JP2599753B2 - 耐食性を改善したr−tm−b系永久磁石及び製造方法 - Google Patents

耐食性を改善したr−tm−b系永久磁石及び製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、R−TM−B系永久磁石であって、特に多層
金属メッキ層により耐食性を著しく改善したものに関す
る。
〔従来の技術〕
電気・電子機器の高性能・小型化に伴なって、その一
部品たる永久磁石にも同様の要求が強まってきた。すな
わち、以前の最強の永久磁石は希土類類・コバルト(R
−Co系)であったが、近年、より強力なR−TM−B系永
久磁石が台頭してきた(特公昭61−34242号公報)。こ
こにRはYを含む希土類元素の1種又は2種以上の組合
わせであり、TMはFe,Co等の遷移金属を中心として、一
部を他の金属元素又は非金属元素で置換したもの、Bは
硼素である。
従来のR−Co系磁石は、Coを多量に含有するために、
元来耐食性があり表面処理を必要とするのは装飾品等に
限られていた。
すなわち、R−Co系磁石を無侵食脱脂したのち、下地
処理として無光沢ニッケルメッキを施し、次いで金メッ
キ等の各種メッキ処理を行う表面処理方法が知られてい
た(特開昭53−114737号)。
ここで、無侵食脱脂とは、例えばトリクロルエチレン
洗浄→乳化脱脂→水洗→煮沸脱脂→水洗という脱脂法を
いう。また無光沢ニッケルメッキとは、種々の方法があ
るが、ワット浴において光沢剤を添加することなく高速
度でメッキを行なうものであって、密着性が良く、歪の
少ないメッキである。
その他にメッキしたR−Co磁石として、脱脂したの
ち、銅メッキを施し、さらにニッケルメッキを施し発明
(特開昭57−66604号)や、各種メッキを行なうことに
より機械的郷土も併せて向上する発明(特開昭49−8689
6号)が知られている。
なお、多層メッキとして一般的鋼材の表面処理方法が
知られている。これはニッケルの自食作用を利用するも
のであって、素材表面にまずイオウ含有量が0.01%以下
の無光沢ニッケルメッキ(ワット浴のまま)あるいは、
半光沢ニッケルメッキを施す。この場合、半光沢ニッケ
ルメッキの光沢剤にはイオウを含まない第2光沢剤、例
えば1,4ブチンジオール、プロパギルアルコール等が使
用される。なおワット浴から析出させた無光沢ニッケル
メッキ膜中にはイオウが0.01%あるいはそれ以下の量が
共析している(金属表面技術協会編:金属表面技術便覧
P.286(1984))。次にその上層として光沢あるいは半
光沢ニッケルメッキ層を設けるものである。この場合、
光沢剤として、イオウを含有する光沢剤(主として第1
光沢剤)、例えばサッカリン、1,5ナフタリンジスルホ
ン酸ナトリウム等が使用され、ニッケルメッキ膜中に0.
03〜0.08%のイオウが含有される(金属表面技術協会
編:金属表面技術便覧P.286(1984))。これは、上層
を犠牲メッキとして腐食を横方向に進め(このため犠牲
メッキの腐食は促進される)素材方向への腐食を食いと
めるものである。
ここで二層ニッケルメッキでの上層の厚さは全ニッケ
ルメッキの厚さのほぼ20%程度にするのが原則であると
言われている。
また、三層ニッケルメッキも知られている(金属表面
技術協会編;金属表面技術便覧p.287〜288(1984))。
更にニッケルメッキにおいては、一般にスルファミン
酸浴を用いることにより展延性に富み、電着応力も低
く、厚づけ、電鋳に適することが知られている(同上p.
