JP4276636B2 - 磁石及び複合体 - Google Patents

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Description

本発明は、磁石及び複合体、特に表面に保護層が形成された磁石及び複合体に関する。
近年、金属磁石として、25MGOe以上の高エネルギー積を示す、いわゆる希土類磁石(R−Fe−B系磁石;Rはネオジム(Nd)などの希土類元素を示す。以下、同様。)が盛んに開発されている。このような希土類磁石としては、例えば、特許文献1では焼結により形成されるものが、また特許文献2では高速急冷により形成されるものが開示されている。
一般に、金属磁石は、比較的容易に酸化される金属を含むことから耐食性が低い。特に、上述した希土類磁石は高エネルギー積を示すものの、主成分として極めて容易に酸化される希土類元素及び鉄を含有するため、金属磁石の中でも耐食性が低い傾向にあった。
このような磁石の耐食性を改善することを目的として、保護層を形成することが提案されている。この中でも、特許文献3では、希土類磁石を酸化性雰囲気下にて200〜500℃で加熱することで、保護層を形成することが提案されている。
特開昭59−46008号公報 特開昭60−9852号公報 特開平5−226129号公報
しかしながら、上記特許文献3においては、酸化性雰囲気下において特定の温度で保護層を形成することが提案されているが、このような方法によっても、磁石、特に希土類磁石の腐食を十分に防止し得る保護層を満足に形成することができない場合が多かった。このため、得られた希土類磁石は、耐食試験による粉ふきや重量減少の発生を十分に防止するのが未だ困難なものであった。
特に、高湿条件下で用いられた場合、従来の保護層では周囲の湿気等に基づく水の侵入を十分に抑制することが困難であり、金属磁石素体に水が付着し易い傾向にあった。このように金属磁石素体に水が付着すると、この金属磁石素体に錆等が発生し易くなる。つまり、従来の磁石は、耐湿性が低いものであった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、十分な耐食性、特に優れた耐湿性を有する磁石及び複合体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らが鋭意研究を行った結果、磁石素体の表面上に、外部の湿気等の水による磁石素体の腐食を化学的に低減し得る保護層を形成することで、従来に比して優れた耐湿性が得られるようになることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の磁石は、金属磁石素体と、この金属磁石素体の表面上に形成された保護層とを備え、保護層は、樹脂及び添加剤を含有する樹脂層を有しており、添加剤は、塩基とその塩とを組み合わせた混合物であり、且つ、水に溶解したとき、0.01mol/L〜5mol/Lの合計濃度でpH7以上11以下の緩衝作用を生じる緩衝溶液を与えるものであることを特徴とする。
通常、磁石を構成する金属磁石素体は、水と接触すると酸化等を生じて腐食され易いものである。金属磁石素体表面に付着した水は、数々の要因によって酸性の水溶液に変化する場合があるが、このような酸性の水溶液は、金属磁石素体の酸化を急激に進行させ、磁石を腐食させる。ところが、金属磁石素体に接触する水溶液が中性〜塩基性であると、このような腐食は著しく抑制される傾向にある。
上述の如く、本発明の磁石は、保護層中に、水に溶解したときにpH7以上、つまり、中性から塩基性を呈する水溶液を与える添加剤を含むものである。したがって、外部に存在する湿気等による水が磁石に付着すると、保護層において添加剤を溶解してpH7以上を呈する水溶液となる。上述したように、高湿環境下では外部の水が保護層を通って金属磁石素体に接触する場合もあるが、この水は、上記のように樹脂層において中性〜塩基性の水溶液とされることから、金属磁石素体に付着した場合であっても極めて腐食を生じさせにくい。その結果、本発明の磁石は、極めて耐湿性に優れるものとなる。
また、保護層は、磁石素体と樹脂層との間に、希土類元素及び/又は遷移元素と、酸素原子とを含む内部保護層を更に有するものであると好ましい。このように樹脂層の内側に、希土類元素及び/又は遷移元素を含む内部保護層を更に有することで、希土類磁石の耐食性が更に向上する。
この内部保護層は、磁石素体を覆い希土類元素を含有する第1の層、及び、第1の層を覆い第1の層よりも希土類元素の含有量が少ない第2の層からなるものであるとより好ましい。このように、金属磁石素体と樹脂層との間に2つの層を有することによって、磁石は、一層優れた耐食性及び耐熱性を有するものとなる。特に、上記第2の層は、希土類元素の含有量が第1の層よりも少ないので、第1の層に比して酸化され難く、このような組み合わせの第1及び第2の層を備える磁石は、優れた耐食性を発揮し得る。なお、第2の層において、「第1の層よりも希土類元素の含有量が少ない」とは、希土類元素を実質的に含有しない場合も含むこととする。
