JP4899928B2 - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、希土類磁石の製造方法に関する。
希土類元素を含む希土類磁石は、優れた磁力を有するものの、主成分として酸化されやすい希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石は、希土類元素を含む磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層が設けられた構成とされることが多い。
この保護層を備える希土類磁石の耐食性を更に向上させることを目的として、保護層を形成する前の磁石素体に対し、酸性溶液、具体的には硝酸による処理を施すことが行われている(例えば、特許文献1参照)。このような処理によって、磁石素体表面の加工時に生じた変質層や酸化層等が除去されて磁石素体が劣化し難くなり、その結果、希土類磁石の耐食性が向上する。
特開平9−270346号公報
しかしながら、近年では、希土類磁石の適用範囲が従来にも増して広がっており、上述したような硝酸等の酸性溶液による処理を行った場合であっても、用途によっては十分な耐食性が得られない場合があった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐食性を有する希土類磁石を得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らが、硝酸処理を行った希土類磁石でも腐食が進行する原因について検討を行ったところ、以下のことが判明した。すなわち、磁石素体は主相及びこの主相間の粒界からなる構成を有しているが、硝酸による処理では粒界がエッチングされる場合があり、このエッチングによって磁石素体に空孔が形成されることが確認された。そして、希土類磁石においては、この空孔によって水分等の腐食性の成分が磁石素体の内部に侵入し易くなり、これが主相の脱落等の磁石素体の腐食を引き起こす一因となっていた。
そこで、本発明者らはこのような知見に基づき、磁石素体の表面処理の際に、粒界部分のエッチングを生じにくい処理液を用いることで、より耐食性に優れる希土類磁石が得られるようになることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の希土類磁石の製造方法は、希土類元素を含む磁石素体の表面に、酸化性を有する酸、及び、ホウ酸及び/又はホウ酸イオンを含み且つホウ酸及び/又はホウ酸イオンの濃度がホウ素の濃度として0.01〜0.7mol/Lである処理液を接触させる工程を有し、この工程において、処理液の接触により、磁石素体の表面部分を除去することを特徴とする。かかる工程においては、処理液の接触によって磁石素体の表面部分が除去される。
このように、本発明の希土類磁石の製造方法においては、磁石素体を、酸化性を有する酸、及び、ホウ酸及び/又はホウ酸イオンを含む処理液で処理するため、粒界部分のエッチングを抑制しながら表面の加工変質層等を除去することができる。その要因については必ずしも明らかではないが、次のように推測される。
すなわち、通常、酸が磁石素体に接触すると、粒界部分が選択的に溶出する傾向にある。硝酸等の酸化性の酸を用いる場合は、主相部分の溶解も生じ得るため粒界部分の選択的な溶出は低減されるものの、粒界部分の方が若干溶出され易いため、この部分に窪みが形成されることがある。そして、いったんこのような窪みが形成されると、この窪み部分が周囲よりもpHが低くなる。その結果、酸化性の酸を用いた場合であっても、粒界部分が周囲よりも深さ方向にエッチングされてしまうことがある。これに対し、本発明の処理液は、酸化性の酸にホウ酸やホウ酸イオンを組み合わせたものであるため、緩衝作用を発揮し得ると考えられる。したがって、このような処理液を用いることによって、上述したような窪み部分におけるpHの低下が抑制されることになる。その結果、粒界部分におけるエッチングが抑制されて、磁石素体の表面が均一にエッチングされるようになると考えられる。ただし、作用はこれに限定されない。
上述したような理由等によって、本発明の製造方法においては、加工変質層等が良好に除去されるとともに、表面に空孔が少ない磁石素体を得ることができる。そして、このような磁石素体の表面上に保護層を形成することで、耐食性に優れる希土類磁石が得られるようになる。
より具体的には、処理液の接触により、磁石素体における表面から5μm以上の深さ領域までを除去することが好ましい。かかる条件とすれば、極めて均一な表面を有する磁石素体が得られ易いほか、磁石素体表面の加工変質層が一層確実に除去される。その結果、更に優れた耐食性を有する希土類磁石が得られるようになる
本発明によれば、優れた耐食性を有する希土類磁石を得ることができる製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石を示す図である。また、図2は、図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、希土類磁石1は、磁石素体2と、その表面上に形成された保護層4とから構成されるものである。
磁石素体2は、希土類元素を含有する永久磁石である。この場合、希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。なお、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
