JP5348110B2 - 希土類磁石、希土類磁石の製造方法及び回転機 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類磁石、希土類磁石の製造方法及び回転機に関する。
希土類元素R、鉄(Fe)又はコバルト(Co)等の遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系希土類磁石は優れた磁気特性を有する(例えば、特許文献1〜4参照)。しかしながら、希土類磁石は主成分として酸化され易い希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石の耐食性を向上させるために、磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層を設けることが多い。
特開2001−196215号公報 特開昭62−192566号公報 特開2002−25812号公報 国際公開第2006/112403号パンフレット
しかしながら、表面に保護層を形成した希土類磁石においても、必ずしも完全な耐食性は得られていない。これは、高温多湿の環境では水蒸気が保護層を透過して磁石素体に到達することにより、磁石素体の腐食が進行することによる。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた希土類磁石及び希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機を提供することを目的とする。
本発明は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含むR−T−B系の磁石素体と、磁石素体の表面を被覆する第1保護層と、第1保護層の表面を被覆する第2保護層と、第1保護層と第2保護層の界面と、を備え、磁石素体が、TとしてFeを含み、第1保護層が、R、Fe及びAlを含み、第2保護層が、R及びAlを含み、第1保護層における総原子数に対するFe原子数の比率が、第2保護層における総原子数に対するFe原子数の比率よりも高い、希土類磁石を提供する。
上記本発明によれば、希土類磁石の耐食性が向上する。
上記本発明では、第1保護層における総原子数に対するFe原子数の比率が、第2保護層における総原子数に対するFe原子数の比率の5倍以上であることが好ましい。これにより、希土類磁石の耐食性がより一層向上する。
上記希土類磁石は、第2保護層の表面を被覆する第3保護層を更に備え、第3保護層は、Alを含み、第3保護層における総原子数に対するAl原子数の比率が、第2保護層における総原子数に対するAl原子数の比率よりも高いことが好ましい。このような第3保護層を更に備えることにより、第3保護層がない場合に比べて希土類磁石の耐食性が向上する。
本発明の回転機は、上記本発明の希土類磁石を備える。耐食性に優れた希土類磁石を備える回転機は、苛酷な環境下で使用しても、長期間に亘って優れた性能を維持することができる。
本発明に係る希土類磁石の製造方法は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含むR−T−B系の磁石素体の表面にAl偏平粉を付着させる工程と、Al偏平粉を付着させた磁石素体を540〜630℃で加熱し、30℃/分以上の冷却速度で急冷する工程と、を備え、磁石素体は、TとしてFeを含有する。これにより、上記のような所定の第1保護層及び第2保護層を備える本発明の希土類磁石又は所定の第1保護層、第2保護層及び第3保護層を備える本発明の希土類磁石を得ることが可能となる。なお、Al偏平粉を付着させて加熱する前の磁石素体の状態は、完成後の希土類磁石が備える磁石素体の状態と必ずしも同じではない。加熱工程において、磁石素体に付着させたAl偏平粉と磁石素体の表面部との反応により保護層が形成されるからである。
本発明によれば、耐食性に優れた希土類磁石及び希土類磁石の製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係る希土類磁石(第一の希土類磁石)の斜視図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線断面図である。 図3(A)、図3(B)及び図3(C)は、それぞれ本発明の他の実施形態に係る希土類磁石(第二の希土類磁石)の断面図であり、図1に示す希土類磁石のII−II線断面図に対応する図である。 本発明の一実施形態に係る回転機の内部構造を示す説明図である。 実施例1の希土類磁石の切断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一の要素については同一の符号を付す。
(希土類磁石)
[第一の希土類磁石]
図1及び2に示すように、本実施形態に係る第一の希土類磁石100は、磁石素体10と、磁石素体10の表面を被覆する第1保護層20と、第1保護層20の表面を被覆する第2保護層22と、を備える。第1保護層20は、必ずしも磁石素体10の表面を完全に被覆している必要はないが、表面を完全に被覆していることが好ましい。第1保護層20が磁石素体10の表面を完全に被覆していることにより、希土類磁石100の耐食性を一層向上させることができる。
第2保護層22は、第1保護層20の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。少なくとも一部を被覆していれば、希土類磁石100の耐食性を十分に向上させることができる。なお、第2保護層22は、第1保護層20の表面を完全に被覆していてもよい。