なかでも、第2の層における希土類元素の含有量は、第1の層における希土類元素の含有量の半分以下であると好ましく、第2の層は、希土類元素を実質的に含有していないとより好ましい。こうすれば、第2の層は、更に優れた耐食性を発揮し得る。
また、第2の層は、遷移元素及び酸素を含有するとより好ましい。遷移元素及び酸素を含有し、第1の層よりも希土類元素の含有量が少ない第2の層は、より一層酸化され難いことから、このような第2の層を備える磁石は、更に優れた耐食性を具備するものとなる。
さらに、本発明の磁石においては、金属磁石素体は、希土類元素及び希土類元素以外の遷移元素を含むものであり、第1の層は、上記希土類元素、上記遷移元素及び酸素を含有し、第2の層は、上記遷移元素及び上記酸素を含有し、且つ、第1の層よりも希土類元素の含有量が少ないとより好ましい。
こうすれば、金属磁石素体に隣接する第1の層は、金属磁石素体と同じ希土類元素を含むことからかかる素体に対する密着性が良好となる。また、この外側に形成された第2の層は、遷移元素及び酸素を含有し、第1の層よりも希土類元素の含有量が少ないことから酸化され難い。このため、これらの両層を備える希土類磁石は、保護層の剥離等も極めて少ないものとなり、更に耐食性に優れるものとなる。
また、上記第1の層における希土類元素、第1の層における遷移元素、及び、第2の層における遷移元素は、金属磁石素体由来の元素であるとより好ましい。つまり、第1及び第2の層は、磁石素体が反応等によって変化して形成されるものであると好ましい。特に、第1の層における希土類元素、第1の層における遷移元素、及び、第2の層における遷移元素は、金属磁石素体の主相を構成する元素であるとより好ましい。かかる構成とすれば、各層の密着性が一層良好となるほか、それぞれが極めて緻密な膜となり得る。その結果、磁石の耐食性が更に良好となる。
さらに、上記本発明の磁石において、添加剤は、水に溶解したとき、0.01mol/L〜5mol/Lの合計濃度でpH7以上11以下の水溶液を与えるものであると更に好ましい。このような範囲のpHを有する水溶液は、磁石素体の腐食を特に生じ難いものである。したがって、かかる添加剤を含む樹脂層を有する磁石は、更に優れた耐湿性を具備するものとなる。
より具体的には、添加剤は、アンモニアとアンモニウム塩との組み合わせ、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの組み合わせ、ホウ酸とホウ酸ナトリウムとの組み合わせ、又はリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの組み合わせであると好ましい。これらの添加剤は、水に溶解したとき上記範囲のpHを与え易いものである。したがって、これらを含む添加剤を含有する樹脂層を備える磁石は、一層優れた耐湿性を有するようになる。
さらに、上述した本発明の構成は、磁石のみならず金属全般の防錆性能を向上するのに有効である。すなわち、本発明の複合体は、金属を含む素体と、この素体の表面上に形成された保護層とを備え、保護層は、樹脂及び添加剤を含有する樹脂層を有しており、添加剤は、水に溶解したとき、pH7以上を呈する水溶液を与えるものであることを特徴とする。通常の金属は、中性〜塩基性条件で錆を生じ難いことから、このような保護層を備える複合体も、優れた耐湿性(防錆性能)を有するものとなる。
本発明によれば、十分な耐食性、特に優れた耐湿性を有する磁石及び金属を提供することが可能となる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明においては、磁石として、希土類元素を含む希土類磁石を例に挙げて説明することとする。
図1は、本実施形態の希土類磁石を示す模式斜視図であり、図2は図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構造を模式的に示す図である。図1、2に示すように、希土類磁石1は磁石素体3(金属磁石素体)と、その磁石素体3の表面を被覆する保護層5とを備えている。また、保護層5は、磁石素体3側から順に、希土類元素を含有する第1の層6及び第1の層6よりも希土類元素含有量が少ない第2の層7を有する内部保護層9、並びに、樹脂層8を備えている。以下、希土類磁石1の各構成についてそれぞれ説明する。
(磁石素体)
まず、磁石素体3について説明する。磁石素体3は、希土類元素を含有する永久磁石である。希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。ここで、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
磁石素体3の構成材料としては、上記希土類元素と、希土類元素以外の遷移元素とを組み合わせて含有させたものが例示できる。この場合、希土類元素としては、Nd、Sm、Dy、Pr、Ho及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、これらの元素にLa、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有したものであるとより好適である。
