JP2000325041A - 嚥下補助食品 - Google Patents

嚥下補助食品

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博 田中
Akiko Niizeki
章子 新関
Tokumitsu Yamagata
徳光 山形
Kazuhiko Kaneda
一彦 金田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 液状食品を適度な堅さにゲル凝固させて、こ
の凝固物を弱者が誤嚥することなくつるりと嚥下できる
ようにすることのできる嚥下補助食品を提供する。 【解決手段】 液状食品を嚥下するのにこれを凝固させ
るためのキットであって、ローメトキシルペクチン、ア
ルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選択される
1種又は2種以上の増粘材を含む溶液と、カルシウム溶液
とを対にしてなる嚥下補助食品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な嚥下補助食品
に関する。
【0002】
【従来の技術】高齢者・病弱者は、歯が弱っていたり体
力が低下しているので食事を咀しゃくする力と嚥み下す
力に衰えが生じていることが多く、通常の食事を摂食で
きないことがある。そのため、これらの弱者には、食品
を流動食として加工したものを摂食させているのが一般
的であるが、流動食に加工するのが大変であるうえ、上
記弱者であっても流動食の食事ばかりではつまらない
し、流動食に該当しない例えばみそ汁やスープ等の液状
の日常食も味わって喫食したいところである。
【0003】そこで、最近ではみそ汁やスープ等の液状
食品に「とろみ」をつけて上記弱者が摂食できるように
した嚥下補助食品として、デキストリン・加工澱粉等の
糖質を主成分とする粉状物が市販されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記市
販品は、液状食品に「とろみ」をつけるものであり、液
状食品は粘度が上がって(粘性がついて)べたべたした
ものになる。そして、このべたべたした液状食品は、上
記弱者が摂食はできるものの、嚥下しにくいため喉に留
まっているうちにむせて誤嚥してしまうことがある。し
たがって、この市販品は液状食品の嚥下補助食品として
は最良のものではない。そこで、本発明は、液状食品を
適度な堅さにゲル凝固させて、この凝固物を弱者が誤嚥
することなくつるりと嚥下できるようにすることのでき
る嚥下補助食品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、(1) 液
状食品を嚥下するのにこれを凝固させるためのキットで
あって、ローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウ
ムおよびカラギーナンから選択される1種又は2種以上
の増粘材を含む溶液と、カルシウム溶液とを対にしてな
る嚥下補助食品、(2) ローメトキシルペクチンを含
む溶液と、固形分換算でローメトキシルペクチン1gに
対してカルシウム20〜150mgを含むカルシウム溶
液とを対にしてなる(1)の嚥下補助食品、(3) 増
粘材を含む溶液の濃度が0.5〜20w/v%である
(1)又は(2)の嚥下補助食品、によって達成され
る。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。な
お、本発明において「%」は特にことわりのない限り
「重量%」を意味する。本発明において「嚥下補助食
品」とは、みそ汁、スープ、ミキサー食、ジュース、し
るこ等の液状食品を嚥み下す力の衰えた弱者(患者)が
問題なく供食できるように、液状食品の物性を嚥下しや
すいものにするために添加される食品をいう。
【0007】本発明の「嚥下補助食品」は、液状食品を
嚥下するためにこれを凝固させるためのキットであっ
て、増粘材を含む溶液とカルシウム溶液とを対にしてな
るものである。この「増粘材」とはローメトキシルペク
チン、アルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選
択される1種又は2種以上からなるものである。本発明
において「ローメトキシルペクチン(以下、「LMペク
チン」ともいう)」とは、エステル化度が50%以下の
ペクチンをいう。LMペクチンはカルシウムと反応して
ゲル化し、液状食品を凝固させて適度な堅さにして嚥下
しやすくする役割をする。また、「アルギン酸ナトリウ
