JP4688833B2 - 圧粉磁心用粉末ならびに圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄粉や鉄基合金粉末(以下、両者を併せて単に鉄粉という)等の軟磁性粉末のうち、圧縮成形していわゆる圧粉磁心として使用される磁心用材料に関する。特に、成形生産性に優れ、高強度の成形体を提供し得ると共に、高温条件下での機械的特性にも優れた成形体を与える磁心用粉末と、該粉末を用いた圧粉磁心、並びに、該磁心用粉末を用いて圧粉磁心を製造する方法に関するものである。
交流磁場内で使用される磁心には、鉄損、特に渦電流損が小さく、高磁束密度であることが求められる他、製造時のハンドリング工程やコイル状にするための巻き線工程等で破損しないことが必要とされる。
軟磁性粉末を成形して製造される圧粉磁心の場合、磁性粉末粒子間に絶縁性のバインダー樹脂を介在させることで渦電流損を抑制することができ、しかも、磁性粉末粒子間に介在する樹脂は鉄粉粒子間で接着剤の役割を果たすので、機械的強度にも優れたものとなる。
上記のバインダー樹脂としては、エポキシ樹脂、イミド系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂等が知られている。
有機バインダーを混合した粉末を所定形状に圧縮成形する際には、機械焼結部品を製造する場合と同様に、粉末相互間の摩擦抵抗や金型との摩擦抵抗を低減して量産性を高めるため、通常0.8〜1質量%程度の潤滑剤(ステアリン酸亜鉛やステアリン酸リチウム等)を混合して圧粉成形する方法が採用されている。
ところがこれらの潤滑法を採用すると、原料粉末中に配合された潤滑剤が圧粉成形体(圧粉磁心)の強度を下げる原因になる。そこで、高融点の潤滑剤を使用し、バインダー樹脂を熱硬化させるときにも潤滑剤が溶融しないようにすることで、成形体強度を高める方法が開示されている(特許文献1)。しかしこの方法では、成形体中に存在する潤滑剤が破壊の起点となり、成形体の機械的強度が損なわれる。
そこで、潤滑剤をバインダー樹脂と積極的に結合させることにより強化する技術として、フェノール樹脂と水素結合する潤滑剤を用いる方法が提案されている(特許文献2)。しかし、水素結合はイオン結合や共有結合に比べると結合力が弱いため、強度向上には自ずと限界がある。
他方、特許文献3に開示されているように、原料粉末中に潤滑剤を混入させず、圧縮成形用金型の表面に潤滑剤を塗布する型潤滑成形法を採用すると、圧縮成形体の強度は向上する。しかし、型潤滑成形法は工業的に確立した方法とはいえず、工業的な量産法として汎用されるまでには至っていない。特に、モータのロータやステータの如く複雑な形状の成形体では、金型表面に潤滑剤を均一に塗布することが困難で、型潤滑の特徴が有効に発揮されないことも多い。
また、バインダー樹脂を高温でガラス状にしてから圧縮成形し、ガラス状樹脂の融着を利用することで高強度化を図る方法も提案されている。しかしこの方法では、高温で成形を行う際に磁性粉末が大気に接して酸化劣化を引き起こすため、成形を不活性ガス雰囲気あるいは真空中で行わねばならず、酸化防止のための設備コストがアップする他、生産性を下げる原因になる。また、高温で焼結する際にも同様の酸化防止対策が必要であり、且つ生産性も損なわれる。
さらに、特許文献4等には、原料粉末中に酸化物粒子を配合することによって樹脂の熱劣化を補う方法も提案されている。しかし、酸化物粒子を配合すると成形体の圧縮密度が低下し、ひいては圧縮成形体の磁気特性を劣化させる。
特許文献5には、圧縮成形後に樹脂を含浸させることによって強化する方法も提案されている。しかしこの方法は生産性が悪く、また潤滑剤を無くすことができる訳ではないので、強度低下の根本的な解決にはならない。
特公平4−12605号公報 米国特許第5980603号公報 特開2001−155914号公報 特開平10−335128号公報 特開2001−102207号公報
