JP6642184B2 - R−t−b系焼結磁石 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類元素(R)、Fe又はFe及びCoを必須とする少なくとも1種以上の鉄族元素(T)及びホウ素(B)を主成分とするR−T−B系焼結磁石に関するものである。
R−T−B系焼結磁石は、優れた磁気特性を有することから、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、ハイブリッド車に搭載するモータ等の各種モータや、家電製品等に使用されている。R−T−B系焼結磁石をモータ等に使用する場合、高温での使用環境に対応するために、耐熱性に優れ、しかも高い保磁力を有することが要求される。
一般に、R−T−B系焼結磁石の主相粒子の平均粒径を小さくすることで、保磁力を高めることができることが知られている。例えば、特許文献1には、R−T−B系焼結磁石中の主相の結晶粒径を円相当径で8μm以下とし、かつ4μm以下の結晶粒子の占める面積率を主相全体の80%以上とすることで、R−T−B系焼結磁石の保磁力を向上させる技術が開示されている。
また、R−T−B系焼結磁石は優れた磁気特性を有するものの、主成分として酸化され易い希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、耐食性を向上させるために、R−T−B系焼結磁石の表面上に樹脂塗装やめっき等の保護膜を形成することが多い。保護膜が剥がれると、剥がれた箇所から腐食が広がり、R−T−B系焼結磁石の磁気特性が低下してしまうため、保護膜との密着強度を大きくし耐食性を高めることは重要な課題である。
保護膜との密着強度を向上させる試みとして、例えば特許文献2では、R(ただし、RはYを含む希土類元素の1種類以上)、FeおよびBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に、電気めっきにより保護層を設層する永久磁石の製造方法において、前記永久磁石体の表面層を硝酸とアルドン酸またはその塩とを含む処理液により、5μm以上溶解する溶解処理を行い、次いで、前記電気めっきによる保護層を設層することによって、強固に保護膜を密着する技術が提案されている。
国際公開2009/122709号パンフレット 特開平4―283911号公報
本発明者らは、高保磁力かつ高い耐食性を持つR−T−B系焼結磁石を作製するため、主相粒子の平均粒径が小さなR−T−B系焼結磁石に対して、保護膜の形成を試みたところ、R−T−B系焼結磁石の主相粒子の粒径が小さくなるほど、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着強度が低下することが明らかとなった。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、R−T−B系焼結磁石の主相粒子の平均粒径が2.8μm以下であっても、保護膜との密着強度が実用上十分に大きいR−T−B系焼結磁石を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは、R−T−B系焼結磁石の主相粒子の粒径が小さくなった場合に、保護膜との密着強度が低下するメカニズムについて鋭意研究をした。R−T−B系焼結磁石に保護膜を形成する際は、エッチング等の前処理を施すことが一般的であるが、前処理後のR−T−B系焼結磁石の表面は、R−T−B系焼結磁石の表面付近の粒子の形を反映した状態となる。したがってR−T−B系焼結磁石の主相粒子の平均粒径が小さくなると、それに伴ってR−T−B系焼結磁石の表面の粗さも小さくなる。R−T−B系焼結磁石の表面の粗さが小さくなると、保護膜を形成した際に、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着面積が減少するため、保護膜との密着強度が低下する。R−T−B系焼結磁石の表面の粗さを大きくするために、R−T−B系焼結磁石の主相粒子の平均粒径を大きくすることや、主相粒子の一部として大きな主相粒子を混在させることが考えられるが、それらの方法ではR−T−B系焼結磁石の保磁力を大きく損ねてしまうため、主相粒子の平均粒径が小さいR−T−B系焼結磁石において、高い保磁力と、保護膜との高い密着強度とを両立させることは困難であった。
そこで、本発明者らは、R−T−B系焼結磁石の保磁力を損なわずに、保護膜との高い密着強度を得る方法について鋭意研究し、R−T−B系焼結磁石内の3つ以上の主相粒子によって形成された三重点に、主相粒子よりも粒径が大きい希土類酸化物粒子を形成することにより、R−T−B系焼結磁石の保磁力を低下させずに、R−T−B系焼結磁石の表面の粗さを大きくでき、保護膜との密着強度を高めることが出来ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明に係るR−T−B系焼結磁石は、R14B型化合物からなる主相粒子を有するR−T−B系焼結磁石であって、3つ以上の前記主相粒子によって形成された三重点に希土類酸化物粒子を有し、前記主相粒子の平均粒径をD1、前記希土類酸化物粒子の平均粒径をD2とした時、D1が2.8μm以下であり、D2/D1が1.2以上である、ことを特徴とする。
R−T−B系焼結磁石の表面に対しエッチング等の前処理を行うと、R−T−B系焼結磁石の表面に存在する希土類酸化物粒子が除去され、その部分がくぼみとなる。本発明のR−T−B系焼結磁石においては、D2/D1が1.2以上であるため、希土類酸化物粒子が主相粒子よりも大きく、主相粒子の大きさよりも大きなくぼみが形成されるため、R−T−B系焼結磁石の表面の粗さが増加する。その結果、保護膜を形成した際に、保護膜との密着面積が増加し、保護膜との密着強度が向上する。R−T−B系焼結磁石の主相粒子の粒径を大きくした場合は、R−T−B系焼結磁石の磁気特性の低下が見られるが、粒界中の希土類酸化物粒子の粒径を大きくしても、R−T−B系焼結磁石の磁気特性の低下は起こりにくい。
また、本発明においては、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面に対して前記希土類酸化物粒子の占める面積割合が1.0%以上6.0%以下であることが好ましい。上記を満たす範囲内であることにより、R−T−B系焼結磁石の保護膜との密着強度を更に向上できると共に、良好な磁気特性を有することができる。
