JP2011101614A - 濃厚流動食用ゲル化剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】タンパク質、炭水化物、脂質等を複合的に含む濃厚流動食であっても顕著に離水が抑制されたゲル状濃厚流動食であって、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を提供する。
【解決手段】濃厚流動食用ゲル化剤として、グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用したゲル化剤を使用する。
【選択図】図1
【解決手段】濃厚流動食用ゲル化剤として、グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用したゲル化剤を使用する。
【選択図】図1
Description
本発明は、濃厚流動食向けのゲル化剤に関する。詳細には、タンパク質、炭水化物、脂質等を複合的に含む濃厚流動食であっても、咀嚼・嚥下困難者の喫食に適した飲み込みやすい物性に調製可能な、濃厚流動食用ゲル化剤に関する。更に、本発明は離水が顕著に抑制されたゲル状濃厚流動食に関する。
濃厚流動食には、体に必要な各種の栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミン、水分等)が十分量バランスよく配合されており、食物の咀嚼・嚥下が困難な患者向け食品の他、高齢者に必要な栄養素を効率的に摂取できる栄養食として広く使用されている。濃厚流動食は、咀嚼・嚥下困難者への経口摂取を目的として、ゲル化剤を用いて以下に係る物性を付与することが試みられている。1)適度なかたさを有すること、2)食塊形成性(口中での食品のまとまりやすさ)に優れること、3)口腔及び咽頭への付着性が小さいこと、及び4)保水性が高いこと(離水が少ないこと)。
また、食物の経口摂取が困難である患者には、胃に手術的または内視鏡的に外瘻(瘻孔)を造設して留置したチューブを介して、濃厚流動食(経腸栄養剤)などの栄養を持続的に投与する胃瘻経管栄養法等が用いられる。当該胃瘻経管栄養法の場合も、胃に投与した経腸栄養剤の食道への逆流防止や、瘻孔からの経腸栄養剤の漏れを防止するために、濃厚流動食(経腸栄養剤)をゲル化させる試みが行われている。
例えば、特許文献1には、カラギナンとローカストビーンガム及びコンニャクイモ抽出物の混合物とからなる液体栄養食品用ゲル化剤を用いて、経管栄養食や濃厚流動食などの液体栄養食品をゲル化させる技術が、特許文献2には、寒天、キサンタンガム及びイオタタイプのカラギナンを含有するゲル状流動食が開示されている。しかし、特許文献1に記載の液体栄養食品用ゲル化剤は液状であるため必要カロリー数を摂取しようとすると必然的に食さなければならない量が増加する。高齢者は少食になる傾向にあるため、食べさせる量は極力少なくすることが望ましいが、例えば、特許文献1に記載の液状タイプのゲル化剤は、液体栄養食品100mLに25mLの添加が必要であり、必然的に多くの量を食さなければならいといった課題を抱えていた。一方、特許文献2に記載のゲル状流動食においては、加熱(60℃)の必要性があり、調理器具が必要となる、加熱時に火傷の恐れがある等、汎用性に優れない。
一方、特許文献3には、製品100g当たりカロリーが100kcal以上、並びにタンパク質が5g以上であって、ニガリ含有豆乳及び/またはペースト状豆腐と、キサンタンガム及びローカストビーンガムを配合することを特徴とする高栄養ゼリー状食品が開示されており、ニガリの一種としてグルコノデルタラクトンが開示されている。しかし、特許文献3には濃厚流動食について何ら記載がない上、グルコノデルタラクトンはニガリの一種として開示されているに過ぎず、特定の多糖類とグルコノデルタラクトンを併用して濃厚流動食用のゲル化剤として用いることについて何ら開示されていない。
濃厚流動食は、体に必要な各種栄養素が十分量バランスよく配合されており、必要な栄養素を効率的に摂取できる栄養剤として利便性、汎用性が高い一方、タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミン、水分等の各種栄養素を複合的に含むため、ゲルを形成しにくい傾向があるといった課題を抱えていた。また、形成されたゲルも保型性が不十分であったり、食塊形成性(まとまり感)が不十分である等、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性に濃厚流動食をゲル化させることは極めて困難であり、特に従来のゲル状濃厚流動食は離水の発生が顕著であった。咀嚼・嚥下困難者は咽頭の筋力等の衰えから飲食品を飲み込む力が衰えているため、咽頭を通過する速度が速い液体などは肺等の食道以外の気管に誤って送り込まれてしまう、いわゆる誤嚥を生じやすく、離水の発生は咀嚼・嚥下困難者用食品として好ましくなく、重要な課題とされてきた。
