JP7316040B2 - RFeB系焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

RFeB系焼結磁石及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、R(希土類元素)、Fe(鉄)及びB(硼素)を含有するRFeB系焼結磁石及びその製造方法に関する。
RFeB系焼結磁石は、1982年に佐川眞人らによって見出されたものであり、残留磁束密度等の多くの磁気特性がそれまでの永久磁石よりもはるかに高いという特長を有する。そのため、RFeB系焼結磁石は、ハイブリッド自動車・電気自動車の走行用モータや、その他の様々な製品に使用されている。
RFeB系焼結磁石は、酸素ガスや酸性の液体等に接触すると、それらと反応して腐食し、崩壊する。そのような崩壊を防止するために、従来より、RFeB系焼結磁石の表面に樹脂製や金属製の被膜を設けることが行われている。樹脂製の被膜にはエポキシ樹脂製のものが、金属製の被膜にはNi(ニッケル)メッキによるものが、主に使用されている。
特開平11-087119号公報
RFeB系焼結磁石を崩壊させる原因となるものの1つに、水素ガスがある。例えば、半導体製造装置では、半導体の基板をエッチングするために水素が用いられることがある。この場合、密閉容器内に設けられた基板台に半導体の基板を配置したうえで該密閉容器内に水素ガスを導入し、エッチングを行った後、該基板を密閉容器の外に取り出す。ここで、密閉容器の外から基板台に基板を搬入し、基板台から密閉容器の外に基板を搬出するための基板搬送装置にはモータが用いられ、このモータにRFeB系焼結磁石が使用されることがある。このような半導体製造装置では、水素ガスを密閉容器内から排出してから基板の搬出入を行うものの、その際にわずかに密閉容器内に残留した水素ガスが密閉容器内から漏出することがある。このような水素ガスは、基板搬送装置のモータのRFeB系焼結磁石に接触することがある。
RFeB焼結磁石では、希土類元素がほぼ単体の状態で存在する希土類リッチ相が粒界に形成されていることが知られている。この希土類リッチ相に水素ガスの分子が到達すると、希土類リッチ相が水素分子を吸蔵して脆化し、RFeB系焼結磁石が崩壊する。水素ガスの分子はエポキシ樹脂被膜を透過するため、このように水素ガスに接触し得る使用環境ではエポキシ樹脂製の被膜は十分な保護膜とはならず、そのような被膜が設けられたRFeB系焼結磁石は崩壊してしまう。また、Niメッキ被膜は被膜作製時に微小な(径が数十μmの)孔(ピンホール)が形成されることが避けられず、Niメッキ被膜が設けられたRFeB系焼結磁石も、このピンホールを通して水素ガスの分子が被膜を透過し、崩壊してしまう。
特許文献1には、Pd(パラジウム)メッキによる被膜を備えるRFeB系焼結磁石が記載されている。この文献によれば、Pdメッキによる被膜を備えるRFeB系焼結磁石は100ppm、120℃の水素ガス雰囲気に1000時間晒しても崩壊が見られず、実用上十分な耐水素性を有する。しかし、PdメッキはNiメッキよりも高価であるため、RFeB系焼結磁石の製造コストが上昇してしまう。
本発明が解決しようとする課題は、低いコストで製造することができ、且つ従来よりも高い耐水素性を有するRFeB系焼結磁石及びその製造方法を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るRFeB系焼結磁石は、
希土類元素であるRと、FeとBとを含有するRFeB系焼結体と、
前記RFeB系焼結体の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するように、該RFeB系焼結体の粒界に存在するCu(銅)と、
前記RFeB系焼結体の表面を覆うNiメッキによる保護層と
を備えることを特徴とする。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法は、
希土類元素であるRと、FeとBとを含有するRFeB系焼結体の表面に、Cuを含む付着物を付着させたうえで加熱することにより、該Cuを該RFeB系焼結体の粒界に拡散させる粒界拡散処理工程と、
