JP2009088195A - 希土類磁石及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 薄くても十分な耐食性が得られる保護層を有する希土類磁石を提供すること。
【解決手段】好適な実施形態の希土類磁石1は、希土類元素を含む磁石素体2と、この 磁石素体2の表面上に形成された保護層4とを有しており、保護層4が、 リン酸アルミニウム縮合皮膜から形成されている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、希土類磁石及びその製造方法に関する。
希土類元素を含む希土類磁石は、優れた磁力を有するものの、主成分として酸化されやすい希土類元素を含有していることから耐食性が低い傾向にある。そのため、希土類磁石は、希土類元素を含む磁石素体の表面上に樹脂やめっき等からなる保護層が設けられた構成とされることが多い。近年では、希土類磁石において、磁石素体そのものの耐食性が改善されている場合や、従来ほどの耐食性が要求されない用途に用いられる場合等のために、従来よりも簡便に且つ低コストで、ある程度以上の耐食性を発揮し得る保護層を形成できることが求められる場合も増えている。
このような保護層が形成された希土類磁石の例としては、下記特許文献1に、希土類系永久磁石表面に、アルミニウム微粒子と、クロム、モリブデン、タングステン、リンから選ばれる少なくとも一種の成分を含有する皮膜を有する永久磁石が開示されている。
特開2002−75767
ところで、希土類磁石は、様々な機器に搭載されて用いられるが、その搭載されるスペースに応じて希土類磁石の大きさも必然的に制限される。上述したような保護層を表面に有する希土類磁石においては、同じ大きさの希土類磁石を形成する場合、保護層が薄いほど、実際に磁気特性を発現する磁石素体の大きさを相対的に大きくできるため、より高い磁気特性が得られることになる。したがって、要求される耐食性が得られる限り、保護層はできるだけ薄いことが望ましい。
しかしながら、上述したようなアルミニウム微粒子を含む皮膜を有する希土類磁石は、低コストで形成可能なものであったが、アルミニウム微粒子自体がある程度以上の大きさを有していることから、薄くするのに限界があった。そのため、ある程度以上の耐食性を得ようとした場合、保護層の厚さが厚くなり易く、耐食性は十分でも磁気特性が低くなってしまう場合が多かった。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、薄くても十分な耐食性が得られる保護層を有する希土類磁石及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の希土類磁石は、希土類元素を含む磁石素体と、この磁石素体の表面上に形成された保護層とを有する希土類磁石であって、保護層が、リン酸アルミニウム縮合皮膜から形成されることを特徴とする。
本発明の希土類磁石の保護層であるリン酸アルミニウム縮合皮膜は、リン酸アルミニウムが縮合して形成される皮膜であるため、均一で緻密な構造を有しており、水分との接触等に対して安定であり、しかも、薄型化しても十分に膜形状を維持することができる。そのため、本発明の希土類磁石は、薄い保護層を形成した場合であっても、大気中の湿気等の侵入や保護層自体の劣化を生じ難く、十分な耐食性を維持することができる。
また、希土類磁石は、接着剤等を用いて所定の部材に接着されることによって種々の機器に搭載されることが一般的であるが、本発明において保護層を形成しているリン酸アルミニウム縮合皮膜は、上述の如く均一で緻密な構造を有することから、このような接着を行った場合に優れた接着性を発揮し得る。また、吸湿等による接着性の低下も少ないものである。したがって、本発明の希土類磁石は、他の部材に対する接着を極めて良好に行うこともできる。
