JP2005310975A - 焼結ネオジム磁石および製造方法、回転電機 - Google Patents

焼結ネオジム磁石および製造方法、回転電機 Download PDF

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Abstract

【課題】より防錆効果等が改善された焼結ネオジム磁石およびその製造方法、これを用いた回転電機を提供する。
【解決手段】水蒸気処理雰囲気がH2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>1であり、水蒸気処理温度は、300℃〜700℃であれば、Fe34酸化物層20とこのFe34酸化物層20上に形成されたFe23酸化物層30とを含む高級酸化物層40を有し、前記高級酸化物層40は、かつ、前記Fe34酸化物層20の平均の厚さが、前記Fe23酸化物層30の平均の厚さよりも厚いという焼結ネオジム磁石100が形成できる。緻密なFe34酸化物層20を厚くできることで耐食性が向上する。
【選択図】図4

Description

本発明は、焼結ネオジム磁石およびその製造方法、この磁石を用いた回転電機に関する。
近年、省エネルギー化および/または小型化のため、エアコンなどの家電製品、ハイブリッド自動車から産業用機器まで、小型で高性能な永久磁石モータの使用が拡大している。ネオジ鉄ボロン系磁石(Nd−Fe−B系磁石:ネオジム磁石)はこの要請に応える磁石であるが、その一方で、ネオジム磁石は従来のフェライト磁石などと比較して高価であり、今後いっそうの拡大のためには、磁石の低コスト化が望まれる。
このネオジ鉄ボロン系磁石のうち、ネオジム磁石は、その組織構成から電気化学的にNd−Feの局部電池を形成し、内部腐食しやすいという欠点をもつ。内部腐食が進行すれば強磁性相の脱落により磁気特性の劣化が生じる。また。この脱落により、磁気回路周辺への汚染も問題となる。
そこで、防錆および/または防食のため、ニッケルめっきやアルミコーティング、樹脂コーティングなどの磁石の表面処理が実用化されている。
下記特許文献1には、希土類金属、鉄、ボロンを主成分とする焼結磁石の表面にクロム酸をバインダとして積層された亜鉛薄片からなる皮膜を有する永久磁石が報告されている。この皮膜を形成する前に前処理として、スチーム処理を行うことによって気孔質の焼結磁石の封孔を行い、厚さ1μm以下のFe34の極薄皮膜下地を形成することが報告されている。
また、下記特許文献2および下記特許文献3には、Fe−B−R系永久磁石体表面に、真空中、不活性ガス中または還元性の雰囲気中で580℃にて熱処理を行うことで高温酸化皮膜層1μm〜5μmあるいは1μm〜2μmを形成し、その上に樹脂層を設けた永久磁石の製造方法が報告されている。
さらに、下記特許文献4には、研削加工を施した磁石体を真空中あるいは不活性ガス中で時効処理した後、大気中あるいは酸素濃度0.1Vol%以上の酸化雰囲気中で200℃〜350℃にて熱処理することにより磁石体表面に露出する正方晶相の表層にα−Fe、その外側にFeO、次にFe34、最外層にα−Fe23が順次形成され、露出する正方晶の粒界相はR23(Hexagonal)相からなる厚さ1μm〜20μmの表面層を得るか、あるいはさらにこの磁石体表面に耐酸化性樹脂層を被覆形成して耐食性永久磁石を得ることが開示されている。ここでα−鉄からFe23までの4層の表面層の厚みは1μm〜10μm厚みが好ましいとされ、250℃、2時間、大気中にて5μm厚さの表面層、4層が得られている。
特公平9−2643410号公報 特公平10−2791659号公報 特開平9−139307号公報 特許2844269号公報
しかし、上記特許文献1から特許文献3に係る発明・考案は、酸化処理のままでは耐食性が十分でなく、その後に必ずめっき・電着塗装等を行うことを必要とする。そのためその工程を必要とすることで生産性を向上できず高コスト要因となる。めっき(Niめっき等)・電着塗装等は、前処理として機械加工時に使用した切削油やクーラントなどに含まれる、油分や防錆剤等を取り除くために、脱脂、洗浄工程が必要となる。それ自体の工程に加えて、さらに、めっき液や処理に用いる有機溶媒等の環境負荷物質の処理が必要となる。