かかる従来技術の問題点に鑑み、本発明は、離水が顕著に抑制されたゲル状濃厚流動食を提供できる濃厚流動食用のゲル化剤であって、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を調製できる濃厚流動食用のゲル化剤を提供することを目的とする。
このような状況に鑑み、本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用したゲル化剤を使用することにより、栄養素を複合的に含む濃厚流動食であっても、顕著に離水の発生を抑制でき、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を調製できることを見出して本発明を完成した。
即ち、本発明は下記項1〜3に挙げる濃厚流動食用ゲル化剤及び、当該ゲル化剤を用いて調製されたゲル状濃厚流動食に関する;
即ち、本発明は下記項1〜3に挙げる濃厚流動食用ゲル化剤及び、当該ゲル化剤を用いて調製されたゲル状濃厚流動食に関する;
項1.グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを含有する濃厚流動食用ゲル化剤。
項2.グルコノデルタラクトン1質量部に対し、カラギナン及び/又はキサンタンガムを0.1〜10質量部含有する、項1に記載の濃厚流動食用ゲル化剤。
項3.項1又は2に記載の濃厚流動食用ゲル化剤を含有した、ゲル状濃厚流動食。
項2.グルコノデルタラクトン1質量部に対し、カラギナン及び/又はキサンタンガムを0.1〜10質量部含有する、項1に記載の濃厚流動食用ゲル化剤。
項3.項1又は2に記載の濃厚流動食用ゲル化剤を含有した、ゲル状濃厚流動食。
本発明のゲル化剤によれば、栄養素を複合的に含む濃厚流動食であっても、顕著に離水の発生を抑制でき、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を調製することができる。
本発明の濃厚流動食用ゲル化剤は、グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用することを特徴とする。
本発明で使用するグルコノデルタラクトンは、グルコースの1位のヒドロキシ基がケトンに置き換わった、代表的なラクトンの一種であり、豆腐の凝固剤や水産練り製品の保存料、パンやケーキの膨張剤の助剤などに使用されている。本発明ではかかるグルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用することにより、顕著に離水の発生が防止され、また、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を提供できることを特徴とする。なお、グルコノデルタラクトンと同様にして豆腐の凝固剤として知られている塩化マグネシウム等を使用した場合は不均一なゲルを形成し、また、保形性がなく、口腔内でまとまりのない食感(食塊がバラツク)となってしまい目的とするゲル状濃厚流動食を提供することはできなかった。
本発明で使用するグルコノデルタラクトンは、グルコースの1位のヒドロキシ基がケトンに置き換わった、代表的なラクトンの一種であり、豆腐の凝固剤や水産練り製品の保存料、パンやケーキの膨張剤の助剤などに使用されている。本発明ではかかるグルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用することにより、顕著に離水の発生が防止され、また、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を提供できることを特徴とする。なお、グルコノデルタラクトンと同様にして豆腐の凝固剤として知られている塩化マグネシウム等を使用した場合は不均一なゲルを形成し、また、保形性がなく、口腔内でまとまりのない食感(食塊がバラツク)となってしまい目的とするゲル状濃厚流動食を提供することはできなかった。
本発明で使用するカラギナンは、紅藻類海藻から抽出、精製される天然高分子で、分子量は100,000〜500,000であり、ガラクトースと、3,6アンヒドロガラクトースから構成される多糖類である。一般的にカラギナンとして市販されているものは、イオタ(ι)タイプ、カッパ(κ)タイプ、ラムダ(λ)タイプのものがあり、ゲル化剤や増粘用途といった、種々の用途に応じて適宜タイプのカラギナンが使用され得る。
本発明では、好適にはラムダカラギナン及び、以下に説明する分子の一部がイオタカラギナンで置換されたカッパカラギナン(κ2カラギナン)を使用することができる。
本発明では、好適にはラムダカラギナン及び、以下に説明する分子の一部がイオタカラギナンで置換されたカッパカラギナン(κ2カラギナン)を使用することができる。
