JP2016082142A - 磁石部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】磁石素体の表層部で不純物相が生成するような高温などの環境下においても、磁石素体とめっき膜との密着性と耐湿性を兼ね備えた磁石部材を提供する。
【解決手段】磁石部材30は、Fe16N2を含む窒化鉄磁石の磁石素体32の表層部にα‐FeまたはFe4Nのうち少なくとも一方を合計50質量%以上含み、磁石素体を被覆するめっき膜34を備える。めっき膜34はNiを含み、磁石素体32の容易磁化方向Mを垂線にもつ磁石部材30の面の周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率が、面の中央部36に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率よりも低い。
【選択図】図2
【解決手段】磁石部材30は、Fe16N2を含む窒化鉄磁石の磁石素体32の表層部にα‐FeまたはFe4Nのうち少なくとも一方を合計50質量%以上含み、磁石素体を被覆するめっき膜34を備える。めっき膜34はNiを含み、磁石素体32の容易磁化方向Mを垂線にもつ磁石部材30の面の周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率が、面の中央部36に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率よりも低い。
【選択図】図2
Description
本発明は、磁石部材に関する。
Fe16N2を含む窒化鉄磁石は、その磁気特性が高いことや希土類を使用しない環境配慮面から注目されている。しかしながら、Fe16N2を含む窒化鉄磁石は、酸化されやすいため、比較的耐湿性が低い。磁石の腐食は磁気特性の劣化及びばらつきを招く。この問題を解消するため、耐湿性を有する保護膜としてめっき膜を磁石の表面に形成する方法が広く採用されている。優れた耐湿性を得るために、磁石素体とめっき膜との密着性が十分である必要があり、たとえば下記特許文献1では、磁石素体の表面をSnめっき膜で被覆し、その上をNiまたはNi合金めっき膜で被覆する方法が提案されている。
上記特許文献1に記載の方法は、Niめっき皮膜の表面に別の皮膜を積層形成するための新たな工程が必須となり、製造工程の煩雑化やコストアップを伴うことが懸念される。さらに、特許文献1の磁石素体は、RE−B−Fe系焼結希土類磁石またはRE−TM−B系熱間加工希土類磁石について提案されているものである。Fe16N2を含む窒化鉄磁石において、Fe16N2は準安定化合物であることから、Fe4Nやα−Feといった不純物相の生成が起こる場合がある。めっき膜で被覆されたFe16N2を含む窒化鉄磁石において、磁石素体の表層部で不純物相が生成すると、磁石素体とめっき膜との界面にひずみが発生し、磁石素体とめっき膜との密着性が低下する。これにより、磁石素体とめっき膜との間に生じた隙間から水分が侵入することとなり、耐湿性が低下する。
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、磁石素体とめっき膜との高い密着性および耐湿性とを兼ね備えた磁石部材を提供することを目的とする。
本発明に係る磁石部材は、Fe16N2を含む窒化鉄磁石の磁石素体表層部にα‐FeまたはFe4Nのうち少なくとも一方を合計50質量%以上含み、前記磁石素体と、前記磁石素体を被覆するめっき膜によって構成される。
上記本発明に係る磁石部材は、磁石素体にめっき膜で被覆した場合に、磁石素体の表層部で不純物相が生成するような高温などの環境下においても、磁石素体とめっき膜との密着性および耐湿性を維持することができる。
本発明によれば、磁石素体の表層部で不純物相が生成するような高温などの環境下においても、磁石素体とめっき膜との高い密着性と耐湿性を兼ね備えた磁石部材が提供される。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
(磁石部材)
図1〜3に示すように、本実施形態に係る磁石部材30は、磁石素体32と、磁石素体32の表面全体を被覆するめっき膜34と、を備える。磁石素体32は扇形の板である。ただし、磁石素体32の形状は扇形に限定されない。磁石素体32の寸法は、磁石素体32の形状に関わらず一般的に縦4〜50mm×横5〜100mm×厚さ0.5〜10mm程度である。めっき膜34の厚さの平均値は、1〜30μm程度であればよい。
図1〜3に示すように、本実施形態に係る磁石部材30は、磁石素体32と、磁石素体32の表面全体を被覆するめっき膜34と、を備える。磁石素体32は扇形の板である。ただし、磁石素体32の形状は扇形に限定されない。磁石素体32の寸法は、磁石素体32の形状に関わらず一般的に縦4〜50mm×横5〜100mm×厚さ0.5〜10mm程度である。めっき膜34の厚さの平均値は、1〜30μm程度であればよい。
磁石素体32はFe16N2を含む窒化鉄磁石より構成される。なお、Fe16N2を含む窒化鉄磁石は、必要に応じて、Mn,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si,Cu,Al及びBi等の他の元素を更に含んでもよい。
磁石素体32の表層部は、α‐FeまたはFe4Nのうち少なくとも一方を合計50質量%以上含む。ここで表層部とは、磁石素体表面から50μmの深さまでの領域を意味する。α‐FeやFe4Nは、Fe16N2よりも熱的に安定であるため、磁石素体の表層部で不純物相が生成するような高温などの環境下においても、磁石素体とめっき膜との密着性を維持できる。磁石素体とめっき膜との高い密着性により、高い耐湿性を維持することが可能となる。なお、Fe16N2を含む窒化鉄磁石において、α‐FeまたはFe4Nの割合が増加することで磁気特性が悪化する要因となりうるが、磁石素体の表層部のみであればその限りではない。なお、かかる効果を十分に得るためには、磁石素体32の表層部に含まれる、α‐FeまたはFe4Nのうち少なくとも一方の合計値は、75質量%以上が好ましい。
