JP2009176880A - 永久磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐食性の向上と低減磁化とを実現できる永久磁石を提供する。
【解決手段】希土類元素を含有する磁石素体2表面に例えばCu層からなるバッファ層3を設け、さらに、バッファ層3の表面に、Cuの添加量xが0<x≦0.1重量%のNi−P−Cu層からなる保護層4を設け、保護層4の熱処理後の皮膜応力(残留応力)を低下させることで、減磁を抑制し、かつ、耐食性を向上させることができる永久磁石1を提供するようにした。
【選択図】 図2

Description

本発明は、モータなどの回転機器、ハードディスクドライブ(HDD)用のボイスコイルモータ(VCM)などに使用される永久磁石に関するものである。
希土類磁石、例えばR−TM−B系磁石(Rは希土類元素、TMはFeを主成分とする遷移金属元素、Bはホウ素を示す)は、優れた磁気特性と経済性のため、電気・電子機器の分野で多用されている。中でも、Nd−Fe−B系磁石は、磁気特性が高く、高エネルギー積を示すことや、主要材料であるFeが豊富で安価であり、しかもNdがSmと比べて資源的に有利で安価であることから、Sm−Co系永久磁石に代わって希土類磁石の主流となっている。
しかしながら、Nd−Fe−B系磁石は、主成分として比較的容易に酸化される(錆びる)希土類元素を含有し、一般鉄鋼材質やSm−Co系磁石として比較して非常に腐食しやすいという欠点を有しているため、従来から様々な表面処理の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、希土類系の焼結磁石体の表面にCu層およびNi−P層からなる均一な耐食性二重層を、例えば電解めっき法、無電解めっき法により保護層として形成することが提案されている。
特公平7−12005号公報
しかしながら、特許文献1に示されるような保護層を形成した場合でも、数時間後には一部に赤錆(点錆)が発生し、翌日以降には、錆や膨れが発生してしまうなど、十分な耐食性が得られていない現状にある。
また、永久磁石の用途が、例えばHDD向けや車載用、ポータブル用のような場合、磁石が小型・薄型化し、磁石の体積に対するめっき層などの保護層の比率が増大するとともに、高温環境という厳しい条件下で使用されるケースも増えてくる。このような条件下では、磁石の磁束密度が初期の磁束密度から小さくなってしまう熱減磁現象が発生し、磁石としての能力が低下してしまう。しかしながら、特許文献1では、減磁対策が考慮されていない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、耐食性の向上と低減磁化とを実現できる永久磁石を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる永久磁石は、金属磁石素体表面に、Cuの添加量xが0<x≦0.1重量%のNi−P−Cu層からなる保護層を有することを特徴とする。
また、本発明にかかる永久磁石は、上記発明において、Cuの添加量xが0.01≦x≦0.1重量%であることを特徴とする。
また、本発明にかかる永久磁石は、上記発明において、前記金属磁石素体表面と前記保護層との間に、バッファ層を有することを特徴する。
また、本発明にかかる永久磁石は、上記発明において、前記バッファ層は、Cu層からなることを特徴とする。
また、本発明にかかる永久磁石は、上記発明において、前記金属磁石素体は、希土類元素を含有する希土類磁石からなることを特徴とする。
本発明にかかる永久磁石は、金属磁石素体表面に、所定量の微量のCuを添加したNi−P−Cu層からなる保護層を設けたので、減磁を抑制し、かつ、耐食性を向上させることができるという効果を奏する。これは、Ni−P層に微量のCuを添加していくと、熱処理後の皮膜応力(残留応力)が低下することが確認されたものであり、このようなCuの適量の添加による保護層の皮膜応力の低下が熱減磁の抑制や耐食性の向上に何らかの形で寄与しているためと推測される。
以下、本発明にかかる永久磁石を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。本発明の永久磁石は、金属磁石であればよく、特に組成を問わないが、本実施の形態では、好適例として、例えばR−TM−B系永久磁石による構成例を示す。
