JP5245772B2 - 表面処理金属材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
このような特質を有しているアルミニウム板などの表面に、良好なはんだ付け性(はんだ濡れ性)を付与するための手法として、その表面に酸洗処理を施した後、錫(Sn)層またはニッケル(Ni)層等をめっき法などにより形成する、という技術が提案されている。
これは、より具体的には、アルミニウム(Al)からなる金属基材の表面に、脱脂・酸洗を施した後、亜鉛(Zn)を主成分とする第1下地層を、亜鉛置換めっき法により形成する(5〜500mg/m2)。その上に、水洗を施した後、ニッケルを主成分とする第2下地層202を、めっき法により形成する(0.2〜50mg/m2)。そしてさらにその上に、錫(Sn)を主成分とするはんだ濡れ層203を、めっき法により形成する(0.2〜20mg/m2)、というものである(特許文献1,2)。
という技術が提案されている。この技術によれば、酸素(O)を含む環境中で成膜プロセスを行うことで、酸素(O)がチタン(Ti)層に侵入してその層に圧縮応力が残留することになる、ということが開示されている(特許文献6)。
このため、上記のような従来の技術では、金属基材の表面の不動態被膜を除去するために酸洗を行うという煩雑なプロセスを行わなければならず、かつ多種類のめっき液等の薬液を用いなければならないので、その酸洗処理プロセス自体の煩雑さは勿論のこと、その酸洗処理プロセスに用いられる各種薬液の品質管理や廃液の処理等に、多大な手間や時間ならびにコストが掛かってしまうという問題がある。
また、特に酸洗用の薬液をはじめ、その他各種めっき液は、使用後の廃液としては、いわゆる産業廃棄物となるので、環境工学的な観点からも、その使用は望ましくない。
また、良好なはんだ付けを実現するためには、金属基材の表面の酸化被膜のような不動態被膜を溶解させるほどに強力なフラックスを使用する、といった手法を用いることなども考えられるが、実際には、斯様に極めて強力なフラックスは、はんだ付け後の接合部分付近を著しく荒らして劣化させてしまう虞が極めて高くなるので、接合部位の耐久性や信頼性の観点から、望ましくないものと言わざるを得ない。
また、特に特許文献4により提案された技術では、鉛フリーはんだによる接合を実現することは可能となるが、自然酸化膜を有するアルミニウム(Al)基材のような、最表面に不動態被膜を有する材質の金属基材に適用可能であるか否かは、定かではない。また、この場合、表面コート膜の厚さは1〜5μm程度が必要となるが、このような厚い表面コート膜は、実際上、コマーシャルベースでの製造技術として考えると、製膜に時間が掛かり過ぎて、生産性が著しく低くなってしまい、延いては製造コスト上が嵩むこととなる虞が高い。
また、特に特許文献5、特許文献6により提案された技術では、チタン膜に圧縮応力を残存させる手法が開示されているが、しかしそのような圧縮応力を残存させたとしても、この構造では鉛フリーはんだを用いた接合は、実際には接合強度不足となる虞が極めて高いことを、我々は種々の実験等を行った結果、確認している。
えばアルミニウム(Al)またはアルミニウム合金もしくはステンレスなどのような、最表面に不動態被膜を有する金属基材の表面に、その不動態被膜の酸洗除去等を施さずとも、良好なはんだ濡れ性およびはんだ付けに対する接合強度を付与してなる、表面処理金属材およびその製造方法を提供することにある。
また、上記目的にさらに加えて、活性の弱いフラックス(フラックス分類でRMAもしくはR相当)を用いた、RoHs関連物資である鉛(Pb)が無添加の、いわゆる鉛フリーはんだによる接合を可能とした、表面処理金属材およびその製造方法を提供することにある。
また、上記目的にさらに加えて、実際上の生産性の確保および原材料コストの低減を達成可能な極薄の膜からなる表面処理構造を備えた、表面処理金属材およびその製造方法を提供することにある。
本発明の表面処理金属材の製造方法は、はんだによる接合に用いられる表面処理金属材の製造方法であって、最表層に不動態被膜を有する金属基材の表面上に、当該金属基材の表面側から順に、クロム(Cr)を主成分とするスパッタ膜からなり、当該膜の内部残留応力が圧縮応力またはゼロである密着層と、銅(Cu)、銅とニッケル(Cu−Ni)の混合状態、銅と亜鉛(Cu−Zn)の混合状態、銅とニッケルと亜鉛(Cu−Ni−Zn)の混合状態のうちの少なくともいずれか一種類を主成分とするスパッタ膜からなる接着層とを、成膜する層の材質を切り替える際にも酸素を意図的に排除したアルゴン(Ar)ガスのような不活性ガスの成膜雰囲気を維持した同一チャンバ内で連続してスパッタ成膜する工程を含むことを特徴としている。
図1は、本発明の実施の形態に係る表面処理金属材の主要な積層構造を模式的に示す図、図2は、図1に示した表面処理金属材の接着層の上にスパッタ成膜してなる保護層をさらに設けた積層構造を模式的に示す図、図3は、図1に示した表面処理金属材の接着層の上にめっき成膜してなる保護層をさらに設けた積層構造を模式的に示す図である。
具体的には、例えば、純アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、あるいはJIS規格で表現すると、1000系、2000系、3000系、5000系、6000系、7000系のアルミニウム合金板等が適用可能である。また、JIS規格外のアルミニウム合金、ダイカスト、もしくはこれらのアルミニウム材料を表層とするアルミクラッド板材、アルミニウム/SUS、アルミニウム/インバー、アルミニウム/銅(Cu)なども適用可能である。