磁石素体10は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含むR−T−B系希土類磁石である。磁石素体10は、Tとして少なくともFeを含む。また、磁石素体10は、TとしてCoを更に含むことが好ましい。これにより、希土類磁石100の残留磁束密度及び保磁力が顕著に向上する。また、磁石素体10は、希土類磁石100の保磁力の更なる向上、生産性の向上及び低コスト化の観点から、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)及びバナジウム(V)等の他の遷移金属元素を含んでもよい。なお、本明細書において、Tは、周期表の第3族元素〜第11族元素に属する元素から上述した全希土類元素(軽希土類元素R及び他の希土類元素)を除いた遷移金属元素を意味するものとする。
磁石素体10は、Rとして、長周期型周期表の3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイドからなる群より選ばれる1種以上の元素を含む。ここで、ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を含む。また、磁石素体10は、Rとして、上述したもののうち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm及びEuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。特に、Rとして、Nd又はPrのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。これにより、希土類磁石100の残留磁束密度及び保磁力が顕著に向上する。
磁石素体10におけるRの含有割合は、磁石素体10全体に対して、好ましくは8〜40重量%であり、より好ましくは15〜35重量%である。Rの含有割合が8重量%未満であると、高い保磁力を有する希土類磁石100が得られ難くなる傾向にある。一方、Rの含有割合が40重量%を超えると、希土類磁石100の残留磁束密度が低下する傾向にある。なお、本実施形態において用いる単位「重量%」は「質量%」とほぼ同義である。
磁石素体10中のTの含有割合は、磁石素体10全体に対して、好ましくは42〜90重量%であり、より好ましくは60〜80重量%である。Tの含有割合が42重量%未満であると希土類磁石100の残留磁束密度が低下する傾向にあり、90重量%を超えると希土類磁石100の保磁力が低下する傾向にある。
磁石素体10に含まれるFeの割合は、磁石素体10に含まれるT全体に対して、好ましくは80原子%以上であり、より好ましくは90原子%以上であり、さらに好ましくは95原子%以上100原子%未満である。これによって、製造コストが低く且つ磁気特性に優れる希土類磁石100とすることができる。
磁石素体10中のBの含有割合は、磁石素体10全体に対して、好ましくは0.5〜5重量%である。Bの含有割合が0.5重量%未満であると、希土類磁石100の保磁力が低下する傾向にある。一方、Bの含有割合が5重量%を超えると、希土類磁石100の残留磁束密度が低下する傾向にある。
なお、磁石素体10は、希土類磁石100の保磁力の向上、生産性の向上及び低コスト化の観点から、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)及びビスマス(Bi)等の他の元素を更に含んでもよい。
磁石素体10は、不可避的不純物として、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及びカルシウム(Ca)等から選ばれる少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
第1保護層20は、希土類元素R、Fe及びAlを主成分として含む。第1保護層20は、Rとして、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。また、第1保護層20は、Rとして、上述したもののうち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm及びEuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。特に、Rとして、Nd又はPrのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、第1保護層20に含まれるRは、磁石素体10に含まれるRと少なくとも一種以上が一致している。特に、第1保護層20と磁石素体10とに含まれるRの種類が全て一致していることが好ましい。
第1保護層20は、上述のR、Fe及びAl以外の元素を含んでいてもよい。そのような元素として、例えば、Co、Cu、O、B及びCが挙げられる。
第1保護層20におけるRの含有割合は、第1保護層20全体に対して、好ましくは31〜40原子%である。第1保護層20におけるFeの含有割合は、第1保護層20全体に対して、好ましくは35〜64原子%である。第1保護層20におけるAlの含有割合は、第1保護層20全体に対して、好ましくは5〜25原子%である。R、Fe及びAlの各含有割合が上記の数値範囲内にあると、第1保護層20と磁石素体10との密着性がより良好となる。ただし、第1保護層20におけるR、Fe及びAlの各含有割合が上記の数値範囲外であっても本発明の効果は達成される。
