JP5471678B2 - 希土類磁石及び回転機 - Google Patents

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本発明は、希土類磁石及び回転機に関する。
希土類元素R、鉄元素(Fe)又はコバルト元素(Co)等の遷移金属元素T及びホウ素元素Bを含有するR−T−B系希土類磁石は優れた磁気特性を有する(下記特許文献1参照)。しかし、希土類磁石は主成分として酸化され易い希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石の耐食性を向上させるために、磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層を設けることが多い。
国際公開第2006/112403号パンフレット
しかし、表面に保護層を形成した希土類磁石においても、必ずしも完全な耐食性は得られていない。これは、高温多湿の環境では水蒸気が保護層を透過して磁石素体に到達することにより、磁石素体の腐食が進行することによる。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた希土類磁石を提供することを目的とする。また、本発明は、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機を提供することを目的とする。
本発明者らは、水蒸気による磁石素体の腐食メカニズムについて研究した結果、腐食反応で発生する水素が磁石素体中の粒界に存在するRリッチ相に吸蔵されることにより、Rリッチ相の水酸化物への変化が加速され、それに伴う体積膨張による主相粒子の脱落によって、腐食が加速度的に磁石内部に進行していくことを発見した。なお、Rリッチ相とは、相を構成する元素の中で最も濃度(原子数の比率)が高い元素が希土類元素Rである相を意味する。Rは例えばNdである。
そこで本発明者らは、粒界のRリッチ相による水素の吸蔵を抑制する方法について鋭意研究し、磁石素体の表面近傍のRリッチ相内にCuを拡散させることにより、水素吸蔵を抑制し、耐食性を大幅に向上できることを見出し、下記の本発明に至った。
本発明の希土類磁石は、希土類元素Rを含むR−Fe−B系合金の結晶粒子群を備える希土類磁石であって、希土類磁石の表面部に位置する結晶粒子の粒界三重点に含まれるRリッチ相に存在するCuの原子数が[Cu]であり、当該Rリッチ相に存在するFeの原子数が[Fe]であり、当該Rリッチ相に存在するRの原子数が[R]であるとき、[Cu]>[Fe]であり、[Cu]/[R]>0.5である。なお、結晶粒子群とは、複数の結晶粒子を意味する。
上記本発明によれば、希土類磁石の粒界相による水素の吸蔵が抑制され、希土類磁石の耐食性が向上する。
上記本発明では、結晶粒子におけるCuの含有率が0.05原子%以下であることが好ましい。これにより、耐食性のみならず充分な磁気特性が希土類磁石に付与される。
上記本発明では、希土類磁石全体に占める結晶粒子群の割合が85体積%以上であることが好ましい。これにより、耐食性のみならず充分な磁気特性が希土類磁石に付与される。
本発明の回転機は、上記本発明の希土類磁石を備える。耐食性に優れた希土類磁石を備える回転機は、苛酷な環境下で使用しても、長期間に亘って優れた性能を維持することができる。
本発明によれば、耐食性に優れた希土類磁石を提供することが可能となる。また、本発明によれば、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機を提供することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る希土類磁石の斜視図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線断面図である。 図2に示す希土類磁石の表面部40の一部を拡大した模式図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る回転機を模式的に示す斜視図である。 図5は、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)による分析に基づいて作成した実施例1の希土類磁石の表面部におけるCuの分布図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一の要素については同一の符号を付し、同一の要素の符号の一部は省略する。
(希土類磁石)
