JP2006242297A - 組合せオイルコントロールリング - Google Patents

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Abstract

【課題】 密着性に優れ、かつ膜厚が均一であり、優れたスラッジ付着/堆積防止機能を有する薄膜が形成された組合せオイルコントロールリングを提供する。
【解決手段】 軸方向上下に形成された一対のレール部11及びレール部11を連結するウェブ部12から構成されるオイルリング本体1と、オイルリング本体1の内周溝部14に装着されてオイルリング本体1を半径方向外方に押圧するコイルエキスパンダ2とからなり、少なくともコイルエキスパンダ2及び/又はオイルリング本体1のコイルエキスパンダ2と対向する部分の最表面に、気相法によりフッ素系有機薄膜3が形成された組合せオイルコントロールリング。
【選択図】 図1

Description

本発明は、内燃機関用ピストンに装着される組合せオイルコントロールリングに関し、特にフッ素系有機薄膜が形成されたコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリング及びスチール組合せオイルコントロールリングに関する。
地球環境保護の一環として、自動車の燃費向上や排気ガスの浄化が強く求められている。そのため内燃機関において、各部の摩擦損失を低減することにより燃費を向上すること、及び燃焼室に流出して燃焼ガスとして排出される潤滑油の量(オイル消費量)を低減することが重要な課題となっている。これらの課題を解決する上でピストンリングの果たす役割は大きい。
ピストンリングの設計において、摩擦損失を低減するためには低張力化するのが最も効果的である。一方潤滑油の消費量を減少させるためには、ピストンリングを薄幅化することによりピストンリングの断面係数を小さくし、シリンダ壁への追従性を向上させるのが効果的である。
内燃機関用ピストンに装着されたリングの構成例を図7に示す。ピストン6にはピストンリングを装着するためのリング溝61、62及び63が形成されている。リング溝61及び62内にはガスシール作用を主目的とする圧力リング101及び102が各々装着されており、リング溝63内にはオイルコントロール及びオイルシール作用を主目的とするコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリング(2ピース型オイルリング)103が装着されている。ピストン6の往復運動に伴い、これらリング101〜103の外周面がシリンダ7の内壁70との間で摺動する。
図8及び図9に示すように、2ピース型オイルリング103は、(a) 軸方向上下に形成された一対のレール部11とその間を連結するウェブ部12から構成され、合口を有する円環状のオイルリング本体100と、(b) オイルリング本体100を半径方向外方に押圧するコイルエキスパンダ200とからなる。オイルリング本体100の外周部には外周溝部15が形成されており、内周部にはコイルエキスパンダ200を装着する内周溝部14が設けられている。ウェブ部12には複数のオイル孔13が設けられている。
従来2ピース型オイルリングのオイルリング本体100は鋳鉄製であったが、潤滑油の消費量を低減する目的から薄幅化が必要となり、各部を薄肉化しても折損することのない強靱な鋼製のものが多くなっている。2ピース型オイルリングは、一般的に後述するスチール組合せオイルコントロールリング(3ピース型オイルリング)より摩耗に強いため、ディーゼルエンジンに多用されている。しかし2ピース型オイルリングは、余剰の潤滑油をピストン内に戻す通路が狭いという欠点を有する。
2ピース型オイルリングでは、オイルリング本体100の内周溝に装着されたコイルエキスパンダ200によりサイドレール部11がシリンダ内壁70に押し当てられ、シリンダ内壁70の潤滑油量が最適となるようにコントロールされる。サイドレール部11によりシリンダ内壁70から掻き落とされた余剰の潤滑油は、サイドレール部11及びウェブ部12により構成される外周溝部15に溜まり、ウェブ部12のオイル孔13を通過してオイルリング本体100の内周溝部14側に流出し、ピストン溝部63に設けられたオイルドレイン60を通じてピストン6の内部にもたらされ、最終的にオイルパンに戻る。コイルエキスパンダ200はオイル孔13の大部分を塞ぐ形で設置されている。このため潤滑油はコイルエキスパンダ200のピッチ間の狭い隙間、及びコイルエキスパンダ200の外周面とオイルリング内周溝部14との狭い隙間を流れる。
長期間のエンジンの運転に伴い、潤滑油が加熱されたり、ブローバイガスに曝されたりすると、潤滑油に炭化水素の未燃焼生成物やオイル添加剤の変性物が混在するようになる。さらに、ディーゼルエンジンではカーボンの微粒子が混在するようになる。そのためこれら未燃焼生成物、オイル添加剤変性物及びカーボン微粒子(以下特段の断りがない限り、これらを総じて「オイルスラッジ」とよぶ)が、コイルエキスパンダ200の外周面やオイルリング本体100の内周溝部14に付着/堆積し、潤滑油の通路を塞いでしまうという問題がある。オイルスラッジはオイル孔13や外周溝部15にも付着/堆積するが、特にオイル孔13に付着/堆積しやすく孔13を塞ぐことが多い。オイル孔13が塞がるとオイルコントロール機能が発揮されず、潤滑油の消費量が著しく増大する。コイルエキスパンダ200のピッチ間にオイルスラッジが付着/堆積すると、潤滑油の通路が塞がれるだけでなく、コイルエキスパンダ200の伸縮性が失われてしまう。特にコイルエキスパンダ200を低張力仕様とした場合、ピッチ間に付着/堆積したオイルスラッジにより、オイルリング本体100をシリンダ内壁面70に押圧する力が減少し、追従性が著しく低下する。