第2保護層22は、希土類元素R及びAlを主成分として含む。第2保護層22は、Rとして、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む。また、第2保護層22は、Rとして、上述したもののうち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm及びEuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。特に、Rとして、Nd又はPrのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、第2保護層22に含まれるRは、第1保護層20に含まれるRと少なくとも一種以上が一致している。特に、第2保護層22と第1保護層20とに含まれるRの種類が全て一致していることが好ましい。
第2保護層22は、上述のR及びAl以外の元素を含んでいてもよい。そのような元素として、例えば、Fe、Co、Cu、O、B及びCが挙げられる。
第2保護層22におけるRの含有割合は、第2保護層22全体に対して、好ましくは50〜85原子%である。第2保護層22におけるAlの含有割合は、第2保護層22全体に対して、好ましくは15〜35原子%である。R及びAlの各含有割合が上記の数値範囲内にあると、第2保護層22の厚みのばらつきが生じにくくなる。ただし、第2保護層22におけるR及びAlの各含有割合が上記の数値範囲外であっても本発明の効果は達成される。
第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のFeの原子数の比率は、第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のFeの原子数の比率よりも高い。これにより、第2保護層22の腐食電位が第1保護層20よりも低くなる。その結果、腐食環境で第2保護層22が優先的に腐食され、第1保護層20が電気化学的に保護される犠牲防食効果が働くことで、希土類磁石100の耐食性(特に耐塩水性)が向上するものと、本発明者らは考える。そのため、第2保護層22は第1保護層20の少なくとも一部を被覆していれば、耐食性向上効果が現れる。
第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のFe原子数の比率は、第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のFe原子数の比率の5倍以上であることが好ましく、6倍以上であることがより好ましく、8倍以上であることが特に好ましい。上述のようなFe原子数の比率の比が5倍以上であることにより、希土類磁石100の耐食性がより一層顕著に向上する。
第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のRの原子数の比率は、第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のRの原子数の比率よりも低いことが好ましい。第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のRの原子数の比率は、第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のRの原子数の比率の1.5倍以上であればよい。これにより、希土類磁石100の耐食性がより一層顕著に向上する。
第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のAlの原子数の比率は、第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のAl原子数の比率よりも低いことが好ましい。第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のAlの原子数の比率は、第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のAlの原子数の比率の1.2倍以上であればよい。これにより、希土類磁石100の耐食性がより一層顕著に向上する。
第1保護層20の厚みD1は、0.1〜30μmであることが好ましい。第1保護層20の厚みD1が上記範囲内にあることで、希土類磁石100の耐食性と磁石特性が良好なものとなり易い。
第2保護層22の厚みD2は、0.1〜20μmであることが好ましい。第2保護層22の厚みD2が上記範囲内にあることで、希土類磁石100の耐食性と磁石特性が良好なものとなり易い。
磁石素体10と第1保護層20の界面、及び第1保護層20と第2保護層22の界面は、磁石素体10と、第1保護層20と、第2保護層22とで元素組成に差があるため、例えば、電子顕微鏡写真の目視によって判定することができる。
また、磁石素体10と第1保護層20の界面は、磁石素体10(主相)と第1保護層20におけるFeの含有量の差により決定することができる。すなわち、磁石素体10(主相)のFeの含有量は、第1保護層20よりも高くなっているため、これに基づいて界面の位置を判定することができる。さらに、第1保護層20と第2保護層22の界面は、Alの含有量の差により決定することができる。すなわち、第2保護層22のAlの含有量は、第1保護層20よりも高くなっているため、これに基づいて界面の位置を判定することもできる。さらにまた、第1保護層20と第2保護層22の界面は、Feの含有量の差により決定することができる。すなわち、第1保護層20のFeの含有量は、第2保護層22よりも高くなっているため、これに基づいて界面の位置を判定することもできる。
