JP4787517B2 - 栄養剤用ゲル化剤 - Google Patents

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Description

本発明は、栄養補給のために使用される経腸栄養剤もしくは経管栄養食(以下、あわせて経腸栄養剤または栄養剤という)と投与前に混合してゲル化又は固形化させる栄養剤用ゲル化剤に関するものである。特に、患者に投与された経腸栄養剤が患者の胃から食道に向かって逆流する胃食道逆流や、投与した栄養剤の胃瘻からのリークを抑制し、しかも、形成したゲル化又は固形化栄養剤は経管チューブを通過する際にチューブへの付着を少なくさせる栄養剤用ゲル化剤を提供するものである。
経管栄養法とは、顎、口腔領域の疾患によりその諸機能が障害を受け経口栄養摂取が困難となった患者や、顎、口腔、食道、胃などの外科的治療を施行した患者、さらに意識障害を引き起し自力での飲食が困難な患者などに対して、チューブを用いて栄養剤を投入する方法を意味し、経鼻もしくは胃瘻による投入経路がよく用いられる。特に、近年、内視鏡を利用して胃瘻を造設する経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下、PEGと記載する)が報告されて以来、この方法が局所麻酔下で簡便に施行が可能なことから、経腸栄養法の主だった方法として広く普及してきた。そして経管栄養法で用いられる栄養剤が経腸栄養剤もしくは経腸栄養食であり、窒素源、糖質、脂肪、ミネラル、ビタミン等を目的に応じてバランス良く配合された物が作られている。しかしながら、チューブを介して投与された液体の栄養剤は固形物に比べ流動性が高く、噴門や幽門を容易に通過するという問題点を持っている。栄養剤が噴門を容易に通過すると胃食道逆流が生じやすく、栄養剤が幽門を通過する量が多いと下痢の原因となる。またPEGの場合、瘻孔の弛緩や拡張により液体は容易にチューブ挿入部を通過し、栄養剤リークの原因になる(例えば、非特許文献1参照。)。
現在、液体の経腸栄養剤により生じるこれらの問題を防止する目的で、緩徐な速度での注入や、座位による注入が推奨されている。しかし、緩徐な速度での注入では胃の拡張が得られず、生理的な胃蠕動が得られない。また、座位注入では、注入の間は体位変換ができないため、褥瘡などを持つ症例においては、この投与法は褥瘡悪化の因子となる。
これらの問題を解決する方法として、液体の経腸栄養剤にトロミ剤や増粘剤を加えて液体に粘調度をつけて注入する事例がある。しかし、現状のトロミ剤や増粘剤は、チューブに対する付着性が強く、注入が困難である。また、付着性が強い場合は投与後に洗浄してもチューブに付着物が残り、それが微生物増殖の原因となる。また、液体経腸栄養剤を注入する前後に別々に増粘剤を入れて栄養剤を胃内でゲル化させる方法も考えられている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、胃に注入した時点では液体であるため、幽門を容易に通過したり、また、胃内で増粘剤と十分に混じりあわず、不均質にゲル化する危険性があり、胃食道逆流などが十分に防止できないという問題点が残る。
これらの液体経腸栄養剤の問題点を効果的に解決する方法として、寒天もしくは全卵を用いてゲル化もしくは固形化することも行われている。(例えば、特許文献3、4参照。)全卵を用いた固形化栄養剤の場合には、生の全卵を加えて攪拌混合し、注射器によって吸引し、その混合物を蒸すかまたは蒸し焼きにすることにより、半固形化する。また、寒天を用いる固形化栄養剤の場合には、液状の栄養剤を必要な量の水分と混合し加熱しておき、一方、粉末状の寒天を水に分散した上で、加熱を行って溶解したものを、加熱した栄養剤に加えて注射器内に充填し、冷蔵庫の如き冷所において保存して固形化させる、と言う煩雑な操作が必要である。全卵の場合も、加熱により栄養剤とともに凝固させる必要があり、そのため、いずれの場合でも、特に高齢者による調製においては加熱時の火傷事故の危険性などがある。さらに、寒天を用いる場合は冷却時に栄養剤と混合するタイミングを逸すると、混合前に寒天溶液中でゲル化が起こりはじめ、栄養剤混合後には不均質な固形化を発生させるなどの失敗事例も発生し得る。また、液状栄養剤に対して全卵または寒天をどのような割合で入れればよいのかという量的な条件や、加熱温度、加熱時間、冷却温度などの調整条件の設定が難しく、常に一定の品質の性状を持つ固形化栄養剤が得られない。これらのことから、加熱溶解などの危険で煩雑な操作を極力必要とせず、容易に、かつ確実に経腸栄養剤をゲル化もしくは固形化できる製剤の提供が強く要望されていた。
特開平11−9222号公報 特開2000−217544号公報 特開2003−201230号公報 特開2004−26844号公報 蟹江治郎著、胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実践、2004年4月、日総研出版
