JP2012109369A - R−Fe−B系焼結磁石の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 処理対象とするR−Fe−B系焼結磁石に対してRHを外部から拡散導入する工程Aを行った後、酸素分圧が1×103Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が1000Pa未満であり、かつ、酸素分圧と水蒸気分圧の比率(酸素分圧/水蒸気分圧)が1〜20000の雰囲気下、200℃〜500℃で熱処理を行う工程Bを行うことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
また、請求項2記載の製造方法は、請求項1記載の製造方法において、処理室内に、R−Fe−B系焼結磁石とRHを外部から拡散導入するためのRH拡散導入材を相対的に移動可能かつ近接または接触可能に収容し、両者を処理室内にて連続的または断続的に移動させながら500℃〜1000℃で熱処理を行うことで工程Aを行うことを特徴とする。
また、請求項3記載の製造方法は、請求項2記載の製造方法において、FeをRHの他に含む合金からなるRH拡散導入材を使用することを特徴とする。
また、請求項4記載の製造方法は、請求項3記載の製造方法において、合金のFe含有量が30mass%〜80mass%であることを特徴とする。
また、請求項5記載の製造方法は、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法において、工程Bの水蒸気分圧を45Pa以下とし、かつ、酸素分圧と水蒸気分圧の比率を450〜20000とすることを特徴とする。
また、請求項6記載の製造方法は、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法において、工程Aを行った後のR−Fe−B系焼結磁石に対し、ブラスト加工および/または表面研削加工を行った後、工程Bを行うことを特徴とする。
また、本発明のRLの一部がRHによって置換されてなるR−Fe−B系焼結磁石は、請求項7記載の通り、請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法によって製造されてなることを特徴とする。
工程Aは、処理対象とするR−Fe−B系焼結磁石に対してRHを外部から拡散導入する工程である。この工程は、R−Fe−B系焼結磁石に対してRHを外部から拡散導入することができる方法であればどのような方法を採用してもよく、公知の方法としては、特許文献1に記載の方法の他、蒸着やスパッタリングなどの物理的手法によってR−Fe−B系焼結磁石の表面にRH被膜を形成した後に500℃〜1000℃で熱処理を行う方法(例えば特開2005−11973号公報を参照のこと)や、R−Fe−B系焼結磁石の表面にRHフッ化物などからなる粉末を存在させた状態で真空中や不活性ガス中で磁石の焼結温度以下の温度で熱処理を行う方法(例えば国際公開第2006/043348号を参照のこと)などを採用することができる。
工程Bは、工程AによってRHが拡散導入されたR−Fe−B系焼結磁石の表面改質を行う工程である。工程Bによれば、RHが拡散導入されたR−Fe−B系焼結磁石の表面を改質して耐食性に優れた安定なものとし、優れた密着性をもって耐食性被膜を形成することができるようになる。従って、工程Aによって磁石の表面に安定性に劣るR含有層が形成された場合でも、工程BによってこうしたR含有層は改質されて安定化することで、磁石に優れた耐食性が付与されるとともに、その表面に優れた密着性をもって耐食性被膜を形成することができる。
25〜40mass%の希土類元素Rと、0.6〜1.6mass%のB(硼素)と、残部Feおよび不可避不純物とを包含する合金を用意する。ここで、RはRHを含んでいてもよい。また、Bの一部はC(炭素)によって置換されていてもよいし、Feの一部は(50mass%以下)は、他の遷移金属元素(例えば、CoまたはNi)によって置換されていてもよい。この合金は、種々の目的により、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種の添加元素Mを0.01〜1.0mass%程度含有していてもよい。
上記の合金は、原料合金の溶湯を例えばストリップキャスト法によって急冷して好適に作製され得る。以下、ストリップキャスト法による急冷凝固合金の作製を説明する。
まず、上記組成を有する原料合金をアルゴンガス雰囲気下において高周波溶解によって溶解し、原料合金の溶湯を形成する。次に、この溶湯を1350℃程度に保持した後、単ロール法によって急冷し、例えば厚さ約0.3mmのフレーク状合金鋳塊を得る。こうして作製した合金鋳片を、次の水素粉砕処理前に例えば1〜10mmのフレーク状に粉砕する。なお、ストリップキャスト法による原料合金の製造方法は、例えば、米国特許第5、383、978号明細書に開示されている。
