JP2005349883A - パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】
ステアリングホイールの微振動抑制と騒音低減に効果のある電動モータの制御装置を実現する。
【解決手段】
車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値よりも大きい転舵状態と、車輪操舵速度が所定の値よりも小さい保舵状態を判定する手段を備え、転舵状態のときには、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、保舵状態のときには、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御する。
前記車輪の操舵状態の判定には、操舵速度を検出する方法を用いる。あるいは、前記ステアリングシャフト上に、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータを設け、該電動モータに備えられた回転センサを用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、車輪の操舵力アシストを行うパワーステアリング装置に係り、ステアリングホイールの操舵フィール向上(アシスト力向上と微振動抑制)に効果のある電動モータの制御装置に関する。
運転者からの操舵トルク入力に応じて車輪操舵の力をアシストするパワーアシスト装置としては、油圧機構を用いるものが一般的である。この従来技術の例として、電動モータでオイルポンプを駆動して油圧を発生させ、発生された油圧をステアリングホイールから入力される操舵トルクをフィードバックして制御し、操舵補助力を発生するというものがある。従来の技術では、トルクセンサの値から操舵トルクを検出して、そのトルクに応じた操舵アシスト力を発生するために、油圧シリンダに供給される圧力を制御している。従来の技術では、操舵の状態に関わらず常に、電動モータを出力トルクが電流指令と比例するように制御している。
特許文献1には、操舵機構に連係された操舵軸と、前記操舵機構の操舵力を補助する油圧パワーシリンダと、該油圧パワーシリンダの両角油圧室に対し第1通路および第2通路を介して油圧を供給する一対の吐出口を備えた可逆式ポンプと、該可逆式ポンプを正・逆回転駆動させる電動機と、前記操舵軸の回転方向を検出する操舵方向検出手段と、前記操舵軸に作用する操舵力を検出する操舵力検出手段と、該操舵力検出手段で検出された操舵力信号および前記操舵方向検出手段で検出された操舵軸の回転方向信号に基づき前記油圧パワーシリンダに所望の油圧を発生させるために前記電動機に出力される駆動電流を演算する電動機制御手段と、前記電動機および/または電動機駆動回転素子の温度を測定する温度測定手段と、該温度測定手段で測定された電動機および/または電動駆動回路素子の温度上昇により前記電動機制御手段から出力される駆動電流の上限値を低下させる過熱保護手段と、を備えたパワーステアリング装置において、前記操舵軸の切り返しを検出する切り返し操舵検出手段と、該切り返し操舵検出手段で操舵軸の切り返しが検出された時には前記過熱保護手段により低下された駆動電流の上限値を越えた駆動電流の出力を一時的に可能とする過熱保護解除手段を備えているパワーステアリング装置が記載されている。
また、油圧機構を用いずに、電動モータのみで操舵をアシストする電動パワーステアリング装置も、小型車を中心に普及し始めている。この技術では、転舵から保舵、保舵から転舵への操舵の切換わり時に電動モータのアシスト力の調整をしている。例えば、特許文献2には、車速を検出する車速検出手段と、ステアリングホイールの操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、ステアリングホイールの操舵力を補助する電動機と、該電動機を検出車速および検出操舵トルクに応じて制御する制御手段と、前記ステアリングホイールが操舵速度を有した転舵状態と操舵速度が零の保舵状態との切換わりを検出する操舵変化検出手段と、前記検出車速が設定車速を下回る状態で前記転舵状態から保舵状態への切換わりが検出されると前記電動機に対し所定値への減流を行ない、保舵状態から転舵状態への切換わりが検出されると前記電動機に対し転舵値への増流を遅延的に行う増減手段と、を備えた電動パワーステアリング装置が記載されている。
特開2003−212141号公報(第2−5頁、第1図) 特開平8−295257号公報(第2−5頁、第2図) 荻野弘司著、「ブラシレスDCモータの使い方」、株式会社オーム社、pp.16−17
上記従来の技術では、以下に述べるような、操舵アシスト力向上と、ステアリングホイール微振動抑制を共に実現し得るような、電動モータの制御方法に対しては、必ずしも十分な配慮がなされていなかった。
一般に、パワーステアリング装置を重量の大きな車両に適用する場合や、俊敏な操舵レスポンスを実現する場合には、大きな操舵アシスト力が必要である。しかし、大きな操舵アシスト力を発生させると、パワーステアリング装置を構成する機器(電動モータ、油圧配管、作動油など)で決定される振動系を励振し易くなり、ステアリングホイール微振動の顕在化を招く可能性がある。
具体的には、ステアリングホイールを中立角度位置(車両直進状態)から遠ざかる方向へ操舵(切り込み)したり、反対に中立角度位置へ向かう方向へ操舵(切り戻し)する際に、操舵アシスト力が不足すると、重さ感・粘り感のある操舵フィールとなるため、操舵アシスト力を大きくする必要がある。一方、ステアリングホイールを保持する際には、従来の技術では、操舵アシスト力が大きいと、トルク外乱に対してパワーステアリングの振動系が不安定となり、ステアリングホイールに微振動が発生する可能性があった。