ム」とは、海草から抽出して得られる親水コロイド性多
糖類の水酸基をナトリウムイオンで置換したものをい
う。アルギン酸ナトリウムはカルシウムと反応してゲル
化し、LMペクチンと同様の役割をする。さらに、「カ
ラギーナン」とは、カッパ型とイオタ型に分類されるカ
ラギーナンをいう。カラギーナンはカルシウムと反応し
てゲル化し、LMペクチンと同様の役割をする。本発明
において「増粘材を含む溶液」とは、上記増粘材の1種
又は2種以上を含む水溶液をいう。増粘材の組み合せは
任意である、その濃度は0.5〜20w/v%とするの
が望ましい。これは濃度が薄すぎると液状食品を凝固さ
せるのにこの溶液を多量に使用する必要があるため好ま
しくなく、またあまり濃すぎるものは増粘多糖類が溶解
しにくくなって実用的でないからである。
【0008】本発明において、増粘材を含む溶液と対を
なすカルシウム溶液に用いる「カルシウム」は、食用に
適していればその形態は特に限定するものではない。例
えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、醗酵L型乳酸
カルシウム、合成乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウ
ム、第一リン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、硫酸
カルシウム、水酸化カルシウム、クエン酸カルシウム、
第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、骨粉、
炭酸カルシウム、貝殻粉、卵殻粉などをあげることがで
きるが、清水への溶解度が高くてカルシウム含量が多い
点から、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸
カルシウムが好ましい。これらのカルシウムの1種又は
2種以上を清水に溶かしてカルシウム溶液とする。濃度
は特に問わないが、固形分換算で、例えばLMペクチン
1gに対してカルシウム20〜150mgとなるように
するとよい。これは、後述の試験例からも明らかなよう
に液状食品を適度な堅さにゲル凝固させ、つるりと軽く
嚥下しうる割合だからである。
【0009】以上に述べた本発明の嚥下補助食品におい
て、増粘材を含む溶液とカルシウム溶液はそれぞれ容器
やパウチに充填密封されてこれを対にして販売する。
【0010】その製法について説明する。まず、増粘材
を含む溶液の例としてLMペクチンの場合を述べると、
LMペクチンを清水に溶解し、所望の容器に充填密封す
る。次いで長期保存に耐えるように、好ましくは105
〜121℃で5〜60分間加熱滅菌する。また、カルシ
ウム溶液にあっては、カルシウムを清水に溶解し、所望
の容器に充填密封する。次いで長期保存に耐えうるよう
に、好ましくは105〜121℃で加熱殺菌する。
【0011】
【作用】本発明の嚥下補助食品においては、液状食品に
対してほぼ等量の増粘材を含む溶液と、液状食品に対し
て1〜10%のカルシウム溶液を加えて混合し、しばら
く放置すれば、液状食品を嚥下に適した堅さにゲル凝固
させることができる。そして、この凝固物は弱者が誤嚥
することなくつるりと軽く嚥下することができる。
【0012】以下、本発明を実施例と試験例でもって詳
しく説明する。
【実施例】実施例1 2.8w/v%LMペクチン溶液を90mlずつ耐熱性
合成樹脂製パウチに充填密封し、105℃で8分間加熱
滅菌して、増粘材としてLMペクチンを含んだ溶液を得
た。これとは別に卵殻微粉末12.8%を分散させた水
溶液(カルシウム含量5.4w/v%)を10mlずつ
耐熱性合成樹脂製パウチに充填密封し、110℃で20
分間加熱殺菌してカルシウム溶液を得た。そして、上記
LMペクチン溶液とカルシウム溶液を対にして、本発明
の嚥下補助食品とした。
【0013】使用例(1) 80℃の出来たてのわかめのみそ汁48%に対して、上
記カルシウム溶液2%を加えてよく攪拌し、引き続き攪
拌しながらこれに上記LMペクチン溶液50%を加えて
混合した後正方形の型に流し込んで5分間放置したとこ
ろゲル凝固した。この凝固物を皿の上に取り出したとこ
ろ、その温度は40℃であったが適度な堅さにゲル凝固
しており、小サジですくって熱いまま患者に与えたとこ
ろ、つるりと嚥下させることができた。 使用例(2) 65℃のコーンスープ48%に対して、上記カルシウム
溶液2%を加えてよく攪拌し、引き続き攪拌しながらこ
れに上記LMペクチン溶液50%を加えて混合した後ボ
ール状の型に流し込んで5分間放置したところゲル凝固
