JP2005285832A - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 十分に優れた耐食性を有する希土類磁石及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の希土類磁石100は、希土類元素を含有する磁石素体10と、磁石素体10の表面上に設けられており、ホウ素及びリンを含有する保護層20とを備える。ホウ素及びリンを含有する保護層20では、膜の緻密性が高いので、クラック等の発生が少なく、バリア性が高い。したがって、磁石素体10の劣化を十分に防止することができる。このため、本発明の希土類磁石100は十分に優れた耐食性を有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、希土類磁石及びその製造方法、特に表面上に保護層が設けられた希土類磁石及びその製造方法に関するものである。
近年、25MGOe(メガガウスエルステッド)以上の高エネルギー積を示す永久磁石として、いわゆるR−Fe−B系磁石(RはNdなどの希土類元素を示す。)が開発されている。例えば特許文献1では、焼結により形成されるR−Fe−B系磁石が開示されている。また特許文献2では、高速急冷により形成されるR−Fe−B系磁石が開示されている。しかしながら、R−Fe−B系磁石は、比較的容易に酸化される希土類元素及び鉄を主成分として含有するため、その耐食性が比較的低い。それ故に、製造時及び使用時に磁石としての性能が劣化すること、及び/又は、製造された磁石の信頼性が比較的低いこと等の課題があった。このようなR−Fe−B系磁石の耐食性を改善することを目的として、例えば特許文献3〜9に記載されているように、種々の保護層をその磁石表面に形成する提案がこれまでになされている。
より具体的には、例えば特許文献8において、R−Fe−B系磁石の耐食性の改善を意図して、R(RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種)8原子%〜30原子%、B2原子%〜28原子%、Fe42原子%〜90原子%を主成分とし主相が正方晶相からなる永久磁石体表面に、耐食性薄膜を被覆してなる永久磁石が提案されている。このような耐食性薄膜を構成する材料としては、SiO、Al、Cr、TiN、AlN、TiCが例示されている。
特開昭59−46008号公報 特開昭60−9852号公報 特開昭60−54406号公報 特開昭60−63901号公報 特開昭60−63902号公報 特開昭61−130453号公報 特開昭61−166115号公報 特開昭61−166116号公報 特開昭61−270308号公報
しかしながら、本発明者らは、上記特許文献1〜9に記載のものを始めとする従来の希土類元素を含有する希土類磁石について詳細に検討を行ったところ、このような従来の希土類磁石は十分な耐食性を有していないことを見出した。すなわち、従来のSiO膜などを保護層として設けた希土類磁石では、当該保護層にクラック等が発生してしまうので、実際の使用環境において必ずしも耐食性に十分優れているものとはいえなかった。
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、十分に優れた耐食性を有する希土類磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明の希土類磁石は、希土類元素を含有する磁石素体と、磁石素体の表面上に設けられており、ホウ素及びリンを含有する保護層とを備える。
ホウ素及びリンを含有する保護層では、酸化物、窒化物、炭化物等からなる保護層に比べて膜の緻密性が高いので、クラック等の発生が少なく、水分や不純物に対するバリア性が高い。したがって、ホウ素及びリンを含有する保護層では、磁石素体の劣化を十分に防止することができる。このため、本発明の希土類磁石は十分に優れた耐食性を有する。
また、磁石素体が、更にホウ素を含有すると好ましい。この場合、磁石素体及び保護層の両方にホウ素が含まれるので、保護層が酸化物、窒化物、炭化物等からなる場合よりも、磁石素体と保護層との相性がよく、密着性が向上すると推定される。よって、保護層が磁石素体から剥離し難くなるので、磁石素体の劣化を更に防止することができる。また、磁石素体と保護層との熱膨張係数の差を小さくできるので、これらの界面に生じる熱応力を低減できる。したがって、保護層を磁石素体の表面により強固に密着させることができる。
また、保護層が、下記一般式(1)で表される組成を有し、且つ、下記式(2)で表される条件を満足すると好ましい。