また、希土類元素以外の遷移元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、Fe及び/又はCoがより好ましい。
より具体的には、磁石素体3の構成材料としては、R−TM−B系やR−Co系のものが例示できる。前者の構成材料においては、RとしてはNdを主成分とした希土類元素が好ましい。また、TMとしてはFe、Co等の遷移元素が挙げられる。さらに、後者の構成材料においては、RとしてはSmを主成分とした希土類元素が好ましい。
磁石素体3の構成材料としては、特に、R−Fe−B系の構成材料が好ましい。このような材料は実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有しており、また、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及び、ホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有している。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相であり、このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
このようなR−Fe−B系の構成材料においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保持力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であると残留磁束密度が小さくなり、また、90原子%を超えると保持力が小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成されやすく、これにより保持力が小さくなる傾向にあり、また28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これにより残留磁束密度が小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−B系におけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体3の磁気特性が低下する傾向にある。
また上記構成材料におけるBの一部は、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)又は銅(Cu)等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、保持力の向上や製造コストの低減等を図る観点から、上記構成に加え、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等の元素を添加してもよい。これらの添加量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、具体的には、構成原子総量に対して10原子%以下とする。また、その他、不可避的に混入する成分としては、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、カルシウム(Ca)等が考えられ、これらは構成原子総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
このような構成を有する磁石素体3は、粉末冶金法によって製造することができる。この方法においては、まず鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕した後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるようにする。こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場のなかで、0.5〜5t/cmの圧力で成形する。
その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空下中、1000〜1200℃で0.5〜10時間焼結させた後に急冷する。さらに、この焼結体に、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施し、必要に応じて焼結体を所望の形状(実用形状)に加工して、磁石素体3を得る。
このようにして得られた磁石素体3には、さらに酸洗浄が施されることが好ましい。すなわち、後述する熱処理の前段において磁石素体3の表面に対して酸洗浄が施されることが好ましい。
酸洗浄で使用する酸としては、硝酸を用いることが好ましい。一般の鋼材にメッキ処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いられることが多い。しかし、本実施形態での磁石素体3のように、磁石素体3が希土類元素を含む場合には、これらの酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が磁石素体3の表面に吸蔵され、吸蔵部位が脆化して多量の粉状未溶解物が発生する。この粉状未溶解物は、表面処理後の面粗れ、欠陥および密着不良を引き起こすため、上述した非酸化性の酸を酸洗浄処理液に含有させないことが好ましい。したがって、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましい。