また、上記各文献では、酸化物層とめっきまたは樹脂コートの密着性に係る酸化物層の諸条件についての検討が十分であるとは言えない。例えば、酸化物層の厚さが適切な範囲内でないと、めっき等と酸化物層の密着度が不十分となる場合がある。この密着度が不十分となるとめっき等が酸化物層、すなわち磁石からはがれやすくなってしまう。
さらに、特許文献4においては、真空中あるいは不活性ガス雰囲気中の時効処理においてα―FeからFe23の表面4層が形成されているにも関わらず、真空中あるいは不活性ガス雰囲気中の時効処理ではその厚さが1μm未満にしかすぎないため、不十分な膜厚である。このため、膜厚を十分とするために、再び250℃の大気中にて酸化処理を行うことが必要となり、工程が増え高コストの要因となる。
また、この表面4層のうちFeOは緻密さに欠け、内部にボイドをもつため耐食性が不十分である。そのため本文献では耐酸化性樹脂等を表面被覆させることが必須となる。
本発明は、上記課題等に鑑みてなされたものであり、より防錆効果等が改善された焼結ネオジム磁石およびその製造方法、これを用いた回転電機を提供することを目的とする。
本発明の鉄を主成分として含有する焼結ネオジム磁石は、磁石表面部に、Fe34酸化物層とこのFe34酸化物層上に形成されたFe23酸化物層とを含む高級酸化物層を有し、前記高級酸化物層は、FeO酸化物を実質的に含まず、かつ、前記Fe34酸化物層の平均の厚さが、前記Fe23酸化物層の平均の厚さよりも厚いことを特徴とする。
このような高級酸化物層により、めっき・塗装等を利用することなく十分な防錆作用を得ることができる。前記高級酸化物層はFeOを含まない。Fe2O3、Fe3O4は、ポーラスな構造のために耐食性に劣るFeOに比べ、綿密な高級酸化物層を形成でき、焼結ネオジム磁石の表面を適切に保護できる。そのため、焼結ネオジム磁石が腐食することを防止できることになる。これによりめっき・電着塗装等の必要がなくなり、コストを削減できる。
上記焼結ネオジム磁石において、前記高級酸化物層は気孔を有し、この気孔が前記高級酸化物層を貫通していない構造を有すると好適である。
焼結ネオジム磁石の高級酸化物層の表面から磁石母体まで高級酸化物層を貫通した気孔がないので、この気孔を通じて磁石母体が腐食することを防止することができる。
上記焼結ネオジム磁石において、前記高級酸化物層の平均の厚さが3μm〜20μmであると好適である。
上記焼結ネオジム磁石において、前記ネオジム磁石組織は正方晶の主相と粒界相とからなり、前記主相の成分は、鉄を75原子パーセントから85原子パーセント、硼素を3原子パーセントから10原子パーセント、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbの希土類元素のうち少なくとも1種以上を5原子パーセントから20原子パーセントを含むと好適である。この成分比であれば磁気特性が向上する。
上記焼結ネオジム磁石において、さらに、前記高級酸化物層上にめっき、CVD蒸着層、PVD蒸着層、塗装、樹脂コートのうち少なくとも1つからなる表面被覆層を有し、前記高級酸化物層の厚さが3μm〜20μmであることを特徴とする。
この高級酸化物層の膜厚であれば、高級酸化物層上にめっき・電着塗装やCVD蒸着、PVD蒸着、樹脂コートなどの表面被覆層を被覆させた場合において、高級酸化物層と表面被覆層、ひいては磁石母体と表面被覆層の密着性を向上させることができ、磁石からの表面被覆層の剥がれを防止できる。
本発明の焼結ネオジム磁石の表面に高級酸化物層を形成する製造方法は、母合金粉末から焼結磁石の成形体が成形される成形工程と、この成形体を焼結する焼結工程と、この焼結体を水蒸気処理する水蒸気処理工程とを含み、前記水蒸気処理工程について、水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>1であり、水蒸気処理温度は、300℃〜700℃であることを特徴とする。さらにより好ましくは、水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>0であり、水蒸気処理温度は、450℃〜600℃である。