上記本発明の希土類磁石は、保護層が、磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも1種と同じ金属元素を更に含むものであると好ましい。こうすれば、磁石素体と保護層とが同じ金属元素を含むこととなり、これらの密着性が良好となる。その結果、保護層が磁石素体から剥離することが極めて少なくなり、保護層が薄くても十分な耐食性を有する希土類磁石が一層得られ易くなる。
さらに、保護層が磁石素体と同じ金属元素を含む場合、保護層に含まれる金属元素のうちの少なくとも一種の濃度は、当該保護層の表面側から磁石素体側に向かって大きくなっているとさらに好ましい。こうなると、保護層と磁石素体との界面部分での金属元素の含有割合が最も高くなり、これにより両者の密着性が更に高くなるほか、保護層に応力が発生し難くなって、保護層におけるクラックの発生も大幅に抑制されるようになる。その結果、薄い保護層でも更に良好な耐食性が得られるようになる。
また、本発明の希土類磁石の製造方法は、上記本発明の希土類磁石を好適に製造する方法であって、希土類元素を含む磁石素体と、この磁石素体の表面上に形成された保護層とを有する希土類磁石の製造方法であり、磁石素体に、リン酸アルミニウムを含む処理液を付着させる工程と、磁石素体に付着した処理液中のリン酸アルミニウムを縮合させて、磁石素体の表面上にリン酸アルミニウム縮合皮膜から形成される保護層を形成する工程とを有することを特徴とする。
このような製造方法によれば、磁石素体にリン酸アルミニウムを付着させた後、磁石素体の表面で縮合させてリン酸アルミニウム皮膜を形成していることから、薄くても緻密な構造を有するリン酸アルミニウム縮合皮膜を簡便に形成することができる。
本発明によれば、薄くても十分な耐食性が得られる保護層を有し、しかも他の部材への接着も良好に行うことができる希土類磁石及びその製造方法を提供することが可能となる。
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略することとする。
図1は、本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石を示す斜視図である。また、図2は、図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。図示されるように、希土類磁石1は、磁石素体2と、その表面を覆うように形成された保護層4とから構成され、全体として略直方体の形状を有している。
まず、磁石素体2は、希土類元素を含有する永久磁石であり、希土類磁石として知られる組成のものを特に制限無く適用できる。磁石素体2に含まれる希土類元素とは、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。なお、ランタノイド元素には、例えば、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。
磁石素体2の構成材料としては、上記希土類元素と、希土類元素以外の遷移元素とを組み合わせて含有させたものが例示できる。この場合、希土類元素としては、Nd、Sm、Dy、Pr、Ho及びTbからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、これらの元素にLa、Ce、Gd、Er、Eu、Tm、Yb及びYからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含有したものであるとより好適である。
また、希土類元素以外の遷移元素としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも一種の元素が好ましく、Fe及び/又はCoがより好ましい。
より具体的には、磁石素体2の構成材料としては、R−Fe−B系やR−Co系のものが例示できる。前者の構成材料においては、RとしてNdを主成分とした希土類元素が好ましい。また、後者の構成材料においては、RとしてSmを主成分とした希土類元素が好ましい。
磁石素体2の構成材料としては、特に、R−Fe−B系の構成材料が好ましい。磁石素体2がR−Fe−B系のものであると、優れた磁石特性が得られるほか、保護層4の形成による耐食性向上効果がより良好に得られるようになる。