290)。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし、従来の表面処理は素材がそれ自体耐食性を有
するR−Co系磁石か、又は一般の鋼材の表面を対象とし
て開発されたものであったため、そのまま素材自体の耐
食性が著しく悪く、一般鋼材よりも劣るR−TM−B系磁
石に適用すると、以下のような問題点があった。
(1) R−Co系磁石と比べて、R−TM−B系磁石は加
工による影響を受けやすく、加工変質層が厚い。従っ
て、従来の多層メッキをそのまま施したのでは、加工変
質層を起点として被覆層が全体的に剥離するという問題
点があった。
(2) また、素材とメッキ層との組合わせのちがいに
より、内部応力がR−Co系磁石の場合よりはるかに大き
く、その結果メッキ層に亀裂が入り、耐食性が著しく劣
化するという問題点もあった。
従って、本発明の目的は、耐食性の著しく改善された
R−TM−B系永久磁石を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、R(ここでRは、Yを含む希土類元素の1
種又は2種以上の組合わせ)、TM(ここでTMは、Fe,Co
を中心とする遷移金属であって、一部を他の金属元素又
は非金属元素で置換してよい。)、B(硼素)からなる
R−TM−B系永久磁石において、該永久磁石体の表面に
無光沢金属メッキ層を設け、その上にピンホールの少な
い被覆層を1層以上設けたことを特徴とするR−TM−B
系永久磁石である。
本発明において、TMの一部を置換する元素は、その添
加目的に応じて、Ga,Al,Ti,V,Cr,Mn,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,G
e,Sb,Sn,Bi,Ni他を添加でき、本発明はいかなるR−TM
−B系磁石にも適用できる。また、その製造方法は焼結
法、溶湯急冷法、あるいはそれらの変形法のいずれの方
法でもよい。
本発明において、無光沢金属メッキ層はR−TM−B系
磁石本体との密着性が良好であるために必須の層であ
る。また残留応力が少なく良質である。製造方法として
は、フレオン等の有機溶剤による脱脂の後にスルファミ
ン酸ニッケルメッキあるいはワット浴ニッケルメッキを
施すのが良い。電流密度は1〜20A/dm2が良く、より好
ましくは1.5〜2A/dm2がよい。メッキ層の厚さは10〜15
μmが最適である。
ここで重要なのは、R−TM−B系磁石素材の前処理で
あって、特に加工変質層の除去が重要である。すなわ
ち、R−TM−B系磁石は研削、切断等の加工を施される
が、この際に加工変質層が形成され、その厚みは一般に
60μm程度であり、R−Co系磁石のそれに比べて数倍厚
い。従来は、そのまま多層メッキを施されていたのであ
るが、それでは加工変質層のところから層状に被膜がは
がれてしまうことが多かった。
そこで本発生者は、600〜900℃にR−TM−B系磁石素
材を加熱保持することにより加工変質層を著しく減少さ
せることができることを知見した。すなわち、一般に表
面に露出した結晶粒界に極めて参加しやすい希土類元素
が濃化(その結果、Nd−Fe共晶組成に近い組成を示
す。)するR−TM−B系磁石の特徴から、粒界が選択腐
食され、孔食の原因となり耐食性が悪化するのである
が、600℃以上の加熱によってNd−Fe共晶(共晶点温度
が640℃)に近い組成を有する粒界が局部に液晶とな
り、小孔を充填する結果、かかる小孔が消滅するためと
考えられる。なお、実際のR−TM−B系磁石においては
Nd−Fe共晶温度よりも少し低い600℃から本発明の効果
があるが、1000℃を越える場合は磁石表面の酸化が促進
させるので好ましくない。
次いでフレオン等の脱脂を施し、酸洗等のエッチング
を施し、無光沢金属メッキ処理を行なう。
無光沢金属メッキは素材との密着性が良く、また電着
応力も小さいものであるが、柱状晶組織を有するために
隙間が多く、この層だけでは耐食性が不十分である。
そこで、本発明では、更にその上にピンホールの少な
