JP2012074470A - 希土類磁石、希土類磁石の製造方法及び回転機 - Google Patents

希土類磁石、希土類磁石の製造方法及び回転機 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性に優れた希土類磁石を提供すること。
【解決手段】本発明の希土類磁石100は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の希土類磁石であって、Cu及びCoを更に含有し、希土類磁石におけるCuの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCuの濃度が、希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高く、希土類磁石におけるCoの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCoの濃度が、希土類磁石の内部側のCoの濃度よりも高い。
【選択図】図6

Description

本発明は、希土類磁石、希土類磁石の製造方法及び回転機に関する。
希土類元素R、鉄元素(Fe)又はコバルト元素(Co)等の遷移金属元素T及びホウ素元素Bを含有するR−T−B系希土類磁石は優れた磁気特性を有する(下記特許文献1〜4参照)。しかし、希土類磁石は主成分として酸化され易い希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石の耐食性を向上させるために、磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層を設けることが多い。
特開2001−196215号公報 特開昭62−192566号公報 特開2002−25812号公報 国際公開第2006/112403号パンフレット
しかし、表面に保護層を形成した希土類磁石においても、必ずしも完全な耐食性は得られていない。これは、高温多湿の環境では水蒸気が保護層を透過して磁石素体に到達することにより、磁石素体の腐食が進行することによる。
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた希土類磁石及び希土類磁石の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る希土類磁石は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の希土類磁石であって、Cu及びCoを更に含有し、希土類磁石におけるCuの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCuの濃度が、希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高く、希土類磁石におけるCoの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCoの濃度が、希土類磁石の内部側のCoの濃度よりも高い。
上記本発明によれば、希土類磁石の耐食性が向上する。
上記本発明に係る希土類磁石は、Alを更に含有し、希土類磁石におけるAlの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のAlの濃度が、希土類磁石の内部側のAlの濃度よりも高くてもよい。
上記のようなAlの濃度分布を有する希土類磁石においても、その耐食性が向上する。
本発明の回転機は、上記本発明の希土類磁石を備える。耐食性に優れた希土類磁石を備える回転機は、苛酷な環境下で使用しても、長期間に亘って優れた性能を維持することができる。
本発明に係る希土類磁石の第一の製造方法は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の磁石素体の表面に、Cu元素を付着させる工程と、Cu元素を付着させた磁石素体を480〜650℃で加熱する工程と、を備え、磁石素体がCoを更に含有する。これにより、上記のようなCu及びCoの濃度分布を有する本発明の希土類磁石を得ることが可能となる。
本発明に係る希土類磁石の第二の製造方法は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の磁石素体の表面に、Al元素を付着させる工程と、Al元素を付着させた前記磁石素体を540〜630℃で加熱する工程と、を備え、磁石素体がCu及びCoを更に含有する。これにより、上記のようなCu、Co及びAlの濃度分布を有する本発明の希土類磁石を得ることが可能となる。
本発明によれば、耐食性に優れた希土類磁石及び希土類磁石の製造方法を提供することが可能となる。また、本発明によれば、長期間に亘って優れた性能を維持することが可能な回転機を提供することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態に係る希土類磁石の斜視図である。 図2は、図1に示す希土類磁石のII−II線断面図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る回転機を模式的に示す斜視図である。 図4(a)は、本発明の実施例1の希土類磁石におけるCuの濃度分布図であり、図4(b)は、本発明の実施例1の希土類磁石におけるCoの濃度分布図であり、図4(c)は、本発明の実施例1の希土類磁石におけるAlの濃度分布図である。 図5(a)は、本発明の実施例1の希土類磁石におけるNiの濃度分布図であり、図5(b)は、本発明の実施例1の希土類磁石におけるFeの濃度分布図である。 図6(a)は、本発明の実施例8の希土類磁石におけるCuの濃度分布図であり、図6(b)は、本発明の実施例8の希土類磁石におけるCoの濃度分布図であり、図6(c)は、本発明の実施例8の希土類磁石におけるAlの濃度分布図である。 図7(a)は、本発明の実施例8の希土類磁石におけるNiの濃度分布図であり、図7(b)は、本発明の実施例8の希土類磁石におけるFeの濃度分布図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一の要素については同一の符号を付し、同一の要素の符号の一部は省略する。