また、その他にも、各種のステンレス材、インバー材なども実用材料として適用可能である。
また、さらにその他にも、表層が不動態被膜を形成する金属と云う点からすると、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)なども適用可能である。
この金属基材1の表面には、使用後に産業廃棄物となってその廃棄処理の煩雑さが伴うような酸洗薬液等を用いた酸洗処理は全く施されておらず、また表面処理プロセスに入る準備段階での前処理等としても、斯様な酸洗処理は敢えて全く施さない。従って、この金属基材1の最表面に自然酸化膜のような不動態被膜が存在したままとなっており、その上に密着層2や接着層3が積層形成されている。但し、この金属基材1の最表面に、密着層2等を成膜する前に、例えば各種洗剤や純水を用いた一般的ないわゆる脱脂や洗浄等を施しても構わないことは言うまでもない。
この密着層2の平均厚さは、10nm以上500nm以下とすることが望ましい。これは、密着層2の厚さが下限値の10nm未満であると、はんだに対する濡れ性や接合強度が不足する虞が高くなるからである。また、上限値の500nmを超えると、却って、接合強度の低下の虞や、歪印加後のはんだ濡れ性の低下の虞、または水素環境下での悪影響が発現する虞などが高くなるからである。
この接着層3を構成するために用いられる金属材料である、上記のニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)という3種類の金属を用いた場合にそれぞれ得られる特質は、次のようなものである。
これら3種類の金属の材料コストは一般に、高価な順に並べると、ニッケル(Ni)>銅(Cu)>亜鉛(Zn)となっている。また、銅(Cu)にニッケル(Ni)添加の場合は、純銅(Cu)の場合と比べて濡れ性が向上するが、高コストなものとなる。銅(Cu)に亜鉛(Zn)添加の場合は、はんだに対する濡れ性が低下する場合もあり得るが、低コスト化に寄与する。また、亜鉛(Zn)添加の場合については、犠牲防食層として機能するといった効果等も得られる。このような各種の金属ごとの特質を考慮に入れた上で、最終的な合金組成は、使用環境や要求される機能・性能に応じて決定すればよい。但し、ニッケル(Ni)濃度が60%を超えるとCu−Ni合金が強磁性体として振舞うため、好ましくない。また、亜鉛(Zn)濃度が高くなると、はんだ濡れ性が低下するので、好ましくない。また、銅(Cu)にニッケル(Ni)を添加することで、亜鉛(Zn)を添加した場合のはんだ濡れ性を調節することができる。
但し、金属基材1が、例えばJIS規格で5000系のアルミニウム−マグネシウム(Al−Mg)合金のような、マグネシウム(Mg)を意図的に添加された材質からなるものである場合には、酸素強度比率Xを、(0≦)X≦0.04とすることが望ましい。
すなわち、この密着層2と接着層3との界面付近における酸素強度比率Xが0.02超(金属基材1がMg含有の場合は0.04超)であると、他の構成および数値を適切に設定したとしても、十分な接合強度を得ることが困難なものとなる虞が高くなるが、酸素強度比率Xが上記のような範囲の値となるように意図的に低酸素濃度にした成膜雰囲気中で密着層2をスパッタ成膜することによって、良好な接合強度を得ることが可能となるからである。
この保護層4を銅とニッケル(Cu−Ni)からなるものとする場合には、ニッケル(Ni)濃度を10wt%以上60wt%以下とすることが望ましい。これは、ニッケル(Ni)濃度を60wt%以上にすると、そのニッケル(Ni)分の合金ターゲット材の使用量が嵩むことや、その成膜プロセスに要する時間が長くなることなどに起因して、スループットの悪化や製造コストの高額化などの不都合が生じるため、および形成される保護層4の材質が強磁性体になってしまうためである。強磁性体は一般に、スパッタリングによる成膜速度を低下させる傾向が強く、スループットをさらに悪化させる要因となる虞が高い。また、形成された保護層4全体が強磁性体であると、場合によってはその強磁性が阻害要因となって、この表面処理金属材が使用される際に、例えば電子部品用の部材や材料板等として使い難いといった不都合が生じる虞などもあるからである。
そこで、Ni単体のスパッタ膜でなく、Cu−Niのスパッタ膜からなるものとすることにより、得られる保護層4は、常磁性体となるので、スパッタ速度を低下させることなく成膜が可能となり、また磁性的に中立で使い易い材質とすることが可能となる。
また、銅とニッケル(Cu−Ni)に、さらに亜鉛(Zn)を40wt%程度添加するようにしてもよい。このようにすることにより、さらなる低コスト化を達成することが可能となり、またこの保護層4を、いわゆる犠牲防食層としての機能も備えたものとすることが可能となる。
また、図3に示したように、接着層3の上(または、図示は省略するが保護層4の上も可能)に、錫(Sn)、錫−亜鉛(Sn−Zn)、錫−銀(Sn−Ag)などのような、はんだ用途対応の組成の錫合金をめっき成膜してなるはんだ層5を、さらに備えた構造としてもよい。このような、はんだ層5をさらに備えたものとすることにより、本発明の実施の形態に係る表面処理金属材の表面におけるはんだ濡れ性をさらに増強することが可能となる。