本発明によれば主相粒子の平均粒径が2.8μm以下と小さいR−T−B系焼結磁石においても、保護膜を形成した際に保護膜が強固に密着し、耐食性を上げることが出来る。
図1は、本発明に係るR−T−B系焼結磁石の断面構成を示す模式図である。 図2は、本発明の実施形態に係るR−T−B系焼結磁石を製造する方法の一例を示すフローチャートである。 図3は、実施例1−1のR−T−B系焼結磁石の任意の切断面の反射電子像である。 図4は、実施例1および比較例1における「D2/D1」と密着強度との関係を示すグラフである。 図5は、実施例1における、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面における希土類酸化物粒子の面積割合と密着強度との関係を示すグラフである。 図6は、実施例2および比較例2における「D2/D1」と密着強度との関係を示すグラフである。 図7は、実施例3および比較例3における「D2/D1」と密着強度との関係を示すグラフである。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
<R−T−B系焼結磁石>
本発明の実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の実施形態について説明する。図1に示すように、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石は、R14B型化合物から成る主相粒子1と、主相粒子1の間に存在する粒界2を有する。粒界2は、隣り合う2つの主相粒子によって形成される二粒子粒界3と、3つ以上の主相粒子によって形成される三重点4から構成される。三重点4は希土類酸化物粒子5を含み、希土類酸化物粒子5の平均粒径D2と主相粒子1の平均粒径D1の比D2/D1は1.2以上である。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石に含まれる主相粒子は、希土類元素(R)、FeまたはFeおよびCoを必須とする少なくとも1種以上の鉄族元素(T)およびホウ素(B)を主成分とするR14B型化合物からなる。R14B型化合物は、R14B型の正方晶からなる結晶構造を有するものである。
Rは、希土類元素の少なくとも1種を表す。希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するScとYとランタノイド元素とのことをいう。ランタノイド元素には、例えば、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等が含まれる。希土類元素は、軽希土類および重希土類に分類され、重希土類元素(以下、RHともいう)とは、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいい、軽希土類元素(以下、RLともいう)はそれ以外の希土類元素である。
本実施形態では、Tは、Fe、またはFeおよびCoを含む1種以上の鉄族元素を示すものである。Tは、Fe単独であってもよく、Feの一部がCoで置換されていてもよい。Feの一部をCoに置換する場合、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。
本実施形態に係るR14B型化合物においては、Bは、Bの一部を炭素(C)に置換することができる。この場合、磁石の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。また、Cの置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とする。
本実施形態に係るR14B型化合物は、各種公知の添加元素を含んでもよい。具体的には、Ti、V、Cu、Cr、Mn、Ni、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Al、Ga、Si、Bi、Snなどの元素の少なくとも1種の元素を含んでいてもよい。
本実施形態においては、R−T−B系焼結磁石の断面を画像処理等の手法を用いて解析することによって、主相粒子の平均粒径を求める。具体的には、R−T−B系焼結磁石の断面における各主相粒子の断面積を画像解析により求めたうえで、該断面積を有する円の直径(円相当径)を、その断面における該主相粒子の粒径と定義する。さらに、該断面において解析対象とした視野に存在する全主相粒子について粒径を求め、(主相粒子の粒径の合計値)/(主相粒子の個数)で表される算術平均値を、該R−T−B系焼結磁石における主相粒子の平均粒径と定義する。なお、異方性磁石の場合には。R−T−B系焼結磁石の磁化容易軸に平行な断面を評価に用いる。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石に含まれる主相粒子の平均粒径は、2.8μm以下である。主相粒子の平均粒径を2.8μm以下とすることにより、高い保磁力を得ることが可能となる。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石は、粒界中に希土類酸化物粒子を有する。本実施形態に置いては、少なくとも希土類元素と酸素を主成分として含有し、希土類元素の原子数に対する酸素の原子数の比率が0.1を超える組成を有する粒子を、希土類酸化物粒子とする。希土類酸化物粒子は粒界中において少なくとも三重点に含まれ、さらに二粒子粒界にあってもよい。希土類酸化物粒子は希土類酸化物から構成され、希土類酸化物としては、RO、R、RO(0.1<x<1)があげられる。中でも、希土類酸化物は、ROであることが好ましい。ROは、酸素欠陥を有するため、エッチング等の前処理を行う際に、R−T−B系焼結磁石表面からの除去が容易である。そのため、前処理後に形成されるくぼみの数が増加しやすくなり、保護膜を形成した際に、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着強度が増加しやすくなる。また、ROは、組成の一部としてC、Nから選ばれる少なくとも一種を含有することがさらに好ましい。このような希土類酸化物粒子を有することにより、さらに焼結磁石表面からの除去が容易となり、保護膜の密着強度が上がりやすくなる。