(希土類磁石)
図1及び2に示す本実施形態に係る希土類磁石100は、希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系希土類磁石である。希土類元素Rは、La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLuからなる群より選ばれる少なくとも一種であればよい。特に、希土類磁石100は、希土類元素RとしてNd及びPrの両方を含有することが好ましい。また、希土類磁石は、遷移金属元素TとしてCo及びFeを含有することが好ましい。希土類磁石100がこれらの元素を含有することにより、希土類磁石100の残留磁束密度及び保磁力が顕著に向上する。なお、希土類磁石100は、必要に応じて、Mn,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si及びBi等の他の元素を更に含んでもよい。
希土類磁石100はCu及びCoを更に含有する。希土類磁石100におけるCuの濃度分布は、希土類磁石100の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有する。希土類磁石100の表面側のCuの濃度は、希土類磁石100の内部側のCuの濃度よりも高い。つまり、希土類磁石100におけるCuの濃度は、希土類磁石100の表面側において最も高く、希土類磁石100の表面から内部(中心部20)へ向かう距離の増加に伴って減少する。希土類磁石100におけるCoの濃度分布は、希土類磁石100の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石100の表面側のCoの濃度が、希土類磁石100の内部側のCoの濃度よりも高い。つまり、希土類磁石100におけるCoの濃度は、希土類磁石100の表面側において最も高く、希土類磁石100の表面から内部(中心部20)へ向かう距離の増加に伴って減少する。
本発明者らは、水蒸気による磁石の腐食メカニズムについて研究した結果、腐食反応で発生する水素が磁石中の粒界に存在するRリッチ相に吸蔵されることにより、Rリッチ相の水酸化物への変化が加速され、それに伴う磁石の体積膨張によって磁石の主相粒子が磁石から脱落し、腐食が加速度的に磁石内部に進行していくことを発見した。なお、Rリッチ相とは、相を構成する元素の中で最も濃度(原子数の比率)が高い元素が希土類元素Rである相を意味する。Rは例えばNdである。
そこで本発明者らは、粒界のRリッチ相による水素の吸蔵を抑制する方法について鋭意研究し、磁石の表面近傍におけるCu及びCoの各濃度を磁石内部に比べて高くすることにより、水素吸蔵を抑制し、耐食性を大幅に向上できることを見出し、本発明に至った。また、希土類磁石100の全域に適量のCuが分布すると、希土類磁石100の保磁力が向上するが、Cuの濃度が高過ぎる領域では、保磁力及び残留磁束密度が低下する傾向がある。そこで、本実施形態では、上記のようにCu及びCoの各濃度分布が勾配を有する領域、すなわちCu及びCoが濃縮された層(高濃度層40)を、希土類磁石100の表面側に設ける。これにより、希土類磁石100の保磁力及び残留磁束密度を損なうことなく希土類磁石100の耐食性を向上させることが可能となる。
希土類磁石100中のCuの含有量は、希土類磁石100全体に対して0.01〜1重量%であることが好ましい。Cuの含有量が多過ぎる場合、希土類磁石100の残留磁束密度が低下する傾向がある。ただし、Cuの含有量が上記の上限値を超えたとしても、本発明の効果は達成される。希土類磁石100中のCoの含有量は、希土類磁石100全体に対して0.1〜10重量%程度であればよい。
高濃度層40の厚みDは、特に限定されないが、10〜1000μm程度であればよい。これにより、希土類磁石100の充分な耐食性と磁気特性を両立させ易くなる。なお、高濃度層40の厚みDは、Cu及びCoの各濃度分布が勾配を有する領域の幅とほぼ同義である。また、厚みD、又は濃度分布が勾配を有する領域の幅とは、希土類磁石100の表面に垂直な方向における値を意味する。
希土類磁石100の寸法は、特に限定されないが、縦の長さが1〜200mm、横の長さが1〜200mm、高さが1〜30mm程度である。なお、希土類磁石100の形状は、図1及び2に示す直方体に限定されず、リング状や円板状であってもよい。
希土類磁石100は、Alを更に含有することが好ましい。そして、希土類磁石100におけるAlの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のAlの濃度が、希土類磁石の内部側のAlの濃度よりも高いことが好ましい。つまり、希土類磁石100におけるAlの濃度は、希土類磁石100の表面側において最も高いことが好ましく、希土類磁石100の表面から内部(中心部20)へ向かう距離の増加に伴って減少することが好ましい。このように、希土類磁石100の表面にCu及びCuと共にAlを偏在させることにより、希土類磁石100の表面が水素を吸蔵し難くなり、希土類磁石100の耐食性が向上し易くなる。