液体経腸栄養剤を予めゲル化もしくは固形化した上でチューブから容易に投与でき、胃内でもゲル保形性が維持されて栄養剤の胃食道逆流や胃瘻からのリークが防止でき、しかもチューブ付着性が少なく投与後のチューブ洗浄水が極力少なくて済む、ゲル化もしくは固形化経腸栄養剤が望まれている。さらに、ゲル化もしくは固形化した経腸栄養剤であっても、加熱などの危険で煩雑な操作を極力必要とせず、チューブの付着性も少なく、容易にかつ確実に経腸栄養剤をゲル化もしくは固形化できるゲル化剤の提供が強く要望されていた。
本発明者等は、上記課題を解決するために種々検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、加熱を必要とせず、混合するのみで一定時間にだれでも確実に経腸栄養剤をゲル化させ、しかも形成したゲルは細いチューブでも容易に通過し、チューブへの付着性も少なく、チューブ通過後のゲルは保形性があり、胃食道逆流防止や瘻孔からの栄養剤リーク防止、下痢発生防止効果を有する製剤の創出を鋭意研究した結果、(1)ローメトキシルペクチン、縮合リン酸塩を含む溶液(第1液)と、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩を含む溶液(第2液)の二液からなるゲル化剤、(2)ローメトキシルペクチン、縮合リン酸塩、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩を含む溶液(第1液)と、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩を含む溶液(第2液)の二液からなるゲル化剤、(3)ローメトキシルペクチン、縮合リン酸塩、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩及びアラビアガムを含む溶液(第1液)と、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩を含む溶液(第2液)の二液からなるゲル化剤、(4)上記の製剤に加えて、第1液が、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩により、pH3.5〜5.5に調整されたものであるゲル化剤、(5)上記の製剤に加えて、ローメトキシルペクチン1部に対し、縮合リン酸塩0.01〜1部、有機酸0.01〜1部及び/又は一価の塩からなる有機酸塩0.01〜2部、二価もしくは多価金属塩0.01〜0.3部からなるゲル化剤を含むゲル化剤、(6)上記の製剤に加えてローメトキシルペクチンを含む溶液が5〜30w/v%であるゲル化剤、(7)ローメトキシルペクチンのエステル化度が22〜32%のものを使用するゲル化剤、において前述の問題点を解決することを見出した。
しかも、本発明品を添加した経腸栄養剤のゲル化物は、室温にて経腸栄養剤を添加混合した場合においては柔らかいゲル状態を呈し、冷却時には保形性があり、比較的もろいゲルになるという二面性のテクスチャーを形成する。そのため、室温でゲル化した経腸栄養剤は、柔らかいテクスチャーであることから、チューブ投与以外に、トロミ製品もしくは嚥下製品としても利用でき、また、冷却により、保形性があり、比較的もろいテクスチャーを形成する。さらにチューブ付着性が軽減し、チューブ通過性が良好となって好ましい。また、冷却して保形性があり、比較的もろいゲルとなった経腸栄養剤は、プリンタイプのデザートの様にスプーンを用いて食する製品としても利用可能となる。このように、本発明品は液体の経腸栄養剤をゲル化した状態でチューブ投与をする以外にも、この一剤で種々のテクスチャーのゲル化もしくは固形化した栄養剤が得られるという特徴を有する。
本発明の栄養剤用ゲル化剤の使用により、患者に投与された経腸栄養剤が患者の胃から食道に向かって逆流する胃食道逆流や、投与した栄養剤の胃瘻からのリークを抑制し、しかも、形成したゲル化もしくは固形化栄養剤は経管チューブを通過させる際、チューブへの付着が少なく、容易に経管投与することが可能となった。
以下、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。本発明品は、LMペクチン、縮合リン酸塩などを含む溶液(第1液)を包装したものと、二価もしくは多価金属塩を含む溶液(第2液)を包装したものからなる。二液を別々に包装したものを1セット(キット)にしてもよいが、隔壁を持った2室にそれぞれの溶液を包装した1製品の形態であっても差し支えない。
本発明において「ローメトキシルペクチン」(LMペクチン)とは、エステル化度が50%以下のペクチンをいう。LMペクチンには、カルシウムやマグネシウムなどの多価金属イオンと反応して粘度を上げる、もしくはゲル化する性質がある。本発明ではこの反応あるいは性質に加えて、LMペクチンのエステル化度とカルシウムとの反応性を深く検討した結果、縮合リン酸塩存在下で、エステル化度の低いLMペクチンとカルシウムとのゲル化反応性を調節することにより、チューブ付着性が少ない柔らかなゲルを形成し、冷却するとさらにチューブ付着性が減少した、保形性を有する、比較的もろいテクスチャーを有するゲルを形成することを見出して本発明を完成するに至った。