図1〜3に示すように、本実施形態の希土類磁石100は、複数の結晶粒子4(主相粒子)を備える。希土類磁石100の主相は結晶粒子4から構成される。結晶粒子4は、主成分としてR−Fe−B系合金を含む。R−Fe−B系合金とは、例えばRFe14B系合金等である。希土類磁石100は複数の結晶粒子4の間に位置する粒界相を備える。粒界相はRリッチ相、Bリッチ相、酸化物相及び炭化物相などから構成される。Bリッチ相とは、相中のB元素量が結晶粒子4中に含まれる量よりも多い相である。酸化物相とは、相を構成する元素の中で酸素元素が元素比で20%以上含まれる相である。炭化物相とは、相を構成する元素の中で炭素元素が元素比で20%以上含まれる相である。
希土類磁石100の寸法は、特に限定されないが、縦の長さが1〜200mm、横の長さが1〜200mm、高さが1〜30mm程度である。結晶粒子4の平均粒径は、特に限定されないが、1〜20μm程度である。なお、希土類磁石100の形状は、特に限定されず、リング状や円板状であってもよい。
希土類元素Rは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。特に、希土類元素RがNd及びPrのうち少なくともいずれか一種であることが好ましい。これにより、希土類磁石100の飽和磁束密度及び保磁力が顕著に向上する。
希土類磁石100の主相及び粒界相は、必要に応じてCo、Cu、Ni、Mn、Al、Nb、Zr、Ti、W、Mo、V、Ga、Zn、Si及びBi等の他の元素を更に含んでもよい。
希土類磁石100の表面部40に位置する粒界三重点6に含まれるRリッチ相には、Cuが偏析している。換言すれば、希土類磁石100の表面部40に位置する粒界三重点6におけるCuの含有率は、主相(結晶粒子群)と比較して著しく高い。なお、粒界三重点6とは3つ以上の結晶粒子4に囲まれた粒界相を意味する。希土類磁石100の表面部40に位置する粒界三重点6に含まれるRリッチ相に存在するCuの原子数が[Cu]であり、粒界三重点6に含まれるRリッチ相に存在するFeの原子数が[Fe]であり、粒界三重点6に含まれるRリッチ相に存在するRの原子数が[R]であるとき、[Cu]>[Fe]であり、[Cu]/[R]>0.5である。以下では、[Cu]>[Fe]であり、且つ[Cu]/[R]>0.5であり、粒界三重点6に含まれるRリッチ相を、場合により「R−Cuリッチ相」と記す。なお、R−Cuリッチ相では、[Cu]/[R]≦1である。
R−Cuリッチ相は、水素を吸蔵し難い特性を有する。したがって、仮に水蒸気によって希土類磁石の表面が腐食して水素が発生した場合であっても、希土類磁石100の表面部40に位置するR−Cuリッチ相によって、希土類磁石内部のRリッチ相への水素の侵入及び吸蔵が抑制される。その結果、水素とRリッチ相との反応が抑制され、腐食が希土類磁石の表面から内部へ進行し難くなる。
希土類磁石100に適量のCuが含まれると、希土類磁石100の保磁力が向上する。しかし、過度のCuが希土類磁石100の全域に含まれると希土類磁石100の保磁力は低下する傾向がある。したがって、R−Cuリッチ相は希土類磁石100の表面部40だけに偏在することが好ましい。これにより、希土類磁石100の保磁力及び飽和磁束密度を損なうことなく希土類磁石100の耐食性を向上させ易くなる。なお、深さDは、表面部40の厚さに相当する。充分な耐食性と磁気特性を両立させるためには、表面部40の厚さDは40μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましい。
希土類磁石100の表面部40におけるCoの含有率(原子数の比率)は、希土類磁石100の中心部におけるCoの含有率よりも高いことが好ましい。この場合、希土類磁石100の耐食性が向上し易い傾向がある。
結晶粒子4におけるCuの含有率は0.05原子%以下であることが好ましい。換言すれば、希土類磁石100の主相におけるCuの含有率は0.05原子%以下であることが好ましい。主相におけるCuの含有率が高過ぎる場合、希土類磁石100の飽和磁束密度が低下する傾向があるが、Cuの含有率を上記の上限値以下とすることにより、希土類磁石100の磁気特性の劣化を抑制できる。ただし、Cuの含有率が上記の上限値を超えたとしても、本発明の効果は達成される。
結晶粒子4からなる主相の割合は希土類磁石100全体に対して85体積%以上であることが好ましい。これにより、充分な磁気特性が希土類磁石に付与される。