このような欠点を解消するために、例えばオイル孔13の数を増加することが提案されている。また特公平3-29979号では、横断面で見てコイルエキスパンダとオイルリング本体の内周溝部とを実質的に二点のみで接触させ、コイルエキスパンダとウェブ部との間に微小な間隙を形成させている。このオイルコントロールリングの使用により、オイルスラッジの付着/堆積による潤滑油消費量が急増するまでの時間を延長することはできるが、根本的な対策とはなっていない。
内燃機関用ピストンに装着されたリングの別の構成例を図10に示す。図10において図7と同じ部材又は部分には同じ参照番号を付してある。この例では、リング溝63内に、スチール組合せオイルコントロールリング(3ピース型オイルリング)503が装着されている。図11及び図12に示すように、3ピース型オイルリング503は、一対の円環状サイドレール400と、それらを支持するスペーサエキスパンダ500により構成されている。スペーサエキスパンダ500には、図11及び図12に示すような軸方向波形形状のものと、半径方向波形形状のものがあるが、サイドレール400を支持し、これらに張力を発生させる構造は基本的に同じである。
サイドレール400は、スペーサエキスパンダ500の耳部(押圧部)50の角度により、シリンダ壁面70に向かう半径方向及びリング溝63の上下面に向かう軸方向に分力をもって押圧される。よってサイドレール400はシリンダ壁面70及びリング溝63の上下面においてシール機能を発揮できる。このため3ピース型オイルリング503は、2ピース型オイルリング101よりオイルコントロール性能に優れている。特に薄幅化した3ピース型オイルリング503は、シリンダ壁面70に対する追従性が良く、前述のサイドシール機能もあることから、低張力にしてもオイル消費を増加させることなく摩擦損失を低減できるという利点を有している。
しかし、3ピース型オイルリング503も複雑な形状であるため、オイルスラッジが付着しやすい。特にスペーサエキスパンダ500の耳部50より外周側の平坦部と、サイドレール400との間の空間52に、オイルスラッジが付着/堆積しやすい。一旦付着/堆積したオイルスラッジはその部分のオイルの流れを阻害するため、さらにオイルスラッジが付着/堆積していくという悪循環が生じる。オイルリング付近は100℃〜150℃の温度環境であるので、スペーサエキスパンダ500にサイドレール400が固着しやすい。固着が発生すると、サイドレール400がシリンダ7を押圧する力が弱まり、またリング溝63の上下面を押圧する力も弱まるため、シール機能及びオイルコントロール機能が損なわれ、オイル消費の増大に繋がる。特に低張力化した3ピース型オイルリングでは、固着による機能低下が顕著であった。
固着対策としては、ピストンのオイルリング溝63の軸方向幅d1とオイルリング幅h1との差であるリング溝63のクリアランス(サイドクリアランス)を大きくするのが有効である。しかしサイドクリアランスを大きくすると、上下側面のシール機能が低下するだけでなく、サイドレールがピストンの上下動によって振動する幅が広がり、異音の発生やピストン溝63の摩耗を引き起こす。
3ピース型オイルリングへのオイルスラッジの付着又は固着を防止する手段として、フッ素系の樹脂皮膜又はフッ素系樹脂を含有する樹脂皮膜を塗布する方法が提案されている。例えば特開2002-310299号(特許文献1)には、サイドレールの少なくとも一側面にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の合成樹脂皮膜を形成した組合せオイルリング用サイドレールが開示されている。また特開2003-254155号(特許文献2)には、サイドレールがリング溝側面と接触する部分に、二硫化モリブデン、グラファイト及びPTFEの内の少なくとも一種を含むポリアミドイミド又はポリイミドからなる皮膜を形成した組合せオイルリングが開示されている。
特許文献1は合成樹脂皮膜の厚さに関して1〜10μmが好ましい旨を記載している。また特許文献2は実施例において10μmの厚さの樹脂皮膜を形成している。3ピース型オイルリングでは、組合せ呼び幅h1が少なくとも皮膜の厚さの2倍分増加するので、ピストン溝幅63の軸方向幅d1を広げる必要がある。しかしピストン溝幅63の軸方向幅d1を広げると、樹脂皮膜の摩耗時にサイドクリアランスが大きくなり、オイル消費が増加したり、溝摩耗が発生しやすくなる。一方2ピース型オイルリングに数μm以上の樹脂皮膜を形成すると、張力の変化が生じたり、コイルエキスパンダのピッチ間の隙間が減少したりする等の問題がある。