なお、Alが希土類磁石100の表面のみならず、希土類磁石100の内部全体に分布すると、磁気特性が劣化する傾向がある。したがって、Alの濃度分布が勾配を有する領域の幅は、希土類磁石100の表面を起点として、1000μm以下であることが好ましい。また、Alの濃度分布が勾配を有する領域の幅は、希土類磁石100の表面を起点として、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましい。これにより、希土類磁石100の耐食性と磁気特性を両立させ易くなる。
希土類磁石100中のAlの含有量は0.01〜1.5重量%であることが好ましい。Alの含有量が多過ぎる場合、希土類磁石100の残留磁束密度が劣化する傾向がある。ただし、Alの含有量が上記の上限値を超えたとしても、本発明の効果は達成される。
希土類磁石100は、Niを更に含有することが好ましい。そして、希土類磁石100におけるNiの濃度分布が、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のNiの濃度が、希土類磁石の内部側のNiの濃度よりも高いことが好ましい。つまり、希土類磁石100におけるNiの濃度は、希土類磁石100の表面側において最も高いことが好ましく、希土類磁石100の表面から内部(中心部20)へ向かう距離の増加に伴って減少することが好ましい。これにより、希土類磁石100の耐食性が向上し易くなる。希土類磁石100中のNiの含有量は、希土類磁石100全体に対して0.001〜0.1重量%程度であればよい。
Cuの濃度分布が有する勾配は、0.01〜5重量%/mmであることが好ましい。Coの濃度分布が有する勾配は、0.01〜5重量%/mmであることが好ましい。Alの濃度分布が有する勾配は、0.01〜5重量%/mmであることが好ましい。Niの濃度分布が有する勾配は、0.001〜0.1重量%/mmであることが好ましい。各元素の濃度分布が有する勾配が上記の各数値範囲内である場合、希土類磁石100の耐食性が向上し易くなる。なお、各勾配は、希土類磁石100の表面に垂直であり、且つ希土類磁石100の表面から内部(中心部20)に向かう方向におけるものである。また、各勾配の数値は、希土類磁石100の表面からの深さが20μmである位置から、磁石厚みの1/4である位置までの平均濃度勾配である。また、各濃度(重量%)の値は、希土類磁石100の単位重量を基準としたものである。
希土類磁石100は、必要に応じてさらにその表面に保護層を備えてもよい。保護層としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものであれば特に制限なく適用できる。保護層としては、たとえば、塗装や蒸着重合法により形成した樹脂層、めっきや気相法により形成した金属層、塗布法や気相法により形成した無機層、酸化層、化成処理層等が挙げられる。ただし、磁石の表面に保護層を形成した場合、保護層と磁石との間に生じる応力によって磁石特性(角形性)が低下する場合がある。しかし、本実施形態では、保護層がなくとも、高濃度層40によって磁石の耐食性が向上するので、応力に関する問題が解消する。
希土類磁石100の組成及び各元素の濃度分布の測定方法としては、特に限定されないが、電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA),レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析(Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:LA−ICP−MS)等を用いればよい。
(希土類磁石の製造方法)
[第一の製造方法]
希土類磁石の第一の製造方法では、まず原料合金を鋳造し、インゴットを得る。原料合金としては、希土類元素R,Co及びBを含むものを用いればよい。原料合金は、必要に応じてCo以外の遷移金属元素T(例えばFe),Cu,Ni,Mn,Al,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si及びBi等の元素を更に含んでもよい。インゴットの化学組成は、最終的に得たい希土類磁石の主相の化学組成に応じて調整すればよい。
インゴットを、ディスクミル等により粗粉砕して10〜100μm程度の粒径の合金粉末を得る。当該合金粉末を、ジェットミル等により微粉砕して0.5〜5μm程度の粒径の合金粉末を得る。当該合金粉末を、磁場中で加圧成形する。成形時に合金粉末に印加する磁場の強度は800kA/m以上であることが好ましい。成形時に合金粉末に加える圧力は10〜500MPa程度であることが好ましい。成形方法としては、一軸加圧法またはCIPなどの等方加圧法のいずれを用いてもよい。得られた成形体を焼成して焼結体(磁石素体)を形成する。焼成温度は1000〜1200℃程度であればよい。焼成時間は0.1〜100時間程度であればよい。焼成工程は、複数回行ってもよい。焼成工程は、真空中またはArガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
焼結体に対して時効処理を施すことが好ましい。時効処理では、焼結体を450〜950℃程度で熱処理すればよい。時効処理では、焼結体を0.1〜100時間程度熱処理すればよい。時効処理は不活性ガス雰囲気中で行えばよい。このような時効処理により希土類磁石の保磁力がさらに向上する。なお、時効処理は多段階の熱処理工程から構成されてもよい。例えば2段の熱処理からなる時効処理では、1段目の熱処理工程で焼結体を700℃以上焼成温度未満の温度で0.1〜50時間加熱すればよい。2段目の熱処理工程では、焼結体を450〜700℃で0.1〜100時間加熱すればよい。
以上の工程により得られた焼結体(磁石素体)は、R−T−B系合金からなる主相と、希土類元素Rを主成分とし、粒界に存在するRリッチ相と、を少なくとも備える。また、焼結体はCoを含有する。