前記粒界拡散処理工程を行った後の前記RFeB系焼結体の表面にNiメッキを施すNiメッキ工程と
を有することを特徴とする。
前述のように、従来のRFeB系焼結磁石では、希土類元素がほぼ単体の状態で存在する希土類リッチ相が粒界に形成されている。それに対して本発明に係るRFeB系焼結磁石では、RFeB系焼結体の粒界にCuが存在する。このように粒界に存在するCuは、希土類元素と合金(R-Cu合金)を形成している。R-Cu合金は希土類リッチ相よりも水素による脆化が生じ難い。
本発明に係るRFeB系焼結磁石によれば、その表面にNiメッキによる保護層を有することにより、水素ガスに晒されたときに、該保護層に形成されることが避けられないピンホールのところを除いて、水素分子がRFeB系焼結体に到達することが防止される。さらに、水素分子がピンホールを通過してRFeB系焼結体に到達しても、希土類リッチ相よりも水素による脆化が生じ難いR-Cu合金が粒界に存在するため、RFeB系焼結体の崩壊が生じることが抑えられる。これにより、本発明に係るRFeB系焼結磁石は、従来よりも高い耐水素性を有する。
また、保護層には、高価なPdメッキを用いることなく、従来と同様の比較的安価なNiメッキを用いることができるうえに、RFeB系焼結体の粒界に拡散させるCuも比較的安価であるため、低いコストで製造することができる。
仮に、RFeB系磁石の原料の粉末にCuを混合したうえで該粉末を焼結することによってRFeB系焼結体を作製すると、該RFeB系焼結体の粒界には、Cuと希土類元素から成る合金が形成されると共に、Rリッチ相も形成される。このようなRFeB系焼結体の表面にNiメッキを施すことで作製されたRFeB系焼結磁石は、水素分子がNiメッキのピンホールを通過してRFeB系焼結体に到達したときに、粒界中のRリッチ相が脆化し、崩壊が生じてしまう。そこで、本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法では、RFeB系焼結体の表面にCuを含む付着物を付着させたうえで加熱することにより、該Cuを該RFeB系焼結体の粒界に拡散させるという、粒界拡散処理を行う。これにより、RFeB系焼結体の粒界に存在する希土類リッチ相を優先的にCuと合金化させることができる。すなわち上記R-Cu合金を形成することができる。このように粒界拡散処理によってCuをRFeB系焼結体の粒界に拡散させるため、本発明に係るRFeB焼結磁石は、CuがRFeB系焼結体の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有する。従って、水素分子の影響を受けやすいRFeB系焼結体の表面に近いほどCuの濃度が高くなってR-Cu合金が形成され易くなるため、水素ガスによるRFeB系焼結体の崩壊を効果的に抑えることができる。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法において、前記付着物は(Cuと共に)Al(アルミニウム)を含有していることが好ましい。これにより、Alが粒界に拡散することで該粒界に存在する希土類リッチ相の融点が低下し、粒界が融解するため、Cuが粒界に拡散し易くなる。このようにAlが粒界に拡散した本発明に係るRFeB系焼結磁石は、RFeB系焼結体の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するようにAlが粒界に存在するという特徴を有する。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法において、前記付着物は(Cuと共に、又はCu及びAlと共に)Dy(ジスプロシウム)及び/又はTb(テルビウム)を含有していることが好ましい。これにより、RFeB系の結晶粒の内部にDy及び/又はTbが深く浸透することなく、該結晶粒の表面付近にのみDy及び/又はTbが供給される。RFeB系焼結磁石にDy及び/又はTbを添加すると、保磁力は向上するのに対して残留磁束密度は低下することが知られているが、Dy及び/又はTbがRFeB系の結晶粒の表面付近にのみ供給されると、残留磁束密度の低下は抑えられつつ保磁力が向上する。このようにDy及び/又はTbが拡散した本発明に係るRFeB系焼結磁石は、RFeB系焼結体の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するようにDy及び/又はTbが粒界に存在するという特徴を有する。
