JP2006273804A - 粘度調整剤及びその用途 - Google Patents
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Abstract
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤及びそれを調製するための粘度調整剤の提供。
【解決手段】
イオタカラギーナンを主成分として含む粘度調整剤を用い、食品又は栄養剤を調製する。
Description
また、胃瘻の人達に流動食をゲル化して摂取する方法も行われているが、ゲル化のために粉末寒天を用いた場合では、熱湯で寒天を溶解した後に、流動食と混ぜシリンジに入れ、冷やして固め、再度室温や人肌に温めるため、手間がかかる。
近年では、流動食を投与した前後に、ペクチンやカラギーナン等の増粘剤を含む溶液を投与して、胃の中でゲル化する方法も開示されているが(例えば、特許文献1参照)、2度の投与が必要となるため、時間がかかる。従って、より簡便かつ容易に利用できる食品又は栄養剤及びそれを調製するための粘度調整剤の開発が望まれていた。
(1)粘度調整剤であって、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合して、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、イオタカラギーナンを主成分として含む粘度調整剤。
(2)粘度調整剤がイオタカラギーナンを1.0〜2.0w/w%含む水溶液である上記(1)の粘度調整剤。
(3)上記(1)又は(2)の粘度調整剤を、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合してゲル化又は増粘させることを特徴とする、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤の調製方法。
(4)上記(3)の方法により調製された、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤。
(5)上記(4)により嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、粘度調整剤及び濃厚流動食又は経腸栄養剤を組み合わせたキット。
本発明における「増粘剤」としてはイオタカラギーナンが用いられる。イオタカラギーナンとは紅藻類海藻から抽出、精製される天然高分子物質で、水溶液は蛋白質や2価のカチオンと反応し、ゲル化や増粘性を示すことが知られている。本発明ではイオタカラギーナンのこれらの性質により、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合することで、直ちに好適な粘度を有するゲル化又は増粘された食品又は栄養剤が手軽に調製できる。そして、この食品又は栄養剤の粘度は時間が経ってもほとんど変わらない。
なお、本発明のゲル化とは、調製された食品又は栄養剤が、塊りや固形状になることをいい、増粘とは粘度が付いているがゲル化していない状態になることをいう。本発明は、この食品又は栄養剤を用いることにより、経口投与又は経管投与における、摂取者の嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は嚥下を予防又は防止するものである。
本発明の粘度調整剤は、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合したときに、急激に部分的なゲル化をすることなく、簡便かつ迅速に、かつ均一にゲル化できることが必要である。本発明の粘度調整剤は、これを満たす濃度のイオタカラギーナンを含んでいればいずれのものも用いることができる。なかでもイオタカラギーナンを主成分として含む水溶液であることが好ましく、イオタカラギーナンを1.0〜2.0w/w%含む水溶液、さらにイオタカラギーナンを1.3〜1.7w/w%含む水溶液であることが好ましい。
また、イオタカラギーナンを含む水溶液をレトルト可能な袋等に充填し、F値4以上の高温に高圧処理することで6ヶ月〜1年程の常温長期保存が可能な本発明の粘度調整剤を調製することもできる。
このようにして調製する粘度調整剤は、一回の使用に必要な量を測り取り、包材や容器の形態は特に問わず、例えば、透明パウチ、アルミパウチ袋等に分注して殺菌することができる。
経口投与において食品又は栄養剤の好ましい粘度は、嘔吐及び/又は誤嚥の予防又は防止が可能であれば、いずれの粘度であってもよい。例えば、厚生労働省の特別用途食品の高齢者用そしゃく・えん下困難者用食品の許可基準では、ゾル状食品の粘度としては1500 mPa・s以上である(食品表示マニュアル、152頁、2004年追録時、中央法規出版)。
経管投与において食品又は栄養剤の好ましい粘度は、胃食道逆流とこれによる嘔吐・誤嚥又は下痢の予防又は防止が可能であり、且つシリンジで注入可能であれば、いずれの粘度であってもよく、投与に用いるチューブの太さに応じて調製することもできる。投与方法が、例えば経鼻や経口による投与であれば、胃瘻よりもチューブが細くなるため、上限の粘度が下がることになる。