必要に応じて、得られた焼結体を所定の形状に加工してもよい。加工方法としては、例えば、切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。なお、このような加工は必ずしも行う必要はない。
このようにして得られた磁石素体に対しては、表面の凹凸や表面に付着した不純物等を除去するため、適宜、洗浄を行ってもよい。洗浄方法としては、例えば、酸溶液を用いた酸洗浄(エッチング)が好ましい。酸洗浄によれば、磁石素体の表面の凹凸や不純物を溶解除去して平滑な表面を有する磁石素体が得られ易くなり、後述する熱処理工程においてCu元素の拡散が生じ易くなる。
酸洗浄で使用する酸としては、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸が好ましい。処理液中の硝酸濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。このような酸洗浄による磁石素体の表面の溶解量は、表面からの平均厚みに換算して、5μm以上であることが好ましく、10〜15μmであることがより好ましい。こうすれば、磁石素体の表面加工によって形成される変質層や酸化層をほぼ完全に除去することができ、後述する熱処理工程においてCu元素の拡散が生じ易くなる。
また、上記酸洗浄後の磁石素体を水洗して、酸洗浄に用いた処理液を磁石素体から除去した後、磁石素体の表面に残存した少量の未溶解物や残留酸成分を完全に除去するために、磁石素体に対して超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。超音波洗浄は、例えば、磁石素体の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中や、アルカリ性溶液中等で行うことができる。超音波洗浄後には、必要に応じて磁石素体を水洗してもよい。
次に、磁石素体の表面にCu単体、Cu合金、又はCu化合物を付着させる。Cuの付着方法としては、例えば、Cuからなる粒子を分散させた塗布液を、磁石素体の表面全体に均一に塗布する方法が挙げられる。磁石素体の表面に付着させるCu粒子の粒径は、50μm以下であることが好ましい。Cu粒子の粒径が大き過ぎる場合、Cuが磁石素体内へ拡散し難くなることが問題となる。塗布液は樹脂のバインダーを含有することが好ましい。樹脂バインダーを塗布液に含有させることで、磁石素体に対する粒子の付着強度が増し脱落し難くなる。なお、めっき法や気相法などの手法により、磁石素体の表面にCuを付着させてもよい。
表面にCuを付着させた磁石素体を加熱する。これにより、Cuが磁石素体の表面から粒界相等を通じて磁石素体内へ熱拡散するとともに、Cuの拡散に誘起される形で磁石素体内部の粒界相等に含まれるCoが磁石素体の表面近傍に移動して偏析する。この加熱工程によって、希土類磁石100の表面側にCuの濃度分布の勾配が生じる。そして、希土類磁石100の表面側のCuの濃度が、希土類磁石100の内部側のCuの濃度よりも高くなる。また、加熱工程によって、希土類磁石100の表面側にCoの濃度分布の勾配が生じる。そして、希土類磁石100の表面側のCoの濃度が、希土類磁石の内部側のCoの濃度よりも高くなる。このようにして高濃度層40が形成される。また、磁石素体の表面に付着したCuが拡散しなかった磁石素体の内部には、Cu及びCoの各濃度がほぼ一定であって、濃縮層40よりも低く、組成が均一な中心部20が形成される。以上の工程を経て、本実施形態の希土類磁石100が完成する。
表面にCuを付着させた磁石素体は480〜650℃で加熱する。この加熱温度が高過ぎる場合、Cuが磁石素体の表面のみならず磁石素体の全体に熱拡散したり、Cuが溶融して磁石素体の主相(R−T−B系合金)と反応して合金化したりする。その結果、希土類磁石の耐食性及び磁気特性が劣化する。加熱温度が低過ぎる場合、Cuが十分に磁石素体内に拡散せず、希土類磁石100の表面側にCu及びCoの各濃度分布の勾配が生じ難くなる。表面にCuを付着させた磁石素体の加熱時間は、10〜600分であることが好ましい。加熱時間が短すぎる場合、加熱時間が上記の数値範囲内である場合に比べて、Cuが十分に磁石素体内に拡散し難い傾向がある。加熱時間が長すぎる場合、加熱時間が上記の数値範囲内である場合に比べて、Cuが磁石素体の表面のみならず磁石素体の深部にまで熱拡散する傾向がある。ただし、加熱時間が上記の数値範囲外であっても本実施形態の希土類磁石を得ることは可能である。
上記の熱処理において昇温させた磁石素体を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、希土類磁石100の表面側にCu及びCoの各濃度分布の勾配が生じ易くなる。
磁石素体表面からのCuの拡散距離、並びにCu及びCoの各濃度勾配は、原料合金中のCu及びCoの各含有率、磁石素体の表面に付着させるCuの量、表面にCuを付着させた磁石素体の加熱温度又は加熱時間等によって適宜制御できる。磁石素体表面からのCuの拡散距離は、濃縮層40の厚みDとほぼ一致する。
希土類磁石に対して、上述した磁石素体の場合と同様の時効処理を施すことが好ましい。時効処理により希土類磁石の保磁力がさらに向上する。時効処理温度は、Cuの熱拡散に要する加熱温度以下であることが好ましい。時効処理において昇温させた希土類磁石を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、希土類磁石の磁気特性が向上し易くなる。