本発明で使用する分子の一部がイオタカラギナンで置換されたカッパカラギナンは、カッパカラギナンの分子構造中にイオタカラギナンの構造を一部有する、すなわちカッパカラギナンとイオタカラギナンがハイブリッド化していることを特徴とするカラギナンである。即ち、カッパカラギナンの構造である、4-O-Sulfato-β-D-galactopyranosyl unitと3,6-Anhydro-α-galactopyranosyl unitからなる高分子ユニットがイオタカラギナンの構造である、4-O-Sulfato-β-D-galactopyranosyl unitと3,6-Anhydro-2-O-Sulfato-α-galactopyranosyl unitで置換されたカラギナンである。当該分子の一部がイオタカラギナンで置換されたカッパカラギナンは、「κ2カラギナン」と呼ばれることもあり、以下、本発明において当該カラギナンを「κ2カラギナン」という。置換の程度としては、カッパカラギナンの構造がイオタカラギナンで部分的に置換されておればよく、その置換率は1〜80%程度、好ましくは10〜40%を挙げることができる。
本発明で使用するキサンタンガムは、微生物が産生する発酵多糖類であり、β−1,4−D−グルカンの主鎖骨格に、D−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したアニオン性の多糖類である。主鎖に結合したD−マンノースのC6位はアセチル化されている場合がある。また、末端のD−マンノースはピルビン酸とアセタールで結合している場合がある。商業的に入手可能なキサンタンガム製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンエース[商標](標準品)、「サンエース[商標]S(微粒品)」、「サンエース[商標]E−S(顆粒品)」、「サンエース[商標]C(透明品)」、「ビストップ[商標]D−3000−DF−C」などを挙げることができる。
本発明の濃厚流動食用ゲル化剤は、グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用することを特徴とし、グルコノデルタラクトン単独で濃厚流動食のゲル化を試みた場合は、十分な保型性を付与するのに数時間といった時間を要し、食塊形成性(まとまり感)も不十分な上、得られたゲル状濃厚流動食の付着性が強く、咀嚼・嚥下困難者用食品として適した物性を付与することはできない。更には、顕著に離水が発生してしまう。
一方、キサンタンガムは主として水やお茶といった液状食品に粘度を付与するために使用される増粘剤であるため、単独で濃厚流動食に使用しても十分にゲル化させることは困難であり、カラギナン単独においても充分に濃厚流動食を単独でゲル化させることは困難である。特に、本発明で好適に使用可能なラムダカラギナン及びκ2カラギナンは濃厚流動食に対する添加量を増加させた場合であっても濃厚流動食をゲル化させることはできない。
以上のように、いずれも単独使用では濃厚流動食のゲル化剤として適した物性を有するものではなかったが、本発明では当該グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用することにより、意外にも調製されたゲル状濃厚流動食の離水の発生を顕著に抑制することができる上、咀嚼・嚥下困難者用食品や胃瘻による経管投与向けゲル状濃厚流動食として適した物性を付与できることを見出して至った発明である。
一方、キサンタンガムは主として水やお茶といった液状食品に粘度を付与するために使用される増粘剤であるため、単独で濃厚流動食に使用しても十分にゲル化させることは困難であり、カラギナン単独においても充分に濃厚流動食を単独でゲル化させることは困難である。特に、本発明で好適に使用可能なラムダカラギナン及びκ2カラギナンは濃厚流動食に対する添加量を増加させた場合であっても濃厚流動食をゲル化させることはできない。
以上のように、いずれも単独使用では濃厚流動食のゲル化剤として適した物性を有するものではなかったが、本発明では当該グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを併用することにより、意外にも調製されたゲル状濃厚流動食の離水の発生を顕著に抑制することができる上、咀嚼・嚥下困難者用食品や胃瘻による経管投与向けゲル状濃厚流動食として適した物性を付与できることを見出して至った発明である。
グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムの併用割合は、対象とする濃厚流動食や目的とするかたさ等によっても適宜調整することが可能であるが、具体的には、グルコノデルタラクトン1質量部に対し、カラギナン及び/又はキサンタンガムを0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部を例示することができる。
その他、本発明のゲル化剤は、本発明の効果を妨げない範囲において、デキストリン等の賦形剤や、増粘多糖類、乳化剤、香料、着色料、甘味料等を添加することができる。