い被覆層を1層以上設けることを特徴とする。ピンホー
ルの少ない被覆層としては金属メッキ層、化成皮膜層、
ライニング、コーティング等何でもよいが、光沢ニッケ
ルメッキ又は半光沢ニッケルメッキが適当である。下層
と同種金属の方が電気化学的腐食を生じるおそれがない
からである。光沢ニッケルメッキはワット浴、ホウフッ
化浴、スルファミン酸浴のいずれでもよく、ワット浴で
十分である。本発明において、光沢剤は第1光沢剤とし
ては、1,5ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、1,3,6ナ
フタレントリスルホン酸ナトリウム、サッカリン、パラ
トルエンスルホンアミド等が、第2光沢剤としてはホル
ムアルデヒド、1,4ブチンジオール、プロパギルアルコ
ール、エチレンシアンヒドリン等が使える。
この被覆層の厚さは10〜15μm程度が好適であり、公
知の多層ニッケルメッキの場合には、この層となる上層
メッキの厚さは全ニッケルメッキの厚さのほぼ30%程度
にするのが原則であるが、本発明においてはそのような
制約はない。これは、本発明の多層メツキが、いわゆる
自食作用による犠牲メッキではなく、無光沢メッキ層と
相補って発明の効果を紹来するためと考えられる。
事実、本発明に係るR−TM−B系磁石は、耐食性試験
においても両層とも腐食されることなく素材を保護する
効果が確認された。
なお、本発明において、多層メッキ層は2層に限定さ
れず、素材表面にNi,Cr等の無光沢メッキ層を設けれ
ば、その上層はピンホールをなくすればよく、クロメー
ト処理ののちに樹脂コーティングすることにより更に耐
食性は改善される。
また、本発明においては、メッキ層における残留水素
に著しく少なく、水素脆性がない。従来のメッキにおい
てはメッキ直後に200℃前後の数時間ベーキングを必要
としていたのと比べると、工程が省略され、かつ耐食性
も顕著に向上する。水素残留量が少ない原因は不明であ
るが、Nd2Fe14B金属間化合物を主体とする主相と、Rが
濃化したRリッチ相と、Feが濃化したFeリッチ相からな
り、化学的に活性な希土類元素と鉄から大部分なるR−
TM−B系磁石の粒界構造と何かの関連がありそうであ
る。というのは、SmCo磁石においては本発明の効果が生
じないからである 〔実施例〕 (実施例1) Nd(Fe0.70Co0.20.07Ga0.036.5なる組成の合金を
アーク溶解にて作製し、得られたインゴットをスタンプ
ミル及びディスクミルで粗粉砕した。粉砕媒体としてN2
ガスを用いジェットミルで微粉砕を行ない粉砕粒度3.5
μm(FSSS)の微粉砕粉を得た。
得られた原料粉を15KOeの磁場中で横磁場成形(プレ
ス方向と磁場方向が直交)した。成形圧力は2トン/cm2
であった。本成形体を真空中で1090℃×2時間で焼結し
た。焼結体を18×10×6mm寸法に切り出し、次いで900℃
のアルゴン雰囲化中に1時間加熱保持した後に急冷し、
温度を600℃に保持したアルゴン雰囲気炉で1時間保持
した。この熱処理前の試料の加工変質層は80μm程度あ
ったものが、熱処理後には30μmまで減少していた。
こうして得られた試料を、歪取り熱処理を施さないま
まのものを比較例として、以下の表面処理を行なった。
すなわち、前記試料片をフレオンで脱脂し、酸洗した
のち、第1表に示す作業条件で無光沢スルファミン酸ニ
ッケルメッキを施し、その上に光沢スルファミン酸ニッ
ケルメッキを施した実施例と、比較例として磁石表面に
第1表に示す種々のメッキを行なった。
第2表に実施例と比較例を対比して示す通り、本発明
においては磁気特性を劣化させることなく耐食性を著し
く向上し得ることがわかる。
第2表において、耐酸化性を示す指標として、前記試
験片を120℃の温度、100℃の湿度の雰囲気に3日間放置
した場合(プレッシャー・クッカー・テスト(PC
T))、試験片の酸化増量、酸化膜厚、テープ剥離テス
ト、及び外観目知を選んだ。酸化膜厚は酸化膜の最大厚
みで表わしてある。
テープ剥離テストは、PCT後の試験片に巾18mmの市販