また、上記従来技術では、保舵/転舵の判定を、転舵時に発生するパルスで検出するために、ステアリングホイールを微小速度で回転させるような場合は、転舵と判定されていた。しかし、実際にはステアリングホイールを微小速度で回転するときに速度制御を行うと、ステアリングホイールの自励振動が顕在化しやすいという傾向があった。
本発明では、操舵アシスト力向上とステアリングホイールの微振動抑制に効果、特に微小速度において微振動抑制に効果のある電動モータの制御を行う電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、ステアリングホイールを保持する際には、操舵力を発生するパワーシリンダ内のピストンの運動を停止させ、固定容積となったパワーシリンダ内の圧力を一定に保つ必要がある。可逆式ポンプでは、作動油吐出量と漏れ量(戻り量)がバランスすることを利用して圧力を一定に保つので、ポンプ軸が一定回転する必要がある。ここで、可逆式ポンプは、電動モータにより駆動されるため、電動モータを一定回転に保つ必要がある。
そこで、車輪の操舵状態を検出する手段を用い、車輪操舵信号が特定の値よりも大きい転舵状態と、車輪操舵信号が特定の値よりも小さい保舵状態を判定する手段を備え、転舵状態のときには、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、保舵状態のときには、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御することを行う。
前記車輪の操舵状態の判定には、操舵速度を検出するとよい。あるいは、前記ステアリングシャフト上に、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータを設け、該電動モータに備えられた回転センサを用いることを行う。
本発明は、具体的には、操舵状態に応じて、車輪の操舵力を発生する電動モータと、電動モータへの指令値を生成するコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値よりも大きい場合には、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、前記車輪操舵速度が所定の値よりも小さい場合には、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御するパワーステアリング装置を提供する。
また、本発明は、車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令信号を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力して車輪操舵速度を算出して、該車輪操舵速度の大きさに依存して前記電動モータに対するトルク制御信号あるいは回転速度信号を操舵指令信号として生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいてトルク制御あるいは回転速度制御がなされるパワーステアリング装置を提供する。
また、本発明は、車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令信号を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力して微小速度と高速度との双方に適用される同一基準によって保舵領域と転舵領域とのいずれかの領域に属する操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて転舵領域にある場合にはトルク制御、そして保舵領域にある場合には回転速度制御がなされるパワーステアリング装置を提供する。
また、本発明は、車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令値を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力し、微分して微分値を求め、該微分値を閾値と比較することによって操舵状態が保舵状態および転舵状態のいずれの状態にあるかを判定し、保舵状態にあるときには保舵の、そして転舵状態にあるときには転舵の操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて保舵制御あるいは転舵制御がなされるパワーステアリング装置を提供する。
本発明によれば、車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵信号の大きさが所定の値よりも大きい転舵状態と、車輪操舵信号の大きさが所定の値よりも小さい保舵状態を判定する手段を備え、転舵状態のときには、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、保舵状態のときには、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御することで、ステアリングホイールの微振動を抑制することが可能となる。特に、微小速度にあっても特別な方法を付加することなくステアリングホイールの微振動を抑制することが可能になる。