本発明のゲル化剤は、固形状(粉末品や顆粒品)として提供できる。そのため、液状ゲル化剤のようにゲル状濃厚流動食の嵩が増大し、カロリー数摂取のために必然的に食さなければならない量が増えてしまうといった問題もない。更に、本発明のゲル化剤はゲル状濃厚流動食の調製時に加熱や冷却を必要とすることもなく、液状の濃厚流動食に本発明のゲル化剤を添加、撹拌し、室温で30〜90分程度静置することにより、目的とするゲル状濃厚流動食を提供することができる。
本発明のゲル化剤が対象とする濃厚流動食は、カロリー値が1kcal/mL以上で栄養成分として、タンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミンなどを含むものをいい、本発明でいう濃厚流動食には、胃瘻に用いられる濃厚流動食(一般的に、胃瘻用に用いられる濃厚流動食を経腸栄養剤という)も含む。以下、本発明で用いられる濃厚流動食を構成する各成分につき詳述する。
タンパク質
本発明の濃厚流動食を構成するタンパク質としては、従来から食品に汎用されているものであれば特に限定されず、各種タンパク質を用いることができる。具体的には、脱脂粉乳、脱脂豆乳粉末、カゼイン、ホエイタンパク質、全乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、及びこれらタンパク質の分解物等が挙げられる。本発明の濃厚流動食中のタンパク質含有量としては、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。本発明では、好ましくは脱脂粉乳、脱脂豆乳粉末、カゼイン、ホエイタンパク質、全乳タンパク質等の乳タンパク質を使用することができ、乳タンパク質を使用した場合であっても顕著に離水が抑制されたゲル状食品を提供することができる。
本発明の濃厚流動食を構成するタンパク質としては、従来から食品に汎用されているものであれば特に限定されず、各種タンパク質を用いることができる。具体的には、脱脂粉乳、脱脂豆乳粉末、カゼイン、ホエイタンパク質、全乳タンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質、及びこれらタンパク質の分解物等が挙げられる。本発明の濃厚流動食中のタンパク質含有量としては、1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%である。本発明では、好ましくは脱脂粉乳、脱脂豆乳粉末、カゼイン、ホエイタンパク質、全乳タンパク質等の乳タンパク質を使用することができ、乳タンパク質を使用した場合であっても顕著に離水が抑制されたゲル状食品を提供することができる。
炭水化物
本発明の濃厚流動食を構成する炭水化物として、一般に食用として利用されている各種糖質を用いることができる。具体的には、グルコース、フルクトース等の単糖類、マルトース、蔗糖等の二糖類等の通常の各種の糖類や、キシリトール、ソルビトール、グリセリン、エリスリトール等の糖アルコール類、デキストリン、シクロデキストリン等の多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース等のオリゴ糖類等が挙げられ、好ましくは、デキストリンを用いることができる。味覚に与える影響が糖質の中では低いためである。本発明の濃厚流動食中の炭水化物の含有量としては、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%である。
本発明の濃厚流動食を構成する炭水化物として、一般に食用として利用されている各種糖質を用いることができる。具体的には、グルコース、フルクトース等の単糖類、マルトース、蔗糖等の二糖類等の通常の各種の糖類や、キシリトール、ソルビトール、グリセリン、エリスリトール等の糖アルコール類、デキストリン、シクロデキストリン等の多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクトスクロース等のオリゴ糖類等が挙げられ、好ましくは、デキストリンを用いることができる。味覚に与える影響が糖質の中では低いためである。本発明の濃厚流動食中の炭水化物の含有量としては、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%である。
脂質
本発明の濃厚流動食を構成する脂質は、一般に食用として利用されている脂質であれば特に限定されず、各種脂質を用いることができる。具体的には、大豆油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、ヤシ油、シソ油、ゴマ油、アマニ油等の植物油や、イワシ油、タラ肝油等の魚油、必須脂肪酸源としての長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等を挙げることができ、好ましくは、通常炭素数が8〜10である中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)である。本発明の濃厚流動食中の脂質の含有量としては、1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%である。