ここで言うエステル化度の低いLMペクチンとは、エステル化度32%以下のものを言い、エステル化度22〜32%のものが好ましい。LMペクチンの由来としては、例えば、レモン、ライム、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘ペクチンやリンゴペクチン、ジャガイモなどの野菜類のペクチンなどが使用できる。経腸栄養剤を適度なゲル化強度及びゲル特性にし得るLMペクチンの割合は、経腸栄養剤100mlに対して0.5〜2.5g、特に1.0〜2.5gが好ましい。
加えて、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩の存在下で、pH3.0〜5.5の範囲内に調整することによって、カルシウムなどの二価金属塩とLMペクチンとのゲル化反応性が長期保存中においても安定的に調節できることも見出し、本発明を完成するに至った。
本発明品における縮合リン酸塩は、ポリリン酸塩やメタリン酸塩などが例示できる。それらの塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩が好ましい。またはこれら塩類の混合物でも使用可能である。縮合リン酸塩は、LMペクチンがゲル化する際に、そのゲル化時間を適度に調節し、十分攪拌均質することによりLMペクチンが一定のゲル化強度を保持できるようになるという効果を有していることを見出した。一般的にLMペクチンとカルシウムなど二価もしくは多価金属塩とのゲル化反応性は、LMペクチンのエステル化度にも相関があり、エステル化度が高いとカルシウムは緩やかに均質にゲル化するものの、ゲルのテクスチャーは柔らかくなりすぎ、固形化栄養剤は調製できない。この場合はカルシウム添加量を増やすとゲル強度が高まる傾向となるが、単純にカルシウムを増やすのみでは不均一なゲルを形成し固形化栄養剤は調製できない。一方、エステル化度の低いLMペクチンでは、カルシウムなどとの反応性は高く、固いゲルを形成する傾向がある。しかし、カルシウムなどとの結合速度が速いことから、不均一なゲルを形成し固形化栄養剤は調製できない。これらのことから、LMペクチンを均一にゲル化させ、しかも固形化栄養剤として利用可能な柔らかなテクスチャーを有し、チューブ通過性が良好なゲルを形成させる新たな技術を鋭意研究した。その結果、LMペクチンにメタリン酸などの縮合リン酸塩を配合することにより、柔らかなテクスチャーを有しチューブ通過性が良好なゲルを形成するに最適なLMペクチンへのカルシウムなどの結合反応性を達成し、均質なゲル化構造を得ることを見出し、本発明を完成するに至った。この独特の特性を持つゲル化メカニズムは、縮合リン酸塩によるLMペクチンへのカルシウムなどの結合速度の調節以外に、縮合リン酸塩、LMペクチンとカルシウムとの複雑な平衡状態、複雑な立体構造を形成しているものと考えられる。これらのメカニズムから柔らかく、また保形性があり、比較的もろい性質と、ゲル中の保水性改良を達成した、チューブ通過性が良好な適度なテクスチャーを形成することが可能となった。さらに、縮合リン酸塩を配合することにより、経腸栄養剤のゲル化強度に対する耐熱性が向上し、レトルト殺菌によっても十分安定したゲル化品質の製品が製造可能となった。そのような縮合リン酸塩は、LMペクチン1部に対して、0.01〜1.0部、特に0.2〜0.4部が好ましい。
加えて、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩を配合し、pH3.5〜5.5に調整することで、ゲル化の形成速度は安定化し、長期の保存品においてもゲル化速度を一定に保つことを達成した。
本発明における有機酸とは、酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸などが例示できる。また、一価の塩からなる有機酸塩とは酢酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、グルコン酸、リンゴ酸などの有機酸に一価の塩類が結合したもので、塩類とは即ちナトリウムやカリウムなどが挙げられる。これらは、本発明の特徴あるゲル強度及びゲル特性を引き出すように、第1液を適切なpHに調整するために添加する。第1液の適切なpHは、pH3〜5.5、好ましくはpH3.5〜4.5で、そのpHになるように有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩を添加する。そのような有機酸は、食品添加物を利用できるが、天然由来の有機酸、例えば、レモン果汁やリンゴ果汁なども使用できる。使用量としては、LMペクチン1部に対して有機酸は0.01〜1.0部、一価の塩からなる有機酸塩は0.01〜2.0部が好ましい。
