JP2010254598A - 嘔吐軽減又は防止方法、及び経腸栄養剤セット - Google Patents

嘔吐軽減又は防止方法、及び経腸栄養剤セット Download PDF

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Abstract

【課題】嘔吐防止のためのカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を用いたときでも経管投与による嘔吐が生じてしまうようなカルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する場合に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止できるようにする。
【解決手段】カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する際に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法は、経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を混合し、得られた混合物を経管投与する際、その混合物の経管投与の前又は後に、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を経管投与することからなる。
【選択図】なし

Description

本発明は、経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与した際、経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法、及び経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セットに関する。
高齢者の中には、食物や飲料を経口摂取することが不可能あるいは不十分な者が存在する。そのような者に対し、鼻からあるいは腹部に形成した瘻孔から消化器官内(具体的には胃や十二指腸内)に通したチューブを用いて経腸栄養剤を投与することが行われている(経管栄養)。ところが、経管栄養が必要な者の多くは、長期臥床等のために腸管の運動性が低下しており、そのため、消化器官内に投与された経腸栄養剤を嘔吐してしまうという問題があった。
このような経腸栄養剤の経管投与による嘔吐を軽減又は防止するために、経腸栄養剤の経管投与の前あるいは後に経腸栄養剤中のカルシウム分と結びついて増粘効果を示すカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含有する嘔吐防止食品を経管投与することが提案されている(特許文献1)。また、このような経腸栄養剤の一食分(200〜400kcal)の中には、健康維持に必要な一日当たりのカルシウム食事摂取基準量(約700mg/日)(非特許文献1)の1/2倍から2倍程度のカルシウム量が配合されている。
再表00−13529
「日本人の食事摂取基準(2005年版)」、厚生労働省策定
しかしながら、一食あたり、健康維持に十分な量のカルシウムを含有している経腸栄養剤に特許文献1の嘔吐防止食品を組み合わせても、嘔吐を十分に軽減あるいは防止できない場合があった。
本発明は、特許文献1に記載されているカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を用いたときでも、経管投与による嘔吐が生じてしまうような経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する場合に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止できるようにすることを目的とする。
本発明者らは、健康維持に十分な量のカルシウムを含有している経腸栄養剤に、特許文献1に開示された嘔吐防止剤であるカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を組み合わせても嘔吐を軽減又は防止できない理由を研究すべく、経腸栄養剤の配合におけるカルシウム量ではなくカルシウムイオン量に着目し、多くの市販の経腸栄養剤のカルシウムイオン量と嘔吐の発生との関連を研究した。その結果、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を使用しても、一食分の経腸栄養剤中のカルシウムイオン量が少な過ぎると嘔吐の軽減又は防止が困難になること、そして、そのようなカルシウムイオン量が少な過ぎる場合、完成した処方の市販の経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を混合することにより、本発明の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する際に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法であって、経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を混合し、得られた混合物を経管投与する際、その混合物の経管投与の前又は後に、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を経管投与する嘔吐軽減又は防止方法を提供する。
また、本発明は、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤の経管栄養被適用者への経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セットであって、
カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤と、