本発明の濃厚流動食を構成する脂質は、一般に食用として利用されている脂質であれば特に限定されず、各種脂質を用いることができる。具体的には、大豆油、綿実油、サフラワー油、コーン油、米油、ヤシ油、シソ油、ゴマ油、アマニ油等の植物油や、イワシ油、タラ肝油等の魚油、必須脂肪酸源としての長鎖脂肪酸トリグリセリド(LCT)、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等を挙げることができ、好ましくは、通常炭素数が8〜10である中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)である。本発明の濃厚流動食中の脂質の含有量としては、1〜20質量%、好ましくは5〜10質量%である。
ミネラル、ビタミン
本発明の濃厚流動食では、一般に食用として利用されているものが使用できる。例えば、ミネラルであれば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等は食品添加物扱いの塩の形で添加することができる。ビタミンであれば、例えば、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、D、K、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又は葉酸等を使用することができる。濃厚流動食中のミネラル、ビタミンの量は「日本人の食事摂取基準[2005年度版]」に記載の推奨量、目安量、目標量又は上限量に従い適宜設定することが可能である。
本発明の濃厚流動食では、一般に食用として利用されているものが使用できる。例えば、ミネラルであれば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等は食品添加物扱いの塩の形で添加することができる。ビタミンであれば、例えば、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、D、K、ナイアシン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、又は葉酸等を使用することができる。濃厚流動食中のミネラル、ビタミンの量は「日本人の食事摂取基準[2005年度版]」に記載の推奨量、目安量、目標量又は上限量に従い適宜設定することが可能である。
上述のように、濃厚流動食はタンパク質、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミンを複合的に含有することからも、調製されたゲル状濃厚流動食の離水の発生を抑制することが困難であったが、本発明のゲル化剤を用いることにより、顕著に離水が抑制されたゲル状濃厚流動食を調製することができる。
更に、本発明のゲル化剤によって調製されたゲル状濃厚流動食は、特に咀嚼・嚥下困難者用の喫食並びに胃瘻による経管投与に使用するゲル状濃厚流動食として適している。咀嚼・嚥下困難者は咽頭の筋力等の衰えから飲食品を飲み込む力が衰えてしまっているが、本発明のゲル状濃厚流動食は、適度なかたさと良好な食塊形成性(口中での食品のまとまりやすさ)を有するため、咀嚼・嚥下困難者であっても喫食しやすい物性となっている。また、胃瘻は胃に造設した瘻孔に通したチューブを介して経腸栄養剤(濃厚流動食)を投与するが、本発明の濃厚流動食はゲル状を呈しているため、チューブ注入時に過度な負担なく注入することが可能であり、また胃から再度食道へ液体が逆流する胃食道逆流を起こしにくいといった利点を有する。また、本発明のゲル状濃厚流動食は口腔及び咽頭への付着性(へばりつき)も小さく、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすい物性を有しており、当該付着性の小ささは、胃瘻による経管投与時にチューブ内壁に残る濃厚流動食の残渣も減少させ得る。
加えて、本発明のゲル状濃厚流動食は、顕著に離水の発生が抑制されていることを最大の特徴とする。咀嚼・嚥下困難者は咽頭の筋力等の衰えから飲食品を飲み込む力が衰えているため、咽頭を通過する速度が速い液体などは肺等の食道以外の気管に誤って送り込まれてしまう、いわゆる誤嚥を生じやすい。そのため、ゲル状濃厚流動食から発生する離水は誤嚥の原因となりやすく、離水の抑制は重要な課題となっている。かかる点、本発明では当該離水が顕著に抑制されたゲル状濃厚流動食を提供することが可能である。
