JP5026347B2 - 酸性濃厚流動食用ゲル化剤及びゲル状酸性濃厚流動食の製造方法 - Google Patents

酸性濃厚流動食用ゲル化剤及びゲル状酸性濃厚流動食の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、pHが3〜4.6といった低pHを有する酸性濃厚流動食を均質にゲル化させることが可能な酸性濃厚流動食用ゲル化剤に関する。詳細には、食塊形成性が良く、付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した飲み込みやすいゲル状酸性濃厚流動食を調製可能なゲル化剤及びゲル状酸性濃厚流動食の製造方法に関する。更に本発明は良好なチューブ流動性を有し、チューブへの付着性も小さく、経管投与に用いられる咀嚼・嚥下困難者用食品として特に優れた適性を有するゲル状酸性濃厚流動食に関する。
濃厚流動食には、体に必要な各種の栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミン、水分等)が十分量バランスよく配合されており、食物の咀嚼・嚥下が困難な患者向け食品の他、高齢者に必要な栄養素を効率的に摂取できる栄養食として広く使用されている。濃厚流動食は、咀嚼・嚥下困難者への経口摂取を目的として、ゲル化剤を用いて以下に係る物性を付与することが試みられている。1)適度なかたさを有すること、2)食塊形成性(口中での食品のまとまりやすさ)に優れること、3)口腔及び咽頭への付着性が小さいこと、及び4)保水性が高いこと(離水が少ないこと)。例えば特許文献1には、液状食品を凝固させ、嚥下を補助するためのキットであって、ローメトキシルペクチン、アルギン酸ナトリウム及びカラギーナンから選択される1種又は2種以上の増粘剤を含む溶液と、カルシウム溶液とを対にしてなる嚥下補助食品が開示されている。
更に、経口摂取が難しい患者には、経鼻・経口経管栄養法や胃瘻・腸瘻経管栄養法が用いられている。経鼻・経口経管栄養法は、鼻または口から挿入して食道、胃、十二指腸、空腸の何れかの部位まで到達させたチューブを介して、また胃瘻・腸瘻経管栄養法は、食道や空腸(多くは胃)に手術的または内視鏡的に外瘻を造設して留置したチューブを介して、濃厚流動食などの栄養を持続的に投与する方法である。特に胃に外瘻を造設して濃厚流動食を投与する胃瘻(PEG)は、従来多く行われてきた経鼻経管栄養法と異なり鼻に違和感なく、また在宅でのケアが容易であることから患者やその介護者の負担が少なく有効な経管栄養法の一種である。
経管栄養法に用いられる濃厚流動食は液状形態を有するものが多く、細いチューブでも投与が容易であるという利点を有する。しかし液体の濃厚流動食は、経鼻・経口経管栄養法では鼻や口に投入したチューブ口から、胃瘻・腸瘻経管栄養法では造設した外瘻に挿入したチューブ口から液体が漏れやすい、濃厚流動食のダンピングや下痢の防止のため投与速度を早めることができず、経管投与に長時間を要するなどの課題を抱えていた。更に、経管栄養法が適用される高齢者や患者などは胃上部の噴門の機能が著しく低下していることが多く、胃内の濃厚流動食が胃食道逆流を起こしてしまうことがあるため、長時間座位を保つ必要があるなど、液体の濃厚流動食の投与に際は被介護者への負担が大きい。液体によるこれらの問題点を解決するために、濃厚流動食を固形化させる技術が開発され、寒天及びアルギン酸を含有するゲル状経腸栄養剤(特許文献2)、カラギナン及びアルギン酸を併用した経管栄養食品(特許文献3)が開示されている。
一方、アルギン酸ナトリウムは種々のカルシウム塩と組み合わせることにより即時に食品をゲル化できる性質を持ち、pHが3.8〜4.2であるアルギン酸ナトリウム溶液とAWが0.94未満であるカルシウム塩含有溶液とからなる液状食品用瞬間ゲル化剤(特許文献4)が開示されている。また、特許文献5には、(A)アルギン酸ナトリウムと第三リン酸カルシウムとを含有してなる粉末組成物、(B)有機酸を含有してなる酸性粉末組成物及び(C)カルシウムイオン封鎖剤を含有してなる粉末組成物とを含有し、少なくとも(A)成分と(B)成分とが別々に包装されていることを特徴とするシェイク用即席ゲル化粉末が記載されている。
特開2000−325041号公報 特開2008−69090号公報 特開2000−169397号公報 特開2006−333803号公報 特開2007−151545号公報
以下の観点より、濃厚流動食をゲル化させることは極めて有用である。(1)咀嚼・嚥下困難者用食品として適した食塊形成性を付与させる、(2)胃瘻・腸瘻を介した投与時に瘻孔からの濃厚流動食の漏れを防止する、(3)胃内での保形性と滞留性を付与することでダンピングや下痢を防止する、(4)胃食道逆流とそれに伴う誤嚥性肺炎を防止する、(5)投与時間の短縮を図る。
しかし、タンパク質、脂質、炭水化物等を複合的に含有する濃厚流動食はpH3〜4.6といった酸性条件下ではゲル状に調製すること自体が困難であり、通常市販されているゲル状濃厚流動食は主にpH6.0〜7.5程度の中性タイプのものである。実際、特許文献2及び3において開示されているゲル状経腸栄養剤や経管栄養食品も中性タイプであり、酸性タイプの濃厚流動食について一切記載されていない。しかし、中性タイプのものは、増殖できる微生物の種類が多いため、経管投与後のチューブ内残渣に繁殖した細菌から感染症を引き起こす可能性があるなど、衛生面で課題があった。