上記製造方法は、前記焼結工程と前記水蒸気処理工程との間に、さらに、前記焼結体を切削、研削、研磨する機械加工工程と、非酸化雰囲気にて行う時効処理工程を含むと好適である。前記時効処理工程と前記水蒸気処理工程とを同時に行うと好適である。
また、上記製造方法は、前記焼結工程と前記水蒸気処理工程との間であって、さらに、前記焼結工程後に、前記焼結体を切削、研削、研磨する機械加工工程を行わず、非酸化雰囲気にて行う時効処理工程を含むと好適である。
また、上記製造方法は、前記時効処理工程と前記水蒸気処理工程を同時に行うことで、前記時効処理工程の熱を利用して前記水蒸気処理温度に調整し、前記非酸化雰囲気を前記水蒸気処理雰囲気に調整すると好適である。
これら上記製造方法を用いると工程を削減でき、コスト的に有利である。特に機械加工工程を必要としなく、かつ、同一炉内で時効処理と水蒸気処理を行うと工程削減効果は大きい。
本発明の回転電機は、焼結ネオジム磁石を備える回転電機であることを特徴とする。このような焼結ネオジム磁石を備えた回転電機であれば、より低コストでより高精度なものを提供できる。
本発明は、より防錆効果等が改善された焼結ネオジム磁石およびその製造方法、これを用いた回転電機を提供できる。
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本実施形態では、ネオジム磁石として焼結ネオジム磁石(Nd−Fe−B系磁石)を用い、焼結ネオジム磁石を水蒸気処理を行い、その表面にFe2O3、Fe3O4からなり、FeOを含まない高級酸化物層を形成する。さらにこのようにして高級酸化物層を形成した焼結ネオジム磁石をそのまま回転電機としてモータに適用する。また、別の実施形態では同様に表面酸化物層が形成された焼結ネオジム磁石を樹脂コートして回転電機としてのモータに適用する。
「発明の経緯1:ネオジム磁石およびその製造方法」
(1)本発明者は、鉄を主成分として含む焼結ネオジム磁石の表面の防錆処理において、防錆処理のための表面の酸化物層にFeOが含まれると、FeOの存在により緻密な酸化物層の形成ができず、焼結ネオジム磁石の耐食性が劣ることを見出した。すなわち、FeOは緻密さに欠け、ポーラスなため、磁石母体を腐食させる要因となりやすく、上記特許文献4では耐食性が不十分である。したがって、FeOを含まない酸化物層の形成ができないかということを検討した。
(2)また、本発明者は、上記特許文献4の表面酸化物層はα―FeからFe23の表面4層が形成されているにも拘わらず、その厚さが1μm未満にしかすぎない。このため、膜厚を十分確保するために、再び250℃の大気中にて酸化処理を行うことが必要となり、工程が増えることを見出した。したがって、酸化物層形成を一工程で行うことができないかという検討を行った。
本発明者は、上記(1)、(2)の各検討を行った結果、焼結ネオジム磁石において、焼結後の磁石を所定の温度および水蒸気雰囲気の条件下で水蒸気処理(酸素雰囲気下処理)し、(1)FeOを実質的に含まず、(2)一工程で防錆処理として十分な膜厚を確保できる、ということを見出した。
「発明の経緯2:ネオジム磁石の製造工程の改善」
本発明者は上記「発明の経緯1」で見出した焼結ネオジム磁石の製造工程のさらなる改善を見出した。改善点は以下の(1)および/または(2)である。
(1)本発明者は、ネオジム磁石を焼結後、研削または切削して機械加工を行わないことで高価なネオジム磁石を研削または切削する機械加工工程により、ネオジム磁石の加工の際にネオジム磁石の材料部溜まりを低下させ、コストが高くなっている。したがって、コストパフォーマンスを向上させるために切削、研削、研磨の機械加工工程を行わないことが重要であることを見出した。そして成型密度の均一化と焼結条件の均一化および安定化により、寸法精度を向上させ、これによりネオジム磁石の機械加工を不要とした。