なお、磁石素体10、第1保護層20、第2保護層22及び後述する第3保護層24の各元素の組成の測定は、例えば、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)、X線光電子分光(X−ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)、オージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy:AES)又はエネルギー分散型蛍光X線分光(Energy Dispersive x−ray Spectroscopy:EDS)等の公知の組成分析法を用いて行うことができる。
さらに、希土類磁石100は、上記第2保護層22又は下記第3保護層24の表面上に、希土類磁石100を保護するための他の層を更に備えていてもよい。このような層としては、例えば、樹脂層やめっき層等が挙げられる。
希土類磁石100の寸法は、特に限定されないが、縦の長さが1〜200mm、横の長さが1〜200mm、高さが1〜30mm程度である。なお、希土類磁石100の形状は、図1及び2に示す直方体に限定されず、リング状や円板状であってもよい。
[第二の希土類磁石]
図3(A)、図3(B)及び図3(C)に示すように、本発明の他の実施形態に係る第二の希土類磁石100は、磁石素体10と、磁石素体10の表面を被覆する第1保護層20と、第1保護層20の表面を被覆する第2保護層22と、第2保護層22の表面を被覆する第3保護層24と、を備える。つまり、第二の希土類磁石100は、第3保護層24を更に備える第一の希土類磁石に相当する。第3保護層24は、第2保護層22の表面の少なくとも一部を被覆していればよい。少なくとも一部を被覆していれば、希土類磁石100の耐食性を十分に向上させることができる。なお、第2保護層22の表面を完全に被覆していてもよい。以下では、第一の希土類磁石と第二の希土類磁石とに共通する事項についての説明を省略する。
図3(A)に示すように、第二の希土類磁石100は、磁石素体10の表面を完全に被覆する第1保護層20と、第1保護層20の表面を完全に被覆する第2保護層22と、第2保護層22の表面を完全に被覆する第3保護層24と、を備えてもよい。
図3(B)に示すように、第二の希土類磁石100は、磁石素体10の表面を完全に被覆する第1保護層20と、第1保護層20の表面を完全に被覆する第2保護層22と、第2保護層22の表面の一部を被覆する第3保護層24と、を備えてもよい。
図3(C)に示す第二の希土類磁石100は、磁石素体10の表面を完全に被覆する第1保護層20と、第1保護層20の表面の一部を被覆する第2保護層22と、物理的に分離した第2保護層22の表面の一部又は全部を被覆する第3保護層24と、を備えてもよい。
このように、第二の希土類磁石100は、上記図3(A)、3(B)及び3(C)のいずれの形態をとっていてもよい。
第3保護層24は、Alを主成分として含む。第3保護層24におけるAlの含有割合は、第3保護層24全体に対して、好ましくは40〜90原子%である。Alの含有割合が40原子%未満であると、耐食性向上効果が不十分になる傾向にある。一方、Alの含有割合が90原子%を超えると、第3保護層の密着性が不十分になる傾向にある。ただし、第3保護層24におけるAlの含有割合が上記の数値範囲外であっても本発明の効果は達成される。
第3保護層24は、Al以外の元素を含んでいてもよい。そのような元素として、例えば、希土類元素R、Fe、Co、O及びBが挙げられる。第3保護層24は、Rとして、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことができる。また、第3保護層24は、Rとして、上述したもののうち、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm及びEuからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。特に、Rとして、Nd又はPrのうち少なくとも一種を含むことが好ましい。なお、第3保護層24に含まれるRは、第2保護層22に含まれるRと少なくとも一種以上が一致している。特に、第3保護層24と第2保護層22とに含まれるRの種類が全て一致していることが好ましい。
第3保護層24の総原子数に対する第3保護層24中のAlの原子数の比率は、第1保護層20の総原子数に対する第1保護層20中のAlの原子数よりも高い。また、第3保護層24の総原子数に対する第3保護層24中のAlの原子数の比率は、第2保護層22の総原子数に対する第2保護層22中のAlの原子数の比率よりも高い。第3保護層24の総原子数に対するAlの原子数の比率は、第2保護層22の総原子数に対するAlの原子数の比率の2倍以上であることが好ましい。また、第3保護層24の総原子数に対するAlの原子数の比率は、第1保護層20における総原子数に対するAl原子数の比率の2.4倍以上であることが好ましい。
第3保護層24は、Alを主成分として含むため、第3保護層24の表面にAlの酸化皮膜を形成し、不動態化することにより、希土類磁石100の耐食性(特に、耐塩水性)をより一層向上させることが可能となる。
