JP2004039917A - 永久磁石の製造方法及び永久磁石 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、安価にピンホール低減が可能で、大量生産に適した低コストを実現する永久磁石の製造方法及び永久磁石を提供することを目的とするものである。
【解決手段】R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を有し、この第1の金属層上に高融点層が形成された構造を有し、熱処理により低融点金属を溶融する工程を有することを特徴とする永久磁石の製造方法である。また、R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を有し、この第1の金属層上に高融点層が形成された構造を有し、熱処理により第1の金属層が少なくとも1回は溶融されていることを特徴とする永久磁石。
【選択図】 なし
【解決手段】R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を有し、この第1の金属層上に高融点層が形成された構造を有し、熱処理により低融点金属を溶融する工程を有することを特徴とする永久磁石の製造方法である。また、R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を有し、この第1の金属層上に高融点層が形成された構造を有し、熱処理により第1の金属層が少なくとも1回は溶融されていることを特徴とする永久磁石。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、永久磁石に関し、更に詳しくは、R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石の製造方法及び永久磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
Nd−Fe−B磁石等のR−T−B系磁石は、25MGOe以上の高エネルギ積を示す高性能磁石であるが、主成分として酸化されやすい希土類元素と鉄を含有するため、耐食性が低く、その結果、性能の劣化やバラツキ等が問題になっている。
【0003】
このようなR−T−B系磁石の耐食性の低さを改善する目的として、上記磁石の表面に、Niめっき、2層めっき、樹脂塗装、Snめっき等の保護膜を施す技術や保護膜のピンホール防止技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開平7−142246号公報には、R、T及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面にNiめっき層を有し、このNiめっき層上にSnめっき層が形成され80〜200℃で熱処理を行うことを特徴とする永久磁石が開示されている。
【0005】
また、特開平7−52684号公報には、R10原子%〜30原子%、B2原子%〜28原子%、Fe65原子%〜80原子%を主成分とし、主相が正方晶相からなる焼結永久磁石体の表面に、レーザービーム照射による溶融凝固層からなる無孔層を有することを特徴とする耐食性永久磁石が開示されている。
【0006】
また、特許第2526076号公報には、R10原子%〜30原子%、B2原子%〜28原子%、Fe65原子%〜80原子%を主成分とし、主相が正方晶相からなる焼結永久磁石体表面に、Pd、Ag、Pt及びAuから選ばれた少なくとも1種の貴金属層と、Ni、Cu、Sn及びCoから選ばれた少なくとも1種の卑金属層とからなる金属層を積層被覆した後、酸化雰囲気以外の雰囲気中で、400℃〜700℃にて拡散熱処理することを特徴とする永久磁石の製造方法が開示されている。
【0007】
更に、特許第3248077号公報には希土類金属(R)、Fe及びNを主成分とし、かつThMn12型結晶構造の化合物を主相とする平均粒径20〜150μmの合金粉末表面に、Sn、Zn、Pb、In、Al、Mgの少なくとも1種からなる金属皮膜を形成し、これに100〜600℃の温度範囲で熱処理を施した後、成形を行うことを特徴とする希土類−鉄−窒素系永久磁石の製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
R−T−B系磁石保護膜の大きな問題点がピンホールである。例えば、めっき膜のピンホールの発生原因は大別すると物理的要因と化学的要因がある。物理的要因とは磁石表面に深く細い凹部が存在する場合に、その内部で金属イオンの拡散速度、電流密度分布等のために成膜速度が、遅いために生じる、いわゆる形状特異点が原因である。一方、化学的要因とは、磁石表面に、導電性の無い酸化物相がある場合や、凹部の内部や粒界が前処理で溶解して形成された隙間に前処理液や洗浄水が残留し、その近傍のめっき液濃度、pH等が局部的に最適値を大きくはずれ、成膜反応が停止したり、あるいはめっき金属水酸化物が生じている場合等の、いわゆる化学的特異点に起因する場合がある。
【0009】
このように、磁石本体の不均一性に起因し保護膜にピンホールが形成されやすく、そこから腐食が進行する。一般にピンホールは保護膜の膜厚が厚くなるほど減少する。しかし保護膜が厚くなると、製造に時間がかかり高コストの原因となると同時に、その膜厚がギャップ等となり、磁気回路に悪影響を及ぼす。更に膜厚均一性が失われ、磁石の寸法精度が悪くなる問題点もある。更に、厚い膜厚により外観上のピンホールはふさがっても、内部にはめっき液が残留していることも多く、この残留めっき液、又は乾燥した残留めっき液成分がピンホール内部に高濃度で存在することが原因で、その周囲からの腐食が進行することもある。
【0010】
特開平7−142246号公報では、Niめっき膜の上にSnめっき膜を成膜しSnめっき膜の融点(232℃)より低い温度で熱処理しNiSn相を形成させている。このためピンホールが無い部分の膜の耐蝕性は改善するが、ピンホールに対する改善効果は小さい。また、表面Sn層が溶解し磁石同士、又は周囲の治具と触れ合い、降温時にSnが硬化すると磁石同士、又は周囲の治具との分離が困難となってしまう。
【0011】
特開平7−52684号公報では、レーザービーム照射による溶融凝固層からなる無孔層を最初に形成することで、保護膜のピンホール生成を防止しているが、生産性が低く、コスト的な問題がある。
【0012】
特許第2526076号公報では、実施例によると、無電解めっき触媒(貴金属層)を用いた無電解Niめっき(卑金属層)を成膜し、熱処理を行い密着強度を改善しているにすぎない。しかし、卑金属層としてSnを用いた場合には、当該特許発明の熱処理温度(400℃〜700℃)では、Snの融点以上の温度で熱処理を行うことになるために、表面Sn層が溶解し磁石同士、又は周囲の治具と触れ合い、降温時にSnが硬化すると分離が困難となる。すなわち熱処理において所定温度以上では、めっき膜が溶解するということに何の注意も払われてはいない。
【0013】
特許第3248077号公報では、希土類金属粉末を低融点金属を成膜した後に熱処理を行っているが、やはり融点以上の温度で熱処理を行った場合には、前記と同様に表面層が溶解した磁性粉同士が降温後に分離が困難となる。
【0014】
このように、従来の処理による永久磁石では、薄い保護膜厚においてもピンホールが少なく、大量生産に適した低コストを実現する永久磁石製造方法及び永久磁石として、市場の要求を十分に満足するものはなかった。
【0015】
そこで、本発明は、安価にピンホール低減が可能で大量生産に適した低コストを実現する永久磁石の製造方法及び永久磁石を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
(1)R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を形成し、この第1の金属層上に第2の金属層を形成した後に前記第1の金属層の融点以上の温度であり、かつ前記第2の金属層の融点未満の温度で熱処理を行うことを特徴とする永久磁石の製造方法。
(2)前記第1の金属層がSn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であり、第2の金属層がNi、Cu、Zn、Au、Ag、Rhの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であることを特徴とする(1)に記載の永久磁石の製造方法。
(3)前記第1の金属層の融点よりも、5〜150℃高い温度で熱処理を行うことを特徴とする(1)又は(2)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(4)前記第1の金属層及び第2の金属層が、共に電気めっき法により形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(5)前記第1の金属層が膜厚4〜40μmのSn又はSnを主成分とする合金であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(6)前記第2の金属層が膜厚0.1〜20μmのNi又はNiを主成分とする合金であることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(7)前記熱処理後に、更に第3の層を形成することを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(8)前記第3の層が電気めっき法により形成された金属層であることを特徴とする(7)に記載の永久磁石の製造方法。
(9)前記第3の層が前記第2の層と同じ金属、又は合金であることを特徴とする(7)又は(8)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(10)R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層が形成されており、この第1の金属層上に第2の金属層が形成されており、第1の金属層の融点が前記第2の金属層の融点よりも低いことを特徴とする永久磁石において、前記第1の金属層が、溶融熱処理されていることを特徴とする永久磁石。
(11)前記第1の金属層がSn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であり、第2の金属層が、Ni,Cu,Zn,Au,Ag,Rhの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であることを特徴とする(10)に記載の永久磁石。
(12)前記第1の金属層が膜厚4〜40μmのSn又はSnを主成分とする合金であることを特徴とする(10)又は(11)の何れかに記載の永久磁石。
(13)前記第2の金属層が膜厚0.1〜5μmのNi又はNiを主成分とする合金であることを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載の永久磁石。
(14)前記溶融熱処理により、前記第2の金属層のピンホールが前記第1の金属で封止されていることを特徴とする(10)〜(13)の何れかに記載の永久磁石。
(15)前記溶融熱処理後に、更に第3の層を形成されていることを特徴とする(10)〜(14)の何れかに記載の永久磁石。
(16)前記第3の層が前記第2の層と同じ金属、又は合金であることを特徴とする(15)に記載の永久磁石。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的構成について説明する。
【0018】
永久磁石体表面に形成される第1の金属層の形成方法は、めっき法、溶融めっき法、溶射法、スパッタ法又は蒸着法を用いることができる。コスト、量産性等を考慮すると、めっき法を用いることが好ましく、特に電気めっき法を用いることが好ましい。めっき法には電気めっき法、無電解めっき法があるが、電気めっき法は無電解めっきに比べて成膜速度が速く安価であり、無電解めっきのように成膜中の水素発生が少ないために永久磁石に対する影響が少ない。