また、金属基材1の表面上に、密着層2および接着層3をこの順で、またさらには接着層3の上に保護層4やはんだ層5を形成するようにしているので、それらを備えたことによって、はんだに対する濡れ性を大幅に向上させることができる。また、その結果、活性の弱いフラックスを用いるか、もしくはフラックス等は全く用いなくとも、RoHs規制物質である鉛(Pb)などを含有しない、いわゆる鉛フリーはんだによる、十分な接合強度を有するはんだ付けが可能となる。
の結果、スループットの向上や製造コスト等の低廉化が達成される。
また、保護層4を形成することにより、接着層3の最表面に酸化膜が生成することを抑制することが可能となり、その結果、はんだに対する接合強度を増強することができる。また、その形成材料としてニッケル(Ni)に銅(Cu)を添加することにより、材料コスト等の低廉化やスパッタ効率の向上が見込める。または、銅(Cu)亜鉛(Zn)を添加することにより、材料コスト等の低廉化と犠牲防食効果とを得ることが可能となる。もしくは、Cu−Ni−Znの3元材料とすることにより、はんだ濡れ性、材料コスト等の低廉化、犠牲防食効果の、3つの効果を同時に達成することが可能となる。
また、接着層3を、銅とニッケル(Cu−Ni)の混合または合金、Cu−Ni−Znの混合または合金からなるものとすることにより、その接着層3の最表面の酸化抑制効果を得ることが可能となる。また、ニッケル(Ni)添加によって接着層3の拡散抑制も可能となる。その結果、はんだに対する接合強度の増強が期待できるものとなる。また、亜鉛(Zn)を添加することで、犠牲防食効果が得られ、それによってこの表面処理金属材の最表面の耐食性・耐久性のさらなる向上を達成することが可能となる。
これらの材料は、水素ガスから受ける影響の小さい順に並べると、クロム(Cr)<ニオブ(Nb)<チタン(Ti)の順となっている。水素ガスによって受ける悪影響が最も少なくて済むのは、クロム(Cr)である。よって、水素ガス環境に因る悪影響等が懸念される場合には、密着層2の材質としては、クロム(Cr)を選択することが望ましい。特に、クロム(Cr)で密着層2を形成した場合(つまり本発明の実施の形態に係る表面処理金属材およびその製造方法の場合)には、水素ガスに因る性能低下等はほとんど全くないことが想定される。
また、歪印加の影響の小さい順に並べると、ニオブ(Nb)<チタン(Ti)<クロム(Cr)の順である。よって、例えば金型を用いたプレス成型やプレス打ち抜きのような、被加工材に塑性変形を伴う加工が施されることに起因した、大きな歪印加の発生が懸念される場合には、密着層2の材質としては、ニオブ(Nb)を選択することが望ましい。
また、密着層2を形成した際に、その密着層2の材質が柔らかいものとなる順に並べると、ニオブ(Nb)<チタン(Ti)<クロム(Cr)となる。例えば金属基材1としてアルミニウム(Al)板を用いた場合などには、密着層2を硬い材質のクロム(Cr)やチタン(Ti)からなるものにすると、その密着層2を備えた表面処理金属材にプレス金型を用いてプレス加工等を施す場合、そのプレス金型の摩耗が早くなる虞が高い。斯様な観点からは、出来るだけ柔らかい材料を選択することが望まれる。よって、このような場合には、ニオブ(Nb)を選択することが望ましい。
また、材料コストについての考察に当たっての参考までに、現在の一般的な相場における鉱業製品としての材料価格の安価な順に並べると、クロム(Cr)<チタン(Ti)<
ニオブ(Nb)となっている。よって、例えば材料コストを出来るだけ安価なものにすることが要請される場合には、クロム(Cr)を選択することが望ましい。
このような、各材料の長所・短所を考え合わせて、そのときの目的に則した最良の選択を行うようにすればよい。
金属基材1は、アルミニウム(Al)系、ステンレス系の2種類を用意し、そのそれぞれについて、上記の実施の形態で説明した構造および製造方法によって密着層2や接着層3を形成して表面処理金属材を作製し、その各性能等を評価した。
アルミニウム(Al)系は、その代表的なものとして、純アルミニウム(Al)であるA1050とした。また、そのバリエーションとして、Mgを含有するA5052も、同様の実験を行うために用意した(このA5052については後述する)。
ステンレス系材料はSUS301とした。その各種類ごとに、厚さ0.15mmの板状材のものを用意した。これらの金属基材1の表面には酸洗処理を施さず、その最表面に不動態被膜を残したままの状態で、その後のスパッタ成膜等を行った。
また、比較例に係る試料の作製の際に用いた成膜雰囲気は、アルゴン(Ar)+酸素混合ガス、純アルゴン(Ar)ガスの、2種類のガスとした。それらの成膜雰囲気における酸素含有量の調節は、流量比率を調整することによって行った。
(1)はんだ濡れ性の評価;
はんだ材として、Pbフリーはんだである、錫−0.7wt%銅(Sn−0.7wt%Cu)合金を使用し、メニスコグラフ法により、タムラ製作所(型式:製造番号2015)を用いて、各試料から切り出した幅10mmの試片をフラックス(HOZANの型式H−728)に浸漬し、それを220℃の温度に保持したはんだ浴槽中に浸漬速度2mm/秒で2mmに亘って浸漬し、試片の表面がはんだで濡れて、いわゆるはんだコーティングが施された状態となるまでの時間(ゼロクロスタイム)を測定した。そしてその時間に基づいて、下記に示した基準に則して各試料のはんだ濡れ性を評価した。この評価方法では、短時間であるほど、はんだ濡れ性が良好であることを示している。