…(1)
0.01≦(y/x)≦1.0…(2)
この場合、膜の緻密性が向上することによって保護層のバリア性が一層高くなる。より具体的には、y/xが0.01より小さいとバリア性が低下する傾向にあり、y/xが1.0より大きいとクラックが発生しやすくなる傾向にある。よって、上記条件を満足する保護層では、バリア性がより高くなり、且つクラックがより発生し難くなる。
また、保護層が、更にケイ素を含有すると好ましい。これにより、保護層の内部応力が緩和されるので、クラックがより発生し難くなる。これは、ケイ素がホウ素及びリンと共有結合を形成することに起因するか、あるいは、保護層の微細構造(例えば、膜内部での原子間結合長さ)が最適化されることに起因すると考えられるが、要因はこれらに限定されない。
また、保護層が、下記一般式(3)で表される組成を有し、且つ、下記式(4)、(5)で表される条件を同時に満足すると好ましい。
SiB…(3)
x≧0.05…(4)
0.01≦(y/x)≦1.0…(5)
この場合、膜の緻密性が向上することによって保護層のバリア性が一層高くなる。より具体的には、y/xが0.01より小さいとバリア性が低下する傾向にあり、y/xが1.0より大きいとクラックが発生しやすくなる傾向にある。よって、上記条件を満足する保護層では、バリア性がより高くなり、且つクラックがより発生し難くなる。
また、耐食性の向上の観点及び十分な磁気特性の確保の観点から、保護層の膜厚が、2〜10μmであると好ましい。
また、本発明の希土類磁石の製造方法は、希土類元素を含有する磁石素体となるべき成形体の表面上に、気相成長法を用いて、ホウ素及びリンを含有する保護層を形成する保護層形成工程を含む。
ホウ素及びリンを含有する保護層は、酸化物、窒化物、炭化物等からなる保護層よりも膜の緻密性が高いので、クラック等の発生が少なく、水分や不純物に対するバリア性が高い。また、ホウ素及びリンを含有する保護層は、酸化物、窒化物、炭化物等からなる保護層よりも熱伝導度が高いので、熱応力も小さい。このため、保護層に熱応力が発生したとしても、ホウ素及びリンを含有する保護層は剥離し難いので、保護層の剥離に起因する磁石素体の劣化を十分に防止することができる。したがって、本発明の希土類磁石の製造方法によれば、十分に優れた耐食性を有する希土類磁石が得られる。
本発明によれば、十分に優れた耐食性を有する希土類磁石及びその製造方法を提供することができる。
以下、図面とともに本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石及びその製造方法について説明する。なお、図面の説明においては、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
まず、図1〜図3を参照して、本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石の構成について説明する。
<希土類磁石の構成>
図1は、本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石の模式斜視図であり、図2は図1の希土類磁石をI−I線により切断した際に現れる断面を模式的に表した図である。図1及び図2から明らかなとおり、本実施形態の希土類磁石100は磁石素体10と、その磁石素体10の表面の全体を被覆して形成される保護層20とから構成されるものである。
(磁石素体)
磁石素体10は、例えば、R、鉄(Fe)及びホウ素(B)を含有するものである。Rは1種以上の希土類元素を示すものであり、具体的には、長周期型周期表の3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイドからなる群より選ばれる1種以上の元素を示す。ここで、ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びルテチウム(Lu)を指す。
上述した元素の磁石素体10中の組成は、該磁石素体10を焼結法により製造する場合、以下に説明するようなものであると好ましい。
Rとしては、上述したもののうち、Nd、Pr、Ho、Tbのうち1種以上の元素を含むと好ましく、さらに、La、Sm、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb、Yのうち1種以上の元素を含んでも好ましい。
