図1は、本発明が適用された車両に備えられた車両用駆動装置(以下、駆動装置)6の構成を説明する骨子図である。駆動装置6は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12内において、共通の軸心上に、入力クラッチCi、第1電動機としての第1モータジェネレータMG1、ロックアップクラッチ付のトルクコンバータ14、自動変速機としての有段式の自動変速機10、および第2電動機としての第2モータジェネレータMG2が順次配設されている。なお、この駆動装置6はその軸心に対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心の下半分が省略されている。
入力クラッチCiは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と自動変速機10や第1モータジェネレータMG1との機械的な連結を断接する。自動変速機10は、エンジン8のクランク軸9に入力クラッチCiとトルクコンバータ14とを介して作動的に連結された入力軸16、第1遊星歯車装置18を主体として構成されている第1変速部20、第2遊星歯車装置22と第3遊星歯車装置24とを主体として構成されている第2変速部26、および出力軸28が順次配設され、入力軸16の回転を変速して出力軸28から出力する。入力軸16は自動変速機10の入力回転部材に相当するものであり、本実施例ではエンジン8によって回転駆動されるトルクコンバータ14のタービン軸である。出力軸28は自動変速機10の出力回転部材に相当するものであり、例えば図7に示すように差動歯車装置(終減速機)30や一対の車軸31等を順次介して左右の駆動輪32を回転駆動する。第1モータジェネレータMG1は、入力クラッチCiを介してエンジン8(クランク軸9)に作動的に連結され、第2モータジェネレータMG2は出力軸28に直接作動的に連結されている。
上記第1遊星歯車装置18はダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。キャリヤCA1は入力軸16に連結されて回転駆動され、サンギヤS1は回転不能にトランスミッションケース12に一体的に固定されている。リングギヤR1は中間出力部材として機能し、入力軸16に対して減速回転させられて、回転を第2変速部26へ伝達する。本実施例では、入力軸16の回転をそのままの速度で第2変速部26へ伝達する経路が、予め定められた一定の変速比γ(=1.0)で回転を伝達する第1中間出力経路PA1であり、第1中間出力経路PA1には、入力軸16から第1遊星歯車装置18を経ることなく第2変速部26へ回転を伝達する直結経路PA1aと、入力軸16から第1遊星歯車装置18のキャリヤCA1を経て第2変速部26へ回転を伝達する間接経路PA1bとがある。また、入力軸16からキャリヤCA1、そのキャリヤCA1に配設されたピニオンギヤP1、およびリングギヤR1を経て第2変速部26へ伝達する経路が、第1中間出力経路PA1よりも大きい変速比γ(>1.0)で入力軸16の回転を変速(減速)して伝達する第2中間出力経路PA2である。
前記第2遊星歯車装置22はシングルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。前記第3遊星歯車装置24はダブルピニオン型の遊星歯車装置であり、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2およびP3、そのピニオンギヤP2およびP3を自転および公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2およびP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
第2遊星歯車装置22および第3遊星歯車装置24では、ピニオンギヤP2を回転可能に支持するキャリヤCA2およびCA3、リングギヤR2およびR3は相互に共用されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。すなわち、第2遊星歯車装置22のサンギヤS2によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置22のキャリヤCA2および第3遊星歯車装置のキャリヤCA3が互いに一体的に連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2および第3遊星歯車装置24のリングギヤR3が互いに一体的に連結されて第3回転要素RM3が構成され、第3遊星歯車装置24のサンギヤS3によって第4回転要素RM4が構成されている。
第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結されて回転停止され、第3クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置18のリングギヤR1(すなわち第2中間出力経路PA2)に選択的に連結され、さらに第4クラッチC4を介して第1遊星歯車装置18のキャリヤCA1(すなわち第1中間出力経路PA1の間接経路PA1b)に選択的に連結されている。第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12に選択的に連結されて回転停止させられるとともに、第2クラッチC2を介して入力軸16(すなわち第1中間出力経路PA1の直結経路PA1a)に選択的に連結されている。第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸28に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、第1クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されている。なお、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)、および入力クラッチCiは、何れも油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)によって摩擦係合させられる多板式等の油圧式摩擦係合装置である。
図2は、上記第1変速部20および第2変速部26の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線が回転速度「0」を示し、上の横線が回転速度「1.0」すなわち入力軸16と同じ回転速度を示している。また、第1変速部20の各縦線は、左側から順番にサンギヤS1、リングギヤR1、キャリヤCA1を表しており、それ等の間隔は第1遊星歯車装置18のギヤ比ρ1(=サンギヤS1の歯数/リングギヤR1の歯数)に応じて定められる。図2は、例えばギヤ比ρ1=0.463の場合である。第2変速部26の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RM1(サンギヤS2)、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびキャリヤCA3)、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびリングギヤR3)、第4回転要素RM4(サンギヤS3)を表しており、それ等の間隔は第2遊星歯車装置22のギヤ比ρ2および第3遊星歯車装置24のギヤ比ρ3に応じて定められる。図2は、例えばギヤ比ρ2=0.463、ρ3=0.415の場合である。
そして、この共線図から明らかなように、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力軸28に連結された第3回転要素RM3は「1st」で示す回転速度で回転させられ、最も大きい変速比γ(=入力軸16の回転速度/出力軸28の回転速度)の第1変速段「1st」が成立させられる。
第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比γが小さい第2変速段「2nd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられて、第4回転要素RM4および第1回転要素RM1が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられて第2変速部26が一体回転させられると、第3回転要素RM3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比γが小さい第3変速段「3rd」が成立させられる。
第1クラッチC1および第4クラッチC4が係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第1回転要素RM1が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比γが小さい第4変速段「4th」が成立させられる。
