JP2883144B2 - 耐食性を改善したr―tm―b系永久磁石の製造方法 - Google Patents

耐食性を改善したr―tm―b系永久磁石の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、R−TM−B系永久磁石であって、Niメッキ
の前処理を規定する事で耐食性を著しく改善したものに
関する。
〔従来の技術〕
電気・電子機器の高性能・小型化に伴なって、その一
部品たる永久磁石にも同様の要求が強まってきた。すな
わち以前の最強の永久磁石は希土類・コバルト(R−C
o)系であったが、近年、より強力なR−TM−B系永久
磁石が台頭してきた(特開昭61−34242号)。ここにR
はYを含む希土類元素の1種又は2種以上の組合わせで
あり、TMはFe,Co等の遷移金属中心として、一部を他の
金属元素又は非金属元素で置換したもの、Bは硼素であ
る。
従来のR−Co系磁石は、Coを多量に含有するために、
元来耐食性があり表面処理を必要とするのは装飾品等に
限られていた。
すなわち、R−Co系磁石を無侵食脱脂したのち、下地
処理として無光沢ニッケルメッキを施し、次いで金メッ
キ等の各種メッキを行う表面処理方法が知られていた
(特開昭53−114737号)。
その他にメッキしたR−Co磁石として、脱脂したのち
銅メッキを施し、さらにニッケルメッキを施す発明(特
開昭57−66604号)や、各種メッキを行う事により機械
的強度も併せて向上する発明(特開昭 −86896号)が
知られている。
〔発明が解決しようとする問題点〕
しかし従来の表面処理は素材がそれ自体耐食性を有す
るR−Co系磁石か、又は一般の鋼材の表面を対象として
開発されたものであったため、そのまま素材自体の耐食
性が著しく悪く、一般鋼材よりも劣るR−TM−B系磁石
に適用すると以下の様な問題点があった。
(1) R−Co系磁石と比べて、R−TM−B系磁石は加
工による影響を受けやすく、加工変質層が厚い。従っ
て、従来のメッキを施したのでは、加工変質層を起点と
して被覆層が全体的に剥離するという問題点があった。
(2) またNiメッキの前処理による影響がメッキ後残
留する事で、メッキ下に非常に腐食されやすい層が形成
され、耐食性が著しく劣化するという問題点もあった。
従って本発明は耐食性の著しく改善されたR−TM−B
系永久磁石を提供することにある。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、R(ここでRは、Yを含む希土類元素の1
種又は2種類以上の組合わせ)、TM(ここでTMは、Fe,C
oを中心とする遷移金属であって、一部を他の金属元素
又は非金属元素で置換してよい。)、B(硼素)からな
るR−TM−B系永久磁石において、該永久磁石体表面に
Niメッキをほどこす前処理として硝酸による第1エッチ
ング及び過酸化水素と酢酸の混酸による第2エッチング
を行い、加工劣化層がなく耐食性にすぐれた事を特徴と
するR−TM−B系永久磁石の製造方法である。
本発明において、TMの一部を置換する元素は、その添
加目的に応じて、Ga,Al,Ti,V,Cr,Mn,Zr,Hf,Nb,Ta,Mo,G
e,Sb,Sn,Bi,Ni他を添加でき、本発明はいかなるR−TM
−B系磁石にも適用できる。また、この製造方法は焼結
法、溶湯急冷法、あるいはそれらの変形法のいずれの方
法でもよい。
製造方法としては、有機溶剤による脱脂の後にメッキ
を施す。電流密度は1〜2A/dm2が良い。
メッキ層の厚さは5〜20μmがよい。
ここで重要なのは、R−TM−B系磁石素材の前処理で
あって加工変質層の除去が重要である。すなわち、R−
TM−B系磁石は研削、切断等の加工を施されるが、この
際に加工変質層が形成されその厚みは5〜20μmであ
る。従来はNiメッキ前処理を行う場合、硫酸等を用いる
事で加工変質層の除去及びメッキ前活性化を行っていた
が、前処理条件が本材質に激しすぎる為、メッキ後もこ
の影響がメッキ下に残り、Niメッキ下で腐食が進行し被
膜が剥離してしまう事が多かった。
そこで本発明者はNiメッキ前の前処理として2〜10%
の硝酸による第1エッチング、次に過酸化水素5〜10vo