希土類磁石100における、第2保護層22と第3保護層24との界面は、第2保護層22と、第3保護層24とで元素組成に差があるため、例えば、電子顕微鏡写真の目視によって判定することができる。また、第2保護層22と第3保護層24との界面は、第2保護層22と第3保護層24におけるAlの含有量の差により決定することができる。すなわち、第3保護層24のAlの含有量は、第2保護層22よりも高くなっているため、これに基づいて界面の位置を判定することができる。
第3保護層24の厚みD3は、0.1〜10μmであることが好ましい。第3保護層24の厚みD3が上記範囲内にあることで、希土類磁石100の耐食性と磁石特性(角形性)が良好なものとなり易い。
(希土類磁石の製造方法)
本実施形態に係る希土類磁石の製造方法は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含むR−T−B系の磁石素体の表面にAl偏平粉を付着させる付着工程と、Al偏平粉を付着させた磁石素体を540〜630℃で加熱し、30℃/分以上の冷却速度で急冷する加熱工程と、を少なくとも備える。以下、各工程の詳細について説明する。
付着工程では、まず、R−T−B系の磁石素体を準備する。なお、この磁石素体はTとしてFeを含む。この磁石素体は、例えば、以下のようにして製造することができる。
原料合金を鋳造し、インゴット(鋳塊)を得る。原料合金としては、R、Fe及びBを含むものを用いればよい。原料合金は、必要に応じてFe以外のT、例えば、Co,Cu,Ni,Mn,Nb,Zr,Ti,W,Mo及びV等の元素を含んでもよい。さらに、原料合金は、必要に応じて、Al,Ga,Zn,Si及びBi等の元素を含んでもよい。インゴットの化学組成は、最終的に得たい磁石素体の主相の化学組成に応じて調整すればよい。完成後の希土類磁石が備える保護層の組成は、原料合金中の希土類元素,Fe等の各含有量に依存する。
インゴットを、ディスクミル等により粗粉砕して10〜100μm程度の粒径の合金粉末を得る。当該合金粉末を、ジェットミル等により微粉砕して0.5〜5μm程度の粒径の合金粉末を得る。当該合金粉末を、磁場中で加圧成形する。成形時に合金粉末に印加する磁場の強度は800kA/m以上であることが好ましい。成形時に合金粉末に加える圧力は10〜500MPa程度であることが好ましい。成形方法としては、一軸加圧法又はCIPなどの等方加圧法のいずれを用いてもよい。得られた成形体を焼成して焼結体を形成する。焼成温度は1000〜1200℃程度であればよい。焼成時間は0.1〜100時間程度であればよい。焼成は、複数回行ってもよい。焼成は、真空中又はArガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
焼結体に対して時効処理を施すことが好ましい。時効処理では、焼結体を450〜950℃程度で加熱すればよい。時効処理では、焼結体を0.1〜100時間程度加熱すればよい。時効処理は不活性ガス雰囲気中で行えばよい。このような時効処理により希土類磁石の保磁力が更に向上する。なお、時効処理は、多段階の加熱によって施してもよい。例えば、2段階の加熱からなる時効処理では、1段階目で焼結体を700℃以上焼成温度未満の温度で0.1〜50時間加熱すればよい。2段階目で焼結体を450〜700℃で0.1〜100時間加熱すればよい。
以上の処理により得られた焼結体(磁石素体)は、必要に応じて、所望の形状に加工してもよい。加工方法は、例えば、切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。
このようにして得られた磁石素体に対しては、表面の凹凸や表面に付着した不純物等を除去するため、適宜、前処理を施してもよい。前処理は、焼結体(磁石素体)に施してもよいし、加工後の磁石素体に施してもよい。前処理としては、例えば、酸溶液を用いた酸洗浄(エッチング)、アルカリ溶液を用いた洗浄、ショットブラスト等が挙げられ、中でも酸洗浄が好ましい。酸洗浄によれば、磁石素体の表面の凹凸や不純物を溶解除去して平滑な表面を有する磁石素体が得られ易くなり、第1保護層〜第3保護層の形成を効率よく行える。
酸洗浄において使用する酸としては、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸が好ましい。処理液中の硝酸濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。このような酸洗浄による磁石素体の表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。こうすれば、磁石素体の表面の加工による変質層や酸化層をほぼ完全に除去することができ、第1保護層〜第3保護層の形成を効率よく行える。
また、磁石素体には、上記酸洗浄後、水洗により酸洗浄に用いた処理液を除去した後、表面に残存した少量の未溶解物や残留酸成分を完全に除去するために、超音波を使用した超音波洗浄を実施することが好ましい。この超音波洗浄は、例えば、磁石素体の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中や、アルカリ性溶液中等で行うことができる。この超音波洗浄後には、必要に応じて水洗を行ってもよい。