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであり、その目的は、鉄粉や鉄基合金等の軟磁性粉末を主成分とする粉末であって、粒子間における渦電流の発生を十分に抑制し得る電気抵抗を有し、しかも圧縮成形体に対し十分な強度を与え、さらには、100℃程度以上の高温条件下でも高強度を示し、さらに加えて、煩雑な酸化防止対策等を要することなく高性能の圧粉磁心を生産性よく製造し得るような原料粉末、すなわち圧粉磁心用粉末を提供し、該粉末を用いた圧粉磁心とその製法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明にかかる圧粉磁心用粉末は、軟磁性粉末100質量部に対し、フェノール樹脂微粉末0.1〜1質量部と、融点が30〜80℃の潤滑剤0.1〜1質量部とを含むと共に、強化添加剤として窒素含有塩基性化合物の塩を0.05〜0.5質量部含むところに特徴を有している。
上記窒素含有塩基性化合物の塩は、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、硫酸メラミンおよびシアヌル酸メラミンよりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
上記フェノール樹脂微粉末は、150℃におけるJIS K6911の円板式流れ試験値が45mm以上である高温流動性を備えたフェノール樹脂からなるものであることが好ましい。
上記潤滑剤は、ポリエチレンワックス、エステルワックスおよびパラフィンワックスのうちのいずれか1種以上が好ましい。
本発明には、上記圧粉磁心用粉末の圧縮成形体を加熱し、フェノール樹脂微粉末を溶融硬化させた圧粉磁心が含まれる。また、上記圧粉磁心用粉末を圧縮成形する工程と、得られた圧縮成形体を加熱し、フェノール樹脂微粉末を溶融硬化(溶融させた後、硬化)させる工程とを含む圧粉磁心の製造方法も含まれる。
本発明によれば、強化添加剤として窒素含有塩基性化合物を圧粉磁心用粉末に添加したので、粒子間における渦電流の発生を十分に抑制し得る電気抵抗を有し、しかも圧縮成形体に対し十分な強度を与え、さらには、100℃程度以上の高温条件下でも高強度を示す圧粉磁心を提供することができた。
また、本発明の製造方法は、煩雑な酸化防止対策等を要することなく高性能の圧粉磁心を生産性よく製造することができた。
以下、本発明の圧粉磁心用粉末を詳述する。
[軟磁性粉末]
本発明で好ましく用いられる軟磁性粉末とは、強磁性の金属粉末であり、具体例としては、純鉄粉、鉄基合金粉末(Fe−Al合金、Fe−Si合金、センダスト、パーマロイ等)およびアモルファス粉末、さらには、表面にリン酸系化成皮膜や酸化皮膜等の電気絶縁皮膜が形成された鉄粉等が挙げられる。これらの軟磁性粉末は、たとえば、アトマイズ法等によって微粒子化する方法、酸化鉄等を微粉砕した後これを還元する方法等によって製造できる。
本発明においては、このような方法で製造した後、篩い分け法で評価される粒度分布で、累積粒度分布が50%になる平均粒径が20〜250μm、中でも50〜150μmのものが特に好ましい。
[フェノール樹脂微粉末]
フェノール樹脂微粉末は、圧粉磁心用粉末においてバインダー樹脂としての役割を果たすものである。フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であり、比較的安価で、かつ高強度を与える。また、本発明では、潤滑剤は一般に強度低下の原因となるので加熱して除去することが好ましく、この熱処理の際に硬化反応を起こして圧縮成形体の強度を高めることのできる熱硬化性樹脂が好ましいのである。圧縮成形後、熱処理すると、フェノール樹脂が溶融して軟磁性粉末の表面を覆うため、絶縁性を確保することができる。また、熱処理時に架橋硬化反応が進行するため、常温はもとより、高温環境下においても優れた機械的強度を示す圧粉磁心を与える。
本発明に係るフェノール樹脂としては公知のものであればいずれも使用することができる。特に、本発明で使用するフェノール樹脂は、150℃におけるJIS K6911の円板式流れ試験により測定される値が45mm以上、より好ましくは90mm以上のものが好ましい。このようなフェノール樹脂であれば、圧縮成形体を製造する際に、軟磁性粉末表面をより多く被覆し、成形体を熱処理する工程でも樹脂が変形して、粉末同士をより一層強く結合させ、かつ、絶縁性を高めるからである。