l.%、酢酸10〜30vol.%の混酸による第2エッチングに
より本材料の耐食性が著しく向上する事を知見した。
これは硝酸による加工劣化層の除去、次いで行なわれ
る過酸化水素,酢酸の混酸による活性化により素材とメ
ッキの密着性が向上する為と思われる。
次いでNiメッキ処理を行う。
Niメッキの種類としてはワット浴,スルファミン酸
浴,アンモン浴いずれでもよいが光沢メッキが良い。多
層,単層でも良いが無光沢メッキは柱状晶組織を有する
為、好ましくない。ただし密着性が良く、応力も少ない
事から、多層メッキの下地としては有効である。
この被覆層の厚さは5〜20μm程度が好適である。
なお、本発明において多層メッキは2層メッキに限定
されない。またクロメート処理ののちに樹脂コーティン
グする事により更に耐食性は改善される。
〔実施例〕
(実施例1) Nd(Fe0.7Co0.20.07Ga0.036.5なる組成の合金を
アーク溶解にて作製し、得られたインゴットをスタンプ
ミル及びディスクミルで粗粉砕した。
粉砕媒体としてN2ガスを用いジェットミルで微粉砕を
行なう粉砕粒度3.5μm(FSSS)の微粉砕粉を得た。
得られた原料粉を15kOeの磁場中で横磁場成形した。
成形圧力は2トン/cm2であった。本成形体を真空中で10
90℃×2時間焼結した。焼結体を18×10×6mm寸法に切
り出し次いで900℃のアルゴン雰囲気中に2時間加熱保
持した後に急冷し温度を600℃に保持したアルゴン雰囲
気中で1時間保持した。
こうして得られた試料を以下の表面処理を行った。
すなわち第1表に示す作業条件で、前処理を行ない光
沢ワット浴によるメッキを行った実施例と比較例として
強酸による前処理を行った。
第2表に実施例と比較例を対比して示す。
本発明においては耐食性を著しく向上し得ることがわ
かる。
第2表において耐酸化性を示す指標としてコーナー部
のメッキ剥離後119.6℃×2気圧100%湿度に放置した場
合の酸化によるメッキ膜剥離及び、密着性を示す指標と
してメッキ直後のメッキ剥離の有無について示した。
なお試料数は各20ケを取った。
本発明に係るR−TM−B系永久磁石の断面組織写真及
び比較として第1表、試料番号2の断面を示す。Ni下劣
化の様子を示すため研磨後5%硝酸エチルアルコール溶
液により腐食を行った。
第1図は本発明,第2図は比較例である。第1図はNi
膜下の組織が残っているが、第2図の場合は、Ni膜下に
劣化層が見られ、耐食性が悪い原因となっている。
(実施例2) 実施例1で得られた試料1,試料3を25kOeの磁場中で
着磁後、熱減磁特性を測定した。
結果を第3図に示す。
ここで試料の寸法は11.2×12.6×8.9mmであり、メッ
キ膜厚は10μmである。恒温槽の中で各温度に1時間放
置した。比較例は前処理としてHClが2vol%のもので5
分間処理したものである。
本発明の減磁特性は比較例に比べて小さくなってい
る。これは比較例のNiメッキ前処理が過度であったため
Ni下に劣化層が生じたためである。
〔発明の効果〕
本発明によれば、希土類と鉄を主体として磁石におい
て、従来のメッキでは不十分であった耐食性の顕著な向
上が図られた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る永久磁石の断面の金属組織を示す
写真、第2図は比較例の永久磁石の断面の金属組織を示
す写真、第3図は減磁特性曲線図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】R(ここでRは、Yを含む希土類元素の1
    種又は2種類以上の組合せ)、TM(ここでTMは、Fe,Co
    を中心とする遷移金属であって、一部を他の金属元素又
    は非金属元素で置換してもよい。)、B(硼素)からな
    るR−TM−B系永久磁石において、耐食性改善を目的と
    して被覆するNiメッキの前処理として、硝酸による第1
    エッチング及び過酸化水素、酢酸の混酸による第2エッ
    チングを組合せて行う事で耐食性を改善したR−TM−B
    系永久磁石の製造方法。
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