R−Fe−B系の磁石素体2は、実質的に正方晶系の結晶構造の主相を有し、この主相の粒界部分に希土類元素の配合割合が高い希土類リッチ相、及びホウ素原子の配合割合が高いホウ素リッチ相を有する構造となっている。これらの希土類リッチ相及びホウ素リッチ相は磁性を有していない非磁性相である。このような非磁性相は通常、磁石構成材料中に0.5〜50体積%含有されている。また、主相の粒径は、通常1〜100μm程度である。
このようなR−Fe−B系の構成材料においては、希土類元素の含有量が8〜40原子%であると好ましい。希土類元素の含有量が8原子%未満である場合、主相の結晶構造がα鉄とほぼ同じ結晶構造となり、保磁力(iHc)が小さくなる傾向にある。一方、40原子%を超えると希土類リッチ相が過度に形成されてしまい、残留磁束密度(Br)が小さくなる傾向にある。
また、Feの含有量は42〜90原子%であると好ましい。Feの含有量が42原子%未満であるとBrが小さくなり、また、90原子%を超えるとiHcが小さくなる傾向にある。さらに、Bの含有量は2〜28原子%であると好ましい。Bの含有量が2原子%未満であると菱面体構造が形成され易く、これによりiHcが小さくなる傾向にある。また、28原子%を超えると、ホウ素リッチ相が過度に形成されて、これによりBrが小さくなる傾向にある。
上述した構成材料においては、R−Fe−B系におけるFeの一部が、Coで置換されていてもよい。このようにFeの一部をCoで置換すると、磁気特性を低下させることなく温度特性を向上させることができる。この場合、Coの置換量は、Feの含有量よりも大きくならない程度とすることが望ましい。Co含有量がFe含有量を超えると、磁石素体2の磁気特性が低下する傾向にある。
また上記構成材料におけるBの一部は、炭素(C)、リン(P)、硫黄(S)又は銅(Cu)等の元素により置換されていてもよい。このようにBの一部を置換することによって、磁石素体の製造が容易となるほか、製造コストの低減も図れるようになる。このとき、これらの元素の置換量は、磁気特性に実質的に影響しない量とすることが望ましく、構成原子総量に対して4原子%以下とすることが好ましい。
さらに、iHcの向上や製造コストの低減等を図る観点から、上記構成に加え、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、ビスマス(Bi)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、銅(Cu)、ハフニウム(Hf)等の元素を添加してもよい。これらの添加量も磁気特性に影響を及ぼさない範囲とすることが好ましく、構成原子総量に対して10原子%以下とすることが好ましい。また、その他、不可避的に混入する成分としては、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)、カルシウム(Ca)等が考えられ、これらは構成原子総量に対して3原子%程度以下の量で含有されていても構わない。
保護層4は、リン酸アルミニウム縮合皮膜から構成される。リン酸アルミニウム縮合皮膜は、原料であるリン酸アルミニウムが脱水縮合して得られた、いわゆる縮合リン酸塩から構成されるものであると好ましく、主に、リン酸アルミニウムが、リン原子に結合している酸素を共有する形で高分子量化した構造を有する。リン酸アルミニウム縮合皮膜は、例えば、化学式としてxAl・yP・zHOで表される組成を有する。この組成において、好ましいx/yの範囲は、0.25〜0.6であり、0.35〜0.5であるとより好ましい。
なお、保護層4は、Al以外にNa、K、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Mn等の金属元素を含んでいてもよい。保護層4中に含まれる元素の量は、例えば、XRF(蛍光X線分析法)、EPMA(X線マイクロアナライザー法)、XPS(X線光電子分光法)、AES(オージェ電子分光法)又はEDS(エネルギー分散型蛍光X線分光法)等の公知の組成分析法を用いて測定することができる。