めっき膜34は、Ni単体又はNi合金から構成される。めっき膜34は、磁石素体32の腐食を防止するための保護膜として機能する。
また、部品との高い接着性が求められる場合は、前記めっき膜中の硫黄量を制御することが効果的である。
具体的に、磁石部材30の扇形の表面Sは、磁石素体32の容易磁化方向Mを垂線にもつ。換言すれば、磁石部材30の表面Sの法線方向(normal direction)が、磁石素体32の容易磁化方向Mと平行である。なお、表面Sは平面であっても曲面であっても良い。曲面である表面S内のある点(例えば重心)の垂線が容易磁化方向Mと平行である場合、表面Sは、容易磁化方向Mを垂線にもつ面とみなす。
面Sの周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Mは、面Sの中央部36に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Cよりも低い。ここで中央部36とは、周縁部38に囲まれた領域を意味する。中央部36及び周縁部38は下記のように定義してもよい。まず、表面Sの輪郭(図形A)を50%の縮小率で相似変換した図形(図形B)を想定する。次に、図形Bの重心を図形Aの重心と一致させ、かつ図形Bの各辺とそれらに対応する図形Aの各辺とが平行になるように、図形Bを図形Aに重ねる。このとき、図形Bで表される領域は中央部と定義される。また、図形Bの外側であり、かつ図形Aの内側である領域は、周縁部と定義される。
周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Mは、中央部36(例えば表面Sの重心)に位置するめっき膜中の硫黄の含有率[S]Cの0.80〜0.95倍であることが好ましい。これにより、磁石部材の耐湿性及び接着性が向上し易くなる。なお、[S]Cは100〜3000質量ppm程度であり、[S]Mは50〜2000質量ppm程度である。[S]Cが高いほど接着性が良好となる傾向がある。[S]Cが低いほど接着性が低下する傾向がある。[S]Mが高いほど耐湿性が劣化する傾向がある。つまり、[S]Mが低いほど耐湿性が向上する傾向がある。また、[S]M及び[S]Cが、例えば20質量ppmを下回るほど過少の場合、めっき膜34の硬度が低下する傾向にある。すなわち、めっき膜34に傷がつき易く傷部が腐食の原因となる恐れがある。一方、[S]M及び[S]Cが、例えば5000質量ppmを上回るほど過多の場合、めっき膜34が脆くなる傾向にある。すなわち皮膜応力などによりめっき膜34に割れが発生し易く、割れ部が腐食の原因となる恐れがある。ただし、[S]M及び[S]Cが上記数値範囲外であっても、本発明の作用効果は奏される。なお、めっき膜34中の硫黄の含有率は、表面Sの周縁部38からの重心へ向かって徐々に増加してもよい。このように、めっき膜34中の硫黄の含有率を調整することで、磁石素体表層部のα‐FeまたはFe4Nを調整して高められた耐湿性を更に高めることが可能となる。
めっき膜34は電気めっきにより形成されることが好ましい。電気めっきにより形成されためっき膜34では、面S内の周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率が、面S内の中央部36に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率よりも低くなり易い。また、周縁部38におけるめっき膜34は、中央部36におけるめっき膜34よりも厚いことが好ましい。換言すれば、周縁部38は容易磁化方向Mにおいて中央部36よりも突出しており、表面Sは凹状であることが好ましい。表面Sが凹状であることにより、表面Sとヨーク等の金属部品との接着強度を高め易くなる。めっき膜34を電気めっきで形成することにより、凹状の表面を形成することができる。表面Sが凹状である場合、周縁部38におけるめっき膜34の厚さは、2〜50μm程度であればよい。表面Sが凹状である場合、中央部36におけるめっき膜34の厚さは、1〜30μm程度であればよい。
本実施形態に係る磁石部材30は、ボイスコイルモータ(VCM:Voice Coil Motor)等のモータ用磁石として好適である。磁石部材30はモータに組み込まれ、磁気回路を形成する。モータに組み込まれる磁石部材30は、図4に示すように、接着剤42を介して、主に珪素鋼板で構成されるヨーク40の表面に固定される。一般的に、磁器回路を形成する磁石部材30は、その容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sがヨーク表面に対向するように、ヨークに固定される。ヨークと磁石部材30とは、モータの高速回転化に対応するため、強固に接着される必要がある。
Ni又はNi合金を含むめっき膜34が電気めっきにより磁石素体32の表面に形成される場合、一般に、電気めっき中の磁石素体32の周縁部における電流密度が中央部(重心近傍)に比べて高くなる傾向がある。その結果、完成した磁石部材30の表面Sの周縁部38におけるめっき膜34の厚みが中央部36に比べて厚くなる傾向がある。つまり、めっき膜34が形成された磁石部材30の表面Sでは、中央部36が周縁部38よりも僅かに凹む傾向がある。表面Sの凹んだ部分に充填された接着剤42とヨーク表面とを面接触させることにより、十分な接着強度が発現する。