(2)本発明者は、時効処理工程と水蒸気処理工程が2工程と複数の工程となっていることの問題の検討を行った、したがって単一工程とすることが必要であるために時効処理工程と水蒸気処理工程を同一炉内で行い、時効処理工程の熱を利用することが重要であることを見出した。
「実施形態1」
「焼結ネオジム磁石の製造」
焼結ネオジム磁石のネオジ合金塊を粉砕する。主相の成分は、鉄を75原子パーセントから85原子パーセント、硼素を3原子パーセントから10原子パーセント、Nd、Pr、Dy、Ho、Tbの希土類元素のうち少なくとも1種以上を5原子パーセントから20原子パーセントを含む。この配合比率であれば磁気特性が向上する。粉砕されたネオジ合金塊を母合金粉末とし、この母合金粉末を磁場成形装置を用いて金型成形する。磁場成形装置はRIP(Rubber Isostatic Pressing)法、金型プレス法、静水圧成形法などを適用した装置など一般的なものを用いることができる。金型成形された母合金粉末を1100℃程で焼結し、焼結ネオジム磁石を製造する。
焼結後、真空中あるいは不活性ガス中で非酸化雰囲気にて時効処理を行う時効処理工程を行う。この前後に切削または研削の機械加工を行うこともできるが、行わない方がコスト上の観点から好適である。ここでさらに前記時効処理工程と前記水蒸気処理工程を同時に行うことで、前記時効処理工程の熱を利用して前記水蒸気処理温度に調整し、前記非酸化雰囲気を前記水蒸気処理雰囲気に調整すると同一炉で単一工程となり、便宜である。
すなわち、熱処理後、冷却中の焼結ネオジム磁石が450℃〜600℃になった段階で水蒸気処理装置を用いて冷却工程と同時に水蒸気処理を行い、高級酸化物層を形成する。焼結工程によって得られた熱を利用して水蒸気処理を一度に行えるので効率よく高級酸化物層を形成できる。水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>1であり、水蒸気処理温度は、300℃〜700℃であればよく、より好ましくは水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>0であり、水蒸気処理温度は、450℃〜600℃である。水蒸気処理雰囲気は酸素ポテンシャルの代用値としての意味も持つ。
このようにするとFe34酸化物層とこのFe34酸化物層上に形成されたFe23酸化物層とを含む高級酸化物層を有し、前記高級酸化物層は、かつ、前記Fe34酸化物層の平均の厚さが、前記Fe23酸化物層の平均の厚さよりも厚いという焼結ネオジム磁石が形成できる。緻密なFe34酸化物層を厚くできることで耐食性が向上する。
FeO酸化物を実質的に含まずとはX線回折によりピークが観察されない等の分析機器により実質的に検知されないことをいう。また、水蒸気処理によって成形したネオジム磁石の内部に存在する気孔の表面を酸化し、この酸化被膜を成長させることで内部の気孔を封孔し、耐食性を向上させることもできる。
上記焼結ネオジム磁石は、粉末冶金等を要因とする気孔を有する。この気孔が磁石母体まで高級酸化物層を貫通してなければこの気孔を通じて磁石母体が腐食することを防止することができ、より好適である。
自動車用モータに用いられている磁石は防錆効果を得るために、Niメッキ、アルミクロメート、カチオン電着塗装等による表面被覆処理がされているのが通常である。本発明では、これら表面被覆処理を行うことなく、焼結ネオジム磁石自体の表面を酸化させることで複合酸化物として適切な高級酸化物を形成し、焼結ネオジム磁石の防錆処理が可能となる。本発明者らは焼結ネオジム磁石はモータに組み込まれるまでが最もさびやすく、モータに組み込まれるとユニット中の油分によって防護されるため腐食し難くなることを見いだした。よって、モータに組み込まれるまで防錆され、適切な厚さの表面酸化皮膜を有していればよいことになる。上記本発明の構成の高級酸化物層であればモータに組み込まれるまで防錆されるのに十分な耐食性を示す。
