JP2005325450A - 磁性材料の製造方法、防錆層付き磁性材料粉末及びそれを用いたボンド磁石 - Google Patents

磁性材料の製造方法、防錆層付き磁性材料粉末及びそれを用いたボンド磁石 Download PDF

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吟也 足立
Kenichi Machida
憲一 町田
Kenji Noguchi
健児 野口
Masashi Nishimura
真史 西村
Masaru Hamaguchi
優 濱口
Noriyuki Kuwano
範之 桑野
Masaru Itakura
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Abstract

【課題】 磁性材料の表面に微量の金属を防錆被膜として均一に形成させることで、良好な耐食性が付与できることに加え、磁性材料の表面近傍の成分と供給された活性の高い金属との相互拡散及び反応により、磁性材料の防錆機能と磁気特性を従来の技術に比べ格段に向上せしめる方法を提供する。
【解決手段】磁性合金又は磁性金属間化合物からなり、粉末粒子内に磁性材料相の結晶粒界を有する磁性材料粉末と、該磁性材料粉末に対する防錆作用を有した金属成分(以下、防錆金属成分という)の供給源(以下、防錆金属供給源という)とを混合状態で密封容器内に入れる。その状態で密封容器内を非酸化性雰囲気に維持しつつ昇温して、金属供給源から防錆金属成分を磁性材料粉末の粒子表面に供給することにより、粒子表面に防錆金属成分を主体とする防錆層が形成するとともに、粉末粒子内部の結晶粒界に沿う領域にも、防錆金属成分を主体とする防錆層を形成して、防錆層付き磁性材料粉末を得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁性材料の製造方法、防錆層付き磁性材料粉末及びそれを用いたボンド磁石に関する。
近年、Nd−Fe−B系磁石材料あるいはSm−Fe−N系磁石材料など、Feを主成分とする高性能希土類永久磁石材料(以下、Fe系希土類磁石材料といい、それによって構成された永久磁石部材をFe系希土類磁石という)が開発されており、特にNd−Fe−B系磁石材料は優れた磁気特性を有することから、各種電気機器や自動車用のモータ、あるいはコンピュータ用のボイスコイルモータ等に広く使用されている。Nd−Fe−B系磁石材料は、その製法により、焼結磁石、熱間加工磁石及びボンド磁石(樹脂結合磁石)の3種類に大別される。このうちボンド磁石は、所定量の合金成分を配合・溶解後、溶湯を単ロール法等により急冷凝固させて得られる急冷薄帯を粉砕して原料磁石粉末を作り、その粉末をエポキシ樹脂、あるいはナイロン樹脂等の樹脂バインダとともに成形して所望の形状の磁石とするものである。上記磁石粉末は、主要な硬磁性相であるNdFe14B型正方晶金属間化合物相(以下2−14−1相という)が単磁区粒子径以下となった微細結晶粒組織を有し、粉末の状態で高い保磁力を示す。このようなボンド磁石は、焼結磁石及び圧延磁石と異なり成形後の加工がほとんど不要で寸法精度が高く形状自由度に優れ、しかも生産性が高いことから、特に小型モータ用のリング磁石などに大量に使用されている。一方、Sm−Fe−N系磁石材料は、磁性の主役を担うSm−Fe−N系化合物相が高温で分解しやすいため、もっぱらボンド磁石としての用途が模索されている状況である。
例えば、上記のようなFe系希土類磁石材料はFeを主成分としている上、化学的に活性な希土類元素を比較的多く含んでいることから、使用環境によっては、具体的には湿度や温度の上がりやすい環境下では腐食が問題となる場合がある。一般にFe系希土類磁石材料は、安定した磁気特性を確保するために、磁性相を形成する金属間化合物(例えば前記の2−14−1相である)の化学量論比よりも過剰な希土類成分を含有するように組成調整されることが多く、その過剰な希土類成分が希土類リッチ相となって磁性相とともに多相構造を形成する形となる。このような場合、異相間の局部電池反応も関係して腐食はより進行しやすい状況にあるといえる。このような腐食が進行すれば、該Fe系希土類磁石を励磁媒体とするモータ等の電子機器自体の性能劣化につながるばかりでなく、腐食反応物の飛散により周辺回路等にも悪影響を及ぼすことがある。
また、上記のような腐食が発生しやすい状況は原料粉末段階にても事情は変わらず、例えば粉末が長時間大気(特に高湿度のもの)にさらされたりすると、粉末の酸化劣化等により保磁力や最大エネルギー積などの磁気特性低下は避けがたくなる。
そこで、上記のような合金及び金属間化合物系磁性材料に対する防錆処理においては、しかるべき防錆処理が必要となる。従来、その具体的な方法として、蒸着法及び電解メッキ法が用いられてきた。しかし、前者の手法では磁性材料表面に対して被膜の形成が蒸発源方向からのみ進行するため立体形状をもつ磁性材料、特に粒径の小さい磁性材料粉末の表面を均一に隈なく被覆することは非常に困難である。また、積層した被覆金属が粉末間の凝集を引き起こすことが考えられ、多量の磁性粉末に対して被覆処理を行なうことは難しい。他方、後者では、被膜形成に使用する電解液により、磁性材料、とりわけ原料粉末が重大な損傷を受けると共に、電気伝導率の低い磁性粉末の表面酸化物層に均一な被膜を形成させるためには前処理として導電率の高いCu等で予備被覆する多段階処理が必要となること等の問題があった。
さらに、合金及び金属間化合物磁性粉末、特に希土類−Fe系磁性材料では、雰囲気中に存在する酸素源と希土類金属成分との反応性が高く、これに伴う磁気特性の低下が重要な問題となることから、被覆技術としては磁性材料粉末表面を完全に被覆できることが必要となる。このためには、前者の手法では完全な皮膜を形成するには多量の金属(通常非磁性の金属を用いる)を析出させければならず、この非磁性金属により希釈効果が生じ磁化の低下を招く。他方、後者では、均一な被膜は形成できる反面メッキ時に生じた磁性材料表面の酸化被膜中の酸素がボンド磁石作製時の熱処理工程で磁性粉末内部に拡散・浸透し、これにより酸化が進行し更に磁気特性は低下する。
加えて、合金及び金属間化合物磁性粉末がSm−Fe−N系である場合、被膜として形成される金属が熱処理により磁性粉末表面を改質し、磁気特性、特に保磁力Hcjを向上させることが知られている。この熱処理では、被覆金属と磁性材料の構成成分との相互拡散及び反応を効率よく進行させるために高温(〜600℃)で加熱する(例えば、特開平05−234729に開示されている)か、もしくは、低温(380〜400℃)で長時間(30時間以上)する必要がある(K. Makita, S. Hirosawa, J. Alloys Compd., 260 (1997) 236-241参照)。
特開平05−234729公報 K. Makita, S. Hirosawa, J. Alloys Compd., 260 (1997) 236-241参照
合金及び金属間化合物系磁性材料に対して行われている現行の蒸着法及び電解メッキ法による表面被覆では、微細に粉砕され、化学的に不安定な当該磁性材料微粉末に対して、前者では金属が蒸着源からの方向に沿ってのみ析出し成膜が起こり被膜に斑が生じる。また、ドライプロセスであることから粉末間で凝集が起こりやすいため、防錆能力の劣る表面又は被膜が形成されていない表面が部分的に残存し、その結果この領域から酸化が進行し磁気特性の劣化を依然として招くことになる。さらに、酸素が磁性材料内部へ拡散する経路となり易いクラック、粒界などの内表面に対しても保護膜を形成することは蒸着法では困難であった。
また、電解メッキ法では使用する電解液が活性な磁性材料自体に酸化等の損傷を与えるため、防錆処理に伴い磁気特性が大幅に低下し、更に磁性粉末表面に形成される導電率の低い酸化物層が電界メッキを阻害し、均一な被膜を作製するためには前処理が必要であるという欠点があった。
従って、合金及び金属間化合物系磁性材料に関して、保存並びに使用する雰囲気に依存せず、長期間高い磁気特性を維持できる優れた耐食性を有する磁性材料を作製するためには、磁性材料それ自身に損傷を与えることなく表面への均一な防錆被膜の新しい形成技術の確立が必要となる。