本発明の濃厚流動食用ゲル化剤の濃厚流動食への添加量は、濃厚流動食の種類や求められる物性によって適宜調整することが可能であるが、例えば、濃厚流動食に対し、グルコノデルタラクトンの添加量が0.5〜2質量%、好ましくは0.75〜1.5質量%となるように添加することが好ましい。グルコノデルタラクトンの添加量が0.5質量%未満だと充分にゲル化せず、また、2質量%を超えると味への影響が大きいためである。また、濃厚流動食に対する、カラギナン及び/又はキサンタンガムの添加量が0.1〜3質量%、好ましくは0.4〜2質量%となるように添加することが好ましい。カラギナン及び/又はキサンタンガムの添加量が0.1質量%より少ないと充分な効果を発揮することができず、3質量%より多くなってしまうと、固形状のゲル化剤を濃厚流動食に添加した際にダマを生じやすくなる、また、粘りのある食感となってしまう等、食感に与える影響が大きいためである。
以下に、実験例及び実施例を用いて本発明を更に詳しく説明する。ただし、これらの例は本発明を制限するものではない。なお、実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
実験例1:ゲル状濃厚流動食の調製(1)
表1に示すゲル化剤を用いてゲル状濃厚流動食を調製した。詳細には、市販の濃厚流動食A100mLに表1に示す各種ゲル化剤を添加後、スパーテルで4回転/secで30秒間撹拌した。次いで直径40mm、高さ15mmの容器に充填し、常温にて1時間静置することにより、ゲル状濃厚流動食を調製した。
表1に示すゲル化剤を用いてゲル状濃厚流動食を調製した。詳細には、市販の濃厚流動食A100mLに表1に示す各種ゲル化剤を添加後、スパーテルで4回転/secで30秒間撹拌した。次いで直径40mm、高さ15mmの容器に充填し、常温にて1時間静置することにより、ゲル状濃厚流動食を調製した。
市販濃厚流動食A
栄養組成(100mL当り):エネルギー200kcal、タンパク質(乳タンパク質)6.8g、炭水化物27.9g、脂質6.6g、ビタミン約45mg、ミネラル約530mg
栄養組成(100mL当り):エネルギー200kcal、タンパク質(乳タンパク質)6.8g、炭水化物27.9g、脂質6.6g、ビタミン約45mg、ミネラル約530mg
注1)扶桑化学株式会社製「フジグルコン」(粉末品)を使用した。
注2)「サンサポート※SX-3」*(顆粒品:κ2カラギナン25.5%及びキサンタンガム8.8%含有製剤)を使用した。
注2)「サンサポート※SX-3」*(顆粒品:κ2カラギナン25.5%及びキサンタンガム8.8%含有製剤)を使用した。
得られた濃厚流動食につき、各種物性を評価した。結果を表2〜3及び図1〜2に示す。
かたさ:静置後、1時間経過時及び3時間経過時のかたさを測定した。詳細には直径 20mm、高さ8mmのプランジャーを使用し、押し込み速度10mm/secにて10mm押し込 み、テクスチャープロファイル分析(TPA)によりかたさを測定した。
かたさ:静置後、1時間経過時及び3時間経過時のかたさを測定した。詳細には直径 20mm、高さ8mmのプランジャーを使用し、押し込み速度10mm/secにて10mm押し込 み、テクスチャープロファイル分析(TPA)によりかたさを測定した。
付着性は、静置後1時間ではグルコノデルタラクトン単独区(比較例1)がゲルを形成しなかったため、実施例1及び比較例1共に、静置後3時間経過後の付着性を測定した。
付着性:かたさと同様にして、直径20mm、高さ8mmのプランジャーを使用し、押し込み速 度10mm/secで10mm押し込み、高さ45mmまで引き上げた後、再度押し込み、テクス チャープロファイル分析(TPA)により付着性を測定した。数値が大きい程、付 着性が大きいことを示す。
付着性:かたさと同様にして、直径20mm、高さ8mmのプランジャーを使用し、押し込み速 度10mm/secで10mm押し込み、高さ45mmまで引き上げた後、再度押し込み、テクス チャープロファイル分析(TPA)により付着性を測定した。数値が大きい程、付 着性が大きいことを示す。
離水 :静置後3時間が経過したゲル状濃厚流動食を16分割して紙皿に載せ、更に1時間 室温で静置後の状態を観察した。観察後の各ゲル状濃厚流動食の重量を測定した 後、出た水分をふき取り、再度重量を測定することにより、離水率を求めた。
離水率(%)=(水分拭き取り前(g)−水分拭き取り後(g))/(水分拭き取り前(g))
表2、表3より、グルコノデルタラクトン単独区では、1時間経過後ではゲルを形成しなかったにも関わらず(比較例1)、グルコノデルタラクトン及びκ2カラギナンを併用することにより、1時間経過後にゲルを形成することが可能となった(実施例1)。κ2カラギナン及びキサンタンガム含有製剤をグルコノデルタラクトンと併用しなかった場合は、3時間経過後も濃厚流動食をゲル化させることができず、また、κ2カラギナン及びキサンタンガム含有製剤の添加量を2.5質量%まで増加させた場合であっても濃厚流動食をゲル化させることはできなかった。
