JP4305922B2 - 希土類焼結磁石及び希土類焼結磁石の機械的強度及び耐食性の改善方法 - Google Patents
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Description
優れた磁気特性を有するR−T−B系希土類焼結磁石にもいくつかの解消すべき技術的な課題がある。その一つが耐食性である。つまり、R−T−B系希土類焼結磁石は、主構成元素であるR及びFeが酸化されやすい元素であるために耐食性が劣るのである。そのためR−T−B系希土類焼結磁石は、通常その表面に耐食性の保護膜を形成している。保護膜としては、金属めっき、樹脂が用途に応じて用いられている。しかし、より高い耐食性を備えるためには焼結磁石自体の耐食性を向上させることが望ましいことは言うまでもない。
また、R−T−B系希土類焼結磁石の他の技術的課題として、機械的強度が掲げられる。つまりR−T−B系希土類焼結磁石は粉末冶金的手法により製造されるために、その機械的強度が必ずしも十分ではなく、薄型の磁石へ適用する場合には加工が容易ではなかった。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、機械的強度が高くかつ優れた耐食性を備えた希土類焼結磁石を提供することを目的とする。
本発明の希土類焼結磁石において、炭素化合物層は、焼結体の粒界相上に被覆されていることが望ましい。
成形体を焼結する雰囲気中に配置する炭素含有組成物としては、例えばオレイン酸アミドを用いることができる。
<組織>
本発明が適用されるR−T−B系希土類焼結磁石は、よく知られているように、R2T14B結晶粒(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする遷移金属元素の1種又は2種以上)からなる主相と、この主相よりもRを多く含む粒界相とを少なくとも含む焼結体から構成される。なお、R−T−B系希土類焼結磁石を構成する相の一つである粒界相が腐食の起点となるといわれている。
本発明が適用されるR−T−B系希土類焼結磁石は、希土類元素(R)を25〜37wt%含有する。
ここで、本発明におけるRはYを含む概念を有しており、したがってY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuの1種又は2種以上から選択される。Rの量が25wt%未満であると、R−T−B系希土類焼結磁石の主相となるR2T14B相の生成が十分ではなく軟磁性を持つα−Feなどが析出し、保磁力が著しく低下する。一方、Rが37wt%を超えると主相であるR2T14B相の体積比率が低下し、残留磁束密度が低下する。またRが酸素と反応し、含有する酸素量が増え、これに伴い保磁力発生に有効な粒界相が減少し、保磁力の低下を招く。したがって、Rの量は25〜37wt%とする。望ましいRの量は28〜35wt%、さらに望ましいRの量は29〜33wt%である。
また、本発明のR−T−B系希土類焼結磁石は、Al及びCuの1種又は2種を0.02〜0.5wt%の範囲で含有することができる。この範囲でAl及びCuの1種又は2種を含有させることにより、得られる焼結磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Alを添加する場合において、望ましいAlの量は0.03〜0.3wt%、さらに望ましいAlの量は、0.05〜0.25wt%である。また、Cuを添加する場合において、望ましいCuの量は0.15wt%以下(0を含まず)、さらに望ましいCuの量は0.03〜0.12wt%である。
以下本発明による希土類焼結磁石の製造方法について説明する。
原料合金は、真空又は不活性ガス、好ましくはAr雰囲気中でストリップキャスティング、その他公知の溶解法により作製することができる。R2Fe14B結晶粒を主体とする合金(低R合金)と、低R合金よりRを多く含む合金(高R合金)とを用いる所謂混合法で本発明にかかる希土類焼結磁石を製造する場合も同様である。
磁場中成形における成形圧力は0.3〜3ton/cm2(30〜300MPa)の範囲とすればよい。成形圧力は成形開始から終了まで一定であってもよく、漸増または漸減してもよく、あるいは不規則変化してもよい。成形圧力が低いほど配向性は良好となるが、成形圧力が低すぎると成形体の強度が不足してハンドリングに問題が生じるので、この点を考慮して上記範囲から成形圧力を選択する。磁場中成形で得られる成形体の最終的な相対密度は、通常、50〜60%である。
また、印加する磁場は、12〜20kOe(960〜1600kA/m)程度とすればよい。また、印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状の磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