特開2000-27995号(特許文献3)には、フルオロアルキル基置換アルコキシドを含む溶液を塗布し、焼成してなる薄膜を形成したオイルリングが開示されている。このオイルリングは、カーボン等のデポジットの剥離性に優れている。しかし溶液を塗布する成膜法では、液溜まりにより、膜厚にバラツキが生じやすく、特にコイルエキスパンダやスペーサエキスパンダのように複雑な形状の基材表面全体に均一な薄膜を形成するのは困難である。また基材表面に凹凸がある場合、凹部に溶液が浸透せず、凸部にのみ皮膜が形成される欠点がある。さらに基材に溶液を塗布した後、水や溶媒を除去する乾燥工程が必要であるが、複雑形状の部品を大量に処理する場合、均一な乾燥を行うには温度や雰囲気の制御が難しく、皮膜にクラックが発生しやすい。一旦皮膜にクラックが発生すると使用中に皮膜の剥離等が生じやすく、長期に亘り固着防止効果を得るのは難しい。さらに廃液処理、蒸発ガスの処理等が煩雑である。乾燥後の焼成においては、非酸化性雰囲気中では200〜500℃、大気中では200〜350℃の高温が必要である。このような高い温度で焼成すると、例えば外周面にクロムメッキ層を形成したオイルリングでは、メッキ層の硬度が低下し耐摩耗性が低下してしまう。また窒化処理されたオイルリング本体を高い温度で焼成すると、窒化層の残留応力の開放等により変形が発生する。コイルエキスパンダでもクロムメッキをしたものや、窒化処理をしたものがあるが、オイルリング本体の場合と同様の問題から、高温焼成は採用できない。
さらに特許文献3の成膜法には以下の問題がある。アルコキシドに加水分解用の水、アルコール等の溶媒、酸や塩基等の触媒を添加して溶液調製を行う必要があり、工程が煩雑である。一定の重縮合状態に調整し、所望の皮膜を得るために比較的長時間を要する。重縮合反応を促進させるために超音波を印加したり、紫外線を照射したりすると、工程が一層煩雑となる。一旦調製した後の溶液中でも、反応が進行するため、塗布溶液を長時間保存するのは難しい。厚膜化するために、溶液中で重縮合反応を進行させ分子量を増加させた後、基材に塗布するので、上述の液溜まりの問題が生じやすく、凹部への浸透がより難しくなり、基材表面全体に均一な皮膜を形成することがさらに困難となる。
また特許文献3では複数種のアルコキシドを使用しているため、アルコキシド間の加水分解速度の差に起因して皮膜組成が不均質となり易い。そのためフルオロアルキル基の偏在等を生じてしまい、基材の全表面に渡ってスラッジ付着防止及び固着防止の均一な効果を発揮することができない。さらにフルオロアルキル基を含有するアルコキシドが、重縮合反応し、分子量が増大した場合には、フルオロアルキル基の存在により、基材表面の水酸基とアルコキシ基の加水分解により形成された水酸基との脱水縮合によるシロキサン結合の形成が阻害されやすく、強固な密着性が得られにくい。
特開2002-310299号 特開2003-254155号 特開2000-27995号
従って、本発明の目的は、均一で密着性に優れ、優れたスラッジ付着/堆積防止機能を有する薄膜が形成された組合せオイルコントロールリングを提供することである。
本発明者らは、気相法によりフッ素系有機薄膜を形成した組合せオイルコントロールリングは、優れたスラッジ付着/堆積防止機能を有することを発見し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の第一の組合せオイルコントロールリングは、軸方向上下に形成された一対のレール部及び前記レール部を連結するウェブ部から構成されるオイルリング本体と、前記オイルリング本体の内周溝部に装着されて前記オイルリング本体を半径方向外方に押圧するコイルエキスパンダとからなり、少なくとも前記コイルエキスパンダ又は前記オイルリング本体の前記コイルエキスパンダと対向する部分の最表面に、気相法によりフッ素系有機薄膜が形成されたことを特徴とする。
本発明の第二の組合せオイルコントロールリングは、一対のサイドレールと、前記サイドレールを支持するスペーサエキスパンダとからなり、少なくとも前記スペーサエキスパンダ又は前記サイドレールの前記スペーサエキスパンダと対向する側面の最表面に、気相法によりフッ素系有機薄膜が形成されたことを特徴とする。
前記フッ素系有機薄膜はCF3基及び/又はCF2基を含むのが好ましい。フッ素系有機化合物は撥油性に優れているので、これからなる皮膜を組合せオイルコントロールリングに形成すると、オイルスラッジ付着防止効果が得られる。特に気相法により形成されるフッ素系有機薄膜は基材との密着性が高い。そのため複雑な形状の基材でも均一な薄膜が形成され、かつ相手部材との接触により付着物が除去されにくい凹部でもフルオロアルキル基が緻密に配列した薄膜が形成されるので、長期間に亘り、優れたスラッジ付着防止効果が得られる。前記フッ素系有機薄膜は、実質的に前記薄膜を形成するフッ素系有機化合物の単分子層からなるのが好ましい。特に、後述するフッ化有機金属化合物等の単分子層では薄膜の最表面にフルオロアルキル基のみが非常に緻密に配列するため極めて優れたスラッジ付着防止効果を発揮する。
第一の組合せオイルコントロールリングでは、前記フッ素系有機薄膜を少なくともスラッジが付着し易い箇所に形成すれば優れた付着防止効果が得られるが、コイルエキスパンダ及び/又はオイルリング本体の全表面に形成するのが好ましい。コイルエキスパンダ及びオイルリング本体の両方に薄膜を設けることにより、一層優れた付着防止効果が得られる。
第二の組合せオイルコントロールリングでは、前記フッ素系有機薄膜を少なくともスラッジの付着により固着し易い箇所に形成すれば、優れた固着防止効果が得られるが、スペーサエキスパンダ及び/又はサイドレールの全表面に被覆するのが好ましい。スペーサエキスパンダ及びサイドレールの両方に前記フッ素系有機薄膜を設けることにより、一層優れた固着防止効果が得られる。