図1は、本実施の形態の永久磁石の構成例を示す斜視図であり、図2は、その中央縦断側面図である。本実施の形態の永久磁石1は、磁石本体をなす金属磁石素体である磁石素体2と、この磁石素体2の表面に形成されたバッファ層3と、このバッファ層3の表面、すなわち磁石素体2の表面の最外層に形成された保護層4とからなる。
[磁石素体2]
磁石素体2は、R(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種類以上からなる)、TM(Feを主成分とする遷移元素)、およびB(ホウ素)を主成分として含む焼結体である。すなわち、磁石素体2は、希土類元素を含有する希土類磁石からなる。
ここで、R、TM、およびBの含有量は、それぞれ、5.5≦R≦30原子%、42≦TM≦90原子%、2≦B≦28原子%、であることが好ましい。なお、TMは基本的に主成分たるFeとその置換元素、および不可避の不純物とから構成されることが好ましく、11.7≦R≦13.5原子%、42≦TM≦90原子%、5≦B≦7原子%、であることがより好ましい。
本実施の形態における磁石素体2を粉末冶金法により製造する場合、次のような組成であることが好ましい。まず、希土類元素Rは、Nd、Pr、Ho、Tbのうち少なくとも1種、あるいはさらにLa、Sm、Ce、Gd、Er、Dy、Eu、Pm、Tm、Yb、Yのうち1種以上を含むものが好ましい。
なお、Rとして2種類以上の元素を用いる場合、原料としてミッシュメタル等の混合物を用いることができる。元素Rには、Ndおよび/またはPrが必ず含まれていることが好ましい。NdとPrとの比率は特に限定されない。NdおよびPrの両者以外の元素の合計量は、元素R全体の10原子%以下とすることが好ましい。さらに、Dyおよび/またはTbを加えることが好ましい。
Rの含有量は、特に、5.5〜30原子%であることが好ましい。Rの含有量が5.5原子%未満では、結晶構造がα−Feと同一構造の立方晶組織となるため、高い保磁力(Hcj)が得られず、Rの含有量が30原子%を超えると、Rリッチな非磁性相が多くなり、残留磁束密度(Br)が低下する。11.7≦R≦13.5原子%であると、最大エネルギー積を高くできるため、本実施の形態に好適である。Rの含有量を12.2〜13.5原子%とすることがさらに好ましい。
TMの含有量は、42〜90原子%であることが好ましい。TMの含有量が42原子%未満であると残留磁束密度(Br)が低下し、TMの含有量が90原子%を超えると保磁力(Hcj)が低下する。Feの一部をCoで置換することにより、磁気特性を損なうことなく温度特性を改善することができるが、Co置換量がFeの50%を超えると磁気特性が低下するため、Co置換量は50%以下とすることが好ましい。
B(ホウ素)の含有量は、2〜28原子%であることが好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体組織となり保磁力(Hcj)が不十分であり、Bの含有量が28原子%を超えるとBリッチな非磁性相が多くなるため、残留磁束密度(Br)が低下する。Bの含有量は、さらに5〜7原子%、さらには5.5〜6.5原子%がより好ましい。
また、上記のR、TM、Bの他、不可避不純物としてNi、Si、Cu、Ca、O、C等が全体の3原子%以下含有されていてもよい。
さらに、Bの一部を、C、P、S、Cuのうち1種以上で置換することにより、生産性の向上および低コスト化が実現できる。この場合、置換量は、全体の4原子%以下であることが好ましい。
また、保磁力の向上、生産性の向上、低コスト化のために、Al、Ti、V、Cr、Mn、Bi、Nb、Ta、Mo、W、Sb、Ge、Sn、Zr、Ni、Si、Hf、Ga、Cu等の1種以上を添加してもよい。この場合、添加量は、総計で10原子%以下とすることが好ましい。
R−TM−B系からなる磁石素体2は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有する。この主相の粒径は、0.5〜100μm程度であることが好ましい。さらに、通常、体積比で0.5〜50%の非磁性相を含むものである。このような磁石素体2は、以下に述べるような粉末冶金法により製造されることが好ましい。