更に、濃厚流動食はタンパク質や脂質、炭水化物等を複合的に含有するため、中性条件下においてもゲル化しにくく、咀嚼・嚥下困難者用食品として求められる食塊形成性を付与させることが難しい。また通常の咀嚼・嚥下困難者用食品に比較して格段に口腔内への付着性及びチューブ付着性が大きくなる傾向がある。かかる濃厚流動食のpHを酸性条件下に調整すると、更にゲル化しにくく、咀嚼・嚥下困難者用食品として適した食塊形成性を付与することが困難になり、付着性も増大する。この点、酸性濃厚流動食をゲル化した場合であっても、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすい食感で、経管投与時に濃厚流動食の注入が容易であり、チューブに付着物が残りにくいなど、適度なゲル強度(かたさ)を付与し、更に付着性を小さくすることが課題とされてきた。アルギン酸ナトリウムを用いて液状食品を固形化する技術に関しては、特許文献1に開示されているアルギン酸ナトリウムとカルシウム溶液の組合せ、寒天及びアルギン酸の組合せ(特許文献2)、カラギナン及びアルギン酸の組合せ(特許文献3)がすでに知られている。しかし、カルシウムイオンとアルギン酸アニオンの反応速度は非常に速いため、特許文献のいずれの組み合わせも急激なゲル化や粘度上昇を起こし、製品容器充填前に両者がタンクで混合されるような実際の製造ラインでの調製は困難であった。また、特許文献2に使用される寒天は、溶解時に高温加熱が必要である上、酸性条件下(特に高温)での劣化が顕著であり、経時的なゲル強度の低下、離水の増加が起こる。また特許文献3で使用されるカラギナンも寒天と同様に酸性条件下での安定性が低く、さらにカルシウム存在下では流動食中のタンパク質と凝集して沈殿を生じ、経口投与にも経管投与にも適した物性を付与することはできなかった。
また、濃厚流動食はpHを酸性側に調整することにより、等電点沈殿によりタンパク質の凝集・沈殿が顕著に発生する。更には、脂質が分離し均質なゲルとならない、離水が顕著に生じるなど、もはや咀嚼・嚥下困難者用の経口用・経管投与用ゲル状濃厚流動食として適用できるものではなかった。一方、アルギン酸ナトリウムを用いたゲル化食品が特許文献4〜5に開示されているが、特許文献4の技術はアルギン酸ナトリウムの酸性溶液及びカルシウム塩を組み合わせることを特徴とする技術であって、両溶液を混合した瞬間にゲルを形成するため、ゲル状酸性濃厚流動食を工業的に安定に製造することが困難であった。更に特許文献4には酸性濃厚流動食について一切開示されていない上に、アルギン酸ナトリウムを用いた際であっても、特定量のキレート剤及び特定のカルシウム塩を併用しなければ、酸性濃厚流動食をゲル化させること自体できなかった。
本発明は、かかる問題点に鑑み、pHが3〜4.6といった低pHを有する酸性濃厚流動食であっても均質にゲル化させることが可能な酸性濃厚流動食用ゲル化剤であって、食塊形成性が良く、付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した飲み込みやすいゲル状酸性濃厚流動食を調製可能なゲル化剤を提供することを目的とする。また、経管投与用のゲル状酸性濃厚流動食として適用した場合も、良好なチューブ流動性を有し、過度な負担なく注入可能であり、チューブへの付着も少なく、衛生面からも優れた咀嚼・嚥下困難者用ゲル状酸性濃厚流動食を調製可能なゲル化剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねていたところ、アルギン酸ナトリウム、中性の水に不溶又は難溶のカルシウム塩(以下、「中性水不溶・難溶性カルシウム塩」ともいう)及びキレート剤を併用し、アルギン酸1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を用いることにより、pHが3〜4.6といった酸性濃厚流動食であっても均質にゲルを形成させることが可能であり、更に食塊形成性があり、付着性が小さく、離水も少なく咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすいゲル状酸性濃厚流動食を提供できることを見出して本発明を完成した。更に、得られたゲル状酸性濃厚流動食は経管投与時のチューブ流動性にも優れ、過度な負担なく注入可能であり、チューブへの付着も少なく、衛生面からも優れた経管投与用ゲル状酸性濃厚流動食として極めて優れた機能を有していることを見出して本発明を完成した。
本発明は、以下の態様を有する酸性濃厚流動食用ゲル化剤及びゲル状酸性濃厚流動食に関する;
項1.アルギン酸ナトリウム、中性の水に不溶又は難溶のカルシウム塩及びキレート剤を含有し、アルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を用いることを特徴とする酸性濃厚流動食用ゲル化剤。
項2.中性の水に不溶又は難溶のカルシウム塩が、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三水素カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、焼成カルシウム、未焼成カルシウム及びそれらの水和物から選ばれる1種以上である項1に記載のゲル化剤。
項3.キレート剤が、リン酸塩、縮合リン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、グルコン酸塩及びクエン酸塩から選ばれる1種以上である項1又は2に記載のゲル化剤。
更に、本発明は、以下の態様を有するゲル状酸性濃厚流動食の製造方法及び該方法を用いて製造されたゲル状酸性濃厚流動食に関する;