本発明の組合せオイルコントロールリングは、気相法によりフッ素系有機薄膜が形成されているので、オイルスラッジの付着/堆積、あるいはそれに起因する部品間の固着の防止性に極めて優れており、長期間に渡ってオイルコントロール機能を維持する。これは組合せオイルコントロールリングの表面にC-F結合を有する薄膜が存在することにより、オイルスラッジの付着/堆積を著しく減少させることができるためである。本発明の組合せオイルコントロールリングに形成されるフッ素系皮膜は極めて薄く、厚さが均一であるので、オイルリングの寸法や張力に影響を与えない。しかも基材との密着性に優れている。
気相法を採用することにより、複雑な形状の基材にもフッ素系有機薄膜を均一に形成でき、得られた薄膜は膜厚ムラや剥離等を起こすことがない。また気相法では、簡単な装置と工程で薄膜を形成できるため、大量生産に適している。
添付図面を参照して本発明の組合せオイルコントロールリングの構造を説明するが、特に断りがない限り図7〜12に示す部位と同じ部位には同じ参照番号を付与する。
[1] 組合せオイルコントロールリング
(1) 2ピース型オイルリング
図1は本発明の2ピース型オイルリングの一例を示す。このオイルリングは、(a) シリンダ内壁70と摺動するランド部当たり面(摺動面)10を有する軸方向上下一対のレール部11がウェブ部12により連結され、合口を有する円環状のオイルリング本体1と、(b) オイルリング本体1の内周溝部14に装着されてオイルリング本体1を半径方向外方に押圧するコイルエキスパンダ2とからなる。この例では、コイルエキスパンダ2にのみフッ素系有機薄膜3が形成されている。コイルエキスパンダ2の少なくともオイルリング本体1の内周溝部14に対向する部分に薄膜3が形成されていれば、一定のオイルスラッジ付着堆積防止効果が得られるが、図1ではコイルエキスパンダ2の全表面に薄膜3が形成されている。この構成により、コイルエキスパンダ2のピッチ間、及びオイルリング本体1の内周溝部14とコイルエキスパンダ2の間においてもオイルスラッジの付着堆積防止効果が得られ、長期間に亘り、優れたオイルコントロール機能を発揮できる。
図2は本発明の2ピース型オイルリングの別の例を示す。この例では、オイルリング本体1の内周面にのみフッ素系有機薄膜3が形成されている。オイルスラッジは、コイルエキスパンダ2の他、オイルリング本体1の内周溝部14に付着/堆積し易いので、オイルリング本体1の内周面にフッ素系有機薄膜3を形成すれば、優れたオイルスラッジの付着防止効果が得られる。フッ素系有機薄膜3は、コイルエキスパンダ2及びオイルリング本体1の内周面の両方に設けるのが好ましい。
図3は本発明の2ピース型オイルリングのさらに別の例を示す。この例では、オイルリング本体1のランド部当たり面10以外の表面、及びオイル孔13の壁面にフッ素系有機薄膜3が形成されている。オイルスラッジはオイル孔13の壁面にも付着し易いので、オイル孔13の壁面を含め、ランド部当たり面10以外のオイルリング本体1表面にフッ素系有機薄膜3を形成すると、オイルスラッジの付着堆積防止効果が一層向上する。この例では、コイルエキスパンダにもフッ素系有機薄膜が形成されているため、さらに優れた効果が得られる。
(2) 3ピース型オイルリング
図4は本発明の3ピース型オイルリングの一例を示す。このオイルリングは、一対のサイドレール4と、サイドレール4を支持するスペーサエキスパンダ5とからなる。スペーサエキスパンダ5には、サイドレール4をシリンダ内壁70に圧接させる耳部50が内周側の端部に突設されているとともに、サイドレール4を支持する突起部51が外周側の端部に設けられている。この例では、サイドレール4のスペーサエキスパンダ5に対向する面にのみフッ素系有機薄膜3が形成されている。図5は本発明の3ピース型オイルリングの別の例を示す。この例では、スペーサエキスパンダ5のサイドレール4と対向する側面にフッ素系有機薄膜3が形成されている。
オイルスラッジは、特にスペーサエキスパンダ5の耳部50と突起部51間の平坦な凹部と、サイドレール4との間の空間52に付着/堆積し易い。そのため図4に示すように、サイドレール4のスペーサエキスパンダ5に対向する面、又は図5に示すようにスペーサエキスパンダ5の上下面にフッ素系有機薄膜3をすれば、オイルスラッジの付着防止効果が得られる。フッ素系有機薄膜3は、サイドレール4のスペーサエキスパンダ5に対向する面、及びスペーサエキスパンダ5の上下面の両方に設けるのが好ましい。
図6は本発明の3ピース型オイルリングのさらに別の例を示す。フッ素系有機薄膜3はサイドレール4の上下面に設けてもよく、スペーサエキスパンダ5全体に設けてもよい。図6に示すように、3ピース型オイルリングのほぼ全体にフッ素系有機薄膜3を形成すると、オイルリングへのオイルスラッジの付着防止効果が一層向上する。
[2] 組合せオイルコントロールリングの材質及び表面処理
(1)2ピース型オイルリング
オイルリング本体1及びコイルエキスパンダ2の材質やこれらに施す表面処理は公知のものでよく、特に制限されない。例えばオイルリング本体1として、窒化処理した高クロム鋼、ランド部当たり面に硬質クロムメッキ皮膜又はイオンプレーティング法によるCrN皮膜を形成した材料を用いると長期間に亘って優れた耐焼付性を維持でき好ましい。
(2) 3ピース型オイルリング
スペーサエキスパンダ5及びサイドレール4の材質やこれらに施す表面処理も公知のものでよく、特に制限されない。スペーサエキスパンダ5として、SUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼を窒化処理した材料を用いると、耳部50の耐摩耗性に優れ好ましい。サイドレール4としては、一般的に使用されるバネ鋼からなる母材の外周面に硬質クロムメッキ皮膜やイオンプレーティング法によるCrN被膜を設けたもの、マルテンサイト系ステンレス鋼からなる母材を窒化処理したもの等が適している。