本発明により、低いコストで製造することができ、且つ従来よりも高い耐水素性を有するRFeB系焼結磁石及びその製造方法が得られる。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法の一実施形態を示す概略図。 本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施形態を示す部分模式図。 本発明に係るRFeB系焼結磁石の実施例の試料を作製する際に用いた、粒界拡散処理工程の後であってNiメッキ工程の前の段階の基材につき、1つの面からの深さ方向の位置毎にCu及びTbの含有率を測定した結果を示すグラフ。 本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施例につき、(a)表面に垂直な断面におけるSEM写真、並びに同断面において(b)Nd原子、(c)Ni原子及び(d)Cu原子の含有率(濃度)の分布を測定した結果を示す図。
以下、図1~図4を用いて、本発明に係るRFeB系焼結磁石及びその製造方法を説明する。
(1) 本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法の一実施形態
図1を用いて、本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法の一実施形態を説明する。
(1-1) RFeB系焼結体作製工程
初めに、RFeB系焼結体11を作製する方法の一例を説明する。なお、RFeB系焼結体11の作製方法は以下に述べるものには限定されず、RFeB系焼結磁石を製造する際に用いられる通常の方法を用いることができる。
まず、R(希土類元素)、Fe及びBを含有する(その他の元素を含んでいてもよい)RFeB系合金材111を作製する。RFeB系合金材111は、例えばストリップキャスト法等、周知の方法より作製することができる。
次に、RFeB系合金材111を粉砕することにより、RFeB系磁石粉末112を作製する。RFeB系磁石粉末112は、例えば、まずRFeB系合金材111に水素を吸蔵させることで該RFeB系合金材111を脆化させ(図1(a))たうえで機械的に粉砕することにより粗粉1121(図1(b))を作製し、その後、ジェットミル等を用いて微粉砕することによって得る(図1(c))ことができる。RFeB系磁石粉末112は、粒径の中央値D50が数μm、好ましくは3μm以下の粒度分布となるようにする。
次に、製造しようとするRFeB系焼結体11に対応した形状を有するモールド113にRFeB系磁石粉末112を収容し、モールド113に蓋を取り付けたうえで、モールド113内のRFeB系磁石粉末112に磁界を印加することにより、RFeB系磁石粉末112の粒子を配向させる(図1(d))。続いて、RFeB系磁石粉末112をモールド113から取り出すことなく、所定の焼結温度(900~1050℃の範囲内の温度が好ましい)に加熱することにより、RFeB系磁石粉末112を焼結させる(図1(e))。これにより、RFeB系焼結体11が得られる(図1(f))。なお、モールド113には、焼結温度において耐熱性を有する材料から成るものを用いる。
ここまでに述べたRFeB系焼結体11を作製する際の各工程は、RFeB系合金材111及びRFeB系磁石粉末112が酸化することを防止するために、真空中又は不活性ガス中等の無酸素雰囲気中で行う。
ここまでに述べたRFeB系焼結体11の作製方法では、RFeB系磁石粉末112を圧縮成形することなく焼結するPLP(プレスレスプロセス、Press-less process)法を用いているが、その代わりに、RFeB系磁石粉末112の粒子を配向させながら、又は配向させた後に、RFeB系磁石粉末112に圧力を印加することにより圧縮成形をしたうえで焼結を行ってもよい。
(1-2) 粒界拡散処理工程
次に、得られたRFeB系焼結体11に対して、以下のように粒界拡散処理を行う。