項4.項1〜3のいずれかに記載の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を溶液状態で酸性濃厚流動食に添加することを特徴とする、ゲル状酸性濃厚流動食の製造方法。
項5.更に加熱殺菌を行なうことを特徴とする、項4に記載の常温流通可能なゲル状酸性濃厚流動食の製造方法。
項6.項4又は5に記載の方法にて製造されたゲル状酸性濃厚流動食。
項7.内径4mm、長さ300mmのチューブに、1mm/秒の速度で35mm押し込んだ際の荷重が60N以下であることを特徴とする、項6に記載のゲル状酸性濃厚流動食。
本発明により、pHが3〜4.6といった酸性濃厚流動食であっても均質にゲルを形成させることが可能であり、更に食塊形成性があり、付着性が小さく、離水も少なく、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすいゲル状酸性濃厚流動食を提供できる。更に、経管投与時のチューブ流動性にも優れ、過度な負担なく注入可能であり、チューブへの付着も少なく、衛生面からも優れた経管投与用ゲル状酸性濃厚流動食を提供できる。また、本発明のゲル化剤は、介護の現場で加熱の必要なく、酸性流動食と混合してゲル化させるという補助剤的な使い方だけでなく、工業的に製造される最終食品用のゲル化剤としても使用できる、高機能性のゲル化剤である。
本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤は、アルギン酸ナトリウム、中性の水に不溶又は難溶カルシウム塩及びキレート剤を含有し、アルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を併用することを特徴とする。
本発明で用いるアルギン酸ナトリウムは、食品添加物の増粘剤として使用されるもので、海藻から抽出した多糖類のアルギン酸のナトリウム塩である。性状は黄色味を帯びた粉末で、常温の水に溶解し、高粘性の液体となる。さらに二価の金属イオンとカチオン交換してゲルを形成する。アルギン酸はウロン酸から構成される直鎖状の酸性多糖類であり、β−D−マンヌロン酸(M)とα−L−グルロン酸のウロン酸(G)からなる1、4結合のブロック共重合体である。アルギン酸ナトリウムは冷水に溶解し、更にカルシウムなどの二価カチオンと容易にイオン交換してゲルを形成するが、M/G比によってゲル化特性が異なる。カルシウム存在下で、一般的にM/G比が高い(すなわちMリッチな)ほど、弾力性のある、しなやかな食感のゲルを形成し、M/G比が低い(すなわちGリッチな)ほど、硬くて、脆い食感のゲルを形成する。本発明で用いるアルギン酸ナトリウムは最終ゼリーとして求められる物性や食感に応じていずれのM/G比のものも使用することができるが、好ましくはM/G比が0.5〜1程度のものを好適に用いることができる。かかるアルギン酸ナトリウムは商業的に入手可能であり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルアップ[商標]J−4191」、「ゲルアップ[商標]J−4357」、及び「ゲルアップ[商標]J−4358」を挙げることができる。
本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤はアルギン酸ナトリウムを含有することを特徴とする。一方、アルギン酸ナトリウム自体を酸性濃厚流動食に添加した場合であっても、アルギン酸ナトリウムを単独で添加、もしくは中性の水に易溶性のカルシウム塩と併用して添加した際は、アルギン酸ナトリウムが濃厚流動食中のカルシウムイオンと急激に相互作用するため、部分的に不均一なゲルを形成し、均一なゲルを形成するのは困難である。同様にして中性水不溶・難溶性のカルシウム塩を用いた場合であっても、急激な粘度上昇や部分的に不均一なゲルを形成してしまい、均一なゲルを形成するのが困難である。本発明では、かかるアルギン酸ナトリウムに中性水不溶・難溶性カルシウム塩及びアルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を併用することによってはじめて咀嚼・嚥下困難者用ゲル状酸性濃厚流動食、特に経管投与用ゲル状酸性濃厚流動食として適した物性を濃厚流動食に付与できることを特徴とする。
本発明でいう中性水不溶・難溶性カルシウム塩とは、中性領域下で水に容易に溶解しないカルシウム塩を指し、pH5.0〜9.0で、水への溶解度が2000mg/100g水分中(20℃)より低いものであれば特に限定されず、通常、食品添加物として使用されているものを用いることができる。具体的には、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、焼成(うに殻、貝殻、骨、造礁サンゴ、乳性、卵殻)カルシウム、未焼成(貝殻、骨、サンゴ、真珠層、卵殻)カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸三水素カルシウム及びそれらの水和物から選ばれる1種以上から選択することができる。好ましくは、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム及びリン酸一水素カルシウムよりなる群から選ばれる1種以上である。該中性水不溶・難溶性カルシウム塩をゲル化剤中に含有することにより、ゲル化剤溶液と酸性濃厚流動食を混合し、pHが低下した際に、該中性水不溶・難溶性カルシウム塩から緩やかにカルシウムイオンが放出され、アルギン酸ナトリウムと徐々にカチオン交換して、均一なゲル構造を形成する。