【0019】
また、この第1の金属層の材質は、第2の金属層の融点よりも低い融点を有する材料から選択される。第1の金属層と第2の金属層との融点の差は、100℃以上、好ましくは200℃以上である。具体的には、Sn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属を用いることが好ましい。これら金属は融点が低いため熱処理温度を低く設定できることから経済的、技術的に好ましいからである。上記金属の融点は、Sn(232℃)、Pb(327℃)、SnPb(182℃)、Bi(271℃)、Cd(321℃)、In(156℃)、Zn(420℃)である。
【0020】
また、前記金属から選ばれる1種を主成分とし、副成分として前記金属から選ばれる1種以上の金属を含む合金や、Ag、Cu、Ni等の高融点金属やP、C、S等の非金属を更に10wt%以下含有する組成であっても、その合金の融点が上記温度未満であれば問題はない。
【0021】
なお、電気めっき膜においては、用いる添加剤等により100〜5000ppm程度のC、Sが不可避的に含まれたり、使用する金属塩の純度により不可避的に他の金属が析出膜に含有されることがある。これらのめっき成膜において、不可避的成分を含有する合金膜は、一般には合金膜ではなく、単金属膜として取り扱われる。
【0022】
また、上記第1の金属層として、Snを用いた場合には、ひげ状突起であるホイスカ(whiskers)の発生、あるいは相変化(結晶構造変化)による膜劣化の可能性があるが、他の金属と合金化することで防止することができる。更にSn単体よりも融点を低下することも可能である。例えば、Sn−3.5Ag、Sn−0.75Cu、Sn−8Zn、Sn−3.5Ag−0.75Cu、Sn−5Bi−3.5Ag、Sn−3Bi−8Zn等の公知の合金組成を好ましく用いることができる。
【0023】
なお、ホイスカは成膜後に一度溶解処理されると発生しないため、本発明の永久磁石では、単にSnが成膜されただけの永久磁石又は溶解温度未満の温度で熱処理された永久磁石に比べて信頼性が高い。
【0024】
第1の金属層の膜厚は、4〜40μm、好ましくは5〜25μmである。前記範囲未満では、溶融処理しても十分なピンホール封止効果を得ること、そして長期耐蝕性を得ることが困難となり、前記範囲を超える膜厚は経済的にそして膜厚によるギャップ効果でヨーク等に磁石を貼り付けて組上がった磁気回路に悪影響を及ぼす。
【0025】
なお、本発明において膜厚とは、最も膜厚が薄いと推定される部分における蛍光X線膜厚計(スポット径0.3mm)による10点測定の平均値である。最も薄いと推定される部分は、電気めっきの場合であれば1次電流密度分布から判断することができ、例えば平板状磁石の場合では平面中央部である。なお、測定点10点の平均としたのは特異値の排除のためである。
【0026】
なお、第1の金属層の膜厚は熱処理により減少する。この減少する厚みは、磁石の組成、前処理方法、表面粗さ、第2の金属層厚、熱処理条件等によって異なるが、概ね1〜3μmである。これは、熱処理により溶解した第1の金属層の一部は第2の金属層のピンホールの封止に、そして一部は前記ピンホールを通じて第2の金属層の外部に流出し、更に一部は第2の金属層内部に拡散するためである。よって、第1の金属層の膜厚が3μm以下の場合には熱処理後に第1の金属層が実質上、消失するか極めて薄層化してしまうこともある。
【0027】
また、本発明の第1の金属層は、溶融処理前には開口部を有するピンホールを有している。このため、内部にめっき液成分が残留することも無い。万が一、めっき液成分の残留があったとしても溶融処理により、蒸発又は第1の金属溶融層への拡散が進行することによりめっき液成分の残留、少なくとも局部的な残留は解消されるために磁石内部からの腐食発生を大幅に低減可能である。
【0028】
第1の金属層上に形成する第2の金属層の形成方法は、第1の金属層の形成方法と同様に、めっき法、溶射法、溶融めっき法、スパッタ法又は蒸着法を用いることができ、好ましくは、第1の金属層と同じ形成方法を用いる。コスト、量産性等を考慮すると、めっき法を用いることが好ましく、特に電気めっき法を用いることが好ましい。めっき法には電気めっき法、無電解めっき法があるが、電気めっき法は無電解めっきに比べて成膜速度が速く安価であり、無電解めっきのように成膜中の水素発生が少ないために永久磁石に対する影響が少ない。
【0029】
なお、比較的小さな磁石にめっき法により金属層を成膜する場合には、公知のバレルめっきも好ましく使用可能である。比較的大きな磁石の場合には、めっき治具に固定してめっきする、いわゆる引っかけめっきが一般的である。
【0030】
第2の金属層の材質は、第1の金属層の融点よりも高い融点を有する材料から選択される。具体的には、Ni、Cu、Zn、Au、Ag、Rhの何れかの金属を用いることが好ましい。安定した成膜方法が工業的に確立しており、量産に適しているためである。特に、コスト、生産性安定の観点からNi、Cuの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金を用いることが好ましい。なお、上記金属の融点は、Ni(1450℃)、Cu(2570℃)、Zn(420℃)、Au(2800℃)、Ag(2210℃)、Rh(3700℃)である。
【0031】
また、前記金属から選ばれる1種を主成分とし、副成分として前記金属から選ばれる1種以上の金属を含む合金やP、C、S等の非金属を更に10wt%以下含有する組成であっても、その合金の融点が上記温度未満であれば問題はない。
【0032】
なお、電気めっき膜においては、用いる添加剤等により100〜5000ppm程度のC、Sが不可避的に含まれたり、工業的生産過程においては使用する金属塩の純度により不可避的に他の金属が析出膜に含有されることがある。例えばNiめっきにおいては、不可避的にCo、Feが微量含有される。これらのめっき成膜において、不可避的成分を含有する合金膜は、一般には合金膜ではなく、単金属膜として取り扱われる。
【0033】
また、第2の金属層の膜厚は、0.1〜40μm、好ましくは0.2〜20μmである。前記範囲未満では、熱処理時に膜強度が不足し膜が破れてしまうことがあり、前記範囲を超える膜厚は経済的に問題があり、そしてギャップ効果によりヨーク等と組上がった磁石の磁気回路に悪影響を及ぼすと同時に第2の金属層の内部応力による弊害が発生することがある。
【0034】
すなわち、第1の金属層を溶解した際に、第2の金属層は第1の金属層から応力的に解放される。すると、第2の金属層の表面にしわが生じたり、第1の金属層から大きく離れて浮いた状態になることもある。これは第2の金属層自体の内部応力が高い場合(特に強い引張応力)の際に顕著であることから、その応力による変形に起因すると見られる。このため、第2の金属層は応力が小さくなるように公知の添加剤、成膜条件を決定することが好ましい。具体的には、最大膜厚は、内部応力をSと膜のヤング率をYとの積で決定される。
【0035】
また、安価な汎用めっき浴、めっき条件にて成膜する場合には、やや強い引っ張り応力になることが多く、この場合には、膜厚を薄くすることが効果的である。この場合には第2の金属層の膜厚は10μm以下が好ましく、特に2μm以下が好ましい。もちろん、この厚さは金属層の材料、内部応力の大小により変化するが、一般的に、比較的硬質膜であるNi、Cu等では、5μm以下が好ましく、比較的軟質なZn、Au、Ag、Rh等では10μm以下が好ましい。
【0036】
例えば、Niめっき浴としてプロピンオール等の不飽和有機化合物とナフタレンスルホン酸、サッカリン等のイオウ含有有機添加剤を用いたワット浴を用いる場合には、膜厚は5μm以下が好ましく、特に好ましくは1μm以下である。
【0037】
なお、第2の金属層の膜厚が薄い場合であっても、ピンホールは封止されているため磁石本体が外気と接触することは無いため、通常の環境での磁石の耐蝕性に問題はない。
【0038】
また、第2の金属層の材質は、第1の金属層の材質に比べて電気化学的に卑な場合(標準電極電位が卑)には、第2の金属層が犠牲防錆膜として作用する。第1の金属層がSn(標準電極電位:−0.14V)に対して、Ni(標準電極電位:−0.25V)、Zn(標準電極電位:−0.76V)を用いた場合等がこれに該当する。反対に、第2の金属層の材質が、第1の金属層の材質に比べて電気化学的に貴な場合(標準電極電位が貴)には、第1の金属層が犠牲防錆膜として作用する。第1の金属層がSn(標準電極電位:−0.14V)に対して、銅(標準電極電位:0.53V)、金(標準電極電位:1.49V)、ロジウム(標準電極電位:0.8V)を用いた場合等がこれに該当する。第1金属層と第2金属層の標準電極電位の関係は、本願発明では第2の金属層のピンホールは第1の金属層により封止されているため、第2の金属層が犠牲防錆膜として作用することが特に好ましい。
【0039】
本願発明に係る製造方法では、第2の金属層を形成後に熱処理を行う。
【0040】
熱処理を行うことにより、第1の金属層が溶融し、ピンホールを封止することができる。また、磁石と第2の金属層の間に溶融した第1の金属が閉じこめられているため、多数の磁石を同時に、すなわち重なり合う状態で熱処理しても熱処理後の磁石同士の張り付きの問題は生じない。更に、第1の金属層が溶融することで、磁石表面の微細な凸部へも第1の金属層が入り込むため、いわゆる食い付きが良くなり密着強度も改善される。
【0041】
また、磁石を1個ずつ熱処理を行う場合であっても、表面に第2の金属層(非溶解層)が無い状態では、溶解した第1の層は、その自らの液体としての表面張力で、磁石表面に小球状あるいは島状に表面に偏在してしまい、降温後に均一な厚さの膜とはならない。これに対して、溶解層の上に非溶解の第2の膜があることで、上下方向均等に表面張力が作用するために、溶解層の膜厚均一性が保たれるという効果がある。
【0042】
さらに、第1の金属層材料として、Sn又はSnを主成分とする合金を用いた場合には、Snめっき液に磁石を浸積するだけで置換反応、不均化反応が進行しSn膜が表面に形成される。このため、たとえ電気めっきにおいても、初期に置換反応、不均化反応が進行し、この膜の上に電気めっき膜が形成されるものと見られる。この置換反応膜や不均化反応膜はポーラスであり、密着強度も十分ではないことが多い。しかし、この置換反応膜や不均化反応膜も溶融熱処理時に電気めっきにより形成されたSn膜部分と同様に溶解され、密度の高い膜となり、かつ磁石との密着強度も向上する。この置換反応、不均化反応は、特にバレルめっきの場合に顕著であり、本発明による改善効果が大きい。
【0043】
熱処理温度は、第1の金属層の融点以上で、第2の金属層の融点以下、更に磁石の融点以下の温度であれば本発明の効果を得ることができるが、好ましくは第1の金属層の融点より5〜150℃高い温度、特に好ましくは20〜75℃高い温度である。前記範囲未満では溶解した第1の金属の流動性が不十分であり、十分なピンホール封止効果が得られないことがある。
【0044】
前記範囲を超える温度では、保護層の変色、磁石本体と保護膜の熱膨張係数の違いからの熱応力により密着強度が低下するからである。
【0045】
また、熱処理時間は0.1〜120分程度で、好ましくは3〜30分程度である。前記範囲未満では、十分なピンホール封止効果が得られないことがあり、前記範囲を超える時間では熱処理の効果は変わらず、生産性が著しく低下する。熱処理は、複数回に分けても良い。
【0046】
熱処理雰囲気は、特に限定はないが、保護膜の変色を避けるには非酸化性雰囲気、例えば窒素中又は減圧中、真空中熱処理が好ましい。前記熱処理は、通常のオーブン等による熱処理だけでなく、高周波誘導加熱法やレーザー照射による加熱法等による短時間昇温、冷媒等による急冷(降温)も可能である。特に好ましくは減圧中、真空中の熱処理である。万が一、ピンホール内にめっき液や気体が残留していた場合にも、効果的に除去可能だからである。
【0047】