(3) フッ素系有機薄膜の形成
(a) 前処理
フッ素系有機薄膜3の密着性を向上させるために、予め組合せオイルコントロールリングの各部品を充分洗浄して表面の汚れを除去する。フッ素系有機化合物としてフルオロアルキル基置換金属アルコキシド又はフルオロアルキル基含有金属ハロゲン化物を用いる場合、基材と皮膜を化学結合させるため、基材表面に水酸基が存在するのが望ましい。基材表面の水酸基を増加させるために、予め基材表面に化学エッチング、電解エッチング、塩基性溶液処理等の処理を施してもよい。
また基材とフッ素系有機薄膜との間に密着層を設けてもよい。密着層としてはSiOx(X=1,2)層、又はその他の金属酸化物層が挙げられるが、基材との密着性に優れた材料が好ましい。これらの酸化物層には表面に水酸基が存在するため、後述するフッ素系有機薄膜を被覆する工程でフッ化アルキルシランやその他のフッ素系有機金属化合物等を用いる場合、フッ素系有機薄膜がシロキサン結合又はその他の金属−酸素結合を介して強固に結合する。このため、長期間の使用においてもフッ素系有機薄膜が剥離することなく、優れた付着或いは固着防止効果を発揮する。
密着層の形成方法としては、金属アルコキシドを用いた溶液法や気相法、或いは金属や金属酸化物を用いたスパッタリング、蒸着法、CVD法等が挙げられる。金属アルコキシドを用いた溶液法や気相法により形成された密着層では、表面に多くの水酸基が存在するため、特に優れた密着性が得られる。金属アルコキシドとしては、Si、Al、Ga、V、W及びTaからなる群から選ばれた金属のアルコキシドを用いるのが好ましい。具体的には、Si(OC2H5)4、Al(OC2H5)3、Al(OC3H7)3、Al(OC4H9)3、Ga(OC2H5)3、VO(OC2H5)3、W(OC2H5)6、Ta(OC3H7)5等が挙げられる。
また金属アルコキシドのアルコキシ基の一部をアルキル基に置換したアルコキシドでは密着層中にアルキル基が残存し、靱性が付与されるため、応力の影響が緩和され、クラック発生や皮膜剥離の防止に有効である。この場合、後のフッ素系有機薄膜3と密着層との結合反応を阻害しないようにアルキル基は短鎖のものとするのが好ましく、ジメチルジエトキシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が好ましい。特にジメチルジエトキシランは、連鎖反応により皮膜を形成し、皮膜厚さを制御でき、皮膜全体の強度を上げることができるので有効である。またシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、有機クロム系カップリング剤等を用いてもよい。
(b) フッ素系有機薄膜形成
薄膜3を形成させるフッ素系有機化合物としては、少なくとも一部がフッ素置換された炭化水素基を有する化合物で一定の蒸気圧を有するものであれば特に限定されない。フッ素系有機化合物がCF3基及び/又はCF2基を含有すると、高いオイルスラッジの付着/堆積防止機能或いは固着防止機能が得られ好ましい。また鋳鉄や鋼材等の基材との密着性を考慮するとフッ化有機金属化合物等金属を含有した化合物が好ましい。これらの化合物は基材又は基材上に形成された密着層の表面に存在する水酸基と脱水反応又は脱塩酸反応し、シロキサン結合又は金属−酸素結合を形成するため強固な密着が実現できる。
フッ素系有機金属化合物としては、例えばアルコキシ基の一部がフルオロアルキル基に置換されたフルオロアルキル基置換金属アルコキシド、フルオロアルキル基を有する金属ハロゲン化物等が挙げられる。コスト面や取り扱いの容易さからフッ素系有機金属化合物としてはSi系化合物(フッ化アルキルシラン)が好ましい。フッ化アルキルシランとしては、例えばCF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3、CF3(CF2)7C2H4Si(OC2H5)3、CF3(CF2)5C2H4SiCl3、CF3(CF2)7C2H4SiCl3、CF3CH2O(CH2)15SiCl3等が挙げられる。特に、CF3(CF2)7C2H4Si(OCH3)3及びCF3(CF2)7C2H4Si(OC2H5)3は、基材上の水酸基と反応してもHClを発生しないため、より好ましい。
フッ素系有機薄膜3の形成には気相法を用い、原料のフッ素系有機化合物を気化して基材に付着させる。気相法は、簡便で大量生産性に優れ、複雑な形状の基材でも密着性の高い緻密な皮膜を均一に形成することができる。
なおフッ素系有機薄膜3は、最終仕上げ加工後に形成するのが好ましい。薄膜3の形成後に仕上げ加工を行わない場合でも、本件のフッ素系有機薄膜3は極めて薄いので、運転の初期段階に外周摺動面の薄膜は除去されるが、その他の部分では残存している。
フッ素系有機薄膜3は、0.1μm以下の厚さとするのが好ましい。気相法により形成されたフッ素系有機化合物層からなる薄膜3は、表面にフルオロアルキル基が規則的に配列した緻密な構造を有し、オイルスラッジの付着防止機能又は固着防止機能が高く、長期間に亘り優れたオイルコントロール機能を維持できる。特に、フッ素系有機化合物薄膜3が実質的にフッ素系有機化合物の単分子層からなる場合には、フルオロアルキル基が最表層に非常に緻密に存在するため、より優れた効果が得られる。