◎ : 5秒未満
○ : 5〜7秒未満
△ : 7〜10秒未満
× : 10秒以上
(上記の記号◎、○、△、×は、各表の該当欄に記載してある)
上記の(1)で説明した方法によって表面にはんだコーティングが施された各試片に、曲げ径10mmで繰り返し曲げを行って、はんだコート膜が試片の表面から剥離するまでの回数を数えることにより、接合強度を評価した。この評価方法では、繰り返し曲げを5回まで行い、下記のような基準に則して接合強度を評価した。
◎ : 5回でも剥離なし
○ : 3〜4回で剥離
△ : 1回曲げまでは剥離なしであるが2回目に剥離
× : 曲げ前から剥離またははんだ接合不良状態のため評価不能
(上記の記号◎、○、△、×は、各表の該当欄に記載してある)
各試料に、曲げ歪および引張り歪を印加した。まず、曲げ歪を印加した。具体的には、直径15mmのパイプに試料を巻きつけるという手法で、曲げ歪を4回印加した(歪換算で板厚/直径=0.15/15=0.01→1%相当)。2回目の印加では、最初の(1回目の)曲げ印加後、試料を裏返すことにより、パイプ巻きつけ時の引っ張り印加面(板材の外面)と圧縮印加面(板材の内面)が入れ替わるようにした。そして3回目も同様に試料を裏返して、1回目と同じ試料のポジションで曲げを行うものとした。4回目は、3回目の曲げ後に試料を裏返して、2回目と同じ試料のポジションで曲げを行った。4回目の曲げ後、張力を印加して、試料の伸び量が約10%相当となった後、その張力から試料を開放して歪印加を完了した。その後、上記の(2)と同様の手法および基準に則して各試料のはんだ濡れ性の試験を実施し、その評価を行った。
各試料の水素脆化特性を調べるために、はんだコーティングを施した各試料を、で1MPa・80℃の水素(H)ガス雰囲気環境に24時間封入した後、上記の(2)等で説明したものと同様の手法および基準に則して各試料のはんだ接合強度を評価した。
密着層2と接着層3との界面(厚さにして5nm程度)における材質の酸素含有濃度を、分光分析法により、酸素強度比率Xとして計測した。但し、金属基材1と密着層2との界面(厚さにして5nm程度)、および接着層3の最表面(厚さにして5nm程度)の部分については計測から除外するものとした。具体的には、光電子分光装置を用いて分解能2nmで、アルゴンエンッチングを行い、次式で定義される酸素強度比率X値が密着層2と接着層3との界面付近でピークとなる値を求めた。
酸素強度比率X=酸素強度/{酸素(O)の強度+密着層2を構成するクロム(Cr)の強度+銅(Cu)の強度+ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)の強度}
そして、その分光分析による酸素含有濃度の結果の酸素強度比率Xの値がX≦0.02のものは○、X>0.02のものは×と表記した(上記の記号○、×は、各表の該当欄に記載してある)。
密着層2の成膜後の内部残留応力は、一般に、その密着層2の材質、膜厚、成膜時のガス圧、ガス成分中の酸素濃度など、種々のプロセス条件等に応じて、引張りから圧縮まで幅広く変化する。
成膜された密着層2の膜内の内部残留応力の評価は、カンチレバー法によって行った。
カンチレバー法(参考文献、添付:雑誌真空 J.VAC.Soc.JPN Vol.50,No6.2007,P432)とは、機械特性が既知であるシートに成膜処理を施し、片端を固定、片端を開放(自由)とし、シートの変形方向と変形量から、膜の内部応力を求めるものである。ここでは、膜内部の応力が圧縮なのか引っ張りなのかを判定する程度の評価を行なった。成膜された密着層2の内部残留応力は、主に成膜時のガス圧力と膜厚さとに依存する。このため、予め試料作製と同一条件のガス圧と膜厚の設定で、その膜の応力が圧縮となるのか引っ張りとなるのかを評価する実験を行い、そのデータに基づいて、種々異なるプロセス条件で作製された各試料における密着層2の内部残留応力が、圧縮であるか、引張りであるか、もしくはほぼゼロであるかを判定(評価)した。
(1)金属基材が純アルミニウム(Al)材の場合;
表2は、図1に示したような金属基材1の表面上に密着層2と接着層3とを積層形成した構造を備えた表面処理金属材における、密着層2の内部残留応力を引張り応力とした試料101〜107の場合の評価結果を、第1群として纏めて示したものである。ここで、各試料に付した試料番号は、各試料の識別のために便宜上、付与したものであって、その順列や番号の数字自体等には、例えば優先順位等の何らかの意味を付与しているわけではないことは言うまでもない。但し、各実験で意図した目的に着目して、同じ目的のために作製されて評価された各試料については一つの群に纏めるものとし、その試料番号の接頭数字には、その群の番号を付与してある。例えば、第1群の各試料(試料番号101〜107のもの;以降、これを試料101〜107とも呼ぶ)の場合、第1群であるから、その試料番号の三桁目の数字は1であり、二桁目以降の数字としてはその配列順を示す数字を01、02、03・・・のように付与してある。つまり、例えば試料番号が103であれば、それは第1群の第3番目の試料であるということを意味している(これは表3以降も同様とする)。