本実施例として、操舵状態に応じて、車輪の操舵力を発生する油圧機構と、油圧機構を駆動するポンプと、ポンプを駆動する電動モータと、電動モータへの指令値を生成するコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値よりも大きい転舵状態と、車輪操舵速度が所定の値よりも小さい保舵状態を判定する手段を備え、転舵状態のときには、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、保舵状態のときには、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御するパワーステアリング装置が構成される。
また、本実施例として、車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令値を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力し、微分して速度値を求め、微小速度と高速度との双方に共通して設定された閾値に対する速度値の大きさによって保舵領域と転舵領域とのいずれかの領域に属する操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて転舵領域にある場合にはトルク制御、そして保舵領域にある場合には回転速度制御がなされるパワーステアリング装置が構成される。
前記車輪の操舵状態を判定する手段として、操舵速度を検出する。
前記ステアリングシャフト上に、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータを設け、車輪の操舵状態を判定する手段として、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータに備えられた回転センサを用いる。
本発明の実施例を、図1から図8を参照して説明する。パワーステアリング装置1は、運転者からの操舵トルク入力を検出して、パワーステアリングコントロールユニット(コントローラ、ECU)17が操舵指令信号となるアシスト力指令値を演算し、電動モータ20を駆動して車輪8a、8bを操舵する。
操舵入力手段は、ステアリングホイール16と該ステアリングホイールに契合されて操舵トルクを伝達するステアリングシャフト12および出力軸11、ステアリングシャフト12に設けられた舵角センサ13、出力軸11に設けられたピニオン9および操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ10、ピニオン9と当接するラック7からなる。
アシスト力を発生する油圧パワーシリンダ2は、車体幅方向に延設されたシリンダ4内を、ラック7に連結したピストンロッド28が貫通しており、ピストンロッド28にシリンダ4内を摺動するピストン5が固定されている。シリンダ4内には、ピストン5によって油圧室6が、すなわち左右の油圧室6aと油圧室6bが形成されている。車輪8aは、ラック7を介してピストンロッド28の端部に、車輪8bは、ピストンロッド28の端部にリンクを介して連接されている。
油圧機構を駆動する可逆式ポンプ(ポンプ)24は電動モータ20によって駆動される。油圧を発生する正逆回転可能な可逆式ポンプ24には、油圧配管27a、27bが接続され、それぞれが油圧室6(6a、6b)に接続されていると共に、供給路25を通じて作動油を貯蔵したオイルタンク26が接続されている。このオイルタンク26は、該可逆式ポンプからリークした作動油を回収するようになっている。可逆式ポンプ24の回転軸は、電動モータ20に契合されており、モータドライバ21からの指令電流を受けて電動モータ20が回転することによって正逆回転可能に駆動される。
パワーステアリングコントロールユニット17は、操舵トルク信号線14を介してトルクセンサ10と、舵角信号線15を介して舵角センサ13と、指令値信号線18およびモータ回転速度信号線19を介してモータドライバ21とそれぞれ接続されている。図2から図8を用いて後ほど詳細に説明するが、パワーステアリングコントロールユニットでは、車輪の操舵状態に対応する舵角情報をもとに車輪の転舵/保舵を判定して電動モータの制御を切り替え、運転者がステアリングホイール16を操作して入力する操舵トルクをもとに電動モータ20への指令値を算出している。該生成された指令値は、指令値信号線18を介してモータドライバ21へ伝達され、さらに、ドライバ出力ケーブル23を介して電動モータ20へ入力される。
次に図2を参照しながら、本実施例の車輪転舵/保舵に対応した電動モータ制御フローの概略について説明する。ステップS101で運転者がステアリングホイール16を操作すると、舵角センサ13により舵角が検出される(ステップS102)。ステップS103では、図3、4で後述する方法で車輪転舵/保舵の判定を行う。まず、車輪保舵と判定された場合には、ステップS104に進み、電動モータ20の回転速度が指令速度に一致するように保舵制御する。すなわち、回転速度制御を行う。回転速度制御されたモータにより、ステップS105で可逆式ポンプ24の軸が一定回転で駆動されて、ステアリングアシスト力が発生し(ステップS106)、車輪8a、8bが保舵される(ステップS107)。
一方、車輪転舵と判定された場合には、ステップS108に進み、電動モータ20の出力トルクが指令電流と比例するように転舵制御する。すなわち、トルク制御を行う。トルク制御されたモータにより、ステップS109で可逆式ポンプ24が駆動されて、ステアリングアシスト力が発生し(ステップS110)、車輪8a、8bが転舵される(ステップS111)。