従来の蒸着法による成膜技術では、合金及び金属間化合物系磁性材料の個々の表面を均一に被覆しにくいことから、必要以上に多量の金属で被覆することで所望の耐食性を達成してきた。そして、これに伴い多量に被覆した金属(多くの場合非磁性のものが使用される)により希釈効果が生じ磁性材料の磁気特性に低下を招くという欠点を有している。従って、このような磁気特性の低下を避けるため、磁性材料の表面上に形成させる防錆被膜をより均一なものとし、可能な限り被膜金属として用いる金属の量を少なくすることが望ましい。
一方、合金及び金属間化合物系磁性材料の表面に金属を被覆した後、不活性ガス雰囲気下又は真空中で加熱によりその金属を磁性材料の表面近傍で構成成分との相互拡散を促すことで、金属被膜と磁性材料表面との密着性を高め防食性を向上させると共に、磁性材料の更なる耐環境性並びに磁気特性を向上させることが可能な場合がある。しかしながら、この加熱処理は被膜として用いた金属の融点以上の高温(〜600℃)で行われてきたため、特に磁性材料の微粉末では酸化の進行により却って本来の磁気特性の低下が避けられなかった。これは加熱処理により被膜を形成する工程で生じる酸化物層が磁性粉末の表面近傍に存在する磁性相を改質することによって生じると考えられる。従って、このような熱処理後において磁性材料本来の高い磁気特性を維持あるいは向上させるためには、金属被覆時に磁性材料に対して酸化などの劣化を起こさせないようにすることと、加熱処理温度が低温でも効果的に耐食性並びに磁気特性の向上に作用せしめる手法の確立が必要である。
本発明の課題は、各種モータ、アクチュエータ等の磁気回路に用いられている永久磁石の材料であり、希土類系に代表される合金及び金属間化合物系磁性材料に関し、磁気特性の永続的低下の主たる原因となる保存並びに使用雰囲気中に存在する酸素、水等から被る酸化による磁気特性の低下を、密着性が強く均一な防錆被膜を効率よく磁性粉末表面に形成させることで効果的に抑制し、これにより当該磁性材料の磁気特性の安定性を確保できる磁性材料の製造方法と、それにより得られる防錆層付き磁性材料粉末、さらにはそれを用いたボンド磁石を提供することにある。より詳しくは、合金及び金属間化合物系磁性材料表面に反応活性の高い金属を被覆金属として供給することで、これと磁性材料の構成成分との反応親和性を利用し粉末表面に金属を隈なく析出させ、均一な防錆被膜の形成を促すことで耐酸化性を付与し、さらに供給された金属を磁性材料の表面近傍の構成成分と相互拡散及び反応させることで密着性の強い防錆被膜を形成させると同時に、磁性材料の耐環境性と磁気特性を更に向上せしめる技術、及び得られた表面被覆磁性粉末を原料とするボンド磁石の安定性、耐久性の向上に寄与する技術を提供するものである。
上記の課題を解決するために、本発明の磁性材料の製造方法は、
磁性合金又は磁性金属間化合物からなり、粉末粒子内に磁性材料相の結晶粒界を有する磁性材料粉末と、該磁性材料粉末に対する防錆作用を有した金属成分(以下、防錆金属成分という)の供給源(以下、防錆金属供給源という)とを混合状態で密封容器内に入れ、
その状態で密封容器内を非酸化性雰囲気に維持しつつ昇温して、金属供給源から防錆金属成分を磁性材料粉末の粒子表面に供給することにより、粒子表面に防錆金属成分を主体とする防錆層が形成するとともに、粉末粒子内部の結晶粒界に沿う領域にも、防錆金属成分を主体とする防錆層を形成して、防錆層付き磁性材料粉末を得ることを特徴とする。なお、本明細書において、「磁性材料粉末に対する防錆作用を有した金属成分」とは、金属状態にて磁性材料粉末粒子を被覆したとき、その磁性材料粉末粒子を酸化腐食から保護する作用を有するものであれば、どのようなものを用いてもよい。例えば、自身の表面に不働態被膜を形成して耐酸化性を示す金属、及び犠牲腐食効果により結果的に磁性材料粉末粒子を構成する合金又は金属間化合物を保護する効果を有した金属、さらには、前記合金又は金属間化合物よりも腐食電位が高い金属(この場合、合金又は金属間化合物の表面ができるだけ緻密に覆われていることが望ましい)などを例示できる。なお、本発明において「主成分」あるいは「主体とする」とは、対象物質中にて着目している成分が最も重量含有率の高い成分であることを意味する。
また、本発明の防錆層付き磁性材料粉末は、磁性合金又は磁性金属間化合物からなり、粒子内に結晶粒界を有する磁性材料粉末の、粒子表層部と粒子内部における前記結晶粒界及に沿う領域とに、前記防錆金属成分を主体とする防錆層が形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明のボンド磁石は、上記防錆層付き磁性材料粉末を樹脂結合したことを特徴とする。
合金及び金属間化合物系磁性材料への防錆処理工程において、磁性材料表面に斑なく均一な被膜を形成させるには、立体形状を有する磁性材料の表面に対して3次元的に均等に防錆金属供給源を供給し、さらに被覆金属量を必要な限り少量で防錆被膜を形成することが必要となる。このように磁性粉末表面を均一に被覆させることは、被膜金属を気体状態とし積み重なった磁性粉末の隙間に進入させ、磁性材料との反応親和性により表面に吸着させ析出させる、あるいは磁性粉末を、防錆金属供給源を含有する分散媒中に分散させ、この分散状態で供給源から活性な金属を生成し磁性材料との反応親和性により粉末表面に析出させることにより可能となる。そのため、本発明では、当該磁性材料表面に均一に防錆金属供給源を供給するために被覆に用いる金属源と磁性材料粉末とを混合し、密封容器中で加熱することで、発生する活性の高い金属成分(例えば金属蒸気あるいは有機金属化合物)と磁性材料の構成成分との反応親和性を利用して表面に析出させることで、磁性材料表面を隈なく均一に被覆することに加え、磁性材料表面の被覆金属量を低減することができ、これにより希釈効果が抑制され高磁化の磁性材料を作製することが可能となる。さらに、酸素源を含まない条件下で被覆を行なうため、磁性材料の酸化による劣化を抑制することができ、優れた磁気特性と耐環境性を両立させた合金及び金属間化合物系の磁性粉末を作製することができる。
さらに、上記製法により実現可能な本発明の防錆層付き磁性材料粉末は、粉末粒子内部の結晶粒界に沿う領域にも、防錆金属成分を主体とする防錆層(以下、粒界防錆層という)が形成されるから、酸化劣化の成分拡散経路となる結晶粒界領域が強固に保護され、磁性材料の酸化による特性劣化を図る上で一層有利となる。特に、後述するNd−Fe−B系あるいはSm−Fe−N系金属間化合物を用いたニュークリエーション型の硬磁性材料の場合は、上記のような粒界防錆層の形成が、硬磁性材料の保磁力向上に有効に寄与する。
この場合、粒子表面から一定深さまでの粒子表層部に防錆金属成分を浸透させることにより、酸化進行が進みやすい粒子表層部に存在する結晶粒界に沿って防錆層を形成することが、高い磁気特性を維持しつつ防錆性の向上を図る観点において望ましい。このようにして得られる防錆層付き磁性材料粉末は、結晶粒界に沿って形成される防錆層の量が、粒子表層部において粒子内部よりも多くされてなるものとなる。結晶粒界に沿って形成される防錆層の、粒子表面からの浸透深さは、例えば1μm〜10μmの範囲に調整されていることが望ましい。浸透深さが1μm以下では、防錆性の付与効果が不十分となる場合があり、10μmを超えると磁気特性等に及ぼす悪影響が避けがたくなる。防錆金属成分の浸透は、例えば結晶粒界に沿った成分拡散や、あるいは結晶粒界に沿って形成されたクラック内空間への金属蒸気の供給・析出によりなされる。
磁性材料粉末粒子の表層部においては、厚さが5nm〜50μmとなるように防錆層が形成されてなることが望ましい。粒子の表層部の防錆層厚さが5nm以下では防錆性が不十分となり、50μmを超えると硬磁性相比率の減少により残留磁束密度を十分に確保できなくなる。また、結晶粒界に沿って形成される防錆層の厚さは、同様の理由により1〜100nmであることが望ましい。
