JP2002329627A - 希土類系永久磁石およびその製造方法 - Google Patents

希土類系永久磁石およびその製造方法

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JP2002329627A JP2001131034A JP2001131034A JP2002329627A JP 2002329627 A JP2002329627 A JP 2002329627A JP 2001131034 A JP2001131034 A JP 2001131034A JP 2001131034 A JP2001131034 A JP 2001131034A JP 2002329627 A JP2002329627 A JP 2002329627A
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earth permanent
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Toshinobu Aranae
稔展 新苗
Kazuhide Oshima
一英 大島
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 酸化性で腐食性の高い電解質溶液(腐食液)
に浸漬して使用しても優れた耐食性を発揮する希土類系
永久磁石およびその製造方法を提供すること。 【解決手段】 その表面が酸化処理されたCuめっき被
膜を磁石表面の最表層として有することを特徴とする希
土類系永久磁石である。また、磁石表面の最表層として
Cuめっき被膜を形成する工程、その後に前記Cuめっ
き被膜の表面を酸化処理する工程を少なくとも含むこと
を特徴とする希土類系永久磁石の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸化性で腐食性の
高い電解質溶液(腐食液)に浸漬して使用しても優れた
耐食性を発揮する希土類系永久磁石およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】Nd−Fe−B系永久磁石に代表される
R−Fe−B系永久磁石などの希土類系永久磁石は、高
い磁気特性を有しているが、酸化腐食されやすい金属種
(特にR)を含むので、表面処理を行わずに使用した場
合には、わずかな酸やアルカリや水分などの影響によっ
て表面から腐食が進行して錆が発生し、それに伴って、
磁気特性の劣化やばらつきを招くことになる。さらに、
磁気回路などの装置に組み込んだ磁石に錆が発生した場
合、錆が飛散して周辺部品を汚染する恐れがある。従っ
て、これらの問題点を回避するために、従来から、該磁
石に要求される耐食性を付与すべく、耐食性被膜として
のNiめっき被膜をその表面に形成することが行われて
いる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、井戸水汲み
上げ用や送液用の水中ポンプ、家電送液ポンプ、自動車
の熱交換器部品用のモーターなどに使用される磁石とし
ては、耐食性に優れたフェライト磁石が従来から使用さ
れてきているが、ポンプやモーターなどの小型化による
省スペース化や効率アップによる省エネルギー化などの
要請から高い磁気特性を有する希土類系永久磁石をフェ
ライト磁石に代えて使用することが検討されている。し
かしながら、希土類系永久磁石を水中で使用されるこれ
らの用途に供するためには当然のことながら大気中で使
用されるものよりも優れた耐食性が要求される。特に家
電や自動車などのエアコンエバポレーター、コンデン
サ、ラジエーター、暖房ヒーターなどの熱交換器部品用
のモーターにおいては、液循環系の構成材料、大気環
境、補給液などから不可避的に混入するCuイオン、塩
素イオン(塩分)、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオ
ンなどの不純物イオンや溶存酸素などの影響により、磁
石が使用される環境が酸化性で腐食性の高い電解質溶液
(腐食液)環境となる場合がある。不純物イオンの中で
もCuイオンや塩素イオンは腐食性が高く、とりわけ、