また、粒界には主相粒子よりRが多いRリッチ相が含まれていることが好ましく、Rリッチ相以外に、Bが多いBリッチ相が含まれていてもよい。
前記R−T−B系焼結磁石は、主相粒子の平均粒径をD1、希土類酸化物粒子の平均粒径をD2としたとき、主相粒子の平均粒径と希土類酸化物粒子の平均粒径の比率D2/D1が1.2以上である。主相粒子の平均粒径と希土類酸化物粒子の平均粒径の比率D2/D1が1.2以上であることによって、R−T−B系焼結磁石にエッチング等の前処理を施した際に形成されるくぼみが大きくなる。それによってR−T−B系焼結磁石の表面の粗さが増加し、保護膜を形成した際に、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着強度が増加する。
なお、本実施形態において、希土類酸化物粒子の平均粒径は、前述した主相粒子の平均粒径と同様にして求めることが出来る。
さらに、主相粒子の平均粒径と希土類酸化物粒子の平均粒径の比率D2/D1は、1.4以上であることがより好ましい。D2/D1が1.4以上であることによって、R−T−B系焼結磁石にエッチング等の前処理を施した際に形成されるくぼみがより大きくなり、それによってR−T−B系焼結磁石の表面の粗さが増加しやすくなり、保護膜を形成した際に、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着強度が増加しやすくなる。また、主相粒子の平均粒径と希土類酸化物粒子の平均粒径の比率D2/D1は、5.0以下であることが好ましい。D2/D1が5.0よりも大きい場合、R−T−B系焼結磁石の機械的強度が低下し易い傾向がある。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石に含まれる希土類酸化物粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましい。希土類酸化物粒子の平均粒径が、10μmよりも大きい場合、R−T−B系焼結磁石の機械的強度が低下し易い傾向がある。
また、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石においては、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面における希土類酸化物粒子の面積割合は、1.0%以上6.0%以下の範囲内であることが好ましい。R−T−B系焼結磁石の任意の切断面における希土類酸化物粒子の面積割合が1.0%よりも小さいと、R−T−B系焼結磁石にエッチング等の前処理を施した際に、十分な数のくぼみが形成されにくい。その結果、R−T−B系焼結磁石の表面の粗さが増加しにくいため、保護膜との密着強度が向上しにくくなる。またR−T−B系焼結磁石の任意の切断面における希土類酸化物粒子の面積割合が6.0%より大きいと、主相粒子の体積割合低下により残留磁束密度が低下し易くなる、もしくは粒界に含まれるRリッチ相の体積割合低下により保磁力が低下しやすくなる、という傾向がある。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石におけるRの含有量は、25質量%以上35質量%以下であり、好ましくは28質量%以上33質量%以下である。Rの含有量が25質量%未満では、R−T−B系焼結磁石の主相粒子となるR14B型化合物の生成が十分ではない。このため、軟磁性を持つα−Feなどが析出し、磁気特性が低下する可能性がある。Rの含有量が35質量%を超えると、R−T−B系焼結磁石に含まれるR14B型化合物の割合が減少するため、残留磁束密度が低下してしまう。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石におけるBの含有量は、0.5質量%以上1.5質量%以下であり、好ましくは0.8質量%以上1.2質量%以下であり、より好ましいBの量は0.8質量%以上1.0質量%以下である。Bの含有量が0.5質量%未満となると保磁力HcJが低下する。また、Bの含有量が1.5質量%を超えると、残留磁束密度Brが低下する傾向がある。
Tは、上述の通り、Fe又はFe及びCoを含む1種以上の鉄族元素を示すものである。Tは、Fe単独であってもよく、Feの一部がCoで置換されていてもよい。本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石におけるFeの含有量は、R−T−B系焼結磁石の構成要素における実質的な残部であり、Feの一部をCoで置換してもよい。Feの一部をCoに置換してCoを含める場合、Coの含有量は4質量%以下の範囲が好ましく、0.1質量%以上2質量%以下とすることがより好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下とすることが更に好ましい。
本実施形態のR−T−B系焼結磁石は、Zrを含むことが好ましい。Zrの含有量は、好ましくは0.1〜2.5質量%、さらに好ましくは0.4〜2.0質量%である。Zrをこのような範囲で含有することにより、微粉砕粉末の粒径を細かくした場合においても、焼結時の粒成長を十分に抑制することができるようになる。
本実施形態のR−T−B系焼結磁石においては、Gaを含むことが好ましい。Gaの含有量は、好ましくは0.2〜1.5質量%、さらに好ましくは0.4〜1.0質量%である。Gaを含有することにより、時効処理時に厚い二粒子粒界を形成しやすくなり、高い保磁力を得やすくなる。Gaの含有量が1.5質量%を超えると、残留磁束密度が低下する傾向がある。また、Gaの含有量が0.2質量%未満となると保磁力が低下する傾向にある。
本実施形態のR−T−B系焼結磁石においては、Cuを含むことが好ましい。Cuの含有量は、好ましくは0.05〜1.5質量%、さらに好ましくは0.15〜0.6質量%である。Cuを含有することにより、得られる磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Cuの含有量が1.5質量%を超えると、残留磁束密度が低下する傾向がある。また、Cuの含有量が0.05質量%未満となると、保磁力が低下する傾向にある。
本実施形態のR−T−B系焼結磁石においては、Alを含有することが好ましい。Alを含有させることにより、得られる磁石の高保磁力化、高耐食性化、温度特性の改善が可能となる。Alの含有量は0.03質量%以上0.6質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上0.4質量%以下がより好ましい。