まず、所望の組成の合金を鋳造法、ストリップキャスト法等のプロセスで作製する。得られた合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等により、粒径10〜800μm程度に粗粉砕し、次いで、ジェットミル、アトライター等により0.5〜10μm程度の粒径に微粉砕する。
得られた粉末を、好ましくは磁場中にて成型する。この場合、磁場強度は600kA/m以上、成型圧力は0.5〜5ton/cm程度であることが好ましい。得られた成型体を、900〜1200℃の温度で、0.5〜24時間焼結し、急冷する。なお、焼結雰囲気は、Arガス等の不活性ガスまたは真空中であることが好ましい。この後、好ましくは、不活性ガス雰囲気中または真空中で500〜900℃にて1〜24時間の時効処理を行う。また、焼結処理および時効処理は、複数回に分けて行ってもよい。
[バッファ層3]
このようにして形成された磁石素体2の表面に、バッファ層3を形成する。バッファ層3の目的は、保護層4を形成するための無電解めっきプロセス中の磁石素体2の保護である。無電解めっきは、析出効率が低いため、大量の水素が発生してしまう。無電解めっき反応では、主反応である金属析出反応と副反応である水素発生反応とを比較すると、金属析出効率(30%程度)よりも水素発生効率が高く、量的には金属析出反応よりも水素発生反応が主となるため、水素が大量に発生する。この結果、水素吸蔵性の高い希土類磁石からなる磁石素体2が水素を吸蔵して粉状になるため、磁石の磁気特性、保護層4の密着特性および耐食特性が劣化してしまう。また、無電解めっき浴による置換反応で磁石素体2の表面成分が溶出してしまう。
バッファ層3については、水素遮断と置換反応抑止の観点から、Cu、Ni、Co、Ag、Sn、Al、Si、Fe、Mo、Ti、Zr、V、Nb、Mn、などの金属および合金、またはこれらの酸化物、窒化物、炭化物など特に制限はなく、中でもCu、Niが好ましく、Cuがより好ましい。また、バッファ層3としてのCu層の形成方法に関しては、特に制限はなく、電気めっき等の湿式めっき法や、機械めっき法や、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング等の真空成膜法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法や、PVD(Physical Vapor Deposition)法などのいずれの方法を用いてもよい。
バッファ層3として、代表的なCu層形成法の一例として電気めっき法を取り挙げて、以下に詳細に説明する。
上記のようにして得られた磁石素体2に、バッファ層3としてCu層をめっき形成する前に、下記のように所定の前処理を行うことが好ましい。すなわち、めっき処理前に、磁石素体2の加工面のバリ等を取り除くために、バレル研磨を行う。さらに、磁石素体2の表面の汚れを取り除くために脱脂処理を行い、酸による化学エッチングを施し表面を清浄化する。脱脂処理で用いる脱脂液は、通常の鉄鋼用に使用されているものであればよい。一般には、NaOHを主成分とするものであって、その他の添加剤は特定されるものではない。化学エッチングで使用する酸としては硝酸を用いることが好ましい。
一般の鋼材にめっき処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いられることが多い。しかしながら、本実施の形態の如く、磁石素体2が希土類元素を含む場合には、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が磁石素体2の表面に吸蔵され、吸蔵部位が脆化して多量の粉末未溶解物が発生する。この粉末未溶解物は、めっき後の面粗れ、欠陥および密着不良を引き起こしてしまう。このため、これらの酸は、化学エッチング処理液に含有させないことが好ましい。したがって、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましい。さらには、アルドン酸またはその塩が同時に含有されている硝酸を用いると、表面に目視で確認不可なレベルの凹凸が形成され、皮膜の密着力が向上するので、より一層好ましい。
なお、このような密着性の向上は、アルドン酸またはその塩によって選択的に実現し、他の有機酸、例えばクエン酸、酒石酸等では実現しない。