Cuイオンは強酸化性であるため、希土類系永久磁石表
面にNiめっき被膜を形成した場合でも、Cuイオンが
Niめっき被膜表面に置換析出して腐食の起点になった
り、局部電池を形成して深さ方向の腐食を進行させる傾
向が強く、結果的に、磁石素地に至る腐食(孔食や点
食)により磁気特性が大きく劣化してしまうなどの使用
上の問題がある。従って、希土類系永久磁石を水中で使
用する場合にはCuイオンや塩素イオンに対して如何に
して耐食性を向上させるかが重要な課題となる。そこで
本発明は、酸化性で腐食性の高い電解質溶液(腐食液)
に浸漬して使用しても優れた耐食性を発揮する希土類系
永久磁石およびその製造方法を提供することを目的とす
る。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の点
に鑑み種々の検討を行う過程において、Cuめっき被膜
を希土類系永久磁石表面に形成することに着目した。C
uめっき被膜を希土類系永久磁石表面に形成すれば、N
iめっき被膜のような電位差腐食の問題はない。しかし
ながら、Cuイオンと塩素イオンが共存する腐食液中に
おいてはCuめっき被膜の腐食は進行し、特に10pp
mを越えるCuイオンを含む場合、めっき被膜は塩素イ
オンなどの他の共存イオンによる腐食促進をさらに受け
やすくなること、また、腐食液中の2価のCuイオンが
めっき被膜を構成する金属Cuを攻撃することにより、
金属Cuが2価のCuイオンと反応して1価のCuイオ
ンが生成し、この1価のCuイオンが腐食液中で泥状の
Cu水酸化物に変化するなどしてめっき被膜の腐食が穏
やかながらも進行すること、さらに、溶出する1価のC
uイオンの量が多くなると、Cu水酸化物が多量に生成
して磁石以外の部品に付着したりするといったような悪
影響を及ぼすことなどを知見した。そこで、Cuめっき
被膜の表面を予め酸化処理することにより、その表面を
Cu酸化物化しておけば、上記のような2価のCuイオ
ンによって引き起こされるCuめっき被膜の腐食を効果
的に抑制することができることを知見した。
【0005】本発明は、上記の知見に基づいてなされた
ものであり、本発明の希土類系永久磁石は、請求項1記
載の通り、その表面が酸化処理されたCuめっき被膜を
磁石表面の最表層として有することを特徴とする。ま
た、請求項2記載の希土類系永久磁石は、請求項1記載
の希土類系永久磁石において、前記酸化処理が化成処理
液を用いて行われるものであることを特徴とする。ま
た、請求項3記載の希土類系永久磁石は、請求項2記載
の希土類系永久磁石において、前記化成処理液が黒色酸
化銅法を行うためのものであることを特徴とする。ま
た、請求項4記載の希土類系永久磁石は、請求項1乃至
3のいずれかに記載の希土類系永久磁石において、前記
Cuめっき被膜の膜厚が1μm〜50μmであることを
特徴とする。また、請求項5記載の希土類系永久磁石
は、請求項1乃至4のいずれかに記載の希土類系永久磁
石において、前記酸化処理により形成された酸化処理層
の膜厚が0.01μm以上であることを特徴とする。ま
た、請求項6記載の希土類系永久磁石は、請求項1乃至
5のいずれかに記載の希土類系永久磁石において、前記
Cuめっき被膜がCuよりも電位が卑な金属のめっき被
膜の上に形成されていることを特徴とする。また、請求
項7記載の希土類系永久磁石は、請求項6記載の希土類
系永久磁石において、前記Cuよりも電位が卑な金属が
Ni、Al、Zn、Sn、Mgから選ばれる金属である
ことを特徴とする。また、請求項8記載の希土類系永久
磁石は、請求項1乃至7のいずれかに記載の希土類系永
久磁石において、希土類系永久磁石がR−Fe−B系永
久磁石であることを特徴とする。また、請求項9記載の
希土類系永久磁石は、請求項1乃至8のいずれかに記載
の希土類系永久磁石において、水中で使用されることを
特徴とする。また、本発明の希土類系永久磁石の製造方
法は、請求項10記載の通り、磁石表面の最表層として
Cuめっき被膜を形成する工程、その後に前記Cuめっ
き被膜の表面を酸化処理する工程を少なくとも含むこと
を特徴とする。また、請求項11記載の製造方法は、請
求項10記載の製造方法において、Cuめっき被膜の表
面を酸化処理する工程を化成処理液を用いて行うことを