気相反応は、通常、皮膜を被覆する部材及び原料となるフッ素系有機化合物を密閉可能な反応容器中に入れ、加熱してフッ素系有機化合物を気化させ、部材に付着させることにより進行させる。大気圧下で皮膜を形成することもできるが、必要に応じて容器内を減圧してもよい。加熱方法としては、限定する趣旨ではないが、例えば反応容器を電気炉中に入れる方法等が挙げられる。フッ素系有機薄膜3の厚さは、処理時間、容器内温度、容器内圧力、容器内に入れるフッ素系有機化合物量等を適宜設定することにより、所望の値に調整することができる。皮膜を部材の特定の面(例えばオイルリング本体1の内周面)のみに形成する場合、皮膜形成時に他の面を公知の方法でマスキングすればよい。
密着層及びフッ素系有機薄膜3の合計厚さは、1μm未満とするのが好ましく、0.5μm以下とするのがより好ましく、0.3μm以下とするのが特に好ましい。この厚さを1μm以上とすると、組合せ張力が増加する他、膜形成時間や材料コスト面からも好ましくない。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
(1) 2ピース型オイルリングの実施例
実施例1
オイルリング本体
材質:SUS440B
ランド部当たり面の表面処理:窒化処理
呼び径:95 mm
リング幅:3mm
リング厚さ:2mm
窓幅:0.6 mm
窓長さ:3mm
柱長さ:5mm
コイルエキスパンダ
材質:SUS304
線材径:0.6 mm×1.2 mm
外径:92.3 mm
ピッチ:2.0 mm
上記のコイルエキスパンダをアセトン中で洗浄した後密閉容器に入れ、heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-triethoxysilaneの共存下、容器内温度を190℃に制御しながら、60分間加温して薄膜を形成した。なお密閉容器内はガス置換することなく、空気雰囲気とし、減圧操作は行わなかった。得られたコイルエキスパンダと、上記材質及びサイズのオイルリング本体(未処理)とを組み合わせて2ピース型オイルリング(組合せ張力:46 N)を作製した。
実施例2
実施例1と同様のコイルエキスパンダをアセトン中で洗浄した後密閉容器に入れ、テトラエトキシシランの共存下、容器内温度を90℃に制御しながら、60分間加温して密着層を形成した。次いでheptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-triethoxysilaneの共存下、実施例1と同様に薄膜を形成した。得られたコイルエキスパンダと、実施例1と同じオイルリング本体(未処理)とを組み合わせて2ピース型オイルリング(組合せ張力:46 N)を作製した。
実施例3
実施例2と同様にしてコイルエキスパンダを作製した。実施例1と同様のオイルリング本体に、コイルエキスパンダと同様にして、密着層及びフッ素系有機薄膜を形成した。得られたコイルエキスパンダとオイルリング本体とを組み合わせて2ピース型オイルリングを作製した。
比較例1
密着層及びフッ素系有機薄膜とも形成していないオイルリング本体及びコイルエキスパンダを用いた以外実施例1と同様にして、2ピース型オイルリングを作製した。
比較例2
300 gのテトラエトキシシラン、9.06 gのheptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-triethoxysilane及び647.9 gのエタノールをビーカーに入れ、20分間攪拌した後、123 gの水及び158 gの0.1 N塩酸を加え、さらに2時間攪拌した。この溶液を密封し、25℃で24時間放置した。得られた溶液中に、各々実施例1と同じコイルエキスパンダ及びオイルリング本体(ともに未処理)を浸漬し、室温で乾燥させた後、250℃の電気炉中で1時間熱処理した。得られたコイルエキスパンダとオイルリング本体とを組み合わせて、2ピース型オイルリングを作製した。
実施例1及び2のコイルエキスパンダ、並びに実施例3のオイルリング本体及びコイルエキスパンダをそれぞれ切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。また各部品の表面をXPS分析した。実施例1のコイルエキスパンダは、電子顕微鏡では皮膜の形成を確認することができなかったが、XPS分析によりCF3基及びCF2基に起因するピークが確認できた。このことから、実施例1の皮膜付きコイルエキスパンダ表面にはフルオロアルキル基を含有する非常に薄い膜が形成されたと考えられる。実施例2及び3では、電子顕微鏡観察により0.07μmの厚さの皮膜が確認され、XPS分析によりCF3基及びCF2基に起因するピークが確認された。このことから実施例2及び3ではテトラエトキシシランの気相反応により形成されたSiOxからなる密着層上に、フルオロアルキル基を含有するフッ素系有機薄膜が形成されたと考えられる。
また成膜前後でオイルリング本体の硬度にほとんど変化は認められなかった。さらに組合せ張力は、実施例1〜3及び比較例1、2とも差がなく、実施例1〜3での皮膜形成がオイルリングの張力に殆ど影響を及ぼさないことが確認された。
(スラッジ堆積試験)