なお、第1の金属層を溶融熱処理した際に、第2の金属層表面に第1の金属がピンホールから飛び出て降温後に、微少な凸部となってしまうことがある。この凸部が存在することで、形状寸法への影響が問題となる場合には、各種の公知の方法で凸部を除去あるいは圧縮することが可能である。例えば、表面研削加工や、スチールボールと共にバレル処理を行うことで表面の凸部が解消可能である。
【0048】
また、熱処理後に更に、その上に第3の層を形成しても良い。第1の金属層、第2の金属層のピンホールが第1の金属で封止された表面は、ピンホール部分で標準電極電位の異なる金属が接しているため局部電池を形成し、腐食が進行しやすいのを防止するためである。特に第2の金属層の膜厚が薄く、高耐食を要求される製品の場合には有効である。
【0049】
第3の層の材質は、公知の樹脂、金属、又は複合材料を用いることができる。好ましくは、第2の金属層と同じ金属で第3の層を成膜することであり、更に好ましくは、公知のダブルニッケル防錆膜(S含有量低の第2のNiめっき膜上にS含有量高の第3のNiめっき膜を形成)構造とすることである。このような処理をすることにより、従来の防錆膜では不可能であった極めて高い耐食性を磁石に付与することが可能となる。
【0050】
第3の層の形成方法は、めっき法、溶射法、スパッタ法又は蒸着法を用いることができ、好ましくは、第2の金属膜と同じ形成方法を用いる。特に、電気めっき法を用いることが好ましい。第3の層を成膜する場合、第1の金属層、第2の金属層のピンホールが第1の金属で封止された状態で成膜するので、この第3の金属膜にはピンホールが発生しにくいからである。
【0051】
第3の層の厚さに特に制限はなく、使用環境に合わせて適宜選択される。
なお、磁石表面に第1の金属層を形成する際に、磁石素地上に下地膜を形成した下地膜付きの磁石表面上に第1の金属層を設けることや、第2の金属層上又は第3の層を設ける場合はさらにその上、つまり最外層としてさらに別の保護層を設けても良い。
【0052】
例えば下地膜として、Niストライクめっき膜、銅めっき膜、酸化亜鉛膜、ジンケート膜等を用いることが可能である。また、最外層の保護層としては、めっき法、溶射法、スパッタ法又は蒸着法を用いた金属層も用いることができ、特に金、ロジウム等の貴金属が好ましい。また、金属でなく、樹脂によるコーティング、例えばエポキシ電着塗装膜も好ましく用いられる。
【0053】
以下に、本発明の一例として、めっき法を用いて第1の金属層としてスズめっき膜を、第2の金属層としてニッケルめっき膜を形成する場合について、より詳細に説明する。
【0054】
〔永久磁石体〕
本発明において保護層が表面に設層される永久磁石体は、R(但し、RはYを含む希土類元素の1種以上)、Fe及びBを含有するものである。
R、Fe及びBの含有量は、
5.5at%≦R≦30at%
42at%≦Fe≦90at%
2at%≦B≦28at%
であることが好ましい。
【0055】
特に、永久磁石体を焼結法により製造する場合、下記の組成であることが好ましい。
【0056】
希土類元素Rとしては、Nd、Pr、Ho、Tbのうち少なくとも1種、又は更に、La、Sm、Ce、Gd、Er、Eu、Pm、Tm、Yb、Yのうち1種以上を含むものが好ましい。なお、Rとして2種以上の元素を用いる場合、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることもできる。
【0057】
Rの含有量は、上記のように5.5〜30at%であることが好ましい。5.5at%未満では、結晶構造がα−鉄と同一構造の立方晶組織となるため、高い保磁力(iHc)が得られず、30at%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下するからである。
【0058】
Feの含有量は、上記のように42〜90at%であることが好まし。Feが42at%未満であるとBrが低下し、90at%を超えるとiHcが低下するからである。
【0059】
Bの含有量は、上記のように2〜28at%であることが好まし。Bが2at%未満であると菱面体組織となるためiHcが不十分であり、28at%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、Brが低下するからである。
【0060】
なお、Feの1部をCoで置換することにより、磁気特性を損うことなく温度特性を改善することができる。この場合、Co置換量がFeの50%を超えると磁気特性が劣化するため、Co置換量は50%以下とすることが好ましい。
【0061】
また、R、Fe及びBの他、不可避的不純物としてNi、Si、Al、Cu、Ca等が全体の3at%以下含有されていてもよい。更に、Bの1部を、C、P、S、Cuのうちの1種以上で置換することにより、生産性の向上及び低コスト化が実現できる。この場合、置換量は全体の4at%以下であることが好ましい。また、保磁力の向上、生産性の向上、低コスト化のために、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Hf等の1種以上を添加してもよい。この場合、添加量は総計で10at%以下とすることが好ましい。
【0062】
本発明における永久磁石体は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は、1〜100μm程度であることが好ましい。そして、通常、体積比で1〜50%の非磁性相を含むものである。
【0063】
上記のような永久磁石体は、以下に述べるような焼結法により製造されることが好ましい。まず、所望の組成の合金を鋳造し、インゴットを得る。得られたインゴットを、スタンプミル等により粒径10〜100μm程度に粗粉砕し、次いで、ボールミル等により0.5〜5μm程度の粒径に微粉砕する。
【0064】
得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成形する。この場合、磁場強度は10kOe以上、成形圧力は1〜5t/cm2程度であることが好ましい。得られた成形体を、1000〜1200℃で0.5〜5時間焼結し、急冷する。なお、焼結雰囲気は、Arガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。この後、好ましくは不活性ガス雰囲気中で、500〜900℃にて1〜5時間時効処理を行う。
【0065】
なお、本発明は焼結磁石材料に限るものではなく、R−Fe−B系組成の磁石粉を樹脂で結合したボンド磁石にも適用可能である。
【0066】
〔前処理〕
永久磁石に保護層を設層する前に公知の処理液を用いて前処理を行ってもよい。めっき前処理に用いる処理液としては、水素の発生の少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましい。硝酸を用いることにより、その酸化作用で磁石表面に化学エッチングが施され、肉眼では確認不可能な程度の微細な凹凸構造が形成される。
【0067】
また酸溶液による前処理後には、水洗に加えてアルカリ溶液による中和処理を行うことが好ましい。磁石の微細な孔に侵入した酸性前処理液は、容易には水洗水と置換しないため、その孔の部分では酸性前処理液が残留しているためにめっき浴に投入してもpHが周囲と比べて低い。このため、析出反応が進行しないでピンホールとなるためである。
【0068】
また前処理後、めっき浴に投入する前に、真空乾燥処理を行うことが特に好ましい。真空乾燥により微細な孔の内部まで完全に乾燥することが可能であり、かつ真空中のため磁石表面の酸化反応が進行しない。真空度は、通常のロータリーポンプで達成可能な真空度で十分であり、1000〜0.01Pa程度で、処理時間は1〜60分程度であるが、1バッチの処理量等の条件により適宜選択される。更に真空乾燥中に50〜200℃程度に加熱することも好ましい。
【0069】
また真空乾燥処理後に、更に脱酸素水(好ましくは還元剤添加)に浸積した状態で減圧処理を行うことで、磁石の微細な孔に残っている気泡をめっき前に除去することも有効である。更に、真空乾燥、減圧浸水を複数回繰り返すことも好ましい。
【0070】
なお、工程間での水洗には通常は超純水やイオン交換水を用いるが、活性イオン水いわゆる電解水を用いることも好ましい。このアノード電解水は、酸性側アルカリ側のいづれからも生成されるものが使用可能であるが、酸性側の使用が好ましい。また、特に、pH5〜6の水素イオン濃度を有する電解水や、OH−、CO3 2−、Cl−、NO3 2−、SO4 2−、PO4 3−等のイオンを含む電解水を好ましく用いることが出来る。電解水の使用により表面に吸着している不要な各種イオンを効率的に除去することが可能であり、ピンホール防止、更に密着強度改善効果がある。
【0071】
〔Snめっき層〕
上記前処理済みの永久磁石の上に第1の金属層であるSnめっき層が形成される。このSnめっき層は、従来から知られているピロリン酸、有機カルボン酸等の中性浴、硫酸等の酸性浴等を用いた電気めっき法によって形成される。なお、電気めっき法による成膜であっても、Snバレルめっき法においては、置換めっきや不均化反応による成膜も同時に行うことができる。これらのうちでは、より高い圧縮せん断強度を示し、磁石素体を腐食しない中性浴を用いることが好ましく、その中の一つである中性ピロリン酸浴の組成を以下に挙げる。
SnSO4 35〜60g/リットル
K4P2O7 125〜200g/リットル
有機添加剤 0.1〜10g/リットル
【0072】
めっき条件は、pH7.5〜9.0、温度15〜55℃、電流密度0.05〜5A/dm2とすればよい。温度がこの範囲未満では、光沢は良くなるが、均一電着性と電流効率が低下し、温度がこの範囲を超えると、光沢不良と4価スズの増加による均一電着性と電流効率の低下を招く。また、電流密度がこの範囲未満では、めっき膜中への、例えばNi、Cu、Pb等の不純物の共析が多くなりすぎ、外観及び耐食性の悪い膜となってしまい、電流密度がこの範囲を超えると、電流効率が低下し、陰極近傍での水素発生が増大して磁性体に吸蔵され、水素脆性を引き起こし、磁石の磁気特性劣化や密着性低下の原因となる。
【0073】
〔Niめっき層〕
Snめっき後に電解水洗浄、エアーによる水切り乾燥を行った磁石表面上に電気めっきにより第2の金属層であるNiめっき層を設層する。Niを用いることにより、保護層としての強度を高め、優れた防錆効果を得ることができる。このようなNiの電気めっきに用いるめっき浴としては、塩化ニッケル成分を含有しないワット浴、スルファミン酸浴や、ホウフッ化浴、臭化ニッケル浴等が挙げられる。但し、この場合陽極の溶解が少なくなるため、ニッケルイオンを浴に補充する必要が生じる。このニッケルイオンは、硫酸ニッケル又は臭化ニッケルの溶液として補充するのが好ましい。
【0074】
例えば、これらのうちでは、より高い密着強度を示す低応力のスルファミン酸浴を用いることが好ましく、以下の組成のものが挙げられる。
Ni(NH2SO3)2・4H2O 150〜600g/リットル
NiBr2・6H2O 0〜30g/リットル
ホウ酸 30〜60g/リットル
【0075】
めっき条件は、pH3〜6、好ましくは4〜7、温度30〜70℃、電流密度0.1〜30A/dm2程度とすればよい。pHがこの範囲未満では、磁石体が溶解してしまい、pHがこの範囲を超えると水酸化ニッケルの沈澱が折出して、めっき膜が脆くなってしまう。なお、グルコン酸等の錯化剤を浴に含有させNiイオンを錯化させることで、水酸化ニッケルの沈澱は防止可能である。また、電流密度がこの範囲未満では、めっき膜中への、例えばCu、Co等の不純物の共折が多く、外観の悪い耐食性の低い膜となってしまい、電流密度がこの範囲を超えると陰極近傍での水素発生が増大して磁性体に吸蔵され、密着性低下の原因となる。
【0076】
めっき成膜中の水素発生による弊害防止には析出効率の向上が重要であり、好ましくは析出効率95%以上、特に好ましくは98%以上の条件で成膜する。また、電気めっき膜の膜厚均一性を改善するには、めっき時の浴電圧を低下させることが有効であり、具体的には導電塩添加による浴導電率上昇、陽極面積増大、浴温上昇、攪拌等がある。
【0077】