特徴とする。また、請求項12記載の製造方法は、請求
項11記載の製造方法において、Cuめっき被膜の表面
を酸化処理する工程の後に加熱処理を行うことを特徴と
する。また、請求項13記載の製造方法は、請求項10
乃至12のいずれかに記載の製造方法において、磁石表
面にCuよりも電位が卑な金属のめっき被膜を形成する
工程、その後にCuめっき被膜を形成する工程を行うこ
とを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の希土類系永久磁石は、そ
の表面が酸化処理されたCuめっき被膜を磁石表面の最
表層として有することを特徴とするものである。磁石表
面の最表層として形成されるCuめっき被膜の表面を酸
化処理してCu酸化物化することにより、腐食液に含ま
れる2価のCuイオンによって引き起こされるCuめっ
き被膜の腐食を効果的に抑制することができる。
【0007】Cuめっき被膜の表面の酸化処理とは、C
uめっき被膜の表面をCu酸化物化することを意味す
る。酸化処理のための方法は特段限定されるものではな
いが、腐食液に対して優れた耐食性を有する酸化処理層
を形成することができる点において、化成処理液を用い
て行う方法が望ましい。その具体的な方法としては、一
般的に知られている銅に対する酸化銅被膜法が挙げられ
る。銅に対する酸化銅被膜法としては、Cuめっき被膜
の表面に酸化第一銅の被膜層(酸化処理層)を化成させ
る亜酸化銅法と、酸化第二銅の被膜層(酸化処理層)を
化成させる黒色酸化銅法の二つの方法が著名である。亜
酸化銅法は、例えば、塩素酸カリウムや過塩素酸カリウ
ムなどを主成分とする酸化剤溶液(化成処理液)を用い
て赤銅色の亜酸化銅の被膜層を化成させる方法である。
黒色酸化銅法は、例えば、過硫酸カリウムを主成分とす
るアルカリ性過硫酸カリウム溶液(化成処理液)を用い
て黒色の酸化第二銅の被膜層を化成させる方法である。
本発明においては、亜酸化銅法、黒色酸化銅法いずれも
採用することができるが、黒色酸化銅法によれば、Cu
めっき被膜の表面に外観と耐食性に優れた被膜層を形成
することができるので、黒色酸化銅法を採用することが
望ましい。
【0008】Cuめっき被膜の表面の酸化処理は、磁石
表面の最表層としてCuめっき被膜を形成した後に行
う。
【0009】Cuめっき被膜は、電解めっき法や無電解
めっき法などの湿式めっき法により形成されたものであ
ってもよいし、気相めっき法により形成されたものであ
ってもよいが、被膜形成効率が優れている点からは電解
めっき法により形成されたものであることが望ましい。
電解めっき法に使用されるめっき浴としては、硫酸銅
浴、シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴、ホウフッ化銅浴、
EDTA浴などのめっき浴が挙げられる。めっき条件は
個々のめっき浴に応じた自体公知の条件でよい。形成さ
れるCuめっき被膜の膜厚は1μm〜50μmであるこ
とが望ましい。膜厚が1μm未満の場合には、Cuめっ
き被膜自体が耐食性被膜として機能しない恐れがあるか
らである。一方、膜厚が50μmを越えると、製造コス
トの上昇を招く恐れがあるからである。
【0010】Cuめっき被膜の表面の酸化処理は、例え
ば、磁石表面の最表層としてCuめっき被膜が形成され
た磁石をアルカリ性過硫酸カリウム溶液などの化成処理
液に浸漬することにより行う。浸漬法によれば、優れた
処理効率での処理が可能となる。特に、必要に応じてス
チールボールやガラスボールなどのダミーと共にCuめ
っき被膜が形成された磁石を回転バレルに収容してアル
カリ性過硫酸カリウム溶液などの化成処理液中にこれを
浸漬し、回転バレルを回転させながら処理を行うことが
望ましい。なお、Cuめっき被膜の表面の酸化処理は、
スプレー法やスピンコート法などにより、アルカリ性過
硫酸カリウム溶液などの化成処理液をCuめっき被膜表
面に塗布することより行うものであってもよい。
【0011】化成処理液としてアルカリ性過硫酸カリウ
ム溶液を使用する場合、アルカリ性過硫酸カリウム溶液
は、例えば、過硫酸カリウムを0.037mol/L〜
0.74mol/L含み、水酸化ナトリウムや水酸化カ
リウムなどをその濃度が0.01mol/L以上、望ま