ゲル化剤中の中性水不溶・難溶性カルシウム塩の添加量は用いられるカルシウム塩の種類やゲル状酸性濃厚流動食に求められる物性によって適宜調節することが可能であるが、好ましくはアルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.5質量部、更に好ましくは0.1〜0.3質量部である。
本発明では更にアルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部、好ましくは1
2質量部、更に好ましくは0.5〜1質量部のキレート剤を添加することを特徴とする。ここで、キレート剤の添加量が0.1質量部より少なくなると、ゲル化剤溶液と酸性濃厚流動食の混合時に、急激なゲル化、粘度上昇が起こり、均一なゲルの調製、容器への充填が困難になる。一方、キレート剤の添加量が2質量部より多くなると、カルシウムイオンを過剰にキレートするため、アルギン酸アニオンにカルシウムイオンが供給されず、ゲル化しない、あるいはゲル化に長時間を要する。本発明では上記特定量のキレート剤を添加することにより、酸性の濃厚流動食であってもゲル化させることができる。その上、調製されたゲル状酸性濃厚流動食は均一で、食塊形成性もよく、付着性が小さい上に離水も少なく、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすいゲル状酸性濃厚流動食となることを特徴とする。また、調製された酸性濃厚流動食は経管投与時のチューブ流動性にも優れ、過度な負担なく注入可能であり、チューブへの付着も少なく、衛生面からも優れた経管投与用ゲル状酸性濃厚流動食となる。
キレート剤としては、リン酸塩、縮合リン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、グルコン酸塩及びクエン酸塩から選ばれる1種以上を用いることができる。具体的にはリン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸三マグネシウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四カリウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸カルシウム、グルタミン酸マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸鉄、グルコン酸銅、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸鉄及びクエン酸鉄ナトリウムよりなる群より選ばれる1種以上を用いることができ、好ましくはクエン酸三ナトリウム及び/又はクエン酸三カリウムである。該キレート剤は、本発明のゲル化剤溶液と酸性濃厚流動食を混合した際に、カルシウムイオンを封鎖することで、アルギン酸ナトリウムのカチオン交換速度をコントロールし、均一なゲル構造を形成するために不可欠である。
本発明の対象となる濃厚流動食とは、一般に栄養剤(医薬品)・濃厚流動食(食品)などとよばれる、カロリー値が1kcal/mLの以上でタンパク質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなどの栄養成分を含むものである。酸性濃厚流動食のpHは酸性条件下であれば特に限定されないが、経管投与時の細菌汚染等のリスクを考慮してpHが3〜4.6、好ましくは3〜4、更に好ましくは3〜3.8の範囲に調整されていることが好ましい。
本発明の濃厚流動食のpHを酸性側に調整するために使用される酸としては、特に限定されず、食品に適用可能な無機酸又は有機酸並びにその塩類を用いることができる。例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、グルコン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコノデルタラクトン、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、氷酢酸、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸、L-酒石酸、DL-酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、フマル酸、リンゴ酸ナトリウム、メタリン酸塩類等を用いることができる。好ましくはクエン酸、グルコン酸、コハク酸、リンゴ酸、及び酒石酸、並びにこれらの塩類、グルコノデルタラクトンからなる群から選ばれる一種以上である。
本発明の酸性濃厚流動食は、pHが酸性側に保たれている点でレトルト殺菌といった過酷な殺菌工程を経ることなく、細菌汚染が少なく、衛生面でも優れた濃厚流動食である。また、従来のゲル状濃厚流動食は中性タイプのものが主流であり、添加する酸味料や果汁によって凝集を生じることがあり、味のバリエーションを付与することができない等の不具合があった。しかし、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を用いることにより、例えば果汁を含有したゲル状濃厚流動食やヨーグルト味のゲル状濃厚流動食など、バリエーションに富んだゲル状酸性濃厚流動食を提供することが可能となり、咀嚼・嚥下困難者や高齢者のQOL(Quality Of Life)の改善に貢献する。