磁石素体10中のRの含有割合は、磁石素体10を構成する全原子の量に対して、8〜40原子%であると好ましい。Rの含有割合が8原子%未満では、結晶構造がα−鉄と同一構造の立方晶組織となるため、高い保磁力(iHc)を有する希土類磁石100が得られない傾向にある。また、Rの含有割合が40原子%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、希土類磁石100の残留磁束密度(Br)が低下する傾向にある。
磁石素体10中のFeの含有割合は、磁石素体10を構成する全原子の量に対して、42〜90原子%であると好ましい。Feの含有割合が42原子%未満であると希土類磁石100のBrが低下する傾向にあり、90原子%を超えると希土類磁石100のiHcが低下する傾向にある。
磁石素体10中のBの含有割合は、磁石素体10を構成する全原子の量に対して、2〜28原子%であると好ましい。Bの含有割合が2原子%未満であると結晶構造が菱面体組織となるため、希土類磁石100のiHcが不十分となる傾向にあり、28原子%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、希土類磁石100のBrが低下する傾向にある。
また、Feの一部をコバルト(Co)で置換して磁石素体10を構成してもよい。このような構成にすることにより、希土類磁石100の磁気特性を損なうことなく温度特性を改善できる傾向にある。この場合、置換後のFeとCoの含有割合は、原子基準でCo/(Fe+Co)が0.5以下であると好ましい。これよりもCoの置換量が多いと希土類磁石100の磁気特性が低下してしまう傾向にある。
さらに、Bの一部を炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)及び銅(Cu)からなる群より選ばれる1種以上の元素で置換して磁石素体10を構成してもよい。かかる構成にすることにより、希土類磁石100の生産性が向上し、その生産コストを削減できる傾向にある。この場合、これらC、P、S及び/若しくはCuの含有量は、磁石素体10を構成する全原子の量に対して4原子%以下であると好ましい。C、P、S及び/若しくはCuの含有量が4原子%よりも多いと、希土類磁石100の磁気特性が劣化する傾向にある。
また、希土類磁石100の保磁力の向上、生産性の向上及び低コスト化の観点から、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)及び/又はハフニウム(Hf)等のうちの1種以上の元素を添加して、磁石素体10を構成してもよい。この場合、上記元素の添加量は磁石素体10を構成する全原子の量に対して10原子%以下とすると好ましい。これらの元素の添加量が10原子%を超えると希土類磁石100の磁気特性が低下する傾向にある。
磁石素体10中には、不可避的不純物として、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及び/又はカルシウム(Ca)等が、磁石素体10を構成する全原子の量に対して3原子%以下の範囲内で含有されていてもよい。
磁石素体10は、図3に示すように、実質的に正方晶系の結晶構造を有する主相50と、希土類元素を比較的多く含む希土類リッチ相60と、ホウ素を比較的多く含むホウ素リッチ相70とを含有して形成されている。磁性相である主相50の粒径は1〜100μm程度であると好ましい。希土類リッチ相60及びホウ素リッチ相70は非磁性相であり、主に主相50の粒界に存在している。これら非磁性相60、70は、磁石素体10中に通常、0.5体積%〜50体積%程度含有されている。
(保護層)
保護層20は、磁石素体10の表面上に設けられており、ホウ素及びリンを含有する。このような保護層20では、膜の緻密性が高いので、クラックの発生が少なく、水分や不純物に対するバリア性が優れている。したがって、保護層20は、磁石素体10の劣化を十分に防止することができる。このため、希土類磁石100は十分に優れた耐食性を有するので、長寿命である。
なお、保護層20は結晶質であってもよく、非晶質であってもよく、それらの状態が混在した状態であってもよい。
また、酸化物、窒化物、炭化物等からなる保護層では、耐食性を向上させようとすると生産性が低下してしまう。さらには、保護層の形成には高価な真空薄膜形成装置が必要になるので、装置の減価償却費も問題である。これに対して、保護層20では、生産性を低下させることなく、設備投資を抑制でき、低コストのプロセスを用いることができる。