次に図3、4を参照しながら、車輪転舵/保舵の判定方法について説明する。図3は、舵角と舵角の一階微分の時間変化を模式的に示している。操舵条件としては、ステアリングホイールを中立位置(自動車直進状態)から一定の操舵速度で舵角αまで切り込み、その後一定の操舵速度で中立位置まで切り戻したものである。この時、舵角の一階微分α’は、次式で求められる。
Figure 2005349883
図3の場合、中立位置(自動車直進状態)から一定の操舵速度でステアリングホイールを切り込むときには、一定値Bとなり、切り戻すときには一定値−Bとなる。また、保舵時には、α’=0となる。転舵から保舵に移行するときには、Bと0を補間する値となる。そこで、図示するように、閾値±Aを設定することで車輪転舵/保舵の領域を分割することが可能である。このように閾値±Aを設定することで、ステアリングホイール16を微小速度で回転させている場合にも、電動モータ20を回転速度制御することになる。また、電動モータの制御の実用上、図4に示すような保舵判定フラグFkを設定するとよい。該フラグFkは、舵角の一階微分値α’ が、次式で示す値を取るときに、1となるように設定する。
Figure 2005349883
次に、図5を参照しながら、パワーステアリングコントローラ17における電動モータ20への指令値生成方法の実施例について説明する。該パワーステアリングコントローラ17においては、舵角信号61が、操舵状態判定ブロックに入力され、保舵判定フラグFkが算出される。例えば、操舵の状態が転舵と判定されれば、Fk=0であるので、転舵フラグ42が1−Fk=1となり、トルク指令制御が選択されることになる。トルク指令値算出ブロック43は、操舵トルク信号60を用いて、図7に模式的に示すようなあらかじめ用意されたマップ情報を基にトルク指令値を算出する。算出された指令値は、指令値信号線18を介してモータドライバ21に入力される。該モータドライバでは、モータ回転速度・電機子電流信号線22を介して検出される電機子電流を用い、図6にて後述する制御系によってトルク制御が実行される。該電動モータの出力軸50には、可逆式ポンプなどのステアリング系負荷51が結合されおり、前記モータによって駆動される。一方、操舵の状態が保舵と判定されれば、Gk=1であるので、保舵フラグ44がFk=1となり、回転速度制御が選択される。速度指令値算出ブロック45は、操舵トルク信号60を用いて、図8に模式的に示すようなあらかじめ用意されたマップ情報を基に回転速度指令値を算出する。該回転速度指令値と、モータ回転速度信号線62を介して検出されるモータ回転速度との偏差が、比例ゲイン46で算出され、指令値信号線18を介して、モータドライバ21に入力され、回転速度制御が実行される。
次に、図6を参照しながら、モータドライバ21で実行されるトルク制御の原理について説明する。図6は、電動モータ20とモータドライバ21の一般的な制御ブロック線図を示している。(例えば、荻野弘司著、「ブラシレスDCモータの使い方」、株式会社オーム社、pp.16−17が参照される)
図6において各記号は次の内容を示す。
Ac : 電流アンプ
La : 電機子インダクタンス
Ra : 電機子抵抗
KT : トルク定数
J : モータ軸イナーシャ
1/Kc: 電流検出器
KE : 誘起電圧定数
また、1/sは積分を示す。
電流指令値70aと、電流フィードバックループからの電機子電流70bの差分が電流アンプ72に入力され、モータ軸の回転速度70eに比例する誘起電圧が誘起電圧定数ブロック76より決定される。電流指令値と誘起電圧の差分が、電機子抵抗・インダクタンス特性ブロック73に入力されて、電機子電流70bが生成され、トルク定数ブロック74にて電動モータ20の発生するトルク70cが決定される。該トルク70cと外乱トルク70dの差分により、モータ軸イナーシャブロック75にて、モータ軸回転速度70eが決定される。以上のような構成において、電流アンプ72の値を非常に大きくすると、電流指令70aに比例した電機子電流70bを流すことができ、従って、トルク70cも電流指令76aに比例することとなり、トルク制御が実行される。
以上のように構成された本実施例のパワーステアリング装置1を用いれば、転舵時には、電動モータ20がトルク制御されて可逆式ポンプ24を駆動する。一方、保舵時には、ステアリングホイール12は、微小速度で回転しているか、停止した状態である。このとき、ラック7の速度も微小あるいは、停止した状態である。このような状態では、可逆式ポンプ24は、作動油をほとんど吐出する必要なく、同時に吐出圧を一定に保つ必要がある。すなわち、可逆式ポンプ24の軸を微小速度で一定回転させればよい。しかるに、前記電動モータ20が回転速度制御されることで、前記可逆式ポンプ24が一定回転で駆動される。すなわち、該可逆式ポンプ24の吐出圧が一定に保たれるため、ステアリングホイール12の自励振動が抑制される。
本実施例では、パワーステアリングコントローラ17とモータドライバ21を別体としているが、これらを一体にしてもよい。この場合には、システムの小型化が図られるので車両への搭載性が向上する。また、操舵の状態を判別する舵角センサ13の代わりに、例えば、ピストンロッド28のストロークを検出するセンサを用いても良く、ステアリングホイール16部付近のスペースに余裕が無い場合には有効である。