この結果から、図1に示したような金属基材1の表面上に密着層2と接着層3とを積層形成した構造を備えた表面処理金属材の場合、密着層2の内部残留応力が引張り応力であると、密着層2の厚さを10nm以上にする、といった他の設定には関係なく、はんだ接合強度が不足するということが確認された。
また、特に第4群および第5群の試料の結果によれば、密着層2の膜厚が500nm以下ならば、水素試験後のはんだ接合強度低下は発生しないことが確認された。
また、密着層2の厚さが10〜500nmの範囲内であれば、はんだ濡れ性は良好なものとなることが確認された。また、密着層2がその厚さの範囲内のときには、初期接合強度もほぼ良好である。
また、水素試験後のはんだ接合強度は、初期とほぼ変化なしであることが確認された。
また、銅−ニッケル(Cu−Ni)系よりも材料コストが低廉な純銅(Cu)を接着層3の材料として用いることにより、性能の低下を生じることなく、材料コストも含めた製造コスト全体の低廉化を達成することなども期待できる。
また、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とすることにより、純銅(Cu)を用いる場合と比べると材料コストが高価なものとなるが、はんだ濡れ性のさらなる向上を達成することが可能となる。
また、銅−ニッケル(Cu−Ni)系よりも材料コストが低廉な亜鉛(Zn)を含んだ銅−亜鉛(Cu−Ni−Zn)系合金を保護層4の材料として用いることにより、性能の低下を生じることなく、材料コストも含めた製造コスト全体の低廉化を達成することなども期待できる。
また、特に、試料2301、2302の結果から、接着層3の材質を、ニッケル(Ni)無しで亜鉛(Zn)を10wt%以上含んだものにすると、はんだ濡れ性については概ね良好なものとなるが、保護層4がない場合(試料2301の場合)、はんだ接合強度が不足し、かつ保護層4を設けてもなお(試料2302の場合)、はんだ接合強度は不足するということが確認された。
この第23群の試料の結果および第20群、第21群、第22群の試料の結果に基づいて考察すると、10wt%程度のニッケル(Ni)を添加することで、ニッケル(Ni)無しの場合よりもはんだ接合強度を向上させることができ、また亜鉛(Zn)を10wt%程度までは添加可能となることが分かった。
表11は、図1に示したような金属基材1の表面上に密着層2と接着層3とを積層形成した構造を備えた表面処理金属材における、密着層2の内部残留応力を引張り応力とした試料2501〜2507の場合の評価結果を、第25群として纏めて示したものである。
この結果から、図1に示したような金属基材1の表面上に密着層2と接着層3とを積層形成した構造を備えた表面処理金属材の場合、密着層2が全く存在していないとき、または密着層2の内部残留応力が引張り応力であるときには、金属基材1の材質も含めて他の設定には関係なく、はんだ接合強度が不足するということが確認された。
を纏めて示したものである。
また、水素試験後のはんだ接合強度の低下は発生せず、初期のはんだ接合強度がほぼ維持されることが確認された。
また、水素試験後のはんだ接合強度の低下は発生しなかった。
また、銅−ニッケル(Cu−Ni)系よりも材料コストが低廉な純銅(Cu)を接着層3の材料として用いることにより、性能の低下を生じることなく、材料コストも含めた製造コスト全体の低廉化を達成することなども期待できる。
また、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とすることにより、純銅(Cu)を用いる場合と比べると材料コストが高価なものとなるが、はんだ濡れ性のさらなる向上を達成することが可能となる。
また、銅−ニッケル(Cu−Ni)系よりも材料コストが低廉な亜鉛(Zn)を含んだ銅−亜鉛(Cu−Zn)系合金を保護層4の材料として用いることにより、性能の低下を生じることなく、材料コストも含めた製造コスト全体の低廉化を達成することなども期待できる。
また、特に、試料4701、4702の結果から、接着層3の材質を、ニッケル(Ni)無しで亜鉛(Zn)を10wt%以上含んだものにすると、はんだ濡れ性については概ね良好なものとなるが、保護層4がない場合(試料4701の場合)、はんだ接合強度が不足し、かつ保護層4を設けてもなお(試料4702の場合)、はんだ接合強度は不足するということが確認された。
そして、第47群の試料の結果および第44群、第45群、第46群の試料の結果に基づいて考察すると、接着層3の材質に10wt%程度のニッケル(Ni)を添加することで、ニッケル(Ni)無しの場合よりもはんだ接合強度を向上させることができ、また亜鉛(Zn)を10wt%程度までは添加可能となることが分かった。
図1に示したような構造を有する表面処理金属材を作製した後、電解めっき法により、はんだ層5を形成した。
表20は、はんだ層5をめっき法により形成してなる表面処理金属材の試料の各種性能の評価結果を整理し纏めて示すものである。
金属基材1としては、純アルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)、チタン(Ti)の3種類を用意した。