以下、本発明で用いられる酸性濃厚流動食を構成する各成分につき詳述する。
タンパク質
本発明の酸性濃厚流動食を構成するタンパク質としては、従来から食品に汎用されているものであれば特に限定されず、各種タンパク質を用いることができる。具体的には、脱脂粉乳、脱脂豆乳粉末、カゼイン、ホエイタンパク質、全乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、及びこれらタンパク質の分解物等が挙げられる。これらタンパク質、特に乳タンパク質は酸性条件下で著しく凝集し、均質にゲルを形成することが困難である。タンパク質が凝集、沈殿を生じた場合は、外観上美しくないだけでなく、凝集したタンパク質により付着性が増大し、喫食時に喉にはりつく、経管投与時にチューブ内壁への残渣が増加するなどの問題点が生じる。しかし、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を用いることにより、乳タンパク質を含有する場合においても、またタンパク質含量が1〜15質量%、更には10質量%以上と高いタンパク質含量を有する濃厚流動食であっても、タンパク質の凝集や沈殿が抑制された、均質なゲル状酸性濃厚流動食を提供することが可能である。
脂質
本発明の酸性濃厚流動食を構成する脂質は、一般に食用として利用されている脂質であれば特に限定されず、各種脂質を用いることができる。具体的には、大豆油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、ヤシ油、シソ油、ゴマ油、アマニ油等の植物油や、イワシ油、タラ肝油等の魚油、必須脂肪酸源としての長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等を挙げることができ、好ましくは、通常炭素数が8〜10である中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)である。長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)に代わり、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)を用いることにより、脂質の吸収性が高まる一方で、調製されたゲル状酸性濃厚流動食の付着性が増大し、咀嚼・嚥下困難者が喫食した際に喉にはりつきやすい、経管投与時に使用されるチューブ内壁の残渣が増加する傾向が見られる。しかし、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を用いることにより、付着性が低減され、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすく、経管投与用に使用した際もチューブ内壁の残渣が少なく、品質の安定したゲル状酸性濃厚流動食の提供が可能となる。本発明の酸性濃厚流動食中の脂質の含有量としては、1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%である。
炭水化物
本発明の酸性濃厚流動食を構成する炭水化物として、一般に食用として利用されている各種糖質を用いることができる。具体的には、グルコース、フルクトース等の単糖類、マルトース、蔗糖等の二糖類等の通常の各種の糖類や、キシリトール、ソルビトール、グリセリン、エリスリトール等の糖アルコール類、デキストリン、シクロデキストリン等の多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース等のオリゴ糖類等が挙げられ、好ましくは、デキストリンを用いることができる。味覚に与える影響が糖質の中では低いためである。本発明の酸性濃厚流動食中の炭水化物の含有量としては、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%である。
ミネラル、ビタミン
本発明の酸性濃厚流動食では、一般に食用として利用されているものが使用できる。例えば、ミネラルであれば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等は食品添加物扱いの塩の形で添加することができる。ビタミンであれば、例えば、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、D、K、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又は葉酸等を使用することができる。濃厚流動食中のミネラル、ビタミンの量は「日本人の食事摂取基準[2005年度版]」に記載の推奨量、目安量、目標量又は上限量に従い適宜設定することが可能である。
上述のように、濃厚流動食はタンパク質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンを複合的に含有することからも、pHが3〜4.6といった酸性条件下でゲルを形成させることが困難である。しかし、本発明のゲル化剤を用いることにより、均質なゲルを形成できるだけでなく、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすい食塊形成性を有し、また経管投与時に優れたチューブ流動性を有するゲル状酸性濃厚流動食を提供することができる。また調製されたゲル状の酸性濃厚流動食は、液体の酸性濃厚流動食を添加する場合に比べて極めて短時間での経管投与が可能な上、投与した経管濃厚流動食が胃から逆流する胃食道逆流や瘻孔からの濃厚流動食の漏れも有意に抑制することが可能である。胃食道逆流を防止する方法としては、経管投与用の濃厚流動食に増粘多糖類を添加して粘度を付与する方法も用いられているが、粘度が付与された濃厚流動食は付着性が大きく、チューブ内壁に濃厚流動食の残渣が付着しやすく、また経管投与時に必要な荷重も大きく、注入時に過度な負担が生じるものであった。かかる点、ゲル状の酸性濃厚流動食は、チューブ注入時に過度な負担を生じることなく、短時間で栄養摂取が可能である点で極めて優れている。
