JP7198075B2 - RFeB系焼結磁石及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、R(希土類元素)、Fe(鉄)及びB(硼素)を含有するRFeB系焼結磁石及びその製造方法に関する。
RFeB系焼結磁石は、1982年に佐川眞人らによって見出されたものであり、残留磁束密度等の多くの磁気特性がそれまでの永久磁石よりもはるかに高いという特長を有する。そのため、RFeB系焼結磁石は、ハイブリッド自動車・電気自動車の走行用モータや、その他の様々な製品に使用されている。
RFeB系焼結磁石は、酸素ガスや水素ガス等に触れると、それらと反応して腐食する。そのため従来より、腐食を防止するために、RFeB系焼結磁石の表面に樹脂製や金属製の被膜を設けることが行われている(例えば特許文献1)。樹脂製の被膜にはエポキシ樹脂製のものが、金属製の被膜にはニッケルメッキによるものが、主に使用されている。
特開2007-300791号公報([0005], [0030])
自動車の分野では、RFeB系焼結磁石は上述の走行用モータの他に、内燃機関や走行用モータ等の冷却対象物とラジエータの間で冷却液を循環させる送液ポンプのモータにも用いられている。ここで冷却液には通常、水よりも凝固点が低い液体であるエチレングリコール(HO-CH2-CH2-OH)を主成分とする液体が用いられている。エチレングリコールは、冷却液で使用する間に徐々に分解し、それによりギ酸(HCOOH)が生成される。このように生成されたギ酸を含有する冷却液が、送液ポンプのモータのRFeB系焼結磁石に接触すると、RFeB系焼結磁石の表面に上述した樹脂製や金属製の被膜が設けられているにもかかわらず、RFeB系焼結磁石に腐食が生じてしまう。例えば、表面にエポキシ樹脂製の被膜が設けられたRFeB系焼結磁石では、ギ酸が被膜を透過し、RFeB系焼結磁石の本体に達してしまう。また、表面にニッケルメッキの被膜が設けられたRFeB系焼結磁石では、被膜作製時に該被膜に微小な(径が数十μmの)孔が形成されることを防ぐことが困難であり、この孔を通してギ酸がRFeB系焼結磁石の本体に達してしまう。
ここでは自動車向けの冷却液で生成されるギ酸を例として説明したが、それ以外の酸がRFeB系焼結磁石と接触する場合にも同様の問題が生じる。
本発明が解決しようとする課題は、耐酸性が高いRFeB系焼結磁石を提供することである。
上記課題を解決するために成された本発明に係るRFeB系焼結磁石は、
該RFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するように、該RFeB系焼結磁石の粒界にCu(銅)が存在し、該粒界に希土類元素と該Cuによる合金が形成されており、
前記表面から、0.1~5μmである所定深さまで、該RFeB系焼結磁石の粒界に酸化物が形成されて成る酸化層を有する
ことを特徴とする。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法は、
希土類元素、鉄及び硼素を含有するRFeB系焼結体から成る基材の表面にCuを含む付着物を付着させたうえで加熱することにより、該Cuを該基材の粒界に拡散させ、それにより該粒界に希土類元素と該Cuによる合金を形成する粒界拡散処理工程と、
前記粒界拡散処理工程を行った後の前記基材の表面を酸化させることにより、該基材の表面から、0.1~5μmである所定深さまで、該基材の粒界に酸化物が形成されて成る酸化層を作製する酸化層作製工程と
を有することを特徴とする。
従来のRFeB焼結磁石では、希土類元素がほぼ単体の状態で存在する希土類リッチ相が粒界に形成されていることが知られている。この希土類リッチ相に酸が到達すると、希土類リッチ相が酸によって溶解し、RFeB系焼結磁石に腐食が生じてしまう。それに対して本発明に係るRFeB系焼結磁石では、粒界にCuが存在する。このように粒界に存在するCuは、同じく粒界に存在する希土類リッチ相の希土類元素と合金(R-Cu合金)を形成している。R-Cu合金は希土類リッチ相よりも酸に溶け難い。