ここで、上記JIS K6911に規定される円板式流れ試験とは、加熱条件下(150℃)における成形材料の流動性を指標するものであり、当該試験により測定される値が大きいほど、流動性が高いことを意味する。また、流動性が小さい(測定値が小さい)場合は、フェノール樹脂の硬化反応が既に若干進行していることを示す。したがって、流動性が著しく小さい樹脂は、磁性粉末のバインダーとしての機能(強化材、絶縁材としての機能)が劣るので好ましくない。
上記フェノール樹脂とは、フェノール、クレゾール、p−アルキルフェノール、p−フェニルフェノール、クロルフェノール、ビスフェノールA、フェノールスルホン酸、レゾルシン等のフェノール性−OHを有するものと、ホルマリン、フルフラール等のアルデヒド類を付加縮合したものであり、多くの種類がある。これらの中でも、本発明に適したものとしては、フェノールとホルマリンとを触媒の存在下で付加縮合させたノボラック型フェノール樹脂やレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。特に、比較的短時間の内に硬化反応が進行するレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
ところで、フェノール樹脂には、液状や塊状、フレーク状の形態を有するものがあるが、固体粉末状である場合には、軟磁性粉末の平均粒径よりも通常10倍以上大きい。したがって、フェノール樹脂粉末として微粉末状のものを用いるのが好ましい。フェノール樹脂微粉末が小さいほど、フェノール樹脂が溶解したときに、軟磁性粉末の表面の被覆率が高まるからである。フェノール樹脂粉末の平均粒径は、軟磁性粉末のそれよりも小さいことが好ましく、具体的には30μm以下であるのが好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが推奨される。なお、ここでいう「平均粒径」とは、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したフェノール樹脂微粉末の写真(倍率:400倍)から無作為に選択したフェノール樹脂単粒子(複数の粒子が凝集したものではなく、単独で存在する粒子)100個について、該写真から測定した粒径を平均したものである。
このようなサイズのフェノール樹脂微粉末は、例えば、塊状やフレーク状のものを粉砕し、これを篩や気流分級法等で分級する方法によって得ることができる。また高分子量のフェノール樹脂の場合は、良溶媒に溶解させたフェノール樹脂溶液を、強撹拌している大過剰の貧溶媒中に滴下してフェノール樹脂を沈殿させ、この沈殿物を回収する方法等も有効である。この場合、フェノール樹脂溶液の濃度を調節することで、平均粒径をコントロールすることができる。
フェノール樹脂微粉末の添加量は、多ければ多いほど高い成形体強度が得られるが、逆に圧粉磁心用粉末の実効密度が低下するという問題が生じる。従って、軟磁性粉末100質量部に対して、1質量部以下とする。ただし0.1質量部より少ないと、バインダーとしての効果が発現しにくいため好ましくない。
[潤滑剤]
潤滑剤は、軟磁性粉末同士や、圧粉磁心用粉末と成形用の型との潤滑性を高めるために添加する。本発明では、融点が30℃〜110℃の潤滑剤を選択する。潤滑剤の融点が30℃より低いと、圧粉を保管したり、成形工程で搬送したり、型に充填したりするときに、充填剤の軟化によって粉末同士が付着して流動性が低下することがあるので、作業効率が劣る。しかし、融点が110℃よりも高いと、成形体の強度が低下するため好ましくない。また、潤滑剤としては、比較的極性が小さく、フェノール樹脂との相互作用の小さい種類のものが好適である。好ましい具体例としては、ポリエチレンワックス、エステルワックス、パラフィンワックス等が挙げられる。より好ましいのは、例えばヒドロキシ脂肪酸エステルワックス等のエステルワックスと、パラフィンワックスである。なお、ステアリン酸亜鉛等一般によく使用される金属石鹸系の潤滑剤は融点が高過ぎて、特にバインダー樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合、成形体の強度を著しく低下させるため、好ましくないことが本発明者等により確認されている(実施例の実験No.18)。