本発明における糖類は、グルコース、マルトースなどの単糖類や二糖類、マルトトリオースなどのオリゴ糖、デキストリンなどの多糖類が例示できる。また、ポリデキストロースや難消化性デキストリンなどの食物繊維が例示できる。これらは、LMペクチンを水に溶解する際の溶解補助剤として使用する。これはLMペクチンが溶解に際して溶解し難く、溶解を促進するために、あらかじめ糖類とLMペクチンを混合して溶解する。特に、溶解補助剤としての糖類は、顆粒状に造粒してあるものがLMペクチンを溶解し易くするために好ましい。しかし、溶解装置の攪拌力などが強力である場合はLMペクチンのみで溶解可能なこともあり、その場合は本発明に合う製剤が調製できる。さらに、それら糖類とペクチンとの相互作用により、より良好なゲル化強度やゲル化特性を高めることを見出しており、添加することが好ましい。そのような糖類は食品素材や食品添加物などの中から適時選択して利用できる。使用量は、LMペクチン1部に対して、糖質が0.1〜5部、好ましくは、0.1〜1部である。
本発明者らは、経腸栄養剤をゲル化するゲル化剤の研究に当たり、チューブ付着性を軽減させる物質の探索を行った。その結果、アラビアガムがゲルのチューブ付着性を著しく低下させ、チューブ通過性をさらに改善することを見出した。ここで、アラビアガムはマメ科アカシア属セネガル種(Acacia Senegal)やセヤル種(Acacia Seyal)の樹木より採取される天然水溶性ガムなどが利用できる。組成が特殊な栄養剤では、その成分組成によりゲルに高い粘性を与える場合があり、そのような場合にはアラビアガムの添加によりチューブ通過性は特に良好となる。アラビアガムは水溶性であり、油滴と結合して乳化安定化機能や粒子への皮膜形成機能を有している。そのため、このアラビアガムはLMペクチンのゲル組織と結合し、ゲルの表面に水を多く含む薄い皮膜を形成することから、チューブ表面との「すべり」が改善してチューブ通過性を高めるものと考えられる。なお、使用量は、LMペクチン1部に対して、アラビアガムが0.01〜0.10部が好ましい。
これらLMペクチン、縮合リン酸塩、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩、糖類を溶解した溶液の濃度は、濃度が薄い場合、添加する経腸栄養剤が希釈されるために、投与量が多くなり十分な量を胃内に投与できなくなることが考えられる。また、高濃度の場合は、溶液の状態で、粘度が高くなり、経腸栄養剤に添加した際、十分に混合できないことがある。そのため、LMペクチンを含む溶液の濃度は5〜30w/v%であることが望ましい。特に、濃度を10〜25w/v%にすると、経腸栄養剤と良好に混合でき、しかも経腸栄養剤が利用できる程度に希釈されるために好ましい。
本発明に使用するカルシウム塩やマグネシウム塩などの二価もしくは多価金属塩類は、食用に適していればその形態は特に限定するものではない。例えば、塩化カルシウムや塩化マグネシウムなどの塩化物、それら多価金属の酢酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、リンゴ酸塩、炭酸塩などが例示できる。また二価もしくは多価金属は、カルシウムやマグネシウム以外に、鉄、亜鉛、銅、マンガンなどが例示できる。これらはLMペクチンと容易に反応することが望ましいために、水への溶解度が高い二価もしくは多価金属の塩化物、乳酸塩、グルコン酸塩などが好ましい。これらの金属塩類の1種または2種以上を水に溶解して溶液とする。濃度は特に問わないが、それらの溶解性や風味を考慮すると0.1〜10%濃度が好ましい。また、それらの使用量はLMペクチン1部に対して、カルシウム塩やマグネシウム塩など二価もしくは多価金属塩が0.01〜0.3部が好ましい。これは、この比率においてゲル化剤と二価もしくは多価金属とが反応して、良好なゲル化強度やゲル化特性を高めるために好ましい。
さらに、風味を考慮し、適切な甘味料、例えば、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなどを添加することも可能であり、また、各種の香料を添加することもできる。
以下、本発明のゲル化剤の製造方法について説明する。まず、LMペクチンと製造装置に合わせた適量のデキストリンを混合均質とし、80℃程度に加熱した水に、溶解する。この際、縮合リン酸塩や有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩を同時に添加する。しかし、LMペクチンの溶解温度や、縮合リン酸塩、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩の添加順序は特に限定されるものではなく、製造装置の性能や規模などにより適時変更することが可能である。次いで、所望の容器に充填し密封し、加熱殺菌する。殺菌は、特に加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)が好ましい。