JP2005255835A - 炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法 - Google Patents

炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を、化学的に穏やかに分解するため、炭素材料を劣化させずに回収することができ、高度な再利用が可能になること。
【解決手段】 炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法であり、アルカリ金属化合物と有機溶媒を含む処理液を用いて、樹脂硬化物を溶解及び/又は分解することにより、炭素材料と、樹脂硬化物の溶液及び/又は分解生成物とに分離することを特徴とする炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、航空機部品、自動車部品、運動器具、電気器具、その他各種構造材に用いられる炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を、アルカリ金属化合物と有機溶媒を含む処理液を用いて、樹脂硬化物を溶解及び/又は分解することにより、炭素材料と、樹脂硬化物の溶液及び/又は分解生成物に分離することを特徴とする炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法に関する。
酸無水物硬化エポキシ樹脂は、強度、耐熱性、電気特性、炭素材料との接着性等に優れるため、炭素材料/樹脂硬化物複合材料に広く利用されている。しかしながら、酸無水物硬化エポキシ樹脂は熱硬化するため、加熱しても溶融せず、汎用溶剤には不溶になるため、再利用が困難であった。そのため、粉砕等によって機械的に分離を行っているが、得られる樹脂硬化物と炭素材料の分離物の純度は著しく低く、再利用が困難である。また、粉砕された炭素繊維は繊維長が短く、再び炭素繊維/樹脂硬化物複合材料に使用した場合には、その強度は著しく低下する。
本発明者らは、下記特許文献1〜5において、常圧下、200℃以下の低い温度で、エポキシ樹脂硬化物を分解除去し、プリント配線板の回路を形成するための処理液として、アルカリ金属化合物、アミド系溶媒及びアルコール系溶媒からなるエッチング液を開示した(特許文献1〜5参照)。しかし、これらの発明はいずれも樹脂硬化物の一部分をエッチング除去することにより、電気回路等を形成することを目的とするものであり、炭素材料とエポキシ樹脂硬化物の分離を目的とするものではない。さらに、エッチング対象として、無機充填剤、無機繊維を含むことは必須ではなく、このことからも炭素材料と酸無水物硬化エポキシ樹脂の分離を目的とするものではないことは明らかである。
無機物/樹脂硬化物複合材料を分離する方法としては、下記特許文献6〜8等において、成形材料からシリカを分離回収するために、900℃以上の温度で樹脂を熱分解させる方法が開示されている(特許文献6〜8参照)。また、下記特許文献9において、熱硬化性樹脂の熱分解により無機物を回収する方法が開示されている(特許文献9参照)。これらの発明は、樹脂を熱分解してガス化するため、エネルギーとして再利用する方法以外には、樹脂分解物を再利用することはできない。また、樹脂を分解させるためには、通常300℃以上の高温が必要であり、炭素材料は変質して再利用できなくなる場合がある。
エポキシ樹脂を熱分解する方法としては、下記特許文献10において、水酸基の供給源とともに熱分解する方法が開示されているが、当該特許文献に記載されているように、熱分解に必要な温度は一般に370〜390℃である(特許文献10参照)。当該特許文献には、「樹脂の熱分解は、樹脂が約340〜900℃の温度範囲内、特に350℃〜450℃前後となるように加熱するのが好ましい」と述べている。したがって、300℃以下の温度で、特殊な溶媒及び触媒を用いて、エポキシ樹脂を分解することは、一般的な意味での「熱分解」には当たらないことは明らかである。
酸無水物硬化エポキシ樹脂はエステル結合を有しているが、エステル結合を多量に有する熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂硬化物がある。不飽和ポリエステル樹脂硬化物を化学的に分解する方法としては、例えば、下記特許文献11に示されるように塩基と親水性溶媒を用いる方法(特許文献11参照)、特許文献12に示されるように塩基と一価のアルコールを用いる方法(特許文献12参照)、下記特許文献13に示されるようにグリコールを用いる方法(特許文献13参照)、下記特許文献14に示されるようにジカルボン酸又はジアミンを用いる方法(特許文献14参照)、特許文献15に示されるようにジエタノールアミンを用いる方法(特許文献15参照)、特許文献16に示されるように超臨界アルコールを用いる方法(特許文献16参照)などがある。これらの方法は腐食性の化学物質を使用するため、安全性の点から好ましくない。また、腐食性の化学物質を使用しない場合には、分解速度が著しく遅くなるため、処理前に粉砕等の操作が必要となり、安全衛生面及び経済面から実用的ではない。また、超臨界あるいは亜臨界流体を用いる場合には、高圧容器を必要とするため、安全性及び経済性の点から好ましくない。
特開平8−325436号公報 特開平8−325437号公報 特開平8−325438号公報 特開平9−316445号公報 特開平10−126052号公報 特開平5−139715号公報 特開平6−87123号公報 特開2003−192828号公報 特開平7−330946号公報 特開平8−85736号公報 特開平8−113619号公報 特開平8−134340号公報 特開平8−225635号公報 特開平9−221565号公報 特開平9−316311号公報 特開2001−055468号公報
前記従来の技術に示したように、炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を分離する方法としては、熱分解による方法及び化学的な分解方法等がある。熱分解による方法では樹脂を再利用不可能な状態にしてしまい、化学的な分解方法では安全衛生面及び経済面から好ましくなかった。
本発明者らが詳細に検討した結果、従来技術では解決できなかった炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離技術の課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に記載の各事項に関する。