濃厚流動食は、例えば、リキッドダイエットK4A(キューピー社製)、MA8(クリニコ社製)、アイソカルRTU(ノバルティスファーマ社製)、F2α 抹茶(エスエス製薬社製)、テルミールf ヨーグルト(テルモ社製)、ライフロン6(日清キョーリン製薬社製)及びL5(旭化成ファーマ社製)等を用いることができる。また、経腸栄養剤は、例えばエンシュア・リキッド(アボット社製)、ラコール(大塚製薬社製)等を用いることができる。なお、市販されているほとんどの濃厚流動食又は経腸栄養剤は粘度が50mPa・s以下である。
粘度調整剤の好ましい使用量は、混合する濃厚流動食又は経腸栄養剤の種類によって異なるが、濃厚流動食又は経腸栄養剤に対して粘度調整剤を1〜18:1の比率で混合することが好ましく、特に6:1以上の比率で混合するとしっかりしたゲル状になる場合が多い。
例えば、リキッドダイエットK4Aを用い、混合物全量を100gとする場合では、その混合物に含まれる粘度調整剤の量が14.3g〜50gの間のいずれかである場合に、十分にゲル化された食品が調製できる。さらに、14.3gを用い、混合比率が6:1の場合に、経管投与においてスムーズに注入できる食品が調製できる(実施例2)。
調製の対象となる濃厚流動食又は経腸栄養剤が室温で使用できるものであれば、粘度調整剤を室温で混合することで、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は嚥下を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製することができる。また、体温まで温めて利用する必要があるものであれば、調製の対象となる濃厚流動食又は経腸栄養剤に応じて、粘度調整剤も室温あるいは同程度の温度に温めて混合することもできる。
経口摂取するために、食品又は栄養剤を調製する場合には、室温程度のものを調製し、そのまま又は冷やして摂取することが好ましい。また、経管投与するために、食品又は栄養剤を調製する場合には、室温程度のものから体温に近い温度まで温められたものを調製することが好ましい。
以下、本発明の詳細を実施例等で説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を得るための粘度調整剤を調製した。
<粘度調整剤1>
デキストリン6.4 w/w %及びイオタカラギーナン1.5 w/w%を水道水に分散させ、95℃まで加熱溶解し、30℃まで冷却後、クエン酸溶液を添加し、pH4.7±0.2になるよう調整し透明パウチに充填、湯煎にて品温90℃、20分間維持し加熱殺菌した。pH及び殺菌条件の設定により、長期保存可能な粘度調整剤を得た。20℃での粘度は2060mPa・sであった。
<粘度調整剤2>
デキストリン6.4 w/w %及びイオタカラギーナン1.5 w/w%を水道水に分散させ、95℃まで加熱溶解し、50℃まで冷却後、レトルト対応の袋に充填し、110℃〜120℃、10〜50分間、高温高圧殺菌器にて殺菌した。高温高圧処理により、長期保存可能な粘度調整剤を得た。F値4〜15であった。20℃での粘度は2500mPa・sであった。
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品aを簡便かつ迅速にゲル化して調製した。食品aの調製にあたり、市販濃厚流動食(リキッドダイエットK4A:キューピー社製)及び上記で調製した粘度調整剤1を用いた。リキッドダイエットK4Aの栄養成分は表1に示した。
また、20℃の恒温器に20分間静置した食品a(1)〜(6)について、シリコン製胃瘻チューブ20Frを装着し、チューブを用いた場合の押し出し具合と通過の様子を確認した。チューブを用いた場合の通過の様子は次のA〜Cで評価した。
A: とてもスムーズに注入できる。
B: 通過はスムーズだが注入にやや力を要する。
C: 通過はスムーズだが注入にかなり力を要する。
しかし、どの食品においても、押し出し時にチューブとシリンジの接合部から漏れることも、シリンジが脱離することもなく、安定して通過させることができた。従って、どの粘度の食品においても胃瘻に用い得ることが示された。
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品bを簡便かつ迅速にゲル化して調製した。食品bの調製にあたり、市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)及び上記で調製した粘度調整剤1を用いた。MA8の栄養成分は表3に示した。
本発明の粘度調整剤の代わりとして、市販の粉末のトロミ調整食品トロミアップA(日清サイエンス社製)又はトロミクリア(ライオン商事社製)をそれぞれ3 w/w %又は5 w/w%になるように市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)に分散し30秒撹拌し、食品c又は食品dを調製した。
