ共振器24から出射したパルスレーザLpの直径を拡張させながら、集光光学素子3へ向かわせる。
レーザ共振器24は、公知のQスイッチ式レーザ共振器とすることができ、例えば、レーザ媒質と、その入射側に設けられた全反射鏡と、出射側に設けられた出光鏡とによって構成される。レーザ媒質には、例えば、YAG単結晶にNdをドーピングしたNd:YAG等の公知のレーザ媒質を用いることができる。全反射鏡は、波長の短い励起光L0を透過し、波長の長いパルスレーザLpは全反射するように形成される。レーザ共振器24に導入された励起光L0によって、レーザ媒質内のNdが励起され、パルスレーザLp(例えば、1064nm)を放射する。
図1において、レーザ共振器24から出射したパルスレーザLpは、拡大レンズ11によって直径を拡張された後、集光光学素子3によって集光される。集光光学素子3から出射したパルスレーザLpは、窓部材5を透過して、燃焼室C内へ向かう。そして、燃焼室C内にて焦点FPを結ぶ。
このように、レーザ点火装置1は、レーザ点火プラグ10の先端部に設けた窓部材5(光学窓50及び保護膜51)を介して、燃焼室C内の焦点FPにパルスレーザLpを集光させて、混合気に点火し、着火・燃焼させるよう構成されている。
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
図2に示すように、燃焼室C内において、パルスレーザLpの集光エネルギにより混合気に点火された場合、点火源の温度は、例えば、最大温度が数万度の高温となる。また、混合気の燃焼に伴い、火炎に晒されるレーザ点火プラグ10の温度が上昇する(例えば、先端部で800℃程度)。一方、燃焼室C内には、ミスト状のエンジンオイル(以下、適宜、オイルミストと称する)Mが存在し、また、混合気の燃焼に伴い、燃焼残渣であるデポジットD(主に、黒色デポジットD1)が発生する。このデポジットDやオイルミストMの一部は、燃焼の際の爆風によって、レーザ点火プラグ10の先端部に配置された窓部材5へ向かう。
このとき、窓部材5の表面に設けられる保護膜51は、例えば、Cr窒化物からなり、熱的及び化学的に安定であると共に、表面自由エネルギ差による分子間力の低減効果により、飛来するデポジットDの付着を抑制し、又は表面でのデポジットDの発生を抑制することが可能になる。これにより、窓部材5の透過率の低下を抑制する効果を有する。
図4に模式的に示すように、レーザ点火プラグ10の先端部に設けられる窓部材5が、保護膜51を有しない場合には、基体となる光学窓50が燃焼室Cに露出する。光学窓50は、例えば、耐熱性の高いサファイアガラス(すなわち、Al23)で構成されており、熱的に安定であるものの、混合気燃焼に伴って発生する黒色デポジットD1が飛来すると、その表面に付着しやすい。また、オイルミストMが付着すると、その表面において白色デポジットD2が発生しやすいことが判明した。これら黒色デポジットD1と白色デポジットD2の付着・堆積により、窓部材5の透過率が徐々に低下すると、混合気の着火性が低下する。
このように、デポジットDは、燃焼室C内に混入するオイルミストMに含まれる金属成分に由来し、そのうち、不燃成分である黒色の金属酸化物を含むデポジットを、黒色デポジットD1というものとする。また、オイルミストMが窓部材5の表面に付着することによって生成する白色の金属酸化物を含む後述する白色のデポジットを、白色デポジットD2というものとする。
(試験例)
これら黒色デポジットD1、白色デポジットD2の生成と付着のメカニズムについて、さらに、窓部材5における保護膜51の効果について、検討する。
(デポジットの分析)
上記図4の構成の窓部材5を設けたレーザ点火プラグ10を用いて、燃焼試験を行い、デポジットDの付着状態を調べた。燃焼試験後の窓部材5の表面を観察し、黒色デポジットD1及び白色デポジットD2の付着を確認した。また、これら黒色デポジットD1及び白色デポジットD2について、EPMA(電子線分析)装置を用いて、付着成分の成分分析を行った。