潤滑剤の添加量は、軟磁性粉末100質量部に対して、合計0.1〜1質量部とする。0.1質量部より少ないと、潤滑効果が発現しないが、1質量部を超えて添加すると成形体密度や強度が低下するため好ましくない。より好ましい潤滑剤量は、0.3〜0.6質量部である。潤滑剤は常温(25℃)で固体状であるので、微粉砕して、平均粒径30μm以下にしてから用いることが推奨される。
[強化添加剤]
本発明の圧粉磁心用粉末には、必須成分として強化添加剤が含まれる。この強化添加剤は、圧粉磁心の強度を高めるために用いる。具体的には、窒素含有塩基性化合物の塩であり、例えば、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、硫酸メラミンおよびシアヌル酸メラミン(慣用名メラミンイソシアヌレート)よりなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
これらの窒素含有塩基性化合物の塩が圧粉磁心の強度を高める理由は、必ずしも明確ではないが、以下のように推定される。すなわち、軟磁性粉末、バインダー樹脂(本発明ではフェノール樹脂)および潤滑剤を混合した粉末からなる圧縮成形体においては、潤滑剤が軟磁性粉末間に存在するため、バインダー樹脂が軟磁性粉末同士を結合する際の物理的な障害となる。また、加熱処理によりバインダー樹脂を熱硬化させる際に、潤滑剤が揮発・分解する等して成形体から消失すると、潤滑剤が占めていた体積が空隙となって、圧縮成形体ひいては圧粉磁心の強度低下の要因となる。一方、圧粉磁心用粉末に窒素含有塩基性化合物の塩を添加しておくと、これらが加熱処理時に分解して、アミンや尿素等の窒素含有反応性化合物と、リン酸や硫酸等の酸成分が生成する。窒素含有反応性化合物や酸成分は、フェノール樹脂の硬化を促進したり、フェノール樹脂の一部を開裂させた後再結合させたりして、粉末間の結合を強固にする、あるいは、潤滑剤の消失に起因する空隙を修復する等の効果が働くものと推察される。上記窒素含有塩基性化合物の塩の中には難燃剤として作用することが知られているものもあるが、圧縮成形体や圧粉磁心の強度を高める作用については、本発明者等により初めて知見された効果である。
このような効果を発揮させるには、窒素含有塩基性化合物の塩の量は、軟磁性粉末100質量部に対し、0.05〜0.5質量部の範囲とする。0.05質量部より少ないと、上記効果が発現せず、0.5質量部を超えると成形体密度が低下するという別の問題が生じるため好ましくない。より好ましい下限は0.1質量部であり、より好ましい上限は0.3質量部である。
なお、上記窒素含有塩基性化合物の塩は、常温(25℃)で固体状であるので、微粉砕して、平均粒径30μm以下にしてから用いることが推奨される。
[圧粉磁心用粉末の製造方法]
圧粉磁心として良好な電気抵抗と機械的強度を得るには、圧縮成形に先立って、軟磁性粉末、フェノール樹脂微粉末、潤滑剤および強化添加剤を、極力均一に混合することが望ましい。本発明では微粉末のフェノール樹脂を用いているので、樹脂を溶媒に溶解させてから軟磁性粉末等と混合しなくても、均一に混合することができ、優れた電気抵抗と機械的強度を有する圧粉磁心を得ることができる。混合方法としては特に限定されないが、公知のミキサー、ボールミル、ニーダー、V型混合機等を用いて混合すればよい。
[圧粉磁心の製造方法]
本発明の圧粉磁心用粉末を圧縮成形し、フェノール樹脂を溶融硬化させるために熱処理を行えば、本発明の圧粉磁心が得られる。圧縮成形法は特に限定されず、従来公知の方法が採用可能である。
圧縮成形の好ましい条件としては、圧力(面圧)290MPa以上、1200MPa以下、より好ましくは390MPa以上、1000MPa以下であり、最大荷重での加圧時間は0.05秒以上、5秒以下、より好ましくは0.1秒以上、3秒以下とすることが推奨される。なお、成形温度が高過ぎると、成形体の形状が整う前にフェノール樹脂が熱硬化する虞があるので、高強度の圧粉磁心とする観点からは、圧縮成形は、常温〜150℃未満で行うことが推奨される。
圧縮成形時の成形体と金型の摩擦を低減するために、金型の内面に潤滑剤を塗布してもよい(型潤滑)。このような潤滑剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸の金属塩粉末、およびパラフィン、ワックス、天然または合成樹脂誘導体等公知のものを使用することができる。これらの潤滑剤は、粉末状のままで金型内面に塗布してもよく、また、有機溶媒に溶解させて塗布してもよい。なお、本発明の圧粉用粉末には潤滑剤が含まれているので、型潤滑を省略してもよい。