次に、磁石素体の表面にAlの偏平粉を付着させる。Al偏平粉は、Al単体、Al合金又はAl化合物を含むものであってよい。Al偏平粉の平均長径は0.1〜50μmであることが好ましく、1〜20μmであることがより好ましい。Al偏平粉の平均厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。Al偏平粉のアスペクト比(平均長径/平均厚さ)は、2以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。このような平均長径、平均厚さ及びアスペクト比を有するAl偏平粉を用いることにより、各保護層の形成をより一層効率よく行うことができる。
Al偏平粉の付着方法としては、例えば、Al偏平粉を分散させた塗布液を、磁石素体の表面全体に均一に塗布する方法が挙げられる。また、塗布液に樹脂バインダーを含有させることが好ましい。樹脂バインダーを含有させることで、粒子の付着強度が増し、表面から脱落しにくくなる。磁石素体表面に付着させるAl偏平粉の量の最適値は、磁石素体の組成や熱処理温度、熱処理時間によっても変わってくるが、Al換算で、例えば、磁石素体全体に対して0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%とすることがより好ましい。0.1重量%以上とすることにより、第1保護層及び第2保護層の形成をより効率よく行うことができる。また、0.4重量%以上とすることにより、第1保護層、第2保護層及び第3保護層の形成をより効率よく行うことができる。つまり、Al偏平粉の量が少ない程、第一の希土類磁石が形成され易く、Al偏平粉の量が多い程、第二の希土類磁石が形成され易い。
加熱工程では、表面にAl偏平粉を付着させた磁石素体を540〜630℃で加熱する。これにより、磁石素体の表面に第1保護層及び第2保護層を形成する。
加熱温度が高過ぎる場合、Alの融点は約660℃であるため、溶融したAl中に磁石素体の成分が過度に拡散することがある。その結果、目的とする構成の保護層が形成されにくくなり、希土類磁石の耐食性及び磁気特性が劣化する。加熱温度が低過ぎる場合、磁石素体表面への粒界相成分の染み出しとAlの拡散が十分ではなくなり、十分な保護層が形成されにくくなり、希土類磁石の耐食性が劣化する。
表面にAl偏平粉を付着させた磁石素体の加熱時間は、10〜600分であることが好ましい。加熱時間が短すぎる場合、加熱時間が上記の数値範囲内である場合に比べて、十分な保護層が形成されにくい傾向がある。加熱時間が長すぎる場合、加熱時間が上記の数値範囲内である場合に比べて、Alが磁石素体の表面のみならず磁石素体の深部に熱拡散する傾向がある。ただし、加熱時間が上記の数値範囲外であっても本実施形態の希土類磁石を得ることは可能である。
なお、上記の加熱工程において昇温させた磁石素体を急冷する。冷却速度は、30℃/分以上であり、50℃/分以上とすることがより好ましい。これにより、磁石の磁気特性が向上し易くなる。
また、希土類磁石に対して、上述した焼結体の場合と同様の時効処理を施すことが好ましい。時効処理により希土類磁石の保磁力が更に向上する。時効処理温度は、Alの熱拡散に要する加熱温度以下であることが好ましい。時効処理において昇温させた希土類磁石を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、希土類磁石の磁気特性が向上し易くなる。なお、冷却速度は50℃/分以上とすることがより好ましい。
表面にAl偏平粉を付着させた磁石素体を熱処理した後、希土類磁石の表面に残存する未反応のAl偏平粉等を洗浄やブラストにより除去してもよい。
以上のように、本実施系形態では、磁石素体の組成(軽希土類元素,Feの各含有率)、磁石素体表面に付着させるAl偏平粉の量、Al偏平粉を付着させた磁石素体の加熱温度等を調整することにより、組成が制御された各保護層を備える第一の希土類磁石又は第二の希土類磁石のいずれかを作製することできる。
なお、上記の加熱工程において各保護層が形成される機構は明らかではないが、本発明者らは、各保護層の形成が次のような機構に基づくものと考える。
<第一の機構>
磁石素体表面にAl偏平粉を付着させると、素地に平行になった状態で積層される傾向がある。この磁石素体を加熱することにより、磁石素体中の粒界相に存在する希土類元素R(特に、軽希土類元素)を含むRリッチ相が液相化し、磁石素体表面に染み出し、磁石素体とAl偏平粉の間の隙間に充填される。このように磁石素体とAl偏平粉の隙間に充填されたRリッチ相とAl偏平粉の全てが反応して、磁石素体の表面に第2保護層が形成される。第2保護層の一部と磁石素体とが反応し、磁石素体と第2保護層との間に第1保護層が形成される。なお、Rリッチ相とは、相を構成する元素の中で最も濃度(原子数の比率)が高い元素がRである相である。
<第二の機構>
表面にAl偏平粉を付着させた磁石素体を加熱することにより、磁石素体中の粒界相に存在する希土類元素R(特に、軽希土類元素)を含むRリッチ相が液相化し、磁石素体表面に染み出し、磁石素体とAl偏平粉の間に充填される。このように磁石素体とAl偏平粉の隙間に充填されたRリッチ相とAl偏平粉の一部が反応して、磁石素体とAl偏平粉との間に第2保護層が形成される。第2保護層の一部と磁石素体とが反応し、磁石素体と第2保護層との間に第1保護層が形成される。さらに、第2保護層の一部とAl偏平粉の残部との反応により、第2保護層上に第3保護層が形成される。
以上のように、第一の機構により、2層構造を有する第一の希土類磁石が得られる。また、第二の機構により、3層構造を有する第二の希土類磁石が得られる。ただし、各保護層の形成の機構は、これらに限定されない。