一般的に、ペクチン溶液は加熱殺菌により分解を受け易く、ゲル化能力を消失もしくは著しく減弱することが知られている。しかし、本発明品は縮合リン酸塩を配合したことにより、経腸栄養剤のゲル強度に対する耐熱性が向上し、レトルト殺菌によっても十分安定したゲル化品質の製品が製造可能である。さらに、レトルト殺菌のF値が6〜12の範囲においては、それ以下のF値で殺菌した製品より、製剤の粘度が低下して栄養剤に混合しやすくなり、かつ経腸栄養剤に対するゲル強度が好ましい強度となるため、そのF値範囲で製造することが好ましい。なお、F値は12を超えると経腸栄養剤に対するゲル強度の低下が認められるので、F値は12を超えない方が好ましい。また、製剤のpHは特に限定されるものではないが、pH4.5以下の場合、経腸栄養剤に対するゲル強度の保存安定性が著しく向上することから好ましい。
また、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩溶液は、上述のLMペクチン溶液とは別途にこれら溶液を調製する。すなわち、これらの塩類を水に溶解する。この場合、この溶液の濃度は、塩類の溶解性や風味などを考慮し、0.1〜10%濃度が好ましく、さらにクエン酸や乳酸などの有機酸を含めた酸性物質を添加すると、本発明の特徴となるゲル強度やゲル特性が見出せる。これらの酸性物質の種類や添加量は特に限定されないが、例えば、乳酸を添加する場合、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩類に対して0.1〜3倍程度が望ましい。特に、溶液のpHが3〜5程度に調整されたものが好ましい。このように調製された溶液は、次いで、所望の容器に充填し密封し、加熱殺菌する。この二価もしくは多価金属塩溶液の殺菌は、特に限定はないが、長期保存を考慮しレトルト殺菌で105〜130℃、4〜60分間の殺菌条件が好ましい。また、pHが4以下に調整された製剤とする場合は、そのpHにおける細菌等の増殖が低いために85〜95℃程度の加熱殺菌でもかまわない。なお、容器に充填する前に上述の殺菌を行い、次いで無菌的に容器に充填してもかまわない。
このようにして製造した本発明のゲル化剤は、経腸栄養剤や流動食などを使用している患者に用いることができる。その方法としては、まず液体の経腸栄養剤に、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩溶液を添加混合後、LMペクチン溶液を添加し混合する。この場合、添加順序に特に限定はなく、どちらから先に添加混合しても差し支えない。両溶液を添加混合後、室温で放置すると柔らかいテクスチャーを示すゲルが形成する。
ゲルを形成する時間は、LMペクチンのエステル化度や縮合リン酸塩濃度、カルシウムやマグネシウムなどの二価もしくは多価金属塩の種類や濃度、さらには有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩濃度を変更することにより適時変更できるが、15秒〜5分程度でゲルを形成するように調整するのが好ましい。一方、本発明品を経腸栄養剤に添加混合後に、冷蔵庫などを用いて0〜10℃に15〜60分冷却すると、ゲル強度は増し、プリン様に保形性があり、比較的もろいテクスチャーに変化する。この場合、室温以上に温度を戻しても保形性やテクスチャーに大きな変化はみられず、しかも容器やチューブなどへの付着性は室温でゲル化したものよりさらに低下し、チューブ通過性が著しく向上するために、例えば、10フレンチ程度の細いチューブでの通過性も良好となり好ましい。本発明のゲル化剤は、室温で栄養剤と混合すると柔らかいゲルを形成し、冷蔵すると保形性があり、比較的もろいゲルになるという二面性のテクスチャーを形成するという特徴を持ち、この特徴は寒天などでは得られないものである。
このような二面性のテクスチャーを形成する本発明のゲル化剤は、嚥下障害者にも使用でき、経管栄養にも使用できるというこれまでになかった機能を持っている。寒天では、そのゲル化の下限値が限定され、下限域では一部だけがゲル化したりするという不均質なゲル化を生じ、一定以上のゲル強度を持つ固形化栄養剤しか調製できないが、本発明品は、かなり低いゲル強度のゲル化栄養剤まで調製可能である。
本発明のゲル化剤は、経腸栄養剤や流動食を使用している患者、例えば、脳障害があって咀嚼嚥下力がない患者や胃を手術して固形物が摂取できない患者に対して、あらかじめ経腸栄養剤や流動食を本発明のゲル化剤でゲル化もしくは固形化した後にチューブを介して投与することができ、胃内でもゲル保形性が維持されて栄養剤の胃食道逆流や胃瘻からのリークが防止でき、しかもチューブ付着性が少なく、投与後のチューブ洗浄水が極力少なくて済むようになる。