磁石素体の表面が化学的に安定であり、めっき膜34中の硫黄の含有率が高いほど、水酸基やスルホン基等の官能基がめっき膜34の表面Sに発現し易くなる。これらの官能基は、接着剤42に作用し、表面Sとヨーク表面との接着性に影響する。表面Sにおいてこれらの官能基数が多い部分ほど、磁石部材の表面Sとヨーク表面との接着性が向上し易い。本実施形態では、面Sの周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Mが、面Sの中央部36位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Cよりも低い。したがって、中央部36は周縁部38と比較してより強固にヨーク表面に対して接着・固定される。このように、磁石部材30の表面Sの中央部36と周縁部38とでは接着強度が異なり、中央部36が周縁部38よりも強くヨークに接着されているため、めっき膜34と接着剤42との界面で応力緩和効果が発現し、表面S全体とヨーク表面との十分な接着力が得られる、と本発明者らは考える。特に、高湿環境では、Fe16N2磁石素体とめっき膜との密着性や耐湿性、および、めっき膜表面の官能基が接着性に強く影響し、応力緩和効果が顕著に発現する、と本発明者らは考える。なお、本発明において磁石部材30とヨーク40との接着性が向上する要因は、必ずしも上記のものに限定されない。
電気めっきで形成されためっき膜34は、表面Sの周縁部38において相対的に凸形状となる。凸形状のめっき膜34(表面Sの周縁部38)はヨーク表面と線接触する。よって、表面Sの周縁部38は、中央部36に比べて、接着強度の向上に寄与しない。表面Sに過剰の接着剤を塗布し、表面Sの周縁部38とヨークとの間に十分な接着剤を介在させることで、両者の接着性を向上させることもありえる。しかし、磁石部材30の製造コストを抑えるためには、過剰な接着剤の使用は避けるべきである。したがって、凸形状の周縁部38とヨークとの間には接着剤42が回り込み難く、凸形状の周縁部38はヨーク(珪素鋼板)と直接接触し易い。NiまたはNi合金からなるめっき膜34とヨーク40(珪素鋼板)は、それぞれ金属であるため、両者が直に接触することで接触電位差が生じ、両者の接触箇所が腐食の起点となり得る。特に、高湿環境でモータを使用した場合、周縁部38及びヨーク40の接触箇所における結露又は水膜の付着により、両者間に接触電位差による局部電池が形成されるため、両者の接触箇所で腐食が進行し易いことが懸念される。
めっき膜34中の硫黄の含有率が低いほど、めっき膜34自体の腐食電位が貴にシフトする結果、めっき膜34自体の耐湿性が向上する。本実施形態では、周縁部38におけるめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Mが、中央部36におけるめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Cよりも低い。つまり、ヨークと直に接触し、局部電池を形成しうる周縁部38のめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Mが低い。これにより、周縁部38におけるめっき膜34の腐食電位が貴にシフトする。その結果、周縁部38を含めた磁石部材30全体の耐湿性が向上する、と本発明者らは考える。本発明では、磁石素体表層部のα‐FeまたはFe4Nを調整することで、磁石素体とめっき膜との密着性が高まることで得られる耐湿性が、めっき膜34の調整によりさらに優れたものになる。なお、本発明において磁石部材の耐湿性が向上する要因は、必ずしも上記のものに限定されない。
(磁石部材の製造方法)
以下では、上記の磁石部材30の製造方法について説明する。
以下では、上記の磁石部材30の製造方法について説明する。
<磁石素体の作製工程>
まず、磁石部材30の内部に配置される磁石素体32を作製する。磁石素体32の作製では、まず原料となる純鉄粉末を準備する。なお、原料純鉄粉末は、必要に応じて、Mn,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si,Cu,Al及びBi等の他の元素を更に含んでもよい。
まず、磁石部材30の内部に配置される磁石素体32を作製する。磁石素体32の作製では、まず原料となる純鉄粉末を準備する。なお、原料純鉄粉末は、必要に応じて、Mn,Nb,Zr,Ti,W,Mo,V,Ga,Zn,Si,Cu,Al及びBi等の他の元素を更に含んでもよい。
次に、純鉄粉末を窒化処理して窒化鉄粉末を得る。窒化処理の温度は100〜200℃である。窒化処理の温度が100℃未満の場合には窒化処理が十分に進行しない。窒化処理の温度が200℃を超える場合には、窒化が進行しすぎるため、Fe16N2は得られない。より好ましい還元温度は120〜180℃である。
窒化処理の時間は特に限定されないが、1〜48時間が好ましい。48時間を超えると窒化温度によってはFe16N2化合物相ではない異相の割合が多くなってしまう。1時間未満では十分な窒化ができない場合が多い。より好ましくは3〜24時間である。
窒化処理の雰囲気は、NH3雰囲気が望ましく、NH3の他、N2、H2などを混合させてもよい。
次に、この窒化鉄粉末を磁場中で加圧成形することにより、成形体を得る。この加圧成形工程において窒化鉄粉末が設置される磁場の方向は、成形体(磁石素体)の容易磁化方向と略一致する。このとき、窒化鉄粉末表面に樹脂や潤滑剤を付与してもよい。樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂がある。なかでも、圧縮成形をする場合に用いる樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂がより好ましい。また、射出成形をする場合に用いる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましい。