表面部40に存在するR−Cuリッチ相中のCoの原子数を[Co]とするとき、[Cu]>[Co]>0であることが好ましい。また、R−Cuリッチ相全体に対するCoの含有率は、0.5原子%超11原子%未満であることが好ましく、1原子%以上4原子%以下であることがより好ましい。R−Cuリッチ相においてCuとCoが共存し、Coが上記の条件を満たすことにより、希土類磁石の耐食性が顕著に向上する。
希土類磁石100は、必要に応じてさらにその表面に保護層を備えてもよい。保護層としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものであれば特に制限なく適用できる。保護層としては、たとえば、塗装や蒸着重合法により形成した樹脂層、めっきや気相法により形成した金属層、塗布法や気相法により形成した無機層、酸化層、化成処理層等が挙げられる。
(希土類磁石の製造方法)
希土類磁石の製造では、まず原料合金を鋳造し、インゴットを得る。原料合金としては、希土類元素R,Fe及びBを含むものを用いればよい。原料合金は、必要に応じてCo、Cu、Ni、Mn、Al、Nb、Zr、Ti、W、Mo、V、Ga、Zn、Si及びBi等の元素を更に含んでもよい。インゴットの化学組成は、最終的に得たい希土類磁石の主相及び粒界相の化学組成に応じて調整すればよい。
インゴットを、ディスクミル等により粗粉砕して10〜100μm程度の粒径の合金粉末を得る。当該合金粉末を、ジェットミル等により微粉砕して0.5〜5μm程度の粒径の合金粉末を得る。当該合金粉末を、磁場中で加圧成形する。成形時に合金粉末に印加する磁場の強度は800kA/m以上であることが好ましい。成形時に合金粉末に加える圧力は10〜500MPa程度であることが好ましい。成形方法としては、一軸加圧法またはCIPなどの等方加圧法のいずれを用いてもよい。得られた成形体を焼成して焼結体を形成する。焼成温度は1000〜1200℃程度であればよい。焼成時間は0.1〜100時間程度であればよい。焼成工程は、複数回行ってもよい。焼成工程は、真空中またはArガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
焼結体に対して時効処理を施すことが好ましい。時効処理では、焼結体を450〜950℃程度で熱処理すればよい。時効処理では、焼結体を0.1〜100時間程度熱処理すればよい。時効処理は不活性ガス雰囲気中で行えばよい。このような時効処理により希土類磁石の保磁力がさらに向上する。なお、時効処理は多段階の熱処理工程から構成されてもよい。例えば2段の熱処理からなる時効処理では、1段目の熱処理工程で焼結体を700℃以上焼成温度未満の温度で0.1〜50時間加熱すればよい。2段目の熱処理工程では、焼結体を450〜700℃で0.1〜100時間加熱すればよい。
以上の工程により得られた焼結体は、R−Fe−B系合金の結晶粒子群4からなる主相と、希土類元素Rを主成分とするRリッチ相を少なくとも備える。
焼結体から所望の寸法の磁石素体を切り出し、磁石素体の表面にCu単体、Cu合金、又はCu化合物を付着させる。Cuの付着方法としては、例えば、Cuからなる粒子を分散させた塗布液を、磁石素体の表面全体に均一に塗布する方法が挙げられる。磁石素体の表面に付着させるCu粒子の粒径は、50μm以下であることが好ましい。Cu粒子の粒径が大き過ぎる場合、Cuが磁石素体内へ拡散しにくくなることが問題となる。なお、めっき法や気相法などの手法により、磁石素体の表面にCuを付着させてもよい。
表面にCuを付着させた磁石素体を熱処理する。これにより、Cuが磁石素体の表面から磁石素体のRリッチ相へ熱拡散して、表面部40のRリッチ相がR−Cuリッチ相になり、本実施形態の希土類磁石が完成する。表面にCuを付着させた磁石素体は650℃以下で熱処理することが好ましく、600℃以下で熱処理することがより好ましい。これにより、R−Cuリッチ相を希土類磁石の表面部だけに形成し易くなる。表面にCuを付着させた磁石素体の熱処理温度が高過ぎる場合、Cuが磁石素体の表面部の粒界三重点に含まれるRリッチ相のみならず磁石素体の全体に熱拡散したり、Cuが溶融して磁石素体の主相(R−Fe−B系合金)と反応して合金化したりする。その結果、希土類磁石の磁気特性が劣化する。
上記の熱処理において昇温させた磁石素体を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、R−Cuリッチ相を希土類磁石の表面部だけに形成し易くなる。
磁石素体表面からのCuの拡散距離D、表面部のR−Cuリッチ相における[Cu],[Fe]及び[R]、並びに希土類磁石全体に対する主相の割合は、原料合金の組成、磁石素体の表面に付着させるCuの量、表面にCuを付着させた磁石素体の熱処理温度又は熱処理時間等によって適宜制御できる。