本実施形態のR−T−B系焼結磁石においては、上記以外の添加元素を含んでもよい。具体的には、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Si、Bi、Snなどが挙げられる。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石においては、一定量の酸素(O)を含まなければならない。一定量とは、他のパラメータ等で変化し適量決定されるが、酸素量は、三重点に目的とする希土類酸化物を形成する観点から、500ppm以上2000ppm以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石中の炭素(C)量は、他のパラメータ等によって変化し適量決定されるが、炭素量は多すぎても少なすぎても磁気特性は低下する。そのため、炭素量は、400ppm以上3000ppm以下が好ましく、より好ましくは400ppm以上2500ppm以下、特に好ましくは400ppm以上2000ppm以下とする。
また、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石中の窒素(N)量は、1000ppm以下とすることが好ましく、より好ましくは800ppm以下、特に好ましくは600ppm以下とする。
R−T−B系焼結磁石中の酸素量、炭素量、窒素量の測定方法は、一般的に知られている方法を用いることができる。酸素量は、例えば、不活性ガス融解−非分散型赤外線吸収法により測定され、炭素量は、例えば、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法により測定され、窒素量は、例えば、不活性ガス融解−熱伝導度法により測定される。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石は、一般的には任意の形状に加工されて使用される。本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の形状は特に限定されるものではなく、例えば、直方体、六面体、平板状、四角柱などの柱状、R−T−B系焼結磁石の断面形状がC型の円筒状等の任意の形状とすることができる。四角柱としては、たとえば、底面が長方形の四角柱、底面が正方形の四角柱であってもよい。
また、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石には、当該磁石を加工して着磁した磁石製品と、当該磁石を着磁していない磁石製品との両方が含まれる。
<R−T−B系焼結磁石の製造方法>
上述したような構成を有する本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石を製造する方法の一例について図面を用いて説明する。図2は、本発明の実施形態に係るR−T−B系焼結磁石を製造する方法の一例を示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石を製造する方法は、以下の工程を有する。
(a)原料合金を準備する合金準備工程(ステップS11)
(b)原料合金を粉砕する粉砕工程(ステップS12)
(c)粉砕した原料粉末を成形する成形工程(ステップS13)
(d)成形体を焼結し、R−T−B系焼結磁石を得る焼結工程(ステップS14)
(e)R−T−B系焼結磁石を時効処理する時効処理工程(ステップS15)
(f)R−T−B系焼結磁石を冷却する冷却工程(ステップS16)
[合金準備工程:ステップS11]
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石における原料合金を準備する(合金準備工程(ステップS11))。合金準備工程(ステップS11)では、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の組成に対応する原料金属を、真空またはArガスなどの不活性ガス雰囲気中で溶解した後、これを用いて鋳造を行うことによって所望の組成を有する原料合金を作製する。なお、本実施形態では、原料合金として単独の合金を使用する1合金法の場合について説明するが、第1合金と第2合金との2種類の合金を混合して原料粉末を作製する2合金法を用いてもよい。
原料金属としては、例えば、希土類金属あるいは希土類合金、純鉄、フェロボロン、さらにはこれらの合金や化合物等を使用することができる。原料金属を鋳造する鋳造方法は、例えばインゴット鋳造法やストリップキャスト法やブックモールド法や遠心鋳造法などである。得られた原料合金は、凝固偏析がある場合は必要に応じて均質化処理を行う。原料合金の均質化処理を行う際は、真空または不活性ガス雰囲気の下、700℃以上1500℃以下の温度で1時間以上保持して行う。これにより、R−T−B系焼結磁石用合金は融解されて均質化される。
[粉砕工程:ステップS12]
原料合金が作製された後、原料合金を粉砕する(粉砕工程(ステップS12))。粉砕工程(ステップS12)は、粒径が数百μm〜数mm程度になるまで粉砕する粗粉砕工程(ステップS12−1)と、粒径が数μm程度になるまで微粉砕する微粉砕工程(ステップS12−2)とがある。
(粗粉砕工程:ステップS12−1)
原料合金を各々粒径が数百μm〜数mm程度になるまで粗粉砕する(粗粉砕工程(ステップS12−1))。これにより、原料合金の粗粉砕粉末を得る。粗粉砕は、原料合金に水素を吸蔵させた後、異なる相間の水素吸蔵量の相違に基づいて水素を放出させ、脱水素を行なうことで自己崩壊的な粉砕を生じさせる(水素吸蔵粉砕)ことによって行うことができる。
なお、粗粉砕工程(ステップS12−1)は、上記のように水素吸蔵粉砕を用いる以外に、不活性ガス雰囲気中にて、スタンプミル、ジョークラッシャー、ブラウンミル等の粗粉砕機を用いて行うようにしてもよい。
また、高い磁気特性を得るために、粉砕工程(ステップS12)から焼結工程(ステップS14)までの各工程の雰囲気は、低酸素濃度とすることが好ましい。酸素濃度は、各製造工程における雰囲気の制御等により調節される。各製造工程の酸素濃度が高いと原料合金の粉末中の希土類元素が酸化してR−T−B系焼結磁石の酸素量が増大し、R−T−B系焼結磁石の保磁力低下につながってしまう。そのため、例えば、各工程の酸素の濃度を100ppm以下とすることが好ましい。