本発明のゲル状酸性濃厚流動食の製造方法は、上記酸性濃厚流動食に、アルギン酸ナトリウム、中性水不溶・難溶性カルシウム塩及びキレート剤を含有し、アルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を用いた本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を添加することを特徴とする。
酸性濃厚流動食に対する本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤の添加量としては、対象の濃厚流動食の組成や求められる物性によっても適宜調整することが可能であるが、最終食品(ゲル状酸性濃厚流動食)中のアルギン酸ナトリウムの含有量が0.1〜1質量%、好ましくは0.1〜0.6質量%、更に好ましくは0.3〜0.6質量%、中性水不溶・難溶性カルシウム塩が0.01〜1質量%、好ましくは0.02〜0.5質量%、更に好ましくは0.05〜0.2質量%、キレート剤が0.01〜2質量%、好ましくは0.05〜2質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%となるよう添加することが好ましい。
本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤の添加方法としては、上記ゲル化剤が溶液の形態で酸性濃厚流動食に添加される以外は特に限定されず、各種添加方法を用いることができる。一例として下記方法を挙げることができる。(1)アルギン酸ナトリウム、中性水不溶・難溶性カルシウム塩及びキレート剤を常温もしくは加温した水に同時に溶解して調製した溶液を酸性濃厚流動食に添加する方法、(2)アルギン酸ナトリウム含有溶液、中性水不溶・難溶性カルシウム塩含有溶液、及びキレート剤含有溶液を各々調製しておき、キレート剤含有溶液を先に添加するか若しくは同時に酸性濃厚流動食に添加する方法、(3)キレート剤を溶解した酸性濃厚流動食に、アルギン酸ナトリウム、中性水不溶・難溶性カルシウム塩を常温もしくは加温した水に溶解して調製した溶液を添加する方法など、アルギン酸ナトリウム及び中性水不溶・難溶性カルシウム塩が、キレート剤よりも先に酸性の濃厚流動食に接触しなければ、添加方法はこれらに限定されない。
本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤は、常温の水に分散、溶解して使用することも可能であるが、好ましくは60〜90℃の温度範囲に調整された溶液として、酸性濃厚流動食に添加されることが好ましい。同時に酸性濃厚流動食の温度もゲル化剤溶液と同じ温度に調整されていることが好ましい。アルギン酸ナトリウムは常温の水にも溶解可能であるため、従来から即席ゲル化剤として有用に用いられてきたが、本発明ではあえて60〜90℃に加温した溶液状態で本発明のゲル化剤を用いることにより、酸性濃厚流動食であっても均質にゲルを形成し、更に咀嚼・嚥下困難者用食品として極めて優れた特性を有することを見出した。
本発明は、酸性濃厚流動食用ゲル化剤を溶液の形態で酸性濃厚流動食に添加することを特徴とするが、一方で、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を粉末の形態で酸性濃厚流動食に添加した際は、部分的にゲルを形成し、均質に酸性濃厚流動食をゲル化させることができない。かかる点、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤は、製剤の形態として粉末状、顆粒状、ペースト状、溶液状等の各種形態をとることが可能であるが、酸性濃厚流動食に添加する際には溶液状態で使用されることを特徴とする。従来、アルギン酸ナトリウムを用いて水やお茶等の液状食品をゲル化させる場合は、アルギン酸ナトリウムは粉末形態で添加されていたが、本発明は酸性濃厚流動食用ゲル化剤を溶液の形態で添加することにより成し得た発明である。なお、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤は、ゲル化対象を酸性濃厚流動食としているため、中性の濃厚流動食に添加した際には、ゲルを形成することができない。
本発明のゲル状酸性濃厚流動食は、本発明の酸性濃厚流動食用ゲル化剤を溶液の形態で酸性濃厚流動食に添加する以外は、常法に従って製造することができる。例えば本発明のゲル化剤が添加された酸性濃厚流動食は常温流通を可能とするため、容器に充填された後、もしくは充填直前に加熱殺菌処理を行う。本発明における加熱殺菌とは、pH3〜4.6といった酸性食品で通常行われる殺菌であり、容器充填後の殺菌であれば、60〜95℃で5〜60分間の常圧殺菌、容器充填前の殺菌であれば、120〜135℃で1〜3秒間といった超高温瞬間殺菌を適用できる。一方、pHが6.0〜7.5の中性タイプのゲル状濃厚流動食は、常温下での長期保存を可能とするため、105〜121℃で5〜60分間といったレトルト殺菌を行う必要があるが、レトルト殺菌により食塊形成性が低下する、付着性が増大する等の不具合を有していた。しかし、本発明で製造されるゲル状酸性濃厚流動食はpHが酸性側に調整されているため、レトルト殺菌工程が不要となり、咀嚼・嚥下困難者用食品として極めて優れた適性を有するゲル状の濃厚流動食を提供することが可能となった。更に、レトルト加熱による機能成分、栄養成分の損失も少ない。