また、磁性粉と樹脂との含有比率は、磁性粉100質量%に対して、樹脂を例えば30質量%以下含むことが好ましい。磁性粉100質量%に対して、樹脂の含有量が30質量%と超えると、十分に優れた磁気特性が得られ難くなる傾向がある。
加圧成形時に窒化鉄粉末に印加する磁場の強度は800kA/m以上であることが好ましい。また、成形時に窒化鉄粉末に加える圧力は1〜20ton/cm2程度、加熱温度は100〜300℃程度とすることができる。なお、成形方法としては、一軸加圧法またはCIPなどの等方加圧法のいずれを用いてもよい。
成形体(磁石素体)を必要に応じて所定の形状に加工してもよい。加工方法としては、例えば、切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。なお、このような加工は必ずしも行う必要はない。なお、加工を行う場合は、磁石素体の少なくとも一つの表面が容易磁化方向Mを垂線に持つように、磁石素体を所定の形状に加工する。容易磁化方向Mを垂線に持つ面は、平面であっても曲面であっても良い。
成形体(磁石素体)の表層部にα‐Feを含ませる場合には、成形体を還元処理する。還元処理温方法としては、水素ガス雰囲気において300〜500℃で1〜300分程度とすることができる。
成形体(磁石素体)の表層部にFe4Nを含ませる場合には、成形体を窒化処理する。窒化処理温方法としては、アンモニアガス雰囲気において100〜200℃で1〜10時間程度とすることができる。
成形体(磁石素体)の表層部にα‐FeおよびFe4Nを含ませる場合には、成形体をプラズマ処理する。プラズマ処理方法としては、低温プラズマ処理であることが好ましく、窒素ガスやアルゴンガス(不活性ガス)等を処理ガスとして行なうことが好ましい。プラズマ処理条件には、特に制限はなく、電極配置、印加電流、プラズマ出力、処理時間、動作圧力等は、通常のプラズマ処理条件と同様とすればよい。通常、プラズマ出力は0.5〜5kW、処理時間は1〜1000秒、動作圧力は1Pa〜1.33kPaとする。また、処理ガスの流量は、5〜100ml/minとすればよい。また、プラズマ処理は、大気中プラズマ処理であってもよい。大気中プラズマ処理は、例えば株式会社キーエンスのプラズマ照射器ST−7000により行うことができる。
成形体(磁石素体)に対しては、表面の凹凸や表面に付着した不純物等を除去するため、適宜、洗浄を行ってもよい。洗浄方法としては、例えば、酸溶液を用いた酸洗浄(エッチング)が好ましい。酸洗浄によれば、磁石素体の表面の凹凸や不純物を溶解除去して平滑な表面を有する磁石素体が得られ易くなる。
成形体が樹脂を含む場合には、成形体表面の樹脂を除去するため、適宜、バレル研磨や洗浄を行ってもよい。洗浄方法としては、用いる樹脂の種類に応じた方法を用いればよく、例えばプラズマや紫外線などのエネルギー照射や、樹脂溶解有機溶剤による洗浄が好ましい。成形体表面の樹脂を除去することで、めっき膜の密着性が良好となる。
また、上記酸洗浄後の磁石素体を水洗して、酸洗浄に用いた処理液を磁石素体から除去した後、磁石素体の表面に残存した少量の未溶解物や残留酸成分を完全に除去するために、磁石素体に対して超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。超音波洗浄は、例えば、磁石素体の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中や、アルカリ性溶液中等で行うことができる。超音波洗浄後には、必要に応じて磁石素体を水洗してもよい。また、脱脂処理で用いる脱脂液は、通常の鉄鋼用に使用されているものであれば特に限定されない。一般にNaOHを主成分として、その他添加剤は特定するものでない。
このような酸洗浄は磁石素体表層部に形成したα‐FeまたはFe4Nを完全には除去しない条件を適宜調整すればよい。
前処理を行った磁石素体の表面から少量の未溶解物、残留酸成分を完全に除去するため、超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ないイオン交換水の中で行うのが好ましい。また、前記超音波洗浄の前後、及び前記前処理の各過程で必要に応じて同様な水洗を行ってもよい。
本実施形態では、以上の工程を得て、容易磁化方向Mを垂線に持つ扇形の表面Ssを有する磁石素体32を形成する。磁石素体32の表面Ssは、完成した磁石部材の表面Sに対応する。
<めっき工程>
めっき工程では、磁石素体32の表面上に、NiまたはNi合金めっきからなるめっき膜34(保護層)を形成する。めっき膜34の形成にはスパッタや蒸着法を用いても良い。めっき膜34が湿式めっき層である場合、通常の電解めっき(電気めっき)又は無電解めっきによってめっき膜34を形成することができる。具体的には、電解Niめっき又は無電解Niめっきによってめっき膜34を形成することができる。
めっき工程では、磁石素体32の表面上に、NiまたはNi合金めっきからなるめっき膜34(保護層)を形成する。めっき膜34の形成にはスパッタや蒸着法を用いても良い。めっき膜34が湿式めっき層である場合、通常の電解めっき(電気めっき)又は無電解めっきによってめっき膜34を形成することができる。具体的には、電解Niめっき又は無電解Niめっきによってめっき膜34を形成することができる。