このリン酸アルミニウム縮合皮膜から形成される保護層4の厚さは、0.1〜5μmであると好ましく、0.2〜3μmであるとより好ましい。このような厚さの保護層4によれば、優れた耐食性が得られ、且つ、磁石素体の大きさも十分に維持して高い磁気特性を得ることもできる。この厚さが0.1μmよりも薄いと、十分な耐食性が得られなくなるおそれがある。一方、5μmを超えると、希土類磁石1における保護層4の割合が大きくなり過ぎ、一定のサイズとした場合の磁気特性が低くなる傾向にあるほか、保護層4にクラックが入りやすくなるおそれがある。なお、磁気特性よりも耐食性が要求される用途等においては、上記の範囲よりも厚い保護層4を有していてもよい。
保護層4は、リン酸アルミニウム縮合皮膜から構成されるが、磁石素体2に含まれる金属元素のうちの少なくとも1種と同じ金属元素を更に含むとより好ましい。例えば、保護層4は、磁石素体2に含まれる希土類元素や遷移元素のうちの一種又は二種以上を含むと好ましい。これらの金属元素は、保護層4において、化合物の状態で含まれていてもよい。
特に、保護層4は、磁石素体2に含まれる希土類元素を含むと好ましく、磁石素体2がNd−Fe−B系のものである場合、保護層4は、少なくともNdを含み、好ましくはNd及びFeを含むとより好適である。保護層4に含まれるこれらの金属元素は、磁石素体2に由来する金属元素、例えば、希土類磁石1の製造時に磁石素体2から保護層4に移動してきた元素であると特に好適である。
このように、保護層4が磁石素体2と同種の金属元素を含む場合、当該保護層4を厚さ方向(磁石素体2から表面までの厚さ方向)にみたとき、この金属元素は、保護層4の磁石素体2側から真中よりも表面側の領域にまで少なくとも含まれていると好ましく、保護層4の表面にまで(すなわち、保護層4の厚さ方向の全体)に含まれているとより好ましい。この場合、保護層4においては、上記の金属元素の少なくとも1種の濃度が、表面側から磁石素体2側に向かって大きくなっているとより好ましい。
保護層4がこのような構成を有していると、保護層4と磁石素体2との密着性が更に良好となる。また、保護層4に応力が発生し難くなり、クラックの発生が少なくなる。その結果、希土類磁石1の耐食性が更に向上する。なお、保護層4中の金属元素の濃度は、例えば、オージェ電子分光法によって測定することができる。この場合の濃度とは、かかる測定法によって測定された金属元素の総量に対する、該当する金属元素の割合をいう。
次に、上述した構成を有する希土類磁石1の製造方法の好適な実施形態について説明する。
希土類磁石1の製造においては、まず、磁石素体2を形成する。磁石素体2は、粉末冶金法によって製造することができる。この方法においては、まず、鋳造法やストリップキャスト法等の公知の合金製造プロセスにより所望の組成を有する合金を作製する。次に、この合金をジョークラッシャー、ブラウンミル、スタンプミル等の粗粉砕機を用いて10〜100μmの粒径となるように粉砕(粗粉砕)した後、更にジェットミル、アトライター等の微粉砕機により0.5〜5μmの粒径となるように微粉砕する。それから、こうして得られた粉末を、好ましくは600kA/m以上の磁場強度を有する磁場のなかで、0.5〜5t/cmの圧力で成形し、成形体を得る。
その後、得られた成形体を、好ましくは不活性ガス雰囲気又は真空中、1000〜1200℃、0.5〜10時間の条件で焼成する。焼成後、得られた焼結体を急冷してもよい。さらに、この焼結体に、必要に応じ、不活性ガス雰囲気又は真空中、500〜900℃で1〜5時間の熱処理を施したり、焼結体を切断加工又は研磨すること等によって所望の形状(実用形状)に加工したりして、磁石素体2を得る。
このようにして得られた磁石素体2に対し、表面の凹凸や表面に付着した不純物等を除去するため、適宜、洗浄を行う。洗浄は、例えば、酸溶液を用いた酸洗浄が好ましい。酸洗浄によれば、磁石素体2の表面の凹凸や不純物を溶解除去して平滑な表面を有する磁石素体2が得られ易くなる。