しくは0.1mol/L以上となるように添加すること
によってpHを12以上、望ましくは13以上に調整さ
れたものであることがよい。過硫酸カリウムの含有量
は、0.037mol/L未満であると十分な酸化処理
を行うことができない恐れがある一方、0.037mo
l/Lを越えると製造コストの上昇の要因となり望まし
くないからである。pHは12未満であると緻密な酸化
第二銅の被膜層を形成することができない恐れがあるか
らである。アルカリ性過硫酸カリウム溶液の温度は、3
0℃〜95℃に調整することが望ましく、40℃〜80
℃に調整することがより望ましい。30℃よりも低い温
度であるとCuめっき被膜表面がCu水酸化物化して酸
化第二銅の被膜層が形成されない恐れがある一方、95
℃を越えると強アルカリによる人体への影響上、望まし
くないからである。
【0012】なお、通常、酸化処理の時間は10秒〜1
時間が望ましい。処理時間が10秒未満であると酸化が
十分に進行しない恐れがある一方、1時間を越えると作
業効率の点で劣るからである。
【0013】Cuめっき被膜の表面の酸化処理後、水洗
してから乾燥処理を行う。乾燥処理はどのような方法で
行ってもよいが、通常、遠心乾燥により行う。
【0014】Cuめっき被膜の表面の酸化処理は、処理
時間などの条件を適宜設定することにより、Cuめっき
被膜の表面の一部分だけを酸化させて酸化処理層とする
こともできるし、被膜全体を酸化処理層とすることもで
きる。しかしながら、Cuめっき被膜における酸化処理
により形成された酸化処理層の膜厚は0.01μm以上
とすることが望ましい。膜厚が0.01μm未満の場合
には、腐食液に含まれる2価のCuイオンによって引き
起こされるCuめっき被膜の腐食を効果的に抑制するこ
とができない恐れがあるからである。なお、酸化処理層
の膜厚の上限は磁石表面の最表層として形成されたCu
めっき被膜の膜厚であるが、酸化反応進行性の点に鑑み
ると、通常、10μmである。
【0015】Cuめっき被膜の表面が化成処理液を用い
て酸化処理された磁石に対しては、乾燥後に加熱処理を
行ってもよい。加熱処理を行うことにより、腐食液に対
する耐食性をさらに向上させることができる。このよう
な効果が奏されるのは、Cuめっき被膜の表面に形成さ
れた酸化処理層が加熱されることによってより緻密にな
ることによるものであると推測される。加熱処理は大気
中100℃〜400℃で行うことが望ましく、200℃
〜300℃で行うことがより望ましい。100℃未満で
あると加熱処理の効果が得られにくく、400℃を越え
ると磁石特性に影響を及ぼしたり、ボンド磁石の場合に
は使用している樹脂の耐熱性に影響を及ぼしたりする恐
れがあるからである。なお、通常、加熱処理の時間は1
0分〜1時間である。
【0016】磁石表面の最表層として形成されるCuめ
っき被膜は、磁石表面に直接形成されるものであっても
よいが、磁石表面に複数の金属めっき被膜を積層形成し
た場合における、その最表層として形成されるものであ
ってもよい。このような積層形態を採用することによ
り、Cuめっき被膜の下層として形成される金属めっき
被膜の特性とともに、水中での優れた耐食性をはじめと
する種々の機能を発揮させることができる。Cuめっき
被膜の下層として形成される金属めっき被膜としては、
例えば、Cuよりも電位が卑な金属のめっき被膜、具体
的には、Ni、Al、Zn、Sn、Mgなどのめっき被
膜が挙げられる。中でも、Niめっき被膜は耐食性や機
械強度に優れるので、磁石の耐食性被膜として有用であ
る。Niめっき被膜は、例えば、ワット浴、スルファミ
ン酸ニッケル浴、塩化ニッケル浴、ホウフッ化ニッケル
浴、塩化アンモニウムニッケル浴などのめっき浴を使用
して電解めっき法にて形成すればよい。めっき条件は個
々のめっき浴に応じた自体公知の条件でよい。金属めっ
き被膜の積層形態の具体例としては、例えば、第1層が
公知のNiめっき被膜で第2層(最表層)が表面に酸化
処理層を有するCuめっき被膜である形態、第1層〜第
3層が公知のNiめっき被膜で第4層(最表層)が表面
に酸化処理層を有するCuめっき被膜である形態、第1
層が公知のNiめっき被膜で第2層が公知のCuめっき
被膜で第3層が公知のNiめっき被膜で第4層(最表