希土類磁石に対して、上述した焼結体の場合と同様の時効処理を施すことが好ましい。時効処理により希土類磁石の保磁力がさらに向上する。時効処理温度は、Cuの熱拡散に要する熱処理温度以下であることが好ましい。時効処理において昇温させた希土類磁石を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、希土類磁石の磁気特性が向上し易くなる。
表面にCuを付着させた磁石素体を熱処理した後、希土類磁石の表面に残存するCu等を研磨やエッチングにより除去してもよい。希土類磁石の表面に保護層を形成してもよい。保護層としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものであれば特に制限なく適用できる。保護層としては、たとえば、塗装や蒸着重合法により形成した樹脂層、めっきや気相法により形成した金属層、塗布法や気相法により形成した無機層、酸化層、化成処理層等が挙げられる。
(回転機)
図4は、本実施形態の回転機(永久磁石回転機)の内部構造を示す説明図である。本実施形態の回転機200は、永久磁石同期回転機(SPM回転機)であり、円筒状のロータ50と該ロータ50の内側に配置されるステータ30とを備えている。ロータ50は、円筒状のコア52と円筒状のコア52の内周面に沿ってN極とS極が交互になるように複数の希土類磁石100が設けられている。ステータ30は、内周面に沿って設けられた複数のコイル32を有している。このコイル32と希土類磁石100とは互いに対向するように配置されている。
回転機200は、ロータ50に、上記実施形態に係る希土類磁石100を備える。希土類磁石100は耐食性に優れるため、経時的な磁気特性の低下を十分に抑制することができる。したがって、回転機200は優れた性能を長時間にわたって維持することができる。回転機200は、希土類磁石100以外の部分について、通常の回転機部品を用いて通常の方法によって製造することができる。
回転機200は、コイル32に通電することによって生成する電磁石による界磁と永久磁石100による界磁との相互作用により、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する電動機(モータ)であってもよい。また、回転機200は、永久磁石100による界磁とコイル32との電磁誘導相互作用により、機械的エネルギーから電気的エネルギーに変換する発電機(ジェネレータ)であってもよい。
電動機(モータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石直流モータ、リニア同期モータ、永久磁石同期モータ(SPMモータ)、永久磁石同期モータ(IPMモータ)、往復動モータなどが挙げられる。往復動モータとして機能するモータとしては、例えば、ボイスコイルモータ、振動モータなどが挙げられる。発電機(ジェネレータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石同期発電機、永久磁石整流子発電機、永久磁石交流発電機などが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
粉末冶金法により、組成が22.5重量%Nd−5.2重量%Pr−2.7重量%Dy−0.5重量%Co−0.3重量%Al−0.07重量%Cu−1.0重量%B−残部Feである鋳塊を作製した。鋳塊を粗粉砕して得た粗粉末を不活性ガス中でジェットミルにより粉砕して、平均粒径が約3.5μmの微粉末を得た。微粉末を金型内に充填し、磁場中で加圧成形して成形体を得た。成形体を真空中で焼成した後、時効処理を施して焼結体を得た。焼結体を切り出し加工し、10mm×8mm×12mmの寸法を有する磁石素体を作製した。
磁石素体の表面に対して脱脂処理及びエッチングを施した。平均粒径1μmのCu粒子を分散させた塗布液を調製した。エッチング後の磁石素体の表面に塗布液をディップコーティングにより塗布し、厚さが約3μmの塗膜を磁石素体の表面全体に形成した。この塗膜を120℃で20分乾燥させた。