図5に成分分析結果を示すように、黒色デポジットD1は、金属成分としてFeを含む酸化物(FeO)を主体とするものであることが判明した。黒色デポジットD1は、混合気燃焼により発生し、光学窓50の表面に飛来して物理的に吸着するものと推測される(物理的付着)。
また、白色デポジットD2は、金属成分としてCaを含む酸化物(CaO)を主体とし、黒色デポジットD1よりも有機物を多く含有するものであることが判明した。白色デポジットD2は、光学窓50の表面に飛来したオイルミストMの化学反応により生成するものと推測される(化学的付着)。
このとき、図6に示すように、オイルミストMと光学窓50の界面において、オイルミストMに含まれるCaイオンに対し光学窓50を構成するAl23に鏡像電荷が生成される。そして、図中の反応式のように、酸化カルシウム(CaO)が生成されると共に、Al23の還元によりAlが生成されると考えられる。これは、Alに対してCaのイオン化傾向が大きく、酸化しやすいことによる。
これに対して、本形態の窓部材5は、光学窓50と保護膜51との二層構造となっており、保護膜51は、光学窓50の先端側の表面全体を覆っている。保護膜51は、例えば、Cr窒化物にて構成されており、燃焼室C内の雰囲気に対して熱的及び化学的に安定かつ酸素を含まない膜である。そのため、光学窓50とオイルミストMとの間に介在して、オイルミストMに含まれるCa成分の酸化を抑制し、白色デポジットD2の化学的付着を抑制することができる。
一方、黒色デポジットD1に含まれるFeは、Alよりもイオン化傾向が小さいので、黒色デポジットD1が光学窓50の表面に飛来した場合には、化学反応は発生せず、分子間力によって物理的に吸着される。この場合にも、光学窓50の表面を、例えば、Cr窒化物からなる保護膜51で覆うことにより、表面自由エネルギ差を5mN/m以上として、分子間力を低減させ、黒色デポジットD1の物理的付着を抑制することができる。
また、例えば、Cr窒化物からなる保護膜51は、熱的及び化学的に安定であり、雰囲気中の成分との反応が抑制されるだけでなく、燃焼室C内の温度が高温となっても膜構造が変化することが抑制される。したがって、表面の面粗度が粗くなることによって、表面の凹凸にデポジットDが摩擦力等により保持される機械的付着も低減される。
(保護膜の熱処理と表面自由エネルギ)
このように、本形態の窓部材5は、光学窓50の表面に保護膜51を有することにより、デポジットDの付着が抑制される。このとき、保護膜51に熱処理を施すことができ、熱処理温度に応じて表面自由エネルギを大きくすると共に、黒色デポジットD1との表面自由エネルギ差を大きくすることができる。
図7に示すように、Cr窒化物であるCrNを保護膜51に用いたサンプルについて、成膜後の熱処理の有無による効果を調べた。成膜は、スパッタリング法を用いて行い、形成された保護膜51の表面自由エネルギを測定した。また、成膜後に異なる温度で熱処理を行った保護膜51について、それぞれ、表面自由エネルギを測定した。これらの結果を、黒色デポジットD1であるFeOの表面自由エネルギと共に示した。
ここで、スパッタリング装置は、真空チャンバ内に、光学窓50となるサファイア製の基板と、Crターゲットとを対向配置させて構成される。この真空チャンバ内に、ArガスとN2ガスを導入することにより、基板上に、膜厚50μmのCrN膜を形成して、二層構造の窓部材5のサンプルとした。
図8の上段に示すように、表面自由エネルギの測定は、接触角計を備える表面自由エネルギ計測装置を用いて行った。測定は、それぞれの窓部材5について、保護膜51の表面に測定液を滴下し、接触角θを測定することによって行い、測定データに基づいて表面自由エネルギを算出した。
なお、表面自由エネルギは、いずれも常温で測定した。
また、図8の中段に示すように、熱処理は、同様にしてサファイア基板(φ12.7mm×厚さ3mm)上にCrN膜を形成した窓部材5のサンプルを、加熱炉100内に配置して行った。熱処理温度は、実機での雰囲気温度に相当する300℃又は800℃(最大温度)とし、それぞれの温度で1時間加熱して、熱処理膜からなる保護膜51を有する窓部材5のサンプルを得た。なお、得られたサンプルにおいて、熱処理された保護膜51に損傷や面粗度の悪化は見られなかった。