成形後は、圧縮成形体中のフェノール樹脂を溶融して軟磁性粉末同士の間隙に浸透させてから、熱硬化させるための熱処理を、圧縮成形体に施す(熱処理工程)。熱処理は、フェノール樹脂の硬化反応が進行し得る150℃以上、フェノール樹脂が熱劣化を起こすことのない400℃以下で行うのが好ましい。より好ましくは180℃以上、250℃以下である。加熱時間は30分間以上とすることが好ましい。より好ましくは60分以上である。加熱時間に上限はないが、10時間以上加熱しても効果の増進はほとんどなく、むしろ生産性が低下するため好ましくない。加熱雰囲気は特に限定されず、大気、非酸化性、または、還元性のいずれであってもよい。なお、加熱法は特に限定されず、公知の方法を適宜選択して採用すればよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ意味する。
実験1
<各種原料>
軟磁性粉末には、純鉄粉(神戸製鋼所製;アトメル(登録商標)300NH;平均粒径80〜100μm)を用いた。
フェノール樹脂微粉末は、レゾール型フェノール樹脂粉末(群栄化学工業社製の「GU200」)を微粉砕し、篩分けしたものを用いた。平均粒径は30μm、流動性は80mmであった。流動性50mmのフェノール樹脂微粉末は、上記粉末を大気中110℃で30分熱処理したものであり、流動性40mmのものは大気中110℃で60分熱処理したものである。なお、流動性は、150℃におけるJIS K6911の円板式流れ試験により測定される値とした。
潤滑剤は、融点60℃のパラフィンワックス(和光純薬工業社製;商品名「パラフィン mp60−62℃」)、融点86℃のポリエチレンワックス(Baker Petrolite社製;商品名「Polywax500」)、融点65℃のエステルワックス(伊藤製油社製;商品名「ITOHWAX E−270」;エチレングリコール−モノ−12−ヒドロキシステアレート)と、比較用に融点140℃のステアリン酸亜鉛(和光純薬工業社製)を用いた。これらの潤滑剤は、入手後さらに粉砕し、篩を通して、平均粒径30μm以下に調整した。
強化添加剤は、スルファミン酸グアニジン(三和化学社製)、リン酸グアニジン(三和化学社製)、リン酸グアニル尿素(和光純薬工業社製;リン酸ジシアンジアミン)、硫酸メラミン(和光純薬工業社製)、シアヌル酸メラミン(堺化学社製;商品名「STABIACE MC−5S」;平均粒径0.5μm)を用いた。これらの強化添加剤のうち粒径の大きいものについては、入手後さらに粉砕し、篩を通して、平均粒径30μm以下に調整した。
<圧縮成形>
純鉄粉、表1に示した種類・量のフェノール樹脂微粉末、潤滑剤、強化添加剤を、V型混合機に装填し、30分以上混合して、圧粉磁心用粉末を得た。この圧粉磁心用粉末を所定の金型に充填し、温度25℃、圧力650MPa、最大荷重での加圧時間2秒の条件で圧縮成形し、長さ31.8mm×幅12.7mm×厚さ5mmの直方体形状の圧縮成形体を得た。なお、金型内面には、潤滑剤を塗布しなかった。
<潤滑性の評価・抜き圧測定>
圧縮成形した後、圧縮成形体を取り出す工程において、抜き圧を測定した。抜き圧は、金型内に粉末を充填し圧縮成形した後、金型を押し上げることによって相対的に成形体を金型内部から押し出し、このとき金型に負荷される最大荷重を測定することにより決定した。この抜き圧が30MPaを超える場合は、粉末の潤滑性が乏しく成形困難とされる。
<加熱処理>
上記圧縮成形体を、空気中、250℃で30分加熱処理し、フェノール樹脂微粉末を溶融させた後、硬化させた。
<成形体の評価>
加熱処理された後の圧縮成形体(圧粉磁心)の寸法をマイクロメータで測定すると共に、質量を測定し、質量を体積で割ることで、圧粉磁心の密度(g/cm3)を算出した。
また、圧粉磁心の抗折強度を、常温(25℃)と高温(150℃)で測定した。抗折強度試験は、JPMA M 09−1992(日本粉末冶金工業会規格、焼結金属材料の抗折力試験方法)に規定される方法に準じて行い、引張試験機(島津製作所製「AUTOGRAPH AG−5000E」)を使用し、支点間距離を25mmとした(測定試料n=5)。なお、150℃での測定の際には、測定試料をオーブン炉内で、空気中150℃で30分間保持した後、オーブン炉から取りだして3分以内に測定した。結果を表1および表2に示した。