また、磁石素体10がホウ素を含有する場合、磁石素体10及び保護層20の両方にホウ素が含まれることとなるので、保護層が酸化物、窒化物、炭化物等からなる場合よりも、磁石素体10と保護層20との相性がよくなり、密着性が向上する。よって、保護層20が磁石素体10から剥離し難くなるので、磁石素体10の劣化を更に防止することができる。また、磁石素体10と保護層20との熱膨張係数の差を小さくできるので、これらの界面に生じる熱応力を低減できる。したがって、保護層20を磁石素体10の表面により強固に密着させることができる。
保護層20がホウ素及びリンを含有する場合、具体的には、保護層20が、下記一般式(1)で表される組成を有し、且つ、下記式(2)で表される条件を満足すると好ましい。
…(1)
0.01≦(y/x)≦1.0…(2)
この場合、保護層20のバリア性が一層高まる。より具体的には、上記式(2)に示されるようにy/xが0.01より小さいとバリア性が低下する傾向にあり、y/xが1.0より大きいとクラックが発生しやすくなる傾向にある。よって、y/xが上記式(2)を満足する保護層20では、膜の緻密性が向上するので、バリア性がより高くなり、且つクラックがより発生し難くなる。なお、上記条件を満たすとき、保護層20に含まれるBが非晶質であることに起因して、保護層20のバリア性が一層高まると考えられる。ただし、バリア性が一層高くなる要因としては、これに限定されない。
また、上記ホウ素及びリンに加えて、保護層20がケイ素を含有すると好ましい。これにより、保護層20の内部応力が緩和されるので、クラックが発生し難くなる。さらに、保護層20には、必要に応じて炭素、チタン及びランタンから選ばれた1種又は複数種が添加物として添加されていてもよい。保護層20の内部応力が緩和される要因として、ケイ素とホウ素との結合、及びケイ素とリンとの結合が共有結合になっていること、あるいは、保護層の微細構造(例えば、膜内部での原子間結合長さ)が最適化されること等が考えられるが、要因はこれに限定されない。
保護層20がホウ素、リン及びケイ素を含有する場合、具体的には、保護層20が、下記一般式(3)で表される組成を有し、且つ、下記式(4)、(5)で表される条件を同時に満足すると好ましい。
SiB…(3)
x≧0.05…(4)
0.01≦(y/x)≦1.0…(5)
この場合、保護層20のバリア性が一層高まる。より具体的には、上記式(5)に示されるようにy/xが0.01より小さいとバリア性が低下する傾向にあり、y/xが1.0より大きいとクラックが発生しやすくなる傾向にある。よって、y/xが上記式(5)を満足する保護層20では、膜の緻密性が向上するので、バリア性が高くなり、且つクラックが発生し難くなる。
また、保護層20は、上述のホウ素、リン及びケイ素の他に、従来の希土類磁石の保護層に含有される元素を少量含んでもよい。そのような元素としては、酸素、窒素、炭素、水素、又はAl、Ta、Ti、Zr、Hf及びNb等の金属等が挙げられる。
保護層20がケイ素を含まない場合、保護層20におけるホウ素及びリンの総量は、保護層20中の原子の総数に対して、90原子%以上であると好ましい。この数値が上記下限値を下回ると、本発明の作用効果を奏し難くなる傾向にある。
保護層20がケイ素を含む場合、保護層20におけるホウ素、リン及びケイ素の総量は、保護層20中の原子の総数に対して、90原子%以上であると好ましい。この数値が上記下限値を下回ると、本発明の作用効果を奏し難くなる傾向にある。
なお、保護層20中の各構成材料の含有量はEPMA(X線マイクロアナライザー法)、XPS(X線光電子分光法)、AES(オージェ電子分光法)若しくはEDS(エネルギー分散型蛍光X線分光法)等の公知の組成分析法を用いて確認することができる。さらに、エッチング等の公知の手法を用いて露出させた希土類磁石100中の磁石素体10及び保護層20を、あるいは、希土類磁石100を切断することにより現れる断面を、上記の組成分析法を用いて分析することにより、磁石素体10及び保護層20の構成材料の組成分布を把握することができる。
また、耐食性の向上の観点及び十分な磁気特性の確保の観点から、保護層20の膜厚は、2〜10μmであると好ましい。
以上説明した希土類磁石100は、ラインプリンター、自動車用スターター及びモーター、特殊モーター、サーボモーター、磁気記録装置用ディスク駆動、リニアアクチュエーター、ボイスコイルモーター、装置用モーター、工業用モーター、スピーカー及び核磁気共鳴診断用磁石などに好適に用いられる。
次に、本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石100の製造方法について説明する。希土類磁石100は、例えば、成形体準備工程、保護層形成工程及び時効処理工程を順に経ることによって得られる。ただし、時効処理工程を、保護層形成工程と同時、保護層形成工程の前又は保護層形成工程の後のいずれかに実施してもよい。