本発明に係るRFeB系焼結磁石によれば、その表面から所定深さまで形成されている酸化層により、該酸化層よりも内側に酸が浸入することが抑制される。それと共に、たとえ酸が酸化層よりも内側に浸入したとしても、希土類リッチ相よりも酸に溶け難いR-Cu合金が粒界に存在するため、腐食が生じることを抑えることができる。
前記酸化層において基材の粒界(に相当する位置)に形成される酸化物は、主に希土類元素の酸化物である。また、RFeB系の結晶粒のうち基材の表面(大気側)に露出していたものは、酸化した状態で酸化層の表面に存在する。なお、酸化層の表面にはない酸化層内の結晶粒は、ほとんど酸化していない。
一般に、空気等の酸素を含む気体にRFeB系焼結磁石を晒すと、その表面からごく近い範囲内のみが自然に酸化するが、このように自然に酸化しただけの酸化層は酸の浸入をほとんど阻止することができない。それに対して本発明では、RFeB系焼結磁石の表面を積極的に酸化させることで表面から0.1μm以上の所定深さまで酸化層を形成することにより、酸化層よりも内側に酸が浸入することを効果的に抑制することができる。一方、RFeB系焼結磁石の表面を過度に酸化させると磁気特性が低下するため、前記所定深さは5μm以下とする。
RFeB系焼結体を作製する際に、仮に、原料の粉末にCuを混合したうえで該粉末を焼結すると、Cuと希土類元素から成る合金及びRリッチ相が粒界に形成される。このようなRFeB系焼結体の表面に酸化層を形成することで作製されたRFeB系焼結磁石は、酸が酸化層の内側に浸入したときに粒界のRリッチ相が溶解し、腐食が生じてしまう。そこで、本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法では、RFeB系焼結体から成る基材の表面にCuを含む付着物を付着させたうえで加熱することにより、該Cuを該基材の粒界に拡散させるという、粒界拡散処理を行う。これにより、基材の粒界に存在する希土類リッチ相が優先的にCuと合金、すなわち上記R-Cu合金を形成することができる。このように粒界拡散処理によってCuを基材の粒界に拡散させるため、本発明に係るRFeB焼結磁石は、CuがRFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有する。従って、酸の影響を受けやすいRFeB系焼結磁石の表面に近いほどCuの濃度が高くなってR-Cu合金が形成され易くなるため、酸による腐食を効果的に抑えることができる。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法において、前記付着物は(Cuと共に)Al(アルミニウム)を含有していることが好ましい。これにより、Alが粒界に拡散することで該粒界に存在する希土類リッチ相の融点が低下し、粒界が融解するため、Cuが粒界に拡散し易くなる。このようにAlが粒界に拡散した本発明に係るRFeB系焼結磁石は、該RFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するようにAlが粒界に存在するという特徴を有する。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法において、前記付着物は(Cuと共に、又はCu及びAlと共に)Dy(ジスプロシウム)及び/又はTb(テルビウム)を含有していることが好ましい。これにより、RFeB系の結晶粒の内部にDy及び/又はTbが深く浸透することなく、該結晶粒の表面付近にのみDy及び/又はTbが供給される。RFeB系焼結磁石にDy及び/又はTbを添加すると、保磁力は向上するのに対して残留磁束密度は低下することが知られているが、Dy及び/又はTbがRFeB系の結晶粒の表面付近にのみ供給されると、残留磁束密度の低下は抑えられつつ保磁力が向上する。このようにDy及び/又はTbが拡散した本発明に係るRFeB系焼結磁石は、該RFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するようにDy及び/又はTbが粒界に存在するという特徴を有する。