第1クラッチC1および第2クラッチC2係合させられて、第4回転要素RM4が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比γが小さい第5変速段「5th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて、第2変速部26が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「6th」で示す回転速度すなわち入力軸16と同じ回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比γが小さい第6変速段「6th」が成立させられる。この第6変速段「6th」の変速比γは1である。
第2クラッチC2および第3クラッチC3が係合させられて、第1回転要素RM1が第1変速部20を介して入力軸16に対して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が入力軸16と一体回転させられると、第3回転要素RM3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比γが小さい第7変速段「7th」が成立させられる。
第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸16と一体回転させられるとともに、第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比γが小さい第8変速段「8th」が成立させられる。
また、第3クラッチC3および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が第1変速部20を介して減速回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられて、第3回転要素RM3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、逆回転方向で変速比γが最も大きい第1後進変速段「Rev1」が成立させられる。第4クラッチC4および第2ブレーキB2が係合させられると、第1回転要素RM1が入力軸16と一体回転させられるとともに、第2回転要素RM2が回転停止させられ、第3回転要素RM3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比γが小さい第2後進変速段「Rev2」が成立させられる。第1後進変速段「Rev1」、第2後進変速段「Rev2」は、それぞれ逆回転方向の第1変速段、第2変速段に相当する。
図3は、上記各変速段を成立させる際の係合要素および変速比γを説明する作動表であり、「○」は係合状態を表しており、空欄は解放である。各変速段の変速比γは、第1遊星歯車装置18、第2遊星歯車装置22、第3遊星歯車装置24の各ギヤ比ρ1〜ρ3によって適宜定められ、例えばρ1=0.463、ρ2=0.463、ρ3=0.415とすれば、変速比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値が略適切であるとともにトータルの変速比幅(=4.495/0.683)も6.578程度と大きく、後進変速段「Rev1」、「Rev2」の変速比γも適当で、全体として適切な変速比特性が得られる。
このように本実施例の自動変速機10は、変速比γが異なる2つの中間出力経路PA1、PA2を有する第1変速部20および2組の遊星歯車装置22、24を有する第2変速部26により、4つのクラッチC1〜C4および2つのブレーキB1、B2の係合切換えで前進8速の変速段が達成されるため、小型に構成され、車両への搭載性が向上する。また、図3に示されるように、本実施例の自動変速機10は、変速比幅を大きくとることができ且つ変速比ステップも適切となっている。
図4は、本実施例の自動変速機10などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。この電子制御装置90は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8の出力制御や自動変速機10の変速制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や変速制御用等に分けて構成される。
図4において、アクセルペダル50の操作量であるアクセル開度Accがアクセル操作量センサ52により検出されると共に、そのアクセル開度Accを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるもので、出力操作部材に相当し、アクセル開度Accは出力要求量に相当する。エンジン8の吸気配管53には、スロットルアクチュエータ54によって開き角すなわちスロットル弁開度θTHが制御される電子スロットル弁56が設けられている。
また、エンジン8の回転速度NEを検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン8の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、電子スロットル弁56の開度θTHを検出するためのスロットル弁開度センサ62、車速V(出力軸28の回転速度NOUTに対応)を検出するための車速センサ64、第1モータジェネレータMG1の回転速度NMG1を検出するためのMG1回転速度センサ66、第2モータジェネレータMG2の回転速度NMG2(=出力軸回転速度NOUT)を検出するためのMG2回転速度センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフト操作装置71に備えられたシフトレバー72の操作ポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、モータジェネレータMG1、MG2(インバータ106)に接続された蓄電装置76の蓄電量(残容量、充電量)SOCを検出するためのSOCセンサ78、第1モータジェネレータMG1の温度TMG1を検出するためのMG1温度センサ80、第2モータジェネレータMG2の温度TMG2を検出するためのMG2温度センサ81、第1モータジェネレータMG1の発電によるインバータ106へ発電電流或いは第1モータジェネレータMG1を駆動するためのインバータ106からの駆動電流である第1モータジェネレータMG1を制御するための制御電流IMG1を検出するためのMG1制御電流センサ82、第2モータジェネレータMG2を駆動するためのインバータ106からの駆動電流である第2モータジェネレータMG2を制御するための制御電流IMG2を検出するためのMG2制御電流センサ83、トルクコンバータ14のタービン軸の回転速度NT(=入力軸16の回転速度NIN)を検出するためのタービン回転速度センサ84、エンジン8の冷却水温TWを検出するためのエンジン水温センサ85、自動変速機10の作動油の温度TOILを検出するための油温センサ86、排気ガスを浄化する触媒の温度TREを検出するための触媒温度センサ87、車両の加速度Gを検出するための加速度センサ88などが設けられており、それらのセンサやスイッチなどから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、スロットル弁開度θTH、車速V(出力回転速度NOUTに対応)、第1モータジェネレータ回転速度NMG1、第2モータジェネレータ回転速度NMG2、フットブレーキの操作の有無すなわちブレーキペダルの操作を表す信号BON、シフトレバー72の操作ポジションPSH、残容量SOC、第1モータジェネレータ温度TMG1、第2モータジェネレータ温度TMG2、第1モータジェネレータ制御電流IMG1、第2モータジェネレータ制御電流IMG2、タービン回転速度NT(=入力軸回転速度NIN)、エンジン冷却水温TW、油温TOIL、触媒温度TRE、車両の加速度Gなどを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。
また、上記電子制御装置90からは、エンジン出力を制御するための制御信号例えば電子スロットル弁56の開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ54への駆動信号や燃料噴射装置92によるエンジン8への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置94によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2の力行制御、発電(回生)制御などのためにMG1コントローラ102やMG2コントローラ104によりインバータ106を制御させるための制御信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、自動変速機10の前記クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の油圧アクチュエータを作動させるために油圧制御回路98内のATシフトソレノイド99例えばリニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁などを制御するためのバルブ指令信号、入力クラッチCiの油圧アクチュエータを作動させるために油圧制御回路98内の入力クラッチ制御弁96の励磁、非励磁などを制御するためのバルブ指令信号、油圧制御回路98の油圧源である図示しない電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号への制御信号などがそれぞれ出力される。