室温を20℃として、市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)及び粘度調整剤2をそれぞれ20℃にし、表5の(1)〜(10)に記載の比率になるように100mlのビーカーに入れ、30秒間薬さじで撹拌することにより、混合物を均一にゲル化又は増粘した。得られた食品を食品b(1)〜(10)とした。
各食品の粘度を表5に示した。表5に示されるように、市販濃厚流動食及び調整剤2を用いた場合に、1〜9:1のいずれの混合比率においても、適度な粘度にゲル化した食品が得られることが示された。
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品eを簡便かつ迅速にゲル化又は増粘して調製した。食品eの調製にあたり、市販濃厚流動食(テルミールミニαいちご:テルモ社製)及び上記で調製した粘度調整剤2を用いた。テルミールミニαいちごの栄養成分は表6に示した。
各食品の粘度を表7に示した。表7に示されるように、市販濃厚流動食及び調整剤2を用いた場合に、20:1の混合比率では経口投与に用いる場合に十分な粘度は得られないが、1〜18:1の混合比率では、いずれにおいても、適度な粘度にゲル化又は増粘した食品が得られることが示された。
本発明の粘度調整剤の代わりとして、市販のLMペクチン LM−SN−325(デグサ社製)を用いた。20℃の市販濃厚流動食(MA8:クリニコ社製)と、LMペクチン LM-SN-325を4 w/w%になるように水に分散し、90℃まで加熱溶解させ、20℃まで冷却したペクチン溶液を、混合し、30秒撹拌し、食品f、g、hを調製した。食品fは混合比率が6:1(171.4g:28.6g)、食品gは3:1(150g:50g)、食品hは1:1(100g:100g)になるように調製した。
簡便かつ迅速にゲル化でき、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品i〜mを調製した。食品i〜mの調製にあたり、表9に記載のそれぞれの市販濃厚流動食及び上記で調製した粘度調整剤1又は粘度調整剤2を用いた。それぞれの市販濃厚流動食の栄養成分は表9に示した。
各食品の粘度を表10に示した。表10に示されるように、調整剤1又は調整剤2を用いた場合のいずれにおいても、適度な粘度にゲル化又は増粘した食品が得られることが示された。
簡便かつ迅速にゲル化又は増粘でき、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品n〜rを調製した。食品n〜rの調製にあたり、表9に記載のそれぞれの市販濃厚流動食及び上記で調製した粘度調整剤1又は粘度調整剤2を用いた。
各食品の粘度を表11に示した。表11に示されるように、調整剤1又は調整剤2を用いた場合のいずれにおいても、適度な粘度にゲル化又は増粘した食品が得られることが示された。
嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる栄養剤s、tを簡便かつ迅速にゲル化して調製した。栄養剤s、tの調製にあたり、表13に記載のそれぞれの市販経腸栄養剤及び上記で調製した粘度調整剤1を用いた。それぞれの市販経腸栄養剤の栄養成分は表13に示した。
各栄養剤の粘度を表14に示した。表14に示されるように、市販経腸栄養剤に対しても、本発明の粘度調整剤により、直ちに適度な粘度にゲル化された栄養剤が得られることが確認された。
1.5 w/w%のイオタカラギーナン溶液を21gアルミパウチに入れ、F値5になるようにレトルト殺菌して得た粘度調整剤と、濃厚流動食としてテルモ社製のテルミールミニ(バナナ)125mlを組み合わせキットとした。
この食品又は栄養剤を経管投与に用いる場合では短時間で栄養を補給することができ、上半身を長時間起こしておく必要がなくなるため褥瘡の予防、患者への負担軽減ができるほか、経管投与、経口投与ともに誤嚥による肺炎のリスクを大きく軽減できる。
Claims (5)
- 粘度調整剤であって、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合して、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、イオタカラギーナンを主成分として含む粘度調整剤。
- 粘度調整剤がイオタカラギーナンを1.0〜2.0w/w%含む水溶液である請求項1の粘度調整剤。
- 請求項1又は2の粘度調整剤を、経口投与又は経管投与のさいに、濃厚流動食又は経腸栄養剤と混合してゲル化又は増粘させることを特徴とする、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤の調製方法。
- 請求項3の方法により調製された、嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤。
- 請求項4により嘔吐・胃食道逆流・下痢及び/又は誤嚥を予防又は防止できる食品又は栄養剤を調製するための、粘度調整剤及び濃厚流動食又は経腸栄養剤を組み合わせたキット。
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