本発明により、耐酸性が高いRFeB系焼結磁石を得ることができる。
本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法の一実施形態を示す概略図。 本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施形態を示す部分模式図。 本発明に係るRFeB系焼結磁石の実施例2の試料を作製する際に用いた、粒界拡散処理工程の後であって酸化層作製工程の前の段階の基材につき、1つの面からの深さ方向の位置毎にCu及びTbの含有率を測定した結果を示すグラフ。 実施例2の試料の表面に垂直な断面において、(a)Nd、(b)Cu及び(c)Oの分布をEPMAで観測した結果を示す図、並びに同断面における電子顕微鏡写真。 (a)実施例1、(b)実施例2及び(c)実施例3の試料につき、表面におけるNd、Cu及びOの分布をEPMAで観測した結果を示す図。 比較例2の試料につき、表面におけるNd、Cu及びOの分布をEPMAで観測した結果を示す図。
以下、図1~図6を用いて、本発明に係るRFeB系焼結磁石及びその製造方法を説明する。
(1) 本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法の一実施形態
図1を用いて、本発明に係るRFeB系焼結磁石の製造方法の一実施形態を説明する。
(1-1) 基材作製工程
初めに、RFeB系焼結体から成る基材11を作製する。以下、基材11の作製方法の一例を説明するが、基材11はRFeB系焼結磁石を製造する際に用いられる通常の方法で作製すればよく、この作製方法には限定されない。
まず、R(希土類元素)、Fe及びBを含有する(その他の元素を含んでいてもよい)RFeB系合金材111を作製する。RFeB系合金材111は、例えばストリップキャスト法等、周知の方法より作製することができる。
次に、RFeB系合金材111を粉砕することにより、RFeB系磁石粉末112を作製する。RFeB系磁石粉末112は、例えば、まずRFeB系合金材111に水素を吸蔵させることで該RFeB系合金材111を脆化させ(図1(a))たうえで機械的に粉砕することにより粗粉1121(図1(b))を作製し、その後、ジェットミル等を用いて微粉砕することによって得る(図1(c))ことができる。RFeB系磁石粉末112は、粒径の中央値D50が数μm、好ましくは3μm以下の粒度分布となるようにする。
次に、製造しようとするRFeB系焼結磁石に対応した形状を有するモールド113にRFeB系磁石粉末112を収容し、モールド113に蓋を取り付けたうえで、モールド113内のRFeB系磁石粉末112に磁界を印加することにより、RFeB系磁石粉末112の粒子を配向させる(図1(d))。続いて、RFeB系磁石粉末112をモールド113から取り出すことなく、所定の焼結温度(900~1050℃の範囲内の温度が好ましい)に加熱することにより、RFeB系磁石粉末112を焼結させる(図1(e))。これにより、基材11が得られる(図1(f))。なお、モールド113には、焼結温度において耐熱性を有する材料から成るものを用いる。
ここまでに述べた基材11を作製する際の各工程は、RFeB系合金材111及びRFeB系磁石粉末112が酸化することを防止するために、真空中又は不活性ガス中等の無酸素雰囲気中で行う。
ここで述べた基材11の作製方法では、RFeB系磁石粉末112を圧縮成形することなく焼結するPLP(プレスレスプロセス、Press-less process)法を用いているが、その代わりに、RFeB系磁石粉末112の粒子を配向させながら、又は配向させた後に、RFeB系磁石粉末112に圧力を印加することにより圧縮成形をしたうえで焼結を行ってもよい。
(1-2) 粒界拡散処理工程
次に、得られた基材11に対して、以下のように粒界拡散処理を行う。