まず、粒界拡散処理に用いる付着物12を用意する。付着物12は、後述のように粒界拡散処理においてRFeB系焼結体11に付着させるものであり、少なくともCuを含有している。付着物12は、Cuの他に、CuをRFeB系焼結体11の粒界に拡散させやすくするための元素であるAlや、RFeB系焼結磁石の保磁力を向上させるための元素であるDy及び/又はTbを含有していてもよい。DyとTbのうち、DyはTbよりも価格が低いという点で好ましく、Tbは保磁力向上効果をより高くするという点で好ましい。付着物12に含有させるものとして、これらCu、Al、並びにDy及び/又はTbの合金を用いてもよい。なお、本発明では、付着物12は少なくともCuを含有していればよく、Al、Dy及びTbは必須ではない。付着物12はさらに、それをRFeB系焼結体11に付着させやすくするために粘着性を有するものを含有している。そのような粘着性を有するものとして、シリコーングリースやシリコーンオイル、あるいはそれらを混合したものから成るシリコーン系の有機溶剤を好適に用いることができる。付着物12は、Cuを含有する金属や合金等を粉砕することで粉末にしたうえで、該粉末を、粘着性を有するものと混合することにより作製される。
次に、RFeB系焼結体11の表面に付着物12を付着させ(図1(g))、真空中又は不活性ガス中等の無酸素雰囲気中において、所定の粒界拡散処理温度(700~1000℃の範囲内の温度が好ましい)に加熱する(図1(h))。これにより、付着物12中のCuは、RFeB系焼結体11の表面から粒界内に拡散する。付着物12がAl、Dy及び/又はTbを含有している場合には、それらもRFeB系焼結体11の表面から粒界内に拡散する。ここでAlは、それがRFeB系焼結体11の粒界内に拡散することにより、該粒界内に存在する希土類リッチ相(RFeB系焼結体11中の主相粒子よりも希土類元素の含有率が高いもの)の融点を低下させることで該希土類リッチ相を融解させ、それによりCuが粒界内に拡散し易くなる、という作用を奏する。その後、粒界拡散処理後のRFeB系焼結体13の表面を研磨し、該表面に残存する付着物12を除去する(図1(i))。
(1-3) Niメッキ工程
次に、粒界拡散処理後の表面にNiメッキを施すことにより、該表面に保護層14を形成する(図1(j))。Niメッキは、電解メッキ法や無電解メッキ法等、従来よりRFeB系焼結磁石の表面に保護層を形成する際に用いられているものと同様の方法により行うことができる。
以上の各工程により、本実施形態のRFeB系焼結磁石10が得られる。
(2) 本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施形態
図2を用いて、本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施形態を説明する。
本実施形態のRFeB系焼結磁石10は、図2に模式的に示すように、RFeB系の粒子である主相粒子15が焼結したものであって、主相粒子15同士の間に粒界16が存在する。
粒界16には、主相粒子15が含有するものと同じ希土類元素(例えばNd(ネオジム))が存在すると共に、Cuが存在する。Cuは、上述のように粒界拡散処理によって粒界16内に導入されていることから、RFeB系焼結磁石10の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有している。こうして粒界16内に存在するCuは、Cuが拡散する前のRFeB系焼結体11の粒界に存在していた希土類リッチ相の希土類元素と合金(R-Cu合金)を形成している。
また、本実施形態のRFeB系焼結磁石10はさらに、粒界16にAl、Dy及び/又はTbが、RFeB系焼結磁石10の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するように存在する。なお、これらAl、Dy及び/又はTbが粒界16に存在することは、本発明の必須要件ではない。
Alは、前述のように、Cuを粒界内に拡散させ易くするために添加された元素である。