なお、無電解めっきでは、水素発生は避けられない。例えば一般的な市販の次亜燐酸を還元剤とする、無電解Niめっきでは、析出効率は50%以下であり、還元剤の多くは水素発生に消費される。特に成膜初期において激しい水素発生があり、磁石に多くの水素が吸蔵され水素脆性の原因となりやすい。
【0078】
また、Niめっき浴としては、スルファミンNiめっき浴の替わりに、管理が容易で安価な、ワット浴系も好ましく用いることができ、以下の組成のものが挙げられる。
(ワット浴)
NiSO4・4H2O 150〜600g/リットル
ホウ酸 30〜60g/リットル
めっき条件は、pH3〜9、特に好ましくは4〜9、温度30〜70℃、電流密度0.1〜30A/dm2程度とすればよい。また適宜、錯化剤、界面活性剤等を添加し、最適化した浴組成を使用することが好ましいが、後述のダブルNi膜とする場合には、イオウ含有量の少ないめっき膜であるために半光沢の膜とすることが好ましい。
【0079】
〔熱処理〕
熱処理温度は、Sn(第1の金属層)の融点(232℃)以上で、Ni(第2の金属層)の融点(1450℃)以下、更にもちろん磁石の融点以下の温度であれば本発明の効果を得ることができる。具体的には、237℃〜382℃、好ましくは245℃〜300℃である。前記範囲未満では溶解した第1の金属の流動性が不十分であり、十分なピンホール封止効果が得られないことがあり、第1の金属層がSnにホイスカの発生する可能性がある。前記範囲を超える温度では、保護層の変色、熱応力による密着不良が発生することがある。
【0080】
また、熱処理時間は最高温度保持時間として、1〜60分程度で、好ましくは5〜20分程度である。前記範囲未満では、多数の磁石を処理する際に、加熱装置内でのバラツキがあるため、また十分なピンホール封止効果が得られないことがあり、前記範囲を超える時間では熱処理の効果は変わらず、生産性が著しく低下すると同時に酸化反応がより進行する。
【0081】
熱処理雰囲気は、特に限定はないが、保護膜の変色を避けるには非酸化性雰囲気、例えば窒素中又は真空中熱処理が好ましい。記熱処理は、通常のオーブン等による熱処理だけでなく、ホットプレート、高周波誘導加熱法やレーザー照射による加熱法等による短時間昇温、冷媒等による急冷(降温)も可能である。
【0082】
なお、第1の金属層としてスズめっき膜を、第2の金属層としてニッケルめっき膜を用いている場合には、上記熱処理により、めっき層の少なくとも界面に、Ni−Sn金属間化合物層、特に安定なNi3Sn、Ni3Sn2又はNi3Sn4のうち少なくとも1種以上が形成された層が存在することがあるが、この層が密着性劣化を及ぼす場合には、第1の金属層と第2の金属層の間に中間層としてSnよりも高融点である銅、金等の薄層(0.1〜0.5μm)を介在させることで改善可能である。中間層は、第1の金属層と第2の金属層の何れかと同じ成膜方法で行うことが生産性の観点から好ましい。
【0083】
また、熱処理はピンホール封止処理のみを目的として行う必要は必ずしもない。例えば磁石をヨーク等に貼り付け固定する際に、半田接着にリフロー工程を用いる場合には、当該工程で代用することも可能である。すなわち、本発明の請求磁石の製造方法では、最終使用形態に至るまでの工程で所定の熱処理が行われればよい。
【0084】
〔熱処理後の再めっき層〕
ピンホール封止のための熱処理工程、微少凸部除去工程の後に、さらに第3の層を成膜する場合には、Ni、特にイオウ含有量が第2の金属層であるNiよりも多いNiを使用することが好ましい。いわゆるダブルNiの保護層として機能するからである。
このための、Niめっき浴としては一般のワット浴系も好ましく用いることができ、以下の組成のものが挙げられる。
(光沢Niめっき)
NiSO4・4H2O 150〜600g/リットル
ホウ酸 30〜60g/リットル
イオウ含有有機光沢剤2 5〜50g/リットル
【0085】
めっき条件は、pH3〜9、好ましくは4〜9、温度30〜70℃、電流密度0.1〜30A/dm2程度とすればよい。また適宜、錯化剤、界面活性剤等を添加し、最適化した浴組成を使用することが好ましい。
【0086】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、更に詳細に説明する。
【0087】
粉末治金法によって作成した27.4Nd−3.0Dy−1.0B−残部Fe(数字は重量%)の組成をもつ焼結体をアルゴン雰囲気中で600℃にて2時間時効処理を施し、直径23.5mm、厚さ3.4mmの大きさの円盤状に加工し、更にバレル研磨処理により面取りを行って永久磁石を得た。
【0088】
上記試料100個を硝酸濃度:0.5N、グルコン酸ナトリウム濃度:0.025モル/リットルの処理液50リットルに10℃で3分間浸漬して表面層を溶解した。平均溶解量は6μmであった。
【0089】
上記処理済みの試料を電解水中で超音波洗浄した後、超音波印加トリエタノールアミン3%水溶液に1分間浸積して中和処理を行った。そして再度、電解水中で超音波洗浄した後、10Paの真空乾燥処理(70℃)10分間を行った。乾燥処理後に、次亜燐酸ナトリウムを10g/リットル添加した脱酸素水に浸積しながら、250Paまで減圧し気泡を除去した後に、再度、電解水中で超音波洗浄して前処理を完了した。
【0090】
次に、下記に示す組成・条件の中性ピロリン酸Sn浴を用いてバレル法によりSnめっきを行った。
【0091】
(中性ピロリン酸浴組成)
SnSO4 45g/リットル
K4P2O7 165g/リットル
有機添加剤 2g/リットル
浴温度 30℃
pH 8.0
平均陰極電流密度 0.5A/dm2
Snめっき後、電解水中で洗浄した後、下記に示す組成・条件のスルファミン酸Ni浴、およびワットNi浴を用いてバレル法により半光沢低イオウ含有Niめっきを行った。
【0092】
(スルファミン酸浴)
Ni(NH2SO3)2・4H2O 180g/リットル
NiBr2・6H2O 5g/リットル
ホウ酸 45g/リットル
LiNH2SO3 200g/リットル
浴温度 50℃
pH 5.1
平均陰極電流密度 0.3A/dm2
【0093】
(ワット浴)
NiSO4・4H2O 300g/リットル
ホウ酸 30g/リットル
浴温度 50℃
pH 5.0
平均陰極電流密度 0.3A/dm2
【0094】
めっき後の熱処理は真空熱処理炉を用い、ステンレス製の籠に試料100個を入れ、上下に軽い振動を与えながら30分間行った。なお、単に靜置しながら行った場合には、ピンホールから溶解したSnが玉状にNiめっき膜の表面に現れたが、容易に玉が表面から剥離するため大きな問題とはならない。軽い振動を与えながら行った場合にはピンホールからNiめっき膜の表面に現れた溶解したSnは、籠の外に放出されていた。
【0095】
さらに念のため、磁石と同重量のスチールボールと共にバレル研磨装置に投入し、スチールボールとの衝突により表面に生じている可能性のある第1の金属による微少凸部のつぶしを行った。
【0096】
なお、Snめっき及びNiめっきの処理時間により膜厚にそれぞれ変えて、更に比較のためNiめっきのみ、Snめっきのみの試料を作成し、熱処理温度もパラメータとし、下記の評価を行った結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
〔耐湿試験〕
プレッシャークッカーテスト(120℃、100%RH,2気圧)100時間での外観評価(個数:20個)評価結果は、不良発生数で示した。
【0099】
〔有孔度試験〕
フェロキシル試験液(JIS H 8617)を準用し、ろ紙1cm2当たりのピンホール個数を調べた。なお、参考のため熱処理前後で評価を行った。また、一部の試料については、80℃高温放置試験を行った。
【0100】
本発明に係る実施例1〜8は何れも高い信頼性が得られた。
【0101】
ここで、実施例5はSn膜厚がやや薄かったため、ピンホール封止効果が十分には発揮されていない。実施例7はNi膜厚が薄かったため、熱処理時に一部の試料のNi皮膜が破れてしまい、その磁石に他の磁石がSnにより張り付いてしまったため、その試料は評価不能であったため、残りの試料で評価を行った。実施例8は、熱処理温度がSnの融点である232℃以上であるが、融点より3℃高いだけであるため、溶融したSnの流動性が不十分だったため、あるいは一部が熱分布のため未溶融だったためかピンホール封止効果が十分には発揮されていない。しかし、いずれも比較例の試料に比べると、その効果は歴然としており、余り高耐食性が要求されない応用製品には適用可能と判断された。
【0102】
なお、比較例4の試料は、耐蝕性は良好であったが、保護膜厚が50μmと厚いため、生産性が悪く、磁石の端部で膜厚が90μm以上あり寸法精度が規格外となり、かつNiが磁性材料であるために、この厚いNi層の影響で磁気回路を構成した際の動作場所での磁界強度が8%も減少してしまった。更に、80℃高温放置1000時間後では、BHmaxが10%劣化したことから、内部腐食が進行したものと考えられる。これに対して本発明の実施例1〜4は、同様の高温放置試験後にもBHmaxの劣化は3%以下であった。
【0103】
また、前処理において真空乾燥処理を行わず、電解水の替わりに超純水を用い、乾燥後の脱酸素水による置換処理を行わなかった以外は実施例2と同様に処理した試料は、プレッシャークッカーテスト(不良発生数:0/20)では、実施例2と同様の高耐食性を示したが、80℃高温放置1000時間後では、BHmaxが5%劣化したことから、内部腐食がやや進行したものと考えられる。
【0104】
一方、実施例4の試料については、熱処理後に、更に未処理の磁石と同様の前処理後に、5μmの光沢Niめっき(S含有量1500ppm)を施した試料(実施例9)を作成した。なお、スルファミン酸浴からのNi膜中のS含有量は300ppmであった。この実施例9の試料は、耐湿試験(85℃85%)3000時間においても全く不良が発生しない非常に優れた耐蝕性を示した。
【0105】
また、比較例6の試料では、80℃高温放置試験中にホイスカの発生が確認された。このホイスカは微細な針状であり物理的な衝撃により粉状になり散乱するものであった。このような粉状のゴミ発生は清浄な環境で使用されるハードディスクドライブのボイスコイルモーター用途には大きな問題となるものである。
【0106】
以上から明らかなように、本発明によれば薄い保護膜厚で高い耐食性が得られ、かつ同時に多数の磁石の処理が可能な簡便な方法でり、多方面で好ましく用いることのできる永久磁石を得ることができる。
【0107】
【発明の効果】
本発明に係る永久磁石の製造方法は、同時に多数の磁石のピンホールの封止が簡便な方法で可能となり、薄い膜厚の保護膜であっても、耐蝕性が向上する。更に、めっき液が保護膜内に残留することがないため、内部からの腐食が防止される。また保護膜としてSnを用いた場合には、ホイスカ発生も防止できる。そして、ピンホール封止処理後に、更に保護膜を形成することで、より厳しい環境で使用される磁石に対しても十分な信頼性を付与することが可能となる。また、本発明に係る永久磁石は、高い信頼性を有する。
【発明が属する技術分野】
本発明は、永久磁石に関し、更に詳しくは、R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石の製造方法及び永久磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
Nd−Fe−B磁石等のR−T−B系磁石は、25MGOe以上の高エネルギ積を示す高性能磁石であるが、主成分として酸化されやすい希土類元素と鉄を含有するため、耐食性が低く、その結果、性能の劣化やバラツキ等が問題になっている。
【0003】
このようなR−T−B系磁石の耐食性の低さを改善する目的として、上記磁石の表面に、Niめっき、2層めっき、樹脂塗装、Snめっき等の保護膜を施す技術や保護膜のピンホール防止技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開平7−142246号公報には、R、T及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面にNiめっき層を有し、このNiめっき層上にSnめっき層が形成され80〜200℃で熱処理を行うことを特徴とする永久磁石が開示されている。