層)が表面に酸化処理層を有するCuめっき被膜である
形態などが挙げられる。
【0017】本発明に適用される希土類系永久磁石の
内、R−Fe−B系永久磁石における希土類元素(R)
は、Nd、Pr、Dy、Ho、Tb、Smのうち少なく
とも1種、あるいはさらに、La、Ce、Gd、Er、
Eu、Tm、Yb、Lu、Yのうち少なくとも1種を含
むものが望ましい。また、通常はRのうち1種をもって
足りるが、実用上は2種以上の混合物(ミッシュメタル
やジジムなど)を入手上の便宜などの理由によって使用
することもできる。さらに、Al、Ti、V、Cr、M
n、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、
Zr、Ni、Si、Zn、Hf、Gaのうち少なくとも
1種を添加することで、保磁力や減磁曲線の角型性の改
善、製造性の改善、低価格化を図ることが可能となる。
また、Feの一部をCoで置換することによって、得ら
れる磁石の磁気特性を損なうことなしに温度特性を改善
することができる。
【0018】
【実施例】本発明を以下の実施例によってさらに詳細に
説明するが、本発明は以下の記載に何ら限定されるもの
ではない。なお、以下の実施例においては、粉末冶金法
により作製した15Nd−1Dy−7B−77Fe(原
子%)の組成をもつ焼結体をアルゴン雰囲気中600℃
で2時間時効処理を施し、厚さ2mm、幅15mm、長
さ30mmの平板状に加工し、さらにバレル面取り加工
を行って得られた焼結磁石を希釈硝酸で酸洗清浄化し、
水洗後にさらにアルカリ液で電解洗浄して水洗したもの
をサンプルとして使用した(以下、磁石体試験片とい
う)。
【0019】実施例1:磁石体試験片に対し、硫酸銅2
5g/L、EDTA・2ナトリウム塩56g/Lを含
み、水酸化ナトリウムでpHを12に調整したCuめっ
き液を使用し、めっき浴の液温50℃、電流密度0.2
A/dm、陽極としてCu板という条件にて、10分
間の処理を行い、電解めっき法にて膜厚が1μmのCu
めっき被膜を磁石体試験片表面に形成した後、水洗し
た。得られた表面にCuめっき被膜が形成された磁石体
試験片100個をスチールボール(ダミー)とともに回
転バレルに収容し、過硫酸カリウムを0.07mol/
L含み、水酸化ナトリウムをその濃度が1.5mol/
Lとなるように添加された60℃のアルカリ性過硫酸カ
リウム溶液(pHは13以上)に浸漬し、回転バレルを
回転数10rpmで回転させながら15分間酸化処理を
行った。アルカリ性過硫酸カリウム溶液から回転バレル
を引き上げた後、表面が酸化処理されたCuめっき被膜
を磁石表面に有する磁石体試験片を水洗し、遠心乾燥し
て乾燥した。Cuめっき被膜の破断面の電子顕微鏡によ
る観察の結果、Cuめっき被膜全体が酸化処理されて黒
色となっていた(即ち、酸化処理層の膜厚は1μm)。
以上のようにして得られた酸化処理されたCuめっき被
膜を磁石表面に有する磁石体試験片に対し、Cuイオン
10ppm(塩化銅・2水和物で調整)と塩素イオン2
00ppm(塩化ナトリウムで調整)を含有してさらに
溶存酸素が存在する腐食液を使用して耐食性評価試験
(90℃腐食液8時間浸漬→25℃腐食液16時間浸漬
→90℃腐食液8時間浸漬のヒートサイクルを行う試
験)を行ったところ、試験開始から1000時間経過後
も発錆はなく、優れた耐食性を示した。
【0020】実施例2:実施例1と同様のCuめっき被
膜形成条件で30分間の処理を行い、膜厚が3μmのC
uめっき被膜を磁石体試験片表面に形成した後、実施例
1と同様の条件でCuめっき被膜の表面を酸化処理し
た。Cuめっき被膜の破断面の電子顕微鏡による観察の
結果、Cuめっき被膜の表面に形成された黒色の酸化処
理層の膜厚は1μmであった。この表面が酸化処理され
たCuめっき被膜を磁石表面に有する磁石体試験片に対
し、実施例1と同様の耐食性評価試験を行ったところ、
試験開始から1000時間経過後も発錆はなく、優れた
耐食性を示した。
【0021】実施例3:実施例1と同様のCuめっき被
膜形成条件で100分間の処理を行い、膜厚が10μm
のCuめっき被膜を磁石体試験片表面に形成した後、ア
ルカリ性過硫酸カリウム溶液の温度を80℃とし、処理