合金及び金属間化合物系磁性材料の表面を均一に被覆する際、磁性材料を加熱する温度を制御することで、磁性材料表面では被膜を形成すると同時に、磁性材料の表面近傍で供給される金属と構成成分との相互拡散及び反応がスムーズに起こる。この相互拡散及び反応は、供給される金属が原子状、分子状又はクラスター状態であるため活性が高く、これにより従来の手法より低温の熱処理でも効果的に耐環境性並びに磁気特性の改善がなされる。
合金及び金属間化合物系磁性材料は、樹脂と混合し成形・磁石化されることでボンド磁石へと応用される。このボンド磁石、特に高性能磁石として重要視されている圧縮成形型のボンド磁石に関しては、ボンド磁石の成形過程も考慮すると原料となる磁性材料粉末に対して耐酸化処理を施すことにより効果的に酸化劣化が抑制されるため、本発明において磁性材料粉末表面上に均一な防錆被膜を形成させることで磁石成形工程並びに磁石の使用雰囲気から被る酸化劣化を抑制することが可能となり、磁石の高性能化、並びに磁石性能の耐久性を改善がなされる。
具体的には、合金及び金属間化合物系磁性材料に対する防錆処理として、磁性材料と防錆被膜の防錆金属供給源となる物質とを混合状態で耐熱密封容器内に封入後、酸素又は水等の酸素源を数十ppm以上含まない雰囲気下で均一に加熱することにより原子状又はクラスター状の金属を生成させ、これを目的とする磁性材料粉末表面に供給し、磁性材料又はこれを構成する成分と当該金属との反応親和性を利用して磁性材料表面に当該金属を均一に析出させ、かつ、引き続く粉末内部の粒界界面を経由して浸透させることで、金属、合金あるいは金属間化合物から構成される防錆被膜を形成せしめること(以下、収着法とも称する)ができる。これにより、高い磁気特性並びに耐環境性を有する合金及び金属間化合物系磁性材料が実現可能である。
防錆金属成分は金属蒸気の形で磁性材料粉末の粒子表面に供給することができる。金属蒸気の粉末粒子表面への析出、及び粒界を介した拡散により前記した防錆層を均一に形成することができる。この場合、具体的には、防錆金属供給源を、防錆金属成分を含有した金属インゴット又は粉末とし、密封容器内を減圧並びに昇温して、金属インゴット又は粉末からの防錆金属成分の気化を促進するようにすることが、均一な防錆層を簡単に形成できるので好適である。金属蒸気を効率よく発生させるためには、密封容器内を、防錆金属のインゴット又は粉末の融点以上、望ましくは沸点以上に加熱することが望ましい。
防錆金属成分としては、例えばAl、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnを使用することができる。これらの防錆金属成分は、特に金属状態のFeを主成分とする磁性材料粉末に対して防錆効果の点で優れており、特にはZnは防錆効果が大きい上、防錆層の形成温度を比較的低温化できるので、コスト上のメリットも大きい。Znを使用する場合は、密封容器内の温度を300〜500℃に昇温することが望ましい。温度が300℃未満ではZn蒸気の発生が不十分となる場合があり、500℃を超えると、温度上昇による磁性材料粉末へのZnの収着促進効果の向上が、それ以上は見込めなくなるのでエネルギー的な無駄が大きくなる。また、Sm−Fe−N系磁性材料のように、温度が高くなりすぎると、磁性相バルク中へのZn金属の拡散等により残留磁化等の磁気特性の低下を招く場合もある。この場合、防錆層をなす防錆金属成分は、当然にAl、In及びZnの1種又は2種以上を主体とするものとなる。
例えば、防錆金属供給源を金属インゴット又は金属粉末とし、これと目的とする磁性粉末とを耐熱密封容器内に混合状態で封入した後、減圧下で当該金属が気化するのに十分な温度で均一に加熱することで原子状又はクラスター状の金属蒸気として磁性粉末表面に供給することができる。そして、磁性材料と当該金属との反応親和性を利用して磁性材料粉末表面並びに粒界界面に、均一な金属、合金又は金属間化合物から構成される防錆被膜を形成せしめることが可能となる。この場合、防錆被膜源となる金属として低沸点金属であるZnを用い、これと目的とする磁性粉末との混合物をガラス又は金属製容器内に真空封入後、300℃から500℃で数分から数時間、均一に加熱処理することで、原子状又はクラスター状のZn金属蒸気を磁性粉末表面並びに粒界界面に供給することができる。その結果、Zn又はZnと磁性粉末との合金もしくは金属間化合物から構成される厚さ5nmから50μmまでの被膜を形成せしめることが可能となる。
他方、防錆金属供給源として、防錆金属成分の有機金属化合物を使用することも可能である。この方法によると、気相あるいは液相(あるいは両者が均一に混合・共存した臨界相)からの有機金属化合物の分解により、磁性粉末に均一な防錆層を形成することが可能となる。具体的には、密封容器内において、有機金属化合物を含有した有機溶媒中に磁性材料粉末を分散させた状態で昇温することにより有機金属化合物を分解・還元し、生成する防錆金属を磁性材料粉末の粒子表面に供給することで、前記防錆層の形成を行なうことができる。
有機金属化合物に含有される防錆金属成分としては、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnの1種又は2種以上を主体とするものを使用できる。いずれも比較的低温で分解可能であり、防錆性に優れた防錆層を均一に形成できる利点がある。この場合、有機金属化合物は、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnの1種又は2種以上からなる防錆金属原子Mに有機鎖CmHnが結合したものであり、その有機鎖CmHnに含まれる炭素原子数mが1以上(望ましくは3以上)のものを使用することが、分解温度の低温化を効果的に図ることができ、防錆層の製造コスト低減に寄与する。この場合、防錆層をなす防錆金属成分は、当然にAl、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnの1種又は2種以上を主体とするものとなる。
例えば、磁性粉末表面に被膜を形成する防錆金属供給源として低沸点の有機金属化合物(MRx;M=金属元素、R=CmHn)を用い、ステンレス製オートクレーブ等の密封容器中で当該有機金属化合物を含有する有機溶媒中に磁性粉末を分散させ熱処理を施すことができる。そして、有機金属化合物を分解・還元し、生成する金属を磁性粉末表面並びに粒界界面に収着させることにより、金属、合金又は金属間化合物より構成される防錆層を形成することができる。その結果、高い磁気特性並びに耐環境性を有する合金及び金属間化合物系磁性材料を作製することができる。
磁性粉末表面を被覆する金属の供給源を有機金属化合物とする場合、そのなかでも比較的分解温度の低いM=Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnを含有する有機金属化合物を用いれば、150℃から500℃で数分から数時間、加熱することで磁性粉末表面並びに粒界界面に金属、合金又は金属間化合物より構成される防錆被膜を形成することができる。特に、磁性粉末表面を被覆する金属の前駆体としてAl、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnを含有していることに加え、有機鎖を有し(m≧1;望ましくはm≧3)熱分解がより低温で促進される有機金属化合物を用いることが有効である。このようにすると、50℃から500℃で数分から数時間、加熱することで、より高い耐環境性を付与せしめた、高い磁気特性を示す合金及び金属間化合物磁性材料を作製することができる。
金属インゴットないし粉末を用いる場合も、あるいは有機金属化合物を用いる場合でも、密封容器内において、第一温度に昇温することにより防錆層を形成した後、第一温度よりも高温の第二温度に昇温して引き続き熱処理を行なうことが、欠陥の少ない均一な防錆層を形成する観点において有利である。第一温度と第二温度は、それぞれ一定の温度範囲内にて連続的あるいは段階的に変化する形で設定されていてもよい。
例えば、合金及び金属間化合物系磁性材料粉末表面並びに粒界界面に金属を供給し被膜を形成させた後、そのまま耐熱密封容器内の温度を上昇させ、成膜温度より高温で熱処理を行なう2段階もしくはそれ以上の複数の段階で処理を施すことができる。これにより、表面に析出した金属を磁性材料の表面近傍並びに粒界界面で更に拡散及び反応を促進させることができ、ひいては磁気特性並びに耐環境性をより向上せしることが可能となる。