前処理に用いられる処理液の硝酸濃度は、1規定以下、特に0.5規定以下とするのがより好ましい。硝酸濃度が1規定を超える場合は、磁石素体2の溶解速度が極めて速く、溶解量の制御が困難となり、特に、バレル処理のような大量処理では溶解量のバラツキが大きくなり、製品の寸法精度が維持できなくなってしまう。また、硝酸濃度が薄くなり過ぎると、溶解量の不足となる。このため、硝酸濃度は、前述の如く、1規定以下、特に0.5〜0.05規定とするのが望ましい。また、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/L程度とされる。
さらに、前処理を行った磁石素体2表面から少量の未溶解物、残留酸成分を完全に除去するため、超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。この超音波洗浄は、磁石素体2の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ないイオン交換水の中で行うのが好ましい。また、このような超音波洗浄の前後、および前処理の各過程で必要に応じて同様な水洗を行ってもよい。
上記の前処理を行った磁石素体2の表面上に電気めっきによりCu層をバッファ層3として設層する。Cu層を電気めっきにより設層することにより、特に小物形状においては量産性に優れた高性能耐食膜を形成することができる。
なお、磁石素体2の表面に直接、電気めっきによりCu層を形成する場合、磁石素体2表面へのCuの置換析出を防止するため、pH7〜10の弱アルカリ浴中で処理することが好ましい。このとき、めっき浴は、有機ホスホン酸化合物、EDTA、シアンのいずれかを浴中に含んでいることが好ましい。特に、有機ホスホン酸化合物、EDTAは環境負荷が小さいため好ましい。なお、Cu層の厚さは、0.1〜50μm、好ましくは1〜10μmとされる。
[保護層4]
このように形成されたバッファ層3の表面に、保護層4としてNi−P−Cu無電解めっき皮膜を形成する。無電解めっきは、還元剤の化学反応を利用して、めっき浴中の金属イオンが金属として基体の表面に析出する。また、Ni−P−Cu無電解めっき液は、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、次亜リン酸ニッケルのうち少なくとも1種のニッケル金属塩を100g/L以下含有し、銅金属源としては塩化銅、硫酸銅、ピロリン酸銅、または銅ポルフィリン錯体、銅フタロシアニン錯体のうちの少なくとも1種を20g/L以下含有し、還元剤として次亜リン酸塩を100g/L以下含有し、pH調整剤として水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基性化合物、無機酸、有機酸のうち少なくとも1種を150g/L以下含有するものが好ましい。
緩衝剤としてクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等のオキシカルボン酸、あるいはホウ酸、炭酸等の無機酸のうち少なくとも1種を150g/L以下、錯化剤としてクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、エチレングリコール、さらには有機酸(酢酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸等)のアルカリ塩、チオグリコール酸、アンモニア、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、グリシン、ピリジンの少なくとも1種を100g/L以下、促進剤、安定剤として10g/L以下の硫化物、塩化物、フッ化物、界面活性剤をそれぞれ含有することができる。
このめっき液は、pH3〜13の範囲で用い、めっき時の浴温は20〜100℃の範囲である。
磁石素体2をめっき液に浸漬する方法は、バレル法または引っ掛け治具法のいずれでもよく、磁石素体2の寸法および形状によって適宜選択される。
析出しためっき皮膜は、NiとPを主成分とし、PがNi中に過飽和に固溶した非晶質相、あるいはNiとNiP等のリン化ニッケル相との微細混合相からなるものであり、Pの含有量は特に限定されないが、Pの割合は0.1〜14重量%が好ましく、特に、7〜12重量%とすることがより好ましい。また、Cuの含有量xは、0<x≦0.1重量%であることが好ましく、特に、0.01≦x≦0.1重量%であることがより好ましい。耐食性の面で、保護層4のめっき厚さは、0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。
