JP2006275069A - 複筒型油圧緩衝器 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ベースバルブをロアキャップに取付ける際、板厚を上げたり、慎重な作業工程を採用したりしなくてもベースバルブの変形が防止できる構造を備えた複筒型油圧緩衝器を提供する。
【解決手段】 アウターチューブ2の基端側開口部に取付けたロアキャップ4に対してインナーチューブ3の基端側開口部に取付けられた状態のベースバルブ5をその脚部21を介して配置し、上記インナーチューブ3にロアキャップ4方向へ向かう軸力Xを作用させた状態で、ピストンロッド7を支持するベアリング部材8を上記アウターチューブ3及びインナーチューブ2の先端側開口部に取付けた複筒型油圧緩衝器において、上記軸力Xの作用線上でのみこの脚部21とロアキャップ4とが当接する当接部21aを当該脚部21に設けた。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車や産業車両等のサスペンション装置に使用される複筒型油圧緩衝器に関し、特にロアキャップに対してインナーチューブの基端に取付けられた状態で位置決め固定されるベースバルブの取付構造に関する。
この種の複筒型油圧緩衝器のうち、ロアキャップに位置決め固定されるベースバルブの取付構造としては、特許文献1に示すものを例示することができる。
即ち、図3に示すように、アウターチューブ32の基端側開口部にロアキャップ34を嵌合して外周を溶接することでアウターチューブ32の基端が油密に塞がれると共に、このロアキャップ34の上面に対してインナーチューブ33の基端に嵌合固定された状態のベースバルブ35が位置決め固定されている。
このベースバルブ35は、圧側ポート36a及び伸側ポート36bを備えたバルブケース36と、このバルブケース36の上面に配置されて伸側ポート36bを開閉可能に閉塞するノンリターンバルブ37と、バルブケース36の下面に配置されて圧側ポート36aを開閉可能に閉塞する圧側減衰力発生バルブ38と、これらノンリターンバルブ37及び圧側減衰力発生バルブ38をバルブケース36に対して内周端支持状態に固定する固定ピン39とを備えており、上記バルブケース36の下面外周部には上記ロアキャップ34の上面に当接する複数の脚部40が円周上に所定間隔をおいて突出形成されている。
この脚部40は、隣り合った脚部40との間に上記インナーチューブ33とアウターチューブ32との間に形成されたリザーバ室Rへ連通する油路Tが設けられている。
従って、この複筒型油圧緩衝器の圧縮動作時には、インナーチューブ33内へピストンロッド41が侵入することによって生じるロッド侵入体積分の余剰の作動油が、上記圧側ポート36a,圧側減衰力発生バルブ38及び上記油路Tを介してリザーバ室Rへ送られると共に、上記圧側減衰力発生バルブ38によって所定の圧側減衰力を発生するようになっている。
特開平11−201211号公報(図1,図3)
上記のように構成された複筒型油圧緩衝器は、アウターチューブ32及びインナーチューブ33の先端側開口部にピストンロッド支持用のベアリング部材(図示なし)を設けており、このベアリング部材は、上記先端側開口部に対して、一般的には、溶接手段や加締手段によって取付けられている。
上記した各取付手段を採用する場合、その工法上、インナーチューブ33にはロアキャップ34側へ向かう所定の軸力が作用した状態で位置決め固定されることになる。
ところが、上記インナーチューブ33の基端側開口部に嵌合されたベースバルブ35は、バルブケース36の下面外周部に設けた脚部40がインナーチューブ33の開口端の延長線が描く円周よりも内側に設けられているので、想定されていない過大な軸力が作用すると、この軸力でバルブケース36が上側に凸となるように湾曲状に変形することが考えられる。
これは、上記脚部40とロアキャップ34との当接部位が、上記軸力の作用する部位、即ち、インナーチューブ33の開口端が当接するバルブケース36の上面外周端に設けた段差部37cの底部37dよりも内側となっているので、この力の作用点の相違によって上記したバルブケース36を湾曲状に変形させる曲げモーメントが発生するためである。
又、近年、上記複筒型油圧緩衝器は、それ自体の軽量化を目的としてインナーチューブ33やバルブケース36等の肉厚を最低限の薄さに設定しているので、上記したバルブケース36の変形が発生し易く、この場合には、バルブケース36に配置されたノンリターンバルブ37や、圧側減衰力発生バルブ38が予め定められた位置からずれて狙った圧側減衰力が発生しない場合がある。