本実施例のパワーステアリング装置は、運転者あるいは、コントローラの操舵状態に応じて、操舵状態に応じて、車輪の操舵力を発生する電動モータ20と、電動モータ20への指令値を生成するコントローラ17とを備え、前記車輪8a、8bの操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値、すなわち閾値よりも大きい場合には、電動モータ20へのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、車輪操舵速度が所定の値よりも小さい場合には、電動モータ20の回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御することを行う。
また、本実施例のパワーステアリング装置は、運転者あるいは、コントローラの操舵状態に応じて、操舵状態に応じて、車輪の操舵力を発生する油圧機構と、油圧機構を駆動するポンプと、ポンプを駆動する電動モータと、電動モータへの指令値を生成するコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、前記車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値よりも大きい転舵状態と、車輪操舵速度が所定の値よりも小さい保舵状態を判定する手段を備え、転舵状態のときには、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、保舵状態のときには、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御することを行う。
車輪8a、8bの操舵状態を判定する手段として、操舵速度を検出するようにしてもよい。
ステアリングシャフト上に、車輪8a、8bの操舵反力を生成する電動モータ20を設け、車輪8a、8bの操舵状態を判定する手段として、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータに備えられた回転センサを用いるようにしてもよい。
パワーステアリング装置に備えられたコントローラは、操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力して車輪操舵速度を算出して、車輪操舵速度の大きさに依存して電動モータに対するトルク制御信号あるいは回転速度信号を操舵指令信号として生成し、電動モータは該操舵指令信号に基づいてトルク制御あるいは回転速度制御を行う。
また、コントローラは、操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力して微小速度と高速度との双方に適用される同一基準によって保舵領域と転舵領域とのいずれかの領域に属する操舵指令信号を生成し、電動モータは該操舵指令信号に基づいて転舵領域にある場合にはトルク制御、そして保舵領域にある場合には回転速度制御を行う。
また、コントローラは、操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力し、微分して微分値を求め、該微分値を閾値と比較することによって操舵状態が保舵状態および転舵状態のいずれの状態にあるかを判定し、保舵状態にあるときには保舵の、そして転舵状態にあるときには転舵の操舵指令信号を生成し、電動モータは該操舵指令信号に基づいて保舵制御あるいは転舵制御を行う。
また、コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力し、微分して速度値を求め、微小速度と高速度との双方に共通して設定された閾値に対する速度値の大きさによって保舵領域と転舵領域とのいずれかの領域に属する操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて転舵領域にある場合にはトルク制御、そして保舵領域にある場合には回転速度制御を行う。
本実施例が実施されていることを確認するためには、モータドライバ21とモータ回転速度信号線19の結合を解き、該モータドライバ21からのモータ回転数信号のかわりに、例えば一定電圧を印加する。この場合、指令信号線18の指令値をモニターして、転舵状態では、印加電圧が増加しても指令値は変化せず、一方、保舵状態では、印加電圧の増加に応じて指令値が増加することを確認すればよい。また、転舵時と保舵時の、電動モータ20の回転速度を計測し、転舵時にはモータ回転速度変動が発生し、保舵時にはモータ回転速度が一定であることを確かめればよい。
次に本発明の別の実施例を、図9を用いて説明する。実施例1と同一の構成についてはその説明が援用される。以下同じである。
パワーステアリング装置100において、操舵入力手段は、ステアリングホイール16と該ステアリングホイールに契合されて操舵トルクを伝達するステアリングシャフト12および操舵反力生成用モータ80からなる。
パワーステアリングコントロールユニット17は、第一の実施例の舵角センサ13、操舵トルクセンサ10の代わりに、該操舵反力生成用モータ80から舵角信号線81を介して舵角を検出し、転舵トルクセンサ84から転舵トルク信号線83を介して転舵トルクを検出することで、回転センサを構成し、電動モータ20への操舵指令値を算出する。本実施例が、実施例1と異なる点は、ステアリングホイール16から入力される操舵力が、直接ピニオン9に伝達されることがなく、メカ的に絶縁されているステアバイワイヤシステムである点である。ステアバイワイヤシステムでは、車輪8a、8bからの操舵反力を生成する必要があるため、前記パワーステアリングコントロールユニット17が、操舵反力を生成して反力指令信号線82を介して、前記操舵反力生成用モータ80に反力指令値を入力する構成となっている。本実施例では、路面からの加振力を直接ステアリングホイール16に伝達することがないために、操舵感の向上に有効である。その他の構成は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。