上述の製造方法によって得られる第一の希土類磁石及び第二の希土類磁石は、腐食性物質が存在する環境下において、優れた磁気特性を長期間に亘って維持することができる。このような特性を有する希土類磁石は、例えば、優れた耐食性が求められる回転機用の永久磁石として好適に用いられる。
(回転機)
図4は、本実施形態の回転機(永久磁石回転機)の内部構造を示す説明図である。本実施形態の回転機200は、永久磁石同期回転機(SPM回転機)であり、円筒状のロータ50と該ロータ50の内側に配置されるステータ30とを備えている。ロータ50は、円筒状のコア52と円筒状のコア52の内周面に沿ってN極とS極が交互になるように複数の希土類磁石100が設けられている。ステータ30は、内周面に沿って設けられた複数のコイル32を有している。このコイル32と希土類磁石100とは互いに対向するように配置されている。
回転機200は、ロータ50に、上記実施形態に係る希土類磁石100を備える。希土類磁石100は耐食性に優れるため、経時的な磁気特性の低下を十分に抑制することができる。したがって、回転機200は優れた性能を長時間に亘って維持することができる。回転機200は、希土類磁石100以外の部分について、通常の回転機部品を用いて通常の方法によって製造することができる。
回転機200は、コイル32に通電することによって生成する電磁石による界磁と希土類磁石100による界磁との相互作用により、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する電動機(モータ)であってもよい。また、回転機200は、希土類磁石100による界磁とコイル32との電磁誘導相互作用により、機械的エネルギーから電気的エネルギーに変換する発電機(ジェネレータ)であってもよい。
電動機(モータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石直流モータ、リニア同期モータ、永久磁石同期モータ(SPMモータ、IPMモータ)、往復動モータなどが挙げられる。往復動モータとして機能するモータとしては、例えば、ボイスコイルモータ、振動モータなどが挙げられる。発電機(ジェネレータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石同期発電機、永久磁石整流子発電機、永久磁石交流発電機などが挙げられる。以上に記載した回転機は、自動車、産業機械、家庭用電化製品等に用いられる。
以下、本発明を実施例及び比較例を参照して更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
粉末冶金法により、組成が22.5重量%Nd−5.2重量%Pr−2.7重量%Dy−0.5重量%Co−0.3重量%Al−0.07重量%Cu−1.0重量%B−残部Feである鋳塊を作製した。鋳塊を粗粉砕して得た粗粉末を不活性ガス中でジェットミルにより粉砕して、平均粒径が約3.5μmの微粉末を得た。微粉末を金型内に充填し、磁場中で加圧成形して成形体を得た。成形体を真空中で焼成した後、時効処理を施して焼結体を得た。焼結体を切り出し加工し、13mm×8mm×2mmの寸法を有する磁石素体を作製した。
磁石素体の表面に対して脱脂処理を施し、次に、2%HNO水溶液中に2分間浸漬し、その後、超音波水洗を施すことで、エッチングを行った。多数のAl偏平粉(平均長径9μm、平均厚さ0.2μm)を分散させた塗布液を調製した。エッチング後の磁石素体の表面に塗布液をディップコーティングにより塗布し、塗膜を磁石素体の表面全体に形成した。この塗膜を120℃で20分乾燥させた。なお、磁石素体表面に形成した塗膜に含まれるAlの総量を、磁石素体全体に対して、0.5重量%に調整した。
塗膜を有する磁石素体をAr雰囲気において630℃で60分加熱した後、50℃/分で急冷し、塗膜中のAlを磁石素体内へ拡散させた。加熱後の磁石素体をAr雰囲気において550℃で1時間時効処理した後、50℃/分で急冷した。時効処理後の磁石素体の表面に残存した未反応Al偏平粉を超音波洗浄で除去することで、実施例1の希土類磁石を作製した。
(実施例2及び3)
実施例2及び3では、磁石素体表面に形成した塗膜中に含まれるAlの総量を、磁石素体全体に対して、表1に示す値(塗布量)に調整した。実施例2及び3では、塗膜を有する磁石素体をAr雰囲気において、表1に示す温度(拡散温度)で加熱した。また実施例2及び3では、塗膜を有する磁石素体を加熱する時間(拡散時間)を、表1に示す時間に調整した。以上の事項以外は実施例1と同様の方法で、実施例2及び3の希土類磁石を作製した。
(比較例1)
磁石素体の表面のエッチング以降の工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で比較例1の希土類磁石を作製した。つまり、Al偏平粉を用いることなく比較例1の希土類磁石を作製した。
(比較例2)
比較例2では、磁石素体表面に形成した塗膜に含まれるAlの総量を、磁石素体全体に対して、0.12重量%に調整した。比較例2では、拡散温度を680℃とした。これらの事項以外は実施例1と同様の方法で、比較例2の希土類磁石を作製した。
[SEM観察]