従って、このベアリング部材の取付工程には過大な軸力が作用しないように慎重な作業が要求されるので、その分、作業時間がかかって製造コストが嵩む。
又、上記したベアリング部材の変形を防止するためにベースバルブ自体の板厚を上げることも考えられるが、この場合にも軽量化が困難になると共に、材料コストも上がるので、やはり複筒型油圧緩衝器自体のコストアップにつながる。
そこで、本発明は、上記の問題点を解決するために創案されたものであって、その目的は、ベースバルブをロアキャップに取付ける際、板厚を上げたり、慎重な作業工程を採用したりしなくてもベースバルブの変形が防止できる構造を備えた複筒型油圧緩衝器を提供することである。
上記の目的を達成するため、本発明は、アウターチューブの基端側開口部に取付けたロアキャップに対してインナーチューブの基端側開口部に取付けられた状態のベースバルブをその脚部を介して配置し、上記インナーチューブにロアキャップ方向へ向かう軸力を作用させた状態で、ピストンロッドを支持するベアリング部材を上記アウターチューブ及びインナーチューブの先端側開口部に取付けた複筒型油圧緩衝器において、上記軸力の作用線上でのみこの脚部とロアキャップとが当接する当接部を当該脚部に設けたことを特徴とするものである。
本発明によれば、ベアリング部材の取付時にインナーチューブを介してベースバルブに加わる軸力の作用線上となる脚部にロアキャップとの当接部を設けたので、従来例で示したような脚部とロアキャップとの当接部位が上記軸力の作用線上から外れることでベースバルブを湾曲状に変形させる曲げモーメントが発生するのを確実に防止することができる。
従って、ベースバルブの変形によってこのベースバルブに設けられたバルブ等が予め定められた位置からずれるのを防止できるので、例えば、狙った圧側減衰力等を確実に発生させることができる。
以下に、本発明を自動車のサスペンション装置に使用する複筒型油圧緩衝器に具体化した実施の形態を図に基づいて説明する。
この複筒型油圧緩衝器1は、図1に示すように、同芯に配置されたアウターチューブ2及びインナーチューブ3と、アウターチューブ2の基端側開口部に取付けられたロアキャップ4と、このロアキャップ4の上面に対して上記インナーチューブ3の基端側開口部に嵌合固定された状態で位置決め固定されたベースバルブ5と、インナーチューブ3内に図示しないピストンを介して出没自在に挿入されたピストンロッド7と、インナーチューブ3及びアウターチューブ2の先端側開口部を封止してピストンロッド7を軸支するロッドガイド8とを備えている。
以下、詳細に説明すると、上記アウターチューブ2の先端側端部内周とインナーチューブ3の先端側端部とに亘って上記ロッドガイド8が嵌合されている。
このロッドガイド8は、その中央にピストンロッド7を案内する案内孔11が設けられ、案内孔11内に嵌合された環状の軸受部材12を介しピストンロッド7が摺動自在に軸支されている。
又、ロッドガイド8の上面にはピストンロッド7との隙間をシールするシール部材13が配置され、アウターチューブ2の端部を内側に折り曲げて加締める加締手段を用いることでロッドガイド8及びシール部材13をアウターチューブ2とインナーチューブ3に対して固定するようになっている。
尚、この加締手段では、その工法上、ロッドガイド8及びインナーチューブ3を介してロアキャップ4方向へ向かう軸力(図2に矢印Xで示す)が上記ベースバルブ5に作用するようになっている。
ピストンは、ピストンロッド5の基端部に挿入されて図示しないナットにより固定されると共に、このピストンによりインナーチューブ3内がロッド室Qとピストン室Pに区画されている。
ロアキャップ4は、アウターチューブ2の基端側開口部に設けたチューブ側段差部2aに嵌合されると共に、それらの境界部外周を溶接することでアウターチューブ2の基端が油密に塞がれるようになっている。
上記ベースバルブ5は、圧側ポート16a及び伸側ポート16bを備えたバルブケース16と、このバルブケース16の上面に配置されて伸側ポート16bを開閉可能に閉塞するノンリターンバルブ17と、バルブケース5の下面に配置されて圧側ポート16aを開閉可能に閉塞する圧側減衰力発生バルブ18と、これらノンリターンバルブ17及び圧側減衰力発生バルブ18をバルブケース16に対して内周端支持状態に固定する固定ボルト19及びナット20とを備えている。