<希土類磁石の製造方法>
(成形体準備工程)
まず、磁石素体10に含まれることとなる元素を含有する所望の組成物を鋳造し、インゴットを得る。続いて、得られたインゴットを、スタンプミル等を用いて粒径10〜100μm程度に粗粉砕し、次いで、ボールミル等を用いて0.5〜5μm程度の粒径に微粉砕して粉末を得る。
次に、得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成形して成形体を得る。この場合、磁場中の磁場強度は10kOe以上であると好ましく、成形圧力は1〜5トン/cm程度であると好ましい。続いて得られた成形体を、1000〜1200℃で0.5〜5時間程度焼結し、急冷する。なお、焼結雰囲気は、Arガス等の不活性ガス雰囲気であると好ましい。このようにして磁石素体10となるべき成形体を得る。
(保護層形成工程)
次に、得られた成形体の表面上に、気相成長法(ドライプロセス)を用いて、ホウ素及びリンを含有する保護層20を形成する。
気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタ法等のPVD法(物理気相成長法)、イオンプレーティング法、CVD法(化学気相成長法)、溶射法等が挙げられる。気相成長法を用いると、成形体の構成材料の溶出に伴う希土類磁石の機能低下を防止することができる。気相成長法の中でも、反応性真空蒸着法、反応性スパッタ法、反応性イオンプレーティング法、プラズマCVD法、熱CVD法若しくはCat−CVD法(触媒化学気相成長法)を用いるとより好ましい。特に、CVD法を用いると、緻密性に優れた保護層20が得られる。
さらに保護層20をより低コストで形成する観点から、一度に大面積を均一に形成できる方法を用いると好ましい。そのような保護層20の形成方法としては、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。これらの方法は、フラットパネルディスプレイの分野で大面積の層を均一に形成する成膜技術が確立されているので、それらを応用して適用することができる。
気相成長法では、プロセスガスとして、キャリアガス、原料ガス等が必要に応じて用いられる。ホウ素及びリンを含有する保護層20を得るための原料ガスとしては、ジボラン(B)とホスフィン(PH)、三塩化ホウ素(BCl)と三塩化リン(PCl)等を好適に用いることができる。原料ガスとして、更にシラン(SiH)を加えると、ケイ素を更に含有する保護層20が得られる。キャリアガスとしては不活性ガス又は還元性ガスを好適に用いることができる。不活性ガスとしては、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等が挙げられ、還元性ガスとしては、水素ガス(H)等が挙げられる。
(時効処理工程)
次に、例えば熱処理装置を用いて、保護層20が形成された成形体を時効処理する。時効処理では、真空中で500〜900℃にて1〜5時間熱処理を行うことが好ましい。これにより、成形体が安定化され、最終的に得られる磁石素体10の磁束が低水準で飽和してしまうことを防止できる。なお、熱処理後の冷却時には、成形体周りの雰囲気ガスとして上述の不活性ガスを用いると好ましい。
上記各工程を経ることによって、磁石素体10及び保護層20を備える希土類磁石100が得られる。
さらに、ホウ素及びリンを含有する保護層20は、酸化物、窒化物、炭化物等からなる保護層よりも熱伝導度が高いので、熱応力も小さい。このため、保護層に熱応力が発生したとしても、ホウ素及びリンを含有する保護層20は剥離し難いので、保護層20の剥離に起因する磁石素体10の劣化を十分に防止することができる。したがって、本実施形態に係る希土類磁石の製造方法によれば、十分に優れた耐食性を有する希土類磁石100が得られる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
例えば、本発明の別の実施形態の希土類磁石の形状は、図示したような直方体に限定されず、用途に応じた形状を有していればよい。具体的には、ハードディスク装置の駆動部分若しくは自動車用モータに用いられる場合、円弧状切片の断面を有する柱形であってもよい。また、工業用加工機械に用いられる場合は、リング状や円板状の形状であってもよい。