(1)炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法であり、アルカリ金属化合物と有機溶媒を含む処理液を用いて、樹脂硬化物を溶解及び/又は分解することにより、炭素材料と、樹脂硬化物の溶液及び/又は分解生成物とに分離することを特徴とする炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(2)大気圧下で樹脂硬化物の溶解及び/又は分解を行うことを特徴とする(1)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(3)アルカリ金属化合物が、アルカリ金属塩であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(4)アルカリ金属化合物が、アルカリ金属リン酸塩であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(5)有機溶媒が、アルコール類であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(6)有機溶媒が、モノアルコール類であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(7)処理液を250℃以下に加熱して、処理することを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(8)処理液を200℃以下に加熱して、処理することを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(9)炭素材料が、炭素繊維であることを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(10)炭素材料を再利用可能な状態で分離することを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(11)樹脂硬化物を溶液及び/又は分解生成物し、再利用可能な状態で分離することを特徴とする(1)または(2)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
(12)分離される処理前の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料が、1.0cm以上の大きさであることを特徴とする(1)〜(11)に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
本発明の分離方法によれば、炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を、化学的に穏やかに分解するため、炭素材料を劣化させずに回収することができ、高度な再利用が可能になる。また、樹脂硬化物も化学的に分解しているため、その後他の化学的な操作によって再利用可能な物質に変化させることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
炭素材料としては、炭素を主成分とする材料であればどのようなものでもよく、例えば、アクリルを原料とする炭素繊維、ピッチを原料とする炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、活性炭、ダイヤモンド、コークス、カーボンナノチューブ及びフラーレンがある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、炭素繊維を用いることが好ましい。
酸無水物硬化エポキシ樹脂の基本的な構成成分としては、エポキシ樹脂とその硬化剤である酸無水物であり、必要に応じて、例えば、架橋剤、硬化促進剤、触媒、エラストマ、難燃剤等を加えてもよい。更に、炭素材料以外の非相溶性材料を加えてもかまわない。
エポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等がある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。前記エポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもかまわない。
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、グリセロールトリストリメリテート、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、無水トリメリット酸等がある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、メチルテトラヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。
エポキシ樹脂に対する酸無水物の配合量としては、エポキシ基の硬化反応を進行させることができれば、特に限定することなく配合することができるが、エポキシ基1モルに対して、0.01〜5.0当量の範囲で用いることが好ましい。
酸無水物硬化エポキシ樹脂を硬化させる際には、必要に応じて硬化促進剤を配合してもよい。代表的な硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩、有機リン化合物等があるが、これらに限定されるものではない。
酸無水物硬化エポキシ樹脂の硬化方法としては、反応が進行すればどのような温度でもよいが、一般的には室温以上、250℃以下で硬化させることが多い。また、硬化の際の雰囲気は、大気中でも不活性気体中でもよく、大気圧下、減圧下及び加圧下のいずれでもよい。
アルカリ金属化合物としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属化合物であればどのようなものでもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムなどの金属、水素化物、水酸化物、ホウ水素化物、アミド化合物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、アルコラート、フェノラートなどがある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。アルカリ金属塩は、有害性が少ないことから好ましい。更に、アルカリ金属リン酸塩は、酸無水物硬化エポキシ樹脂を分解し、溶解する作用が強いことからより好ましい。また、前記化合物以外に、どのようなものを併用してもよく、不純物が含まれていてもかまわない。
有機溶媒としては、例えば、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系等の溶媒がある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、前記溶媒以外に、どのようなものを併用してもよく、不純物が含まれていてもかまわない。無機溶媒である水等を混合してもよい。
アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、カプロラクタム、カルバミド酸エステル等がある。
アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、 1−ブタノール、2− ブタノール、iso −ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、iso −ペンチルアルコール、tert −ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、4−メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜400)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、グリセリン、ジプロピレングリコール、ベンジルアルコール等がある。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ホロン、イソホロンアセチルアセトン、アセトフェノン等がある。
エーテル系溶媒としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセタール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセタール等がある。
エステル系溶媒としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソペンチル、イソ酪酸イソブチル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソペンチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、γ−ブチロラクトン、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、マロン酸ジエチル、サリチル酸メチル、エチレングリコールジアセタート、ホウ酸トリブチル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等がある。
上記の各種溶媒の中で、アルコール系溶媒は、エステル交換反応による分解作用が著しく、酸無水物硬化エポキシ樹脂の溶解性が高いことから好ましい。更に、水酸基を1個持つモノアルコールは、分解生成物の副反応が少ないことからより好ましい。
処理液としては、有機溶媒に対し、アルカリ金属化合物を0.001〜50wt%の任意の濃度で調整することが可能である。0.001wt%未満では樹脂硬化物の分解速度が著しく遅く、50wt%を超えると処理液を調整することが著しく困難である。0.01〜30wt%であることが好ましく、0.1〜20wt%であることが特に好ましい。0.1wt%未満では樹脂硬化物の分解速度が遅く、20wt%を超えると処理液中に多くの未溶解のアルカリ金属化合物が残存し、エポキシ樹脂の処理量が少なくなる。また、アルカリ金属化合物は必ずしも全てが溶解する必要はなく、全ては溶解していない飽和溶液においても、溶質は平衡状態にあり、アルカリ金属化合物が失活した場合にはそれを補い、特に有効である。
処理液を調整する際の温度としては、どのような温度でもよいが、常圧下で処理する場合には、使用する溶媒の融点以上、沸点以下であることが好ましい。また、処理液を調整する際の雰囲気は、大気中でも不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれでもよい。
上記のようにして得られた処理液に、界面活性剤等を添加して用いてもよい。
処理液を用いて炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を処理する条件としては、処理速度を調整するために、処理液を溶媒の融点以上、沸点以下の任意の温度で用いてもよい。
処理方法としては、例えば、炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を処理液中に浸漬することによって行い、処理速度を高めたり、超音波により振動を与えたりしてもよい。また、液中に浸さず、スプレー等による噴霧でもよく、さらに高圧をかけてもよい。
処理液の使用及び保存の際の雰囲気は、大気中でも不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下及び加圧下のいずれでもよい。安全性及び経済性を重視する場合には、常圧下であることが好ましい。
処理液で処理する際の温度としては、溶媒の融点以上、溶媒の沸点以下であればどのような温度でもよいが、室温以上、溶媒の沸点以下であることが好ましい。室温未満では冷却する必要があり、経済性の点から好ましくなく、有利な点もない。沸点を超えると加圧が不可欠となり、安全性及び経済性の点から好ましくない。分離した炭素材料及び樹脂分解物を再利用できる状態で得る点から、250℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることが特に好ましい。
処理液の加熱方法としては、どのようなものでもよく、例えば、処理液を直接ヒーターで加熱してもよく、処理液の入った容器をヒーターで間接的に加熱してもよい。また、例えば、オイル、水、蒸気のような熱媒を用いて加熱してもよい。
処理液で処理する時間としては、任意であるが、0.1〜100時間であることが好ましい。0.1時間未満では、酸無水物硬化エポキシ樹脂がほとんど溶解及び/又は分解せず、100時間を越えると著しく経済性に劣る。更に、0.2〜20時間であることがより好ましい。0.2時間未満では、酸無水物硬化エポキシ樹脂が溶解及び/又は分解する程度が十分ではなく、20時間を越えると経済的ではない。
処理液で処理する際には、処理液を撹拌してもよい。撹拌方法としては、どのようなものでもよく、例えば、撹拌羽根による方法、噴流を起こす方法、容器を揺動する方法、不活性気体の気泡を用いる方法、超音波による方法等がある。
処理液で処理する際の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の大きさとしては、どのようなものでもよい。破砕等による粉塵の発生は安全衛生上好ましくなく、塵肺及び爆発等の危険性がある。また、粉砕等の前処理は経済性の点から好ましくない。輸送時の利便性及び取り扱い易さ等を考慮して、できれば切断のみ、場合によっては破砕程度の前処理に止めるべきである。したがって、処理時の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の大きさとしては、各々が1.0cm以上であることが好ましい。