実施例1〜3及び比較例1、2の各2ピース型オイルリングをテスト用ピストンに組み込み、4気筒のディーゼルエンジン(排気量:2.8リットル)を用いてスラッジの堆積試験を行った。各気筒に共通の、外周にバレルフェースを有するトップリング、及び外周にテーパフェースを有するセカンドリングを装着した。各気筒に実施例1〜3及び比較例1及び2の2ピース型オイルリングを装着した。エンジンオイルには市場で問題となった劣化油を使用し、停止状態から最高出力回転数までの運転条件と、低温から高温までの油水温条件とを連続的に繰り返すサイクリック評価を行った。所定時間の評価終了後、エンジンを解体し、オイルリングが装着された状態でオイル孔を観察した。オイルリングはピストンから取り外し、コイルエキスパンダを外した後、オイルリング本体の内周溝部を観察した。コイルエキスパンダは、オイル孔に面する部分が最もオイルスラッジが付着/堆積しやすいので、その部分のオイルスラッジの付着とコイルピッチ隙間の閉塞状況を観察した。次いでコイルエキスパンダ及びオイルリング本体をアセトンで洗い流した後、充分に乾燥させた。乾燥後のコイルエキスパンダ及びオイルリング本体を振動させて弱く付着している付着/堆積物を落下させた後、振動で落下しなかった、強固に付着した付着/堆積物をほぼ全てかき落とし、集まった付着/堆積物を120℃で60分間乾燥させた後、デシケーター中で放冷し、秤量した。表1に結果を示す。なお堆積物量は比較例1の値を100として相対値で表した。
表1に示すように、実施例1〜3では、コイルエキスパンダのオイル孔に面するピッチ隙間に微量の付着は認められるが閉塞はなかった。また、オイルリング内周溝部では微量の付着物が観察された。比較例1では、コイルエキスパンダのオイル孔部では、スラッジが付着/堆積しピッチ間隙間が閉塞されていた。またオイルリングの内周溝部にも黒色の付着/堆積物が観察された。比較例2のオイルリングでは、実施例1〜3と同様コイルエキスパンダのオイル孔に面するピッチ隙間には微量の付着は認められたが、閉塞はなく、オイルリング本体の内周溝部には微小の付着物が認められた。但し、比較例2の堆積物量は実施例1〜3に比べ、5〜10倍程度多かった。これは、比較例2の成膜法ではコイルエキスパンダ及びオイルリング本体の最表面に存在するフルオロアルキル基の量が少なく、偏在しているためと考えられる。
(2) 3ピース型オイルリングの実施例
実施例4
SUS440製のサイドレール及びSUS304製のスペーサエキスパンダを成形した(組合せリング呼び径:75 mm、組合せ呼び幅:2.0 mm、組合せ厚さ:2.5 mm、サイドレール幅:0.4 mm)。得られたスペーサエキスパンダに塩浴窒化を施し、サイドレールにラジカル窒化処理を施した。さらに、スペーサエキスパンダ及びサイドレールをアセトン中で洗浄した後密閉容器に入れ、heptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-triethoxysilaneの共存下、容器内温度を190℃に制御しながら、60分間加温して薄膜を形成した。なお密閉容器内はガス置換することなく、空気雰囲気とし、減圧操作は行わなかった。得られたサイドレールとスペーサエキスパンダを組み合わせて3ピース型オイルリングを作製した。
実施例5
実施例4と同様にして成形したスペーサエキスパンダ及びサイドレールをアセトン中で洗浄した後密閉容器に入れ、テトラエトキシシランの共存下、容器内温度を90℃に制御しながら、60分間加温して密着層を形成した。次いでheptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-triethoxysilaneの共存下、実施例1と同様に薄膜を形成した。得られたサイドレールとスペーサエキスパンダを組み合わせて3ピース型オイルリングを作製した。
実施例4及び5のスペーサエキスパンダ及びサイドレールをそれぞれ切断し、切断面を電子顕微鏡で観察した。また各部品の表面をXPS分析した。実施例4の部品は、電子顕微鏡では皮膜の形成を確認することができなかったが、XPS分析によりCF3基及びCF2基に起因するピークが確認できた。このことから、実施例4の部品にはフルオロアルキル基を含有する非常に薄い膜が形成されたと考えられる。実施例5では、電子顕微鏡により0.07μmの厚さの皮膜が確認され、XPS分析によりCF3基及びCF2基に起因するピークが確認された。このことから、実施例5ではテトラエトキシシランの気相反応により形成されたSiOxからなる密着層上に、フルオロアルキル基を含有するフッ素系有機薄膜が形成されたと考えられる。
比較例3
N-メチル-2-ピロリジノンを主成分とする有機溶剤にポリアミドイミドを溶解させたワニスに、3μmの平均粒径の二硫化モリブデン及び4μmの平均粒径のポリ四フッ化エチレンを、乾燥後における含有率が各々20質量%となるように分散させた。次いでN-メチル-2-ピロリジノンを主成分とする有機溶剤で希釈し、固形分濃度が23質量%の固体潤滑材分散液を調製し、充分に攪拌した。
実施例4と同様にして成形したスペーサエキスパンダ及びサイドレールをアセトン中で超音波洗浄した後、充分に乾燥させ、スペーサエキスパンダおよびサイドレールの両側面に、上記固体潤滑材分散液をスプレー塗布し、220℃で熱処理した。一本のサイドレールを切断し、切断面を顕微鏡で観察したところ、固体潤滑皮膜の厚さは両側面とも9μmであった。
比較例4
各々皮膜を形成していないスペーサエキスパンダ及びサイドレールを用いた以外実施例4と同様にして、3ピース型オイルリングを作製した。
比較例5