焼結体加工→バレル研磨→脱脂→水洗→エッチング(例えば硝酸)→水洗→電解メッキによる成膜→水洗→乾燥
本発明によるR−T−B系希土類焼結磁石に保護膜を形成することにより、耐食性は一段と向上する。
その後、スタンプミルによる粗粉砕、ジェットミルにより微粉砕を行って平均粒径4.0μmの粒径の微粉末を得た。なお、ジェットミルによる微粉砕を行う際に、オレイン酸アミドを0.1wt%添加した。
XRD:X線回折はCu管球を用い、3kWの出力にて測定を行った。
EPMA:島津製作所製EPMA1600を用い、測定条件を以下の通りとした。
分光結晶:Fe,Nd:LiF、C:LS12L、O:LS7A
加速電圧:15kV
照射電流:0.12μA
照射時間:50ms
測定点:200×200ポイント
範囲:100μm×100μm
また、得られた焼結体の抗折強度の測定、耐食性試験、残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)の測定を行った。その結果を表1に示す。なお、耐食性試験は、温度80℃、湿度20%の環境下に24時間放置した後の錆の面積率で評価した。残留磁束密度(Br)及び保磁力(HcJ)の測定は、B−Hトレーサーを用いて行った。
抗折強度の測定は、日本工業規格JIS R 1601に準じて行った。すなわち、図4に示すように、焼結体1を丸棒状の2本の支持具2a,2bの上に載置するとともに、焼結体1の長手方向中央位置に丸棒状の支持具2cを配置して荷重(抗折圧)を加えて抗折強度を測定した。抗折圧を加える方向は、配向方向とした。なお、焼結体1のサイズは、40mm×10mm×5mmとした。
これに対して、焼結体表面にRC0.4が形成されている試料No.2〜6は、試料No.1よりも抗折強度が向上するとともに、耐食性も改善されていることがわかる。RC0.4が形成されている試料No.2〜6の中では、炭素化合物(RC0.4)層の面積率が60%である試料No.4が最も抗折強度が高く、かつ耐食性も問題ないことから、炭素化合物(RC0.4)層の面積率は30〜80%、さらには50〜70%の範囲とすることが望ましい。なお、このように部分的な被覆によっても優れた耐食性を示すのは、腐食の起点となる粒界相上に優先的に炭素化合物(RC0.4)層が形成されたためと解される。
Claims (8)
- R2T14B相(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相と、前記主相よりRを多く含む粒界相とを含む焼結体からなり、
前記焼結体の表面にRC 0.4 から構成される炭素化合物層が被覆されており、前記炭素化合物層が前記焼結体の表面を被覆している面積率が20〜80%であることを特徴とする希土類焼結磁石。 - 前記粒界相上に前記炭素化合物層が被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の希土類焼結磁石。
- 前記焼結体は、R:25〜37wt%、B:0.5〜4.5wt%、Al及び/又はCu:0.02〜0.5wt%以下、Co:2wt%以下(0を含まず)、残部実質的にFeからなる組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類焼結磁石。
- 前記焼結体の抗折強度が250MPa以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の希土類焼結磁石。
- 前記炭素化合物層が前記焼結体の表面を被覆している面積率が50〜70%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の希土類焼結磁石。
- 前記焼結体の抗折強度が270MPa以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の希土類焼結磁石。
- R2T14B相(Rは希土類元素の1種又は2種以上、TはFe又はFe及びCoを必須とする1種又は2種以上の遷移金属元素)からなる主相と、前記主相よりRを多く含む粒界相とを含む焼結体からなる希土類焼結磁石の機械的強度及び耐食性を改善する方法であって、
所定組成の合金粉末を磁場中で成形して成形体を作製し、
炭素含有組成物を、前記成形体を焼結する雰囲気中に配置した状態で、前記成形体を焼結し焼結体とすることを特徴とする希土類焼結磁石の機械的強度及び耐食性の改善方法であって、
前記焼結により、前記炭素含有組成物はRC 0.4 となり、RC 0.4 が前記焼結体の表面を被覆している面積率が20〜80%であることを特徴とする希土類焼結磁石の機械的強度及び耐食性の改善方法。 - 前記成形体を焼結する雰囲気中に配置する炭素含有組成物は、オレイン酸アミドであることを特徴とする請求項7に記載の希土類焼結磁石の機械的強度及び耐食性の改善方法。
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