Dy及び/又はTbは、それらが粒界16内に拡散しているのに伴い、主相粒子15のうち該主相粒子15の表面付近にも拡散している。但し、主相粒子15内では、Dy及び/又はTbは表面付近にしか拡散せず、主相粒子15内の奥深くまでは拡散していない。RFeB系焼結磁石の保磁力は一般に、主に主相粒子の表面付近で磁化が反転することが原因となって低下する。本実施形態のRFeB系焼結磁石10は、主相粒子15の表面付近にDy及び/又はTbが拡散していることにより、保磁力が向上する。一方、Dy及び/又はTbが主相粒子15内の奥深くまでは拡散していないため、残留磁束密度が低下することが抑えられる。
このようにCu等が粒界16内に拡散したRFeB系焼結体13の表面は、Niメッキによる保護層14で覆われている。保護層14は、その作製時に不可避的に形成されるピンホール17を有している。ピンホール17の径は通常数十μmである。径が30μm以上のピンホール17は、形成される頻度が小さく、たとえ形成されていても、品質検査において検出することが可能であるため、そのようなピンホール17が形成されているRFeB系焼結磁石10は出荷段階で排除することができる。しかし、径が30μmを下回るピンホール17は品質検査において検出することが困難であるため、そのようなピンホール17が形成されているRFeB系焼結磁石10が出荷されることは避け難い。
しかし、ピンホール17の径が30μmを下回ると、酸素ガスや酸性の液体又は気体といったRFeB系焼結磁石を崩壊させる要因となるもののうちのほとんどが通過しないため、それらのものによってRFeB系焼結磁石10が崩壊することはない。一方、RFeB系焼結磁石を崩壊させる要因の1つである水素ガスは、その分子が小さいため径が30μmを下回るピンホール17を通過してRFeB系焼結体13に到達し得る。しかしながら、RFeB系焼結磁石10は、RFeB系焼結体13の粒界16内にCuが存在して希土類元素とR-Cu合金を形成しているため、希土類リッチ相が従来のRFeB系焼結磁石よりも少ない。そのため、たとえ水素ガスがRFeB系焼結体13に到達しても、粒界16が脆化し難い。そのため、本実施形態のRFeB系焼結磁石10は、従来のRFeB系焼結磁石よりも、水素ガスによる崩壊が生じることを抑えることができる。
(3) 本実施形態のRFeB系焼結磁石を作製した実施例
次に、本実施形態のRFeB系焼結磁石を実際に作製した実施例を説明する。
(3-1) 実施例の試料の作製方法
この例では、Ndを26.7質量%、Pr(プラセオジム)を4.7質量%、Dyを0.3質量%、Tbを0.05質量%未満、Co(コバルト)を0.9質量%、Alを0.2質量%、Cuを0.1質量%、Bを1.0質量%、Feを残部として含有するRFeB系合金材111を用いた。RFeB系磁石粉末112は、粒径の中央値D50が3μmとなるように作製した。RFeB系焼結体11の作製にはPLP法を用いた。得られたRFeB系焼結体11は、寸法が15mm×25mm×5mmである直方体に加工し、縦横の寸法が15mm×25mmである2つの面に付着物12を付着させて粒界拡散処理を行った。付着物12にはTbCuAl合金の粉末とシリコーングリース等を混合したものを用い、粒界拡散処理温度は875℃、処理時間は17時間とした。ここでTbCuAl合金には、Tbを75.3質量%、Cuを18.8質量%、Alを5.9質量%、含有するものを用いた。保護層14は、ワット浴を用いた電解メッキ法により作製した。保護層14の厚みは約10μmとした。
比較例として、TbCuAl合金の代わりにTbNiAl合金(Tb:92.0質量%、Ni(ニッケル):4.3質量%、Al:3.7質量%)の粉末を付着物12に用いた点を除いて、上記実施例と同じ方法でRFeB系焼結磁石を作製した。
(3-2) 実施例の試料における元素の含有率(濃度)、分布測定