電解Niめっきでは、めっき浴を準備し、バレル槽又は引っ掛け治具を用いて磁石素体32をめっき液に浸漬する。そして、カソードと電気的に接続した磁石素体32とアノードと間に通電することにより、めっき膜34を磁石素体32の表面に形成することができる。Niの電気めっきに用いるめっき液(めっき浴)としては、ワット浴、スルファミン酸浴、ほうフッ化浴、臭化Ni浴などが挙げられる。ただし、いずれのめっき浴も硫黄化合物を含む。めっき浴が含む硫黄化合物に由来する硫黄がめっき膜34中に導入される。硫黄化合物としては、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、2,5−ナフタレンジスルホン酸、アリルスルホン酸又はベンゼンスルホン酸等のスルホン酸塩、サッカリン又はサッカリンナトリウム等の芳香族スルホンイミド、パラトルエンスルホンアミド又はベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド、スルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸等のスルフィン酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、チオ尿素、チオセミカルバジド又はメチルチオセミカルバジド等のチオ尿素基を有する化合物、及びこれらの有機化合物の塩、誘導体又は誘導体塩等のいずれか1種以上を用いればよい。めっき液中の硫黄化合物の含有率は、所望の[S]M及び[S]Cに応じて適宜調整すればよい。
無電解Niめっきでは、ニッケルイオンを所定量含有するとともに、例えば、次亜リン酸ナトリウム等の還元剤、クエン酸ナトリウム等の錯化剤、及び硫酸アンモニウム等を含有するニッケル化学めっき液(温度:80℃程度)に、磁石素体32を浸漬することによって、めっき膜34を磁石素体32の表面に形成することができる。ただし、いずれのめっき浴も上記の硫黄化合物を含む。
本実施形態では、電気めっき(電解Niめっき)を用いて、めっき膜34を形成することが好ましい。以下に説明するように、電気めっきを用いると、容易磁化方向Mにおいて周縁部38が中央部36よりも突出した凹状の表面Sを形成し易くなる。また、電気めっきを用いることにより、面Sの周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Mを、面Sの中央部36に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Cよりも低い値に制御することができる。具体的な電気めっきの方法としては、下記のラックめっき法及びバレルめっき法が挙げられる。
電気めっきによりめっき膜34を形成する場合、磁石素体32の周縁部(表面Ssの周縁部)は電界が多方向から集中するために電流密度が大きくなる傾向にある。一方、周縁部に囲まれる部分では印加される電界が垂直方向のみであるために電流密度が小さくなる傾向にある。したがって、この電流密度の関係を利用することによって、得られる磁石部材30の周縁部32におけるめっき膜34の厚さを中央部36よりも大きくすることが可能である。
ラックめっき法では、めっき液中で被めっき物である磁石素体32をカソード端子で直接保持する。そして、磁石素体32の表面Ssをアノードに対向させて、通電することによりめっきを行う。磁石素体32とアノードとの距離、位置関係のほか、遮蔽板や犠牲陰極を適宜配置することにより、磁石素体32上でのめっき電流密度の分布を制御することが可能であり、めっき膜34の厚み分布を制御することが可能である。
バレルめっき法では、磁石素体32と導電性メディアの混合物を内包するめっきバレルにカソード端子を挿し入れ、めっき液中でめっきバレルをアノードに対向させてめっきを行う。磁石素体32の形状・数量と導電性メディアの形状・数量との組み合わせにより、導電性メディアが犠牲陰極として機能する。その結果、磁石素体32上のめっき電流密度の分布を制御することが可能であり、磁石素体32の表面Ssに形成されるめっき膜34の厚みの分布を制御することが可能となる。
以上のように、電気めっきでは、めっき液中の硫黄化合物の濃度、電流密度、磁石素体32の表面Ssのアノードに対する向き、表面Ssとアノードとの距離、および表面Ssとアノードとの間の遮蔽板や犠牲陰極の位置等をそれぞれ適宜調整する。これにより、周縁部38におけるめっき膜34の厚さ、中央部36におけるめっき膜34の厚さ、周縁部38に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]M、及び中央部36に位置するめっき膜34中の硫黄の含有率[S]Cを所望の値に制御できる。また、ラックめっき法又はバレルめっき法と、各めっき法に適した特定の組成のめっき液とを組み合わせることにより、周縁部38及び中央部36におけるめっき膜34の厚さ、硫黄の含有率[S]M,[S]Cを調整することもできる。
なお、磁石素体32とめっき膜34との間に他の膜を形成しても良い。つまり、磁石素体32の表面上に他の膜を形成した後で、磁石素体32をめっき膜34で被覆しても良い。他の膜により、磁石素体32とめっき膜34との密着性が向上させることができる。他の膜としては、Al、Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu及びZnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属又は当該金属を含む合金を含有す膜等が上げられる。このような他の膜は、スパッタや蒸着法、電解めっき、無電解めっき等の公知の手法により用いて形成すればよい。
以上、本実施形態に係る磁石部材及びその製造法について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
磁石部材の形状は扇形に限られない。容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sが平面である磁石部材としては、扇形のほか、例えば、略直方体型部材、略円板型部材等が挙げられる。略直方体型部材は略長方形の表面Sを有する。略円板型部材は、略円形の表面Sを有する。
容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sが曲面である磁石部材としては、例えば、略円筒型部材、略三日月型部材などが挙げられる。略円筒型部材は円筒型の表面Sを有する。円筒型部材の容易磁化方向Mは、部材の長軸から外周面に向かって放射状に延び、表面Sと直交する。磁石素体の略三日月型部材は湾曲した長方形状の表面Sを有する。