経腸栄養剤の経管投与前又は後に経管投与される、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液と、
経腸栄養剤の経管投与の際に、経腸栄養剤に混合されるカルシウムイオン供給剤と、
からなる経腸栄養剤セットを提供する。
本発明によれば、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する際に、カルシウムイオン供給剤が経腸栄養剤に混合される。従って、カルシウムイオン供給剤が混合された経腸栄養剤は、経管投与されたカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液と胃などの消化管内で混合され、増粘する。よって、嘔吐を軽減又は防止することが可能となる。
また、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤と、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液と、カルシウムイオン供給剤とから構成される経腸栄養剤セットは、本発明の嘔吐軽減又は防止方法に適用でき、従って、経管投与による嘔吐の軽減又は防止を可能とする。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の嘔吐を軽減又は防止する方法について説明する。この方法は、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する際に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法であり、経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を混合して得た混合物を経管投与する際に、その混合物の経管投与の前又は後に、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を経管投与することを特徴とする。
本発明の対象となる経腸栄養剤は、経管栄養被適用者(即ち、消化管からの栄養摂取は可能であるが、飲料や食物を経口摂取できない者であって、鼻からあるいは腹部に形成された瘻孔から消化器官内(具体的には胃や十二指腸内)に通したチューブを用いて経腸栄養剤を消化器管内に投与される者)に適用されるものである。ここで、経腸栄養剤は、規制する法の違いにより「医薬品」と「食品」とに分類される。また、組成成分の違いにより「成分栄養剤」、「消化態栄養剤」、「半消化態栄養剤」、「天然濃厚流動食」に分類される。これらのうち、「成分栄養剤」、「消化態栄養剤」に分類されるものは医薬品に該当し、「天然濃厚流動食」に分類されるものが食品に該当する。「半消化態栄養剤」に分類されるものは、医薬品に該当するものと食品に分類されるものがある。また、製剤型の違いにより粉末状のものと液状のものとがある。粉末のものは、通常、経管投与に先だってぬるま湯に溶解あるいは分散させて用いる。液状のものは、そのまま、あるいは水で希釈して用いる。
「成分栄養剤」とは、糖質、アミノ酸、脂質、電解質、ビタミン、微量元素など全ての成分が化学的に明らかなものから構成されるアミノ酸食であり、消化液の分泌がなくても、ほぼ完全に吸収され、残渣が殆ど生じないものである。具体的には、医薬品として、エレンタール(味の素(株))、エレンタールP(味の素(株))、ヘパンED(味の素(株))等が市販されている。
「消化態栄養剤」とは、蛋白分解物やアミノ酸などからなるものであり、成分栄養剤に比べ多少消化を必要とするが、残渣が殆ど生じないものである。具体的には、医薬品として、ツインライン(イーエヌ大塚製薬(株))、エンテルード(テルモ(株))等が市販されている。
「半消化態栄養剤」とは、天然の食品を加工し、蛋白質、ビタミン、微量元素などを配合し、味覚の点で成分栄養剤より優れているものであり、残渣が少ないものである。具体的には、医薬品として、ハーモニック−F(味の素(株))、ハーモニック−M(味の素(株))、エンシュアリキッド(アボットジャパン(株))、エンシュア−H(アボットジャパン(株))、ラコール(イーエヌ大塚製薬(株))、クリニミール(森永乳業(株))、アミノレバン−EN(イーエヌ大塚製薬(株))等が市販されており、食品として、エンリッチ−SF(明治乳業(株))等が市販されている。
「天然濃厚流動食」とは、天然の食品をブレンドし、水分を減らして1mL あたり1kcal 程度にまで濃縮しているものであり、必要な栄養素が含まれ栄養価も高く、消化器機能が正常な患者に使用されるものである。他の剤に比べ、残渣が多いものである。具体的には、食品として、オクノス流動食品(ホリカフーズ(株))等が市販されている。
以上説明した経腸栄養剤の具体的な栄養成分配合量、単位容量当たりのカロリー量、一食分の容量等は、経腸栄養剤という用途を前提として医薬品又は食品としての標準的な数値範囲から選択することができる。ここで、これらの規格においては全カルシウム量についての言及はあるが、カルシウムイオン濃度についての言及はない。本発明は、カルシウムイオン濃度という今までにない切り口から適用すべき経腸栄養剤を特定したものである。即ち、本発明においては、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤が対象となる。カルシウムイオン濃度が、10ppmを超える経腸栄養剤は、カルシウムイオン供給剤を混合しなくても、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液の併用により嘔吐を軽減又は防止することができるからである。
本発明において、カルシウムイオン濃度は、カルシウム複合電極を用いて測定した値である。具体的には、カルシウム複合電極(Orion 9720BNWP Sure−Flow(登録商標)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を装着したポータブル型pH/イオン計(Orion(登録商標) 1219000 5−Starマルチメーター、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を用いて23℃の温度で測定した値である。