磁石素体2の構成材料としては、上記希土類元素と、希土類元素以外の遷移元素とを組み合わせて含有させたものが例示できる。この場合、希土類元素としては、Nd、Sm、Dy、Pr、Ho及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、これらの元素にLa、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有したものであるとより好適である。
また、希土類元素以外の遷移元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、Fe及び/又はCoがより好ましい。
より具体的には、磁石素体2の構成材料としては、R−Fe−B系やR−Co系のものが例示できる。前者の構成材料においては、RとしてNdを主成分とした希土類元素が好ましい。また、後者の構成材料においては、RとしてSmを主成分とした希土類元素が好ましい。
磁石素体2の構成材料としては、特に、R−Fe−B系の構成材料が好ましい。磁石素体2がR−Fe−B系のものであると、後述する製造方法において処理液を接触させた際に、表面の変質層等を良好に除去できるほか、空孔の形成を特に効果的に低減できるようになる。
R−Fe−B系の磁石素体2は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有し、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及び、ホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有する構造となっている。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相である。このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
このようなR−Fe−B系の構成材料においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保持力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
また、Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であると残留磁束密度が小さくなり、また、90原子%を超えると保持力が小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成されやすく、これにより保持力が小さくなる傾向にある。また、28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これにより残留磁束密度が小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−B系におけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体2の磁気特性が低下する傾向にある。
また上記構成材料におけるBの一部は、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)又は銅(Cu)等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、保持力の向上や製造コストの低減等を図る観点から、上記構成に加え、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等の元素を添加してもよい。これらの添加量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、構成原子総量に対して10原子%以下とすることが好ましい。また、その他、不可避的に混入する成分としては、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、カルシウム(Ca)等が考えられ、これらは構成原子総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
保護層4としては、通常希土類磁石の表面を保護する層として形成されるものであれば特に制限なく適用できる。たとえば、塗装や蒸着重合法により形成した樹脂層、めっきや気相法により形成した金属層、塗布法や気相法により形成した無機層、酸化層、化成処理層等が挙げられる。
樹脂層としては、熱硬化性樹脂からなる層又は熱可塑性樹脂からなる層の両方が適用できる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、エポキシメラミン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリパラキシリレン樹脂、ポリ尿素樹脂、エポキシシリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル酸、エチレン、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物を原料とするビニル樹脂が挙げられる。
金属層としては、例えば、Ni、Ni−P、Cu、Zn、Cr、Sn、Al又はこれらからなる複数の層を組み合わせたものが例示できる。また、無機層としては、アルカリ珪酸塩、SiO、Al等の酸化物、TiN、AlN等の窒化物等からなるものが挙げられる。