また、別の実施形態の磁石素体10の構成材料としては、1種以上の希土類元素とCoとを含有するもの、あるいは1種以上の希土類元素とFeと窒素(N)とを含有するものなどが挙げられる。具体的には、例えば、Sm−Co系若しくはSm−Co17系(数字は原子比を表す。)などのSmとCoとを含有するもの、あるいは、Nd−Fe−B系などのNdとFeとBとを含むものなどが挙げられる。
また、別の実施形態の希土類磁石の製造方法では、保護層形成工程と時効処理工程とを同時に実施してもよい。保護層形成工程、例えば、CVD法による保護層形成工程では高温条件で成膜を行う場合があるので、成膜時の熱を利用して時効処理工程を実施することができる。この場合、製造プロセスが簡略化されるので、新規プロセスの大掛かりな追加が必要なくなる。このため、低コストで容易に希土類磁石を製造することができる。なお、保護層形成工程及び時効処理工程を同一成膜装置を用いて行う場合には、保護層形成時の温度と時効処理時の温度とを同じ温度にしてもよいし、異なる温度にしてもよい。また、同一成膜装置中で保護層形成工程と時効処理工程とを同時に実施してもよいし、保護層形成工程の前後に加熱状態を保持して時効処理工程を実施してもよい。
また、別の実施形態の希土類磁石の製造方法では、時効処理工程を保護層形成工程の前に実施してもよい。この場合、時効処理時の温度が、保護膜形成時の温度以上であると好ましい。これにより、時効処理によって一旦安定化した成形体が、保護層形成工程における熱の影響等を受け難くなる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、粉末冶金法によって作製した14Nd−1Dy−7B−78Fe(数字は原子比を表す。)の組成をもつ焼結体を56×40×8(mm)の大きさの直方体に切断加工し、さらにバレル研磨処理により面取りを行って磁石素体となるべき成形体を得た。
次に、得られた成形体を、アルカリ性の脱脂液を用いて洗浄した後、3%硝酸水溶液を用いて成形体の表面を活性化し、さらに十分に水洗した。続いて、水洗後の成形体を高周波(13.56MHz)プラズマCVD装置のチャンバー内に固定し、1×10−4Pa以下の真空度が得られるまで真空排気した。
次いで、プラズマCVD法を用いて、ホウ素及びリンを構成材料とする保護層を、その膜厚が2μmとなるように成形体表面上に形成した。保護層の形成は、チャンバー内にキャリアガス(He)及び原料ガス(B及びPH)をプロセスガスとして流通させることによって行った。プロセスガスの流量は、Heによって5体積%となるように希釈されたBの流量を200sccmとし、Heによって5体積%となるように希釈されたPHの流量を80sccmとした。また、その他の条件としては、保護層形成時の成形体の表面温度が500℃になるように調整し、チャンバー内の圧力を200Pa、投入電力を200W(自己バイアス50V)とした。
このようにして保護層が形成された成形体に対し、Arガス雰囲気中で600℃、2時間時効処理を施した。次いで、時効処理された成形体を着磁することにより、実施例1の希土類磁石を得た。
実施例1の希土類磁石が備える保護層のEPMA分析を行ったところ、保護層を構成する材料の組成比はB(x=0.8332、y=0.1668)であった。また、希土類磁石を切断して、保護層の断面SEM観察を行ったところ、保護層の膜厚は2μmであった。
さらに、実施例1の希土類磁石について、水蒸気雰囲気、120℃、2気圧における24時間の加湿高温試験(PCT試験)を行ったところ、重量減少は見られなかった。また、PCT試験後の希土類磁石を目視で観察したところ、保護層にピンホール、クラック等の欠陥は生じていないことが確認された。
さらに、PCT試験前後の希土類磁石の磁束を測定し、PCT試験前の磁束(初期値)に対する減少率(フラックスロス、磁束損失)を測定したところ、フラックスロスは0.24%以下であり、測定誤差範囲内であった。
(実施例2)
ホウ素、リン及びケイ素を構成材料とする保護層を、その膜厚が5μmとなるように成形体表面上に形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の希土類磁石を得た。実施例2では、チャンバー内にキャリアガス(He)及び原料ガス(B、PH及びSiH)をプロセスガスとして流通させることによって保護層を形成した。プロセスガスの流量は、Heによって5体積%となるように希釈されたBの流量を200sccmとし、Heによって5体積%となるように希釈されたPHの流量を80sccmとし、Heによって20体積%となるように希釈されたSiHの流量を500sccmとし、Heの流量を10sccmとした。また、その他の条件は実施例1と同様にした。