各実施例及び比較例の希土類磁石を切断し、切断面をクロスセクションポリッシャーで研磨した。研磨面をSEMで観察したところ、実施例1の希土類磁石では、磁石素体の表面を被覆する第1保護層と、第1保護層の表面の一部を被覆する第2保護層と、第2保護層の表面の一部を被覆する第3保護層が形成されていることが確認された。図5に、実施例1の希土類磁石の切断面のSEM写真を示す。なお、図5に記載された実線は、磁石素体と保護層との界面、及び保護層間の各界面を示すものである。実施例2及び3の希土類磁石では、磁石素体の表面を被覆する第1保護層と、第1保護層の表面の一部を被覆する第2保護層が形成されていることが確認された。実施例2及び3の希土類磁石では、第3保護層が形成されていなかった。一方、比較例1の希土類磁石は、磁石素体の表面に保護層は確認されなかった。比較例2の希土類磁石では、磁石素体の表面に1層の保護層のみが形成されていることが確認された。
[組成分析]
各実施例及び比較例の希土類磁石を切断し、磁石素体及び各保護層における元素組成をEPMAで確認した。EPMAの装置としては、JEOL社製のJXA−8800を用いた。全実施例及び比較例の磁石素体はいずれも、鋳塊と同様に、Nd,Pr,Dy,Co,Al,Cu,B及びFeを含有することが確認された。各実施例及び比較例2の各保護層の元素組成を表2に示す。表2中の数値は、各保護層全体に対する各保護層中の各元素の含有量(単位:原子%)を示す。なお、Rの含有量とは、Ndの含有量とPrの含有量とを合計したものである。
[耐食性の評価]
各実施例及び比較例の希土類磁石の耐食性を、JIS K5600−7−1に準拠する塩水噴霧試験により評価した。塩水噴霧試験では、35℃の環境下で各希土類磁石に5%の塩水を24時間噴霧した。試験後の各希土類磁石の表面において赤錆が発生した部分の面積の割合(錆面積率)を算出した。錆面積率とは、各希土類磁石の表面全体に対する値(単位:%)である。錆面積率は、試験後の各希土類磁石の写真を画像処理することにより算出した。表3に各希土類磁石の錆面積率を示す。
各実施例の希土類磁石の錆面積率は各比較例よりも著しく低いことが確認された。特に、第1保護層、第2保護層及び第3保護層の3層を備える実施例1の希土類磁石では、塩水噴霧試験後に全く赤錆が発生しなかった。以上より、各実施例の希土類磁石は、各比較例に比べて、耐塩食性に著しく優れていることが確認された。特に実施例1の希土類磁石は、顕著に耐塩食性に優れていた。
10・・・磁石素体、20・・・第1保護層、22・・・第2保護層、24・・・第3保護層、30・・・ステータ、32・・・コイル、50・・・ロータ、52・・・コア、100・・・希土類磁石、200・・・回転機。

Claims (11)

  1. 希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含むR−T−B系の磁石素体と、該磁石素体の表面を被覆する第1保護層と、該第1保護層の表面を被覆する第2保護層と、前記第1保護層と前記第2保護層の界面と、を備え、
    前記磁石素体が、TとしてFeを含み、
    前記第1保護層が、R、Fe及びAlを含み、
    前記第2保護層が、R及びAlを含み、
    前記第1保護層における総原子数に対するFe原子数の比率が、前記第2保護層における総原子数に対するFe原子数の比率よりも高い、
    希土類磁石。
  2. 前記第1保護層における総原子数に対するFe原子数の比率が、前記第2保護層における総原子数に対するFe原子数の比率の5倍以上である、請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 前記第2保護層の表面を被覆する第3保護層を更に備え、
    前記第3保護層は、Alを含み、
    前記第3保護層における総原子数に対するAl原子数の比率が、前記第2保護層における総原子数に対するAl原子数の比率よりも高い、請求項1又は2に記載の希土類磁石。
  4. 前記第1保護層の総原子数に対する前記第1保護層中のRの原子数の比率は、前記第2保護層の総原子数に対する前記第2保護層中のRの原子数の比率よりも低い、請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 前記第1保護層の総原子数に対する前記第1保護層中のAlの原子数の比率は、前記第2保護層の総原子数に対する前記第2保護層中のAl原子数の比率よりも低い、請求項1〜4のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  6. 前記磁石素体におけるRの含有割合が、前記磁石素体全体に対して、8〜40重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  7. 前記第1保護層の厚みは0.1〜30μmである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の希土類磁石を備える回転機。
  9. 希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含むR−T−B系の磁石素体の表面にAl偏平粉を付着させる工程と、
    前記Al偏平粉を付着させた前記磁石素体を540〜630℃で加熱し、30℃/分以上の冷却速度で急冷する工程と、を備え、
    前記磁石素体は、TとしてFeを含む、
    希土類磁石の製造方法。
  10. 前記磁石素体に付着させるAl偏平粉の量が、前記磁石素体全体に対して、0.01〜5重量%である、請求項9に記載の希土類磁石の製造方法。
  11. 前記磁石素体におけるRの含有割合が、前記磁石素体全体に対して、8〜40重量%である、請求項9又は10に記載の希土類磁石の製造方法。
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