本実施の形態では、磁石素体2の表層にバッファ層3と保護層4との二層構造を有するので、耐食性が向上する。例えば、バッファ層3をCu層として電気めっき法により形成した場合にピンホールが存在しても、その表層に保護層4を形成して被覆することによりピンホールの貫通状態が中断される。また、表層に無電解めっき法により形成される保護層4にピンホールが存在しても、下地にバッファ層3が存在することにより磁石素体2まで貫通せず、耐食性が保たれる。特に、バッファ層3をCu層として形成した場合には、バッファ層3(Cu層)よりもイオン化傾向の大きい保護層4(Ni−P−Cu層)がバッファ層3の表面に存在することで、腐食は、卑な保護層4(Ni−P−Cu層)がアノード的に溶解することで進行し、貴なバッファ層3(Cu層)はカソード的に防食されることとなり、下地のバッファ層3が保護されるため、耐食性が一層向上するものとなる。
なお、無電解めっき成膜では、原則として触媒となる下地層が必要であり、本実施の形態においても、公知のパラジウム触媒等を用いることができる。もっとも、通常の無電解めっき前処理としての触媒付与処理を行わなくても、磁石素体2そのものが触媒活性を有している場合もある。また、電解めっきにより析出しためっき膜が触媒作用をすることもある。さらには、保護層4は、無電解めっき成膜に限らず、例えばスパッタリング法等の薄膜形成方法で形成するようにしてもよい。これらの場合には、バッファ層3を省略し、磁石素体2の表面上に直接保護層4を形成するようにしてもよい。また、本実施の形態では、磁石素体2の表面の最外層に保護層4を形成したが、さらに耐食性向上や接着剤との強度を向上させるために、保護層4を形成した後、その表面にさらに別の層を設けたり、保護層4に対してクロメート処理等の後処理を施してもよい。
以下、具体的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
[磁石サンプルの作製]
(14.1)Nd−(0.4)Dy−(78.8)Fe−(0.6)Co−(6.1)B組成からなる鋳塊を粗粉砕し、さらに不活性ガスによるジェットミル粉砕で平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。この微粉末を磁場中で成型し、焼結、熱処理を経て焼結磁石を得た。次いで、この焼結磁石を長さ20mm×幅10mm、厚さ2mmに切り出し加工し、磁石素体2とした。
加工後の磁石素体2は、バレル研磨、脱脂、エッチングの各工程を経て、Cu電気めっきを行い、磁石素体2の表面に膜厚7μmのCu層をバッファ層3として形成した。
Cu層によるバッファ層3を形成した磁石素体2の表面に、無電解めっきにより保護層4を形成した。この際、無電解めっき浴は、
次亜リン酸Na 30g/L
乳酸 28g/L
硫酸Ni 20g/L
フタロシアニン銅 0〜1g/L
pH=4.5、90℃
とした。形成した無電解めっきによる保護層4は、Ni−P−Cu層であり、その組成は、Cuの含有量x[重量%]をx=0、0.005、0.01、0.05、0.1、0.15と変えることにより、Ni−12重量%P−0〜0.15重量%Cuとし、膜厚は、5μmとした。保護層4を形成した後、純水洗を行い、アルコール置換後、風乾させて、保護層4におけるCuの含有量xを異ならせた6個のサンプルを作製した。
[特性評価のための測定]
そして、無電解めっき皮膜の応力測定、磁束変化評価のための熱減磁測定および耐食性評価のための塩水噴霧試験を行った。
無電解めっき皮膜の応力測定は、銅板上に6個のサンプルの場合と同様の工程で、保護層4に相当する膜厚5μmの無電解めっきを行い、熱風循環式オーブンにて150℃で2時間保持後、室温まで徐冷し、ストリップ電着応力測定器(米国・エレクトロケミカル社製)なる応力テスタで応力測定を行ったものである。このような応力測定により、以下の結果が得られたものである。なお、図3は、このような熱処理後の皮膜応力測定の結果を示すグラフである。
Cu含有量x[重量%] 応力[kg/mm
x=0 18
x=0.005 6.1
x=0.01 4.2
x=0.05 7.8
x=0.1 12
x=0.15 23