実施例2の希土類磁石が備える保護層のEPMA分析を行ったところ、保護層を構成する材料の組成比はSiB(x=0.95、y=0.05)であった。また、実施例1と同様にして保護層の断面SEM観察を行ったところ、保護層の膜厚は5μmであった。
さらに、この実施例2の希土類磁石を、実施例1の希土類磁石と同じ条件のPCT試験で評価したところ、重量減少は見られなかった。また、PCT試験後の希土類磁石を目視で観察したところ、保護層にピンホール、クラック等の欠陥は生じていないことが確認された。
さらに、PCT試験前後のフラックスロスを測定したところ、フラックスロスは測定誤差範囲内であった。このことから、実施例2の希土類磁石は、十分な耐食性を有していることが確認された。
(比較例1)
保護層を形成しないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の希土類磁石を得た。この比較例1の希土類磁石を、PCT試験によって評価したところ、0.21%の重量減少が認められた。また、PCT試験後の希土類磁石を目視で観察したところ、表面に粉体が多数発生しているのが観測された。
また、PCT試験前後のフラックスロスを測定したところ、フラックスロスは12.5%と大きな値であった。以上のことから、比較例1の希土類磁石は、実施例1及び2に比べて十分な耐食性を有していないことが確認された。
(比較例2)
保護層をSiO膜としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の希土類磁石を得た。実施例1と同様の成形体に対して、アルカリ性の脱脂液を用いて洗浄した後、3%硝酸水溶液を用いて成形体の表面を活性化し、さらに十分に水洗した。次いで、気相成長法である反応性スパッタ法を用いて、SiO膜を構成材料とする保護層を、その膜厚が5μmとなるように成形体表面上に形成した。保護層の形成は、Siスパッタターゲットを用い、成膜装置のチャンバー内にAr及びOガスを各1.0sccm及び10sccmの流量で流通させ、チャンバー内圧力を0.7Paに維持し、300Wの高周波放電を発生させて行った。
この比較例2の希土類磁石を、PCT試験によって評価したところ、0.1%の重量減少が認められた。また、PCT試験後の希土類磁石を目視で観察したところ、表面に粉体が多数発生しているのが観測された。また、PCT試験前後のフラックスロスを測定したところ、フラックスロスは10.4%と大きな値であった。以上のことから、比較例2の希土類磁石は、実施例1及び2に比べて十分な耐食性を有していないことが確認された。
本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石を示す概略斜視図である。 本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石を示す概略断面図である。 R−Fe−B系磁石の相構成を示す模式拡大図である。
符号の説明
10…磁石素体、20…保護層、100…希土類磁石。

Claims (7)

  1. 希土類元素を含有する磁石素体と、
    前記磁石素体の表面上に設けられており、ホウ素及びリンを含有する保護層と、
    を備える希土類磁石。
  2. 前記磁石素体が、更にホウ素を含有することを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 前記保護層が、下記一般式(1)で表される組成を有し、且つ、下記式(2)で表される条件を満足することを特徴とする請求項1又は2に記載の希土類磁石。
    …(1)
    0.01≦(y/x)≦1.0…(2)
  4. 前記保護層が、更にケイ素を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 前記保護層が、下記一般式(3)で表される組成を有し、且つ、下記式(4)、(5)で表される条件を同時に満足することを特徴とする請求項4に記載の希土類磁石。
    SiB…(3)
    x≧0.05…(4)
    0.01≦(y/x)≦1.0…(5)
  6. 前記保護層の膜厚が、2〜10μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  7. 希土類元素を含有する磁石素体となるべき成形体の表面上に、気相成長法を用いて、ホウ素及びリンを含有する保護層を形成する保護層形成工程を含む希土類磁石の製造方法。
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