このような酸洗浄による磁石素体3の表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。磁石素体3の表面の加工による変質層や酸化層を完全に除去することで、後述する熱処理により、所望の酸化膜をより精度よく形成することができる。
酸洗浄に用いられる処理液の硝酸濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。硝酸濃度が高すぎると、磁石素体3の溶解速度が極めて速く、溶解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量処理ではバラツキが大きくなり、製品の寸法精度の維持が困難となる傾向がある。また、硝酸濃度が低すぎると、溶解量が不足する傾向がある。このため、硝酸濃度は1規定以下とすることが好ましく、特に0.5〜0.05規定とすることが好ましい。また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/l程度とする。
酸洗浄を行った磁石素体3の表面から少量の未溶解物、残留酸成分を完全に除去するため、超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体3の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中で行うのが好ましい。また、上記超音波洗浄の前後、及び酸洗浄の各過程で必要に応じて同様な水洗を行ってもよい。
(保護層)
次に、保護層5について説明する。保護層5は、上述の如く、磁石素体3側から順に、第1の層6及び第2の層7を有する内部保護層9、並びに、この内部保護層9を覆うように形成された樹脂層8を備える3層構造を有している。
まず、内部保護層9について説明する。第1の層6は、希土類元素を含有する層であり、また、第2の層7は第1の層よりも希土類元素の含有量が少ない層である。この第1の層6及び第2の層7は、磁石素体3由来の元素及び酸素を含んでいる。より具体的には、磁石素体3における上述した主相を構成する元素及び酸素を含んでいる。
ここで、磁石素体3由来の元素は、磁石素体3の構成材料であって、少なくとも希土類元素及び希土類元素以外の遷移元素が含まれ、さらにB、Bi、Si、Alなどが含まれる場合がある。第1の層6及び第2の層7は、磁石素体3上に塗布等によって別途付着させたものではなく、磁石素体3の構成元素が反応する等して、当該磁石素体3が変化することによりその表面に形成される層である。かかる反応としては、酸化反応が挙げられる。このため、保護層5には磁石素体を構成しない新たな金属元素は含まれないが、酸素、窒素などの非金属元素が含まれる場合がある。
第1の層6は、磁石素体3由来の希土類元素と酸素とを含有し、より具体的には、酸素、希土類元素及び希土類元素以外の遷移元素を含有している。例えば、磁石素体3の構成材料がR−Fe−B系のものである場合、遷移元素としてはFeを主として含み、その構成材料の組成によりCoなどを含んでいてもよい。
また、第2の層7は、磁石素体3由来の元素及び酸素を含有しているが、第1の層よりも希土類元素の含有量が少ない層である。例えば、磁石素体3の構成材料がR−Fe−B系のものである場合には、遷移元素はFeを主として含み、その構成材料の組成によりCoなどを含んでいてもよい。この第2の層7による更に優れた耐食性を得る観点からは、第2の層7における希土類元素の含有量は、第1の層6における希土類元素の含有量の半分以下であると好ましく、第2の層7が、希土類元素を実質的に含有しない層であると更に好ましい。つまり、第2の層7は、酸素及び磁石素体3に含まれている希土類元素以外の遷移元素を含有する層であると特に好適である。
第1の層6及び第2の層7の各構成材料の含有量は、EPMA(X線マイクロアナライザー法)、XPS(X線光電子分光法)、AES(オージェ電子分光法)又はEDS(エネルギー分散型蛍光X線分光法)等の公知の組成分析法を用いて確認することができる。ここで、第2の層7における「希土類元素を実質的に含有しない」態様としては、上述した組成分析法によって希土類元素が検出されない態様が考えられる。すなわち、第2の層7においては、希土類元素の含有率が、上記組成分析法による検出限界以下程度となっている。
上記各層からなる内部保護層9の形成方法としては、以下に示す方法が挙げられる。すなわち、第1の層6及び第2の層7は、酸化性ガスを含有する酸化性雰囲気中で、磁石素体3を、酸化性ガス雰囲気下で熱処理(加熱)する熱処理工程により形成することができる。この熱処理においては、磁石素体3の表面に、第1の層6及び第2の層7の両方が形成されるように、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも1つの条件を調整する。なお、かかる熱処理の際には、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間の3つの条件全てを調整することがより好ましい。