本実施例のRFeB系焼結磁石を作製する際に用いた、粒界拡散処理工程の後であってNiメッキ工程の前の段階のRFeB系焼結体13につき、縦横の寸法が15mm×25mmである1つの面からの深さ方向の位置毎にCu及びTbの含有率(濃度)を測定した結果を図3に示す。試料の厚みが約5mm(厳密には、5mmよりもわずかに薄い)であるため、図3に示した深さ0~5mmの範囲のデータは、その両端がRFeB系焼結磁石の表面におけるCu及びTbの含有率を示している。これらのデータより、Cu及びTbのいずれも、RFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有することがわかる。なお、上記のようにこれらのデータはRFeB系焼結体13を対象として測定したものであるが、Niメッキ工程ではCu及びTbが移動しないため、実施例の試料も同様の濃度勾配を有すると考えられる。Cu及びTbがそれぞれ結晶粒と粒界のいずれに存在するかという点は、このデータでは不明であるが、Cuに関しては次に述べるSEM-EDXの測定結果で確認することができる。Tbに関しては、本実施例のように粒界拡散法によってRFeB系焼結磁石内に拡散させた場合には、そのほとんどが粒界に存在することは、当業者において周知なことである。
図4に、本実施例のRFeB系焼結磁石につき、(a)表面に垂直な断面におけるSEM(走査電子顕微鏡)写真、並びに同断面において(b)Nd原子、(c)Ni原子及び(d)Cu原子の含有率(濃度)の分布をSEM-EDX(走査電子顕微鏡-エネルギー分散型X線元素分析)装置で測定した結果を示す。SEM写真において、左上側にある、周囲よりも濃い灰色の部分は保護層14であり、それよりも右下側の部分は粒界拡散処理後のRFeB系焼結体13である。白色の箇所はRFeB系焼結磁石を構成する他の元素よりも原子番号が大きい希土類元素が存在する部分、黒色の箇所はRFeB系焼結磁石を構成する元素のうち希土類元素よりも原子番号が小さい元素のみが存在するか、又は空気が存在する部分である。(b)~(d)の各図は、(a)で示したSEM写真と同じ部分を示しており、白色に近いほど、対応する原子(Nd, Ni, Cuのいずれか)が多いことを示している。なお、(d)では保護層14が周囲よりも白色に近い色で示されているが、実際には保護層14にCuは存在しない。
図4(b)及び(d)より、Nd原子とCu原子は、同じ位置において含有率が高い傾向があることがわかる。ここでNd原子の含有率が周囲よりも高い領域は、粒界拡散処理を行う前のRFeB系焼結磁石において粒界のNdリッチ相であったところであると考えられる。本実施例のRFeB系焼結磁石では、このNdリッチ相であった領域にCu原子も存在することから、Ndリッチ相の代わりにNd-Cu合金が粒界に生成されていると考えられる。一方、Nd原子の含有率が周囲よりも高くCu原子が存在しない領域は、図4(b)及び(d)にはほとんど見られない。本実施例のRFeB系焼結磁石では、このようにNdリッチ相の代わりにNd-Cu合金が粒界に生成されていることにより、水素ガスが保護層14を通過してRFeB系焼結体13に到達しても、粒界16が脆化し難く、水素ガスによる崩壊が生じることを抑えることができる。
また、図4(b)及び(c)より、RFeB系焼結体13の表面付近には、それよりもRFeB系焼結体13の深部側と対比して、Ndの含有率が低く、且つNiの含有率が高い領域が存在することがわかる。この領域では、RFeB系焼結体13の表面にNiメッキを施す際にワット浴が有する酸がRFeB系焼結体13の表面付近の粒界に浸透してNdリッチ相が溶解し、Ndリッチ相が存在しなくなった領域にNiが充填されている、と考えられる。その結果、本実施例のRFeB系焼結磁石10では、RFeB系焼結体13の表面付近にNdリッチ相が存在しないという点においても、保護層14を通過した水素ガスによる崩壊が生じることを抑えることができる。
なお、図4では、保護層14にピンホールは見られない。但し、本実施例の方法では、保護層14にピンホールが形成されることを確実に防ぐことは困難である。
(3-3) 実施例及び比較例の試料における耐水素試験
次に、実施例及び比較例の試料をそれぞれ4個ずつ用意し、以下の方法で耐水素試験を行った。まず、レーザ加工法により、各試料の保護層14にそれぞれ、RFeB系焼結体13の表面まで達する直径30μmの孔を2個ずつ形成した。この孔は、保護層14の作製時に形成され得るピンホールに相当する。つまり、この試験は、保護層14にピンホールが存在する場合における耐水素性を調べることを意味している。