そして、その金属基材1の表面上に密着層2と、その表面上に接着層3とを、スパッタ法により形成し、さらにその接着層3の表面上に、上記のスパッタ膜からなる保護層4の代りに、電解めっき法によりはんだ層5を形成した。
その結果を整理し纏めて表20に示す。
第50群の試料は、接着層3の材質を銅−10wt%ニッケル−20wt%亜鉛(Cu
−10wt%Ni−20wt%Zn)とし、はんだ層5の材質を錫(Sn)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は1μmまたは5μmとした。密着層2は圧縮応力を有するものとした。
第51群の試料は、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とし、はんだ層5の材質を錫(Sn)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は5μmとした。密着層2は応力ゼロとした。
第52群の試料は、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とし、はんだ層5の材質を錫−9wt%亜鉛(Sn−9wt%Zn)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は5μmとした。密着層2は応力ゼロとした。
第53群の試料は、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とし、はんだ層5の材質を錫−5wt%ビスマス(Sn−5wt%Bi)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は5μmとした。密着層2は応力ゼロとした。
第54群の試料は、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とし、はんだ層5の材質を錫−1wt%銀(Sn−1wt%Ag)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は5μmとした。密着層2は応力ゼロとした。
第55群の試料は、金属基材1はアルミニウム合金(A5052)の一種類のみとし、接着層3の材質を銅−10wt%ニッケル(Cu−10wt%Ni)とし、はんだ層5の材質を錫−9wt%亜鉛(Sn−9wt%Zn)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は1μmまたは5μmとした。密着層2は圧縮応力を有するものとした。
第56群の試料は、接着層3の材質を銅(Cu)とし、はんだ層5の材質をニッケル(Ni)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は0.3μmまたは5μmとした。密着層2は圧縮応力を有するものとした。
第57群の試料は、接着層3の材質を銅−10wt%ニッケル−20wt%亜鉛(Cu−10wt%Ni−20wt%Zn)とし、はんだ層5の材質をニッケル(Ni)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は0.3μmまたは5μmとした。密着層2は圧縮応力を有するものとした。
第58群の試料は、接着層3の材質を銅(Cu)とし、はんだ層5の材質を亜鉛(Zn)としたものである。密着層2の膜厚は20nmまたは60nm、接着層3の膜厚は15nmまたは60nm、はんだ層5の膜厚は0.3μmとした。密着層2は応力ゼロとした。
第59群の試料は、接着層3の材質を銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)とし、はんだ層5の材質を銅(Cu)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は0.3μmとした。密着層2は応力ゼロとした。
第60群の試料は、金属基材1はアルミニウム合金(A5052)の一種類のみとし、接着層3の材質を銅−10wt%ニッケル(Cu−10wt%Ni)とし、はんだ層5の材質をニッケル(Ni)としたものである。密着層2の膜厚は20nm、接着層3の膜厚は60nm、はんだ層5の膜厚は0.3μmまたは5μmとした。密着層2は圧縮応力を有するものとした。
すなわち、電解めっき法のようなめっき法によってはんだ層5を形成することにより、保護膜として膜厚がμm単位の極めて厚いはんだ層5を、良好なスループットで形成することができるので、製造コストの高額化を招くことなく、はんだ接合強度のさらなる向上を達成することができる。また、はんだ濡れ性および初期接合強度ならびに歪印加後の濡れ性を良好なものとすることができる。
ここで、はんだ層5の形成材料としては、上記の他にも、錫−銀(Sn−Ag)、錫−亜鉛(Sn−亜鉛)、亜鉛(Zn)等もめっき材料として用いることが可能である。
密着層2の膜厚は、10nm以上500nm以下とすることが望ましい。10nmよりも薄いと、はんだ濡れ性が不足する虞が高くなる。また逆に、500nmよりも厚いと、歪印加後のはんだ濡れ性が低下する虞がある。しかし、500nmよりも厚くても、水素による悪影響(水素脆性)は問題ない。
接着層3の膜厚は、15nm以上とすることが望ましい。15nmよりも薄いと、はんだ濡れ性およびはんだ接合強度の両方が不十分なものとなってしまう虞が高くなる。また、200nmよりも厚いと、歪印加に対して弱くなる傾向がある。