表面にCuを付着させた磁石素体を加熱した後、希土類磁石の表面に残存するCu等を研磨やエッチングにより除去してもよい。希土類磁石の表面に保護層を形成してもよい。保護層としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものであれば特に制限なく適用できる。保護層としては、たとえば、塗装や蒸着重合法により形成した樹脂層、めっきや気相法により形成した金属層、塗布法や気相法により形成した無機層、酸化層、化成処理層等が挙げられる。
[第二の製造方法]
希土類磁石の第二の製造方法では、まず原料合金を鋳造し、インゴットを得る。原料合金としては、希土類元素R,B,Cu及びCoを含むものを用いればよい。原料合金は、必要に応じてCo以外の遷移金属元素T(例えばFe),Al,Ni,Mn,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si及びBi等の元素を更に含んでもよい。インゴットの化学組成は、最終的に得たい希土類磁石の主相の化学組成に応じて調整すればよい。
インゴットを、第一の製造方法と同様に粗粉砕して、合金粉末を得る。当該合金粉末を、第一の製造方法と同様に微粉砕して合金粉末を得る。当該合金粉末を、第一の製造方法と同様に磁場中で加圧成形する。得られた成形体を第一の製造方法と同様に焼成して焼結体(磁石素体)を形成する。
焼結体に対して第一の製造方法と同様に時効処理を施すことが好ましい。
以上の工程により得られた焼結体(磁石素体)は、R−T−B系合金からなる主相と、希土類元素Rを主成分とし、粒界相に存在するRリッチ相と、を少なくとも備える。また、焼結体はCu及びCoを含有する。
なお、磁石素体に対して、第一の製造方法と同様に、必要に応じて加工、洗浄を施しても良い。
磁石素体の表面にAl単体、Al合金又はAl化合物を付着させる。Alの付着方法としては、例えば、Alからなる粒子(偏平粉など)を分散させた塗布液を、磁石素体の表面全体に均一に塗布する方法が挙げられる。磁石素体の表面に付着させるAl粒子の粒径は、50μm以下であることが好ましい。Al粒子の粒径が大き過ぎる場合、Alが磁石素体内へ拡散し難くなることが問題となる。第一の製造方法と同様の理由から、塗布液は樹脂のバインダーを含有することが好ましい。なお、めっき法や気相法などの手法により、磁石素体の表面にAlを付着させてもよい。
表面にAlを付着させた磁石素体を加熱する。これにより、Alが粒界相等を通じて磁石素体の表面から磁石素体内へ熱拡散するとともに、Alの拡散に誘起される形で磁石素体内部の粒界相等に含まれるCu及びCoが磁石素体の表面近傍に移動して偏析する。この加熱工程によって、希土類磁石100の表面側にAlの濃度分布の勾配が生じる。そして、希土類磁石100の表面側のAlの濃度が、希土類磁石100の内部側のAlの濃度よりも高くなる。また、希土類磁石100の表面側にCuの濃度分布の勾配が生じる。そして、希土類磁石100の表面側のCuの濃度が、希土類磁石100の内部側のCuの濃度よりも高くなる。また、加熱工程によって、希土類磁石100の表面側にCoの濃度分布の勾配が生じる。そして、希土類磁石100の表面側のCoの濃度が、希土類磁石の内部側のCoの濃度よりも高くなる。このようにして高濃度層40が形成される。磁石素体の表面に付着したAlが拡散しなかった磁石素体の内部には、Al、Cu及びCoの各濃度がほぼ一定であって、濃縮層40よりも低く、組成が均一な中心部20が形成される。以上の工程を経て、本実施形態の希土類磁石100が完成する。
表面にAlを付着させた磁石素体は540〜630℃で加熱する。この加熱温度が高過ぎる場合、Alの融点は約660℃であるため、Alが溶融して磁石素体の主相(R−T−B系合金)と反応して合金化したり、Alが磁石素体の表面のみならず磁石素体の全体に熱拡散したりすることがある。その結果、希土類磁石の耐食性及び磁気特性が劣化する。加熱温度が低過ぎる場合、Alが十分に磁石素体内に拡散せず、希土類磁石100の表面側にAl、Cu及びCoの各濃度分布の勾配が生じ難くなる。表面にAlを付着させた磁石素体の加熱時間は、10〜600分であることが好ましい。加熱時間が短すぎる場合、加熱時間が上記の数値範囲内である場合に比べて、Alが十分に磁石素体内に拡散し難い傾向がある。加熱時間が長すぎる場合、加熱時間が上記の数値範囲内である場合に比べて、Alが磁石素体の表面のみならず磁石素体の深部に熱拡散する傾向がある。ただし、加熱時間が上記の数値範囲外であっても本実施形態の希土類磁石を得ることは可能である。
上記の熱処理において昇温させた磁石素体を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、希土類磁石100の表面側にAl、Cu及びCoの各濃度分布の勾配が生じ易くなる。
磁石素体表面からのAlの拡散距離、並びにAl、Cu及びCoの各濃度勾配は、原料合金中のCu、Co及びAlの各含有率、磁石素体の表面に付着させるAlの量、表面にAlを付着させた磁石素体の加熱温度又は加熱時間等によって適宜制御できる。磁石素体表面からのAlの拡散距離は、濃縮層40の厚みDとほぼ一致する。
希土類磁石に対して、上述した焼結体の場合と同様の時効処理を施すことが好ましい。時効処理により希土類磁石の保磁力がさらに向上する。時効処理温度は、Alの熱拡散に要する加熱温度以下であることが好ましい。時効処理において昇温させた希土類磁石を、30℃/分以上の冷却速度で急冷することが好ましい。これにより、希土類磁石の磁気特性が向上し易くなる。
表面にAlを付着させた磁石素体を熱処理した後、希土類磁石の表面に残存するAl等を研磨やエッチングにより除去してもよい。第一の製造方法の場合と同様に、希土類磁石の表面に保護層を形成してもよい。
(回転機)