磁性材料粉としては、前述の通り、Sm−Fe−N系金属間化合物又はNd−Fe−TM(遷移金属)−N系金属間化合物を主体とするものを使用することができる。
また、磁性材料粉末は、Nd−Fe−B系金属間化合物を主体とするものを採用することもできる。Nd−Fe−B系金属間化合物を主体とするボンド磁石用の磁石粉末(磁性材料粉末)は、以下のような急冷薄帯を粉砕することにより得られる。この急冷薄帯は、所定量の合金成分を含む溶湯を急冷して得られるもので、その平均結晶粒径が1μm以下であり、一般組成式をRFe100−x−yで表すことができる。ここで、RはNdを主成分(少なくとも全希土類中に原子含有率が50%以上)とし、その一部がDyないしPrの少なくとも一方によって置換可能な希土類成分であり、9≦x≦15、4≦y≦10である。なお、目的に応じて、RFe100−x−y−vの形で、Feのさらに一部を別の金属元素(例えば、Coなど:複数種類でもよい)Mにて置換することも可能である。その置換量vは磁気特性の大幅な低下をきたさない範囲にて、例えば0.1≦v<50程度の範囲にて適宜設定される。
上記急冷薄帯は、溶湯からの急冷により、飽和磁束密度及び結晶磁気異方性がいずれも大きいRFe14B型正方晶金属間化合物相(以下2−14−1相という)が平均粒径1μm以下の微細結晶粒となった組織を生じ、急冷直後の状態で高い保磁力と残留磁束密度を示すので、これを所定の粒子径の粉末に粉砕すればそのまま高性能のボンド磁石用粉末として使用できる。なお、上記平均粒径が1μmを超えると、薄帯の保磁力ないし減磁曲線の角形性が損なわれて充分な磁石性能が得られなくなるので、その平均粒径は上記範囲のものとされ、望ましくは0.5μm以下、さらに望ましくは0.1μm以下とされる。
また、前記したFeの置換元素Mとしては、v<30の範囲にてCoにより置換することができる。上記組成範囲内でCoを含有させることにより、2−14−1相のキュリー温度が上昇するとともに残留磁束密度の温度係数が改善され、自動車用モータのような高温の使用環境においても、安定かつ優れた磁気特性が確保されるボンド磁石用急冷薄帯を得ることができる。また、Coの添加により急冷薄帯の化学的安定性が向上し、高温多湿の環境下でも、その薄帯を用いたボンド磁石が腐食されたり磁気特性が低下したりすることが抑制される。しかしながら、その含有量が30原子%を超えると2−14−1相の飽和磁束密度が低下し、最大エネルギー積の低下につながるので好ましくない。なお、Coの含有量は、望ましくは2.5〜20原子%、さらに望ましくは5〜10原子%の範囲内で設定するのがよい。
次に、上記以外の成分であるが、希土類成分Rは急冷薄帯の優れた磁気特性を担う2−14−1相の主要構成成分であって、Ndを主体とし、合計の含有量が9〜15原子%の範囲に設定される(すなわち9≦x≦15)。希土類成分Rの含有量が9原子%未満になると、軟磁性相であるα−Fe相の比率が増大し、保磁力の低下を招く。一方、15原子%を超えると希土類成分を主体とする非磁性相の比率が増大し、飽和磁束密度の低下を招く。これらはいずれも最大エネルギー積の低下につながるので、希土類成分Rの含有量は上記範囲のものとされ、望ましくは10〜13原子%、さらに望ましくは11〜12原子%の範囲内で設定するのがよい。
また、Ndを主体とする希土類成分Rの一部をDy又はPrで置換することができる。Dyを添加することにより、2−14−1相の異方性磁界が高められ、急冷薄帯の保磁力を大幅に向上させることができる。これにより、例えばコンピュータのハードディスクドライブや自動車用のモータなど、温度が上昇しやすい環境で磁石が使用される場合、高温での保磁力の低下分が補われるので、厳しい温度環境での使用に耐える磁石を得ることができる。その添加量は、例えば0.1〜5原子%の範囲内で適宜選択できる。ただし、添加量が5原子%を超えると2−14−1相の飽和磁束密度が低下し、最大エネルギー積の低下を招くほか、Dyは高価であるため磁石の原料コスト上昇を招くので好ましくない。なお、TbはDyよりもさらに高価であるが、Dyとほぼ同等あるいはそれ以上の保磁力向上効果を有しているので、目的によっては使用可能である。
一方、Prは2−14−1相中のNdを置換した場合に、その飽和磁束密度及び異方性磁界の値をそれほど変化させないため、急冷薄帯のNd成分の相当量、場合によってはその全量をPrで置換することも可能であるが、Prの分離希土はNdのそれよりも高価であり、その分離希土の形での配合は原料コストの上昇を招くため好ましくない。しかしながら、Prは希土類原料の分離精製工程においてNdとともに分離抽出され、NdとPrの非分離希土であるジジムはNd及びPrの分離希土よりも安価であるので、これらをジジム(例えばジジムメタル)の形で配合すれば原料コストを低減することができるので好都合である。この場合、最終的に得られる急冷薄帯中のPrの含有量は、使用されるジジム中のPr含有比率により定まることとなる。
なお、上記した以外の希土類元素は、いずれもエネルギー積の上昇に寄与しないか逆にこれを低下させるものであり、できるだけ含有されないことが望ましいが、上記Nd、Dy、Pr等の希土類成分とともに、例えばその総量が1原子%以下の範囲内で不可避的に混入するものは含有されていても差しつかえない。
次に、Bは、希土類成分Rと同様に2−14−1相の必須構成成分であり、その含有量は4〜10原子%の範囲内(すなわち4≦y≦10)で設定される。Bの含有量が4原子%未満となると、軟磁性のNdFe17型相が生成して保磁力の低下を招き、含有量が10原子%を超えると非磁性のNdFe型相が生成して飽和磁束密度が低下する。いずれの場合も、最大エネルギー積を低下させることにつながるので、B含有量は上記範囲のものとされる。Bの含有量は、望ましくは4〜8原子%、さらに望ましくは5〜7原子%の範囲内で設定するのがよい。
Feは、2−14−1相の必須構成成分として、その大きな飽和磁化の主要部を担うものである。
このような急冷薄帯は、その平均粒子径が500μm以下となるように粉砕してボンド磁石用粉末とすることができる。そして、その粉末に後述の通りコーティング被膜を形成し、さらにエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂により結合することにより、ボンド磁石とすることができる。ここで、上記ボンド磁石粉末の平均粒子径が500μm以上であると、ボンド磁石内における磁石粉末及び樹脂の分布が不均一となり、ボンド磁石の表面磁束分布のばらつきを生ずる原因となるので、平均粒子径は上記以下のものとされる。一方、平均粒子径が細かくなりすぎると、例えば圧縮成形によりボンド磁石を製造する場合、磁石粉末の流れ性が低下し、その金型へのスムーズな充填が困難になり生産性の低下を引き起こすので、所定の平均粒径以上に設定される。なお、磁石粉末の平均粒子径は、望ましくは50〜400μm、さらに望ましくは100〜300μmの範囲内で設定するのがよい。
以下、ボンド磁石用急冷薄帯、それを用いたボンド磁石粉末及びボンド磁石の製造方法について説明する。まず、所定量の合金成分を配合し、次に不活性ガス雰囲気あるいは真空雰囲気等、所定の雰囲気中でその合金成分を溶解する。配合される合金成分は、それぞれの成分を単独で配合しても、Nd−Fe合金やフェロボロン等の母合金の形で配合してもいずれでもよい。また、溶解は、例えば高周波誘導溶解、アーク溶解等公知の溶解方法を用いることができる。
次に、その溶湯を急冷凝固させることにより、薄帯状ないしフレーク状の急冷薄帯が製造される。急冷の雰囲気は例えばアルゴン等の不活性ガス雰囲気が用いられ、急冷の方法としては、単ロール法を始め、双ロール法、スプラットクエンチ法、遠心急冷法、ガスアトマイズ法等、各種方法が適用できる。これらのうち、特に単ロール法は、溶湯の冷却効率が高く、またロール周速による冷却速度の調整が容易で、均質で高性能の急冷薄帯を大量生産するのに好適である。この場合、ロール周速を5〜35m/秒、望ましくは10〜30m/秒とすることが、微細で均一な結晶粒を有し、磁気特性に優れた急冷薄帯を得る上で望ましい。