[粗粉砕工程]
上記のフレーク状に粗く粉砕された合金鋳片を水素炉の内部へ収容する。次に、水素炉の内部で水素脆化処理(以下、「水素粉砕処理」や単に「水素処理」と称する場合がある)工程を行う。水素粉砕処理後の粗粉砕粉合金粉末を水素炉から取り出す際、粗粉砕粉が大気と接触しないように、不活性雰囲気下で取り出し動作を実行することが好ましい。そうすれば、粗粉砕粉が酸化・発熱することが防止され、磁石の磁気特性の低下が抑制できるからである。
水素粉砕処理によって、希土類合金は0.1mm〜数mm程度の大きさに粉砕され、その平均粒径は500μm以下となる。水素粉砕処理後、脆化した原料合金をより細かく解砕するとともに冷却することが好ましい。比較的高い温度状態のまま原料を取り出す場合は、冷却処理の時間を相対的に長くすればよい。
[微粉砕工程]
次に、粗粉砕粉に対してジェットミル粉砕装置を用いて微粉砕を実行する。本実施形態で使用するジェットミル粉砕装置にはサイクロン分級機が接続されている。ジェットミル粉砕装置は、粗粉砕工程で粗く粉砕された希土類合金(粗粉砕粉)の供給を受け、粉砕機内で粉砕する。粉砕機内で粉砕された粉末はサイクロン分級機を経て回収タンクに集められる。こうして、0.1〜20μm程度(典型的には平均粒径3〜5μm)の微粉末を得ることができる。このような微粉砕に用いる粉砕装置は、ジェットミルに限定されず、アトライタやボールミルであってもよい。粉砕に際して、ステアリン酸亜鉛などの潤滑剤を粉砕助剤として用いてもよい。
[プレス成形]
本実施形態では、上記方法で作製された磁性粉末に対し、例えばロッキングミキサー内で潤滑剤を例えば0.3質量%添加・混合し、潤滑剤で合金粉末粒子の表面を被覆する。次に、上述の方法で作製した磁性粉末を公知のプレス装置を用いて配向磁界中で成形する。印加する磁界の強度は、例えば0.8〜1.4MA/mである。また、成形圧力は、成形体のグリーン密度が例えば4〜4.5g/cm3程度になるように設定される。
[焼結工程]
上記の粉末成形体に対して、例えば、1000〜1200℃の範囲内の温度で10〜240分間行う。650〜1000℃の範囲内の温度で10〜240分間保持する工程と、その後、上記の保持温度よりも高い温度(例えば、1000〜1200℃)で焼結を更に進める工程とを順次行ってもよい。焼結工程の後、寸法調整のための研削を行ってもよい。
(使用したR−Fe−B系焼結磁石)
Nd:20.7、Pr:5.7、Dy:5.0、B:1.00、Co:0.9、Cu:0.1、Al:0.2、残部:Fe(単位:mass%)の組成を有する厚さ0.2〜0.3mmの合金薄片をストリップキャスト法により作製した。
次に、この合金薄片を容器に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの不定形粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した不定形粉末に対し粉砕助剤として0.04mass%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、平均粒径が約3μmの微粉末を作製した。
こうして作製した微粉末をプレス装置により成形し、粉末成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行って焼結体ブロックを得、得られた焼結体ブロックを表面研削加工して寸法調整することで、厚さ2mm×縦15mm×横18mmのR−Fe−B系焼結磁石を得た。こうして得たR−Fe−B系焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した(以下「焼結磁石」と称する)。
実施例1の第2熱処理と工程Bの間で、焼結磁石に対してブラスト加工を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。なお、焼結磁石に対するブラスト加工は、不二製作所社製のブラスト装置(SGF−4B)を用い、共栄研磨材社製のガラスビーズ(GB♯100)を投射材として、0.3MPaの投射圧で各面に対してそれぞれ15秒間投射することによって行った。ブラスト加工された焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した。
実施例1の第2熱処理と工程Bの間で、焼結磁石に対して表面研削加工を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。なお、焼結磁石に対する表面研削加工は、大昌精機社製の平面研削盤を用い、各面に対してそれぞれ0.2mm研削することで行った(砥石の番手:♯100、砥石の回転数:1500rpm、研削盤への磁石の送り込み速度:0.6m/分)。表面研削加工された焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した。