図5は、上記油圧制御回路98のうちリニアソレノイドバルブSL1〜SL6に関する部分を示す回路図で、クラッチC1〜C4、およびブレーキB1、B2の各油圧アクチュエータ(油圧シリンダ)34、36、38、40、42、44には、油圧供給装置46から出力されたライン油圧PLがそれぞれリニアソレノイドバルブSL1〜SL6により調圧されて供給されるようになっている。油圧供給装置46は、電動油圧ポンプやライン油圧PLを調圧するレギュレータバルブ等を備えており、エンジン負荷等に応じてライン油圧PLを制御するようになっている。リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成で、電子制御装置90により独立に励磁、非励磁され、各油圧アクチュエータ34〜44の油圧が独立に調圧制御されるようになっている。
例えば、リニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁が制御されることによりクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2の係合/解放の作動状態が変化させられて、図3の係合作動表に示すように、第1速前進ギヤ段「1st」〜第8速前進ギヤ段「8th」の何れかの前進ギヤ段、或いは「Rev1」、「Rev2」の何れかの後進ギヤ段が電気的に成立させられる。また、自動変速機10の変速過程において、例えば4→3ダウンシフトではクラッチC4の解放とクラッチC3の係合とにより変速が実行される。また、車両の走行状態によっては、例えば4→2ダウンシフトや4→1ダウンシフトのように、現在の変速段から2段以上離れた変速段へ切り替えられる所謂飛び越し変速が実行される。この4→2ダウンシフトではクラッチC4の解放とブレーキB1の係合とにより飛び越し変速が実行され、4→1ダウンシフトではクラッチC4の解放とブレーキB2の係合とにより飛び越し変速が実行される。
図6は、前記シフト操作装置71の一例であって、例えば運転席近傍のフロア部分、具体的には運転席の左側のセンターコンソール部分に配設されている。また、前記シフトレバー72は図6に示すシフトパターンすなわちシフト操作装置71が備える操作ポジション(シフトポジション)PSHに従って移動操作されるようになっている。具体的には、シフトポジションPSHとして、「P(パーキング)」、「R(リバース)」、「N(ニュートラル)」、「D(ドライブ)」、および「M(マニュアル)」の各操作ポジションが設けられている。
上記「P」ポジションは駐車位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従って油圧制御回路98内のマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、自動変速機10はクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の全部が解放されて動力伝達遮断状態とされるとともに、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってパーキングロック機構などにより機械的に出力軸28、すなわち駆動輪32が回転不能に固定される。上記「R」ポジションは後進走行を行なう後進走行位置で、例えばシフトレバー72の移動操作に従って上記マニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより後進ギヤ段を成立させることが可能とされ、図3の係合作動表に従って前記後進ギヤ段「Rev1」または「Rev2」が電気的に成立させられる。上記「N」ポジションは動力伝達遮断位置で、例えば「P」ポジションと同様に、自動変速機10はクラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2の全部が解放されて動力伝達遮断状態とされる。
前記「D」ポジションは、自動変速機10の前進ギヤ段を自動的に切り換えて前進走行する前進走行位置すなわち前進走行ポジションで、例えばシフトレバー72の移動操作に従ってマニュアルバルブが機械的に切り換えられることにより、総ての前進ギヤ段「1st」〜「8th」を成立させることが可能とされ、図3の係合作動表に従って前記前進ギヤ段「1st」〜「8th」が電気的に成立させられる。すなわち、シフトレバー72が「D」ポジションへ操作されると、前進ギヤ段「1st」〜「8th」を用いて自動的に変速するDレンジ(フルレンジ自動変速モード)が成立させられる。
前記「M」ポジションは、自動変速機10の前進ギヤ段の変速範囲或いはギヤ段を人為的操作で切り換えて前進走行する手動変速モードを成立させる前進手動変速走行位置すなわち前進手動変速走行ポジションで、例えばシフトレバー72が「M」ポジションへ操作されると手動変速モードが成立させられる。「M」ポジションに備えられた「+」ポジションは、その手動変速モードにおいて操作毎に変速範囲或いはギヤ段をアップ側にシフトさせるための操作位置である。同様に、「−」ポジションは、その手動変速モードにおいて操作毎に変速範囲或いはギヤ段をダウン側にシフトさせるための操作位置である。
図7は、前記電子制御装置90の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図7において、変速制御手段110は、例えば図8に示す車速Vおよびアクセル開度Accをパラメータとして予め記憶された関係(マップ、変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよびアクセル開度Accに基づいて自動変速機10の切り換えるべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように例えば図3の係合作動表に基づいて油圧制御回路98に変速指令(変速出力)を出力して自動変速機16のギヤ段を自動的に切り換える変速制御を実行する。油圧制御回路98は、変速制御手段110による変速指令に従って、リニアソレノイドバルブSL1〜SL6の励磁、非励磁や電流制御を実行し、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2クラッチの係合、解放状態を切り換えて第1変速段「1st」〜第8変速段「8th」の何れかの前進変速段、或いは「Rev1」、「Rev2」の何れかの後進ギヤ段を成立させると共に、変速過程のクラッチC、ブレーキBの過渡油圧などを制御する。
上記図8の変速線図において、実線はアップシフトが判断されるための変速線(アップシフト線)であり、破線はダウンシフトが判断されるための変速線(ダウンシフト線)である。また、例えばこの図8の変速線図における変速線は、実際のアクセル開度Acc(%)を示す横線上において実際の車速Vが線を横切ったか否かすなわち変速線上の変速を実行すべき値(変速点車速)VSを越えたか否かを判断するためのものであり、上記値VSすなわち変速点車速の連なりとして予め記憶されている。例えば、車速Vが低くなったりアクセル開度Accが大きくなったりするに従って変速比γが大きい低速側の変速段が成立させられる。なお、図8の変速線図は自動変速機10で変速が実行される第1変速段乃至第8変速段のうちで第1変速段乃至第6変速段における変速線が例示されており、第6変速段乃至第8変速段における変速線は省略されている。
例えば、現在車両が第4変速段で走行中に、車速Vが低下するか或いはアクセルペダル50の踏込操作によりアクセル開度Accが大きくされて、4速→3速ダウンシフト線を横切るような4→3ダウンシフトを実行すべき値を超えた場合には、変速制御手段110は4→3ダウンシフトを判断し、第4変速段から第3変速段へ変速段を切り替える変速指令を油圧制御回路98に出力する。そして、油圧制御回路98は、変速制御手段110による変速指令に従って、例えば図3の係合作動表に示すように解放側係合装置であるクラッチC4を解放すると共に係合側係合装置であるクラッチC3を係合するようにクラッチC4の解放過渡油圧とクラッチC3の係合過渡油圧とを制御する。