上記の方法により製造されたゲル状酸性濃厚流動食は、従来の経管投与の他にも例えば胃瘻などを介した経胃・経腸投与にも使用することができ、シリンジを押し込む際の荷重が60N以下という弱い力であることが好ましい。尚、本研究におけるチューブ流動性の評価は、シリンジを介してゲル状酸性濃厚流動食を胃瘻用チューブに注入する際に、ピストンにかかる荷重値をテクスチャーアナライザーで検出する方法で行う。詳細には、ゲル状酸性濃厚流動食25mlを充填した50mlシリンジ(テルモ社製、テルモシリンジ カテーテルチップ型 ss−50Cz)の先端に胃瘻用シリコンチューブ(内径4mm、長さ300mm、)を接続する。これを、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製、TA−XZT2i)に垂直にセットし、治具(円柱状、直径50mm)にて1mm/秒の速度で35mm押込む。この際に検出された荷重の最大値が60N以下であれば、チューブ流動性に優れると判断する。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「質量部」、「%」は「質量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
実験例1 ゲル状酸性濃厚流動食の調製(1)
表1に示す割合の栄養成分を配合して、熱量2.0kcal/gの液状の酸性濃厚流動食を調製した。まず水に大豆多糖類を添加し、室温で10分間撹拌を行った。さらに乳タンパク、および乳化剤を添加後、加温を開始し、さらに炭水化物(デキストリン、砂糖)を添加して80℃で10分間撹拌を行った。その調製液にあらかじめ80℃に加温しておいた油脂を加え、3分間撹拌を行った。そこにミネラル酵母、ビタミンミックス、塩類、および甘味料を添加し、さらに1分間撹拌した後、20℃に冷却した。あらかじめ水に加熱溶解した後、20℃に冷却した酸性メタリン酸Na溶液を添加し、pH3.8に調整した。これを再度75℃に加温した後、香料を添加し、均質化(14,700kPa)した。これを酸性濃厚流動食Aとした。
Figure 0005026347
表2に示す組成により、酸性濃厚流動食Aおよびゲル化剤を使用してゲル状酸性濃厚流動食(1.0kcal/g)を調製した。詳細には、水にゲル化剤を添加し、80℃に加温し10分間撹拌した。そこにあらかじめ80℃に加温しておいた酸性濃厚流動食Aを添加し、1分間撹拌した。耐熱性の容器に充填し、一旦冷却した後、85℃湯中で30分間加熱殺菌処理を行った。その後冷却し、実施例1〜3および比較例1〜5のゲル状酸性濃厚流動食を得た。一方、水にて1/2に希釈した酸性濃厚流動食Aを80℃に加温しておき、そこに実施例1のゲル化剤を粉末状態で添加して比較例6のゲル状酸性濃厚流動食を、80℃に加温しておいた市販の中性濃厚流動食(pH7.0、2.0kcal/ml、タンパク質7.3%、脂質7.5%、炭水化物26%)に実施例1のゲル化剤を溶液状態で添加して比較例7のゲル状濃厚流動食を調製した(中性)。
Figure 0005026347
実施例1〜3及び比較例1〜7について、ゲル化の可否、及びゲル化したものに関しては、食塊形成性、離水および付着性を官能評価した。結果を表3に示す。なお表3の評価は以下の基準に従った。
(ゲル化):ゲル化したものは○、ゲル化しなかったものは×とした。
(充填時の状態):充填時に液状のものは○、ゲル化・高粘度化したものは×とした。
(殺菌後の凝集):殺菌後に均一なゲルのものは○、凝集・分離したものは×とした。
以下は、上記3項目でともに○のもののみ評価した。
(離水):胃瘻用チューブを通過させた後、試料から生じる離水の少ないものから順に(少ない)−<±<+<++<+++(多い)の5段階で評価した。
Figure 0005026347
アルギン酸ナトリウム、中性水不溶・難溶性カルシウム塩及びキレート剤を含有し、アルギン酸1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を用いたゲル化剤を使用した実施例1〜3のゲル状酸性濃厚流動食は、容器充填がスムーズにおこなえる液状であり、均質なゲルを形成し、加熱殺菌後の荒れも見られなかった。一方、アルギン酸ナトリウム、中性水不溶・難溶性カルシウム塩及びキレート剤を併用した場合においても、キレート剤の添加量がアルギン酸1質量部に対し0.1質量部を下回る場合は、充填中にゲル化を開始してしまうため、充填しづらく、ゲル内部に多くの気泡が残り、さらには容器の壁にゲル化したものが多く付着し、歩留まりも悪かった(比較例1)。またキレート剤の添加量がアルギン酸1質量部に対し3質量部と多い場合は、酸性濃厚流動食をゲル化することすらできなかった(比較例2)。アルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部の範囲内のキレート剤を用いた場合であっても中性水不溶・難溶性カルシウム塩の代わりに可溶性カルシウム塩を用いた際は、ゲル化剤溶液と酸性濃厚流動食を混合した瞬間にゲル化反応を起こし、充填時にはクラッシュゲル状となり、均一なゲルを形成しなかった(比較例3)。カラギナン及びアルギン酸ナトリウムを併用した比較例5のゲル状酸性濃厚流動食は、酸性濃厚流動食と混合した瞬間に、細かな粒状のゲルを形成し、加熱殺菌によって激しく凝集した。実施例1の組成物を酸性濃厚流動食に直接溶解した比較例6は、添加と同時に部分的にゲルが形成され、均一なゲルを形成せず、粘度上昇のため充填しづらかった。さらに実施例1の組成物を、溶液状態で中性濃厚流動食に添加して調製した比較例7は、ゲルを形成しなかった。また、寒天及びアルギン酸ナトリウムを使用した比較例4のゲル状酸性濃厚流動食は、酸性濃厚流動食との混合時の粘度上昇が見られたが、充填に支障をきたすほどではなく、均一なゲルが得られた。しかし、実施例1〜3および比較例4のゲル状酸性濃厚流動食を喫食して比較したところ、実施例1〜3は食塊形成性が良く、喉にはりつくことなく飲み込みやすい物性であり、離水もほとんどもなく、経口投与用のゲル状酸性濃厚流動食として優れていたのに対し、比較例4はやや食塊性に劣り、離水がかなり多かった。さらに実施例1〜3および比較例4のゲル状酸性濃厚流動食を、経管投与に使用される胃瘻用シリコンチューブ(内径4mm、長さ300mm)を接続した50mlシリンジ(テルモ社製、テルモシリンジ カテーテルチップ型 ss−50Cz)に25ml充填し、1mm/秒の速度で35mm押し込んだ。注入した際のチューブ流動性を評価し、比較したところ、実施例1〜3は60N以上の高い荷重を要することなく、優れた流動性を有し、チューブ内壁への付着も少なく、経管投与用のゲル状酸性濃厚流動食としても優れた物性を有していたのに対し、比較例4は付着は少なく、優れたチューブ流動性を示すものの、経胃投与時の胃食道逆流の原因となりうる離水が多量に生じ、特にチューブ通過後には大幅な離水の増加が見られたため、経管投与用には適さないと判断された。
実験例2 ゲル状酸性濃厚流動食の調製(2)
実験例1で使用した酸性濃厚流動食A及び各種ゲル化剤を用いて、ゲル状酸性濃厚流動食を調製した。詳細には、常温(25℃)の水に表4に示すゲル化剤を添加し、攪拌した。そこに実験例1で調製した酸性濃厚流動食A(25℃)を添加し、1分間攪拌した。耐熱性の容器に充填し、一旦冷却した後、85℃湯浴中で30分間加熱殺菌処理を行った。その後冷却し、実施例4及び比較例8〜9のゲル状酸性濃厚流動食を調製した。
Figure 0005026347
実施例4のゲル状酸性濃厚流動食は、調製過程での若干の粘度上昇こそみられたものの、均一なゲルが得られた。更に実施例4のゲル状酸性濃厚流動食は、実施例1〜3同様に良好な食塊形成性を有し、付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすい食感であり、離水もほとんどなかった。一方、比較例8、9のゲル状酸性濃厚流動食は、ゲル化剤溶液と酸性濃厚流動食の混合時に部分的に不均一なゲルを形成し、急激に粘度が上昇し、さらには加熱殺菌により激しく凝集した。
実験例3 ゲル状酸性濃厚流動食のチューブ流動性
実験例1の実施例1〜3のゲル状酸性濃厚流動食について、チューブ流動性を評価した。評価方法は、ゲル状酸性濃厚流動食25mlを充填した50mlシリンジ(テルモ社製、テルモシリンジ カテーテルチップ型 ss−50Cz)の先端に胃瘻用シリコンチューブ(内径4mm、長さ300mm、)を接続する。これを、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製、TA−XZT2i)に垂直にセットし、治具(円柱状、直径50mm)にて1mm/秒の速度で35mm押込む。この際に検出された荷重の最大値が60N以下であれば、チューブ流動性に優れると判断する。結果を表5に示す。
Figure 0005026347
実施例1〜3のゲル状酸性濃厚流動食を、胃瘻用チューブに注入する際の荷重の最大値は、いずれも60N以下であり、介護者が容易に注入可能な物性を備えていた。また、チューブへの残渣はほとんどなかった。
長期保存に優れた酸性のゲル状濃厚流動食を提供できる。調製されたゲル状の酸性濃厚流動食は均質であり、良好な食塊形成性を有し、付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適したゲル状酸性濃厚流動食である。更に、調製されたゲル状酸性濃厚流動食は良好なチューブ流動性を有し、また経管投与後のチューブ残渣が少ないため、経管投与時に介護者が過度の負担なく短時間で注入可能であり、胃食道逆流や瘻孔からの濃厚流動食の漏れを防止することが可能である。また、アルギン酸ナトリウムを使用してゲル状食品を製造する際に問題となる急激なゲル化、粘度上昇による食感の不均一化、歩留まりの低下などの課題も解決できる。

Claims (2)

  1. アルギン酸ナトリウム、中性の水の不溶又は難溶のカルシウム塩及びキレート剤を含有し、アルギン酸ナトリウム1質量部に対し0.1〜2質量部のキレート剤を用いることを特徴とする酸性濃厚流動食用ゲル化剤を、溶液状態で酸性濃厚流動食に添加することを特徴とする、ゲル状酸性濃厚流動食の製造方法。
  2. 更に加熱殺菌を行うことを特徴とする、請求項に記載の常温流通可能なゲル状酸性濃厚流動食の製造方法。

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