まず、粒界拡散処理に用いる付着物12を用意する。付着物12は、後述のように粒界拡散処理において基材11に付着させるものであり、少なくともCuを含有している。付着物12は、Cuの他に、Cuを基材11の粒界に拡散させやすくするための元素であるAlや、RFeB系焼結磁石の保磁力を向上させるための元素であるDy及び/又はTbを含有していてもよい。DyとTbのうち、DyはTbよりも価格が低いという点で好ましく、Tbは保磁力向上効果をより高くするという点で好ましい。付着物12に含有させる物として、これらCu、Al、並びにDy及び/又はTbの合金を用いてもよい。なお、本発明では、付着物12は少なくともCuを含有していればよく、Al、Dy及びTbを含有していなくてもよい。付着物12はさらに、それを基材11に付着させやすくするために粘着性を有する物を含有している。そのような粘着性を有する物として、シリコーングリースやシリコーンオイル、あるいはそれらを混合したものから成るシリコーン系の有機溶剤を好適に用いることができる。付着物12は、Cuを含有する金属や合金等を粉砕することで粉末にしたうえで、該粉末を、粘着性を有する物と混合することにより作製される。
次に、基材11の表面に付着物12を付着させ(図1(g))、真空中又は不活性ガス中等の無酸素雰囲気中において、所定の粒界拡散処理温度(700~1000℃の範囲内の温度が好ましい)に加熱する(図1(h))。これにより、付着物12中のCuは、基材11の表面から粒界内に拡散する。付着物12がAl、Dy及び/又はTbを含有している場合には、それらも基材11の表面から粒界内に拡散する。ここでAlは、それが基材11の粒界内に拡散することにより、該粒界内に存在する希土類リッチ相(基材11中の主相粒子よりも希土類元素の含有率が高いもの)の融点を低下させることで該希土類リッチ相を融解させ、それによりCuが粒界内に拡散し易くなる、という作用を奏する。その後、粒界拡散処理後の基材13の表面を研磨し、該表面に残存する付着物12を除去する(図1(i))。
(1-3) 酸化層作製工程
次に、粒界拡散処理後の基材13を、酸素を含む気体中(有酸素雰囲気中)で所定の酸化処理温度(200~400℃の範囲内の温度が好ましい)に加熱する(図1(j))。ここで、酸素を含む気体には、典型的には空気を用いることができる。空気以外に、純酸素や、酸素とその他の気体成分が混合した気体を、酸素を含む気体として用いてもよい。これにより、粒界拡散処理後の基材13の表面から所定深さまで、粒界に酸化物が形成されて成る酸化層23が作製される(図1(k))。ここで所定深さは0.1~5μmとする。酸化層23の深さは、酸化処理温度温度に応じて、加熱する時間を調整することにより設定することができる。
以上の各工程により、本実施形態のRFeB系焼結磁石20が得られる。
(2) 本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施形態
図2を用いて、本発明に係るRFeB系焼結磁石の一実施形態を説明する。
本実施形態のRFeB系焼結磁石20は、表面201を含む部分を図2に模式的に示すように、RFeB系の粒子である主相粒子21が焼結したものであって、主相粒子21同士の間に粒界22が存在する。
粒界22には、主相粒子21が含有するものと同じ希土類元素(例えばNd(ネオジム))が存在すると共に、Cuが存在する。Cuは、上述のように粒界拡散処理によって粒界22内に導入されていることから、RFeB系焼結磁石20の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有している。こうして粒界22内に存在するCuは、基材11の粒界に存在していた希土類リッチ相の希土類元素と合金(R-Cu合金)を形成している。
また、本実施形態のRFeB系焼結磁石20はさらに、粒界22にAl、Dy及び/又はTbが、RFeB系焼結磁石20の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するように存在する。なお、これらAl、Dy及び/又はTbが粒界22に存在することは、本発明の必須要件ではない。