また、本発明のゲル化剤は、室温で経腸栄養剤と混合すると、柔らかいテクスチャーを示すゲルを形成することから、これらの経腸栄養剤のゲルは、嚥下食としてスプーンなどを用いて投与することが可能である。また、本発明のゲル化剤は、経腸栄養剤と混合した後に冷却すると、前記の室温混合品より固いが比較的もろい、保形性のあるテクスチャーを示し、この経腸栄養剤ゲルは、咀嚼リハビリーテション用として良好なテクスチャーの製品となり得る。このように、本発明品を用いることにより、優れたチューブ流動性を示す経腸栄養剤のゲル化および固形化が達成できるばかりでなく、放置温度によって二面性のあるテクスチャーを示すゲルを形成して、嚥下食や咀嚼リハビリーテション用などとしても利用できる栄養剤ゲルとなり、しかも胃食道逆流や胃瘻からのリークも防止できるという、これまでになかった新規な栄養剤用ゲル化剤が得られる。
さらに、本発明のゲル化剤は、経腸栄養剤と混合・溶解しゲル化させる際に、危険かつ煩雑な加熱をすることなくゲル化または固形化することができる。寒天や全卵を用いる場合には加熱が必須であるが、本発明のゲル化剤は従来のゲル化剤にはみられなかった加熱をすることなくゲル化または固形化することができることも特徴の一つである。
以下、本発明を実施例および比較例でさらに詳しく説明する。
なお、本発明の特徴であるゲルテクスチャーは「かたさ応力(N/m2)」、「もろさ応力(N/m2)」と「付着性(J/m3)」で評価した。これらの指標はクリープメーター(RE2-33005S;株式会社山電社製)を用いて測定した。また、もう一つの特徴である良好なチューブ通過性は固形化した経腸栄養剤(商品名「ラコール」;イーエヌ大塚製薬社製)を用いた「チューブ押出し力(N)」で評価した。評価方法は、24フレンチ×4.4cmの胃瘻カテーテルチューブ(「ガストロボタン」;バード社製)を50mlのカテーテルチップシリンジ(テルモ社製)に装着し、ゲル化した栄養剤(商品名「ラコール」;イーエヌ大塚製薬社製)50mlを充填して、固形化栄養剤のチューブからの押出し力を圧縮試験機(SV-55C-20H;今田製作所社製)で測定して行った。
LMペクチン(柑橘系、エステル化度32%)8.36 kgを、60℃に加温した水80.52 kgに攪拌しながら添加し、次いで、ヘキサメタリン酸ナトリウム2.52 kgを添加して、90℃まで加熱しながら攪拌溶解した。さらにクエン酸0.24 kgを添加し溶解した。調製した溶液は50g毎にポリエチレン製の袋に充填密封し、120℃、20分間レトルト殺菌を行った(第1液)。他方、乳酸カルシウム2.00 kgを水98.00 kgに溶解し、10g毎にポリエチレン製の袋に充填密封し、120℃、16分間レトルト殺菌を行った(第2液)。そのレトルト殺菌時のF値は8となった。調製した第1液のpHはpH5.5であった。本発明品は経腸栄養剤(商品名「ラコール」;イーエヌ大塚製薬社製)200mlに対して、第1液50g(1袋)を添加し均質に攪拌した後、第2液10g(1袋)を加えてゲル化させることができた。この際、室温では柔らかいゲルを形成した。さらに5℃の冷蔵庫に30分間放置すると、保形性があり、比較的もろいゲル化特性を示した。冷蔵庫に30分間放置したものの5℃での「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定値は、それぞれ600N/m2、21N/m2、22J/m3であった。
さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、ゲル化した栄養剤は大きな力を与えることなく容易にチューブを通過し、また通過後の栄養剤の付着物はほとんど認められなかった。なお、「チューブ押出し力」の測定値は41Nであった。
一方、比較品として、粉末状の寒天130gを約100℃に加熱した水6kgに攪拌しながら添加し加熱溶解し、これを50℃に加熱した経腸栄養剤(商品名「ラコール」;イーエヌ大塚製薬社製)に、寒天が全体の0.5%になるように添加し攪拌混合したものを、5℃の冷蔵庫に30分間放置してゲル化させた、この比較品の5℃での測定値は、それぞれ888N/m2、59N/m2、8J/m3でほぼ同様のテクスチャーを示した。
LMペクチン(アップル系、エステル化度28%)10.00kg、糖類であるデキストリン10.00 kg を混合後、60℃に加温した水76.73 kgに攪拌しながら添加し、次いで、ヘキサメタリン酸ナトリウム3.00 kgを添加して、90℃まで加熱しながら攪拌溶解した。さらにクエン酸0.54 kgとリンゴ酸ナトリウム0.25kgを添加し溶解した。調製した溶液は60g毎にアルミパウチに充填密封し、120℃で20分間レトルト殺菌を行った(第1液)。他方、乳酸カルシウム4.00 kgを水96.00 kgに溶解し、10g毎にポリエチレン製の袋に充填密封し、123℃で10分間レトルト殺菌を行った(第2液)。その際のレトルト殺菌時のF値は8となった。 なお、調製した第1液のpHは4.2であった。本発明品は経腸栄養剤(商品名「ラコール」;イーエヌ大塚製薬社製)400mlに対して、第1液60g(1袋)を添加し均質に攪拌した後、第2液10g(1袋)を加えてゲル化させることができた。この際、室温では柔らかいゲルを形成した。さらに5℃の冷蔵庫に30分間放置すると、保形性があり、比較的もろいゲル化特性を示した。冷蔵庫に30分間放置したものの5℃での「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定値は、それぞれ720N/m2、23N/m2、18J/m3であった。さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、ゲル化した栄養剤は大きな力を与えることなく容易にチューブを通過し、また通過後の栄養剤の付着物はほとんど認められなかった。なお、「チューブ押出し力」の測定値は、44Nであった。