【0005】
また、特開平7−52684号公報には、R10原子%〜30原子%、B2原子%〜28原子%、Fe65原子%〜80原子%を主成分とし、主相が正方晶相からなる焼結永久磁石体の表面に、レーザービーム照射による溶融凝固層からなる無孔層を有することを特徴とする耐食性永久磁石が開示されている。
【0006】
また、特許第2526076号公報には、R10原子%〜30原子%、B2原子%〜28原子%、Fe65原子%〜80原子%を主成分とし、主相が正方晶相からなる焼結永久磁石体表面に、Pd、Ag、Pt及びAuから選ばれた少なくとも1種の貴金属層と、Ni、Cu、Sn及びCoから選ばれた少なくとも1種の卑金属層とからなる金属層を積層被覆した後、酸化雰囲気以外の雰囲気中で、400℃〜700℃にて拡散熱処理することを特徴とする永久磁石の製造方法が開示されている。
【0007】
更に、特許第3248077号公報には希土類金属(R)、Fe及びNを主成分とし、かつThMn12型結晶構造の化合物を主相とする平均粒径20〜150μmの合金粉末表面に、Sn、Zn、Pb、In、Al、Mgの少なくとも1種からなる金属皮膜を形成し、これに100〜600℃の温度範囲で熱処理を施した後、成形を行うことを特徴とする希土類−鉄−窒素系永久磁石の製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
R−T−B系磁石保護膜の大きな問題点がピンホールである。例えば、めっき膜のピンホールの発生原因は大別すると物理的要因と化学的要因がある。物理的要因とは磁石表面に深く細い凹部が存在する場合に、その内部で金属イオンの拡散速度、電流密度分布等のために成膜速度が、遅いために生じる、いわゆる形状特異点が原因である。一方、化学的要因とは、磁石表面に、導電性の無い酸化物相がある場合や、凹部の内部や粒界が前処理で溶解して形成された隙間に前処理液や洗浄水が残留し、その近傍のめっき液濃度、pH等が局部的に最適値を大きくはずれ、成膜反応が停止したり、あるいはめっき金属水酸化物が生じている場合等の、いわゆる化学的特異点に起因する場合がある。
【0009】
このように、磁石本体の不均一性に起因し保護膜にピンホールが形成されやすく、そこから腐食が進行する。一般にピンホールは保護膜の膜厚が厚くなるほど減少する。しかし保護膜が厚くなると、製造に時間がかかり高コストの原因となると同時に、その膜厚がギャップ等となり、磁気回路に悪影響を及ぼす。更に膜厚均一性が失われ、磁石の寸法精度が悪くなる問題点もある。更に、厚い膜厚により外観上のピンホールはふさがっても、内部にはめっき液が残留していることも多く、この残留めっき液、又は乾燥した残留めっき液成分がピンホール内部に高濃度で存在することが原因で、その周囲からの腐食が進行することもある。
【0010】
特開平7−142246号公報では、Niめっき膜の上にSnめっき膜を成膜しSnめっき膜の融点(232℃)より低い温度で熱処理しNiSn相を形成させている。このためピンホールが無い部分の膜の耐蝕性は改善するが、ピンホールに対する改善効果は小さい。また、表面Sn層が溶解し磁石同士、又は周囲の治具と触れ合い、降温時にSnが硬化すると磁石同士、又は周囲の治具との分離が困難となってしまう。
【0011】
特開平7−52684号公報では、レーザービーム照射による溶融凝固層からなる無孔層を最初に形成することで、保護膜のピンホール生成を防止しているが、生産性が低く、コスト的な問題がある。
【0012】
特許第2526076号公報では、実施例によると、無電解めっき触媒(貴金属層)を用いた無電解Niめっき(卑金属層)を成膜し、熱処理を行い密着強度を改善しているにすぎない。しかし、卑金属層としてSnを用いた場合には、当該特許発明の熱処理温度(400℃〜700℃)では、Snの融点以上の温度で熱処理を行うことになるために、表面Sn層が溶解し磁石同士、又は周囲の治具と触れ合い、降温時にSnが硬化すると分離が困難となる。すなわち熱処理において所定温度以上では、めっき膜が溶解するということに何の注意も払われてはいない。
【0013】
特許第3248077号公報では、希土類金属粉末を低融点金属を成膜した後に熱処理を行っているが、やはり融点以上の温度で熱処理を行った場合には、前記と同様に表面層が溶解した磁性粉同士が降温後に分離が困難となる。
【0014】
このように、従来の処理による永久磁石では、薄い保護膜厚においてもピンホールが少なく、大量生産に適した低コストを実現する永久磁石製造方法及び永久磁石として、市場の要求を十分に満足するものはなかった。
【0015】
そこで、本発明は、安価にピンホール低減が可能で大量生産に適した低コストを実現する永久磁石の製造方法及び永久磁石を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(16)の本発明により達成される。
(1)R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を形成し、この第1の金属層上に第2の金属層を形成した後に前記第1の金属層の融点以上の温度であり、かつ前記第2の金属層の融点未満の温度で熱処理を行うことを特徴とする永久磁石の製造方法。
(2)前記第1の金属層がSn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であり、第2の金属層がNi、Cu、Zn、Au、Ag、Rhの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であることを特徴とする(1)に記載の永久磁石の製造方法。
(3)前記第1の金属層の融点よりも、5〜150℃高い温度で熱処理を行うことを特徴とする(1)又は(2)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(4)前記第1の金属層及び第2の金属層が、共に電気めっき法により形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(5)前記第1の金属層が膜厚4〜40μmのSn又はSnを主成分とする合金であることを特徴とする(1)〜(4)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(6)前記第2の金属層が膜厚0.1〜20μmのNi又はNiを主成分とする合金であることを特徴とする(1)〜(5)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(7)前記熱処理後に、更に第3の層を形成することを特徴とする(1)〜(6)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(8)前記第3の層が電気めっき法により形成された金属層であることを特徴とする(7)に記載の永久磁石の製造方法。
(9)前記第3の層が前記第2の層と同じ金属、又は合金であることを特徴とする(7)又は(8)の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
(10)R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層が形成されており、この第1の金属層上に第2の金属層が形成されており、第1の金属層の融点が前記第2の金属層の融点よりも低いことを特徴とする永久磁石において、前記第1の金属層が、溶融熱処理されていることを特徴とする永久磁石。
(11)前記第1の金属層がSn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であり、第2の金属層が、Ni,Cu,Zn,Au,Ag,Rhの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であることを特徴とする(10)に記載の永久磁石。
(12)前記第1の金属層が膜厚4〜40μmのSn又はSnを主成分とする合金であることを特徴とする(10)又は(11)の何れかに記載の永久磁石。
(13)前記第2の金属層が膜厚0.1〜5μmのNi又はNiを主成分とする合金であることを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載の永久磁石。
(14)前記溶融熱処理により、前記第2の金属層のピンホールが前記第1の金属で封止されていることを特徴とする(10)〜(13)の何れかに記載の永久磁石。
(15)前記溶融熱処理後に、更に第3の層を形成されていることを特徴とする(10)〜(14)の何れかに記載の永久磁石。
(16)前記第3の層が前記第2の層と同じ金属、又は合金であることを特徴とする(15)に記載の永久磁石。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的構成について説明する。
【0018】
永久磁石体表面に形成される第1の金属層の形成方法は、めっき法、溶融めっき法、溶射法、スパッタ法又は蒸着法を用いることができる。コスト、量産性等を考慮すると、めっき法を用いることが好ましく、特に電気めっき法を用いることが好ましい。めっき法には電気めっき法、無電解めっき法があるが、電気めっき法は無電解めっきに比べて成膜速度が速く安価であり、無電解めっきのように成膜中の水素発生が少ないために永久磁石に対する影響が少ない。
【0019】
また、この第1の金属層の材質は、第2の金属層の融点よりも低い融点を有する材料から選択される。第1の金属層と第2の金属層との融点の差は、100℃以上、好ましくは200℃以上である。具体的には、Sn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属を用いることが好ましい。これら金属は融点が低いため熱処理温度を低く設定できることから経済的、技術的に好ましいからである。上記金属の融点は、Sn(232℃)、Pb(327℃)、SnPb(182℃)、Bi(271℃)、Cd(321℃)、In(156℃)、Zn(420℃)である。
【0020】
また、前記金属から選ばれる1種を主成分とし、副成分として前記金属から選ばれる1種以上の金属を含む合金や、Ag、Cu、Ni等の高融点金属やP、C、S等の非金属を更に10wt%以下含有する組成であっても、その合金の融点が上記温度未満であれば問題はない。
【0021】
なお、電気めっき膜においては、用いる添加剤等により100〜5000ppm程度のC、Sが不可避的に含まれたり、使用する金属塩の純度により不可避的に他の金属が析出膜に含有されることがある。これらのめっき成膜において、不可避的成分を含有する合金膜は、一般には合金膜ではなく、単金属膜として取り扱われる。
【0022】
また、上記第1の金属層として、Snを用いた場合には、ひげ状突起であるホイスカ(whiskers)の発生、あるいは相変化(結晶構造変化)による膜劣化の可能性があるが、他の金属と合金化することで防止することができる。更にSn単体よりも融点を低下することも可能である。例えば、Sn−3.5Ag、Sn−0.75Cu、Sn−8Zn、Sn−3.5Ag−0.75Cu、Sn−5Bi−3.5Ag、Sn−3Bi−8Zn等の公知の合金組成を好ましく用いることができる。
【0023】
なお、ホイスカは成膜後に一度溶解処理されると発生しないため、本発明の永久磁石では、単にSnが成膜されただけの永久磁石又は溶解温度未満の温度で熱処理された永久磁石に比べて信頼性が高い。
【0024】
第1の金属層の膜厚は、4〜40μm、好ましくは5〜25μmである。前記範囲未満では、溶融処理しても十分なピンホール封止効果を得ること、そして長期耐蝕性を得ることが困難となり、前記範囲を超える膜厚は経済的にそして膜厚によるギャップ効果でヨーク等に磁石を貼り付けて組上がった磁気回路に悪影響を及ぼす。
【0025】