図3は、本実施形態の回転機(永久磁石回転機)の内部構造を示す説明図である。本実施形態の回転機200は、永久磁石同期回転機(SPM回転機)であり、円筒状のロータ50と該ロータ50の内側に配置されるステータ30とを備えている。ロータ50は、円筒状のコア52と円筒状のコア52の内周面に沿ってN極とS極が交互になるように複数の希土類磁石100が設けられている。ステータ30は、内周面に沿って設けられた複数のコイル32を有している。このコイル32と希土類磁石100とは互いに対向するように配置されている。
回転機200は、ロータ50に、上記実施形態に係る希土類磁石100を備える。希土類磁石100は耐食性に優れるため、経時的な磁気特性の低下を十分に抑制することができる。したがって、回転機200は優れた性能を長時間にわたって維持することができる。回転機200は、希土類磁石100以外の部分について、通常の回転機部品を用いて通常の方法によって製造することができる。
回転機200は、コイル32に通電することによって生成する電磁石による界磁と永久磁石100による界磁との相互作用により、電気エネルギーを機械的エネルギーに変換する電動機(モータ)であってもよい。また、回転機200は、永久磁石100による界磁とコイル32との電磁誘導相互作用により、機械的エネルギーから電気的エネルギーに変換する発電機(ジェネレータ)であってもよい。
電動機(モータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石直流モータ、リニア同期モータ、永久磁石同期モータ(SPMモータ、IPMモータ)、往復動モータなどが挙げられる。往復動モータとして機能するモータとしては、例えば、ボイスコイルモータ、振動モータなどが挙げられる。発電機(ジェネレータ)として機能する回転機200としては、例えば、永久磁石同期発電機、永久磁石整流子発電機、永久磁石交流発電機などが挙げられる。以上に記載した回転機は、自動車、産業機械、家庭用電化製品等に用いられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
粉末冶金法により、組成が22.5重量%Nd−5.2重量%Pr−2.7重量%Dy−0.5重量%Co−0.3重量%Al−0.07重量%Cu−1.0重量%B−残部Feである鋳塊を作製した。鋳塊を粗粉砕して得た粗粉末を不活性ガス中でジェットミルにより粉砕して、平均粒径が約3.5μmの微粉末を得た。微粉末を金型内に充填し、磁場中で加圧成形して成形体を得た。成形体を真空中で焼成した後、時効処理を施して焼結体を得た。焼結体を切り出し加工し、13mm×8mm×2mmの寸法を有する磁石素体を作製した。
磁石素体の表面に対して脱脂処理を施し、次に、磁石素体を2%HNO水溶液中に2分間浸漬し、その後、磁石素体に超音波水洗を施すことで、エッチングを行った。平均粒径1μmのCu粒子を分散させた塗布液を調製した。エッチング後の磁石素体の表面に塗布液をディップコーティングにより塗布し、磁石素体の表面全体に塗膜を形成した。この塗膜を120℃で20分乾燥させた。なお、磁石素体表面に形成した塗膜中に含まれるCuの総量を、磁石素体全体に対して1重量%に調整した。
塗膜を有する磁石素体をAr雰囲気において570℃で60分加熱した後、50℃/分で急冷し、塗膜中のCuを磁石素体内へ拡散させた。加熱後の磁石素体をAr雰囲気において500℃で1時間時効処理した後、50℃/分で急冷した。時効処理後の磁石素体の表面に残存した反応物を研磨で除去し、磁石素体の表面にエッチングを施すことで、実施例1の希土類磁石を得た。
(実施例2〜7)
実施例2〜7では、塗膜を有する磁石素体を、Ar雰囲気において、表1に示す温度(拡散温度)で加熱した。また実施例2〜7では、塗膜を有する磁石素体を加熱した時間(拡散時間)を、表1に示す時間に調整した。なお、表1における「拡散源」とは、
磁石素体表面に形成した塗膜中に含まれる金属を意味する。
実施例4では、塗膜を有する磁石素体を加熱した後、時効処理を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様の方法で実施例2〜7の各希土類磁石を作製した。
(実施例8)
実施例8では、実施例1と同様の方法で作製した磁石素体の表面に対して脱脂処理及びエッチングを施した。そして、実施例8では、Cu粒子ではなく、平均粒径3μmのAl粒子を分散させた塗布液を調製した。この塗布液を、エッチング後の磁石素体の表面にディップコーティングにより塗布し、磁石素体の表面全体に塗膜を形成した。なお、磁石素体表面に形成した塗膜中に含まれるAlの総量を、磁石素体全体に対して0.3重量%に調整した。
Al粒子を含有する塗膜を有する磁石素体をAr雰囲気において600℃で60分加熱した後、50℃/分で急冷し、塗膜中のAlを磁石素体内へ拡散させた。加熱後の磁石素体をAr雰囲気において540℃で1時間時効処理した後、50℃/分で急冷した。時効処理後の磁石素体の表面に残存した反応物を研磨で除去し、磁石素体の表面にエッチングを施すことで、実施例8の希土類磁石を得た。
(実施例9〜13)
実施例9〜13では、Al粒子を含有する塗膜を有する磁石素体を、Ar雰囲気において、表1に示す温度(拡散温度)で加熱した。また実施例9〜13では、塗膜を有する磁石素体を加熱した時間(拡散時間)を、表1に示す時間に調整した。
実施例10では、塗膜を有する磁石素体を加熱した後、時効処理を行わなかった。
実施例12,13では、磁石素体表面に形成した塗膜中に含まれるAlの総量を、磁石素体全体に対して、表1に示す値(塗布量)に調整した。
以上の事項以外は実施例1と同様の方法で実施例9〜13の各希土類磁石を作製した。
(比較例1)