特に、アクセルペダル50の踏込操作すなわち運転者の加速操作によるダウンシフトはパワーオンダウンシフトと称されるものであり、このパワーオンダウンシフトに伴う変速比変化に応じて車両駆動力が増加させられる。このとき、運転者の加速操作が大きいと、飛び越し変速によりパワーオンダウンシフトが実行され、より車両駆動力が増加させられる。例えば、現在車両が第4変速段で走行中に、アクセルペダルが大きく踏み込み操作されてアクセル開度Accが4速→3速ダウンシフト線および3速→2速ダウンシフト線を横切ったと判断される値となった場合には、変速制御手段110は4→2ダウンシフトを判断し、第4変速段から第2変速段へ変速段を切り替える変速指令を油圧制御回路98に出力する。そして、油圧制御回路98は、変速制御手段110による変速指令に従って、例えば図3の係合作動表に示すようにクラッチC4を解放すると共にブレーキB1を係合するようにクラッチC4の解放過渡油圧とブレーキB1の係合過渡油圧とを制御する。このように、飛び越し変速を含め図8に示すような変速マップに従って通常の変速が実行される。
エンジン出力制御手段112は、基本的には、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ54により電子スロットル弁56を開閉制御する他、燃料噴射量制御のために燃料噴射装置92による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置94による点火時期を制御するなどしてエンジン18の出力制御を実行する。例えば、エンジン出力制御手段112は、図9に示す予め記憶された関係から実際のアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ54を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させる。また、エンジン出力制御手段112は、アクセル開度Accが略零(全閉)となる車両停止時や減速走行時等には、アイドル回転速度NIDLを目標値制御するように予め定められたアイドル時スロットル開度θIDLとなるようにスロットル制御を実行する。
ハイブリッド制御手段114は、車両の走行状態に応じた、モータ走行、エンジン走行、モータ及びエンジン走行等のエンジン8やモータジェネレータMG1、MG2の作動状態が異なる複数の運転モードでの走行を行うために、入力クラッチCiの開閉制御、第1モータジェネレータMG1や第2モータジェネレータMG2の力行制御、回生制御等を実行する。
例えば、専らエンジン8を走行用の駆動力源として車両走行が行われるエンジン走行モードでは、蓄電装置76の残容量SOCが少なくなったような場合でも走行したり或いはモータ走行に比較してより大きな駆動力が必要とされる走行のために、ハイブリッド制御手段114は、入力クラッチ制御弁96により入力クラッチCiが係合されるように油圧制御回路98に指令を出力してエンジン8の出力を自動変速機10の入力軸16に伝達させると共に、そのエンジン8により必要な駆動力を発生させて走行するようにエンジン出力制御手段112に指令を出力する。また、蓄電装置76の残容量SOCが少ない場合などでは、必要に応じて第1モータジェネレータMG1が発電(回生)状態とされ、その発電エネルギEDが蓄電装置76に蓄電されるようにMG1コントローラ102に指令を出力する。
また、専ら第2モータジェネレータMG2を走行用の駆動力源として車両走行(発進)が行われるモータ走行モードでは、例えば静粛な車両発進や走行のために、ハイブリッド制御手段114は、入力クラッチ制御弁96により入力クラッチCiが解放されるように油圧制御回路98に指令を出力してエンジン8と自動変速機10との間の動力伝達経路を遮断状態とさせると共に、インバータ106から第2モータジェネレータ制御電流IMG2を供給して第2モータジェネレータMG2が力行状態とされ、第2モータジェネレータMG2により必要な駆動力を発生させて走行するようにMG2コントローラ104に指令を出力する。さらに、インバータ106から第1モータジェネレータ制御電流IMG1を供給して第1モータジェネレータMG1が力行状態とされ、第2モータジェネレータMG2に加えて第1モータジェネレータMG1により駆動力を発生させて走行するようにMG2コントローラ104に指令を出力してもよい。このとき、エンジン8と自動変速機10との間の動力伝達経路が遮断状態とされているので、作動していないエンジン8の引き摺りによる燃費の低下が抑制される。
また、エンジン8および第2モータジェネレータMG2を走行用の駆動力源として車両走行が行われるエンジン+モータ走行モードでは、例えば加速走行のために、ハイブリッド制御手段114は、入力クラッチ制御弁96により入力クラッチCiが係合されるように油圧制御回路98に指令を出力してエンジン8の出力を自動変速機10の入力軸16に伝達させると共に、そのエンジン8により必要な駆動力を発生させて走行するようにエンジン出力制御手段112に指令を出力し、且つインバータ106から第2モータジェネレータ制御電流IMG2を供給して第2モータジェネレータMG2が力行状態とされ、第2モータジェネレータMG2により必要な駆動力を発生させて走行するようにMG2コントローラ104に指令を出力する。さらに、インバータ106から第1モータジェネレータ制御電流IMG1を供給して第1モータジェネレータMG1が力行状態とされ、第1モータジェネレータMG1により駆動力を発生させて走行するようにMG2コントローラ104に指令を出力してもよい。或いは、蓄電装置76の残容量SOCが少ない場合などでは、必要に応じて第1モータジェネレータMG1が発電(回生)状態とされ、その発電エネルギEDが蓄電装置76に蓄電されるようにMG1コントローラ102に指令を出力する。このとき、その発電エネルギEDがインバータ106を介して第2モータジェネレータMG2の駆動電流(制御電流IMG2)として直接的に供給されても良い。
ところで、前記変速制御手段110によるパワーオンダウンシフトが実行される際に飛び越し変速が実行されると、その飛び越し変速の飛び越し段数が多くなる程、変速比変化が大きくなることから、エンジン回転速度NEの変化量が大きくなり、ダウンシフト後の変速段におけるエンジン回転速度NEとなるまでの時間が長くなる。結果として、パワーオンダウンシフト時の飛び越し段数が多くなる程、そのパワーオンダウンシフトが完了するまでの時間が長くなる可能性があった。そうすると、運転者は速やかな駆動力の増大を望んでアクセルペダルを早く大きな踏込操作をしたにも拘わらず、変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が相対的に長くなってパワーオンダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が低下する可能性があった。
そこで、本実施例では、前記変速制御手段110によるパワーオンダウンシフトの変速過程において、その変速過程に要する時間はそのままで、すなわち変速制御手段110によるパワーオンダウンシフトは成り行きのままで、パワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性を向上させる制御作動を実行する。以下に、その制御作動について説明する。
変速時トルク制御手段116は、変速制御手段110による自動変速機10のパワーオンダウンシフトの変速過程において、そのパワーオンダウンシフトの内容に基づいて電動機による駆動輪32に対してトルクを付与するトルクアシストを実行する。このパワーオンダウンシフトの変速過程において、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とのタイミングによっては自動変速機10内の動力伝達経路が遮断されるため、電動機によるトルクアシストには、動力伝達経路で見て自動変速機10から駆動輪32側となる出力軸28に作動的に連結されている第2モータジェネレータMG2を専ら用いる。
例えば、変速時トルク制御手段116は、上記パワーオンダウンシフトの内容に基づいて、そのパワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性を向上させるように、第2モータジェネレータMG2を力行状態としてアシストトルクTM2Aを発生する指令をハイブリッド制御手段114に出力して、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行する。このトルクアシスト制御のための電力は、蓄電装置76から第2モータジェネレータMG2に供給されても良いし、第1モータジェネレータMG1の発電制御時の発電エネルギEDが第2モータジェネレータMG2に供給されても良い。
これにより、パワーオンダウンシフトの変速に要する時間は短くできないものの、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御により早めにトルク増加するので、ダウンシフトに伴うトルク増加がより早く得られたようにユーザが感じる。