時間を30分間とした以外は実施例1と同様の条件でC
uめっき被膜の表面を酸化処理した。Cuめっき被膜の
破断面の電子顕微鏡による観察の結果、Cuめっき被膜
の表面に形成された黒色の酸化処理層の膜厚は2μmで
あった。この表面が酸化処理されたCuめっき被膜を磁
石表面に有する磁石体試験片に対し、実施例1と同様の
耐食性評価試験を行ったところ、試験開始から1500
時間経過後も発錆はなく、きわめて優れた耐食性を示し
た。
【0022】実施例4:実施例1と同様のCuめっき被
膜形成条件で200分間の処理を行い、膜厚が20μm
のCuめっき被膜を磁石体試験片表面に形成した後、ア
ルカリ性過硫酸カリウム溶液の温度を80℃とし、処理
時間を30分間とした以外は実施例1と同様の条件でC
uめっき被膜の表面を酸化処理した。Cuめっき被膜の
破断面の電子顕微鏡による観察の結果、Cuめっき被膜
の表面に形成された黒色の酸化処理層の膜厚は2μmで
あった。この表面が酸化処理されたCuめっき被膜を磁
石表面に有する磁石体試験片に対し、実施例1と同様の
耐食性評価試験を行ったところ、試験開始から1500
時間経過後も発錆はなく、きわめて優れた耐食性を示し
た。
【0023】実施例5:実施例1と同様のCuめっき被
膜形成条件で10分間の処理を行い、膜厚が1μmのC
uめっき被膜を磁石体試験片表面に形成した後、アルカ
リ性過硫酸カリウム溶液の温度を40℃とし、処理時間
を1分間とした以外は実施例1と同様の条件でCuめっ
き被膜の表面を酸化処理した。Cuめっき被膜の破断面
の電子顕微鏡による観察の結果、Cuめっき被膜の表面
に形成された黒色の酸化処理層の膜厚は0.01μmで
あった。この表面が酸化処理されたCuめっき被膜を磁
石表面に有する磁石体試験片に対し、実施例1と同様の
耐食性評価試験を行ったところ、試験開始から1000
時間経過後も発錆はなく、きわめて優れた耐食性を示し
た。
【0024】比較例1:実施例1にて膜厚が1μmのC
uめっき被膜が表面に形成された磁石体試験片に対し、
実施例1と同様の耐食性評価試験を行ったところ、試験
開始から1000時間を経過するまでに発錆し、要求さ
れる耐食性を具備しなかった。
【0025】比較例2:実施例1と同様のCuめっき被
膜形成条件で50分間の処理を行い、膜厚が5μmのC
uめっき被膜を磁石体試験片表面に形成した。この磁石
体試験片に対し、実施例1と同様の耐食性評価試験を行
ったところ、試験開始から1000時間を経過するまで
に発錆し、要求される耐食性を具備しなかった。
【0026】実施例6:磁石体試験片に対し、硫酸ニッ
ケル・6水和物150g/L、クエン酸アンモニウム5
3g/L、塩化ニッケル40g/L、ホウ酸20g/
L、硫酸ナトリウム50g/Lを含み、アンモニアでp
Hを6.5に調整したNiめっき液を使用し、めっき浴
の液温50℃、電流密度0.3A/dm、陽極として
Ni板という条件にて、60分間の処理を行い、電解め
っき法にて膜厚が5μmのNiめっき被膜を第1層めっ
き被膜として磁石表面に形成した。次に、実施例1と同
様のCuめっき被膜形成条件で50分間の処理を行い、
膜厚が5μmのCuめっき被膜をNiめっき被膜の上に
形成した後、水洗した。以上のようにして得られたNi
めっき被膜の上にCuめっき被膜を有する磁石体試験片
100個をスチールボール(ダミー)とともに回転バレ
ルに収容し、表1に示す各種条件にてCuめっき被膜の
表面を酸化処理した(回転バレルの回転数はすべて10
rpm)。Cuめっき被膜の破断面の電子顕微鏡による
観察に基づくCuめっき被膜の表面に形成された黒色の
酸化処理層の膜厚を表1に示す。また、表面が酸化処理
されたCuめっき被膜をNiめっき被膜の上に有する磁
石体試験片に対し、実施例1と同様の耐食性評価試験を
行った結果を表1に示す。表1から明らかなように、C
uめっき被膜の表面を酸化処理することで、いずれの磁
石体試験片も耐食性評価試験開始から1000時間経過
後も発錆はなく、優れた耐食性を示した。
【0027】
【表1】
【0028】比較例3:実施例6にて膜厚が5μmのC
uめっき被膜がNiめっき被膜の上に形成された磁石体
試験片に対し、実施例1と同様の耐食性評価試験を行っ
たところ、試験開始から1000時間を経過するまでに