さらに本発明の別の実施例を、図10を用いて説明する。パワーステアリング装置110において、電動モータ111は、モータドライバ112からの指令を受けて、モータ軸に設けられた歯車A113と、ステアリングシャフト12に設けられ前記歯車A113とかみ合う歯車B114を介して、操舵アシスト力を発生する。
本実施例では、保舵の時には、電動モータ111の回転が停止するように、回転速度制御を行うことが特徴である。
本実施例が、実施例1と異なる点は、本実施例では、油圧機構を用いずに、電動モータのみで操舵アシスト力を発生するために、部品点数が少なく、低コスト化、省スペース化、装置の軽量化に有効である。その他の構成は、実施例1と同様の構成であるため、説明を省略する。
本実施例が実施されていることを確認するためには、モータドライバ112とモータ回転速度信号線19の結合を解き、該モータドライバ112からのモータ回転数信号のかわりに、例えば一定電圧を印加する。この場合、指令信号線18の指令値をモニターして、転舵状態では、印加電圧が増加しても指令値は変化せず、一方、保舵状態では、印加電圧の増加に応じて指令値が増加することを確認すればよい。また、転舵時と保舵時の、電動モータ20の回転速度を計測し、転舵時にはモータ回転速度変動が発生し、保舵時にはモータ回転速度が停止していることを確かめればよい。
以上説明した本実施例をまとめると図11のようにブロック図で示される。
図11において、対策1としてハンドルの自励振動の防止、対策2として操舵アシスト力の向上、対策3として従来微小速度時と速度の高い時に応じて使い分けることによる装置が複雑化していたのをいずれの速度にも共通して使用可能としたパワーステアリング装置を提供することをねらいとしている。
このため、対策として、保舵/転舵状態判定に基づいて電動モータの回転速度制御、トルク制御の切替えを行うようにしている。
具体的な構成としては、操舵舵角信号としてはステアリングホイールの操舵状態あるいは車輪の操舵反力信号を求め、舵角信号を一階微分して微分値である速度値を閾値と比較することで保舵/転舵領域を分割設定する。転舵の場合と判定した時には、トルク指令値と異トルクとの差分を小とする制御を行い、保舵の場合と判定したときには回転速度制御を行う。
車輪操舵速度は上述のように、舵角信号を微分で求めることが容易で確実に得ることができるが、直接的に求めてもよく、車輪操舵速度の大きさに対応して、所定の範囲にあるか否かを判定して、保舵/転舵領域の設定を行い、電動モータ回転速度制御あるいはトルク制御を行う指令を生成することを行う。これによって電動モータについて回転速度制御あるいはトルク制御を行う。
本発明に係る実施例1のパワーステアリング装置全体図である。 本発明に係る車輪転舵/保舵時のモータ制御のフローを示すブロック図である。 本発明に係る車輪転舵/保舵時の判定方法を示した図である。 本発明に係る車輪転舵/保舵判定時の判定フラグの設定を示した図である。 本発明に係るパワーステアリングコントロールユニット内のモータ指令値生成フローを示したフローチャート図である。 本発明に係るモータドライバおよび電動モータをブロック線図で示したものである。 本発明に係るトルク指令値生成マップの一例を示した図である。 本発明に係る回転速度指令値生成マップの一例を示した図である。 本発明に係る実施例2における、パワーステアリング装置全体図である。 本発明に係る実施例3における、パワーステアリング装置全体図である。
符号の説明
1…パワーステアリング装置、2…油圧パワーシリンダ、4…シリンダ部、5…ピストン、6(6a、6b)…油圧室、7…ラック、8a…左前輪、8b…右前輪、9…ピニオン、10…操舵トルクセンサ、11…出力軸、12…ステアリングシャフト、13…舵角センサ、14…操舵トルク信号線、15…舵角信号線、16…ステアリングホイール、17…パワーステアリングコントロールユニット(コントローラ、ECU)、18…指令値信号線、19…モータ回転速度信号線、20…電動モータ、21…モータドライバ、22…モータ回転速度・電機子電流信号線、23…ドライバ出力ケーブル、24…可逆式ポンプ(ポンプ)、25…供給路、26…オイルタンク、27a…油圧配管、27b…油圧配管、28…ピストンロッド、41…操舵状態判定ブロック、42…車輪転舵判定フラグ、43…トルク指令値算出ブロック、44…車輪保舵判定フラグ、45…回転速度指令値算出ブロック、46…比例ゲイン、50…モータ出力軸、51…ステアリング系負荷、60…操舵トルク信号線、61…舵角信号線、62…モータ回転速度信号線、70a…電流指令値、70b…電機子電流、70c…出力トルク、70d…外乱トルク、70e…モータ回転速度、71…電流フィードバックゲイン、72…電流アンプ、73…電機子抵抗・インダクタンス特性ブロック、74…トルク定数ブロック、75…モータ軸イナーシャブロック、76…誘起電圧定数ブロック、80…操舵反力生成用モータ、81…舵角信号・モータ回転速度信号線、82…反力指令信号線、83…転舵トルク信号線、84…転舵トルクセンサ、100…パワーステアリング装置、110…パワーステアリング装置、111…電動モータ、112…モータドライバ、113…歯車A、114…歯車B。

Claims (8)