した。この凝固物を皿の上に取り出した後、冷蔵庫に入
れて10℃に冷却したが適度な堅さにゲル凝固してお
り、小サジですくって冷えたものを患者に与えたとこ
ろ、つるりと嚥下させることができた。
【0014】実施例2 7w/v%アルギン酸ナトリウムと2.8w/v%LMペ
クチンの混合(1対1)溶液にクエン酸を加えてpH
3.8に調整し、これを90mlずつアルミパウチに充
填密封し、100℃で10分間加熱滅菌して、増粘材と
してアルギン酸とLMペクチンを含んだ溶液を得た。こ
れとは別に、4w/v%塩化カルシウム溶液を10ml
ずつアルミパウチに充填密封し、110℃で30分間加
熱殺菌してカルシウム溶液を得た。そして、上記アルギ
ン酸ナトリウム・LMペクチン溶液とカルシウム溶液と
を対にして本発明の嚥下補助食品とした。この嚥下補助
食品は、実施例1の使用例(1)(2)と全く同じよう
に用いることができた。
【0015】
【試験例】試験例1(従来品との比較) 次の6種のサンプルを用意した。 発明品(1):実施例1の嚥下補助食品を用いて、実施
例1の使用例(1)によって作成した40℃の凝固みそ
汁 発明品(2):実施例2の嚥下補助食品を用いて、実施
例1の使用例(1)に準じて作成した40℃の凝固みそ
汁 対照品(1):80℃の出来たてのわかめのみそ汁90
%に対して市販の粉状嚥下補助食品(主成分:デキスト
リン、加工澱粉)10%を加えよく攪拌して40℃にし
たとろみをつけたみそ汁 発明品(3):実施例1の嚥下補助食品を用いて、実施
例1の使用例(2)によって作成した10℃の凝固コー
ンスープ 発明品(4):実施例2の嚥下補助食品を用いて、実施
例1の使用例(2)に準じて作成した10℃の凝固コー
ンスープ 対照品(2):65℃のコーンスープ90%に対して市
販の粉状嚥下補助食品(対照区(1)で用いたものと同
じ)10%を加えてよく攪拌した後、冷蔵庫で10℃に
冷却したとろみをつけたコーンスープ 上記サンプルについて、ゲル凝固の程度をみるため、堅
さを測定した後、患者に試食してもらい嚥み下し性の難
易を調べたところ、表1の結果が得られた。
【0016】
【表1】
【0017】表1より、本発明の嚥下補助食品は、液状
食品を温めても、或いは冷やしても適度な堅さに凝固さ
せて、つるりと軽く嚥下させられることが理解できる。
【0018】試験例2(LMペクチンに対するカルシウ
ムの量) わかめのみそ汁(20℃)50mlに、5.0w/v%
LMペクチン溶液50mlと表2に示すような濃度のカ
ルシウム溶液50mlを順次加え、5分間放置してゲル
凝固させた。得られた凝固物の堅さを、試験例1と同じ
方法で測定したところ表2の結果が得られた。
【0019】
【表2】 表2より、固形分換算でLMペクチン1gに対し、カル
シウム20〜150mgであると、液状食品を適度な堅
さにゲル凝固させることが理解できる。
【0020】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の嚥下補助食
品によれば、液状食品を適度な堅さにゲル凝固させて、
温めても或いは冷やしても、弱者が誤嚥することなくつ
るりと軽く嚥下することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金田 一彦 東京都渋谷区渋谷1丁目4番13号キユーピ ー株式会社営業本部内 Fターム(参考) 4B018 LB10 LE05 MD04 MD37 MD38 MD39 ME14 4B041 LC10 LD03 LE08 LH06 LH08 LH10 LK02 4C076 AA12 BB01 CC40 DD23 EE30 EE36 EE58 FF35 FF68

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液状食品を嚥下するのにこれを凝固させ
    るためのキットであって、ローメトキシルペクチン、ア
    ルギン酸ナトリウムおよびカラギーナンから選択される
    1種又は2種以上の増粘材を含む溶液と、カルシウム溶
    液とを対にしてなる嚥下補助食品。
  2. 【請求項2】 ローメトキシルペクチンを含む溶液と、
    固形分換算でローメトキシルペクチン1gに対してカル
    シウム20〜150mgを含むカルシウム溶液とを対に
    してなる請求項1記載の嚥下補助食品。
  3. 【請求項3】 増粘材を含む溶液の濃度が0.5〜20
    w/v%である請求項1又は2記載の嚥下補助食品。
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