具体的には、変速時トルク制御手段116は、例えばダウンシフト後に増加する駆動輪32での絶対トルクを考慮すると、パワーオンダウンシフトの内容がパワーオンダウンシフトにおけるダウンシフト後の変速比γ’が大きい程、その絶対トルクとの繋がり(連続性)を考えて言い換えれば絶対トルクに整合させるように、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御中の第2モータジェネレータMG2の出力トルクを大きくする。
図10は、変速制御手段110による自動変速機10のパワーオンダウンシフトの変速過程において、ダウンシフト後(変速後)の変速比γ’の大きさに応じて予め実験的に求められて設定されている第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト量すなわち第2モータジェネレータMG2の出力トルク(すなわちアシストトルクTM2A)の一例であって、ダウンシフト後の駆動輪32での絶対トルクに整合させるように、ダウンシフト後の変速比γ’が大きい程、パワーオンダウンシフト中のアシストトルクTM2Aが大きくなるように設定されている。
また、変速時トルク制御手段116は、変速制御手段110によるパワーオンダウンシフトの変速過程において、上記第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を開始する。具体的には、変速時トルク制御手段116は、ダウンシフトに伴うトルク増加の変速フィーリングを確保しつつ、駆動輪32におけるトルクの立ち上がりが係合側係合装置の係合による場合に比較して早くなってパワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が向上するように、ダウンシフトの変速途中から第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を開始する。例えば、変速時トルク制御手段116は、係合側係合装置の係合油圧信号の出力開始或いは実際の係合側係合装置の係合油圧の立ち上がりと略同時に、或いは解放側係合装置の解放後であって係合側係合装置の係合により成り行きでトルクが立ち上がる前となるようにダウンシフトの開始からの時間として予め実験的に求められて定められた所定時間Ta経過したときに、或いは同様に成り行きでトルクが立ち上がる前となるようにダウンシフトの開始からダウンシフトが終了するまでの時間として予め実験的に求められて定められた所定時間Tbより所定時間Tb’前に、或いはパワーオンダウンシフトの変速過程のエンジン回転速度NEが予め実験的に求められて定められた所定エンジン回転速度NE’を超えたときに、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を開始する。
また、変速時トルク制御手段116は、変速制御手段110によるパワーオンダウンシフトが終了したときに、上記第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を終了する。例えば、変速時トルク制御手段116は、変速終了時に駆動輪32に生じるトルクが専らダウンシフトに伴うトルク増加となってそのダウンシフトに伴うトルク増加の変速フィーリングが確保されるように、係合側係合装置の係合完了に合わせて第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を終了する。この、変速過程の終了すなわち係合側係合装置の係合完了は、変速制御手段110による係合側係合装置の係合過渡油圧の制御中に入力軸16の回転速度NINが変速後の回転速度(=γ’×NOUT;γ’は変速後の変速比)となったか否か、同様に自動変速機10内の回転要素或いはエンジン回転速度NEが変速後の回転速度となったか否か、ダウンシフトの開始から前記所定時間Ta経過後に前記所定時間Tb’経過したか否か、ダウンシフトの開始から前記所定時間Tb経過したか否か、或いは係合側係合装置の係合油圧が変速が終了したと判定される油圧(指令)値として予め実験的に求められて定められた係合過渡油圧(指令)値PC’となったか否かなどに基づいて、変速時トルク制御手段116により判定される。また、変速終了時にエンジン吹きの抑制のために遅角制御などのエンジントルクダウン制御が実行される場合には、変速時トルク制御手段116は、この制御と合わせたトルク終了制御を実行しても良い。
また、例えばパワーオンダウンシフトの内容が飛び越し変速である場合には、飛び越し変速でない場合に比較してパワーオンダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が低下する可能性がある。そこで、変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトの内容が飛び越し変速である場合に、パワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性を向上させるように、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行する。変速時トルク制御手段116は、例えば飛び越し変速の飛び越し段数の違いなどの飛び越し変速の内容の違いにより変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が異なることから、パワーオンダウンシフト時のその飛び越し変速の内容に基づいて第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御の方法を変更する。
具体的には、変速時トルク制御手段116は、上記飛び越し変速の内容が飛び越し変速の段数が多い程、変速完了までの時間が長くなるためその時間に合わせるように、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御の時間を長くする。言い換えれば、飛び越し変速の段数が多い程、変速完了までの時間が長くなるので、結果として、変速完了まで実行される第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御の時間が長くなる。
図11は、変速制御手段110による自動変速機10のパワーオンダウンシフトの変速過程において、飛び越し変速の飛び越し段数言い換えれば飛び変速比幅Δγの大きさに応じて予め実験的に求められて設定されている第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト時間すなわちトルクアシスト制御の時間の一例であって、飛び越し変速の段数が多い程、変速時間に合わせて第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御の時間が長くなるように設定されている。
また、図11から明らかなように、飛び越し変速の飛び越し段数が所定段数未満となって飛び変速比幅Δγが所定の飛び変速比幅Δγ’より小さいときには、変速完了までの時間が相対的に短くなり、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行せずともダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が比較的低下しないので、トルクアシスト時間が零とされている。言い換えれば、変速時トルク制御手段116は、飛び越し変速の飛び越し段数が所定段数以上のときに、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行する。この所定段数は、変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が相対的に長くなって、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御により早めにトルク増加させる必要がある飛び越し変速の飛び越し段数として予め実験的に求められて定められた値である。これにより、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御のための電力の消費が抑制される。
トルクアシスト制御可否判定手段118は、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できるか否かを判定する。例えば、トルクアシスト制御可否判定手段118は、第2モータジェネレータMG2の故障(フェイル)や機能低下、第2モータジェネレータ温度TMG2が高くなったことなどによる第2モータジェネレータMG2の出力制限、蓄電装置76の残容量SOCの低下や低温による機能低下、或いは第2モータジェネレータMG2の駆動に関連する電気系のフェイルや機能低下などが発生したような場合に、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できないと判定する。