磁石素体の表面のエッチング以降の工程を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で比較例1の希土類磁石を作製した。つまり、Cu粒子及びAl粒子のいずれも用いることなく比較例1の希土類磁石を作製した。
(比較例2,3)
比較例2,3では、Cu粒子を含有する塗膜を有する磁石素体を、Ar雰囲気において、表1に示す温度(拡散温度)で加熱した。また比較例2では、塗膜を有する磁石素体を加熱した後、時効処理を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様の方法で比較例2,3の各希土類磁石を作製した。
(比較例4,5)
比較例4,5では、Al粒子を含有する塗膜を有する磁石素体を、Ar雰囲気において、表1に示す温度(拡散温度)で加熱した。また比較例4では、塗膜を有する磁石素体を加熱した後、時効処理を行わなかった。
以上の事項以外は実施例8と同様の方法で比較例4,5の各希土類磁石を作製した。
Figure 2012074470
[組成分析]
LA−ICP−MSにより、各実施例及び比較例の希土類磁石におけるCu,Co,Al,Ni及びFeの各濃度分布を測定した。LA−ICP−MSでは、あらかじめ各元素の感度係数を算出して、検出された各元素のカウントを感度係数で補正した後に、規格化計算によって各元素の濃度(単位:重量%)を求めた。なお、各元素の濃度の値は、各希土類磁石の単位重量を基準としたものである。LA−ICP−MSでは、各希土類磁石の破断面の厚み方向に沿って、50μm間隔で20本のラインスキャンを行い、その平均値をとることで、磁石表面からの深さ方向における各元素の濃度分布とした。なお、希土類磁石の破断面の厚み方向とは、希土類磁石の表面に垂直であり、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向である。LA−ICP−MSに用いた装置、及びLA−ICP−MSの測定条件の詳細は下記の通りとした。
<装置>
レーザーアブレーション装置:New Wave Research社製 LUV266X。
ICP−MS分析装置:アジレントテクノロジー社製 Agilent7500s。
なお、装置間はタイゴンチューブで接続し、キャリアガスとしてArガスを使用した。
<レーザー条件>
レーザー径:50μm。
周波数:10Hz。
パワー:0.1mJ。
レーザー走査方法:ラインスキャン法。
走査速度:25μm/sec。
<測定条件>
測定質量数:m/z=2〜260の中の72種の質量数。mは質量数、zは電荷である。
上記72種の測定質量数中には、磁石の主要構成元素(質量数)であるB(11),Al(27),Fe(57),Co(59),Cu(63),Pr(141),Nd(146)及びDy(163)の各質量数が含まれる。
各質量数積算時間:上記主要構成元素の場合は0.01secとし、主要構成元素以外の元素の場合は0.005secとした。定量に用いる質量数のみを積算した。
全実施例及び全比較例の希土類磁石は、磁石素体の作製に用いた鋳塊と同様の元素を含有することが確認された。なお、各希土類磁石はNiを含有することが確認されたが、このNiは鋳塊に不純物として含有されていたものである。
実施例1の希土類磁石における各元素の濃度分布を図4(a),図4(b),図4(c),図5(a),図5(b)に示す。実施例8の希土類磁石における各元素の濃度分布を図6(a),図6(b),図6(c),図7(a),図7(b)に示す。なお、各図において縦軸の単位である「wt%」とは重量%を意味する。横軸の単位である「深さ」とは、希土類磁石の表面からの距離を意味する。
実施例1の希土類磁石におけるCuの濃度分布は、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCuの濃度が、希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高いことが確認された。実施例1の希土類磁石におけるCo及びNiの各濃度分布も、Cuの場合と同様に、勾配を有することが確認された。実施例1の希土類磁石におけるAl及びFeの各濃度分布は、ほぼ均一であり、勾配を有さないことが確認された。
実施例2〜7の各希土類磁石におけるCuの濃度分布は、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCuの濃度が、希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高いことが確認された実施例2〜7の各希土類磁石におけるCo及びNiの各濃度分布も、Cuの場合と同様に、勾配を有することが確認された。実施例2〜7の各希土類磁石におけるAl及びFeの各濃度分布は、ほぼ均一であり、勾配を有さないことが確認された。
LA−ICP−MSによる分析の結果、実施例1〜7の希土類磁石の各面に垂直ないずれの方向においても、Cu,Co及びNiの各濃度分布が、各面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、各面側のCu,Co及びNiの各濃度が、希土類磁石の内部側よりも高いことが確認された。また、実施例1〜7の希土類磁石の中心部においては、その組成がほぼ均一であり、各元素の濃度分布が勾配を有さないことが確認された。
実施例8の希土類磁石におけるCuの濃度分布は、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCuの濃度が、希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高いことが確認された。実施例8の希土類磁石におけるCo、Al及びNiの各濃度分布も、Cuの場合と同様に、勾配を有することが確認された。実施例8の希土類磁石におけるFeの濃度分布は、ほぼ均一であり、勾配を有さないことが確認された。