ここで、酸化性雰囲気とは、酸化性ガスを含有する雰囲気であれば特に限定されず、例えば、大気、酸素雰囲気(好ましくは酸素分圧調整雰囲気)、水蒸気雰囲気(好ましくは水蒸気分圧調整雰囲気)等の酸化が促進される雰囲気である。酸化性ガスとしては、酸素、水蒸気等が挙げられる。この中で、例えば、水蒸気雰囲気とは水蒸気分圧が10hPa以上の雰囲気であり、その雰囲気には、水蒸気と共に不活性ガスが共存していてもよい。かかる不活性ガスとしては窒素が挙げられる。酸化性雰囲気を水蒸気雰囲気とすることで、より簡易に内部保護層9を形成することができる傾向にある。
上記条件を調整する際には、先ず、磁石素体3を、酸化性ガス分圧、処理温度、処理時間を適宜変化させながら熱処理して、磁石素体3の表層部の構成と、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも1つの条件との相関を求める。次に、その相関に基づき、磁石素体3の表面に第1の層6及び第2の層7の両方が形成されるように、熱処理の際に、酸化性ガス分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも1つの条件を調整する。
熱処理により第1の層6及び第2の層7を形成するためには、処理温度を、300〜550℃の範囲で調製することが好ましく、350〜500℃の範囲で調整することがより好ましい。処理温度が上記上限値を超えると、磁石素体3の腐食が発生し易くなる傾向にある。一方、上記下限値未満であると、上記第1及び第2の層6,7が良好に形成され難くなる傾向にある。
また、処理時間は、1分〜24時間の範囲で調整することが好ましく、5分〜10時間の範囲で調整することがより好ましい。処理時間が上記上限値を超えると、磁気特性が劣化する傾向にある。一方、上記下限値未満であると、上記第1及び第2の層6,7が良好に形成され難くなる傾向にある。
酸化性雰囲気が水蒸気雰囲気である場合には、先ず、磁石素体3を、水蒸気分圧、処理温度、処理時間を適宜変化させながら熱処理して、磁石素体3の表層部の構成と、水蒸気分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも一つの条件との相関を求める。次に、その相関に基づき、磁石素体3表面に第1の層6及び第2の層7の両方が形成されるように、熱処理における水蒸気分圧、処理温度及び処理時間のうちの少なくとも1つの条件を調整する。このとき、処理温度及び処理時間は、上述した範囲内で調整することが好ましい。また、水蒸気分圧は、10〜2000hPaの範囲で調整することが好ましい。
第1の層6と第2の層7との総膜厚は、0.1〜20μmとすることが好ましく、0.1〜5μmとすることがより好ましい。この総膜厚を0.1μm未満としようとすると、第1の層6と第2の層7の両層が良好に形成され難くなる傾向にある。一方、総膜厚が20μmを超えるように第1の層6及び第2の層7を形成するのは困難な傾向にある。また、第2の層7の膜厚は、20nm以上であると好ましい。この膜厚が20nm未満であると、第1の層6の腐食を抑制する効果が不十分となり、希土類磁石1の耐食性が低下する傾向にある。
次に、樹脂層8について説明する。樹脂層8は、内部保護層9(第2の層7)を覆うように形成されており、樹脂及び添加剤を含む層である。この樹脂層8は、第1の層6や第2の層7とは異なり、磁石素体3が反応する等して形成された層ではなく、磁石素体3の表面上に別途新たに設けられた層である。したがって、樹脂層8には、磁石素体3に由来する元素は含まれないこととなる。
樹脂層8に含まれる樹脂としては、合成樹脂でも天然樹脂でもよいが、合成樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂がより好ましい。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、エポキシメラミン樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、アクリル酸、エチレン、スチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル化合物を原料とするビニル樹脂が挙げられる。なかでも、フェノール樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂が好ましく、フェノール樹脂又はエポキシ樹脂と、メラミン樹脂との組み合わせが特に好ましい。
樹脂層8に含まれるフェノール樹脂としては、アルキルフェノール樹脂やアルキル多価フェノール樹脂が挙げられ、例えば、アルキルフェノール、アルキル多価フェノールのモノマー、オリゴマーやこれらの混合物を硬化して得られたものが例示できる。硬化は、例えば、上述したモノマー等とホルムアルデヒドとを反応させてレゾールを形成した後、得られたレゾールを重合する方法や、ウルシオールと水とを重合する方法により行うことができる。
アルキルフェノール又はアルキル多価フェノールとしては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0004276636