容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sが曲面である場合、その曲面を平面に展開する。その平面において上記の同様の方法で中央部および周縁部を定義することができる。
容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sが、例えば円筒又は円柱の側面のように周回する曲面である場合、その曲面を平面Aに展開する。その平面Aを、表面Sの周回方向と直交する方向にのみ50%の縮小率で相似変換して平面Bを構成する。この平面Bにおいて上記の同様の方法で中央部および周縁部を定義することができる。
容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sが平面である磁石部材は、例えば、永久磁石同期モータ(IPMモータ)、リニア同期モータ、ボイスコイルモータ等に用いられる。これらのモータは一般的に平面をもつヨークを備える。そのヨーク平面に本発明の磁石部材が接着固定される。
容易磁化方向Mを垂線にもつ表面Sが曲面である磁石部材は、例えば、永久磁石同期モータ(SPMモータ)、振動モータ等に用いられる。これらのモータには一般的に曲面をもつヨークを備える。そのヨーク曲面に本発明の磁石部材が接着固定される。
なお、本発明の磁石部材の形状、磁石部材が用いられるモータの種類は上記のものに限定されない。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<磁石素体の作製工程>
市販の純鉄粉末を熱処理炉に投入し、アンモニアガスを0.1L/minにて流しながら、160℃で12時間窒化処理を行うことにより窒化鉄粉末を得た。この窒化鉄粉末を、圧縮成形機によって磁場中で加圧10ton/cm2で成形することにより、成形体を得た。
<磁石素体の作製工程>
市販の純鉄粉末を熱処理炉に投入し、アンモニアガスを0.1L/minにて流しながら、160℃で12時間窒化処理を行うことにより窒化鉄粉末を得た。この窒化鉄粉末を、圧縮成形機によって磁場中で加圧10ton/cm2で成形することにより、成形体を得た。
得られた成形体を、30mm×60mm×5mmの寸法を有する直方体に加工し、さらにバレル研磨処理により面取りを行って磁石素体を得た。なお、磁石素体の容易磁化方向Mが30mm×60mmの大きさの面(表面Ss)の垂線方向となるように成形体を加工した。
得られた成形体を熱処理炉内に設置し、水素ガスを2L/minにて流しながら、400℃で30分還元処理を行うことにより、表層部にα‐Feを含む磁石素体を得た。
<前処理工程>
磁石素体に、アルカリ脱脂処理、水洗、硝酸溶液による酸洗浄処理、水洗、超音波洗浄によるスマット除去、水洗を順次行う前処理を施した。
磁石素体に、アルカリ脱脂処理、水洗、硝酸溶液による酸洗浄処理、水洗、超音波洗浄によるスマット除去、水洗を順次行う前処理を施した。
<めっき工程>
以下の組成を有するめっき浴(液種:S0)を調製した。めっき浴のpHは4.0に調整した。めっき浴の温度は50℃に調整した。
[S0の組成]硫酸ニッケル・六水和物:270g/L、塩化ニッケル・六水和物:50g/L、ホウ酸:45g/L、サッカリンナトリウム:5g/L、クマリン:0.3g/L。
以下の組成を有するめっき浴(液種:S0)を調製した。めっき浴のpHは4.0に調整した。めっき浴の温度は50℃に調整した。
[S0の組成]硫酸ニッケル・六水和物:270g/L、塩化ニッケル・六水和物:50g/L、ホウ酸:45g/L、サッカリンナトリウム:5g/L、クマリン:0.3g/L。
前処理した磁石素体をめっき浴S0に浸漬し、バレルめっき法による電気めっき処理を行った。電気めっき処理は、平均電流密度Dkを0.3A/dm2に調整して、磁石素体の表面全体に厚みが5μm程度であるめっき膜が形成されるまで行った。以上の工程により、実施例1の磁石部材を得た。
<表層部のα−FeおよびFe4Nの測定>
磁石素体の表層部のα−FeおよびFe4Nの割合を、メスバウアー分光分析装置によって測定した。測定試料には、磁石素体の任意の箇所の表層部を、機械研磨によって厚さ20umの5mm角片として取り出したものを用いた。測定点数6点の平均値を算出し、α‐FeおよびFe4Nの割合とした。さらに、算出された組成比を質量%に換算した。
磁石素体の表層部のα−FeおよびFe4Nの割合を、メスバウアー分光分析装置によって測定した。測定試料には、磁石素体の任意の箇所の表層部を、機械研磨によって厚さ20umの5mm角片として取り出したものを用いた。測定点数6点の平均値を算出し、α‐FeおよびFe4Nの割合とした。さらに、算出された組成比を質量%に換算した。
<密着性試験1>
磁石素体とめっき膜との密着性試験を、碁盤目テープ法(JIS K5400)により評価した。すなわち、磁石部材表面の1cm四方の領域に1mm間隔の碁盤目状(100箇所)の切り込みを入れる。その上に、テープを1枚貼り、そのテープをはがす際に、めっき膜が磁石素体から剥離しなかった箇所の数により密着性を評価した。(密着性)=(めっき膜が剥離しなかった箇所)/100、とした。たとえば、100箇所のうち、めっき膜が剥離した箇所が1箇所の場合には、上記の密着性は99/100となる。
磁石素体とめっき膜との密着性試験を、碁盤目テープ法(JIS K5400)により評価した。すなわち、磁石部材表面の1cm四方の領域に1mm間隔の碁盤目状(100箇所)の切り込みを入れる。その上に、テープを1枚貼り、そのテープをはがす際に、めっき膜が磁石素体から剥離しなかった箇所の数により密着性を評価した。(密着性)=(めっき膜が剥離しなかった箇所)/100、とした。たとえば、100箇所のうち、めっき膜が剥離した箇所が1箇所の場合には、上記の密着性は99/100となる。