図7において、CrNからなる保護膜51の表面自由エネルギは、同等温度における黒色デポジットD1(FeO)よりも大きくなっており、常温(熱処理無)での表面自由エネルギの差は、5mN/mよりも大きい。さらに、熱処理を行った場合には、熱処理温度が高いほど、保護膜51の表面自由エネルギは大きくなり、表面自由エネルギ差も大きくなっている。例えば、300℃の熱処理膜では、保護膜51の表面自由エネルギは、50mN/mを超え、同温度での表面自由エネルギ差は、10mN/mよりも大きい。800℃の熱処理膜の表面自由エネルギは、70mN/mであり、FeOの表面自由エネルギ(51.1mN/m)との差は、20mN/mに近い。
したがって、雰囲気温度が高くなる環境では、例えば、300℃以上、好適には、400℃以上で熱処理するのがよい。これにより、黒色デポジットD1(FeO)の表面自由エネルギが比較的高い場合にも、表面自由エネルギの差が5mN/m以上、好適には、10mN/m以上となり、分子間力を低減して付着を抑制することが可能になる。
(保護膜の材料と表面自由エネルギ)
図9上段に示すように、800℃で熱処理したCrNからなる保護膜51について、黒色デポジットD1(FeO)との表面自由エネルギの差を、他の無機化合物と比較して示した。他の無機化合物としては、Mg化合物(MgO、MgF2)を用い、同様にして、サファイア基板上に成膜して熱処理したサンプルを形成し、表面自由エネルギを測定した。
また、図9下段に示すように、これらサンプルの透過率を評価した。
図8の下段に評価装置の概要を示すように、窓部材5のサンプルを、試験用レーザ点火プラグの外部に配置し、試験用レーザ点火プラグから出射される所定波長(λ=1064nm)のレーザ光を、凹レンズを通して平行光として、サンプルに入射させた。透過率は、パワーメータで出射エネルギを測定し、入射エネルギとの比を算出した(透過率=入射エネルギ/出射エネルギ)。
図9において、CrNからなる保護膜51を用いたサンプルの透過率は、88.4%であり、Mg化合物を用いた場合も85%〜90%前後と、いずれのサンプルも85%を超える高い値を示した。ただし、Mg化合物の表面自由エネルギ差は、MgF2が5mN/m未満であり、MgOは10mN/mを超えるものの、酸化膜であるため、酸化反応による白色デポジットD2の生成が懸念される。
なお、図10に示されるように、従来の超親水膜を表面に形成した窓部材5のサンプルについて、300℃〜800℃の温度範囲における透過率と面粗度の変化を調べた。その結果、温度が上昇するのに伴い、面粗度が大きくなり、700℃を超えると透過率が急減した。そのため、700℃以下における透過率は、90%を超えているのに対し、720℃で85%に低下し、800℃における透過率は、70%であった。
(エンジン耐久試験)
保護膜51を有しないサファイアガラス製の光学窓50からなる窓部材5と、その表面に800℃で熱処理したCrNからなる保護膜51を形成した窓部材5を、それぞれレーザ点火プラグ10に取り付け、エンジン耐久試験を行った。エンジン耐久試験の条件は、以下の通りとし、エンジンを連続運転して、集光強度の変化を調べた。
コジェネエンジン(ボア×ストローク:170mm×220mm)
回転数1200rpm
実機BMEP(100%負荷)1.3MPa
エンジンオイル:硫酸灰分1.23wt%の高アッシュオイル
図11に示されるように、保護膜51を有しない窓部材5を用いた場合は、時間経過とともに集光強度が急減し、25時間の運転で20TW/cm2を下回り、失火限界以下となった。これに対して、熱処理された保護膜51を有する窓部材5を用いた場合は、集光強度の低下は緩やかで、失火限界以下となるまでの運転時間は、110時間であった。これにより、レーザ点火プラグ10の寿命を4.4倍程度に延長できることがわかる。