得られた急冷薄帯は、スタンプミル、フェザーミル、ディスクミル等を用いる公知の粉砕方法により、前述の平均粒子径となるように粉砕され、ボンド磁石用粉末とされる。なお、粗粉砕した後にさらに微粉砕する二段階(あるいはそれ以上の多段階)により粉砕を行ってもよい。なお、粉砕後の粉末は、適宜メッシュ等により整粒して粒度調整することが望ましい。
ここで、上記急冷凝固により得られる急冷薄帯は、その粉砕前又は粉砕後に400〜1000℃の温度範囲において熱処理することができる。急冷直後の薄帯は、例えば急冷ロールとの接触部付近等、冷却速度の特に大きくなる部分に非晶質部を生じる場合がある。この非晶質部は軟磁性であり、保磁力、減磁曲線の角型性、エネルギー積の低下等を引き起こす場合がある。そこで、急冷薄帯に対し上記熱処理を行なうことにより、急冷直後に生じていた上記非晶質部を結晶化することができ、エネルギー積の低下等を防止することができる。熱処理温度が400℃より低い場合は、上記非晶質部の結晶化が充分進まず、上述の効果が充分得られない。一方、熱処理温度が1000℃を超えると、結晶粒が成長して粗大化し、保磁力ないしエネルギー積が却って低下する。従って、熱処理温度は上述の範囲内で設定され、望ましくは500〜800℃、さらに望ましくは600〜700℃の範囲内で設定される。
以上の方法により得られるボンド磁石用粉末に本発明の方法により前記した防錆層を形成し、その後樹脂成分と混合し、加圧成形又は射出成形することによりボンド磁石が製造される。加圧成形による場合は、上記磁石粉末に、エポキシ樹脂等の粉末状の熱硬化性樹脂を所定量、例えば1〜5重量%程度混合し、例えばダイ及びパンを有した金型によるプレス成形等により、例えば5〜10t/cm程度の加圧力で圧縮成形する。成形後、得られた成形体を所定温度、例えば80〜180℃程度に加熱することにより樹脂を硬化させ、ボンド磁石を得る。なお、樹脂硬化のための加熱は、上記加圧成形中に行ってもよい。この方法によれば、得られるボンド磁石中の磁石粉末の密度を高くでき、小型モータ用の高性能リング磁石等を製造するのに適している。
一方、射出成形による場合は、まず、ナイロン樹脂等の熱可塑性樹脂を磁石粉末に対し、圧縮成形の場合よりやや多い量、例えば10〜30重量%程度添加し、これを混練して成形用のコンパウンドを作製する。そして、このコンパウンドを加熱軟化させ、所定の成形機を用いて金型のキャビティに射出成形することにより、所望の形状のボンド磁石を得る。この方法により得られるボンド磁石は、磁石粉末密度がやや低いため、性能は圧縮成形によるものに及ばないが、多様で複雑な形状の磁石を容易に製造できる利点があり、モータスピンドル等の付属部品を上記コンパウンドとともに一体成形(インサート成形)することもできる。例えばリング状ボンド磁石は、ラジアル着磁されてモータロータあるいはステータとして利用される。
本発明では、合金及び金属間化合物系磁性材料の表面防錆処理として従来用いられてきた手法では、粉末表面に対して平面(2次元)的に被膜金属の析出が進行するため斑が生じ、表面を完全に覆うためには多量の被覆金属が必要であったことに対して、希土類磁性材料の表面処理を3次元的に金属を析出させることで行なうことにより、均一で耐食性に優れた防錆被膜の作製が可能であると共に、被覆金属量の低減化がなされ非磁性金属の引き起こす希釈効果による磁化の低下も避けることができ高磁化の磁性材料が作製される。さらに、表面近傍における被覆金属と構成成分との相互拡散も従来の手法と比較して低温で進行するため、高温での熱処理を施すことなく密着性の高い被膜が形成され大幅な磁気特性の低下が避けられることに加えて、一段階で磁気特性が向上するため多段階での複雑なプロセスが不要となる。
すなわち、本発明では、酸化により磁気特性の劣化が生じる合金及び金属間化合物系磁性材料に対して、密封容器中で加熱により活性の高い金属を粉末表面に供給することで、材料の複雑な立体部位表面に隈なく金属が析出し、均一な防錆被膜を形成することができることに加え、従来の手法に比べ低温でも下地となる磁性材料の構成成分との相互拡散及び反応が進行し、磁気特性の向上が可能となる。さらに、このように生成した金属防錆被膜は、対象とする磁性材料の不可避的な酸化を効果的に抑制し、それら本来の高い磁気特性を大気中でも維持することに有効である。これにより、磁性材料の応用分野として近年その需要を拡大してきているボンド磁石の高性能化並びに高耐食性化に大きく貢献することが期待できる。
以下、本発明の実施の形態を、図面及び実験データに基づき説明する。
(実施の形態1)
本発明の収着法を用いて希土類磁性材料のSm−Fe−N系に対して防錆金属供給源をZn粉末とし、実施した例を以下に示す。ここで用いているのは、防錆金属供給源を金属インゴット又は金属粉末とし、これと目的とする磁性粉末とを耐熱密封容器内に混合状態で封入した後、減圧下で当該金属が気化するのに十分な温度で均一に加熱することで原子状又はクラスター状の金属蒸気として磁性粉末表面に供給し、磁性材料と当該金属との反応親和性を利用して磁性材料粉末表面並びに粒界界面に、均一な金属、合金又は金属間化合物から構成される防錆被膜を形成せしめる方法である(以下、第一法という)。
Sm−Fe−N系磁性材料を、界面活性剤を添加した非極性有機溶媒中で湿式ボールミル粉砕することで、雰囲気中の酸素もしくは水に由来する酸化を受けにくく均一な粉砕が可能となり、酸素含有量が少なく粒度分布の小さい微粉末を作製することができる。
作製したSm−Fe−N系微粉末に対して5重量%以下のZn金属を混合し、ガラス容器に導入する。また、これら混合粉末と共に鋼球をガラス容器内に導入することで収着処理過程に生じる粉末間の凝集を効果的に抑制することが可能となり、均一な斑のない被膜が形成できる。ガラス容器内は1×10−6Torr程度まで真空排気した後封管する(図1,2参照)。
真空封管したガラス容器全体を、300から500℃の種々の温度で、2時間均一に加熱することでZn金属を気化させ、このZn蒸気中に磁性微粉末を曝すことでその表面へのZn収着を促進する。
収着処理を施した磁性微粉末の残留磁束密度Br並びに保磁力Hcjの収着処理温度に対する依存性を図3に示す。従来、保磁力Hcjの増大は、Zn金属の融点(419.6℃)付近での加熱処理によりみられ、十分な保磁力Hcjを得るためには蒸着あるいはメッキさせるZn金属量は磁性粉末に対して10重量%以上必要であったが、本発明では、保磁力Hcjの向上は従来の手法より低温の350℃における収着処理からでも顕著となり、そのときのZn金属量も磁性粉末に対して4重量%程度と少量で十分な保磁力の向上がみられた。また、収着処理を施した磁性粉末では、残留磁束密度Brも0.8Tを示し、蒸着法及び電解メッキ法で得られ、高保磁力化のための熱処理を施した磁性粉末と同等あるいはそれ以上の高残留磁束密度Br値が得られた。
次に、図5に、収着温度を350℃と固定し、収着処理時間を変化させた時の保磁力Hcjの値を示す。また、比較として蒸着法により作製された被覆粉末の保磁力変化も同時に示す。
蒸着法により作製された被覆粉末では1MA/m程度の保磁力を得るためには蒸着被覆処理後、380℃、30時間程度の追加の熱処理が必要であることに対して、今回開発した収着法を用いて作製したZn/Sm−Fe−N系粉末は、350℃、2時間という低温及び短時間という条件で十分に大きな保磁力が得られ、1段階の処理でも効率よく磁気特性の向上が可能であることが明らかとなった。これは、粉末表面上への高活性な金属の収着が3次元的に均一に進行するためであり、かつ磁性粉末表層部の活性なクラック並びに結晶粒界等からも収着金属の浸透・拡散が進行するため、より容易に反応が進行するものと考えられる。
図4に、第一法に係る収着法を用いて被覆したZn/Sm−Fe−N系被覆粉末の保磁力のZn金属量依存性を示す。また比較として蒸着法により作製した被覆粉末の保磁力のZn金属量依存性を示す。
蒸着法では、保磁力の値を向上させるためには5〜6重量%のZn金属が最低限必要であると考えられるが、本発明による収着法では、Zn金属量は3重量%程度で十分であることがわかる。これにより、非磁性金属の存在による磁束密度の低下が抑制され、かつ被膜供給源として磁性粉末と混合する金属量を少なくすることが可能となる。