<密着性試験2>
100℃にて1000時間保持した後の磁石部材について、前記密着性試験を行った。
100℃にて1000時間保持した後の磁石部材について、前記密着性試験を行った。
<耐湿性試験1>
磁石部材を、85℃90%RHの高温高湿環境下に1000時間保持し、磁石部材周辺の外観の変化を観察した。
磁石部材を、85℃90%RHの高温高湿環境下に1000時間保持し、磁石部材周辺の外観の変化を観察した。
<[S]M、[S]Cの測定>
磁石素体の容易磁化方向Mを垂線にもつ磁石部材の面Sの周縁部に位置するめっき膜中の硫黄の含有率[S]M(単位:質量ppm)、及び面Sの中央部(重心)に位置するめっき膜中の硫黄の含有率[S]C(単位:質量ppm)を蛍光X線分析法により測定した。蛍光X線分析法では、コリメーター径を1mmとした。
なお、磁石部材の面Sとは、磁石素体の表面Ss(30mm×60mmの大きさの面)に対応する表面である。磁石素体の表面Ss及び磁石部材の表面Sの各垂線は、磁石素体の容易磁化方向Mに平行である。
磁石素体の容易磁化方向Mを垂線にもつ磁石部材の面Sの周縁部に位置するめっき膜中の硫黄の含有率[S]M(単位:質量ppm)、及び面Sの中央部(重心)に位置するめっき膜中の硫黄の含有率[S]C(単位:質量ppm)を蛍光X線分析法により測定した。蛍光X線分析法では、コリメーター径を1mmとした。
なお、磁石部材の面Sとは、磁石素体の表面Ss(30mm×60mmの大きさの面)に対応する表面である。磁石素体の表面Ss及び磁石部材の表面Sの各垂線は、磁石素体の容易磁化方向Mに平行である。
<ヨーク貼り付け>
磁石部材の表面Sに0.008〜0.010gの接着剤を塗布した。接着剤を塗布した表面Sをヨークに貼り付け、磁石部材をヨークに圧着して、圧着体を形成した。ヨークとしては、珪素鋼板(材質:SPCC、寸法:縦80mm×横80mm×厚み1mm)を用いた。接着剤としては、嫌気性アクリル接着剤(日本ロックタイト(株)製ロックタイト638UV)を用いた。
磁石部材の表面Sに0.008〜0.010gの接着剤を塗布した。接着剤を塗布した表面Sをヨークに貼り付け、磁石部材をヨークに圧着して、圧着体を形成した。ヨークとしては、珪素鋼板(材質:SPCC、寸法:縦80mm×横80mm×厚み1mm)を用いた。接着剤としては、嫌気性アクリル接着剤(日本ロックタイト(株)製ロックタイト638UV)を用いた。
予め100℃に昇温された乾燥機内に圧着体を30分保持した後、圧着体に対して以下の圧縮せん断試験1,2及び耐湿性試験2を行った。
<圧縮せん断試験1>
圧着体について、室温で5mm/分の速度で圧縮せん断試験を行った。
圧着体について、室温で5mm/分の速度で圧縮せん断試験を行った。
<耐湿性試験2>
圧着体を、85℃90%RHの高温高湿環境下に1000時間保持し、ヨークに接着された磁石部材周辺の外観の変化を観察した。
圧着体を、85℃90%RHの高温高湿環境下に1000時間保持し、ヨークに接着された磁石部材周辺の外観の変化を観察した。
<圧縮せん断試験2>
耐湿性試験2の場合と同様の高温高湿環境下に1000時間保持した後の圧着体について、室温で5mm/分の速度で圧縮せん断試験を行った。
耐湿性試験2の場合と同様の高温高湿環境下に1000時間保持した後の圧着体について、室温で5mm/分の速度で圧縮せん断試験を行った。
(実施例2)
実施例1の成形体熱処理の条件を370℃10分間とした以外は同様の操作を行った。
(実施例3)
実施例1の成形体熱処理の条件を400℃20分間とした以外は同様の操作を行った。
(実施例4)
実施例1の成形体熱処理の条件をアンモニアガス0.1L/min、120℃2時間とした以外は同様の操作を行った。
(実施例5)
実施例1の成形体熱処理の代わりに、キーエンス社製プラズマ照射器ST−7000を使用し、5秒間プラズマ照射することによりプラズマ処理を施しした以外は同様の操作を行った。
(比較例1)
実施例1の成形体熱処理の条件を350℃10分間とした以外は同様の操作を行った。
実施例1の成形体熱処理の条件を370℃10分間とした以外は同様の操作を行った。
(実施例3)
実施例1の成形体熱処理の条件を400℃20分間とした以外は同様の操作を行った。
(実施例4)
実施例1の成形体熱処理の条件をアンモニアガス0.1L/min、120℃2時間とした以外は同様の操作を行った。
(実施例5)
実施例1の成形体熱処理の代わりに、キーエンス社製プラズマ照射器ST−7000を使用し、5秒間プラズマ照射することによりプラズマ処理を施しした以外は同様の操作を行った。
(比較例1)
実施例1の成形体熱処理の条件を350℃10分間とした以外は同様の操作を行った。
実施例1と同様の方法で、実施例2〜5及び比較例1の各磁石部材の表層部のα−FeおよびFe4Nの測定、密着性試験1、密着性試験2、耐湿性試験1を行った。結果を表1に示す。
密着性は、100/100を良好とした。
表1に示す「耐湿性」とは、耐湿性試験1の評価結果を意味する。「A」とは、磁石部材周辺の外観に変化がなかったことを意味する。「B」とは、磁石部材周辺の一部が変色したことを意味する。「C」とは、磁石部材周辺の大部分が変色したことを意味する。評価がA、B、Cの順に、表面Sの周縁部の耐湿性に優れている。
(実施例6〜15、比較例2〜5)
実施例1の磁石素体を用いて実施例6〜15の各磁石部材を、さらに比較例1の磁石素体を用いて比較例2〜5の各磁石部材を作製した。この際に、表2に示すめっき法とめっき浴を用いてめっき工程を実施した。また、実施例6〜15及び比較例2〜5の各磁石部材のめっき工程では、電流密度Dk、めっき浴のpHを表2に示す値に調整した。これらの事項以外は、実施例1と同様の方法で実施例6〜11を、比較例1と同様の方法で比較例2〜5の各磁石部材及び圧着体を作製した。なお、表2に示す各めっき浴(液種:S1〜S4)の組成は以下の通りである。なお、いずれのめっき浴の溶媒も水である。