変速時トルク制御手段116は、前記トルクアシスト制御可否判定手段118により第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できないと判定されたときには、飛び越し変速の飛び越し段数が多くなる場合に比較して変速時間が相対的に短くされて、そのトルクアシスト制御が実行されなくともダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が確保されるように、変速制御手段110による自動変速機10のパワーオンダウンシフトの変速過程における飛び越し変速の飛び越し段数を少なくするように制限する。例えば、変速時トルク制御手段116は、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できない場合には、変速制御手段110により変速マップに基づいて判断されたパワーオンダウンシフトで切り替えられるべき変速段をより高速側の変速段に変更し、その変更した変速段へのダウンシフトを実行するように変速制御手段110に指令を出力する。
アクセル開度変化率判定手段120は、前記変速制御手段110によりパワーオンダウンシフトが判断された場合には、アクセル開度変化率Acc’(=dAcc/dt)が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいか否かを判定する。この所定のアクセル開度変化率Acc1は、運転者のアクセルペダル50の踏込操作速度に基づいて運転者の加速要求が大きいと判断するための予め実験的に求められて定められた判定値である。
変速時トルク制御手段116は、上記アクセル開度変化率判定手段120によりアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判定された場合には、前記変速制御手段110により変速マップに基づいて判断されたパワーオンダウンシフトで切り替えられるべき通常の変速段を、より大きな駆動力が得られるより低速側の変速段に変更するように変速パターンの読替えを実施し、その変更した変速段へのダウンシフトを実行するように変速制御手段110に指令を出力する。このように、変速時トルク制御手段116は、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御や変速パターンの読替えによって変速時のトルクを制御する。
図12は変速マップのうちの4速→3速ダウンシフト線と3速→2速ダウンシフト線とを示した一例である。また、図中の矢印Aと矢印Bは、第4変速段での走行中に、運転者によるアクセルペダル50の踏込操作を変速マップ上に置き換えて表したものである。
矢印Aの場合には、変速マップに従って通常は変速制御手段110により4→2パワーオンダウンシフトが判断されるが、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きい場合には、変速マップでは通常は4→2ダウンシフトの領域であっても、変速時トルク制御手段116により4→1パワーオンダウンシフトに読み替えられて、変速制御手段110により4→1パワーオンダウンシフトが実行される。
また、矢印Bの場合には、変速マップに従って通常は変速制御手段110により4→3パワーオンダウンシフトが判断されるが、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きい場合には、変速マップでは通常は4→3ダウンシフトの領域であっても、変速時トルク制御手段116により4→2パワーオンダウンシフトに読み替えられて、変速制御手段110により4→2パワーオンダウンシフトが実行される。
前記所定のアクセル開度変化率Acc1は、運転者のアクセルペダル50の踏込操作速度に基づいて運転者の加速要求が大きいとしてパワーオンダウンシフト時の切り替えるべき変速段をより大きな駆動力が得られる低速側ギヤ段へ変更するための予め実験的に求められて定められた判定値でもある。
変速時トルク制御手段116は、上記アクセル開度変化率判定手段120によりアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判定され、上記変速パターンの読替えに従って変速制御手段110によりダウンシフトが実行される場合に、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行する。言い換えれば、前記変速制御手段110により変速マップに基づいて判断されたパワーオンダウンシフトが飛び変速であっても、アクセル開度変化率判定手段120によりアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1以下と判定された場合には、運転者の加速要求が小さくパワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が低下しても違和感がないと思われるため、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行しない。
変速時トルク制御手段116は、アクセル開度変化率判定手段120によりアクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判定されて、上記変速パターンの読替えを実施したとしても、前記トルクアシスト制御可否判定手段118により第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できないと判定されたときには、変速パターンの読替えを実施ない場合のマップに従った通常の変速段を一旦成立させた後に、変速パターンの読替えを実施した場合の変速段へのダウンシフトを実行するように変速制御手段110に指令を出力する。これにより、上記変速パターンの読替えに従って変速制御手段110によりダウンシフトが実行される場合に比較して、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行されなくともダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が悪化しない。
図13は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわち変速マップに従って自動変速機の例えば4速→2速パワーオンダウンシフトが判断されたときのその変速過程におけるトルク増加の応答性を向上させる制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。また、図14は図13のフローチャートに示す制御作動の一例であって、変速マップに従って自動変速機の4速→2速パワーオンダウンシフトが判断されるもののアクセル開度変化率が所定のアクセル開度変化率より大きいことから4→1パワーオンダウンシフトに読み替えられたときの、その変速過程における第2モータジェネレータによるトルクアシスト制御作動を説明するタイムチャートである。
図13において、前記変速制御手段120に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA0において、変速マップに従って4速→2速パワーオンダウンシフトが判断されたか否かが判定される。このSA0の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。
上記SA0の判断が肯定される場合は前記アクセル開度変化率判定手段120に対応するSA1において、アクセル開度変化率Acc’(=dAcc/dt)が前記所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいか否かが判定される。図14のt1時点は、4速→2速パワーオンダウンシフトが判断されると共に、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判断されたことを示している。例えば、図12の矢印Aの場合であって、変速マップに従って変速制御手段110により4→2パワーオンダウンシフトが判断されると共に、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判断された場合である。
上記SA1の判断が否定される場合は前記変速制御手段110に対応するSA7において、変速マップに従って判断した通常の4→2パワーオンダウンシフトが実行される。この変速過程においては、運転者の加速要求が小さくパワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が低下しても違和感がないと思われるため、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御は実行されない。