なお、本発明において膜厚とは、最も膜厚が薄いと推定される部分における蛍光X線膜厚計(スポット径0.3mm)による10点測定の平均値である。最も薄いと推定される部分は、電気めっきの場合であれば1次電流密度分布から判断することができ、例えば平板状磁石の場合では平面中央部である。なお、測定点10点の平均としたのは特異値の排除のためである。
【0026】
なお、第1の金属層の膜厚は熱処理により減少する。この減少する厚みは、磁石の組成、前処理方法、表面粗さ、第2の金属層厚、熱処理条件等によって異なるが、概ね1〜3μmである。これは、熱処理により溶解した第1の金属層の一部は第2の金属層のピンホールの封止に、そして一部は前記ピンホールを通じて第2の金属層の外部に流出し、更に一部は第2の金属層内部に拡散するためである。よって、第1の金属層の膜厚が3μm以下の場合には熱処理後に第1の金属層が実質上、消失するか極めて薄層化してしまうこともある。
【0027】
また、本発明の第1の金属層は、溶融処理前には開口部を有するピンホールを有している。このため、内部にめっき液成分が残留することも無い。万が一、めっき液成分の残留があったとしても溶融処理により、蒸発又は第1の金属溶融層への拡散が進行することによりめっき液成分の残留、少なくとも局部的な残留は解消されるために磁石内部からの腐食発生を大幅に低減可能である。
【0028】
第1の金属層上に形成する第2の金属層の形成方法は、第1の金属層の形成方法と同様に、めっき法、溶射法、溶融めっき法、スパッタ法又は蒸着法を用いることができ、好ましくは、第1の金属層と同じ形成方法を用いる。コスト、量産性等を考慮すると、めっき法を用いることが好ましく、特に電気めっき法を用いることが好ましい。めっき法には電気めっき法、無電解めっき法があるが、電気めっき法は無電解めっきに比べて成膜速度が速く安価であり、無電解めっきのように成膜中の水素発生が少ないために永久磁石に対する影響が少ない。
【0029】
なお、比較的小さな磁石にめっき法により金属層を成膜する場合には、公知のバレルめっきも好ましく使用可能である。比較的大きな磁石の場合には、めっき治具に固定してめっきする、いわゆる引っかけめっきが一般的である。
【0030】
第2の金属層の材質は、第1の金属層の融点よりも高い融点を有する材料から選択される。具体的には、Ni、Cu、Zn、Au、Ag、Rhの何れかの金属を用いることが好ましい。安定した成膜方法が工業的に確立しており、量産に適しているためである。特に、コスト、生産性安定の観点からNi、Cuの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金を用いることが好ましい。なお、上記金属の融点は、Ni(1450℃)、Cu(2570℃)、Zn(420℃)、Au(2800℃)、Ag(2210℃)、Rh(3700℃)である。
【0031】
また、前記金属から選ばれる1種を主成分とし、副成分として前記金属から選ばれる1種以上の金属を含む合金やP、C、S等の非金属を更に10wt%以下含有する組成であっても、その合金の融点が上記温度未満であれば問題はない。
【0032】
なお、電気めっき膜においては、用いる添加剤等により100〜5000ppm程度のC、Sが不可避的に含まれたり、工業的生産過程においては使用する金属塩の純度により不可避的に他の金属が析出膜に含有されることがある。例えばNiめっきにおいては、不可避的にCo、Feが微量含有される。これらのめっき成膜において、不可避的成分を含有する合金膜は、一般には合金膜ではなく、単金属膜として取り扱われる。
【0033】
また、第2の金属層の膜厚は、0.1〜40μm、好ましくは0.2〜20μmである。前記範囲未満では、熱処理時に膜強度が不足し膜が破れてしまうことがあり、前記範囲を超える膜厚は経済的に問題があり、そしてギャップ効果によりヨーク等と組上がった磁石の磁気回路に悪影響を及ぼすと同時に第2の金属層の内部応力による弊害が発生することがある。
【0034】
すなわち、第1の金属層を溶解した際に、第2の金属層は第1の金属層から応力的に解放される。すると、第2の金属層の表面にしわが生じたり、第1の金属層から大きく離れて浮いた状態になることもある。これは第2の金属層自体の内部応力が高い場合(特に強い引張応力)の際に顕著であることから、その応力による変形に起因すると見られる。このため、第2の金属層は応力が小さくなるように公知の添加剤、成膜条件を決定することが好ましい。具体的には、最大膜厚は、内部応力をSと膜のヤング率をYとの積で決定される。
【0035】
また、安価な汎用めっき浴、めっき条件にて成膜する場合には、やや強い引っ張り応力になることが多く、この場合には、膜厚を薄くすることが効果的である。この場合には第2の金属層の膜厚は10μm以下が好ましく、特に2μm以下が好ましい。もちろん、この厚さは金属層の材料、内部応力の大小により変化するが、一般的に、比較的硬質膜であるNi、Cu等では、5μm以下が好ましく、比較的軟質なZn、Au、Ag、Rh等では10μm以下が好ましい。
【0036】
例えば、Niめっき浴としてプロピンオール等の不飽和有機化合物とナフタレンスルホン酸、サッカリン等のイオウ含有有機添加剤を用いたワット浴を用いる場合には、膜厚は5μm以下が好ましく、特に好ましくは1μm以下である。
【0037】
なお、第2の金属層の膜厚が薄い場合であっても、ピンホールは封止されているため磁石本体が外気と接触することは無いため、通常の環境での磁石の耐蝕性に問題はない。
【0038】
また、第2の金属層の材質は、第1の金属層の材質に比べて電気化学的に卑な場合(標準電極電位が卑)には、第2の金属層が犠牲防錆膜として作用する。第1の金属層がSn(標準電極電位:−0.14V)に対して、Ni(標準電極電位:−0.25V)、Zn(標準電極電位:−0.76V)を用いた場合等がこれに該当する。反対に、第2の金属層の材質が、第1の金属層の材質に比べて電気化学的に貴な場合(標準電極電位が貴)には、第1の金属層が犠牲防錆膜として作用する。第1の金属層がSn(標準電極電位:−0.14V)に対して、銅(標準電極電位:0.53V)、金(標準電極電位:1.49V)、ロジウム(標準電極電位:0.8V)を用いた場合等がこれに該当する。第1金属層と第2金属層の標準電極電位の関係は、本願発明では第2の金属層のピンホールは第1の金属層により封止されているため、第2の金属層が犠牲防錆膜として作用することが特に好ましい。
【0039】
本願発明に係る製造方法では、第2の金属層を形成後に熱処理を行う。
【0040】
熱処理を行うことにより、第1の金属層が溶融し、ピンホールを封止することができる。また、磁石と第2の金属層の間に溶融した第1の金属が閉じこめられているため、多数の磁石を同時に、すなわち重なり合う状態で熱処理しても熱処理後の磁石同士の張り付きの問題は生じない。更に、第1の金属層が溶融することで、磁石表面の微細な凸部へも第1の金属層が入り込むため、いわゆる食い付きが良くなり密着強度も改善される。
【0041】
また、磁石を1個ずつ熱処理を行う場合であっても、表面に第2の金属層(非溶解層)が無い状態では、溶解した第1の層は、その自らの液体としての表面張力で、磁石表面に小球状あるいは島状に表面に偏在してしまい、降温後に均一な厚さの膜とはならない。これに対して、溶解層の上に非溶解の第2の膜があることで、上下方向均等に表面張力が作用するために、溶解層の膜厚均一性が保たれるという効果がある。
【0042】
さらに、第1の金属層材料として、Sn又はSnを主成分とする合金を用いた場合には、Snめっき液に磁石を浸積するだけで置換反応、不均化反応が進行しSn膜が表面に形成される。このため、たとえ電気めっきにおいても、初期に置換反応、不均化反応が進行し、この膜の上に電気めっき膜が形成されるものと見られる。この置換反応膜や不均化反応膜はポーラスであり、密着強度も十分ではないことが多い。しかし、この置換反応膜や不均化反応膜も溶融熱処理時に電気めっきにより形成されたSn膜部分と同様に溶解され、密度の高い膜となり、かつ磁石との密着強度も向上する。この置換反応、不均化反応は、特にバレルめっきの場合に顕著であり、本発明による改善効果が大きい。
【0043】
熱処理温度は、第1の金属層の融点以上で、第2の金属層の融点以下、更に磁石の融点以下の温度であれば本発明の効果を得ることができるが、好ましくは第1の金属層の融点より5〜150℃高い温度、特に好ましくは20〜75℃高い温度である。前記範囲未満では溶解した第1の金属の流動性が不十分であり、十分なピンホール封止効果が得られないことがある。
【0044】
前記範囲を超える温度では、保護層の変色、磁石本体と保護膜の熱膨張係数の違いからの熱応力により密着強度が低下するからである。
【0045】
また、熱処理時間は0.1〜120分程度で、好ましくは3〜30分程度である。前記範囲未満では、十分なピンホール封止効果が得られないことがあり、前記範囲を超える時間では熱処理の効果は変わらず、生産性が著しく低下する。熱処理は、複数回に分けても良い。
【0046】
熱処理雰囲気は、特に限定はないが、保護膜の変色を避けるには非酸化性雰囲気、例えば窒素中又は減圧中、真空中熱処理が好ましい。前記熱処理は、通常のオーブン等による熱処理だけでなく、高周波誘導加熱法やレーザー照射による加熱法等による短時間昇温、冷媒等による急冷(降温)も可能である。特に好ましくは減圧中、真空中の熱処理である。万が一、ピンホール内にめっき液や気体が残留していた場合にも、効果的に除去可能だからである。
【0047】
なお、第1の金属層を溶融熱処理した際に、第2の金属層表面に第1の金属がピンホールから飛び出て降温後に、微少な凸部となってしまうことがある。この凸部が存在することで、形状寸法への影響が問題となる場合には、各種の公知の方法で凸部を除去あるいは圧縮することが可能である。例えば、表面研削加工や、スチールボールと共にバレル処理を行うことで表面の凸部が解消可能である。
【0048】
また、熱処理後に更に、その上に第3の層を形成しても良い。第1の金属層、第2の金属層のピンホールが第1の金属で封止された表面は、ピンホール部分で標準電極電位の異なる金属が接しているため局部電池を形成し、腐食が進行しやすいのを防止するためである。特に第2の金属層の膜厚が薄く、高耐食を要求される製品の場合には有効である。
【0049】
第3の層の材質は、公知の樹脂、金属、又は複合材料を用いることができる。好ましくは、第2の金属層と同じ金属で第3の層を成膜することであり、更に好ましくは、公知のダブルニッケル防錆膜(S含有量低の第2のNiめっき膜上にS含有量高の第3のNiめっき膜を形成)構造とすることである。このような処理をすることにより、従来の防錆膜では不可能であった極めて高い耐食性を磁石に付与することが可能となる。
【0050】
第3の層の形成方法は、めっき法、溶射法、スパッタ法又は蒸着法を用いることができ、好ましくは、第2の金属膜と同じ形成方法を用いる。特に、電気めっき法を用いることが好ましい。第3の層を成膜する場合、第1の金属層、第2の金属層のピンホールが第1の金属で封止された状態で成膜するので、この第3の金属膜にはピンホールが発生しにくいからである。
【0051】
第3の層の厚さに特に制限はなく、使用環境に合わせて適宜選択される。
なお、磁石表面に第1の金属層を形成する際に、磁石素地上に下地膜を形成した下地膜付きの磁石表面上に第1の金属層を設けることや、第2の金属層上又は第3の層を設ける場合はさらにその上、つまり最外層としてさらに別の保護層を設けても良い。
【0052】
例えば下地膜として、Niストライクめっき膜、銅めっき膜、酸化亜鉛膜、ジンケート膜等を用いることが可能である。また、最外層の保護層としては、めっき法、溶射法、スパッタ法又は蒸着法を用いた金属層も用いることができ、特に金、ロジウム等の貴金属が好ましい。また、金属でなく、樹脂によるコーティング、例えばエポキシ電着塗装膜も好ましく用いられる。
【0053】
以下に、本発明の一例として、めっき法を用いて第1の金属層としてスズめっき膜を、第2の金属層としてニッケルめっき膜を形成する場合について、より詳細に説明する。
【0054】
〔永久磁石体〕