この酸洗浄で使用する酸としては、硝酸が好ましい。一般の鋼材にメッキ処理を施す場合、塩酸、硫酸等の非酸化性の酸が用いられることが多い。しかし、磁石素体2のように希土類元素を含む場合には、これらの酸を用いて処理を行うと、酸により発生する水素が磁石素体2の表面に吸蔵され、吸蔵部位が脆化して多量の粉状未溶解物が発生するおそれがある。この粉状未溶解物は、表面処理後の面粗れ、欠陥、密着不良等を引き起こす可能性があり、望ましくない。したがって、酸洗浄に用いる処理液には、上述した非酸化性の酸は含有させないことが好ましい。そこで、本実施形態では、水素の発生が少ない酸化性の酸である硝酸を用いることが好ましい。
酸洗浄に硝酸を用いる場合、処理液中の硝酸濃度は、好ましくは1規定以下、特に好ましくは0.5規定以下である。硝酸濃度が高すぎると、磁石素体2の溶解速度が速くなり過ぎて溶解量の制御が困難となり、特にバレル処理のような大量処理においてばらつきが大きくなって、製品の寸法精度の維持が困難となる傾向がある。一方、硝酸濃度が低すぎると、溶解量が不足する傾向がある。このため、硝酸濃度は1規定以下とすることが好ましく、特に0.5〜0.05規定とすることが好ましい。なお、処理終了時のFeの溶解量は、1〜10g/l程度であると好適である。
このような酸洗浄による磁石素体2の表面の溶解量は、表面から平均厚みで5μm以上、好ましくは10〜15μmとするのが好適である。こうすれば、磁石素体2の表面の加工による変質層や酸化層をほぼ完全に除去することができ、後述する保護層4の形成工程において、所望の保護層4をより精度よく形成することができる。
また、磁石素体2には、上記酸洗浄後、水洗により酸洗浄に用いた処理液を除去した後、表面に残存した少量の未溶解物や残留酸成分を完全に除去するために、超音波を使用した洗浄を実施することが好ましい。この超音波洗浄は、例えば、磁石素体2の表面に錆を発生させる塩素イオンが極めて少ない純水中や、アルカリ性溶液中等で行うことができる。この超音波洗浄後には、必要に応じて水洗を行ってもよい。
このようにして磁石素体2を形成した後、この磁石素体2の表面に、リン酸アルミニウムを含む処理液を付着させる。リン酸アルミニウムは、xAl・yP・zHOで表される化合物であり、x/yの範囲が、0.25〜0.6であるものが好ましく、0.35〜0.5であるものがより好ましい。
処理液を付着させる方法としては、例えば、磁石素体2の表面に処理液を滴下又は噴霧したり、磁石素体2を処理液中に浸漬したりする方法が挙げられる。磁石素体2の全面に均一に処理液を付着させる観点からは、磁石素体2を処理液中に浸漬することが好ましい。また、このように浸漬させることによって、磁石素体2中の金属元素が表面に付着した処理液中に移動し易くなり、上述した実施形態のような、磁石素体2と同種の金属元素を含む保護層4が得られ易くなる。具体的には、処理液の付着は、磁石素体2を溶液に浸漬させた後に引き上げ、更に磁石素体2を回転させること等により余分な処理液を振り切る、ディップスピンコート法によって行うことが好ましい。
処理液は、リン酸アルミニウムが溶媒に溶解した溶液であり、リン酸アルミニウムが水に溶解した水溶液であるとより好ましい。この処理液のリン酸アルミニウムの濃度は、無水物換算で0.1〜50質量%であると好ましく、1〜40質量%であるとより好ましい。この濃度が低すぎると、後述する縮合において、十分な分子量であり優れた耐食性を有するリン酸アルミニウム縮合皮膜が形成され難くなる傾向にある。一方、この濃度が高すぎると、処理液の粘度が高くなりすぎて均一な被膜を形成しにくくなる傾向にある。
処理液中には、リン酸アルミニウムの他、キレート剤が更に含まれていてもよい。キレート剤を更に含むことで、より均一で緻密なリン酸アルミニウム縮合皮膜を形成することができる。キレート剤を添加する場合、その量は、リン酸アルミニウム100質量部に対して10〜150質量部であると好ましい。