(微粉砕工程:ステップS12−2)
原料合金を粗粉砕した後、得られた原料合金の粗粉砕粉末を平均粒径が数μm程度になるまで微粉砕する(微粉砕工程(ステップS12−2))。これにより、原料合金の微粉砕粉末を得る。粗粉砕した粉末を更に微粉砕することで、好ましくは0.1μm以上2.8μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.0μm以下の粒子を有する微粉砕粉末を得る。微粉砕粉末の平均粒径をこのような範囲とすることで、焼結後の主相粒子の平均粒径を2.8μm以下とすることができる。
微粉砕は、粉砕時間等の条件を適宜調整しながら、ジェットミル、ビーズミル等の微粉砕機を用いて粗粉砕した粉末の更なる粉砕を行なうことで実施される。ジェットミルは、高圧の不活性ガス(たとえば、Nガス)を狭いノズルより開放して高速のガス流を発生させ、この高速のガス流により原料合金の粗粉砕粉末を加速して原料合金の粗粉砕粉末同士の衝突やターゲットまたは容器壁との衝突を発生させて粉砕する乾式粉砕法である。
特に、細かい粒径の微粉砕粉末をジェットミルを用いて得ようとする場合、粉砕された粉末表面が非常に活性であるため、粉砕された粉末同士の再凝集や、容器壁への付着が起こりやすく、収率が低くなる傾向がある。そのため、原料合金の粗粉砕粉末を微粉砕する際には、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸アミド等の粉砕助剤を添加して、粉末同士の再凝集や、容器壁への付着を防ぐことで、高い収率で微粉砕粉末を得ることができる。また、このように粉砕助剤を添加することにより、成形時に配向性の高い微粉砕粉末を得ることも可能となる。粉砕助剤の添加量は、微粉砕粉末の粒径や添加する粉砕助剤の種類によっても変わるが、質量%で0.1%〜1.0%程度が好ましい。
ジェットミルのような乾式粉砕法以外の手法として、湿式粉砕法がある。湿式粉砕法としては、小径のビーズを用いて高速撹拌させるビーズミルが好ましく使用できる。また、ジェットミルで乾式粉砕したのち、さらにビーズミルで湿式粉砕を行う多段粉砕を行ってもよい。
R−T−B系焼結磁石内に適切な粒径、量の希土類酸化物粒子を形成させるため、微粉砕粉末には、原料合金とは異なる、酸化物粉末を添加することが好ましい。微粉砕粉末に原料合金とは異なる酸化物粉末を所定量添加することにより、得られるR−T−B系焼結磁石の三重点には、目的とする希土類酸化物粒子が形成されやすくなる。
酸化物粉末としては、酸化物の標準生成自由エネルギーが希土類元素より高い元素Mの酸化物を含む粉末が使用できる。Mとしては、具体的には、例えばAl、Fe、Co、Zrなどが挙げられるが、これには限定されない。
希土類酸化物粒子の平均粒径は、添加する酸化物粉末の粒径によって制御できる。最適な酸化物粉末の粒径は、酸化物粉末の種類と、微粉砕粉末の平均粒径により変化する。そのため、使用する微粉砕粉末の粒径に合わせて、目的とする粒径の希土類酸化物粒子を形成するために、酸化物粉末の粒径を調整すればよい。酸化物粉末の粒径が小さすぎると、希土類酸化物粒子の粒径が十分に大きくならず、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着強度が増加しにくい傾向がある。
R−T−B系焼結磁石の任意の切断面における希土類酸化物粒子の占める面積割合は、微粉砕粉末に添加する酸化物粉末の添加量によって制御できる。最適な酸化物粉末の添加量は、酸化物粉末の種類と、微粉砕粉末の組成により変化する。そのため、使用する微粉砕粉末の組成に合わせて、目的とする面積割合の希土類酸化物粒子を形成するために、酸化物粉末の添加量を調整すればよい。酸化物粉末の添加量が少なすぎると、形成される希土類酸化物粒子の数が少なくなり、R−T−B系焼結磁石と保護膜との密着強度が低下する傾向がある。酸化物粉末の添加量が多すぎると、主相粒子の体積比率が減少するため、R−T−B系焼結磁石の磁気特性が低くなりやすい傾向がある。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石の粒界に形成される希土類酸化物粒子は、以下のようにして生成されていると考えられる。すなわち、添加した酸化物粉末に含まれるMの酸化物は、酸化物の標準生成自由エネルギーが希土類元素Rよりも高い。そのため、R−T−B系原料合金に、酸化物粉末を添加して焼結し、焼結体を作製する際、Mの酸化物は、焼結中に発生したRリッチの液相によって還元され、M金属とOを生成する。M金属は主相粒子、またはRリッチ相に取り込まれる一方で、Mを失ったOはRリッチ相のRと反応して、希土類酸化物粒子として粒界、特に三重点に析出すると考えられる。そのため形成された希土類酸化物粒子の粒径は、添加した酸化物粉末の粒径を反映した大きさとなると考えられる。
[成形工程:ステップS13]
原料合金を微粉砕した後、微粉砕粉末を目的の形状に成形する(成形工程(ステップS13))。成形工程(ステップS13)では、微粉砕粉末を、電磁石間に配置された金型内に充填して加圧することによって、微粉砕粉末を任意の形状に成形する。このとき、磁場を印加しながら行い、磁場印加によって微粉砕粉末に所定の配向を生じさせ、結晶軸を配向させた状態で磁場中成形する。これにより成形体が得られる。得られる成形体は、特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性を有するR−T−B系焼結磁石が得られる。
成形時の加圧は、30MPa〜300MPaで行うことが好ましい。印加する磁場は、950kA/m〜1600kA/mであることが好ましい。印加する磁場は静磁場に限定されず、パルス状磁場とすることもできる。また、静磁場とパルス状磁場を併用することもできる。
なお、成形方法としては、上記のように微粉砕粉末をそのまま成形する乾式成形のほか、微粉砕粉末を油等の溶媒に分散させたスラリーを成形する湿式成形を適用することもできる。
微粉砕粉末を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、例えば直方体、平板状、柱状、リング状等、所望とするR−T−B系焼結磁石の形状に応じて任意の形状とすることができる。