上記ノンリターンバルブ17より外側となるバルブケース5の上面外周端には、インナーチューブ3の基端側開口部が嵌合する段差部16cが設けられており、圧側減衰力発生バルブ18より外側となるバルブケース5の下面外周端には上記ロアキャップ4の上面と当接する複数個の脚部21が円周上に所定間隔をおいて突出形成されている。
この脚部21は、その下面に上記ロアキャップ4の上面のロアキャップ側傾斜部4aに沿う脚部側傾斜面21aが形成されており、この脚部側傾斜面21aのうち、図2に示すように、インナーチューブ3の基端側開口端が当接する上記段差部16cの底部16dと対対向する部分に本発明の当接部21bが設けられており、この当接部21bのみが上記ロアキャップ側傾斜面4aと当接するようになっている。
尚、本実施の形態では、上記当接部21b以外では互いの傾斜面4a,21a間に隙間ができるように脚部側傾斜面21aの角度が設定されており、この設定方法としては、実際の脚部側傾斜面21aの設定角度をロアキャップ側傾斜面4aの角度と異ならせたり、加工誤差の設定を内側程大きな隙間が生じるように設定したりすることで可能となる。
従って、上記軸力Xがインナーチューブ3を介してバルブケース16に加わっても、インナーチューブ2の基端側開口端がバルブケース16に当接する部位となる底部16dと、脚部21がロアキャップ4に当接する部位となる当接部21bとを上記軸力Xの作用線上とすることで、従来例で示したようなバルブケースを湾曲状に変形させる曲げモーメントが発生するのを確実に防止できるようになっている。
尚、この脚部21は、隣り合った脚部21との間に上記インナーチューブ3とアウターチューブ2との間に形成されたリザーバ室Rへ連通する油路Tが設けられる。
上記のように構成された油圧緩衝器1のベースバルブ5は、ロッドガイド8の取付時にインナーチューブ3を介してバルブケース16の底部16dに加わる軸力Xを、この底部16dと対抗する脚部21の当接部21bを介してロアキャップ4側に伝達するようにしたので、上記底部16dと当接部21bとを上記軸力Xの作用線上とすることができる。
このため、従来例のように、上記脚部21とロアキャップ4との当接部位が、上記軸力Xの作用線上から外れることでバルブケース16を湾曲状に変形させる曲げモーメントが発生するのを確実に防止することができる。
従って、バルブケース16の変形によってこのバルブケース16に配置されたノンリターンバルブ17や、圧側減衰力発生バルブ18が予め定められた位置からずれるのを防止できるので、狙った圧側減衰力を確実に発生させることができる。
又、このロッドガイド8の取付工程もそれ程慎重な作業を要求されなくなるので、その分、作業時間が短縮して製造コストを低減できる。
又、本実施の形態では、ロッドガイド8の取付手段として、溶接手段よりも大きな軸力が発生する加締手段を用いたので、上記曲げモーメントを発生させないようにした本発明は特に有効である。
本発明の具体化した複筒型油圧緩衝器の中心線よりも右側を示す一部破断正面図である。 図1のべースバルブの脚部とロアキャップとの当接状態を拡大して示す断面図である。 従来例の複筒型油圧緩衝器を示す一部破断正面図である。
符号の説明
1 複筒型油圧緩衝器
2 アウターチューブ
3 インナーチューブ
4 ロアキャップ
5 ベースバルブ
8 ロッドガイド(ベアリング部材)
21 脚部
21a 当接部
X 軸力

Claims (4)

  1. アウターチューブの基端側開口部に取付けたロアキャップに対してインナーチューブの基端側開口部に取付けられた状態のベースバルブをその脚部を介して配置し、上記インナーチューブにロアキャップ方向へ向かう軸力を作用させた状態で、ピストンロッドを支持するベアリング部材を上記アウターチューブ及びインナーチューブの先端側開口部に取付けた複筒型油圧緩衝器において、上記軸力の作用線上でのみこの脚部とロアキャップとが当接する当接部を当該脚部に設けたことを特徴とする複筒型油圧緩衝器。
  2. 上記脚部はインナーチューブの基端側開口端がベースバルブに当接する部分と対向する部分に設けられている請求項1記載の複筒型油圧緩衝器。
  3. 上記当接部はインナーチューブの基端側開口端がベースバルブに当接する部分と対向する部分となる脚部に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の複筒型油圧緩衝器。
  4. 上記ベアリング部材はアウターチューブ及びインナーチューブの先端側開口部に対して加締手段を用いて取付けられている請求項1,2又は3記載の複筒型油圧緩衝器。
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