また、カルシウムイオン供給剤としては、食品あるいは医薬品グレードの水溶性カルシウム化合物を含有する水溶液であるが、そのような水溶性カルシウム化合物としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられる。カルシウムイオン供給剤(溶液)の経腸栄養剤への添加量は、取り扱い易い量であって且つ経腸栄養剤を過度に希釈させない量とすることが好ましく、具体的には経腸栄養剤一食分当たり好ましくは5〜100mlである。
また、一食分あたり5〜100mlという量を前提とするカルシウムイオン供給剤中のカルシウムイオン濃度としては、その濃度が低過ぎると嘔吐を軽減又は防止することが不十分となり、また、その濃度が高過ぎると経腸栄養剤が均一に増粘し難くなる傾向がある。従って、好ましいカルシウムイオン濃度は、50〜300ppm、より好ましくは70〜200ppmである。このようなカルシウムイオン濃度のカルシウムイオン供給剤を、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の一食分(200〜400ml)の経腸栄養剤に混合すると、混合後の経腸栄養剤中のカルシウムイオン濃度は、10ppm以上、好ましくは15〜100ppm、より好ましくは15〜50ppmとなる。
なお、当初から経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を混合しておくことが考えられるが、カルシウムイオン濃度を高めて長期保存した場合に、経腸栄養剤中に凝集物が発生する危険性が増大するので、避けることが望ましい。
このようなカルシウムイオン供給剤の好ましい具体例としては、一般家庭での経管投与操作を考慮すると、一般家庭で入手容易な成分無調整牛乳、低脂肪牛乳、加工乳、脱脂粉乳還元液、液状ヨーグルト等を挙げることができ、中でも、カルシウムイオン濃度が、70〜150ppmである成分無調整牛乳は一般家庭に常備されている点から好ましく使用することができる。
カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸を含む溶液は、それぞれカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウム又はアルギン酸を清水に溶解したものであり、その経腸栄養剤への添加量は、取り扱い易い量であって且つ経腸栄養剤を過度に希釈させない量とすることが好ましく、具体的には、経腸栄養剤200ml当たり、好ましくは10〜200ml、より好ましくは30〜150mlである。
本発明において「カッパカラギーナン」及び「イオタカラギーナン」とは、それぞれカッパ型及びイオタ型に分類されるカラギーナンをいう。一食分あたり10〜200mlという量を前提とする溶液中のカッパカラギーナン又はイオタカラギーナンの濃度としては、その濃度が低過ぎると嘔吐を軽減又は防止することが不十分となり、また、その濃度が高過ぎても濃度に応じた効果が期待できないため、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%である。
また、本発明において「アルギン酸ナトリウム」及び「アルギン酸」とは、海草から抽出して得られる親水コロイド性多糖類をいう。一食分あたり10〜200mlという量を前提とする溶液中のアルギン酸ナトリウム又はアルギン酸の濃度としては、その濃度が低過ぎると嘔吐を軽減又は防止することが不十分となり、また、その濃度が高過ぎても濃度に応じた効果が期待できないため、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%である。
本発明の、経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法においては、まず、上述したカルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を均一に混合する。均一に混合する方法としては、経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を一度に投入し、混合することや、経腸栄養剤の経管投与用のチューブの途中に分岐チューブを設け、そこから少しづつ投与することなどが挙げられる。なお、カルシウムイオン供給剤として成分無調整牛乳を使用した場合には、経腸栄養剤200ml当たり、好ましくは5〜100ml、より好ましくは10〜50mlの牛乳を混合する。
カルシウムイオン濃度が10ppm以上の経腸栄養剤の場合には、牛乳等のカルシウムイオン供給剤を混合添加したとしても、後述するカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液の混合効果である嘔吐の軽減又は抑制効果は損なわれない。
本発明の経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法においては、経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤が混合された混合物を経管投与する前又は後、好ましくは前に、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を経管投与する。これにより、消化官内で経腸栄養剤を増粘させ、嘔吐を軽減又は防止することができる。