実施例9〜13の各希土類磁石におけるCuの濃度分布は、希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、希土類磁石の表面側のCuの濃度が、希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高いことが確認された。実施例9〜13の各希土類磁石におけるCo、Al及びNiの各濃度分布も、Cuの場合と同様に、勾配を有することが確認された。実施例9〜13の各希土類磁石におけるFeの濃度分布は、ほぼ均一であり、勾配を有さないことが確認された。
LA−ICP−MSによる分析の結果、実施例8〜13の希土類磁石の各面に垂直ないずれの方向においても、Cu,Co,Al及びNiの各濃度分布が、各面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、各面側のCu,Co,Al及びNiの各濃度が、希土類磁石の内部側よりも高いことが確認された。また、実施例8〜13の希土類磁石の中心部においては、その組成がほぼ均一であり、各元素の濃度分布が勾配を有さないことが確認された。
LA−ICP−MSによる分析の結果、比較例1〜5の希土類磁石のいずれにおいても、Coの濃度分布が勾配を有さないことが確認された。つまり、比較例1〜5の希土類磁石中のCoの濃度は均一であることが確認された。
各実施例の希土類磁石に含まれる各元素の濃度分布が有する勾配を求めた。結果を表2に示す。表2に示す各勾配の値は、希土類磁石の表面からの深さが20μmである位置から、磁石厚みの1/4である位置までの平均濃度勾配である。
実施例1〜7の希土類磁石の高濃度層40の厚みを求めた。実施例1〜7では、希土類磁石の中心部の任意の10点においてCoの濃度を測定して、10点の測定値からCoの濃度の平均値、および標準偏差σを算出した。そして、Coの濃度が(平均値+3σ)以上である点が連続している領域の厚み(磁石表面に垂直な方向における幅)を高濃度層40の厚みとして算出した。実施例1〜7の高濃度層40とは、Cu及びCoの各濃度分布が勾配を有する領域とほぼ一致する。各実施例の高濃度層40の厚みを表2に示す。
実施例8〜13の希土類磁石の高濃度層40の厚みを求めた。実施例8〜13では、希土類磁石の中心部の任意の10点においてCoの濃度を測定して10点の測定値からCoの濃度の平均値、および標準偏差σを算出した。そして、Coの濃度が(平均値+3σ)以上である点が連続している領域の厚み(磁石表面に垂直な方向における幅)を高濃度層40の厚みとして算出した。実施例8〜13の高濃度層40とは、Cu,Co及びAlの各濃度分布が勾配を有する領域とほぼ一致する。各実施例の高濃度層40の厚みを表2に示す。
Figure 2012074470
[耐食性の評価]
各実施例及び比較例の希土類磁石の耐食性をプレッシャークッカーテスト(Pressure Cooker Test:PCT)により評価した。PCTでは、2気圧、温度120℃、湿度100%RHである環境下に各希土類磁石を設置してから300時間後の各希土類磁石の重量の減少量を測定した。各希土類磁石の単位表面積あたりの重量減少量(単位:mg/cm)を表3に示す。
Figure 2012074470
各実施例の希土類磁石の重量減少量は、各比較例よりも小さいことが確認された。すなわち、各実施例の希土類磁石は、各比較例に比べて、耐食性に優れていることが確認された。
20・・・中心部、30・・・ステータ、32・・・コイル、40・・・高濃度層、50・・・ロータ、52・・・コア、100・・・希土類磁石、200・・・回転機、D・・・高濃度層の厚み。

Claims (5)

  1. 希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の希土類磁石であって、
    Cu及びCoを更に含有し、
    前記希土類磁石におけるCuの濃度分布が、前記希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、
    前記希土類磁石の表面側のCuの濃度が、前記希土類磁石の内部側のCuの濃度よりも高く、
    前記希土類磁石におけるCoの濃度分布が、前記希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、
    前記希土類磁石の表面側のCoの濃度が、前記希土類磁石の内部側のCoの濃度よりも高い、
    希土類磁石。
  2. Alを更に含有し、
    前記希土類磁石におけるAlの濃度分布が、前記希土類磁石の表面から内部へ向かう方向に沿った勾配を有し、
    前記希土類磁石の表面側のAlの濃度が、前記希土類磁石の内部側のAlの濃度よりも高い、
    請求項1に記載の希土類磁石。
  3. 請求項1又は2に記載の希土類磁石を備える回転機。
  4. 希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の磁石素体の表面に、Cu元素を付着させる工程と、
    Cu元素を付着させた前記磁石素体を480〜650℃で加熱する工程と、
    を備え、
    前記磁石素体がCoを更に含有する、
    希土類磁石の製造方法。
  5. 希土類元素R、遷移金属元素T及びホウ素Bを含有するR−T−B系の磁石素体の表面に、Al元素を付着させる工程と、
    Al元素を付着させた前記磁石素体を540〜630℃で加熱する工程と、
    を備え、
    前記磁石素体がCu及びCoを更に含有する、
    希土類磁石の製造方法。
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