また、初期磁束に対する磁束変化(減磁)の評価は、上述のように作製した5個のサンプルを、着磁後、加熱処理前のオープンフラックスを測定し、その後、上記の皮膜の応力測定の場合と同様に、熱風循環式オーブンにて150℃で2時間保持後、室温まで徐冷して、再度着磁し、加熱処理後のオープンフラックスを測定し、加熱処理前後の磁束変化率を評価したものである。ここで、磁束変化率は、
磁束変化率=(加熱処理後のオープンフラックス−加熱処理前のオープンフラックス)/加熱処理前のオープンフラックス
で示される。このような熱減磁測定により、以下の結果が得られたものである。
Cu含有量x[重量%] 磁束変化率[%]
x=0 −1.45
x=0.005 −0.95
x=0.01 −0.87
x=0.1 −0.99
x=0.15 −1.55
さらに、耐食性評価は、上述のように作製した5個のサンプルについて、温度35℃、5%中性NaCl溶液の条件による塩水噴霧試験(JIS Z2371)を行い、発錆面積を目視で測定・評価したものである。錆発生なしを○、一部赤錆発生(点錆)を△、錆、膨れ発生を×で示すと、塩水噴霧試験により表1に示すような結果が得られたものである。
Figure 2009176880
[特性評価]
磁束変化率は、初期磁束に対する磁束の減磁による劣化の程度を示すため、磁束変化率の値が小さい程、良好といえる。本実施例の熱減磁測定の結果によれば、保護層4におけるCu含有量xがx=0.005、x=0.01、x=0.1の場合には、Cuを含まない場合(x=0)と比べて磁束変化率が小さく、低減磁性が得られることが分る。一方、保護層4におけるCu含有量xがx=0.15の場合には、Cuを含まない場合(x=0)と比べて磁束変化率が大きくなって減磁が大きいことが分る。ここで、熱処理後の皮膜の応力測定結果によると、保護層4におけるCu含有量xがx=0.005〜0.1の場合には、皮膜応力が減少しているのに対し、保護層4におけるCu含有量xがx=0.15の場合には、含まない場合(x=0)以上に皮膜応力が大きくなっている。つまり、磁束変化率の大小は、熱処理後の皮膜の応力測定結果に対応しているといえる。よって、適量のCuの添加による保護層4の皮膜応力の低下が熱減磁の抑制効果に何らかの形で寄与しているためと推測される。
また、表1に示す耐食性評価結果によれば、保護層4がCuを含有しない場合(x=0)には、数時間で一部赤錆(点錆)が発生し、48時間後、96時間後といった翌日以降には錆や膨れの発生が確認されたものであり、耐食性が十分でないことが分る。一方、Cuを含有する保護層4を形成した場合には、数時間での錆の発生がなく、耐食性が向上していることが分る。特に、Cu含有量xがx=0.01やx=0.1の場合には、24時間経過しても錆の発生がなく、翌日以降であっても一部赤錆(点錆)の発生が認められる程度であり、耐食性が大幅に向上していることが分る。
よって、これらの測定結果を総合的に評価すると、磁石素体2の表面の最外層に形成するNi−P−Cu層からなる保護層4として、Cu含有量xを、0<x≦0.1重量%とすれば、低減磁性と耐食性の向上とを両立し得ることが分る。特に、Cu含有量xを、0.01≦x≦0.1重量%とすれば、低減磁性と耐食性とを大幅に向上させ得ることが分る。
本発明の実施の形態の永久磁石の構成例を示す斜視図である。 図1の中央縦断側面図である。 熱処理後の皮膜応力測定の結果を示すグラフである。
符号の説明
1 永久磁石
2 磁石素体
3 バッファ層
4 保護層

Claims (5)

  1. 金属磁石素体表面に、Cuの添加量xが0<x≦0.1重量%のNi−P−Cu層からなる保護層を有することを特徴とする永久磁石。
  2. Cuの添加量xが0.01≦x≦0.1重量%であることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石。
  3. 前記金属磁石素体表面と前記保護層との間に、バッファ層を有することを特徴する請求項1または2に記載の永久磁石。
  4. 前記バッファ層は、Cu層からなることを特徴とする請求項3に記載の永久磁石。
  5. 前記金属磁石素体は、希土類元素を含有する希土類磁石からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の永久磁石。
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