式中、R11及びR12はヒドロキシル基又はアルキル基を示し、R11及びR12のうち少なくとも一方はアルキル基である。なかでも、式中のヒドロキシ基のオルト位にヒドロキシ基を有するとともに、メタ位又はパラ位にアルキル基を有するアルキル多価フェノールが好ましい。このようなアルキル多価フェノールとしては、一般にうるし塗料に含まれる成分が好適であり、具体的には、メタ位に−C1725基を有するウルシオール、パラ位に−C1733基を有するチチオール又はメタ位に−C1731基を有するラッコール等が挙げられる。
上記のアルキルフェノール又はアルキル多価フェノールは、還元剤として作用することができるため、硬化の際に高温で熱処理が行われたとしても、磁石素体3は強い還元雰囲気で覆われることとなり、磁石素体3が酸化されることによる劣化を大幅に低減することができる。
また、エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノール型、ポリオールのグリシジルエーテル型、ポリアシッドのグリシジルエステル型、ポリアミンのグリシジルアミン型、脂環式エポキシ型等のエポキシ化合物が適用できる。また、エポキシ樹脂は、上述したエポキシ化合物に加え、当該化合物を硬化させ得る硬化剤を更に含むことが好ましい。硬化剤としては、例えば、ポリアミン類、ポリアミンのエポキシ樹脂付加物、ポリアミドアミン類、ポリアミド樹脂等が挙げられ、具体的には、メタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルメタン等が例示できる。
さらに、メラミン樹脂は、メラミン(2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン)とホルムアルデヒドを反応させてメチロールメラミンを得た後、これを硬化して得られる樹脂である。このようなメラミン樹脂は、単独で樹脂層8に含まれていてもよいが、例えば、上述したフェノール樹脂やエポキシ樹脂と組み合わせて含まれることがより好ましい。メラミン樹脂は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂中に多くの架橋構造を形成することができることから、これらを組み合わせて含む樹脂層8は、耐熱性及び強度に極めて優れたものとなる。その結果、希土類磁石1の耐食性、耐熱性が一層向上する。
また、樹脂層8に含まれる添加剤は、上述の如く、水に溶解したとき、pH7以上を呈する水溶液を与える化合物である。すなわち、水に溶解して中性〜塩基性を呈する化合物である。このような添加剤としては、水に溶解可能な固体状の塩基性無機化合物が例示でき、例えば、NaOH等のアルカリ金属水酸化物、Mg(OH)等のアルカリ土類金属水酸化物、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム等の無機化合物塩等が挙げられる。
なかでも、添加物としては、水に溶解したとき、0.01mol/L〜5mol/Lの濃度でpH7以上11以下の水溶液を与えるものが好ましく、pH8以上10以下の水溶液を与えるものがより好ましい。特に、添加剤が、水に溶解したときに、このpH領域で緩衝作用を生じる緩衝溶液を与えるものであると、保護層5中での水溶液のpHがより確実に上記範囲となるため一層好適である。
このような添加剤としては、塩基とその塩とを組み合わせた混合物が好ましく、例えば、塩としてアンモニウム塩、炭酸塩、ホウ酸塩又はリン酸塩を含むものが好ましい。より具体的には、アンモニアとアンモニウム塩との組み合わせ、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの組み合わせ、ホウ酸とホウ酸ナトリウムとの組み合わせ、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの組み合わせ等が挙げられ、これらが、上記pH範囲で緩衝作用を示すような配合量で混合されたものが好ましい。
上記構成を有する樹脂層8は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂又はメラミン樹脂を溶媒に溶解又は分散させて溶液又はワニスとし、これに上述した添加剤を加えた後、得られた溶液又はワニスを、内部保護層9の表面上に塗布し、適宜乾燥等を行った後、加熱等により上記樹脂を硬化させることによって形成することができる。
以上、好適な実施形態に係る希土類磁石1及びその製造方法について説明したが、このような構成を有する希土類磁石1においては、まず、第1の層6及び第2の層7が、磁石素体3の表面が変化することによって形成されたものであるから、緻密な構造を有し、また磁石素体3への密着性に優れるものとなる。このため、磁石素体3に対する外気の影響を良好に低減し得る。