さらに、酸化層としては、磁石素体2の表面を酸化して形成された層が例示できる。このような酸化層は、磁石素体2の元素に由来する酸化物から主に形成される。例えば、磁石素体2中の希土類元素の酸化物や遷移元素の酸化物を含む。
さらにまた、化成処理層は、磁石素体2の表面に化成処理等を施すことにより形成された層である。例えば、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸鉄、リン酸亜鉛カルシウム等のリン酸金属塩や、モリブデン酸塩、クロム酸塩等からなる層が挙げられる。
次に、上記構成を有する希土類磁石1の好適な製造方法について説明する。
まず、磁石素体2は、粉末冶金法により製造することができる。この方法においては、まず、鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕する。その後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるようにする。こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場のなかで、0.5〜5t/cmの圧力で成形する。
その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空下中、1000〜1200℃で0.5〜10時間焼結させた後に急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施し、必要に応じて焼結体を所望の形状(実用形状)に加工することにより、磁石素体2が得られる。
希土類磁石1の製造においては、次いで、磁石素体2の表面に、酸化性を有する酸、及び、ホウ酸及び/又はホウ酸イオンを含む処理液を接触させる酸処理を行う。処理液としては、具体的には水溶液が好ましい。磁石素体2に対する処理液の接触は、例えば、磁石素体2を処理液中に浸漬させる方法や、処理液を磁石素体2に噴霧する方法によって実施することができる。
処理液に含まれる酸化性を有する酸としては、まず、硝酸、過塩素酸、クロム酸等のそれ自体が酸化性を有する酸が挙げられる。また、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸などの酸化性を有しない酸に、硝酸又は硝酸塩、亜硝酸又は亜硝酸塩、過酸化水素、過マンガン酸塩等の酸化剤を組み合わせたものも酸化性を有する酸として適用できる。なかでも、磁石素体2表面の変質層等を良好に除去できる硝酸が好ましい。ここで、処理液に用いる酸として、例えば硫酸、塩酸等の酸化性を有しない酸を用いると、磁石素体2の主相よりも粒界が溶解され易くなる傾向にあり、変質層等を十分に除去できなくなる。また、酸により発生した水素が磁石素体2の表面に吸蔵されて、吸蔵部位が脆化する可能性もある。これに対し、上述したような酸化性を有する酸を用いることで、磁石素体2の脆化を避けつつ表面を均一に溶解することができ、表面の変質層等を良好に除去することが可能となる。また、処理液中に含まれるホウ酸は、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等、三酸化二ホウ素が水化して生じる酸素酸の少なくとも1種であると好ましい。また、ホウ酸イオンは、これらの酸が水中でイオン化して生じるイオンの少なくとも1種であると好ましい。
このような処理液は、溶媒(好ましくは水)に、酸化性を有する酸、及び、ホウ酸やホウ酸の塩といったホウ素を含む化合物を溶解することにより得られたものであると好ましい。ホウ素を含む化合物としては、例えば、ホウ酸(オルトホウ酸)、メタホウ酸、四ホウ酸、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸カリウム、五ホウ酸アンモニウムやこれらの水和物等が挙げられる。
処理液中の酸化性を有する酸の濃度は、特に、硝酸の場合、2mol/L以下であると好ましく、0.01〜1mol/Lであるとより好ましく、0.05〜0.5mol/Lであると更に好ましい。処理液中の硝酸濃度が0.01mol/L未満であると、磁石素体2の表面の溶解量が不十分となり、変質層等を十分に除去するのが困難となる傾向にある。一方、2mol/Lを超えると、磁石素体2の溶解速度が大きくなりすぎ、溶解量の制御が困難となって、磁石素体2の寸法精度の維持が困難となる傾向にある。
また、処理液中のホウ酸及び/又はホウ酸イオンの濃度は、ホウ素の濃度として、0.01〜0.7mol/Lであると好ましく、0.05〜0.7mol/Lであるとより好ましい。この濃度が0.01mol/L未満であると、酸による粒界部分のエッチングを抑制することが困難となる傾向にある。一方、0.7mol/Lを超えると、未溶解物の沈殿が生じ易くなり、処理性が低下する傾向にある。なお、処理液中には、ホウ酸及びホウ酸イオンの両方が含まれていてもよく、この場合、これらの合計の濃度が上記範囲となるようにすることが好ましい。
このような処理液による処理によって、磁石素体2の表面部分が溶解され除去される。この除去量は、磁石素体2の表面からの平均厚みで5μm以上であると好ましく、10〜15μm以上であるとより好ましい。これにより、磁石素体2の加工時等に生じた表面変質層や酸化層を確実に除去することができる。ただし、除去量が多すぎると、磁石寸法が小さくなりすぎ、十分な磁気特性を得にくくなることから、磁石素体2の溶解による除去厚みは、100μm以下であることが好ましい。このような良好な溶解量を得るためには、例えば磁石素体2を処理液に浸漬する場合、その浸漬時間を30秒〜30分とすることが好ましく、1分〜10分とすることがより好ましい。