[焼結工程:ステップS14]
磁場中で成形し、目的の形状に成形して得られた成形体を真空または不活性ガス雰囲気中で焼結し、R−T−B系焼結磁石を得る(焼結工程(ステップS14))。成形体に対して、例えば、真空中または不活性ガスの存在下、900℃以上1200℃以下で1時間以上72時間以下で加熱する処理を行うことにより焼結する。これにより、微粉砕粉末が液相焼結を生じ、主相の体積比率が向上したR−T−B系焼結磁石(R−T−B系磁石の焼結体)が得られる。主相粒子の平均粒径を2.8μm以下とするためには、焼結温度、焼結時間を、組成、粉砕方法、平均粒径と粒径分布の違い等、諸条件に合わせて調整する必要がある。
成形体を焼結した後は、生産効率を向上させる観点から焼結体は急冷することが好ましい。
[時効処理工程:ステップS15]
成形体を焼結した後、R−T−B系焼結磁石を時効処理する(時効処理工程(ステップS15))。焼結後、得られたR−T−B系焼結磁石を焼結時よりも低い温度で保持することなどによって、R−T−B系焼結磁石に時効処理を施す。時効処理は、真空中または不活性ガスの存在下、400℃以上900℃以下で10分以上10時間以下で加熱することにより行うことができる。時効処理は、必要に応じて、温度を変えて、複数回処理を行ってもよい。このような時効処理によって、R−T−B系焼結磁石の磁気特性を向上させることができる
[冷却工程:ステップS16]
R−T−B系焼結磁石に時効処理を施した後、R−T−B系焼結磁石はArガス雰囲気中で急冷を行う(冷却工程(ステップS16))。これにより、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石を得ることができる。高い保磁力を得るためには、冷却速度は、30℃/min以上とするのが好ましい。
得られたR−T−B系焼結磁石は、必要に応じて所望の形状に加工してもよい。加工方法は、例えば切断、研削などの形状加工や、バレル研磨などの面取り加工などが挙げられる。
加工されたR−T−B系焼結磁石の粒界に対して、さらに重希土類元素を拡散させる工程を有してもよい。粒界拡散は、塗布または蒸着等により重希土類元素を含む化合物をR−T−B系焼結磁石の表面に付着させた後、熱処理を行うことや、重希土類元素の蒸気を含む雰囲気中でR−T−B系焼結磁石に対して熱処理を行うことにより、実施することができる。これにより、R−T−B系焼結磁石の保磁力をさらに向上させることも可能である。
以上の工程によって得られたR−T−B系焼結磁石は、耐食性をさらに向上させるために、めっき被膜や樹脂被膜などの保護膜を形成して使用することが出来る。
例えば、電解めっきにより保護膜を形成する場合には、脱脂、水洗、エッチング(例えば硝酸)、水洗、電解めっきによる成膜、水洗、乾燥という常法を採用することができる。
電解めっきにより形成する保護膜としては、Ni膜やCu膜が好ましく、特にNi膜が好ましく使用できる。Niの電解めっきに用いるめっき浴としては、ワット浴、スルファミン酸浴、ほうフッ化浴、臭化ニッケル浴などが挙げられる。
本実施形態によると、R−T−B系焼結磁石の主相粒子の平均粒径が2.8μm以下と小さくても、前処理後に十分な表面粗さのR−T−B系焼結磁石が得られるため、保護膜との強固な密着強度が得られる。それによって保護膜を形成した際に、保護膜の剥離を抑えられるため高い耐食性が得られる。
本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石は、例えば、ロータ表面に磁石を取り付けた表面磁石型(Surface Permanent Magnet:SPM)回転機、インナーロータ型のブラシレスモータのような内部磁石埋込型(Interior Permanent Magnet:IPM)回転機、PRM(Permanent magnet Reluctance Motor)などの磁石として好適に用いられる。具体的には、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石は、ハードディスクドライブのハードディスク回転駆動用スピンドルモータやボイスコイルモータ、電気自動車やハイブリッドカー用モータ、自動車の電動パワーステアリング用モータ、工作機械のサーボモータ、携帯電話のバイブレータ用モータ、プリンタ用モータ、発電機用モータ等の用途として好適に用いられる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
<R−T−B系焼結磁石の作製>
[実施例1−1〜実施例1−9、比較例1]
まず、24.50wt%Nd−7.50wt%Pr−0.50wt%Co−0.50wt%Ga−0.20wt%Al−0.30wt%Cu−0.85wt%B−1.00wt%Zr−残部Feの組成を有する焼結磁石が得られるように、ストリップキャスティング(SC)法により、上記組成を有する原料合金を作製した。
次いで、これらの各原料合金に室温で水素を吸蔵させた後、600℃で、1時間、脱水素処理を行って、原料合金を水素粉砕(粗粉砕)した。尚、各実施例及び比較例では、この水素粉砕処理から焼結までの各工程(微粉砕及び成形)においては、酸素濃度を50ppm未満の雰囲気として行なった。
次に、水素粉砕後微粉砕を行う前に、各原料合金の粗粉砕粉末に、粉砕助剤として、オレイン酸アミドを0.5wt%添加し、ナウタミキサを用いて混合した。その後、ジェットミルを用いて高圧Arガスによる微粉砕を行った。
その後、得られた微粉砕粉末に、酸化物粉末としてアルミナ粒子を添加し、ナウタミキサを用いて混合し、R−T−B系焼結磁石の原料粉末である混合粉末を調製した。添加したアルミナ粒子の平均粒径、添加量を表1に合わせて示す。
Figure 0006642184
得られた混合粉末を、電磁石中に配置された金型内に充填し、1200kA/mの磁場を印加しながら120MPaの圧力を加え、磁場中で成形し、成形体を得た。その後、得られた成形体を、真空中において1020℃で12時間保持して焼成した後、急冷して、上記の組成を有する焼結体(R−T−B系焼結磁石)を得た。そして、得られた焼結体を、850℃で1時間、及び、480℃で1時間(ともにArガス雰囲気中)の2段階の時効処理を施した後、急冷して、実施例1−1〜実施例1−9及び比較例1のR−T−B系焼結磁石を得た。
<評価>