また、接着層3の材質としては、銅−10wt%ニッケル(Cu−10wt%Ni)がもっとも代表的なものとして挙げられるが、特に、ニッケル(Ni)を添加することで、はんだ濡れ性が向上する傾向にある。しかし、純銅(Cu)とし、ニッケル(Ni)無しでも良好なはんだ濡れ性およびはんだ接合強度が得られる。また、銅−40wt%ニッケル(Cu−40wt%Ni)は、ニッケル(Ni)含有度の上限と言える。
また、銅−5wt%亜鉛(Cu−5wt%Zn)とすることで、はんだ濡れ性を確保することができる。また、銅−5wt%ニッケル−10wt%Zn(Cu−5wt%Ni−10wt%Zn)の3元組成とすることで、亜鉛(Zn)の添加による犠牲防食効果と、ニッケル(Ni)の添加によるはんだ濡れ性の向上効果とを両立することができる。
保護層4の材質としては、ニッケル(Ni)単体を用いる場合、その成膜工程および材料コストは高額化する虞もあるが、その性能面では問題なく使用できる。
また、銅−60wt%ニッケル(Cu−60wt%Ni)を用いる場合、性能面では問題なく、ニッケル(Ni)単体よりも若干、安価になるというメリットがある。
あるいは、銅−20wt%ニッケル(Cu−20wt%Ni)を用いる場合、性能面では問題なく、ニッケル(Ni)単体よりも安価になるというメリットがある。
また、銅−5wt%ニッケル(Cu−5wt%Ni)を用いる場合、および錫(Sn)を用いる場合、性能面では問題なく、ニッケル(Ni)単体よりも大幅に安価になるというメリットがある。
また、銅−5wt%ニッケル−10wt%Zn(Cu−5wt%Ni−10wt%Zn)を用いる場合、および銅−10wt%ニッケル−20wt%Zn(Cu−10wt%Ni−20wt%Zn)を用いる場合には、亜鉛(Zn)成分が、犠牲防食材として機能するというメリットがあり、またそれ以外にも、はんだ濡れ性の増強にも寄与するというメリットがある。
また、銅−20wt%亜鉛(Cu−20wt%Zn)を用いる場合、亜鉛(Zn)成分が、犠牲防食材として機能するというメリットがあり、また材料コストも含めた製造コストの低廉化に寄与できるというメリットがある。但し、場合によっては、はんだ濡れ性が低下する虞もある。
また、銅−10wt%ニッケル−40wt%亜鉛(Cu−10wt%Ni−40wt%Zn)は、接着層3に犠牲防食材としての十分な機能が要求される場合などに、多量の亜鉛(Zn)成分の添加を行うことができるというメリットがある。
また、有意な歪印加が行われない場合には、密着層2の膜厚は500nm以下なら問題ない。但し、例えば金型プレス法による機械加工が施されるなど、歪印加が行われる場合には、膜厚は500nm未満、望ましくは120nm以下のような薄くしなければ適用不可となる虞が高くなり、またプレス金型の摩耗等が助長されてしまう虞もある。
また、クロム(Cr)は上記の金属材料のうちでは、材料コスト的に最も安価であり、従って、左様な材料コストを主とする製造コスト低減化の点で、最も有利な特質を有するものである。
この酸素強度比率Xが0.02超であると、それ以外の構造や膜厚や各種プロセス条件等の設定には関係なく、初期はんだ接合強度が不足する虞が高くなるからである。
すなわち、金属基材1を純アルミニウム(Al)の代りにマグネシウム(Mg)含有のアルミニウム合金(A5052)とし、他の構成・実験の条件等は全て、上記の金属基材1を純アルミニウム(Al)からなるものとした場合と同一の設定として試料を作製した。そしてその試料を用いて、酸素強度比率Xを0.04以下とした場合と、0.04超とした場合とについての実験を行い、その結果を検討した。但し、水素処理後のはんだ接合強度については省略した。表21、表22、表23は、その結果を整理し纏めて示すものである。
初期はんだ接合強度が不足するということが確認された。
このような結果から、金属基材1がアルミニウム合金の一種類であるA5052のような、マグネシウム(Mg)を含有する合金からなるものである場合には、スパッタ成膜による出来上がりの密着層2の酸素強度比率Xが0.04以下となるようにすることが望ましいということが確認された。
(1)アルミニウム(Al)材同士を鉛(Pb)フリーはんだで加熱接合することが必要とされる、例えば熱交換器、ヒートシンク、放熱材等。
(2)アルミニウム(Al)製のフィンと銅製のチューブ材とを鉛(Pb)フリーはんだで加熱接合することが必要とされる、クロスフィンチューブ型の熱交換器、ヒートシンク、放熱材等。
(3)ステンレス(SUS)材やチタン(Ti)材を鉛(Pb)フリーはんだで加熱接合することが必要とされる、熱交換器、ヒートシンク、放熱材等。
(4)アルミニウム(Al)線材の外層に、本発明に係る少なくとも密着層2および接着層3を備えた積層構造を形成することにより、鉛(Pb)フリーはんだによる端子接続のような接合も可能な表面処理アルミ線とすることができる。
(5)本発明に係る少なくとも密着層2および接着層3を設けるという表面処理を施したアルミニウム(Al)材、ステンレス(SUS)材、チタン(Ti)材に、銅(Cu)線をはんだ接合した配線材、アンテナ材等。
(6)本発明に係る少なくとも密着層2および接着層3を設けるという表面処理を施してなる、アルミニウム(Al)製のブスバー材、平板状導体、チタン導体材、ステンレス導体材等。
(7)本発明に係る少なくとも密着層2および接着層3を設けるという表面処理を施したアルミニウム(Al)材を加工して作製される、各種電線接続用の圧着端子用板材等。