次に、各試料の質量を測定した。この質量を「開始時質量」とする。続いて、各試料を密閉槽に収容し、該密閉槽に、温度が80℃、圧力が2気圧となるように水素ガスを導入した。水素ガスの導入から所定時間経過後に密閉槽から各試料を取り出し、各試料の質量を測定した。この質量が開始時質量よりも3%以上減少している試料は、水素による崩壊が発生していると判定される。崩壊が発生していると判定されなかった試料は密閉槽に戻し、さらに所定時間経過後に試料の質量を測定する、という操作を繰り返した。
試験結果を表1に示す。
Figure 0007316040000001
この表において「時間」は耐水素試験を開始してからの経過時間である。表中に○印が記載されている欄は、その欄に対応する経過時間において4個ともに水素ガスによる崩壊が発生していないことを示している。また、表中に数値のみが記載されている欄は、その欄に対応する経過時間において崩壊が生じていない試料の個数を示している。「平均耐水素時間」は、各試料において、崩壊が確認された経過時間の1つ前に、崩壊されていないことが確認された経過時間を当該試料の耐水素時間(水素ガスによって崩壊しなかった時間)とし、実施例及び比較例のそれぞれにおいて4個の試料の耐水素時間を平均した値(単位は「時間」)で定義する。実施例の平均耐水素時間は、比較例(9.3時間)よりも長い15時間であった。
ここで求めた平均耐水素時間の評価について説明する。常圧であって水素以外の気体が大気である場合には、水素の濃度が4%以上になると爆発の危険性が生じる。そのため、密閉された水素が常圧の大気中に漏出した際の水素の許容濃度は、4%よりも十分に低い0.1%(1000ppm)に設定されることが多い。その場合の水素分圧は0.001気圧となる。耐水素試験における水素の圧力がP気圧、平均耐水素時間がh時間である場合には、耐水素試験と同じ温度における分圧0.001気圧の水素に対する平均耐水素時間は、(P/0.001)×hとなる。
本実施例では、P=2気圧、h=15時間であるため、耐水素試験と同じ温度80℃における分圧0.001気圧の水素に対する平均耐水素時間は、(2/0.001)×15=30000時間、すなわち、約3.4年となる。つまり、本実施例のRFeB系焼結磁石は、温度が80℃であって濃度が許容の上限いっぱいの0.1%である水素ガスに3.4年間晒され続けることが許容される。通常は、このような上限いっぱいの濃度の水素ガスに晒され続けることは想定し難いため、さらに長期間、本実施例のRFeB系焼結磁石を使用し続けることができる。また、また、温度が80℃よりも低い環境下では、耐水素時間はさらに長くなる。
本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
10…RFeB系焼結磁石
11…RFeB系焼結体
111…RFeB系合金材
112…RFeB系磁石粉末
1121…粗粉
113…モールド
12…付着物
13…粒界拡散処理後のRFeB系焼結体
14…保護層
15…主相粒子
16…粒界
17…ピンホール

Claims (3)

  1. 希土類元素であるRと、FeとBとを含有するRFeB系焼結体の表面に、Cuを含む付着物を付着させたうえで加熱することにより、該Cuを該RFeB系焼結体の粒界に拡散させ、それにより該粒界にRとCuから成るR-Cu合金を形成する粒界拡散処理工程と、
    前記粒界拡散処理工程を行った後の前記RFeB系焼結体の表面に、ワット浴を用いた電解メッキ法により、メッキ液が有する酸を該RFeB系焼結体の該表面付近の粒界に浸透させることで前記R-Cu合金を残存させつつ該粒界の希土類リッチ相を溶解させ、該希土類リッチ相が存在しなくなった領域にNiを充填することでNiメッキを施すNiメッキ工程と
    を有することを特徴とするRFeB系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記付着物がさらにAlを含むことを特徴とする請求項1に記載のRFeB系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記付着物がTbCuAl合金を含むことを特徴とする請求項2に記載のRFeB系焼結磁石の製造方法。
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