Figure 0004688833
Figure 0004688833
圧粉磁心の性能として、密度6.60g/cm3以上、抜き圧30MPa以下、抗折強度が室温で70MPa以上、150℃で60MPa以上の全てを満たすときには、優秀と判断した。
実験No.1〜5は、強化添加剤の種類を変えた例であるが、その他の成分の組成や量がいずれも本発明の好ましい範囲にある。得られた圧粉磁心はいずれも上記の物性指標を満たしており、優秀であると判断できる。しかし、実験No.6では強化添加剤を用いなかったため、抗折強度に劣るものとなった。
フェノール樹脂の流動性が本発明の好ましい範囲を満たす実験No.7では、十分な抗折強度が得られたが、流動性に欠けるフェノール樹脂を用いた実験No.8では抗折強度が非常に低い結果となった。
実験No.9〜12は、フェノール樹脂微粉末の添加量を検討した結果である。No.9は、No.4と比べると密度は若干低下するが、実用上問題はない。No.10はさらに密度が低下したが、強度的には十分であった。No.11は、フェノール樹脂微粉末を0.1部にした例であり、まずまずの抗折強度が得られていたが、0.05部としたNo.12では、抗折強度に劣るものとなった。
実験No.13〜15は強化添加剤の量を検討した結果である。多すぎる例(No.14)、少なすぎる例(No.15)のいずれも、抗折強度が劣る結果となった。
実験No.16〜18は潤滑剤の融点を検討した結果である。本発明の規定範囲を超える融点140℃のステアリン酸亜鉛を用いたNo.18は、抗折強度に劣る結果となった。また、実験No.19〜22は潤滑剤の添加量を検討した結果である。本発明の範囲内であるNo.19と21は良好な結果を示したが、No.20は潤滑剤の量が多いため、密度の低下と強度不足を招いている。潤滑剤が0.05部となると(No.22)抜き圧が高すぎて成形性に劣るものとなった。
本発明の圧粉磁心用粉末は、強化添加剤として窒素含有塩基性化合物を圧粉磁心用粉末に添加したので、粒子間における渦電流の発生を十分に抑制し得る電気抵抗を有し、しかも圧縮成形体に対し十分な強度を与え、さらには、100℃程度以上の高温条件下でも高強度を示す圧粉磁心を提供することができた。従って、この圧粉磁心は、モータのロータやステータのコアとして有用である。

Claims (6)

  1. 軟磁性粉末100質量部に対し、フェノール樹脂微粉末0.1〜1質量部と、融点が30〜110℃の潤滑剤0.1〜1質量部とを含むと共に、強化添加剤として窒素含有塩基性化合物の塩を0.05〜0.5質量部含むことを特徴とする圧粉磁心用粉末。
  2. 上記窒素含有塩基性化合物の塩が、スルファミン酸グアニジン、リン酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、硫酸メラミンおよびシアヌル酸メラミンよりなる群から選択される1種以上である請求項1に記載の圧粉磁心用粉末。
  3. 上記フェノール樹脂微粉末は、150℃におけるJIS K6911の円板式流れ試験値が45mm以上であるフェノール樹脂からなるものである請求項1または2に記載の圧粉磁心用粉末。
  4. 上記潤滑剤が、ポリエチレンワックス、エステルワックスおよびパラフィンワックスのうちのいずれか1種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心用粉末。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心用粉末の圧縮成形体を加熱し、フェノール樹脂微粉末を溶融硬化させたものであることを特徴とする圧粉磁心。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心用粉末を圧縮成形する工程と、得られた圧縮成形体を体を加熱し、フェノール樹脂微粉末を溶融硬化させる工程とを含むことを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
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