実施例1の工程Bにおいて用いた露点−35℃の大気のかわりに、露点0℃の大気(酸素分圧20000Pa、水蒸気分圧600Pa、酸素分圧/水蒸気分圧=33.3)を用いて熱処理を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例4の第2熱処理と工程Bの間で、焼結磁石に対してブラスト加工を行うこと以外は実施例4と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。なお、焼結磁石に対するブラスト加工は、不二製作所社製のブラスト装置(SGF−4B)を用い、共栄研磨材社製のガラスビーズ(GB♯100)を投射材として、0.3MPaの投射圧で各面に対してそれぞれ15秒間投射することによって行った。ブラスト加工された焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した。
実施例4の第2熱処理と工程Bの間で、焼結磁石に対して表面研削加工を行うこと以外は実施例4と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。なお、焼結磁石に対する表面研削加工は、大昌精機社製の平面研削盤を用い、各面に対してそれぞれ0.2mm研削することで行った(砥石の番手:♯100、砥石の回転数:1500rpm、研削盤への磁石の送り込み速度:0.6m/分)。表面研削加工された焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した。
実施例1の工程Aにおいて用いたRH拡散導入材のかわりに、55mass%のDyと45mass%のFeの合金からなる直径3mm以下の球状体をRH拡散導入材として用い、容器内の圧力を0.5Paとし、容器内の温度を870℃とし、熱処理を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例1の工程Aにおいて用いたRH拡散導入材のかわりに、40mass%のDyと60mass%のFeの合金からなる直径3mm以下の球状体をRH拡散導入材として用い、攪拌補助材を用いず、容器内の圧力を2Paとし、容器内の温度を950℃とし、3時間熱処理を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例1の工程Aにおいて用いたRH拡散導入材のかわりに、99.9mass%のDyからなる直径3mm以下の球状体をRH拡散導入材として用い、容器内の圧力を500Paとし、容器内の温度を800℃とし、6時間熱処理を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例2の工程Aにおいて用いたRH拡散導入材のかわりに、99.9mass%のDyからなる直径3mm以下の球状体をRH拡散導入材として用い、容器内の圧力を0.05Paとし、容器内の温度を800℃とし、6時間熱処理を行うこと以外は実施例2と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
(使用したR−Fe−B系焼結磁石)
Nd:20.7、Pr:5.7、Dy:5.0、B:1.00、Co:0.9、Cu:0.1、Al:0.2、残部:Fe(単位:mass%)の組成を有する厚さ0.2〜0.3mmの合金薄片をストリップキャスト法により作製した。
次に、この合金薄片を容器に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの不定形粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した不定形粉末に対し粉砕助剤として0.04mass%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、平均粒径が約3μmの微粉末を作製した。
こうして作製した微粉末をプレス装置により成形し、粉末成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行い、厚さ2mm×縦15mm×横18mmの焼結体を得、こうして得た焼結体を寸法調整のための表面研削加工を行うことなくそのままR−Fe−B系焼結磁石として実験に供した(以下「焼結磁石」と称する)。
特許文献1に記載の方法に従って工程Aを行った。具体的には、Mo製の処理容器内で、焼結磁石(実施例1で使用した焼結磁石と同じもの)の表面と裏面のそれぞれに対し、RHバルク体として99.9mass%のDyからなる厚さ5mm×縦30mm×横30mmの板状ブロックを5mm〜9mmの間隔を空けて対向配置し、容器内の圧力を0.01Paとし、容器内の温度を900℃とし、6時間熱処理を行うことで、焼結磁石に対してDyを拡散導入するための工程Aを行った(この工程Aの方法を「離間拡散法」と略称する)。熱処理終了後は、容器内を室温まで自然放冷した後、容器内からRHバルク体を取り外してから、実施例1と同様にして第1熱処理と第2熱処理を行った。