前記SA1の判断が肯定される場合は前記トルクアシスト制御可否判定手段118に対応するSA2において、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できるか否かが判定される。例えば、第2モータジェネレータMG2の故障(フェイル)や機能低下、第2モータジェネレータ温度TMG2が高くなったことなどによる第2モータジェネレータMG2の出力制限、蓄電装置76の残容量SOCの低下や低温による機能低下、或いは第2モータジェネレータMG2の駆動に関連する電気系のフェイルや機能低下などが発生したような場合に、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できないと判定される。また、図示はしてないが前記SA1の判断が肯定される場合は前記変速時トルク制御手段116に対応するステップにおいて、変速マップに基づいて判断された4→2パワーオンダウンシフトを4→1パワーオンダウンシフトに変更するように変速パターンの読替えが実施される(図14のt1時点)。
上記SA2の判断が肯定される場合は前記変速制御手段110に対応するSA3において、上記読替えが実施された変速パターンに従って4→1パワーオンダウンシフトが実行される。図14のt2時点は、4→1パワーオンダウンシフトが開始されたことを示している。次いで、前記変速時トルク制御手段116に対応するSA4において、4→1パワーオンダウンシフトの変速途中から変速完了までに渡って第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行される。図14のt4時点乃至t6時点は、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行されたことを示している。図14のアウトプットトルク(自動変速機10の出力トルクTOUT)に示すように、破線のトルクアシスト無しの場合として示したt5時点から立ち上がるトルク増加すなわちダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して、より早いt4時点からトルク増加が開始される。
前記SA2の判断が否定される場合は前記変速時トルク制御手段116に対応する図示しないステップにおいて、4→1パワーオンダウンシフトに変更するように読み替えられた変速パターンが、4→2ダウンシフトを一旦実行した後に2→1ダウンシフトが実行されるように変更される。そして、前記変速制御手段110に対応するSA5において、先ずその4→2ダウンシフトが実行されて、第2変速段が一旦形成される。次いで、前記変速制御手段110に対応するSA6において、連続してその2→1ダウンシフトが実行される。このように、4→1パワーオンダウンシフトの変速過程で第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行されなくとも、第2変速段が一旦形成されるので、4→1ダウンシフトが一挙に実行される場合に比較してダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が悪化しない。
図15は、前記電子制御装置90の制御作動の要部すなわち変速マップに従って自動変速機の例えば4速→3速パワーオンダウンシフトが判断されたときのその変速過程におけるトルク増加の応答性を向上させる制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。この、図15は前記図13に対応する別の実施例であって、変速マップに従った4速→2速パワーオンダウンシフトの判断が4速→3速パワーオンダウンシフトの判断になっていることが主な相違点である。
また、図16は図15のフローチャートに示す制御作動の一例であって、変速マップに従って自動変速機の4速→3速パワーオンダウンシフトが判断されるもののアクセル開度変化率が所定のアクセル開度変化率より大きいことから4→2パワーオンダウンシフトに読み替えられたときの、その変速過程における第2モータジェネレータによるトルクアシスト制御作動を説明するタイムチャートである。この、図16は前記図14に対応する別の実施例であって、4→1パワーオンダウンシフトへの読替えが4→2パワーオンダウンシフトへの読替えになっていることが主な相違点である。
また、図17は図15のフローチャートに示す制御作動の一例であって、変速マップに従って自動変速機の4速→3速パワーオンダウンシフトが判断され、そのまま4→3パワーオンダウンシフトが実行されたときの制御作動を説明するタイムチャートである。
図15において、前記変速制御手段120に対応するSB0において、変速マップに従って4速→3速パワーオンダウンシフトが判断されたか否かが判定される。このSB0の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。
上記SB0の判断が肯定される場合は前記アクセル開度変化率判定手段120に対応するSB1において、アクセル開度変化率Acc’(=dAcc/dt)が前記所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいか否かが判定される。図16のt1時点は、4速→3速パワーオンダウンシフトが判断されると共に、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判断されたことを示している。例えば、図12の矢印Bの場合であって、変速マップに従って変速制御手段110により4→3パワーオンダウンシフトが判断されると共に、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きいと判断された場合である。また、図17のt1時点は、4速→3速パワーオンダウンシフトが判断されると共に、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1以下であると判断されたことを示している。例えば、図12の矢印Bの場合であって、変速マップに従って変速制御手段110により4→3パワーオンダウンシフトが判断されると共に、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1以下であると判断された場合である。
上記SB1の判断が否定される場合は前記変速制御手段110に対応するSB7において、変速マップに従って判断した通常の4→3パワーオンダウンシフトが実行される。図17のt2時点は、4→3パワーオンダウンシフトが開始されたことを示している。図17のt2時点にて解放側係合装置であるクラッチC4の油圧が低下されてその解放が開始され、t3時点にて係合側係合装置であるクラッチC3の油圧が上昇されてその係合が開始され、t6時点にて変速が完了させられる。この変速過程においては、運転者の加速要求が小さくパワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が低下しても違和感がないと思われるため、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御は実行されない。
前記SB1の判断が肯定される場合は前記トルクアシスト制御可否判定手段118に対応するSB2において、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行できるか否かが判定される。また、図示はしてないが前記SB1の判断が肯定される場合は前記変速時トルク制御手段116に対応するステップにおいて、変速マップに基づいて判断された4→3パワーオンダウンシフトを4→2パワーオンダウンシフトに変更するように変速パターンの読替えが実施される(図16のt1時点)。
上記SB2の判断が肯定される場合は前記変速制御手段110に対応するSB3において、上記読替えが実施された変速パターンに従って4→2パワーオンダウンシフトが実行される。図16のt2時点は、4→2パワーオンダウンシフトが開始されたことを示している。次いで、前記変速時トルク制御手段116に対応するSB4において、4→2パワーオンダウンシフトの変速途中から変速完了までに渡って第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行される。図16のt4時点乃至t6時点は、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行されたことを示している。図16のアウトプットトルク(自動変速機10の出力トルクTOUT)に示すように、破線のトルクアシスト無しの場合として示したt5時点から立ち上がるトルク増加すなわちダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して、より早いt4時点からトルク増加が開始される。
前記SB2の判断が否定される場合は前記変速時トルク制御手段116に対応する図示しないステップにおいて、4→2パワーオンダウンシフトに変更するように読み替えられた変速パターンが、4→3ダウンシフトを一旦実行した後に3→2ダウンシフトが実行されるように変更される。そして、前記変速制御手段110に対応するSB5において、先ずその4→3ダウンシフトが実行されて、第3変速段が一旦形成される。次いで、前記変速制御手段110に対応するSB6において、連続してその3→2ダウンシフトが実行される。このように、4→2パワーオンダウンシフトの変速過程で第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行されなくとも、第3変速段が一旦形成されるので、4→2ダウンシフトが一挙に実行される場合に比較してダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が悪化しない。