処理液による処理後、磁石素体2の表面に付着した未溶解物や残留酸成分を除去するため、磁石素体2に対して洗浄、好ましくは超音波を使用した洗浄を行うことが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体2の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中で行うのが好ましい。さらに、かかる洗浄の前後及び上記処理液による処理の各過程において、必要に応じて水洗を行ってもよい。
その後、磁石素体2の表面上に保護層4を形成させることにより、希土類磁石1を得る。保護層4は、例えば、樹脂層の場合、上述した樹脂を溶媒に溶解して塗布液を調製し、これをディップコート法、ディップスピンコート法、スプレーコート法等により磁石素体2の表面に塗布した後、焼き付けたり乾燥させたりすることで形成することができる。また、樹脂層を形成するためのモノマーを気化させて磁石素体表面に蒸着すると同時に重合させる、いわゆる重合蒸着法によっても、樹脂層の形成が可能である。
金属層は、磁石素体2に対して電気めっき、無電解めっき等を施すことにより形成することができる。その他、イオンプレーティング法、スパッタ法、蒸着法等の気相法も適用できる。また、無機層は、アルカリ珪酸塩溶液や金属アルコキシド溶液を磁石素体2の表面に塗布した後、焼き付けたり乾燥させたりすることで形成することができるほか、イオンプレーティング法、CVD法等の気相法を用いても形成することができる。
さらに、酸化物層は、例えば、磁石素体2を酸化性雰囲気下で処理することにより形成することができる。酸化性雰囲気としては、大気、酸素雰囲気、水蒸気雰囲気等が挙げられる。例えば、これらの酸化性雰囲気下で磁石素体2を加熱することで、酸化物層が良好に形成される。
さらにまた、化成処理層は、例えば、リン酸金属塩からなる層を形成する場合、リン酸、酸及び金属を含む化成処理液で磁石素体2の表面を処理することで、この磁石素体2の表面上にリン酸金属塩を析出させることによって形成することができる。
このような希土類磁石1の製造方法においては、磁石素体2に対する上述した処理液による処理によって、磁石素体2の加工時等に生じた表面の変質層や酸化層等を溶解・除去することができ、しかも、表面が均一に溶解されることによって磁石素体2の表面が平滑化される。その結果、磁石素体2表面に変質層等が残存している場合に比して、磁石素体2そのものの劣化が生じ難くなる。また、磁石素体2表面の平滑性が増すことで、薄い保護層を形成する場合であっても磁石素体2全面を良好に被覆することができる。その結果、保護層4のピンホール等が少なく耐食性に優れる希土類磁石1が得られるようになる。
特に、処理液は、酸化性を有する酸と、ホウ酸及び/又はホウ酸イオンとを組み合わせて含むものであるため、酸のみで処理を行う場合に比して、磁石素体2の粒界部分のエッチングを低減することができる。その結果、磁石素体2は、表面から深さ方向への空孔が少ないものとなり、水分等の腐食性物質が保護層4を透過した場合であっても内部の腐食を生じ難いものとなる。以上のような要因により、上述した実施形態によれば、優れた耐食性を有する希土類磁石1を得ることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の製造]
(実施例1)
粉末冶金法により、組成が27.6Nd−4.9Dy−0.5Co−0.4Al−0.07Cu−1.0B−残部Fe(数字は重量百分率を表す。)である鋳塊を作製し、これを粗粉砕した。その後、不活性ガスによるジェットミル粉砕を行って、平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。得られた微粉末を金型内に充填し、磁場中で成形した。次いで、真空中で焼結後、熱処理を施して焼結体を得た。得られた焼結体を20mm×10mm×2mmの寸法に切り出し加工し、磁石素体を得た。
次に、得られた磁石素体に対し、硝酸0.4mol/L、ホウ酸0.1mol/Lを純水に溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で酸洗浄を行った後、超音波水洗を行った。
その後、磁石素体を乾燥させ、その表面にエポキシ樹脂系塗料をスプレー塗装した後、180℃、30分で焼き付けることにより、厚さ10μmの樹脂からなる保護層を形成し、希土類磁石を得た。
(実施例2)
酸洗浄を、硝酸0.4mol/L、ホウ酸0.4mol/Lを純水に溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(実施例3)
酸洗浄を、硝酸0.4mol/L、四ホウ酸ナトリウム0.1mol/Lを純水に溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(実施例4)
酸洗浄を、硝酸0.4mol/L、ホウ酸0.05mol/Lを純水に溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(実施例5)
酸洗浄を、硝酸0.2mol/L、ホウ酸0.01mol/Lを純水に溶解させた処理液に3分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