図6に、前記第一法に係る収着作用を利用した手法を用いてZn金属を表面に収着した磁性微粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。表1には、電子プローブX線マイクロアナライザ(EPMA)による磁性微粉末表面の被覆金属Znの存在比をSmと比較して示す。なお、表1における磁性材料の測定表面は、図6中に示されている磁性材料の表面に対応する。これより、磁性微粉末の表面にはほぼ均一にZn金属が被膜を形成していることがわかる。
図7には、前記第一法において、加熱温度を350℃又は500℃としたときの、Zn金属を表面に収着被覆したSm−Fe−N系磁性微粉末の薄膜X線パターンを示す。比較として、防錆処理を施していないSm−Fe−N系磁性微粉末の薄膜X線パターンも併せて示す。防錆処理を施していない磁性微粉末は、大気中で表面が酸化されアモルファス相を形成しているが、350℃で収着処理を施した磁性微粉末は若干のα−Feの析出はみられるもののThZn17型の母構造が残存し、酸化を効果的に抑制していることがわかる。
図8には、前記第一法により防錆処理を施したSm−Fe−N系磁性微粉末の大気中における保磁力Hcjの経時変化を示す。比較として、特開平08−143913号に開示されている有機金属化合物の一つであるジエチル亜鉛(Zn(C)を紫外光により分解し、被膜金属を生成する手法を用いてZn金属を表面被覆したSm−Fe−N系磁性微粉末の保磁力Hcjの経時変化も併せて示す。特開平08−143913号による被覆方法で防錆処理を施したSm−Fe−N系磁性微粉末の保磁力Hcjは、大気中、50℃ではその値を維持することはできずに徐々に低下した。これに対して、本発明による防錆処理を施したSm−Fe−N系磁性微粉末の保磁力Hcjは、大気中、50℃で600時間放置してもその値に変化はなく、高い値を維持していたことから、収着法により形成された被膜は防錆効果により優れることが明らかとなった。
(実施の形態2)
実施の形態1と類似の第一法により、前記希土類磁性材料のNd−Fe−B系に対し防錆金属供給源を、Zn粉末を用いて実施した例を以下に示す。まず、異方化処理として水素化−不均化−脱水素化−再結合法(HDDR法として周知である)を施したNd−Fe−B系磁性粉末に対して5重量%以下のZn金属を混合し、ガラス容器に導入した後、このガラス容器は1×10−6Torr程度まで真空排気した後封管する。また、Nd−Fe−B系磁性粉末とZn金属粉末との混合粉末と共に鋼球等の混合媒体をガラス容器に導入することで、収着処理時に効果的に凝集を抑制できる(図1、2参照)。
真空封管したガラス容器全体を、300から450℃の種々の温度で、2時間均一に加熱することでZn金属を気化させ、このZn蒸気中にNd−Fe−B系磁性微粉末を曝すことで粉末の表面並びに粒界界面への収着を促進する。HDDR法によりえられる粒子の表層部には、NdFe14B結晶粒子間に多数のクラックが形成されることから、粒界界面へのZnの収着を行なう上で有利であると考えられる。
図9はFE−SEM 組成の組成像を、粉末粒子全体について撮影倍率1500倍で示したものである。また、図10はFE−SEM 組成の組成像を、粉末粒子の表面部分について撮影倍率5000倍で示したものである。これらの図より、粉末表面には厚さ3〜4μmの表面層が存在し、この層が粒子全体を均一に取り囲んでいることがわかる。同様の表面層は、Sm−Fe−N系並びにSm−Fe−TM−N系粉末粒子でも行なうことができる。
一方、これらの表面層をFE−SEM並びにTEMで観察した結果を図11及び12に示す。図より、表面層は微細なNdFe14B結晶粒子より構成され、さらにそれらの結晶粒界は幅5−40nmの粒界相で被われていることが明らかとなった。なお、これらの粒界層は、EDXによる組成分析からZn金属だけではなく、ZnとNd又はFeとの合金あるいは化合物相から構成されていることが確認できた。ただし、Znの含有量が50質量%以上であり、Znを主成分とするものであることもわかった。
次に、収着処理を施した異方性Nd−Fe−B系磁性粉末の磁気特性を表2に示す。
第一法に係る収着法を用いて防錆処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末の磁気特性は、収着処理温度を上昇させることで、原料磁性粉末の磁気特性と比較して低下した。300℃における収着処理では、磁性粉末と混合したZn金属粉末が気化せず残存した。
また、350℃で収着処理を施したところ、収着時間を長くするとともに磁気特性は低下した。しかし、収着処理を施した後でも非磁性のZn金属を被覆したことによる希釈効果が生じ若干の低下はみられたが依然1.3T程度の高い残留磁束密度Brを維持し、最大エネルギー積(BH)maxも300kJ/mと非常に高い特性を示すことが明らかとなった(図13参照)。
図14並びに図15には、第一法に係る収着法により防錆処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末を原料とした圧縮成形樹脂ボンド磁石を大気中、80℃並びに120℃に放置した時の磁束密度の経時変化をそれぞれ示す。
第一法に係る収着法により防錆処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末を用いて作製した圧縮成形樹脂ボンド磁石の減磁率は、80℃及び120℃のどちらにおいても、未処理のNd−Fe−B系磁性粉末を用いたボンド磁石より小さく、更に1000時間後最着磁し永久減磁率を求めた結果を表3に示す。本発明による収着法で表面被覆を施したZn/Nd−Fe−B系磁性粉末を用いて作製したボンド磁石の永久減磁率は、80℃並びに120℃ではそれぞれ−3.9%並びに−3.6%と、未処理の粉末を用いたボンド磁石のそれら(−8.1%及び−10.9%)に比べ絶対値が小さく、大気中における耐久性が大幅に改善されることが明らかとなった。
次に、本発明における収着法を用いて表面被覆を施したZn/Nd−Fe−B系磁性粉末を原料として作製した樹脂ボンド磁石の残留磁束密度Br並びに保磁力Hcjの120℃における温度係数α(Br)並びにβ(Hcj)をそれぞれ表4に示す。
表4より、本発明における収着処理を施したZn/Nd−Fe−B系磁性粉末を原料とする樹脂ボンド磁石の保磁力Hcjの温度係数β(Hcj)は未処理の粉末を用いたボンド磁石並びに市販の異方性ボンド磁石MQA−Tのそれと比較しても同等の値であったのに対し、残留磁束密度Brの温度係数α(Br)では大幅な向上がみられ、Nd−Fe−B系ボンド磁石の耐熱性を改善することが可能であった。
種々の条件により収着処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末を原料として作製した樹脂ボンド磁石の保磁力Hcj並びに残留磁束密度Brの150℃における温度係数α(Br)並びに(Hcj)を表5にそれぞれ示す。
表から、収着処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末を原料とする樹脂ボンド磁石では、残留磁束密度Br並びに保磁力Hcjの温度係数α(Br)並びに(Hcj)が収着処理時間を長くすることで改善されることがわかる。また、Nd−Fe−B系磁性粉末の粒径を小さくしても、同等の温度係数を有する樹脂ボンド磁石を作製することが可能である。
(実施の形態3)
本実施形態で用いているのは、磁性粉末表面に被膜を形成する防錆金属供給源として低沸点の有機金属化合物(MRx;M=金属元素、R=CmHn)を用い、ステンレス製オートクレーブ等の密封容器中で当該有機金属化合物を含有する有機溶媒中に磁性粉末を分散させ熱処理を施すことで、有機金属化合物を分解、還元し、生成する金属を磁性粉末表面並びに粒界界面に収着させることにより金属、合金又は金属間化合物より構成される防錆被膜を形成せしめる方法である(以下、第二法という)。以下、有機金属化合物の熱分解による防錆処理を、希土類磁性材料のSm−Fe−N系に対してジエチル亜鉛(Zn(C)を用いて実施した例を以下に示す。なお、有機金属化合物としては、これ以外にも、Al(C、Ga(C、In(C、Si(CH、Ge(CH、Sn(CH、Ti(CH等を用いることが可能である。