また、グルコノデルタラクトン単独区がゲルを形成した3時間静置後のゲル状濃厚流動食(実施例1及び比較例1)に関して付着性の評価を行ったところ、グルコノデルタラクトン単独区(比較例1)のゲル状濃厚流動食に比べ、実施例1のゲル状濃厚流動食は半分以下の付着性の小ささを示し、咀嚼・嚥下困難者用食品及び胃瘻用として適した物性を有するゲル状濃厚流動食であった。また、実施例1のゲル状濃厚流動食は食塊形成性も良好であり、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすい物性を有していた。
更に、離水評価に関しては、グルコノデルタラクトン単独区(比較例1)では離水率が11.4%と離水が顕著に発生していたのに対し、当該グルコノデルタラクトン、κ2カラギナン及びキサンタンガムを併用することにより、離水率が3%(実施例1)と離水を顕著に抑制することができた。特に、実施例1及び比較例1の1時間静置後の写真(図1:実施例1、図2:比較例1)からも、グルコノデルタラクトン、κ2カラギナン及びキサンタンガムを併用することにより、顕著に離水が抑制されていることが分かる。
また、グルコノデルタラクトン単独区がゲルを形成した3時間静置後のゲル状濃厚流動食(実施例1及び比較例1)に関して付着性の評価を行ったところ、グルコノデルタラクトン単独区(比較例1)のゲル状濃厚流動食に比べ、実施例1のゲル状濃厚流動食は半分以下の付着性の小ささを示し、咀嚼・嚥下困難者用食品及び胃瘻用として適した物性を有するゲル状濃厚流動食であった。また、実施例1のゲル状濃厚流動食は食塊形成性も良好であり、咀嚼・嚥下困難者が飲み込みやすい物性を有していた。
更に、離水評価に関しては、グルコノデルタラクトン単独区(比較例1)では離水率が11.4%と離水が顕著に発生していたのに対し、当該グルコノデルタラクトン、κ2カラギナン及びキサンタンガムを併用することにより、離水率が3%(実施例1)と離水を顕著に抑制することができた。特に、実施例1及び比較例1の1時間静置後の写真(図1:実施例1、図2:比較例1)からも、グルコノデルタラクトン、κ2カラギナン及びキサンタンガムを併用することにより、顕著に離水が抑制されていることが分かる。
実験例2 ゲル状濃厚流動食の調製(2)
実験例1と同様にして、各種ゲル状濃厚流動食を調製した。下記表4に従ってキサンタンガム、κ2カラギナン、ラムダカラギナン及びデキストリン(固形量を同一にするため使用)を混合することにより各種ゲル化剤を調製した。市販の濃厚流動食A100mLに、調製した各種ゲル化剤を添加後、スパーテルで4回転/secで30秒間撹拌した。次いで容器に充填し、常温にて1時間静置することにより、ゲル状濃厚流動食を調製した(比較例3、実施例2〜12)。
実験例1と同様にして、各種ゲル状濃厚流動食を調製した。下記表4に従ってキサンタンガム、κ2カラギナン、ラムダカラギナン及びデキストリン(固形量を同一にするため使用)を混合することにより各種ゲル化剤を調製した。市販の濃厚流動食A100mLに、調製した各種ゲル化剤を添加後、スパーテルで4回転/secで30秒間撹拌した。次いで容器に充填し、常温にて1時間静置することにより、ゲル状濃厚流動食を調製した(比較例3、実施例2〜12)。
得られた実施例2〜12のゲル状濃厚流動食は、比較例3に比べて、いずれも良好な食塊形成性を有し、また口腔や咽頭への付着性も小さく、咀嚼・嚥下困難者用食品として適した物性を有するゲル状濃厚流動食であった。中でも、キサンタンガム及び各種カラギナンを併用した実施例9〜12のゲル状濃厚流動食は、実施例2〜8のゲル状濃厚流動食に比べて、より良好な食塊形成性及び離水抑制効果が見られた。更に、実施例11及び12のゲル状濃厚流動食は実施例9及び10のゲル状濃厚流動食よりも更に良好な食塊形成性を有し、離水も顕著に抑制されたゲル状濃厚流動食であった。
本発明により、栄養素を複合的に含む濃厚流動食であっても、顕著に離水が抑制されたゲル状濃厚流動食であって、咀嚼・嚥下困難者の喫食や胃瘻に適した物性を有するゲル状濃厚流動食を提供できる。
Claims (3)
- グルコノデルタラクトンと、カラギナン及び/又はキサンタンガムを含有する濃厚流動食用ゲル化剤。
- グルコノデルタラクトン1質量部に対し、カラギナン及び/又はキサンタンガムを0.1〜10質量部含有する、請求項1に記載の濃厚流動食用ゲル化剤。
- 請求項1又は2に記載の濃厚流動食用ゲル化剤を含有した、ゲル状濃厚流動食。
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2009
- 2009-11-10 JP JP2009257551A patent/JP2011101614A/ja active Pending
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