LMペクチン(アップル系、エステル化度32%)8.36kgを、60℃に加温した水88.38 kgに添加し、次いで、ヘキサポリリン酸ナトリウム2.00 kgおよびアラビアガム0.40kgを添加して、TKホモジナイザーを用いて強力に攪拌しながら90℃まで加熱し溶解した。さらに乳酸0.24kgと乳酸ナトリウム0.09kgを添加し溶解した。調製した溶液は50g毎にアルミパウチに充填密封し、120℃で5分間レトルト殺菌を行った(第1液)。他方、乳酸カルシウム1.00kgと乳酸マグネシウム1.00kgを水98.00 kgに溶解し、20g毎にポリエチレン製の袋に充填密封し、122℃で8分間レトルト殺菌を行った(第2液)。その際のレトルト殺菌のF値は6であった。なお、調製した第1液のpHは4.0であった。本発明品は経腸栄養剤(商品名「ラコール」:イーエヌ大塚製薬社製)200mlに対して、第1液50g(1袋)を添加し均質に攪拌した後、第2液20g(1袋)を加えてゲル化させた。この際、室温では柔らかいゲルを形成した。さらに5℃の冷蔵庫に30分間放置すると、保形性があり、比較的もろいゲル化特性を示した。冷蔵庫に30分間放置したものの5℃での「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定値は、それぞれ680N/m2、20N/m2、11J/m3であった。さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、ゲル化した栄養剤は大きな力を与えることなく容易にチューブを通過し、また通過後の栄養剤の付着物はほとんど認められなかった。なお、「チューブ押出し力」の測定値は、35Nであった。
LMペクチン(アップル系、エステル化度28%)51重量部と顆粒状デキストリン45重量部、クエン酸ナトリウム3重量部、及びメタリン酸ナトリウム1重量部を混合した組成物を調製し、その20重量部を水100重量部に添加し、90℃の水温で加熱溶解した。この溶液にクエン酸を0.1重量部添加後、溶液をアルミパウチに充填密封し120℃で20分間レトルト殺菌を行った(第1液)。他方、水100重量部に乳酸カルシウム2重量部添加溶解した溶液を120℃、20分間レトルト殺菌を行った(第2液)。その際のレトルト殺菌時のF値は10であった。なお、調製した第1液のpHは4.2であった。本発明品である第1液25重量部と第2液8重量部及び経腸栄養剤(商品名「ラコール」:イーエヌ大塚製薬社製)100重量部を混合したところ、室温下では柔らかいゲルを形成し、また冷蔵庫保管すると中心温度15℃以下で保形性があり、比較的もろいゲル化特性を示した。冷蔵庫に30分間放置したものの5℃での「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定値は、それぞれ700N/m2、22N/m2、15J/m3であった。さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、ゲル化した栄養剤は大きな力を与えることなく容易にチューブを通過し、また通過後の栄養剤の付着物はほとんど認められなかった。なお、「チューブ押出し力」の測定値は、40Nであった。
LMペクチン(アップル系、エステル化度28%とアップル系、エステル化度22%の2種類を4:1に混合)51重量部と、顆粒状デキストリン45重量部、クエン酸ナトリウム3重量部、及びメタリン酸ナトリウム1重量部を混合した組成物を調製し、その組成物を水100重量部に添加し、90℃の水温で加熱溶解した。この溶液にクエン酸を0.1重量部添加後、溶液をアルミパウチに充填密封し120℃、20分間レトルト殺菌を行った(第1液)。その際のレトルト殺菌時のF値は10であった。他方、水100重量部に乳酸カルシウム2重量部添加溶解した溶液を120℃で20分間レトルト殺菌を行った(第2液)。なお、調製した第1液のpHは3.9であった。本発明品である第1液25重量部と第2液8重量部及び経腸栄養剤(商品名「ラコール」:イーエヌ大塚製薬社製)100重量部を混合したところ、室温下では柔らかいゲルを形成し、また冷蔵庫保管すると中心温度15℃以下で保形性があり、比較的もろいゲル化特性を示した。冷蔵庫に30分間放置したものの5℃での「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定値は、それぞれ710N/m2、26N/m2、19J/m3であった。さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、大きな力を与えることなく容易にゲル化した栄養剤はチューブを通過し、また通過後の栄養剤の付着物はほとんど認められなかった。なお、「チューブ押出し力」の測定値は、49Nであった。