Alは、前述のように、Cuを粒界内に拡散させ易くするために添加された元素である。
Dy及び/又はTbは、それらが粒界22内に拡散しているのに伴い、主相粒子21のうち該主相粒子21の表面付近にも拡散している。但し、主相粒子21内では、Dy及び/又はTbは表面付近にしか拡散せず、主相粒子21内の奥深くまでは拡散していない。RFeB系焼結磁石の保磁力は一般に、主に主相粒子の表面付近で磁化が反転することが原因となって低下する。本実施形態のRFeB系焼結磁石20は、この主相粒子21の表面付近にDy及び/又はTbが拡散していることにより、保磁力が向上する。一方、Dy及び/又はTbが主相粒子21内の奥深くまでは拡散していないため、残留磁束密度が低下することが抑えられる。
RFeB系焼結磁石20の表面201から所定深さ(0.1~5μmの範囲内の深さ)まで、粒界22に酸化物が形成されて成る酸化層23が形成されている。酸化層23は、粒界22において、主に希土類元素が酸化した酸化物を有する。また、酸化層23内の主相粒子21のうち、酸化層23(及びRFeB系焼結磁石20)の表面201に露出している粒子211も酸化している。なお、酸化層23の表面201にはない主相粒子21は、ほとんど酸化していない。
本実施形態のRFeB系焼結磁石20は、表面201から所定深さまで酸化層23が形成されていることにより、酸に接触したときに、酸化層23よりもRFeB系焼結磁石20の内側に酸が浸入することを抑えることができる。また、希土類リッチ相よりも酸に溶け難いR-Cu合金が粒界22に形成されており、それに伴って粒界22に存在する希土類リッチ相が従来のRFeB系焼結磁石よりも少ないことから、たとえ酸が酸化層23よりも内側に浸入したとしても、従来のRFeB系焼結磁石よりも腐食が生じることを抑えることができる。
(3) 本実施形態のRFeB系焼結磁石を作製した実施例
次に、本実施形態のRFeB系焼結磁石を実際に作製した実施例を説明する。
(3-1) 実施例の試料の作製方法
この例では、Ndを26.7質量%、Pr(プラセオジム)を4.7質量%、Dyを0.3質量%、Tbを0.05質量%未満、Co(コバルト)を0.9質量%、Alを0.2質量%、Cuを0.1質量%、Bを1.0質量%、Feを残部として含有するRFeB系合金材111を用いた。RFeB系磁石粉末112は、粒径の中央値D50が3μmとなるように作製した。基材11の作製にはPLP法を用いた。得られた基材11は、寸法が15mm×25mm×5mmである直方体に加工し、縦横の寸法が15mm×25mmである2つの面に付着物12を付着させて粒界拡散処理を行った。付着物12にはTbCuAl合金の粉末とシリコーングリース等を混合したものを用い、粒界拡散処理温度は875℃、処理時間は17時間とした。ここでTbCuAl合金には、Tbを75.3質量%、Cuを18.8質量%、Alを5.9質量%、含有するものを用いた。酸化層作製工程では、200℃、300℃、及び400℃という3種類の酸化処理温度においてそれぞれ、大気中で1時間加熱を行った。以下、酸化処理温度が200℃であるものを実施例1、300℃であるものを実施例2、400℃であるものを実施例3と呼ぶ。
比較例1として、TbCuAl合金の代わりにTbNiAl合金(Tb:92.0質量%、Ni(ニッケル):4.3質量%、Al:3.7質量%)の粉末を付着物12に含有させた点と、酸化処理温度が300℃のみである点を除いて、上記実施例と同じ方法でRFeB系焼結磁石を作製した。
また、比較例2として、実施例1~3と同じ方法で粒界拡散処理を行った後に酸化層を形成していない試料を用意した。また、比較例3として、比較例1と同じ方法で粒界拡散処理を行った後に酸化層を形成していない試料を用意した。
(3-2) 実施例における元素の含有率(濃度)、分布測定