Sm−Fe−N系磁性材料を、界面活性剤を添加した非極性有機溶媒中で湿式ボールミル粉砕することで、雰囲気中からの酸化を受けにくく均一な粉砕が可能となり、酸素含有量が少なく粒度分布の狭い微粉末を作製することができる。作製したSm−Fe−N系磁性微粉末、分散媒としてジエチル亜鉛を含有する非極性有機溶媒を不活性ガスの充填されたグローブボックス中でそれぞれオートクレーブ中に導入し、密封する。密封したオートクレーブを、ジエチル亜鉛の熱分解温度以上で、種々の時間振とうしながら均一に加熱することでジエチル亜鉛を熱分解させ、Sm−Fe−N磁性粉末表面の被覆を行なう(図16参照)。ここで、ジエチル亜鉛(Zn(C)の熱分解温度は170℃から230℃であることが報告されている(Applied Organometallic Chemistry, 5, 337 (1991))。
表6に、0.15gのジエチル亜鉛を添加し熱分解温度より高い種々の加熱温度で行い表面被覆を施したZn/Sm−Fe−N系磁性粉末の残留磁束密度Br、保磁力Hcj並びに酸素量を、原料粉末のそれらと併せて示す。ここで、ジエチル亜鉛の添加量0.15gは、加熱処理により全て熱分解すると仮定すると磁性粉末に対して3重量%の被膜金属を生成することができる。
表6より、本発明による有機金属化合物の一つであるジエチル亜鉛の熱分解を利用して金属被覆を施したZn/Sm−Fe−N系磁性微粉末において、熱分解被覆処理を350℃で行なうことにより保磁力Hcjの向上がみられた。このような保磁力Hcjの増加は、前述したようにZn金属の融点(419.6℃)付近又はそれ以上の温度で加熱処理することでみられ、十分な保磁力Hcjを得るためには蒸着法あるいは電界メッキ法ではSm−Fe−N磁性粉末に対して約10重量%以上のZn金属量が必要であったが、本発明における収着法と同様、有機金属化合物の熱分解により活性な金属を磁性粉末表面に供給することで、従来の熱処理温度より低温の350℃から保磁力Hcjの向上がみられ、さらに被覆する金属量に関しても約2.5重量%程度と非常に少量のZn金属量でも保磁力Hcjの増加に効果がみられた。
一方、本発明における有機金属化合物としてジエチル亜鉛の熱分解により生成する金属を用いて防錆処理を施したZn/Sm−Fe−N系磁性微粉末の残留磁束密度Brは、前述した収着処理を施したZn/Sm−Fe−N系磁性微粉末のそれと同程度の0.8Tであり、蒸着法及び電界メッキ法で被覆処理を施し、引き続き高保磁力化処理を行った磁性粉末の残留磁束密度Brと同等あるいはそれ以上の値が得られた。
また、表6より、本発明による有機金属化合物の熱分解の手法を用いて作製したZn/Sm−Fe−N系磁性粉末は、被膜形成処理工程において大幅な酸素含有量の増加は起こらず、分散媒として用いた有機溶媒が磁性粉末を分散させると同時に、酸素源から磁性粉末を遮蔽することで酸化を効果的に抑制することが可能となる。
図17に、本発明による有機金属化合物の熱分解により防錆処理を施したZn/Sm−Fe−N磁性粉末の保磁力Hcjの大気中、50℃における経時変化を示す。被覆粉末の比較として、特開平08−143913号に開示されている有機金属化合物を、光分解を用いて金属を生成し、これを用いて表面に被膜を形成させる手法によりZn金属被覆を施したSm−Fe−N磁性粉末の保磁力Hcjの経時変化も併せて示す。特開平08−143913による手法で被覆を施したZn/Sm−Fe−N系磁性粉末の保磁力Hcjは、大気中、50℃では初期値を維持することはできず、徐々に低下した。これに対して、本発明による有機金属化合物の熱分解による防錆処理を施したZn/Sm−Fe−N磁性不末の保磁力Hcjは、大気中、50℃で放置しても高い値を維持し、優れた耐環境性を有することが明らかとなった。
(実施の形態4)
実施の形態3と類似の第二法に係る有機金属化合物の熱分解により防錆処理を施した、希土類磁性材料のNd−Fe−B系に対して実施した例を以下に示す。表7に、本発明によるジエチル亜鉛の熱分解により生成する金属を用いて表面被覆を行ったNd−Fe−B系磁性粉末の磁気特性を、比較試料として特開平08−143913に開示の手法を用いて表面被覆したNd−Fe−B系磁性粉末の磁気特性を併せて示す。
表より、本発明による被覆法を用いて防錆処理を施したNd−Fe−B磁性粉末は残留磁束密度Br、保磁力Hcj並びに最大エネルギー積(BH)max値は、依然高い値を保持していたが、原料粉末並びに特開平08−143913の手法による被覆粉末の値と比較して有機金属化合物の熱分解温度での加熱処理のため若干低い値を示した。しかし、特開平08−143913の手法でNd−Fe−B磁性粉末の表面を被覆したZn金属量は0.02重量%であった。これに対して、本発明によるジエチル亜鉛の熱分解で表面被覆を行ったZn/Nd−Fe−B磁性粉末のZn金属量は0.58重量%と、特開平08−143913の手法と比較して大幅に被覆量が向上し、高い磁気特性を保持したまま多量のZn金属で表面を被覆することが可能であった。
図18に、本発明による有機金属化合物の熱分解で表面被覆を施したZn/Nd−Fe−B磁性粉末の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図19並びに表8は、図18の磁性粉末表面から内部方向へのネオジウムNd並びにZnの存在比を電子プローブX線マイクロアナライザ(EPMA)により測定した結果である。これより、ジエチル亜鉛の熱分解により生成し、磁性粉末表面に析出したZnは、熱分解処理温度で表面から内部に拡散しており、一方、磁性材料の構成成分であるNdは表面へ拡散していることから、有機金属化合物であるジエチル亜鉛の熱分解により表面に析出したZn金属は、熱分解処理温度において磁性材料の構成成分と相互拡散し、より密着性の高い防錆被膜を形成していることがわかる。
本発明による有機金属化合物の熱分解を利用した収着法を用いて防錆処理を施したZn/Nd−Fe−B磁性粉末を原料とした異方性樹脂ボンド磁石を試作し、これの大気中、80℃における磁束密度の経時変化を追跡し減磁率を計測した。その結果を、未処理のNd−Fe−B磁性粉末を原料とした樹脂ボンド磁石の同じ条件における減磁率を併せて図20に示す。これより、本発明による被覆法で表面被覆したNd−Fe−B磁性粉末を用いたボンド磁石は、長期間高い磁束密度を維持し、高い耐環境性を有することがわかった。
本発明における収着法に用いた装置の概要図である。 本発明における収着法の密封容器の断面図である。 Zn金属蒸気を、収着法を用いることで表面処理を施したSm−Fe−N系磁性微粉末の残留磁束密度Br並びに保磁力Hcjの処理温度に対する依存性である。 本発明による収着法を用いて被覆したZn/Sm−Fe−N系被覆粉末の保磁力のZn金属量依存性である。 本発明の収着法で、処理温度を350℃と固定し、収着処理時間を変化させた時のZn/Sm−Fe−N系磁性粉末の保磁力Hcjの変化である。 本発明による収着法を用いて表面にZn金属の被膜を形成させた磁性微粉末の走査型電子顕微鏡写真である。 本発明による収着法を用いて防錆処理を施したSm−Fe−N系磁性微粉末と防錆処理を施さないSm−Fe−N系磁性微粉末の薄膜X線パターンである。 本発明によるZn金属蒸気の収着法を用いて表面処理を施したSm−Fe−N系磁性微粉末並びに特開平08−143913号に開示されている手法で被覆を施したSm−Fe−N系磁性微粉末の大気中、50℃における保磁力Hcjの経時変化である。 本発明によるZn金属蒸気の収着法を用いて表面処理を施したNd−Fe−B系磁性微粉末の撮影倍率1500倍のFE−SEM組成像である。 本発明によるZn金属蒸気の収着法を用いて表面処理を施したNd−Fe−B系磁性微粉末の撮影倍率5000倍のFE−SEM組成像である。 本発明によるZn金属蒸気の収着法を用いて表面処理を施したNd−Fe−B系磁性微粉末の撮影倍率35000倍のFE−SEM組成像である。 