但し、上記は例示であって、本発明の適用範囲は、上記のみには限定されないことは勿論である。
2 密着層
3 接着層
4 保護層
5 はんだ層
Claims (10)
- はんだによる接合に用いられる表面処理金属材であって、
最表層に不動態被膜を有する金属基材の表面上に、当該金属基材の表面側から順に、
クロム(Cr)を主成分とするスパッタ膜からなり、当該膜の内部残留応力が圧縮応力またはゼロである密着層と、
銅(Cu)、銅とニッケル(Cu−Ni)の混合状態、銅と亜鉛(Cu−Zn)の混合状態、銅とニッケルと亜鉛(Cu−Ni−Zn)の混合状態のうちの少なくともいずれか一種類を主成分とするスパッタ膜からなる接着層と
を形成してなることを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1記載の表面処理金属材において、
前記密着層と前記接着層との界面における、XPSまたはオージェ分析による分光分析法によって2nmの分解能で計測される、酸素(O)の強度/(酸素(O)の強度+前記密着層のクロム(Cr)の強度+前記接着層の成分元素の強度)=Xで定義される酸素強度比率Xが、X≦0.02である
ことを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1記載の表面処理金属材において、
前記金属基材が、マグネシウム(Mg)を意図的に添加された材質からなるものであり、
前記密着層と前記接着層との界面における、XPSまたはオージェ分析による分光分析法によって2nmの分解能で計測される、酸素(O)の強度/(酸素(O)の強度+前記密着層のクロム(Cr)の強度+前記接着層の成分元素の強度)=Xで定義される酸素強度比率Xが、X≦0.04である
ことを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1ないし3のうちいずれか1つの項に記載の表面処理金属材において、
前記密着層の平均厚さが、10nm以上500nm以下である
ことを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1ないし4のうちいずれか1つの項に記載の表面処理金属材において、
前記接着層の平均厚さが、15nm以上である
ことを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1ないし5のうちいずれか1つの項に記載の表面処理金属材において、
前記接着層の上に、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、銅とニッケル(Cu−Ni)の混合状態、銅とニッケルと亜鉛(Cu−Ni−Zn)の混合状態、銅と亜鉛(Cu−Zn)の混合状態のうちの少なくともいずれか一種類を主成分とするスパッタ膜からなる保護層を、さらに備えた
ことを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1ないし5のうちいずれか1つの項に記載の表面処理金属材において、
前記接着層の上に、銅(Cu)またはニッケル(Ni)もしくは亜鉛(Zn)を主成分とするめっき膜からなる保護層を、さらに備えた
ことを特徴とする表面処理金属材。 - 請求項1ないし5のうちいずれか1つの項に記載の表面処理金属材において、
前記接着層の上に、錫(Sn)またははんだ用途対応の組成の錫合金をめっき成膜してなるはんだ層を、さらに備え、または、
前記接着層の上に、保護層、および錫(Sn)またははんだ用途対応の組成の錫合金をめっき成膜してなるはんだ層を、この順にさらに備え、
前記保護層は、
ニッケル(Ni)、錫(Sn)、銅とニッケル(Cu−Ni)の混合状態、銅とニッケルと亜鉛(Cu−Ni−Zn)の混合状態、銅と亜鉛(Cu−Zn)の混合状態のうちの少なくともいずれか一種類を主成分とするスパッタ膜、または、
銅(Cu)若しくはニッケル(Ni)もしくは亜鉛(Zn)を主成分とするめっき膜からなる
ことを特徴とする表面処理金属材。 - はんだによる接合に用いられる表面処理金属材の製造方法であって、
最表層に不動態被膜を有する金属基材の表面上に、当該金属基材の表面側から順に、クロム(Cr)を主成分とするスパッタ膜からなり、当該膜の内部残留応力が圧縮応力またはゼロである密着層と、銅(Cu)、銅とニッケル(Cu−Ni)の混合状態、銅と亜鉛(Cu−Zn)の混合状態、銅とニッケルと亜鉛(Cu−Ni−Zn)の混合状態のうちの少なくともいずれか一種類を主成分とするスパッタ膜からなる接着層とを、成膜する層の材質を切り替える際にも酸素を意図的に排除した不活性ガスの成膜雰囲気を維持した同一チャンバ内で連続してスパッタ成膜する工程を含む
ことを特徴とする表面処理金属材の製造方法。 - 請求項9記載の表面処理金属材の製造方法において、
前記成膜雰囲気の不活性ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを用いて、当該成膜雰囲気における、前記酸素の濃度を0.001%以下とし、かつ当該成膜雰囲気の圧力を1.5Pa以下とする
ことを特徴とする表面処理金属材の製造方法。
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