実施例1−1〜実施例1−9、比較例1で得られたR−T−B系焼結磁石について、組織、磁気特性、保護膜との密着強度を以下のように評価した。
[組織]
得られた各R−T−B系焼結磁石の磁化容易軸に平行な断面を作製し、その表面をイオンミリングで削り、最表面の酸化等の影響を除いた後、EPMA(電子線マイクロアナライザー:Electron Probe Micro Analyzer)で元素分布を観察し、分析した。任意の5ヶ所の50μm角の領域について、NdとOの元素マッピング(256点×256点)を行なった。NdとOの強度が強い箇所を定量分析し、酸素原子の原子数(O)と、希土類元素の原子数の合計(R)との比率(O/R)が0.1以上となる点を、希土類酸化物粒子が存在する箇所として特定した。本実施例において特定した希土類酸化物粒子のO/Rはいずれも0.1以上1.0未満の範囲であった。
次に、EPMAで観察した箇所と同じ範囲を、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)で観察した。SEMで撮影した反射電子像の画像を所定レベルで2値化し、主相粒子と粒界を特定し、観察範囲内の全ての主相粒子の面積を画像解析により算出した。個々の主相粒子の面積を有する円の直径(円相当径)を、それぞれの主相粒子の粒径とし、主相粒子の平均粒径(D1)を求めた。なお、2値化は反射電子像の信号強度を基準に行った。反射電子像の信号強度は原子番号が大きい元素の含有量が多いほど強くなることが知られている。粒界部分には、原子番号の大きい希土類元素が主相部分よりも多く存在しており、所定レベルで2値化して主相粒子と粒界とを特定することは一般的に行われる方法である。
続いて、SEMで撮影したR−T−B系焼結磁石の任意の切断面の反射電子像とEPMAの解析結果を照らし合わせて、反射電子像における希土類酸化物粒子を特定した。具体的には、反射電子像において、EPMAの定量分析で希土類酸化物粒子が存在すると特定した箇所を含む同一コントラストの領域を、希土類酸化物粒子とした。一例として、実施例1−1でSEM観察したR−T−B系焼結磁石の任意の切断面の反射電子像を図3に示す。矢印で示す箇所が希土類酸化物粒子である。このように特定した希土類酸化物粒子について、主相粒子の場合と同様に希土類酸化物粒子の平均粒径(D2)を求めた。
また、観察範囲内の希土類酸化物粒子の面積の総和を、観察範囲の面積で割って、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面に対して希土類酸化物粒子の占める面積割合(S1)を求めた。
このようにして求められた実施例1−1〜実施例1−9、比較例1の各R−T−B系焼結磁石中の主相粒子の平均粒径(D1)、希土類酸化物粒子の平均粒径(D2)、主相粒子の平均粒径と希土類酸化物粒子の平均粒径の比率(D2/D1)、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面に対して希土類酸化物粒子の占める面積割合(S1)を表2に合わせて示す。
[磁気特性]
実施例1−1〜実施例1−9および比較例1で得られた各R−T−B系焼結磁石の磁気特性をB−Hトレーサーを用いて測定した。磁気特性として、残留磁束密度Brと保磁力HcJとを測定した。各R−T−B系焼結磁石の残留磁束密度Brと保磁力HcJの測定結果を表2に示す。
[保護膜の密着強度]
実施例1−1〜実施例1−9および比較例1で得られた各R−T−B系焼結磁石に以下の手順で電解Niめっきを施した。はじめに、各R−T−B系焼結磁石を40mm×20mm×5mmの大きさに加工し、続いて面取りのためバレル研磨を行った。その後硝酸でエッチングを行い、保護膜としてワット浴で10μmの厚みの電解Niめっき膜を形成した。その後、JIS−H8630の附属書1に記載された方法に準じて電解Niめっき膜の密着強度を測定した。具体的には、 引張試験機を用いて保護膜をR−T−B系焼結磁石から引きはがし,めっきの密着力を定量的に測定した。密着強度の値を表2に合わせて示す。また図4は実施例1−1〜実施例1−4および比較例1の密着強度とD2/D1との相関を示したものであり、図5は実施例1−5〜実施例1−9の希土類酸化物粒子の面積割合と密着強度の相関を示したものである。
Figure 0006642184
表2および図4に示すように、(D2/D1)と密着強度は密接な関係を示しており、(D2/D1)が1.2以上である実施例1−1〜実施例1−4はいずれも100N/m以上の密着強度を示した。特に(D2/D1)が1.4を超えると150N/m以上の密着強度を得ることができた。
また、表2と図5に示すように、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面における希土類酸化物粒子の面積割合(S1)に注目すると、S1が1.0%よりも小さい試料は1.0%以上であるものと比較すると、密着強度がやや低い傾向がある。
一方、S1が6.0%よりも大きくなると残留磁束密度が低下する傾向がある。
実施例2
<R−T−B系焼結磁石の作製>
[実施例2−1〜実施例2−4、比較例2]
まず、29.00wt%Nd−2.00wt%Dy−1.50wt%Co−0.10wt%Ga−0.20wt%Al−0.30wt%Cu−1.00wt%B−0.60wt%Zr−残部Feの組成を有する焼結磁石が得られるように、ストリップキャスティング(SC)法により、上記組成を有する原料合金を作製した。
次いで、これらの各原料合金に室温で水素を吸蔵させた後、600℃で、1時間、脱水素処理を行って、原料合金を水素粉砕(粗粉砕)した。尚、各実施例及び比較例では、この水素粉砕処理から焼結までの各工程(微粉砕及び成形)においては、酸素濃度を50ppm未満の雰囲気として行なった。
次に、水素粉砕後微粉砕を行う前に、各原料合金の粗粉砕粉末に、粉砕助剤として、オレイン酸アミドを0.2wt%添加し、ナウタミキサを用いて混合した。その後、ジェットミルを用いて高圧Nガスによる微粉砕を行った。
その後、得られた微粉砕粉末に、酸化物粉末としてアルミナ粒子を添加し、ナウタミキサを用いて混合し、R−T−B系焼結磁石の原料粉末である混合粉末を調製した。添加したアルミナ粒子の平均粒径、添加量を表3に合わせて示す。
Figure 0006642184