発錆し、要求される耐食性を具備しなかった。
【0029】実施例7:実施例6におけるサンプルBを
大気中250℃で30分間加熱処理したものに対し、実
施例1と同様の耐食性評価試験を行ったところ、試験開
始から2000時間経過後も発錆はなく、きわめて優れ
た耐食性を示した。
【0030】
【発明の効果】その表面が酸化処理されたCuめっき被
膜を磁石表面の最表層として有することを特徴とする本
発明の希土類系永久磁石は、Cuめっき被膜の表面を酸
化処理してCu酸化物化されているので、酸化性で腐食
性の高い電解質溶液(腐食液)に含まれる2価のCuイ
オンによって引き起こされるCuめっき被膜の腐食を効
果的に抑制することができる。本発明の希土類系永久磁
石の製造方法としては、例えば、磁石表面の最表層とし
てCuめっき被膜を形成する工程、その後に前記Cuめ
っき被膜の表面を酸化処理する工程を少なくとも含む方
法がある。
フロントページの続き Fターム(参考) 4K026 AA06 AA12 BA08 CA15 CA18 CA35 DA03 4K044 AA01 AB10 BA06 BA10 BA12 BB03 BB04 BB05 BC02 CA15 CA16 CA17 5E062 CD04 CG07

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 その表面が酸化処理されたCuめっき被
    膜を磁石表面の最表層として有することを特徴とする希
    土類系永久磁石。
  2. 【請求項2】 前記酸化処理が化成処理液を用いて行わ
    れるものであることを特徴とする請求項1記載の希土類
    系永久磁石。
  3. 【請求項3】 前記化成処理液が黒色酸化銅法を行うた
    めのものであることを特徴とする請求項2記載の希土類
    系永久磁石。
  4. 【請求項4】 前記Cuめっき被膜の膜厚が1μm〜5
    0μmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
    かに記載の希土類系永久磁石。
  5. 【請求項5】 前記酸化処理により形成された酸化処理
    層の膜厚が0.01μm以上であることを特徴とする請
    求項1乃至4のいずれかに記載の希土類系永久磁石。
  6. 【請求項6】 前記Cuめっき被膜がCuよりも電位が
    卑な金属のめっき被膜の上に形成されていることを特徴
    とする請求項1乃至5のいずれかに記載の希土類系永久
    磁石。
  7. 【請求項7】 前記Cuよりも電位が卑な金属がNi、
    Al、Zn、Sn、Mgから選ばれる金属であることを
    特徴とする請求項6記載の希土類系永久磁石。
  8. 【請求項8】 希土類系永久磁石がR−Fe−B系永久
    磁石であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか
    に記載の希土類系永久磁石。
  9. 【請求項9】 水中で使用されることを特徴とする請求
    項1乃至8のいずれかに記載の希土類系永久磁石。
  10. 【請求項10】 磁石表面の最表層としてCuめっき被
    膜を形成する工程、その後に前記Cuめっき被膜の表面
    を酸化処理する工程を少なくとも含むことを特徴とする
    希土類系永久磁石の製造方法。
  11. 【請求項11】 Cuめっき被膜の表面を酸化処理する
    工程を化成処理液を用いて行うことを特徴とする請求項
    10記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 Cuめっき被膜の表面を酸化処理する
    工程の後に加熱処理を行うことを特徴とする請求項11
    記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 磁石表面にCuよりも電位が卑な金属
    のめっき被膜を形成する工程、その後にCuめっき被膜
    を形成する工程を行うことを特徴とする請求項10乃至
    12のいずれかに記載の製造方法。
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