また、最外層の保護層である樹脂層8は、上述の如く、水に溶解してpH7以上を呈する添加剤を含むことから、かかる樹脂層8に湿気等の水が付着した場合、この水は、樹脂層8に含まれる添加剤を溶解してpH7以上の水溶液となる。このようなpH7以上の水溶液は、それ以下のpHを有する水溶液に比して磁石素体の酸化等を極めて生じ難いものである。したがって、高湿環境下等の条件下で、希土類磁石の周囲の湿気等の水が保護層5を通って磁石素体3に付着した場合であっても、保護層5を透過した水は、樹脂層8においてpH7以上の水溶液とされているため、磁石素体の酸化等、腐食の原因となる反応を極めて引き起こし難いものとなる。こうして、上記の保護層5を備える希土類磁石1は、耐食性、特に耐湿性に優れるものとなる。
なお、本発明の希土類磁石は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を適宜変更することができる。すなわち、上述した実施形態では、磁石として希土類元素を含む希土類磁石を例示したが、これに限定されず、本発明は、希土類元素を含まない金属磁石に適用することもできる。
また、上述した実施形態では、保護層5として、第1及び第2の層6,7を備える内部保護層9と樹脂層8とを備える3層構造のものを例示したが、これに限定されない。例えば、保護層としては、希土類磁石1における樹脂層8に相当する層のみを有するものであってもよい。つまり、希土類磁石1において、内部保護層9を有していない構成であってもよい。このような構成を有する希土類磁石も十分な耐食性(耐湿性)を有するものとなる。
また、内部保護層9は、上述した2層構造に限られず、1層構造であってもよい。一層構造の内部保護層9としては、例えば、磁石素体3の表面を酸化してなる酸化物層が挙げられる。このような酸化物層としては、酸素及び磁石素体に由来する元素を含むものが好ましい。特に、希土類磁石においては、酸化物層として、磁石素体の主相を構成する元素を含むものが挙げられ、磁石素体由来の希土類元素及び/又は遷移元素、並びに酸素原子を含むものが好ましい。
さらに、上述した本発明の構成によれば、磁石のみならず金属一般の防錆性能を向上することができる。すなわち、複合体は、金属を含む素体と、この素体を覆い樹脂及び添加剤を含有する樹脂層とを有しており、添加剤が水に溶解したとき、pH7以上を呈する水溶液を与えるものである。このような複合体において、外部の水が保護層を通って素体に付着したとしても、保護層によって水が中性〜塩基性とされるため、素体を構成する金属の錆の発生が大幅に低減される。素体としては、例えば、金属そのものが挙げられる。このような複合体は、例えば、上記図1及び図2における磁石素体3に相当する素体と、単層構造の保護層5とを備える構成を有するものとなる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の製造]
(実施例1)
粉末冶金法により、組成が13.2Nd−1.5Dy−77.6Fe−1.6Co−6.1B(数字は原子百分率を表す。)である鋳塊を作製し、これを粗粉砕した。その後、不活性ガスによるジェットミル粉砕を行って、平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。得られた微粉末を金型内に充填し、磁場中で成形した。次いで、真空中で焼結後、熱処理を施して焼結体を得た。得られた焼結体を35mm×19mm×6.5mmの寸法に切り出し加工し、実用形状に加工した磁石素体を得た。次に、得られた磁石素体を2%HNO水溶液中に2分間浸漬する酸洗浄を行い、その後超音波水洗を施した。
それから、溶媒であるキシレン40質量部、及び、熱硬化性アルキルフェノール60質量部を含む混合物を準備し、この混合物に、ホウ酸及び四ホウ酸ナトリウムを含む混合物(ホウ酸:四ホウ酸ナトリウム=2:1、モル比)を加え、樹脂組成物を調整した。この混合物の配合量は、得られる樹脂層中で0.5質量%となる量とした。なお、この混合物は、ホウ酸濃度0.3mol/Lでは、pH8.4を呈する緩衝溶液となる。
そして、得られた組成物を、上記酸洗浄後の磁石素体の表面に塗布し、常温で乾燥した後、大気中で150℃、30分間加熱して硬化させて、磁石素体の表面上に保護層を形成して、希土類磁石を得た。この希土類磁石は、保護層として樹脂層のみを備えるものであった。
(実施例2)
まず、実施例1と同様にして、磁石素体を得た後、酸洗浄及び超音波水洗を施した。それから、この酸洗浄(酸処理)を施した磁石素体を、酸素分圧70hPa(酸素濃度7%)の酸素−窒素混合雰囲気中、450℃で8分間の熱処理を行った。
その後、実施例1と同様にして得た樹脂組成物を熱処理後の磁石素体の表面に塗布し、常温で乾燥した後、大気中で150℃、30分間加熱して硬化させて、磁石素体の表面上に保護層を形成して、希土類磁石を得た。
得られた希土類磁石を、集束イオンビーム加工装置を用い薄片化し、表面近傍の膜構造を透過型電子顕微鏡(日本電子製のJEM-3010)で観察したところ、磁石素体の表面上には、磁石素体と樹脂層の間に、平均膜厚が2.5μmの層及び平均膜厚が80nmの層の2つの層が、磁石素体側からこの順に形成されていることが確認された。そして、この2つの層に含まれる元素を、EDS(NoraanInstruments社製のVoyagerIII)を用いて分析した結果、磁石素体側の層からは主な成分としてNd,Fe,Oが検出され、樹脂層側の層からはFe,Oが検出され、Ndは検出されなかった。