塗膜を有する磁石素体をAr雰囲気において600℃で1時間熱処理した後、50℃/分で急冷し、塗膜中のCuを磁石素体内へ拡散させた。熱処理後の磁石素体をAr雰囲気において470℃で1時間時効処理した後、50℃/分で急冷した。時効処理後の磁石素体の表面に残存した反応物を研磨で除去し、磁石素体の表面にエッチングを施すことで、実施例1の希土類磁石を得た。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様の方法で焼結体を作成した。焼結体を切り出し加工し、10mm×8mm×1mmの寸法を有する磁石素体を作製した。実施例2では、Cu粒子を分散させた塗布液を磁石素体の表面に塗布する代わりに、電気めっきにより厚さが1μmのCuめっき膜を磁石素体の表面全体に形成した。Cuめっき膜を有する磁石素体をAr雰囲気中において600℃で10分間熱処理して、Cuめっき膜中のCuを磁石素体内へ拡散させた。以上の事項以外は実施例1と同様の方法で実施例2の希土類磁石を作製した。
(実施例3)
実施例3では、Cuめっき膜を有する磁石素体をAr雰囲気において550℃で10分熱処理した。この事項以外は実施例2と同様の方法で実施例3の希土類磁石を作製した。
(実施例4)
実施例4では、Cuめっき膜を有する磁石素体をAr雰囲気において500℃で10分熱処理した。この事項以外は実施例2と同様の方法で実施例4の希土類磁石を作製した。
(実施例5)
実施例5では、電気めっきにより磁石素体の表面に厚さが0.4μmのCuめっき膜を形成した。Cuめっき膜を有する磁石素体をAr雰囲気において600℃で60分熱処理した。これらの事項以外は実施例2と同様の方法で実施例5の希土類磁石を作製した。
(比較例1)
磁石素体の表面のエッチング以降の工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で比較例1の希土類磁石を作製した。つまり、Cuを用いずに比較例1の希土類磁石を作製した。
(比較例2)
比較例2では、実施例1と同様のディップコーティングにより厚さが約1μmの塗膜を磁石素体の表面全体に形成した。また、比較例2では、塗膜を有する磁石素体をAr雰囲気において700℃で10分間熱処理した。これらの事項以外は実施例1と同様の方法で比較例2の希土類磁石を作製した。なお、比較例2の希土類磁石の保磁力は、後述するように、他の実施例及び比較例に対して著しく劣っていたので、比較例2の希土類磁石の組成の分析及び耐食性の評価は実施しなかった。比較例2の希土類磁石の保磁力の低下は、塗膜を有する磁石素体の熱処理温度が高過ぎたため、塗膜中のCuが粒界相のみならず主相全体に拡散してしまい、[Cu]>[Fe]であり、[Cu]/[R]>0.5であるR−Cuリッチ相が表面部に形成されなかったことに起因する、と推測される。
[組成の分析]
実施例1〜5及び比較例1の各希土類磁石を切断し、研磨した切断面における元素分布をEPMAで確認した。EPMAの装置としては、JEOL社製のJXA−8800を用いた。EPMAでは、希土類磁石の外表面からの深さが0〜100μmであり、外表面に平行な方向における幅が100μmである領域(以下、「表面部A」という。)に存在する元素のマッピングを行い、Rリッチ相を特定してその相の直径1μmのスポットの範囲を分析した。表面部Aの面積は100μm×100μmである。各希土類磁石の表面部A中に存在する主相における各元素の含有率(原子%)及び[Cu]/[R]を表1に示す。各希土類磁石の表面部A中に存在する粒界三重点に含まれるRリッチ相における各元素の含有率(原子%)及び[Cu]/[R]を表1に示す。主相における各元素の含有率は、表面部A内の任意の3つの主相粒子(結晶粒子)で測定した各元素の含有率の平均値である。粒界三重点に含まれるRリッチ相における各元素の含有率は、表面部A内の任意の3つの粒界三重点に含まれる各Rリッチ相で測定した各元素の含有率の平均値である。なお、各実施例の希土類磁石の主相の組成は同じであったため、表1には全実施例に共通する主相の組成を示す。また、実施例1の表面部AにおけるCuの分布図を図5に示す。図5の白い部分はCuが存在する部分である。
Figure 0005471678
EPMAによる分析の結果、実施例1〜5の各希土類磁石のいずれにおいても、R−T−B系合金の結晶粒子から構成される主相の比率は、希土類磁石全体に対して92体積%であることが確認された。実施例1〜5の各希土類磁石の表面部では、比較例1と比較して粒界三重点に含まれるRリッチ相に多量のCuが拡散していることが確認された。実施例1〜5の各粒界三重点のCuは主相内へ殆ど拡散していないことが確認された。実施例1〜5及び比較例1の粒界三重点に含まれるRリッチ相のいずれにも、Cuのほか少なくともNd,Pr,Fe及びCoが存在していることが分かった。実施例1〜5及び比較例1の粒界三重点に含まれるRリッチ相のいずれにも、Cuと共にCoが偏在することが確認された。実施例1〜5及び比較例1の粒界三重点に含まれるRリッチ相におけるCoの含有率は主相に比べて高いことが確認された。成形体を焼成して焼結体を形成する工程において、粒界相にCoが析出し、Cuの拡散に誘起される形で磁石内部からCoが移動しR−Cuリッチ相へ共析したものと推測される。また、EPMAによる分析の結果、Cuは、粒界三重点のRリッチ相へ拡散し易い傾向があることが確認された。