300 gのテトラエトキシシラン、9.06 gのheptadecafluoro-1,1,2,2- tetrahydro-decyl-triethoxysilane及び647.9 gのエタノールをビーカーに入れ、20分間攪拌した後、123 gの水及び158 gの0.1 N塩酸を加え、さらに2時間攪拌した。この溶液を密封し、25℃で24時間放置した。得られた溶液中に各々実施例4と同様にして成形したスペーサエキスパンダ及びサイドレールを浸漬し、室温で乾燥させた後、250℃の電気炉中で1時間熱処理した。得られた皮膜付きスペーサエキスパンダと皮膜付きサイドレールとを組み合わせて、3ピース型オイルリングを作製した。
(スラッジ固着試験)
排気量が1,500 cm3の4気筒ガソリンエンジンを用いた以外上記と同様にして、スラッジ固着試験を行った。実機テスト終了後、エンジンを解体し、オイルリングが装着された状態でリングの外観観察を行った。次いでオイルリングを取り外し、スペーサエキスパンダとサイドレールとの間の固着発生の有無を調査した。次いでスペーサエキスパンダとサイドレールをアセトンで洗い流した後、充分に乾燥させた。乾燥後のスペーサエキスパンダとサイドレールを振動させて弱く付着している付着/堆積物を落下させた後、振動で落下しなかった、強固に付着した付着/堆積物をほぼ全てかき落とし、集まった付着/堆積物を120℃で60分間乾燥させたあと、デシケーター中で放冷した後に秤量した。結果を表2に示す。なお堆積物量は比較例4の値を100として相対値で表した。
表2に示すように、実施例4及び5のオイルリングでは、比較例3〜5のオイルリングと比べて明らかに付着/堆積物が少なく、固着も認められなかった。実施例4及び5のスペーサエキスパンダでは、部分的な付着物の偏在も認められなかった。これは、フッ素系有機薄膜が均一に被覆され、皮膜の剥離等も生じていないためと考えられる。比較例3のオイルリングは、固着は認められなかったものの、黒色の付着/堆積物が付着していた。比較例4のオイルリングは、多量の黒色付着/堆積物が付着しており、サイドレールがスペーサエキスパンダに固着した状態となっていた。比較例5のオイルリングは、実施例4及び5に比べて堆積物量が数10倍程度多かった。これは、比較例5の成膜法ではサイドレール及びスペーサエキスパンダの最表面に存在するフルオロアルキル基の量が少なく、偏在しているためと考えられる。
本発明のコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングの一例を示す断面図である。 本発明のコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングの別の例を示す断面図である。 本発明のコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングのさらに別の例を示す断面図である。 本発明のスチール組合せオイルコントロールリングの一例を示す断面図である。 本発明のスチール組合せオイルコントロールリングの別の例を示す断面図である。 本発明のスチール組合せオイルコントロールリングのさらに別の例を示す断面図である。 従来のコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングを具備したピストンを示す拡大断面図である。 図7のコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングを示す拡大断面図である。 図7のコイルエキスパンダ付きオイルコントロールリングの本体の斜視図である。 従来のスチール組合せオイルコントロールリングを具備したピストンを示す拡大断面図である。 図10のスチール組合せオイルコントロールリングを示す拡大断面図である。 図10のスチール組合せオイルコントロールリングの斜視図である。
符号の説明
1、100・・・オイルリング本体
10・・・ランド部当たり面
11・・・レール部
12・・・ウェブ部
13・・・オイル孔
14・・・内周溝部
15・・・外周溝部
2、200・・・コイルエキスパンダ
3・・・フッ素系有機薄膜
4、400・・・サイドレール
5、500・・・スペーサエキスパンダ
50・・・耳部(押圧部)
51・・・突起部
52・・・空間
6・・・ピストン
60・・・オイルドレイン
61、62、63・・・リング溝
7・・・シリンダ
70・・・シリンダ内壁面
103・・・コイルエキスパンダ付きオイルコントロールリング
503・・・スチール組合せオイルコントロールリング

Claims (3)

  1. 軸方向上下に形成された一対のレール部及び前記レール部を連結するウェブ部から構成されるオイルリング本体と、前記オイルリング本体の内周溝部に装着されて前記オイルリング本体を半径方向外方に押圧するコイルエキスパンダとからなる組合せオイルコントロールリングにおいて、少なくとも前記コイルエキスパンダ又は前記オイルリング本体の前記コイルエキスパンダと対向する部分の最表面に、気相法によりフッ素系有機薄膜が形成されたことを特徴とする組合せオイルコントロールリング。
  2. 一対のサイドレールと、前記サイドレールを支持するスペーサエキスパンダとからなる組合せオイルコントロールリングにおいて、少なくとも前記スペーサエキスパンダ又は前記サイドレールの前記スペーサエキスパンダと対向する側面の最表面に、気相法によりフッ素系有機薄膜が形成されたことを特徴とする組合せオイルコントロールリング。
  3. 請求項1又は2に記載の組合せオイルコントロールリングにおいて、前記フッ素系有機薄膜はCF3基及び/又はCF2基を含むことを特徴とする組合せオイルコントロールリング。
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