処理液による処理後に、炭素材料を樹脂硬化物の溶液及び/又は分解生成物から分離する方法としては、どのようなものでもよく、一般的には、ろ過、沈殿分離、遠心分離する方法がある。これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。分離した炭素材料は、例えば、水、有機溶媒等の溶剤によって洗浄し、乾燥してもよい。
分離した炭素材料並びに樹脂硬化物の溶液及び/又は分解生成物は、再利用することができる。
上記炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法としては、雰囲気は大気中でも不活性気体中でもよく、大気圧下、減圧下及び加圧下のいずれでもよいが、大気圧下で行うことが、経済性の点から好ましい。
本発明では炭素材料を再利用可能な状態で分離することが好ましい。なお、炭素繊維の場合における再利用可能な状態とは、再利用に充分な強度を保つ程度に分離操作に起因する炭素繊維の剥離やひびが少ない状態であり、表面には実質的に剥離やひびが無いことが好ましい。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180)100g、酸無水物100g、2−メチルイミダゾール1gを混合した後、10mmに切断した炭素繊維(繊維径10μm)100gを加え、さらに混合した。これを、縦100mm×横100mm×深さ3mmのテフロン(登録商標)製の型に入れ、室温で1時間放置した後、100℃/1時間+125℃/1時間+150℃/1時間+175℃/1時間+200℃/1時間の条件で加熱して、炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料を得た。ここから30mm×10mmを切り出し、試験片とした。
処理液は、アルカリ金属化合物1.0当量に対して、有機溶媒を1000gの割合で配合するために必要な各々の所定量を試験管に秤量し、室温で穏やかに撹拌して得た。処理に際しては、この処理液の入った試験管を、オイルバスを使用して150℃に加温した。試験片の樹脂がすべて溶解して炭素材料が実質100%の純度で回収できるまでの時間を測定した。
これと同様の方法で、炭素材料及び酸無水物を変えて試験片を作製し、また、アルカリ金属化合物及び有機溶媒を変えて処理液を作製した。比較例ではアルカリ金属化合物を配合しないで処理液を作製した。作製した試験片を、作製した処理液を用いて処理した結果を表に示す。
Figure 2005255835
略号:CF(炭素繊維)、CB(カーボンブラック)、
DGBPA(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)
MeTHPA(メチルテトラヒドロ無水フタル酸)、
MeHHPA(メチルヘキサヒドロ無水フタル酸)、
K3PO4(リン酸三カリウム)、NaOH(水酸化ナトリウム)
LiH(水酸化リチウム)
DGMM(エチレングリコールモノメチルエーテル)
BZA(ベンジルアルコール)
(比較例3)
CF、DGBPA、MeTHPAで構成される試験片を、恒温槽中で900℃/1hの条件で処理した結果、試験片はすべて熱分解し、残存しなかった。
(比較例4)
CF、DGBPA、MeTHPAで構成される試験片を、窒素を流しながら恒温槽中で700℃/1hの条件で処理した結果、樹脂のみが熱分解され、炭素繊維が回収できた。顕微鏡で観察した結果、炭素繊維の表面には剥離、ひびなどが存在し、劣化していることが分かった。
実施例1〜8と比較例1〜4を比較する。
比較例1〜2に示したように、アルカリ金属化合物を配合しないで有機溶媒だけを用いた場合には、酸無水物硬化エポキシ樹脂は48時間以内には溶解しなかった。
それに対して、実施例1〜8に示したように、アルカリ金属化合物と有機溶媒を併用した場合には、酸無水物硬化エポキシ樹脂は10時間前後に溶解した。
比較例3〜4に示したように、樹脂を熱分解することはできるが、空気中で熱分解した場合には、炭素材料も熱分解されて回収できず、窒素中で熱分解した場合には、炭素材料は回収できるが劣化がみられた。
本発明によれば、化学的に穏やかに分解するため、炭素材料を劣化させずに回収することができ、高度な再利用が可能になる。また、樹脂も化学的に分解しているため、その後他の化学的な操作によって、再利用可能な物質に変化させることができる。

Claims (12)

  1. 炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法であり、アルカリ金属化合物と有機溶媒を含む処理液を用いて、樹脂硬化物を溶解及び/又は分解することにより、炭素材料と、樹脂硬化物の溶液及び/又は分解生成物とに分離することを特徴とする炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  2. 大気圧下で樹脂硬化物の溶解及び/又は分解を行うことを特徴とする請求項1に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  3. アルカリ金属化合物が、アルカリ金属塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  4. アルカリ金属化合物が、アルカリ金属リン酸塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  5. 有機溶媒が、アルコール類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  6. 有機溶媒が、モノアルコール類であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  7. 処理液を250℃以下に加熱して、処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  8. 処理液を200℃以下に加熱して、処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  9. 炭素材料が、炭素繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  10. 炭素材料を再利用可能な状態で分離することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  11. 樹脂硬化物を溶液及び/又は分解生成物し、再利用可能な状態で分離することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
  12. 分離される処理前の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料が、1.0cm以上の大きさであることを特徴とする請求項1〜11に記載の炭素材料/酸無水物硬化エポキシ樹脂複合材料の分離方法。
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