LMペクチン(アップル系、エステル化度28%)51重量部と顆粒状デキストリン45重量部、クエン酸ナトリウム3重量部、及びメタリン酸ナトリウム1重量部を混合した組成物を調製し、その組成物26重量部を90℃の水温で加熱溶解した。この溶液にクエン酸を0.2重量部、及びアラビアガム0.04重量部を添加後、溶液をアルミパウチに充填密封し120℃、20分間レトルト殺菌を行った(第1液)。その際のレトルト殺菌時のF値は10であった。他方、水100重量部に乳酸カルシウム2重量部添加溶解した溶液を120℃、20分間レトルト殺菌を行った(第2液)。なお、調製した第1液のpHは4.3であった。本発明品である第1液25重量部と第2液8重量部及び経腸栄養剤(商品名「ラコール」:イーエヌ大塚製薬社製)100重量部を混合したところ、室温下では柔らかいゲルを形成し、また冷蔵庫保管すると中心温度15℃以下で保形性があり、比較的もろいゲル化特性を示した。冷蔵庫に30分間放置したものの5℃での「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定値は、それぞれ760N/m2、30N/m2、12J/m3であった。さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、大きな力を与えることなく容易にゲル化した栄養剤はチューブを通過し、また通過後の栄養剤の付着物はほとんど認められなかった。
なお、「チューブ押出し力」の測定値は、46Nであった。
次いで、従来の技術で調製したゲル化調製物を比較例として述べる。
[比較例1]
10W/v%LMペクチン溶液を調製し、50mlずつアルミパウチに充填密封し、110℃で30分間加熱滅菌した。他方、1W/v%塩化カルシウム溶液を40mlずつアルミパウチに充填密封し、110℃で30分間加熱殺菌した。調製した製剤について、カルシウム溶液40ml(1袋)を経腸栄養剤(商品名「ラコール」:イーエヌ大塚製薬社製)200mlに添加混合し、次いで、LMペクチン溶液50ml(1袋)を加え混合した。その際、LMペクチン溶液添加後直ちにゲル化が起こり、一部でゲル化強度が異なる不均一なゲルを形成した。さらに5℃程度の冷蔵庫に30分間放置したが、保形性のある、もろいゲル化特性は示さなかった。その際の「かたさ応力」と「もろさ応力」、及び「付着性」の測定は、均一なゲルとしてラコールが固形化しなかったため、測定できなかった。さらに、このゲル化した経腸栄養剤を注射器に詰めて、その注射器をPEG用チューブに接続し、チューブを通過させたところ、チューブにゲル化物が付着して通過せず詰まりが発生した。なお、「チューブ押出し力」の測定値は、100N以上を示し、同様に測定した本願発明のゲル化剤により固形化した経腸栄養剤(ラコール)におけるチューブ押出し力(実施例1に記載)と大きく相違していた。

Claims (8)

  1. ローメトキシルペクチン、縮合リン酸塩、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩を含む溶液(第1液)と、二価もしくは多価金属塩を含む溶液(第2液)とからなり、投与前に栄養剤と混合してゲル化又は固形化させて、ゲル化又は固形化栄養剤とする経腸栄養剤用ゲル化剤であって、ローメトキシルペクチン1部に対して、縮合リン酸塩が0.01〜1部、有機酸が0.01〜1部、一価の塩からなる有機酸塩が0.01〜2部、二価もしくは多価金属塩が0.01〜0.3部からなる経腸栄養剤用ゲル化剤
  2. 第1液が、さらに糖質を含むものである、請求項1に記載の経腸栄養剤用ゲル化剤。
  3. 第1液が、さらにアラビアガムを含むものである、請求項に記載の経腸栄養剤用ゲル化剤。
  4. 第1液が、有機酸及び/又は一価の塩からなる有機酸塩により、pH3.5〜5.5に調整されたものである、請求項乃至に記載の経腸栄養剤用ゲル化剤。
  5. ゲル化剤中にローメトキシルペクチンを5〜30w/v%含む、請求項1乃至のいずれかに記載の経腸栄養剤用ゲル化剤。
  6. ローメトキシルペクチンがエステル化度22〜32%のものである、請求項1乃至のいずれかに記載の経腸栄養剤用ゲル化剤。
  7. ゲル化剤が6〜12のF値において加圧加熱殺菌したものである、請求項1乃至のいずれかに記載の経腸栄養剤用ゲル化剤。
  8. 請求項1乃至のいずれかに記載の経腸栄養剤用ゲル化剤を投与前に混合してゲル化又は固形化した経腸栄養剤。

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