なお、膜厚の設定に際しては、入射光に対して、保護膜51の表面での反射光と光学窓50での反射光が逆位相となるようにすることが望ましい。具体的には、保護膜51を構成する化合物の屈折率と、膜厚と、レーザ共振器24から発振されるレーザ波長(例えば、1064nm)とから、
(屈折率)×(膜厚)=(波長)/4
となるように調整すると、保護膜51における反射率を効果的に低減することが可能になる。膜厚は、必ずしも上記式を満たす値に限定されるものではなく、所望の透過率が得られる範囲に設定されていればよい。
図12に示されるように、800℃で熱処理したCrNからなる保護膜51について、50μm〜200μmの範囲で膜厚を変更したときの、透過率の変化を調べた。その結果、膜厚を50μmとしたときに、透過率が最大となっており、それより膜厚が厚くなると、透過率が低下する傾向にある。具体的には、膜厚を100μm、200μmと厚くするほど、透過率が低下しているものの、いずれも85%前後の高い値が得られた。
したがって、好適には、膜厚を200μm以下の範囲で適宜設定することが望ましい。
以上のごとく、本形態によれば、燃焼室への集光強度の低下を抑制することができるレーザ点火装置を提供することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
例えば、上記実施形態では、レーザ点火装置1を、コジェネレーションシステムのエンジン用として使用する例について説明したが、これに限らず、自動車エンジン用その他、種々の用途に適用することもできる。
Lp パルスレーザ
C 燃焼室
D1 黒色デポジット
1 レーザ点火装置
2 レーザ発振光学系
3 集光光学素子
4 ハウジング
5 窓部材
50 光学窓部材
51 保護膜

Claims (7)

  1. パルスレーザ(Lp)を発振させるレーザ発振光学系(2)と、
    上記パルスレーザを燃焼室(C)内に集光させる集光光学素子(3)と、
    上記集光光学素子を内側に収容するハウジング(4)と、
    上記ハウジングの上記燃焼室に面する端部に設けられると共に上記パルスレーザを透過させる窓部材(5)とを備える、レーザ点火装置(1)であって、
    上記窓部材は、上記燃焼室に面する側の表面に保護膜(51)を有しており、
    上記保護膜を構成する化合物は、上記燃焼室の雰囲気中で安定であり、かつ、上記燃焼室の雰囲気中に含まれる金属成分由来の黒色デポジット(D1)との表面自由エネルギの差が、5mN/m以上の化合物である、レーザ点火装置。
  2. 上記保護膜を構成する化合物は、上記燃焼室の雰囲気温度に対して熱的に安定であり、かつ、上記燃焼室の雰囲気中の成分に対して化学的に安定な、酸素を含まない無機化合物である、請求項1に記載のレーザ点火装置。
  3. 上記保護膜は、熱処理膜であり、上記表面自由エネルギの差は、10mN/m以上である、請求項1又は2に記載のレーザ点火装置。
  4. 上記熱処理膜は、上記保護膜を構成する化合物の薄膜が400℃以上にて熱処理された膜である、請求項3に記載のレーザ点火装置。
  5. 上記保護膜を構成する化合物は、Crを含む窒化物であり、
    上記黒色デポジットに含まれる金属成分は、Feである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレーザ点火装置。
  6. 上記窓部材は、光学ガラスからなる光学窓部材(50)とその表面を覆う上記保護膜との二層構造であり、
    上記燃焼室の雰囲気中に含まれるオイルミスト成分は、上記光学窓部材を構成する金属成分よりもイオン化傾向の大きい金属成分を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレーザ点火装置。
  7. 上記光学窓部材を構成する金属成分は、Alであり、上記イオン化傾向の大きい金属成分は、Caである、請求項6のいずれか1項に記載のレーザ点火装置。
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