キレート剤としては、ホスホン酸系キレート剤やオキシカルボン酸系キレート剤が好適である。ホスホン酸系キレート剤としては、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸やこれらの塩が挙げられる。また、オキシカルボン酸系キレート剤としては、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マロン酸やこれらの塩が挙げられる。
なお、処理液中には、リン酸アルミニウムやキレート剤に加えて、保護層4に好適な添加成分が更に含まれていてもよい。例えば、磁石素体2と同種の金属元素の化合物等を処理液中に別途添加することで、保護層4中にこれらの金属元素が含まれるようにしてもよい。
磁石素体2の表面に上記のような処理液を付着させた後には、表面に付着した処理液中のリン酸アルミニウムを縮合させる。この縮合は、リン酸アルミニウムの脱水縮合であり、例えば、処理液が付着した磁石素体2を熱処理することによって生じさせることができる。加熱により縮合を生じさせる場合、熱処理温度は、150〜500℃とすることが好ましく、150〜350℃とすることがより好ましい。この温度が低すぎると縮合が十分に生じない傾向にあり、高すぎると、磁気特性が劣化する傾向にある。また、熱処理時間は、1分〜6時間であると好ましく、5分〜2時間であるとより好ましい。
このような縮合により、磁石素体2の表面に付着した処理液中のリン酸アルミニウムが縮合するとともに、処理液中の溶媒が揮発して除去され、その結果、リン酸アルミニウム縮合皮膜からなる保護層が形成される。その結果、上述した実施形態の構成を有する希土類磁石1が得られる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明を行ったが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、本発明の希土類磁石の構造は、上述した実施形態のものに限られず、リン酸アルミニウム縮合皮膜からなる保護層4の表面上に他の保護層を更に有していてもよい。また、希土類磁石の形状も直方体状に限られず、立方体状、円柱状等種々の形状を有することができる。
さらに、希土類磁石の製造方法において、リン酸アルミニウム縮合皮膜の形成メカニズムは、必ずしも脱水縮合に限られず、その他の縮合反応であってもよい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[希土類磁石の製造]
(実施例1)
まず、粉末冶金法により、組成が27.6Nd−4.9Dy−0.5Co−0.4Al−0.07Cu−1.0B−残部Fe(数字は重量百分率を表す。)である鋳塊を作製し、これを粗粉砕した。その後、不活性ガスによるジェットミル粉砕を行って、平均粒径約3.5μmの微粉末を得た。得られた微粉末を金型内に充填し、磁場中で成形した。次いで、真空中で焼結後、熱処理を施して焼結体を得た。得られた焼結体を20mm×10mm×2mmの寸法に切り出し加工し、磁石素体を得た。次に、得られた磁石素体を脱脂処理した後、超音波洗浄を行った。
その後、処理液として、リン酸アルミニウム水溶液(多木化学製タキアルファWR−100)を準備し、これをディップスピンコート法により磁石素体の表面に塗布した。それから、処理液が付着した磁石素体を180℃で1時間熱処理することによって、磁石素体の表面にリン酸アルミニウム縮合皮膜からなる保護層を有する希土類磁石を得た。この保護層の膜厚は約0.7μmであった。
このようにして得られた実施例1の希土類磁石について、オージェ電子分光法(アルバック・ファイ社製SAM680)により保護層に含まれる元素の深さ方向のプロファイルを分析した。その結果、保護層にはFe及びNdが含まれていることが確認された。このオージェ分光法による分析結果を図3に示す。図3において、横軸は、Arイオンによる希土類磁石のスパッタ時間であり、これは表面からの深さに比例する。また、縦軸は、該当するスパッタ時間において測定された各元素の強度から算出した各元素の濃度を示している。ただし、この算出には各元素の装置感度係数を用いていることから、異なる元素同士の比率については必ずしも正確ではない可能性もある。かかる分析においては、スパッタ時間0〜22分で保護層を、スパッタ時間37分以上で磁石素体をそれぞれ分析していると考えられる。また、これらの間の時間は、表面粗さの影響により、場所によって保護層又は磁石素体のいずれかを測定していると考えられる。