得られた混合粉末を、電磁石中に配置された金型内に充填し、1200kA/mの磁場を印加しながら120MPaの圧力を加え、磁場中で成形し、成形体を得た。その後、得られた成形体を、真空中において1030℃で4時間保持して焼成した後、急冷して、上記の組成を有する焼結体(R−T−B系焼結磁石)を得た。そして、得られた焼結体を、850℃で1時間、及び、540℃で2時間(ともにArガス雰囲気中)の2段階の時効処理を施した後、急冷して、実施例2−1〜実施例2−4及び比較例2のR−T−B系焼結磁石を得た。
<評価>
実施例2−1〜実施例2−4、比較例2で得られたR−T−B系焼結磁石について、組織、磁気特性、保護膜との密着強度を実施例1、比較例1と同様に評価した。
実施例2−1〜実施例2−4、比較例2の各R−T−B系焼結磁石中の主相粒子の平均粒径(D1)、希土類酸化物粒子の平均粒径(D2)、主相粒子と希土類酸化物粒子の粒径の比率(D2/D1)、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面に対して希土類酸化物粒子の占める面積割合(S1)を算出した結果を表4に合わせて示す。
[磁気特性]
実施例1、比較例1と同様に、残留磁束密度Brと保磁力HcJとを測定した。各R−T−B系焼結磁石の残留磁束密度Brと保磁力HcJの測定結果を表4に示す。
[保護膜の密着強度]
実施例1、比較例1と同様に保護膜を形成し、密着強度を測定した。図6は実施例2−1〜実施例2−4および比較例2の密着強度とD2/D1との相関を示したものである。
Figure 0006642184
表4および図6に示すように、(D2/D1)と密着強度は密接な関係を有しており、(D2/D1)が1.2以上である実施例2−1〜実施例2−4はいずれも100N/m以上の密着強度を示した。特に(D2/D1)が1.4を超えると150N/m以上の密着強度を得ることができた。
実施例3
<R−T−B系焼結磁石の作製>
[実施例3−1〜実施例3−4、比較例3]
まず、23.00wt%Nd−1.00wt%Dy−6.00wt%Pr−1.00wt%Co−0.20wt%Ga−0.30wt%Al−0.20wt%Cu−0.95wt%B−0.30wt%Zr−残部Feの組成を有する焼結磁石が得られるように、ストリップキャスティング(SC)法により、上記組成を有する原料合金を作製した。
次いで、これらの各原料合金に室温で水素を吸蔵させた後、600℃で、1時間、脱水素処理を行って、原料合金を水素粉砕(粗粉砕)した。尚、各実施例及び比較例では、この水素粉砕処理から焼結までの各工程(微粉砕及び成形)においては、酸素濃度を50ppm未満の雰囲気として行なった。
次に、水素粉砕後微粉砕を行う前に、各原料合金の粗粉砕粉末に、粉砕助剤として、オレイン酸アミドを0.1wt%添加し、ナウタミキサを用いて混合した。その後、ジェットミルを用いて高圧Nガスによる微粉砕を行った。
その後、得られた微粉砕粉末に、酸化物粉末としてアルミナ粒子を添加し、ナウタミキサを用いて混合し、R−T−B系焼結磁石の原料粉末である混合粉末を調製した。添加したアルミナ粒子の平均粒径、添加量を表5に合わせて示す。
Figure 0006642184
得られた混合粉末を、電磁石中に配置された金型内に充填し、1200kA/mの磁場を印加しながら120MPaの圧力を加え、磁場中で成形し、成形体を得た。その後、得られた成形体を、真空中において1050℃で4時間保持して焼成した後、急冷して、上記の組成を有する焼結体(R−T−B系焼結磁石)を得た。そして、得られた焼結体を、850℃で1時間、及び、520℃で2時間(ともにArガス雰囲気中)の2段階の時効処理を施した後、急冷して、実施例3−1〜実施例3−4及び比較例3のR−T−B系焼結磁石を得た。
<評価>
実施例3−1〜実施例3−4、比較例3で得られたR−T−B系焼結磁石について、組織、磁気特性、保護膜との密着強度を実施例1、比較例1と同様に評価した。
実施例3−1〜実施例3−4、比較例3の各R−T−B系焼結磁石中の主相粒子の平均粒径(D1)、希土類酸化物粒子の平均粒径(D2)、主相粒子と希土類酸化物粒子の粒径の比率(D2/D1)、R−T−B系焼結磁石の任意の切断面に対して希土類酸化物粒子の占める面積割合(S1)を算出した結果を表6に合わせて示す。
[磁気特性]
実施例1、比較例1と同様に、残留磁束密度Brと保磁力HcJとを測定した。各R−T−B系焼結磁石の残留磁束密度Brと保磁力HcJの測定結果を表6に示す。
[保護膜の密着強度]
実施例1、比較例1と同様に保護膜を形成し、密着強度を測定した。図7は実施例3−1〜実施例3−4および比較例3の密着強度とD2/D1との相関を示したものである。
Figure 0006642184
表6および図7に示すように、(D2/D1)と密着強度は密接な関係を有しており、(D2/D1)が1.2以上である実施例3−1〜実施例3−4はいずれも100N/m以上の密着強度を示した。特にその比が1.4を超えると150N/m以上の密着強度を得ることができた。
このように、本発明のR−T−B系焼結磁石は、主相粒子の平均粒径を2.8μm以下にするとともに、粒界に希土類酸化物粒子を有し、主相粒子の平均粒径(D1)と希土類酸化物粒子の平均粒径(D2)の比(D2/D1)を1.2以上とすることで、優れた耐食性を有すると共に、良好な磁気特性を有することができる。このため、本実施形態に係るR−T−B系焼結磁石をモータなどの永久磁石として用いれば、SPMモータなどは、モータのトルク特性などモータの性能を有しつつ長期間にわたって高出力を有することができ、信頼性に優れたものとなる。
以上のように、本発明に係るR−T−B系焼結磁石は、モータなどの磁石として好適に用いることができる。
1 主相粒子
2 粒界
3 二粒子粒界
4 三重点
5 希土類酸化物粒子

Claims (1)

  1. 14B型化合物からなる主相粒子を有するR−T−B系焼結磁石であって、3つ以上の前記主相粒子によって形成された三重点に希土類酸化物粒子を有し、前記主相粒子の平均粒径をD1、前記希土類酸化物粒子の平均粒径をD2とした時、D1が2.8μm以下であり、D2/D1が1.2以上であり、
    前記R−T−B系焼結磁石の任意の切断面に対して、前記希土類酸化物粒子の占める面積割合が1.0%以上6.0%以下である、ことを特徴とする、R−T−B系焼結磁石。
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