実施例12の第2熱処理と工程Bの間で、焼結磁石に対してブラスト加工を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。なお、焼結磁石に対するブラスト加工は、不二製作所社製のブラスト装置(SGF−4B)を用い、共栄研磨材社製のガラスビーズ(GB♯100)を投射材として、0.3MPaの投射圧で各面に対してそれぞれ15秒間投射することによって行った。ブラスト加工された焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した。
工程Aとして、電子線加熱蒸着法により、99.9mass%のDyからなるターゲットを用いて焼結磁石(実施例1で使用した焼結磁石と同じもの)の表面に厚さ約5μmのDy被膜を形成した後、真空熱処理炉内において900℃で2時間熱処理を行い、焼結磁石に対してDyを拡散導入した。熱処理終了後、引き続き、実施例1の第2熱処理と同様の条件での追加熱処理を行った。
実施例1の工程Bにおいて用いた露点−35℃の大気のかわりに、露点−10℃の大気(酸素分圧20000Pa、水蒸気分圧290Pa、酸素分圧/水蒸気分圧=69.0)を用い、300℃で2時間の熱処理を行うこと以外は実施例1と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例2の工程Bにおいて用いた露点−35℃の大気のかわりに、露点−51℃の大気(酸素分圧20000Pa、水蒸気分圧5.8Pa、酸素分圧/水蒸気分圧=3448.3)を用い、340℃で1.5時間の熱処理を行うこと以外は実施例2と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例3の工程Bにおいて用いた露点−35℃の大気のかわりに、露点−28℃の大気(酸素分圧20000Pa、水蒸気分圧60Pa、酸素分圧/水蒸気分圧=333.3)を用い、420℃で20分間の熱処理を行うこと以外は実施例3と同様にして、表面改質された焼結磁石を得た。
実施例1で得た表面改質された焼結磁石を、特開2001−335921に記載の蒸着被膜形成装置のそれぞれの円筒形バレルに1.5kgずつ収容し、真空槽内を1×10−1Paになるまで真空排気した後、アルゴンガスを真空槽内の全圧が1.0Paになるように供給した。その後、バレルの回転軸を6.0rpmで回転させながら、バイアス電圧0.5kVの条件下、15分間グロー放電を行って磁石体試験片の表面を清浄化した。続いて、アルゴンガス圧1.0Pa、バイアス電圧1.0kVの条件下、蒸着材料として水素含有量が5ppmのAlワイヤ(JIS A1070に準拠するもの)をワイヤ送り速度3.3g/分で連続供給しながら、これを加熱して蒸発させ(ハース温度:1400℃)、30分間蒸着を行い、焼結磁石の表面にAl被膜を蒸着形成した。以上のようにして得たAl被膜を表面に有する焼結磁石をブラスト加工装置に投入し、窒素ガスからなる加圧気体とともに、投射材として平均粒径が120μmでモース硬度が6の球状ガラスビーズ粉末を、噴射圧0.2MPaにて10分間噴射して、Al被膜に対してショットピーニングを行い、表面に膜厚が約6μmのAl被膜を有する焼結磁石を得た。
実施例1の工程Bを行わないこと以外は実施例1と同様にして得た焼結磁石。
実施例2の工程Bを行わないこと以外は実施例2と同様にして得た焼結磁石。
実施例3の工程Bを行わないこと以外は実施例3と同様にして得た焼結磁石。
実施例12の工程Bを行わないこと以外は実施例12と同様にして得た焼結磁石。
実施例13の工程Bを行わないこと以外は実施例13と同様にして得た焼結磁石。
実施例3の工程Bのかわりに化成処理を行うこと以外は実施例3と同様にして得た表面に化成処理被膜を有する焼結磁石。なお、化成処理は、85mass%のリン酸水溶液を純水に添加して調製したリン酸濃度が0.07mol/Lの処理液(pH3.0)に、焼結磁石を浴温60℃で5分間浸漬した後、処理液から引き上げ、水洗し、160℃で35分間乾燥することで行った。
(使用したR−Fe−B系焼結磁石)
Nd:20.7、Pr:5.7、Dy:5.0、B:1.00、Co:0.9、Cu:0.1、Al:0.2、残部:Fe(単位:mass%)の組成を有する厚さ0.2〜0.3mmの合金薄片をストリップキャスト法により作製した。
次に、この合金薄片を容器に充填し、水素処理装置内に収容した。そして、水素処理装置内を圧力500kPaの水素ガスで満たすことにより、室温で合金薄片に水素吸蔵させた後、放出させた。このような水素処理を行うことにより、合金薄片を脆化し、大きさ約0.15〜0.2mmの不定形粉末を作製した。