  1. 操舵状態に応じて、車輪の操舵力を発生する電動モータと、電動モータへの指令値を生成するコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、
    前記車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値よりも大きい場合には、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、前記車輪操舵速度が所定の値よりも小さい場合には、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御することを特徴とするパワーステアリング装置。
  2. 操舵状態に応じて、車輪の操舵力を発生する油圧機構と、油圧機構を駆動するポンプと、ポンプを駆動する電動モータと、電動モータへの指令値を生成するコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、
    前記車輪の操舵状態を検出する手段を用いて、車輪操舵速度が所定の値よりも大きい転舵状態と、車輪操舵速度が所定の値よりも小さい保舵状態を判定する手段を備え、転舵状態のときには、前記電動モータへのトルク指令値と実トルクの差分が小さくなるように制御し、保舵状態のときには、前記電動モータの回転速度が回転速度指令値との差分が小さくなるように制御することを特徴とするパワーステアリング装置。
  3. 請求項1乃至2のいずれかに記載のパワーステアリング装置において、前記車輪の操舵状態を判定する手段として、操舵速度を検出することを特徴とするパワーステアリング装置。
  4. 請求項1に記載のパワーステアリング装置において、前記ステアリングシャフト上に、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータを設け、車輪の操舵状態を判定する手段として、前記車輪の操舵反力を生成する電動モータに備えられた回転センサを用いることを特徴とするパワーステアリング装置。
  5. 車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令信号を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、
    前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力して車輪操舵速度を算出して、該車輪操舵速度の大きさに依存して前記電動モータに対するトルク制御信号あるいは回転速度信号を操舵指令信号として生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいてトルク制御あるいは回転速度制御がなされること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  6. 車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令信号を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、
    前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力して微小速度と高速度との双方に適用される同一基準によって保舵領域と転舵領域とのいずれかの領域に属する操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて転舵領域にある場合にはトルク制御、そして保舵領域にある場合には回転速度制御がなされること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  7. 車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令値を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、
    前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力し、微分して微分値を求め、該微分値を閾値と比較することによって操舵状態が保舵状態および転舵状態のいずれの状態にあるかを判定し、保舵状態にあるときには保舵の、そして転舵状態にあるときには転舵の操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて保舵制御あるいは転舵制御がなされること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
  8. 車輪の操舵状態を検出する操舵状態検出手段と、車輪の操舵力を発生する電動モータと、該電動モータに操舵指令値を与えるコントローラとを備えたパワーステアリング装置において、
    前記コントローラは、前記操舵状態検出手段によって検出された操舵状態を入力し、微分して速度値を求め、微小速度と高速度との双方に共通して設定された閾値に対する速度値の大きさによって保舵領域と転舵領域とのいずれかの領域に属する操舵指令信号を生成し、前記電動モータは該操舵指令信号に基づいて転舵領域にある場合にはトルク制御、そして保舵領域にある場合には回転速度制御がなされること
    を特徴とするパワーステアリング装置。
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