図14、図16、および図17から明らかなように、ダウンシフトの変速段数が多い程、変速時間が長くされている。そして、前記図13および図14と、図15および図16とを比較すると、前記変速時トルク制御手段116に対応するSA4およびSB4における第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御では、飛び変速段数が多い図13および図14の実施例の方がトルクアシスト時間が長くされている。また、同様に、ダウンシフト後の変速比が大きい図13および図14の実施例の方が第2モータジェネレータMG2の出力トルクが大きくされてトルクアシスト量が多くされている。
上述のように、本実施例によれば、自動変速機10のパワーオンダウンシフトの変速過程において、そのパワーオンダウンシフトの内容に基づいて第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が変速時トルク制御手段116により実行されるので、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して早めに駆動輪32におけるトルクが増加されて、パワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が向上する。見方を変えれば、パワーオンダウンシフトの変速に要する時間は短くできないものの、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御により早めにトルクが得られるので、ダウンシフトに伴うトルク増加がより早く得られたようにユーザが感じる。つまり、トルクアシスト制御によるトルクの先出しで体感上変速完了が早められる。例えばダウンシフト前後の変速比変化などのパワーオンダウンシフトの内容の違いにより変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が異なることに合わせ、早めに駆動輪32におけるトルクが増加されてその応答性が向上する。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトにおける飛び越し変速の内容に基づいて第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御の方法を変更するので、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して早めにトルクが増加されて、パワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が向上する。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトにおける飛び越し変速の飛び越し段数が多い程、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御の時間を長くするので、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して早めにトルクが増加された状態が維持される。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトにおける飛び越し変速の飛び越し段数が所定段数以上のときに、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行するので、飛び越し変速の飛び越し段数が所定段数以上となって変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が相対的に長くなるときには、ダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加に比較して第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御により早めにトルクが得られる。反対に、飛び越し変速の飛び越し段数が所定段数未満となって変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が相対的に短くなるときには、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行せずともダウンシフトに伴う成り行きのトルク増加の応答性が比較的低下しないので、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御のための電力の消費が抑制される。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実行できないときには、パワーオンダウンシフトにおける飛び越し変速の飛び越し段数を制限するので、例えば電動機のフェイル(故障)或いは電動機へ供給される電力低下などにより第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御が実行されなくとも、飛び越し変速の飛び越し段数が多くなる場合に比較して、変速完了時の駆動力が得られるまでの時間が相対的に短くされてダウンシフトに伴うトルク増加の応答性が確保される。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトにおけるダウンシフト後の変速比γ’が大きい程、第2モータジェネレータMG2の出力トルクを大きくするので、ダウンシフト後の変速比γ’が大きい程大きくされるダウンシフト後に駆動輪32に生じるトルクと整合させることができる。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトの変速中に第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を開始するので、ダウンシフトに伴うトルク増加の変速フィーリングを確保しつつパワーオンダウンシフト時のトルク増加の応答性が向上する。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、パワーオンダウンシフトが終了したときに、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を終了するので、変速終了時に駆動輪32に生じるトルクは、専らダウンシフトに伴うトルク増加となってダウンシフトに伴うトルク増加の変速フィーリングが確保される。
また、本実施例によれば、第2モータジェネレータMG2は自動変速機10から駆動輪32への動力伝達経路に設けられて第2モータジェネレータMG2の出力が自動変速機10を介さずに駆動輪32へ伝達されるので、自動変速機10の変速の影響を受けずに、第2モータジェネレータMG2の出力が適切に駆動輪32へ伝達される。
また、本実施例によれば、前記変速時トルク制御手段116は、アクセル開度変化率Acc’が所定のアクセル開度変化率Acc1より大きい場合には、変速マップに基づいて判断されたパワーオンダウンシフトで切り替えられるべき変速段を、より低速側の変速段に変更するので、運転者の駆動力増加に対する要求がより強いと考えられるアクセルペダルの踏込操作が急であるときには、より大きな駆動力が得られるようにトルク増加される。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、変速時トルク制御手段116によるトルクアシスト制御を、パワーオンダウンシフトが飛び変速である場合で例示したが、必ずしも飛び変速でなくても良い。例えば、ダウンシフト後の変速比γ’が所定値大きい場合に、第2モータジェネレータMG2によるトルクアシスト制御を実施しても良い。また、8→7ダウンシフトや6→5ダウンシフトなどと、3→2ダウンシフトや2→1ダウンシフトなどとのように、パワーオンダウンシフトの内容が高速側変速段であるか低速側変速段であるかに基づいてトルクアシストの方法を変更しても良い。例えば、低速側変速段である程、トルクアシスト量やトルクアシスト時間を大きくする。
また、前述の実施例では、第2モータジェネレータMG2は、出力軸28に連結されていたが、駆動輪32に対して自動変速機10を介することなくトルクを出力可能に備えられればよい。例えば、出力軸28から駆動輪32への動力伝達経路の何れかに設けられればよい。
また、前述の実施例の入力クラッチCi、クラッチC1〜C4、ブレーキB1、B2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチなどの磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。