上記の水素処理により作製した不定形粉末に対し粉砕助剤として0.04mass%のステアリン酸亜鉛を添加し混合した後、ジェットミル装置による粉砕工程を行うことにより、平均粒径が約3μmの微粉末を作製した。
こうして作製した微粉末をプレス装置により成形し、粉末成形体を作製した。具体的には、印加磁界中で粉末粒子を磁界配向した状態で圧縮し、プレス成形を行った。その後、成形体をプレス装置から抜き出し、真空炉により1050℃で4時間の焼結工程を行って焼結体ブロックを得、得られた焼結体ブロックに対し、100Paの圧力下、500℃で3時間の時効処理を行った後、表面研削加工して寸法調整することで、厚さ2mm×縦15mm×横18mmのR−Fe−B希土類系焼結磁石を得た。こうして得たR−Fe−B系焼結磁石は、超音波水洗を行った後、乾燥させて実験に供した(以下「焼結磁石」と称する)。
焼結磁石(実施例1で使用した焼結磁石と同じもの)に対し、実施例3の第2熱処理と表面研削加工と同様の処理を行った後、化成処理を行うことで得た表面に化成処理被膜を有する焼結磁石。なお、化成処理は、比較例6と同様にして行った。
焼結磁石(実施例1で使用した焼結磁石と同じもの)に対し、実施例3の表面研削加工と同様の処理のみを行った焼結磁石。
実施例1の工程Bを行うことなくAl被膜を形成すること以外は実施例18と同様にして得た表面にAl被膜を有する焼結磁石。
実施例1〜実施例17で得た表面改質された焼結磁石に対して80℃×90%RHの恒温恒湿試験を100時間行い、試験前からの磁石の重量変動を測定し、磁石の表面の酸化腐食による重量増加の程度でもって磁石の耐食性を評価した。結果を表1に示す。また、比較例1〜比較例9で得た各種の焼結磁石に対しても同様の恒温恒湿試験を行い、磁石の耐食性を評価した。結果を表2に示す。
実施例18と比較例10で得た表面にAl被膜を有する焼結磁石それぞれに対し、JIS−K5600−5−6に準拠したクロスカット試験を行い、Al被膜の密着性を評価した。その結果、実施例18のAl被膜については膜剥がれが全く認められなかったが、比較例10のAl被膜については36マス中31マスに膜剥がれが認められた。以上の結果から、実施例1の工程Bによる磁石の表面改質効果により、磁石の表面に優れた密着性をもってAl被膜を形成できるようになることがわかった。
実施例1〜実施例17で得た表面改質された焼結磁石は、処理を行う前の焼結磁石に比較して、250kA/m〜350kA/m程度の保磁力の向上が認められた。しかしながら、実用上問題となる残留磁束密度の低下は認められなかった。
2 RH拡散導入材
3 円筒形容器
4 ヒータ
5 蓋
6 排気装置
7 モータ
Claims (7)
- 軽希土類元素(RL)の一部が重希土類元素(RH)によって置換されてなるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法であって、処理対象とするR−Fe−B系焼結磁石に対してRHを外部から拡散導入する工程Aを行った後、酸素分圧が1×103Pa〜1×105Paで水蒸気分圧が1000Pa未満であり、かつ、酸素分圧と水蒸気分圧の比率(酸素分圧/水蒸気分圧)が1〜20000の雰囲気下、200℃〜500℃で熱処理を行う工程Bを行うことを特徴とする製造方法。
- 処理室内に、R−Fe−B系焼結磁石とRHを外部から拡散導入するためのRH拡散導入材を相対的に移動可能かつ近接または接触可能に収容し、両者を処理室内にて連続的または断続的に移動させながら500℃〜1000℃で熱処理を行うことで工程Aを行うことを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- FeをRHの他に含む合金からなるRH拡散導入材を使用することを特徴とする請求項2記載の製造方法。
- 合金のFe含有量が30mass%〜80mass%であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
- 工程Bの水蒸気分圧を45Pa以下とし、かつ、酸素分圧と水蒸気分圧の比率を450〜20000とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
- 工程Aを行った後のR−Fe−B系焼結磁石に対し、ブラスト加工および/または表面研削加工を行った後、工程Bを行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の製造方法によって製造されてなることを特徴とするRLの一部がRHによって置換されてなるR−Fe−B系焼結磁石。
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