実施例2の試料を作製する際に用いた、粒界拡散処理工程の後であって酸化層作製工程の前の段階の基材13につき、縦横の寸法が15mm×25mmである1つの面からの深さ方向の位置毎にCu及びTbの含有率(濃度)を測定した結果を図3に示す。試料の厚みが約5mm(厳密には、5mmよりもわずかに薄い)であるため、図3に示した深さ0~5mmの範囲のデータは、その両端がRFeB系焼結磁石の表面におけるCu及びTbの含有率を示している。これらのデータより、Cu及びTbのいずれも、RFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有することがわかる。なお、上記のようにこれらのデータは基材13を対象として測定したものであるが、酸化層作製工程ではCu及びTbが移動しないため、実施例2の試料も同様の濃度勾配を有すると考えられる。Cu及びTbがそれぞれ結晶粒と粒界のいずれに存在するかという点は、このデータでは不明であるが、Cuに関しては次に述べるEPMAの観測結果で確認することができる。Tbに関しては、本実施例のように粒界拡散法によってRFeB系焼結磁石内に拡散させた場合には、そのほとんどが粒界に存在することは、当業者において周知なことである。
実施例2の試料につき、試料全体での各元素の含有率を測定したところ、Ndは26.3質量%、Prは4.65質量%、Dyは0.18質量%、Tbは0.33質量%、Coは0.90質量%、Bは0.98質量%、Alは0.19質量%、Cuは0.19質量%、Feは残部、であった。基材11の材料であるRFeB系合金材111における各元素の含有率と対比すると、粒界拡散処理によって粒界22に導入したCu及びTbが増加していることがわかる。なお、粒界拡散処理ではAlも粒界22に導入しているが、Cu及びTbよりもAlの導入量が少ないため、実施例2の試料ではAlの量にRFeB系合金材111との顕著な相違は見られない。
次に、実施例2の試料につき、表面に垂直な断面におけるNd原子、Cu原子及びO(酸素)原子の分布をEPMA装置で測定した結果を図4(a)~(c)に示す。これらの図では、黒色から白色に近づくほど、対象の元素の含有率が高いことを示している。図4(d)には、EPMA測定の結果を示した図と同じ範囲内における電子顕微鏡写真を示す。この電子顕微鏡写真において、灰色の箇所は結晶粒であり、白色の箇所はRFeB系焼結磁石を構成する他の元素よりも原子番号が大きい希土類元素が存在する部分、黒色の箇所はRFeB系焼結磁石を構成する元素のうち希土類元素よりも原子番号が小さい元素のみが存在するか、又は空気が存在する部分である。
図4(a)及び(b)から、Nd原子とCu原子は、同じ位置に存在する傾向があることがわかる。そして、これら(a)及び(b)と(d)を対比すると、Nd原子及びCu原子が存在する部分と、粒界のうち空気以外の物が存在する部分が良く一致している。従って、Nd原子及びCu原子は、主に粒界に存在することがわかる。一方、Nd原子が存在するがCu原子が存在しない粒界はほとんど見られない。これらの結果より、実施例2の試料の粒界には、従来のRFeB系焼結磁石では粒界に存在していた希土類リッチ相(Ndリッチ相)がほとんど存在せず、その代わりにNd-Cu合金が存在すると考えられる。
図4(c)から、O原子は、試料の表面(同図の上端)から5μmの範囲内に多く存在することがわかる。この範囲内が酸化層23に該当する。酸化層23では、酸素原子は主に粒界に存在するが、試料の表面では結晶粒内にも存在する。
図5(a)~(c)に、実施例1~3の試料についてそれぞれ、RFeB系焼結磁石の表面におけるNd原子、Cu原子及びO原子の分布をEPMA装置で測定した結果を示す。また、図6に、比較例2の試料について同様の測定を行った結果を示す。実施例1~3ではいずれも、Ndが存在する(Ndの図中で白色に近い)箇所のほとんどに、Oも存在する(Oの図中で灰色)。それに対して比較例2では、図6中に白色の破線で囲んだ箇所において、Ndは存在するのに対してOはほとんど存在しない。この結果から、RFeB系焼結磁石の表面において、実施例1~3ではNdがほぼ酸化しているのに対して、比較例2では酸化していない(金属状態の)Ndが残存していると考えられる。そのため、実施例1~3では酸化層が酸によって浸食され難いのに対して、比較例2ではNdリッチ相が残存する箇所から酸によって浸食されることが考えられる。