参考
酸洗浄を、硝酸0.1mol/L、ホウ酸0.005mol/Lを純水に溶解させた処理液に5分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例1)
酸洗浄を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例2)
酸洗浄を、硝酸0.4mol/Lであり、ホウ酸を含まない処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例3)
酸洗浄を、ホウ酸0.2mol/Lであり、硝酸を含まない処理液に30分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例4)
酸洗浄を、ホウ酸に代えてしゅう酸を同濃度で溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例5)
酸洗浄を、ホウ酸に代えてリン酸を同濃度で溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例6)
酸洗浄を、ホウ酸に代えて酢酸を同濃度で溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
(比較例7)
酸洗浄を、ホウ酸に代えてクエン酸三ナトリウムを同濃度で溶解させた処理液に2分間浸漬させる条件で行ったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。
[特性評価]
(磁石素体の酸洗浄による除去量の測定)
実施例1〜6及び比較例1〜7の希土類磁石の製造において磁石素体の酸洗浄を行った際に、酸洗浄によって溶解・除去された磁石素体の量を、酸洗浄前の磁石素体から除去された分の厚み(μm)によって評価した。かかる厚みの値は、マイクロメータにより測定した酸洗浄前後の厚み寸法の変化から片面の除去厚みを算出することにより得た。そして、除去厚みの値は、5点において測定して得られた値の平均値とした。得られた結果を表1に示す。
Figure 0004899928
(保護層の剥離の評価、重量減少の測定及びテープ試験)
実施例1〜6及び比較例1〜7の希土類磁石に対し、120℃、0.2MPa、100%RH、100時間の条件でそれぞれプレッシャー・クッカー・テスト(PCT試験)を行い、試験後の外観(保護層の剥離の有無)を観察するとともに、試験前に対する試験後の重量の減少量を測定した。また、PCT試験後の各希土類磁石について、JIS K5600(1999年)に規定される碁盤面テープ試験に準拠し、保護層に当該層を貫通する切り傷を碁盤目状につけ、この上に粘着テープを張った後に剥離したときの、保護層の剥離の有無を評価する試験を行った。得られた結果をまとめて表2に示す。
なお、表2中、保護層の剥離の評価は、A:剥離なし、B:角部のみで一部剥離、C:角部及び角部以外の部分で剥離、に従って記載した。また、テープ試験の評価は、JISK5600に準拠する分類に従って行った。当該評価においては、剥離が全く見られなかった分類0から、大部分が剥離を生じていた分類5までの6段階の評価がなされ、数字が小さいほど剥離が少ないことを表している。
Figure 0004899928
表1より、実施例1〜6の希土類磁石は、PCT試験後の保護層の剥離がなく、また、重量減少も見られなかったことから、PCT試験による劣化が小さく、優れた耐食性を有していることが判明した。また、碁盤目テープ試験でも保護層の剥離が見られなかったことから、磁石素体と保護層との密着性も良好であることが確認された。これに対し、比較例1〜7の希土類磁石は、PCT後に保護層の剥離及び重量減少が生じており、実施例のものに比して耐食性が劣ることが確認された。
好適な実施形態に係る製造方法により得られた希土類磁石を示す図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。
符号の説明
1…希土類磁石、2…磁石素体、4…保護層。

Claims (4)

  1. 希土類元素を含む磁石素体の表面に、酸化性を有する酸、及び、ホウ酸及び/又はホウ酸イオンを含み且つホウ酸及び/又はホウ酸イオンの濃度がホウ素の濃度として0.01〜0.7mol/Lである処理液を接触させる工程を有し、
    前記工程において、前記処理液の接触により、前記磁石素体の表面部分を除去する、
    ことを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  2. 前記工程において、前記処理液の接触により、前記磁石素体における表面から5μm以上、100μm以下の深さ領域までを除去する、ことを特徴とする請求項1記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記酸化性を有する酸の濃度が、0.05〜0.5mol/Lである、ことを特徴とする請求項1又は2記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記酸化性を有する酸が、硝酸である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の希土類磁石の製造方法。

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