本発明において保護層が表面に設層される永久磁石体は、R(但し、RはYを含む希土類元素の1種以上)、Fe及びBを含有するものである。
R、Fe及びBの含有量は、
5.5at%≦R≦30at%
42at%≦Fe≦90at%
2at%≦B≦28at%
であることが好ましい。
【0055】
特に、永久磁石体を焼結法により製造する場合、下記の組成であることが好ましい。
【0056】
希土類元素Rとしては、Nd、Pr、Ho、Tbのうち少なくとも1種、又は更に、La、Sm、Ce、Gd、Er、Eu、Pm、Tm、Yb、Yのうち1種以上を含むものが好ましい。なお、Rとして2種以上の元素を用いる場合、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることもできる。
【0057】
Rの含有量は、上記のように5.5〜30at%であることが好ましい。5.5at%未満では、結晶構造がα−鉄と同一構造の立方晶組織となるため、高い保磁力(iHc)が得られず、30at%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下するからである。
【0058】
Feの含有量は、上記のように42〜90at%であることが好まし。Feが42at%未満であるとBrが低下し、90at%を超えるとiHcが低下するからである。
【0059】
Bの含有量は、上記のように2〜28at%であることが好まし。Bが2at%未満であると菱面体組織となるためiHcが不十分であり、28at%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、Brが低下するからである。
【0060】
なお、Feの1部をCoで置換することにより、磁気特性を損うことなく温度特性を改善することができる。この場合、Co置換量がFeの50%を超えると磁気特性が劣化するため、Co置換量は50%以下とすることが好ましい。
【0061】
また、R、Fe及びBの他、不可避的不純物としてNi、Si、Al、Cu、Ca等が全体の3at%以下含有されていてもよい。更に、Bの1部を、C、P、S、Cuのうちの1種以上で置換することにより、生産性の向上及び低コスト化が実現できる。この場合、置換量は全体の4at%以下であることが好ましい。また、保磁力の向上、生産性の向上、低コスト化のために、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Hf等の1種以上を添加してもよい。この場合、添加量は総計で10at%以下とすることが好ましい。
【0062】
本発明における永久磁石体は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は、1〜100μm程度であることが好ましい。そして、通常、体積比で1〜50%の非磁性相を含むものである。
【0063】
上記のような永久磁石体は、以下に述べるような焼結法により製造されることが好ましい。まず、所望の組成の合金を鋳造し、インゴットを得る。得られたインゴットを、スタンプミル等により粒径10〜100μm程度に粗粉砕し、次いで、ボールミル等により0.5〜5μm程度の粒径に微粉砕する。
【0064】
得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成形する。この場合、磁場強度は10kOe以上、成形圧力は1〜5t/cm2程度であることが好ましい。得られた成形体を、1000〜1200℃で0.5〜5時間焼結し、急冷する。なお、焼結雰囲気は、Arガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。この後、好ましくは不活性ガス雰囲気中で、500〜900℃にて1〜5時間時効処理を行う。
【0065】
なお、本発明は焼結磁石材料に限るものではなく、R−Fe−B系組成の磁石粉を樹脂で結合したボンド磁石にも適用可能である。
【0066】
〔前処理〕
永久磁石に保護層を設層する前に公知の処理液を用いて前処理を行ってもよい。めっき前処理に用いる処理液としては、水素の発生の少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましい。硝酸を用いることにより、その酸化作用で磁石表面に化学エッチングが施され、肉眼では確認不可能な程度の微細な凹凸構造が形成される。
【0067】
また酸溶液による前処理後には、水洗に加えてアルカリ溶液による中和処理を行うことが好ましい。磁石の微細な孔に侵入した酸性前処理液は、容易には水洗水と置換しないため、その孔の部分では酸性前処理液が残留しているためにめっき浴に投入してもpHが周囲と比べて低い。このため、析出反応が進行しないでピンホールとなるためである。
【0068】
また前処理後、めっき浴に投入する前に、真空乾燥処理を行うことが特に好ましい。真空乾燥により微細な孔の内部まで完全に乾燥することが可能であり、かつ真空中のため磁石表面の酸化反応が進行しない。真空度は、通常のロータリーポンプで達成可能な真空度で十分であり、1000〜0.01Pa程度で、処理時間は1〜60分程度であるが、1バッチの処理量等の条件により適宜選択される。更に真空乾燥中に50〜200℃程度に加熱することも好ましい。
【0069】
また真空乾燥処理後に、更に脱酸素水(好ましくは還元剤添加)に浸積した状態で減圧処理を行うことで、磁石の微細な孔に残っている気泡をめっき前に除去することも有効である。更に、真空乾燥、減圧浸水を複数回繰り返すことも好ましい。
【0070】
なお、工程間での水洗には通常は超純水やイオン交換水を用いるが、活性イオン水いわゆる電解水を用いることも好ましい。このアノード電解水は、酸性側アルカリ側のいづれからも生成されるものが使用可能であるが、酸性側の使用が好ましい。また、特に、pH5〜6の水素イオン濃度を有する電解水や、OH−、CO3 2−、Cl−、NO3 2−、SO4 2−、PO4 3−等のイオンを含む電解水を好ましく用いることが出来る。電解水の使用により表面に吸着している不要な各種イオンを効率的に除去することが可能であり、ピンホール防止、更に密着強度改善効果がある。
【0071】
〔Snめっき層〕
上記前処理済みの永久磁石の上に第1の金属層であるSnめっき層が形成される。このSnめっき層は、従来から知られているピロリン酸、有機カルボン酸等の中性浴、硫酸等の酸性浴等を用いた電気めっき法によって形成される。なお、電気めっき法による成膜であっても、Snバレルめっき法においては、置換めっきや不均化反応による成膜も同時に行うことができる。これらのうちでは、より高い圧縮せん断強度を示し、磁石素体を腐食しない中性浴を用いることが好ましく、その中の一つである中性ピロリン酸浴の組成を以下に挙げる。
SnSO4 35〜60g/リットル
K4P2O7 125〜200g/リットル
有機添加剤 0.1〜10g/リットル
【0072】
めっき条件は、pH7.5〜9.0、温度15〜55℃、電流密度0.05〜5A/dm2とすればよい。温度がこの範囲未満では、光沢は良くなるが、均一電着性と電流効率が低下し、温度がこの範囲を超えると、光沢不良と4価スズの増加による均一電着性と電流効率の低下を招く。また、電流密度がこの範囲未満では、めっき膜中への、例えばNi、Cu、Pb等の不純物の共析が多くなりすぎ、外観及び耐食性の悪い膜となってしまい、電流密度がこの範囲を超えると、電流効率が低下し、陰極近傍での水素発生が増大して磁性体に吸蔵され、水素脆性を引き起こし、磁石の磁気特性劣化や密着性低下の原因となる。
【0073】
〔Niめっき層〕
Snめっき後に電解水洗浄、エアーによる水切り乾燥を行った磁石表面上に電気めっきにより第2の金属層であるNiめっき層を設層する。Niを用いることにより、保護層としての強度を高め、優れた防錆効果を得ることができる。このようなNiの電気めっきに用いるめっき浴としては、塩化ニッケル成分を含有しないワット浴、スルファミン酸浴や、ホウフッ化浴、臭化ニッケル浴等が挙げられる。但し、この場合陽極の溶解が少なくなるため、ニッケルイオンを浴に補充する必要が生じる。このニッケルイオンは、硫酸ニッケル又は臭化ニッケルの溶液として補充するのが好ましい。
【0074】
例えば、これらのうちでは、より高い密着強度を示す低応力のスルファミン酸浴を用いることが好ましく、以下の組成のものが挙げられる。
Ni(NH2SO3)2・4H2O 150〜600g/リットル
NiBr2・6H2O 0〜30g/リットル
ホウ酸 30〜60g/リットル
【0075】
めっき条件は、pH3〜6、好ましくは4〜7、温度30〜70℃、電流密度0.1〜30A/dm2程度とすればよい。pHがこの範囲未満では、磁石体が溶解してしまい、pHがこの範囲を超えると水酸化ニッケルの沈澱が折出して、めっき膜が脆くなってしまう。なお、グルコン酸等の錯化剤を浴に含有させNiイオンを錯化させることで、水酸化ニッケルの沈澱は防止可能である。また、電流密度がこの範囲未満では、めっき膜中への、例えばCu、Co等の不純物の共折が多く、外観の悪い耐食性の低い膜となってしまい、電流密度がこの範囲を超えると陰極近傍での水素発生が増大して磁性体に吸蔵され、密着性低下の原因となる。
【0076】
めっき成膜中の水素発生による弊害防止には析出効率の向上が重要であり、好ましくは析出効率95%以上、特に好ましくは98%以上の条件で成膜する。また、電気めっき膜の膜厚均一性を改善するには、めっき時の浴電圧を低下させることが有効であり、具体的には導電塩添加による浴導電率上昇、陽極面積増大、浴温上昇、攪拌等がある。
【0077】
なお、無電解めっきでは、水素発生は避けられない。例えば一般的な市販の次亜燐酸を還元剤とする、無電解Niめっきでは、析出効率は50%以下であり、還元剤の多くは水素発生に消費される。特に成膜初期において激しい水素発生があり、磁石に多くの水素が吸蔵され水素脆性の原因となりやすい。
【0078】
また、Niめっき浴としては、スルファミンNiめっき浴の替わりに、管理が容易で安価な、ワット浴系も好ましく用いることができ、以下の組成のものが挙げられる。
(ワット浴)
NiSO4・4H2O 150〜600g/リットル
ホウ酸 30〜60g/リットル
めっき条件は、pH3〜9、特に好ましくは4〜9、温度30〜70℃、電流密度0.1〜30A/dm2程度とすればよい。また適宜、錯化剤、界面活性剤等を添加し、最適化した浴組成を使用することが好ましいが、後述のダブルNi膜とする場合には、イオウ含有量の少ないめっき膜であるために半光沢の膜とすることが好ましい。
【0079】
〔熱処理〕
熱処理温度は、Sn(第1の金属層)の融点(232℃)以上で、Ni(第2の金属層)の融点(1450℃)以下、更にもちろん磁石の融点以下の温度であれば本発明の効果を得ることができる。具体的には、237℃〜382℃、好ましくは245℃〜300℃である。前記範囲未満では溶解した第1の金属の流動性が不十分であり、十分なピンホール封止効果が得られないことがあり、第1の金属層がSnにホイスカの発生する可能性がある。前記範囲を超える温度では、保護層の変色、熱応力による密着不良が発生することがある。
【0080】
また、熱処理時間は最高温度保持時間として、1〜60分程度で、好ましくは5〜20分程度である。前記範囲未満では、多数の磁石を処理する際に、加熱装置内でのバラツキがあるため、また十分なピンホール封止効果が得られないことがあり、前記範囲を超える時間では熱処理の効果は変わらず、生産性が著しく低下すると同時に酸化反応がより進行する。
【0081】
熱処理雰囲気は、特に限定はないが、保護膜の変色を避けるには非酸化性雰囲気、例えば窒素中又は真空中熱処理が好ましい。記熱処理は、通常のオーブン等による熱処理だけでなく、ホットプレート、高周波誘導加熱法やレーザー照射による加熱法等による短時間昇温、冷媒等による急冷(降温)も可能である。
【0082】