(3-3) 実施例の試料の耐酸性試験
次に、実施例2及び比較例1~3の試料につき、以下の方法で耐酸性試験を行った。まず、試料の質量を測定した。次に、試料を、エチレングリコールと水を体積比1:1で混合した試験液に浸漬した状態となるように密閉容器(ビン)に収容し、該容器を温度120℃の恒温槽内に静置した。この試験液は、120℃という温度で時間が経過するのに伴って、徐々に、エチレングリコールが分解してギ酸が生成されてゆく。そして、所定時間経過後に、恒温槽から密閉容器を取り出し、試料を密閉容器から取り出して該試料の質量を測定した。その後、試料を試験液に浸漬するように密閉容器に戻し、密閉容器を恒温槽内に静置したうえで、さらに所定時間経過後に試料の質量を測定する、という操作を繰り返した。
試験結果を表1に示す。この表において「時間」は試験を開始してからの経過時間である。試料の質量につき、○印は試験開始前から変化していないことを示し、△は試験開始前から減少しているものの減少率が3%未満であることを示し、×は試験開始前から3%以上減少していることを示している。
Figure 0007198075000001
この試験結果より、実施例2の試料は、試験開始から2200時間経過した時点でも、質量が試験開始時から減少しておらず、腐食が生じていない。それに対して比較例1~3ではいずれも、試験開始から2200時間経過するよりも前に、質量が試験開始時から3%以上減少しており、腐食が生じている。この実験結果は、耐酸性を高くするためには、RFeB系焼結磁石の表面から所定深さまで酸化層が形成されているのみ(比較例1)、又は粒界にR-Cu合金が形成されているのみ(比較例2)では足りず、表面の酸化層と粒界のR-Cu合金の双方(実施例2)が必要であることを示している。
11…基材
111…RFeB系合金材
112…RFeB系磁石粉末
1121…粗粉
113…モールド
12…付着物
13…粒界拡散処理後の基材
20…RFeB系焼結磁石
201…RFeB系焼結磁石の表面
21…主相粒子
211…酸化層の表面に露出している粒子
22…粒界
23…酸化層

Claims (5)

  1. 希土類元素、鉄及び硼素を含有するRFeB系焼結磁石であって、
    該RFeB系焼結磁石の表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するように、該RFeB系焼結磁石の粒界にCuが存在し、該粒界に希土類元素と該Cuによる合金が形成されており、
    前記表面から、0.1~5μmである所定深さまで、該RFeB系焼結磁石の粒界に酸化物が形成されて成る酸化層を有する
    ことを特徴とするRFeB系焼結磁石。
  2. さらに、前記表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するようにAlが粒界に存在することを特徴とする請求項1に記載のRFeB系焼結磁石。
  3. さらに、前記表面から内部に向かって減少する濃度勾配を有するようにDy及び/又はTbが粒界に存在することを特徴とする請求項1又は2に記載のRFeB系焼結磁石。
  4. 希土類元素、鉄及び硼素を含有するRFeB系焼結体から成る基材の表面にCuを含む付着物を付着させたうえで加熱することにより、該Cuを該基材の粒界に拡散させ、それにより該粒界に希土類元素と該Cuによる合金を形成する粒界拡散処理工程と、
    前記粒界拡散処理工程を行った後の前記基材の表面を酸化させることにより、該基材の表面から、0.1~5μmである所定深さまで、該基材の粒界に酸化物が形成されて成る酸化層を作製する酸化層作製工程と
    を有することを特徴とするRFeB系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記付着物が、TbとCuとAlの合金であるTbCuAl合金を含むことを特徴とする請求項4に記載のRFeB系焼結磁石の製造方法。
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