「実施形態2」
「表面被覆層が形成された焼結ネオジム磁石の製造」
防錆処理として酸化被膜上にめっき、CVD蒸着層(例えばTiNを蒸着)、PVD蒸着層(例えばAlを蒸着)、塗装、樹脂コートのうち少なくとも1つからなる表面被覆層で表面被覆処理を行う。これらはNiメッキ、アルミクロメート、カチオン電着塗装、樹脂コート等の一般的なものを用いることができる。
本発明者らは、適切な厚さの本発明の高級酸化物層の厚さが3μm〜20μmであれば、これら表面被覆層との密着性が向上し、磁石と表面被覆層とが剥離してしまう不具合を防止できることを見出した。密着性が向上する一要因としては、酸化物により表面の微少な凹凸が増えると、樹脂コートや樹脂モールドが密の場合は磁石表面の導電性を下げることで分極作用が生じ、結果として密着性が向上し、磁石からの剥がれを防止できるものと考えられる。以下の表1に密着性試験の結果を示す。
表面被覆処理には前処理が必要となるが、本発明のネオジム磁石の製造方法を用いると前処理工程を大幅に削減できる。通常、表面被覆処理の前処理として切削等の機械加工時に使用した切削油やクーラントなどに含まれる、油分や防錆剤等を取り除くために、脱脂、洗浄工程が必要となる。本発明の水蒸気処理による形成方法であれば高温管理かつ適切な時間管理によって、磁石表面に付着した油分、防錆剤が揮発するために、磁石表面を清浄な状態とすることができ、前処理工程を削減できる。すなわち、揮発により脱脂工程を兼用し、表面に酸化物を形成することにより、めっき等との密着効率のよい焼結ネオジム磁石の製造方法を提供できることになる。従来、樹脂コートの前処理として化成処理等により密着性を向上させていたがこの工程を省略することが可能となる。
さらに、高級酸化物層と表面被覆層を複数持つ多層コートの焼結ネオジム磁石も提供することができる。複数コートによってより防食特性が向上し防錆効果が向上する。
「耐食性試験」
表2に焼結ネオジム磁石の耐食性試験の結果を示す。水蒸気処理の処理雰囲気(H2OとH2の分圧比:log(pH2O/pH2))、水蒸気処理温度を変化させて行った。なお、評価は耐食性試験とX線回折による定性解析により評価した。X線回折結果のピークデータの一例を図1に示す。
「評価」
表2より、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>1であり、水蒸気処理温度は、300℃〜700℃であれば好適な耐食性を示すネオジム磁石を提供できることがわかる。またX線回折結果のFeOピークが観察されないことから、形成される酸化物層は高級酸化物層であって、FeOを含まないことがわかる。さらに水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>0であり、水蒸気処理温度は、450℃〜600℃であればより好適な耐食性であることがわかる。
「断面観察」
図2、図3は本発明の焼結ネオジム磁石100を腐食環境で試験した後の断面図の写真である。図4は図1および図2の断面図の写真の模式図である。
「条件」
図2:信越化学製 N39UH 3%ナイタルエッチ
水蒸気処理条件 エアー導入にて昇温20分 530℃ 20分保持
図3:住友特殊金属製 NEOMAX 38VH 3%ナイタルエッチ
水蒸気処理条件 エアー導入にて昇温30分 550℃ 90分保持 蒸気導入
処理炉内部サイズ φ700×1000mm ボイラー能力 394kg/m3
図2、図3は図4の模式図で示されるように、焼結ネオジム磁石100は、磁石母体10の表面部にFe34酸化物層20、その上に表皮としてFe23酸化物層30を含む高級酸化物層40が形成されていることがわかる。なお、本観察は断面観察用の樹脂50を被覆して行った。
「評価」
図2、図3とも表面の高級酸化物層40により、磁石母体80が有効に保護されていることがわかる。
産業上の利用分野