実施例1の磁石素体を用いて実施例6〜15の各磁石部材を、さらに比較例1の磁石素体を用いて比較例2〜5の各磁石部材を作製した。この際に、表2に示すめっき法とめっき浴を用いてめっき工程を実施した。また、実施例6〜15及び比較例2〜5の各磁石部材のめっき工程では、電流密度Dk、めっき浴のpHを表2に示す値に調整した。これらの事項以外は、実施例1と同様の方法で実施例6〜11を、比較例1と同様の方法で比較例2〜5の各磁石部材及び圧着体を作製した。なお、表2に示す各めっき浴(液種:S1〜S4)の組成は以下の通りである。なお、いずれのめっき浴の溶媒も水である。
[S1の組成]硫酸ニッケル・六水和物:200g/L、塩化ニッケル・六水和物:70g/L、ホウ酸:45g/L、サッカリンナトリウム:3g/L、クマリン:0.3g/L。
[S2の組成]硫酸ニッケル・六水和物:150g/L、塩化ニッケル・六水和物:100g/L、ホウ酸:45g/L、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸ナトリウム:2g/L、1,4−ブチン−2−ジオール:0.1g/L。
[S3の組成]スルファミン酸ニッケル・四水和物:300g/L、塩化ニッケル・六水和物:30g/L、ホウ酸:30g/L、サッカリンナトリウム1g/L。
[S4の組成]スルファミン酸ニッケル・四水和物:200g/L、塩化ニッケル・六水和物:50g/L、ホウ酸:30g/L、1,5−ナフタレンジスルホン酸ナトリウム:1g/L。
実施例1と同様の方法で、実施例6〜15及び比較例2〜5の各磁石部材の[S]M,[S]Cの測定、圧縮せん断試験1,2、耐湿性試験2を行った。各実施例及び比較例の[S]M、[S]C、圧縮せん断試験1,2、耐湿性試験2の結果を表2に示す。なお、いずれの実施例及び比較例においても、周縁部の位置に拠らず[S]Mは略一定であった。
表1における「差分」とは、{([S]C−[S]M)/[S]C}×100を表す。
表2に示す「初期接着性」とは、圧縮せん断試験1の評価結果を意味する。「A」とは、圧縮せん断試験1で測定された圧縮せん断強度が5MPa以上であったことを意味する。「B」とは、圧縮せん断強度が4MPa以上5MPa未満であったことを意味する。なお、圧着体の圧縮せん断強度とは、ヨークから磁石部材を剥離させるために要する圧力である。圧縮せん断試験1により測定した圧縮せん断強度が高いほど、磁石部材のヨーク対する初期の接着性が優れている。
表2に示す「耐湿性」とは、耐湿性試験2の評価結果を意味する。「A」とは、磁石部材周辺の外観に変化がなかったことを意味する。「B」とは、磁石部材周辺が変色したことを意味する。「C」とは、磁石部材周辺の大部分が変色したことを意味する。評価がA、B、Cの順に、表面Sの周縁部の耐湿性に優れている。
表2に示す「接着強度の耐久性」とは、圧縮せん断試験2の評価結果を意味する。圧縮せん断試験1で測定された圧縮せん断強度から圧縮せん断試験2で測定された圧縮せん断強度を引くことにより、高温高湿環境下における圧縮せん断強度の減少値を求めた。「A」とは、圧縮せん断強度の減少値が1MPa以下であったことを意味する。「B」とは、圧縮せん断強度の減少値が1MPa超2MPa未満であったことを意味する。「C」とは、圧縮せん断強度の減少値が2MPa以上であったことを意味する。圧縮せん断強度の減少値が小さいほど、高温高湿環境下における磁石部材のヨーク対する接着強度の耐久性が優れている。
表2の「総合評価」における「A」とは、「初期接着性」、「耐湿性」及び「接着強度の耐久性」ののうち2項目以上の評価がAであることを意味する。「総合評価」における「B」とは、2項目以上の評価が「B」であり、いずれの評価も「C」ではなかったことを意味する。「総合評価」における「C」とは、いずれかの評価が「C」であったことを意味する。
表1に示される結果から、比較例の試料ではめっき膜の密着性が十分でなく、耐湿性がCであるのに対し、本発明では高い密着性が得られ、耐湿性も向上していることがわかる。
表2に示される結果から、比較例の試料では[S]Cの値に対して十分な初期接着性得られず、耐湿性や接着強度の耐久性も十分でないのに対し、本発明では接着性と耐湿性、さらに接着強度の耐久性が向上していることがわかる。
30・・・磁石部材、32・・・磁石素体、34・・・めっき膜、36・・・中央部、38・・・周縁部、40・・・ヨーク、42・・・接着剤、M・・・磁石素体の容易磁化方向、S・・・磁石素体の容易磁化方向を垂線にもつ磁石部材の面(表面)、Ss・・・容易磁化方向に垂線をもつ磁石素体の表面。
Claims (4)
- Fe16N2を含む窒化鉄磁石の磁石素体表層部にα‐FeまたはFe4Nのうち少なくとも一方を合計50質量%以上含み、前記磁石素体を被覆するめっき膜を備える磁石部材。
- 前記めっき膜はNiを含み、前記磁石素体の容易磁化方向を垂線にもつ前記磁石部材の面の周縁部に位置する前記めっき膜中の硫黄の含有率が、前記面の中央部に位置する前記めっき膜中の硫黄の含有率よりも低い、磁石請求項1に記載の磁石部材。
- 前記周縁部に位置する前記めっき膜中の硫黄の含有率が、前記中央部に位置する前記めっき膜中の硫黄の含有率の0.80〜0.95倍である、請求項2に記載の磁石部材。
- 前記めっき膜が電気めっきにより形成される、請求項1から3に記載の磁石部材。
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JP2020102552A (ja) * | 2018-12-21 | 2020-07-02 | 株式会社ダイドー電子 | RFeB系焼結磁石及びその製造方法 |
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