本発明において経腸栄養剤の増粘の程度は、経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な程度であり、具体的には、ビーカー中に、経腸栄養剤200mlとカルシウムイオン供給剤30mlとの混合物に、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液90mlとを混合し、スパーテルで100回撹拌したものをBH形粘度計(23℃;ロータNo.2、20rpm)で、5回転後の示度を測定したときに好ましくは300〜5000mPa・s、より好ましくは400〜3000mPa・sとなる粘度である。ここで、上方の粘度値は、経腸栄養剤の消化を阻害しないような粘度という意義を有する。なお、粘度が200mPa・s未満の場合はローターNo.1を用い、粘度が2000mPa・sを超える場合はローターNo.3を用いて同様に測定した。
なお、経腸栄養剤とカルシウムイオン供給剤との混合物にカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液とを混合して得た混合物の低pH(約1.2)の胃内での粘度は、上述のビーカー内での粘度よりも約20%程度増加する傾向がある。従って、本発明においては、「その混合物の粘度が胃内環境下で低下して嘔吐を軽減又は防止できなくなる」ということを考慮する負担が軽減される。
次に、「経腸栄養剤の経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セット」の発明について説明する。
この経腸栄養剤セットは、(a)カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤と、(b)該経腸栄養剤の経管投与前又は後に経管投与される、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液と、(c)該経腸栄養剤の経管投与の際、該経腸栄養剤に混合されるカルシウムイオン供給剤と、から構成される。
この経腸栄養剤セットを構成する(a)経腸栄養剤、(b)カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液、及び(c)カルシウムイオン供給剤の組成内容は、本発明の経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法において説明したとおりである。また、それらの包装は、缶詰、ビン詰め、レトルトパウチ等、公知の包装形態を採用することができる。
また、その使用方法は、本発明の「経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法」に準じて使用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1]
(経腸栄養剤の調製)
表1の原料をミキサーで混合し、その混合物を高圧ホモゲナイザーで圧力40MPaにて均質化した。得られた均質化物400mlを、排出口を備えたレトルト殺菌可能なブロー形成ソフトバッグに充填し、その排出口にプルトップを有する栓体を溶着・密封し、120℃で25分間レトルト殺菌を施し、その後冷却した。得られたレトルト殺菌物の栓体にキャップを装着した。これにより、経腸栄養剤の経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セットの中のソフトバッグ詰め経腸栄養剤を得た。
得られたソフトバッグ詰め経腸栄養剤の一袋当たりのカロリー量は400kcalである。また、全カルシウム濃度は600mg/1000mlであり、カルシウム複合電極(Orion 9720BNWP Sure−Flow(登録商標)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を装着したポータブル型pH/イオン計(Orion(登録商標) 1219000 5−Starマルチメーター、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))を用いて23℃の温度で測定したカルシウムイオン濃度は、8ppmであった。
(カッパカラギーナン水溶液の調製)
カッパカラギーナンの濃度が0.5w/v%となるように配合したカッパカラギーナン水溶液を90mlずつアルミニウムパウチに充填し、110℃で30分間加熱殺菌した。これにより、経腸栄養剤の経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セットの中のカッパカラギーナン水溶液を得た。
(カルシウムイオン供給剤の調製)
市販のパック詰め牛乳(カルシウムイオン濃度=110ppm)の30mlを、経腸栄養剤の経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セットの中のカルシウムイオン供給剤とした。
(経腸栄養剤セット)
以上説明したように調製した経腸栄養剤、カッパカラギーナン水溶液及びカルシウムイオン供給剤により「経腸栄養剤の経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セット」を構成した。
(増粘効果)
<カルシウムイオン供給剤未使用>
1リットルビーカー中に、経腸栄養剤200mlに、カッパカラギーナン水溶液90mlを混合し、スパーテルで100回撹拌した。得られた混合物を、BH形粘度計(23℃;ロータNo.1、20rpm)で、5回転後の示度を測定したところ、190mPa・sの粘度を示した。なお、経腸栄養剤自体の粘度は、10mPa・sであった。
<カルシウムイオン供給剤使用>
1リットルビーカー中に、経腸栄養剤200mlとカルシウムイオン供給剤としての牛乳30mlとを混合したところ、混合液のカルシウムイオン濃度は、17ppmであった。更に、カッパカラギーナン水溶液90mlを混合し、スパーテルで100回撹拌した。得られた混合物を、BH形粘度計(23℃;ロータNo.2、20rpm)で、5回転後の示度を測定したところ、1400mPa・sの粘度を示し、未使用の場合に比べ、大きく増粘した。
(人工胃液存在下での増粘効果の確認)