のセロテープを貼りつけて、はがしたときの被覆膜のハ
ガシの有無を目視で観察するものである。
なお、試料数は各例40個を取った。第2表、第3表に
示す数値は40個の平均値を示す。
また、フエロキシル試験(JIS H8617)によってピン
ホールの有無を調べた結果を第3表に示す。光沢ニッケ
ルメッキを施すことによってピンホールのない外層被膜
の得られるのがわかる。
本発明に係るR−TM−B系永久磁石の断面組織写真を
第1図及び第2図に示す。倍率は300倍である。写真1
は試料の平坦個所、写真2は試料のエッジコーナ部を示
すが、共に均一な膜厚であり、ピンホール、クラックが
ない良好な膜が得られることがわかる。また、素材と無
光沢メッキ層の間にわずかに加工変質層が残留している
のが見える。無光沢メッキ層と光沢メッキ層との中間に
は何らかの中間層が見られる。この層が不働態を作って
いるために、本発明においては、単に無光沢メッキ層の
素地密着の良さと、光沢メッキ層のピンホールがないこ
との両効果の総和ではなく、それ以上に耐食効果が得ら
れるものと思われる。
(実施例2) 実施例1で得られた試料を更に濃度6.0g/(pH=1.
3)の無水クロム酸液に50℃で5分間浸漬し、常温放冷
で乾燥しクロメート処理をした。それを実施例1と同様
に評価したところ酸化増量0.03mg/cm2であった。また、
クロメート処理後、磁石を陰極、SUS316材を陽極とし、
温度29℃、電圧180V、4分の条件で電着させ、熱硬化に
よって架橋反応をおこさせて凝固塗着(電着塗装)させ
た。試料の酸化増量は0.01mg/cm2と極めて耐食性が良い
ものであった。なお、実施例ではスルファミン酸ニッケ
ル浴を用いた例を示したが、その他のメッキ浴例えばワ
ットニッケル浴、ホウフッ化物ニッケル浴でも同様の効
果が得られる。また、ニッケル以外の他の金属或いは合
金による組み合わせでも同様の効果が得られる。
〔発明の効果〕
本発明によれば、希土類と鉄を主体として磁石におい
て、従来の多層金属メッキでは不十分であった耐食性の
顕著な向上が計れ、かかる高性能磁石の用途を著しく拡
大する効果が達成できる。
【図面の簡単な説明】 第1図,第2図は各々、本発明の一実施例による断面金
属組織写真を示す。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】R(ここでRは、Yを含む希土類元素の1
    種又は2種以上の組合わせ)、TM(ここでTMは、Fe,Co
    を中心とする遷移金属であって、一部を他の金属元素又
    は非金属元素で置換してよい。)、B(硼素)からなる
    R−TM−B系永久磁石において、該永久磁石体の表面に
    無光沢金属メッキ層を設け、その上にピンホールの少な
    い被覆層を1層以上設けたことを特徴とするR−TM−B
    系永久磁石。
  2. 【請求項2】無光沢金属メッキ層が無光沢Niメッキ層で
    あって、ピンホールの少ない被覆層が光沢Niメッキ層で
    ある請求項1に記載のR−TM−B系永久磁石。
  3. 【請求項3】R(ここでRは、Yを含む希土類元素の1
    種又は2種以上の組合わせ)、TM(ここでTMは、Fe,Co
    を中心とする遷移金属であって、一部を他の金属元素又
    は非金属元素で置換してよい。)、B(硼素)からなる
    R−TM−B系永久磁石を所定形状に加工後、該永久磁石
    の少なくとも表層部を600〜1000℃に加熱保持した後、
    エッチングし、無光沢金属メッキをし、次いでその上に
    ピンホールの少ない被覆層を1層以上設けることを特徴
    とする耐食性を改善したR−TM−B永久磁石の製造方
    法。
  4. 【請求項4】ピンホールの少ない被覆層が、金属メッ
    キ、クロメート皮膜、樹脂膜の順に積層されたものであ
    る請求項1に記載の耐食性を改善したR−TM−B系永久
    磁石。
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