(比較例1)
樹脂組成物に、ホウ酸及び四ホウ酸ナトリウムを含む混合物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして希土類磁石を得た。この希土類磁石は、保護層として樹脂層のみを備えるものであった。
(比較例2)
樹脂組成物に、ホウ酸及び四ホウ酸ナトリウムを含む混合物を添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして希土類磁石を得た。
得られた希土類磁石を、集束イオンビーム加工装置を用い薄片化し、表面近傍の膜構造を透過型電子顕微鏡(日本電子製のJEM-3010)で観察したところ、磁石素体の表面上には、磁石素体と樹脂層の間に、平均膜厚が2.5μmの層及び平均膜厚が80nmの層の2つの層が、磁石素体側からこの順に形成されていることが確認された。そして、この2つの層に含まれる元素を、EDS(NoraanInstruments社製のVoyagerIII)を用いて分析した結果、磁石素体側の層からは主な成分としてNd,Fe,Oが検出され、磁石素体から遠い側の層からはFe,Oが検出され、Ndは検出されなかった。
[特性評価]
(プレッシャー・クッカー・テスト)
実施例1〜2及び比較例1〜2の希土類磁石に対して、121℃、2atm(0.203MPa)、100%RHの環境下に500時間放置するPCT処理を行うプレッシャー・クッカー・テストを行った。この際、PCT処理前後において磁束を測定した。そして、PCT処理前の値に対するPCT処理後の磁束の劣化(磁束劣化)を測定した。その結果、実施例1の希土類磁石では磁束劣化は0.2%であり、実施例2の希土類磁石では磁束劣化は0.1%であった。一方、比較例1の希土類磁石では磁束劣化が0.7%であり、比較例2の希土類磁石では磁束劣化が0.5%であった。
本実施形態の希土類磁石を示す模式斜視図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構造を模式的に示す図である。
符号の説明
1…希土類磁石、3…磁石素体、5…保護層、6…第1の層、7…第2の層、8…樹脂層、9…内部保護層。

Claims (10)

  1. 金属磁石素体と、該金属磁石素体の表面上に形成された保護層と、を備え、
    前記保護層は、樹脂及び添加剤を含有する樹脂層を有しており、
    前記添加剤は、塩基とその塩とを組み合わせた混合物であり、且つ、水に溶解したとき、0.01mol/L〜5mol/Lの合計濃度でpH7以上11以下の緩衝作用を生じる緩衝溶液を与えるものである、
    ことを特徴とする磁石。
  2. 前記添加剤は、アンモニアとアンモニウム塩との組み合わせ、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの組み合わせ、ホウ酸とホウ酸ナトリウムとの組み合わせ、又はリン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムとの組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の磁石。
  3. 前記保護層は、前記金属磁石素体と前記樹脂層との間に、希土類元素及び/又は遷移元素と、酸素原子と、を含む内部保護層を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載の磁石。
  4. 前記内部保護層は、前記金属磁石素体を覆い希土類元素を含有する第1の層、及び、前記第1の層を覆い前記第1の層よりも希土類元素の含有量が少ない第2の層からなることを特徴とする請求項記載の磁石。
  5. 前記第2の層における希土類元素の含有量は、前記第1の層における希土類元素の含有量の半分以下であることを特徴とする請求項記載の磁石。
  6. 前記第2の層は、遷移元素及び酸素を含有することを特徴とする請求項4又は5記載の磁石。
  7. 前記金属磁石素体は、希土類元素及び希土類元素以外の遷移元素を含むものであり、
    前記第1の層は、前記希土類元素、前記遷移元素及び酸素を含有し、
    前記第2の層は、前記遷移元素及び酸素を含有し、且つ、前記第1の層よりも前記希土類元素の含有量が少ないことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の磁石。
  8. 前記第1の層における前記希土類元素、前記第1の層における前記遷移元素、及び、前記第2の層における前記遷移元素は、前記金属磁石素体由来の元素であることを特徴とする請求項記載の磁石。
  9. 前記第1の層における前記希土類元素、前記第1の層における前記遷移元素、及び、前記第2の層における前記遷移元素は、前記金属磁石素体の主相を構成する元素であることを特徴とする請求項記載の磁石。
  10. 前記第2の層は、希土類元素を実質的に含有しない層であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか一項に記載の磁石。
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