1リットルビーカー中に、経腸栄養剤200mlとカルシウムイオン供給剤30mlとを混合し、更に、人工胃液(塩化ナトリウム2.0gに塩酸7.0ml及び水を加えて1000mlとしたもの(pH=1.2))50mlとカッパカラギーナン水溶液90mlを混合し、スパーテルで100回撹拌した。得られた混合物を、BH形粘度計(23℃;ロータNo.2、20rpm)で、5回転後の示度を測定したところ、1750mPa・sの粘度を示した。
[実施例2]
実施例1において、カッパカラギーナン水溶液の代わりに、イオタカラギーナンの濃度が0.5w/v%となるように配合したイオタカラギーナン水溶液(90ml)を調製した以外は、実施例1と同様の方法で経腸栄養剤セットを構成した。
[実施例3]
実施例1において、カッパカラギーナン水溶液の代わりに、アルギン酸ナトリウムの濃度が5w/v%となるように配合したアルギン酸ナトリウム水溶液(90ml)を調製した以外は、実施例1と同様の方法で経腸栄養剤セットを構成した。
[実施例4]
実施例1において、カッパカラギーナン水溶液の代わりに、カッパカラギーナンの濃度が0.2w/v%、アルギン酸ナトリウムの濃度が3w/v%となるように配合したカッパカラギーナン・アルギン酸ナトリウム混合水溶液(90ml)を調製した以外は、実施例1と同様の方法で経腸栄養剤セットを構成した。
[試験例1]
(増粘効果)
実施例1において、カッパカラギーナン水溶液を含む経腸栄養剤セットの代わりに、イオタカラギーナン水溶液を含む経腸栄養剤セット(実施例2)、アルギン酸ナトリウム水溶液を含む経腸栄養剤セット(実施例3)、カッパカラギーナン・アルギン酸ナトリウム混合水溶液を含む経腸栄養剤セット(実施例4)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でカルシウムイオン供給剤未使用時とカルシウムイオン供給剤使用における増粘効果の確認を行った。得られた結果を実施例1の結果と共に表2に示す。
表2より、イオタカラギーナン水溶液を含む経腸栄養剤セット、アルギン酸ナトリウム水溶液を含む経腸栄養剤セット、カッパカラギーナン・アルギン酸ナトリウム混合水溶液を含む経腸栄養剤セットを用いた場合、カルシウムイオン供給剤を使用すると未使用時の場合に比べ、大きく増粘することが理解される。
[実施例5]
(嘔吐抑制効果確認)
経管栄養に対して嘔吐し易い高齢者10人に対し、実施例1で得た経腸栄養剤セットのカッパカラギーナン水溶液90mlを経管投与により30秒間で胃に流入れた。次に、実施例1で得た経腸栄養剤セットのソフトバッグ詰め経腸栄養剤(400ml)を開封し、その200mlにカルシウムイオン供給剤としての牛乳30mlを加え混合し、得られた混合物を、それら10名に経管投与により30分間かけて投与した。その結果、10人の高齢者の誰一人として嘔吐した者はいなかった。
[比較例1]
経管栄養に対して嘔吐し易い高齢者10人に対し、実施例1で得た経腸栄養剤セットのカッパカラギーナン水溶液90mlを経管投与により30秒間で胃に流入れた。次に、カルシウムイオン供給剤としての牛乳を加えることなく、実施例1で得た経腸栄養剤セットのソフトバッグ詰め経腸栄養剤200mlを、それら10名に経管投与により30分間かけて投与した。その結果、10人の高齢者のうち5名が嘔吐を催した。
[試験例2]
(市販品の試験例)
経腸栄養剤に代えて、表3の示す市販品A〜Cを使用したこと以外は、実施例1で行った、カルシウムイオン供給剤未使用時とカルシウムイオン供給剤使用時における増粘効果、並びに人工胃液存在下での増粘効果の確認を行った。得られた結果を実施例1の結果と共に表3に示す。また、実施例2及び比較例1と同様に、10人の高齢者が嘔吐を催したか否かを評価した。
表3からわかるように、カルシウムイオン濃度が10ppm未満の市販の経腸栄養剤について、本発明を適用することにより、経腸栄養剤の経管投与による嘔吐の抑制又は防止が可能であった。
また、カルシウムイオン濃度が10ppmを超える市販の経腸栄養剤については、カルシウムイオン供給剤の添加が悪影響を及ぼさないことがわかる。
本発明は、嘔吐防止のためのカッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を用いたときでも経管投与による嘔吐が生じてしまうようなカルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止しながら経管投与する場合に有用である。

Claims (4)

  1. カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤を経管栄養被適用者に経管投与する際に、経管投与による嘔吐を軽減又は防止する方法であって、経腸栄養剤にカルシウムイオン供給剤を混合し、得られた混合物を経管投与する際、その混合物の経管投与の前又は後に、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液を経管投与する嘔吐軽減又は防止方法。
  2. カルシウムイオン供給剤が、牛乳である請求項1記載の嘔吐軽減又は防止方法。
  3. カルシウムイオン供給剤を、経腸栄養剤中のカルシウムイオン濃度が10ppm以上になるように経腸栄養剤に混合する請求項1又は2記載の嘔吐軽減又は防止方法。
  4. カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤の経管栄養被適用者への経管投与による嘔吐を軽減又は防止可能な経腸栄養剤セットであって、
    カルシウムイオン濃度が10ppm未満の経腸栄養剤と、
    経腸栄養剤の経管投与前又は後に経管投与される、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸から選択される1種または2種以上を含む溶液と、
    経腸栄養剤の経管投与の際に、経腸栄養剤に混合されるカルシウムイオン供給剤と、
    からなる経腸栄養剤セット。
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