本発明のネオジム磁石はネオジム磁石を使用する分野全般に亘って産業上の利用が可能である。例えば、自動車のモータ、ジェネレータ、モータ・ジェネレータなどの回転電機に適用できる。このような本発明のネオジム磁石を備えた本発明の回転電機は回転電機を使用する分野であれば特に分野を問わないが、例えばHV車、FCEV車など自動車業界での利用ができる。
高級酸化物層のX線回折結果である。 本発明の焼結ネオジム磁石の断面図の写真である。 本発明の焼結ネオジム磁石の断面図の写真である。 本発明の断面図の写真の模式図である。
符号の説明
10 磁石母体、20 Fe34酸化物層、30 Fe23酸化物層、40 高級酸化物層、100 焼結ネオジム磁石。

Claims (12)

  1. 鉄を主成分として含有する焼結ネオジム磁石であって、
    磁石表面部に、Fe34酸化物層とこのFe34酸化物層上に形成されたFe23酸化物層とを含む高級酸化物層を有し、
    前記高級酸化物層は、FeO酸化物を実質的に含まず、かつ、前記Fe34酸化物層の平均の厚さが、前記Fe23酸化物層の平均の厚さよりも厚い焼結ネオジム磁石。
  2. 前記高級酸化物層は気孔を有し、この気孔が前記高級酸化物層を貫通していない構造を有する請求項1に記載の焼結ネオジム磁石。
  3. 前記高級酸化物層の平均の厚さが3μm〜20μmである請求項1または2に記載の焼結ネオジム磁石。
  4. 前記焼結ネオジム磁石組織は正方晶の主相と粒界相とからなり、
    前記主相の成分は、
    鉄を75原子パーセントから85原子パーセント、
    硼素を3原子パーセントから10原子パーセント、
    Nd、Pr、Dy、Ho、Tbの希土類元素のうち少なくとも1種以上を5原子パーセントから20原子パーセントを含む請求項1から3のいずれか1つに記載のネオジム磁石。
  5. さらに、
    前記高級酸化物層上にめっき、CVD蒸着層、PVD蒸着層、塗装、樹脂コートのうち少なくとも1つからなる表面被覆層を有し、
    前記高級酸化物層の厚さが3μm〜20μmである請求項1から4のいずれか1つに記載の焼結ネオジム磁石。
  6. 焼結ネオジム磁石の表面に高級酸化物層を形成する製造方法であって、
    母合金粉末から焼結磁石の成形体が成形される成形工程と、
    この成形体を焼結する焼結工程と、
    この焼結体を水蒸気処理する水蒸気処理工程とを含み、
    前記水蒸気処理工程について、
    水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>1であり、
    水蒸気処理温度は、300℃〜700℃である製造方法。
  7. 前記水蒸気処理工程に代えて、
    水蒸気処理雰囲気は、H2OとH2の分圧比でlog(pH2O/pH2)>0であり、
    水蒸気処理温度は、450℃〜600℃である請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記焼結工程と前記水蒸気処理工程との間に、
    さらに、
    前記焼結体を切削、研削、研磨する機械加工工程と、
    非酸化雰囲気にて時効処理を行う時効処理工程を含む請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 前記焼結工程と前記水蒸気処理工程との間であって、
    さらに、
    前記焼結工程後に、前記焼結体を切削、研削、研磨等の機械加工工程を行わず、非酸化雰囲気にて行う時効処理工程を含む請求項6または7に記載の製造方法。
  10. 前記時効処理工程と前記水蒸気処理工程を同時に行うことで、
    前記時効処理工程の熱を利用して前記水蒸気処理温度に調整し、
    前記非酸化雰囲気を前記水蒸気処理雰囲気に調整する請求項8または9に記載の製造方法。
  11. 前記時効処理工程と前記水蒸気処理工程とを同時に行う請求項10に記載の製造方法。
  12. 請求項1から5のいずれか1つに記載の焼結ネオジム磁石を備える回転電機。
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