レーザー照射型誘導結合プラズマ質量分析(Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:LA−ICP−MS)により、各希土類磁石を分析した。LA−ICP−MSによる分析では、希土類磁石の断面に対して20μmピッチでマッピング測定を行い、磁石表面からCuの拡散距離を測定した。LA−ICP−MSの結果、実施例1では、希土類磁石の外表面からの深さが0〜1.2mmである領域にCuが拡散し、その領域におけるCuの濃度が高くなっていることが確認された。実施例2では、希土類磁石の外表面からの深さが0〜300μmである領域にCuが拡散し、その領域におけるCuの濃度が高くなっていることが確認された。実施例3では、希土類磁石の外表面からの深さが0〜150μmである領域にCuが拡散し、その領域におけるCuの濃度が高くなっていることが確認された。実施例4では、希土類磁石の外表面からの深さが0〜40μmである領域にCuが拡散し、その領域におけるCuの濃度が高くなっていることが確認された。実施例5では、希土類磁石の外表面からの深さが0〜400μmである領域にCuが拡散し、その領域におけるCuの濃度が高くなっていることが確認された。
[耐食性の評価]
実施例1〜5及び比較例1の各希土類磁石の耐食性をプレッシャークッカーテスト(Pressure Cooker Test:PCT)により評価した。PCTでは、2気圧、温度120℃、湿度100%RHである環境下に各希土類磁石を設置してから200時間後及び500時間後の各希土類磁石の重量の減少量を測定した。各希土類磁石の単位表面積あたりの重量減少量(単位:mg/cm)を表2に示す。
Figure 0005471678
実施例1〜5の各希土類磁石は、比較例1に比較して耐食性に優れていることが確認された。
実施例1及び比較例1の各希土類磁石を、100℃、0.1MPaの水素雰囲気中に放置する試験を行った。比較例1では、100秒経過後に希土類磁石が水素を吸蔵したことによって水素分圧が低下し始めた。一方、実施例1では、300秒経過後も希土類磁石が水素を吸蔵せず、水素分圧が低下しなかった。
[磁気特性の評価]
実施例1〜5及び比較例1,2の各希土類磁石の残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)を測定した。各希土類磁石のBr(単位:T)及びHcJ(単位:kA/m)を表3に示す。
Figure 0005471678
実施例1〜5の各希土類磁石のいずれも充分な残留磁束密度及び保磁力を有していることが確認された。
4・・・結晶粒子、6・・・粒界三重点、30・・・ステータ、32・・・コイル、40,A・・・表面部、50・・・ロータ、52・・・コア、100・・・希土類磁石、200・・・回転機、D・・・表面部の厚さ(Cuの拡散距離)。

Claims (5)

  1. 希土類元素Rを含むR−Fe−B系合金の結晶粒子群を備える希土類磁石であって、
    前記希土類磁石の表面部に位置する前記結晶粒子の粒界三重点に含まれるRリッチ相に存在するCuの原子数が[Cu]であり、前記Rリッチ相に存在するFeの原子数が[Fe]であり、前記Rリッチ相に存在するRの原子数が[R]であるとき、
    [Cu]>[Fe]であり、
    0.5<[Cu]/[R]≦1である
    希土類磁石。
  2. 前記Rリッチ相全体に対するCoの含有率が、1原子%以上4原子%以下であることを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 前記結晶粒子におけるCuの含有率が0.05原子%以下である、
    請求項1又は請求項2に記載の希土類磁石。
  4. 前記希土類磁石全体に占める前記結晶粒子群の割合が85体積%以上である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載の希土類磁石を備える回転機。
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