なお、第1の金属層としてスズめっき膜を、第2の金属層としてニッケルめっき膜を用いている場合には、上記熱処理により、めっき層の少なくとも界面に、Ni−Sn金属間化合物層、特に安定なNi3Sn、Ni3Sn2又はNi3Sn4のうち少なくとも1種以上が形成された層が存在することがあるが、この層が密着性劣化を及ぼす場合には、第1の金属層と第2の金属層の間に中間層としてSnよりも高融点である銅、金等の薄層(0.1〜0.5μm)を介在させることで改善可能である。中間層は、第1の金属層と第2の金属層の何れかと同じ成膜方法で行うことが生産性の観点から好ましい。
【0083】
また、熱処理はピンホール封止処理のみを目的として行う必要は必ずしもない。例えば磁石をヨーク等に貼り付け固定する際に、半田接着にリフロー工程を用いる場合には、当該工程で代用することも可能である。すなわち、本発明の請求磁石の製造方法では、最終使用形態に至るまでの工程で所定の熱処理が行われればよい。
【0084】
〔熱処理後の再めっき層〕
ピンホール封止のための熱処理工程、微少凸部除去工程の後に、さらに第3の層を成膜する場合には、Ni、特にイオウ含有量が第2の金属層であるNiよりも多いNiを使用することが好ましい。いわゆるダブルNiの保護層として機能するからである。
このための、Niめっき浴としては一般のワット浴系も好ましく用いることができ、以下の組成のものが挙げられる。
(光沢Niめっき)
NiSO4・4H2O 150〜600g/リットル
ホウ酸 30〜60g/リットル
イオウ含有有機光沢剤2 5〜50g/リットル
【0085】
めっき条件は、pH3〜9、好ましくは4〜9、温度30〜70℃、電流密度0.1〜30A/dm2程度とすればよい。また適宜、錯化剤、界面活性剤等を添加し、最適化した浴組成を使用することが好ましい。
【0086】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例を示し、更に詳細に説明する。
【0087】
粉末治金法によって作成した27.4Nd−3.0Dy−1.0B−残部Fe(数字は重量%)の組成をもつ焼結体をアルゴン雰囲気中で600℃にて2時間時効処理を施し、直径23.5mm、厚さ3.4mmの大きさの円盤状に加工し、更にバレル研磨処理により面取りを行って永久磁石を得た。
【0088】
上記試料100個を硝酸濃度:0.5N、グルコン酸ナトリウム濃度:0.025モル/リットルの処理液50リットルに10℃で3分間浸漬して表面層を溶解した。平均溶解量は6μmであった。
【0089】
上記処理済みの試料を電解水中で超音波洗浄した後、超音波印加トリエタノールアミン3%水溶液に1分間浸積して中和処理を行った。そして再度、電解水中で超音波洗浄した後、10Paの真空乾燥処理(70℃)10分間を行った。乾燥処理後に、次亜燐酸ナトリウムを10g/リットル添加した脱酸素水に浸積しながら、250Paまで減圧し気泡を除去した後に、再度、電解水中で超音波洗浄して前処理を完了した。
【0090】
次に、下記に示す組成・条件の中性ピロリン酸Sn浴を用いてバレル法によりSnめっきを行った。
【0091】
(中性ピロリン酸浴組成)
SnSO4 45g/リットル
K4P2O7 165g/リットル
有機添加剤 2g/リットル
浴温度 30℃
pH 8.0
平均陰極電流密度 0.5A/dm2
Snめっき後、電解水中で洗浄した後、下記に示す組成・条件のスルファミン酸Ni浴、およびワットNi浴を用いてバレル法により半光沢低イオウ含有Niめっきを行った。
【0092】
(スルファミン酸浴)
Ni(NH2SO3)2・4H2O 180g/リットル
NiBr2・6H2O 5g/リットル
ホウ酸 45g/リットル
LiNH2SO3 200g/リットル
浴温度 50℃
pH 5.1
平均陰極電流密度 0.3A/dm2
【0093】
(ワット浴)
NiSO4・4H2O 300g/リットル
ホウ酸 30g/リットル
浴温度 50℃
pH 5.0
平均陰極電流密度 0.3A/dm2
【0094】
めっき後の熱処理は真空熱処理炉を用い、ステンレス製の籠に試料100個を入れ、上下に軽い振動を与えながら30分間行った。なお、単に靜置しながら行った場合には、ピンホールから溶解したSnが玉状にNiめっき膜の表面に現れたが、容易に玉が表面から剥離するため大きな問題とはならない。軽い振動を与えながら行った場合にはピンホールからNiめっき膜の表面に現れた溶解したSnは、籠の外に放出されていた。
【0095】
さらに念のため、磁石と同重量のスチールボールと共にバレル研磨装置に投入し、スチールボールとの衝突により表面に生じている可能性のある第1の金属による微少凸部のつぶしを行った。
【0096】
なお、Snめっき及びNiめっきの処理時間により膜厚にそれぞれ変えて、更に比較のためNiめっきのみ、Snめっきのみの試料を作成し、熱処理温度もパラメータとし、下記の評価を行った結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
〔耐湿試験〕
プレッシャークッカーテスト(120℃、100%RH,2気圧)100時間での外観評価(個数:20個)評価結果は、不良発生数で示した。
【0099】
〔有孔度試験〕
フェロキシル試験液(JIS H 8617)を準用し、ろ紙1cm2当たりのピンホール個数を調べた。なお、参考のため熱処理前後で評価を行った。また、一部の試料については、80℃高温放置試験を行った。
【0100】
本発明に係る実施例1〜8は何れも高い信頼性が得られた。
【0101】
ここで、実施例5はSn膜厚がやや薄かったため、ピンホール封止効果が十分には発揮されていない。実施例7はNi膜厚が薄かったため、熱処理時に一部の試料のNi皮膜が破れてしまい、その磁石に他の磁石がSnにより張り付いてしまったため、その試料は評価不能であったため、残りの試料で評価を行った。実施例8は、熱処理温度がSnの融点である232℃以上であるが、融点より3℃高いだけであるため、溶融したSnの流動性が不十分だったため、あるいは一部が熱分布のため未溶融だったためかピンホール封止効果が十分には発揮されていない。しかし、いずれも比較例の試料に比べると、その効果は歴然としており、余り高耐食性が要求されない応用製品には適用可能と判断された。
【0102】
なお、比較例4の試料は、耐蝕性は良好であったが、保護膜厚が50μmと厚いため、生産性が悪く、磁石の端部で膜厚が90μm以上あり寸法精度が規格外となり、かつNiが磁性材料であるために、この厚いNi層の影響で磁気回路を構成した際の動作場所での磁界強度が8%も減少してしまった。更に、80℃高温放置1000時間後では、BHmaxが10%劣化したことから、内部腐食が進行したものと考えられる。これに対して本発明の実施例1〜4は、同様の高温放置試験後にもBHmaxの劣化は3%以下であった。
【0103】
また、前処理において真空乾燥処理を行わず、電解水の替わりに超純水を用い、乾燥後の脱酸素水による置換処理を行わなかった以外は実施例2と同様に処理した試料は、プレッシャークッカーテスト(不良発生数:0/20)では、実施例2と同様の高耐食性を示したが、80℃高温放置1000時間後では、BHmaxが5%劣化したことから、内部腐食がやや進行したものと考えられる。
【0104】
一方、実施例4の試料については、熱処理後に、更に未処理の磁石と同様の前処理後に、5μmの光沢Niめっき(S含有量1500ppm)を施した試料(実施例9)を作成した。なお、スルファミン酸浴からのNi膜中のS含有量は300ppmであった。この実施例9の試料は、耐湿試験(85℃85%)3000時間においても全く不良が発生しない非常に優れた耐蝕性を示した。
【0105】
また、比較例6の試料では、80℃高温放置試験中にホイスカの発生が確認された。このホイスカは微細な針状であり物理的な衝撃により粉状になり散乱するものであった。このような粉状のゴミ発生は清浄な環境で使用されるハードディスクドライブのボイスコイルモーター用途には大きな問題となるものである。
【0106】
以上から明らかなように、本発明によれば薄い保護膜厚で高い耐食性が得られ、かつ同時に多数の磁石の処理が可能な簡便な方法でり、多方面で好ましく用いることのできる永久磁石を得ることができる。
【0107】
【発明の効果】
本発明に係る永久磁石の製造方法は、同時に多数の磁石のピンホールの封止が簡便な方法で可能となり、薄い膜厚の保護膜であっても、耐蝕性が向上する。更に、めっき液が保護膜内に残留することがないため、内部からの腐食が防止される。また保護膜としてSnを用いた場合には、ホイスカ発生も防止できる。そして、ピンホール封止処理後に、更に保護膜を形成することで、より厳しい環境で使用される磁石に対しても十分な信頼性を付与することが可能となる。また、本発明に係る永久磁石は、高い信頼性を有する。
Claims (16)
- R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層を形成し、この第1の金属層上に第2の金属層を形成した後に前記第1の金属層の融点以上の温度であり、かつ前記第2の金属層の融点未満の温度で熱処理を行うことを特徴とする永久磁石の製造方法。
- 前記第1の金属層がSn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であり、第2の金属層がNi、Cu、Zn、Au、Ag、Rhの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石の製造方法。
- 前記第1の金属層の融点よりも、5〜150℃高い温度で熱処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
- 前記第1の金属層及び第2の金属層が、共に電気めっき法により形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
- 前記第1の金属層が膜厚4〜40μmのSn又はSnを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
- 前記第2の金属層が膜厚0.1〜20μmのNi又はNiを主成分とする合金であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
- 前記熱処理後に、更に第3の層を形成することを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
- 前記第3の層が電気めっき法により形成された金属層であることを特徴とする請求項7に記載の永久磁石の製造方法。
- 前記第3の層が前記第2の層と同じ金属、又は合金であることを特徴とする請求項7又は請求項8の何れかに記載の永久磁石の製造方法。
- R(但し、RはYを含む希土類元素のうち少なくとも1種以上)、T(但し、TはFe又はFe及びCo)及びBを含有し、実質的に正方晶系の主相を有する永久磁石体表面に第1の金属層が形成されており、この第1の金属層上に第2の金属層が形成されており、第1の金属層の融点が前記第2の金属層の融点よりも低いことを特徴とする永久磁石において、前記第1の金属層が、溶融熱処理されていることを特徴とする永久磁石。
- 前記第1の金属層がSn、Pb、Bi、In、Cd、Znの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であり、第2の金属層が、Ni,Cu,Zn,Au,Ag,Rhの何れかの金属、又は何れかを主成分とする合金であることを特徴とする請求項10に記載の永久磁石。
- 前記第1の金属層が膜厚4〜40μmのSn又はSnを主成分とする合金であることを特徴とする請求項10又は11の何れかに記載の永久磁石。
- 前記第2の金属層が膜厚0.1〜5μmのNi又はNiを主成分とする合金であることを特徴とする請求項10〜12の何れかに記載の永久磁石。
- 前記溶融熱処理により、前記第2の金属層のピンホールが前記第1の金属で封止されていることを特徴とする請求項10〜13の何れかに記載の永久磁石。
- 前記溶融熱処理後に、更に第3の層を形成されていることを特徴とする請求項10〜14の何れかに記載の永久磁石。
- 前記第3の層が前記第2の層と同じ金属、又は合金であることを特徴とする請求項15に記載の永久磁石。
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