図3より、保護層の表面から磁石素体との界面に向かって、Nd、Feの濃度が徐々に大きくなっていることが確認された。
(比較例1)
まず、実施例1と同様にして磁石素体を作製した。次に、処理液として3号水ガラスを準備し、これをディップスピンコート法により磁石素体の表面に塗布した。それから、処理液が付着した磁石素体を150℃で20分熱処理することによって、磁石素体の表面に保護層を形成し、希土類磁石を得た。この保護層の膜厚は約0.7μmであった。
(比較例2)
まず、実施例1と同様にして磁石素体を作製した。次に、この磁石素体を、処理液であるリン酸亜鉛化成処理液に浸漬し、これにより磁石素体の表面上にリン酸亜鉛化成被膜からなる保護層を有する希土類磁石を得た。この保護層の膜厚は約20μmであった。
(比較例3)
まず、実施例1と同様にして磁石素体を作製した。また、処理液として、水1リットルにアルミニウム微粒子800gを均一に分散させ、さらに、無水クロム酸90g、リン酸330g、酸化マグネシウム72gを溶解したものを準備した。次いで、この処理液を、スプレー法により磁石素体の表面に塗布した。それから、処理液が付着した磁石素体を、350℃で1時間熱処理することによって、磁石素体の表面に保護層を形成し、希土類磁石を得た。この保護層の膜厚は約1μmであった。
[特性評価]
(塩水噴霧試験)
実施例1及び比較例1〜3の希土類磁石に対し、JIS K5600−7−1に準拠して、5%の塩水を用いた35℃での塩水噴霧試験を行った。
その結果、実施例1の希土類磁石では、試験開始後24時間経過した後でも錆の発生が見られなかった。これに対し、比較例1の希土類磁石では8時間後、比較例2の希土類磁石では3時間後、比較例3の希土類磁石では8時間後にそれぞれ錆の発生が見られた。
(接着性試験)
実施例1及び比較例1〜3の希土類磁石に、直径4.1mmのAl製スタッドピンをエポキシ系接着剤を用いてそれぞれ接着し、この接着剤を加熱して硬化させた。この接着後の各希土類磁石を、それぞれ60℃、95%RHの雰囲気に24時間放置した後、希土類磁石からスタッドピンを引き剥がす引張試験を行った。
その結果、実施例1及び比較例2の希土類磁石では、500Nの力を加えてもスタッドピンが剥離しなかったのに対し、比較例1の希土類磁石では270N、比較例3の希土類磁石では350Nでそれぞれ剥離が生じた。
本発明の好適な実施形態に係る希土類磁石を示す斜視図である。 図1に示す希土類磁石のII−II線に沿う断面構成を模式的に示す図である。 実施例1の希土類磁石の保護層のオージェ分光法による分析結果を示す図である。
符号の説明
1…希土類磁石、2…磁石素体、4…保護層。

Claims (4)

  1. 希土類元素を含む磁石素体と、該磁石素体の表面上に形成された保護層と、を有する希土類磁石であって、
    前記保護層が、リン酸アルミニウム縮合皮膜から形成される、ことを特徴とする希土類磁石。
  2. 前記保護層が、前記磁石素体に含まれる金属元素のうちの少なくとも1種と同じ金属元素を更に含む、ことを特徴とする請求項1記載の希土類磁石。
  3. 前記保護層に含まれる前記金属元素のうちの少なくとも一種の濃度は、当該保護層の表面側から前記磁石素体側に向かって大きくなっている、ことを特徴とする請求項2記載の希土類磁石。
  4. 希土類元素を含む磁石素体と、該磁石素体の表面上に形成された保護層と、を有する希土類磁石の製造方法であって、
    前記磁石素体に、リン酸アルミニウムを含む処理液を付着させる工程と、
    前記磁石素体に付着した前記処理液中のリン酸アルミニウムを縮合させて、前記磁石素体の表面上にリン酸アルミニウム縮合皮膜から形成される保護層を形成する工程と、
    を有することを特徴とする希土類磁石の製造方法。
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