本発明によるZn金属蒸気の収着法を用いて表面処理を施したNd−Fe−B系磁性微粉末の撮影倍率25000倍のTEM明視野像である。 本発明の収着法により被覆したZn/Nd−Fe−B系磁性粉末と、原料として用いたNd−Fe−B系磁性粉末の減磁曲線である。 本発明の収着法で防錆処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末を原料とした圧縮成形樹脂ボンド磁石の大気中、80℃における磁束密度(減磁率)の経時変化である。 本発明の収着法で防錆処理を施したNd−Fe−B系磁性粉末を原料とした圧縮成形樹脂ボンド磁石の大気中、120℃における磁束密度(減磁率)の経時変化である。 本発明における有機金属化合物の熱分解に用いるオートクレーブ容器内での防錆処理スキームである。 本発明による有機金属化合物の熱分解により防錆処理を施したZn/Sm−Fe−N磁性粉末の保磁力Hcjの大気中、50℃における経時変化である。 本発明による有機金属化合物の熱分解で被覆を施したZn/Nd−Fe−B磁性粉末の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 図3のZn/Nd−Fe−B磁性粉末表面から内部方向へのネオジウムNd並びにZnの存在比を電子プローブX線マイクロアナライザ(EPMA)により測定した結果である。 本発明による有機金属化合物の熱分解を用いて防錆処理を施したZn/Nd−Fe−B磁性粉末を原料とした異方性樹脂ボンド磁石の大気中、80℃における磁束密度の経時変化である。

Claims (26)

  1. 磁性合金又は磁性金属間化合物からなり、粉末粒子内に磁性材料相の結晶粒界を有する磁性材料粉末と、該磁性材料粉末に対する防錆作用を有した金属成分(以下、防錆金属成分という)の供給源(以下、防錆金属供給源という)とを混合状態で密封容器内に入れ、
    その状態で前記密封容器内を非酸化性雰囲気に維持しつつ昇温して、前記金属供給源から前記防錆金属成分を前記磁性材料粉末の粒子表面に供給することにより、粒子表面に前記防錆金属成分を主体とする防錆層を形成するとともに、粉末粒子内部の前記結晶粒界に沿う領域にも、前記防錆金属成分を主体とする防錆層を形成して、防錆層付き磁性材料粉末を得ることを特徴とする磁性材料の製造方法。
  2. 粒子表面から一定深さまでの粒子表層部に前記防錆金属成分を浸透させることにより、前記粒子表層部に存在する結晶粒界に沿って前記防錆層を形成する請求項1記載の磁性材料の製造方法。
  3. 前記防錆金属成分は金属蒸気の形で前記磁性材料粉末の粒子表面に供給される請求項1又は2に記載の磁性材料の製造方法。
  4. 前記防錆金属供給源を、前記防錆金属成分を含有した金属インゴット又は粉末とし、前記密封容器内を減圧ならびに昇温して、前記金属インゴット又は粉末からの前記防錆金属成分の気化を促進する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
  5. 前記密封容器内を、前記防錆金属のインゴット又は粉末の融点以上に加熱する請求項4記載の磁性材料の製造方法。
  6. 前記防錆金属としてZnが使用される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
  7. 前記密封容器内の温度を300〜500℃に昇温する請求項6記載の磁性材料の製造方法。
  8. 前記防錆金属供給源として、前記防錆金属成分の有機金属化合物を使用する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
  9. 前記密封容器内において、前記有機金属化合物を含有した有機溶媒中に前記磁性材料粉末を分散させた状態で昇温することにより前記有機金属化合物を分解・還元し、生成する防錆金属を前記磁性材料粉末の粒子表面に供給する請求項8記載の磁性材料の製造方法。
  10. 前記有機金属化合物に含有される前記防錆金属成分は、Al、In及びZnの1種又は2種以上を主体とするものである請求項8又は9に記載の磁性材料の製造方法。
  11. 前記有機金属化合物は、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnの1種又は2種以上からなる防錆金属原子Mに有機鎖CmHnが結合したものであり、その有機鎖CmHnに含まれる炭素原子数mが1以上のものが使用される請求項10記載の磁性材料の製造方法。
  12. 前記密封容器内において、第一温度に昇温することにより前記防錆層を形成した後、前記第一温度よりも高温の第二温度に昇温して引き続き熱処理を行なう請求項1ないし11のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
  13. 前記磁性材料粉末は、希土類を含有する合金又は金属間化合物からなる請求項1ないし12のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
  14. 前記磁性材料粉末は、Sm−Fe−N系金属間化合物又はNd−Fe−TM(遷移金属)−N系金属間化合物を主体とするものである請求項13記載の磁性材料の製造方法。
  15. 前記磁性材料粉末は、Nd−Fe−B系金属間化合物を主体とするものである請求項13記載の磁性材料の製造方法。
  16. 前記Nd−Fe−B系金属間化合物を主体とする前記磁性材料粉末は、HDDR法により製造されたものが使用される請求項15記載の磁性材料の製造方法。
  17. 前記防錆層付き磁性材料粉末を樹脂結合してボンド磁石とする請求項1ないし16のいずれか1項に記載の磁性材料の製造方法。
  18. 磁性合金又は磁性金属間化合物からなり、粒子内に結晶粒界を有する磁性材料粉末の、粒子表層部と粒子内部における前記結晶粒界及に沿う領域とに、前記防錆金属成分を主体とする防錆層が形成されたことを特徴とする防錆層付き磁性材料粉末。
  19. 前記結晶粒界に沿って形成される前記防錆層の量が、粒子表層部において粒子内部よりも多くされてなる請求項18記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  20. 前記磁性材料粉末粒子の表層部において、厚さが5nm〜50μmとなるように前記防錆層が形成されてなる請求項18又は19に記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  21. 前記結晶粒界に沿って形成される前記防錆層の、粒子表面からの浸透深さが1μm〜10μmの範囲である請求項18ないし20のいずれか1項に記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  22. 前記結晶粒界に沿って形成される前記防錆層の厚さが1〜100nmである請求項18ないし21のいずれか1項に記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  23. 前記防錆金属成分は、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Ti及びZnの1種又は2種以上を主体とするものである請求項18ないし22のいずれか1項に記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  24. 前記磁性材料粉末は、Sm−Fe−N系金属間化合物又はNd−Fe−TM(遷移金属)−N系金属間化合物を主体とするものである請求項18ないし23のいずれか1項に記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  25. 前記磁性材料粉末は、Nd−Fe−B系金属間化合物を主体とするものである請求項18ないし23のいずれか1項に記載の防錆層付き磁性材料粉末。
  26. 請求項18ないし25のいずれか1項に記載の防錆層付き磁性材料粉末を樹脂結合したことを特徴とするボンド磁石。
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