JP4539130B2 - エポキシ樹脂硬化物用処理液、およびこれを用いた処理方法 - Google Patents

エポキシ樹脂硬化物用処理液、およびこれを用いた処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、絶縁材料、接着剤、塗料などに用いられるエポキシ樹脂硬化物の再利用を可能にする処理液およびこれを用いた処理方法に関する。
エポキシ樹脂硬化物は、機械的特性、電気特性、耐熱性、耐食性及び接着性などに優れているため、船舶、自動車、缶等の塗料用途、変圧器、各種絶縁材、ICの封止材、積層板等の電気・電子用途、コンクリートの補修、新旧コンクリートの打ち継ぎ、補強鋼板の接着等の土木建築用途、自動車部品、航空機部品、電子材料等の接着剤用途、ゴルフシャフト、テニスラケット等のスポーツ用品から、パイプ、防食タンク等の産業材料などの複合材料等、種々の分野で利用され、重要な役割を果たしている。
このようにエポキシ樹脂硬化物は優れた特性、汎用性を有するが、一方で、熱硬化性樹脂であるために、エポキシ樹脂硬化物を主原料とする成型品並びにエポキシ樹脂硬化物が接着あるいは塗布されている製品の再利用が困難である。これらの廃棄物による地球環境汚染は問題になっており、その処理および再資源化の早急な技術確立が求められている。また、力学的性質等を向上させるために配合する各種の充填材は、溶解させることが困難であり、これらの材料も再利用することができなかった。
このような問題に対する解決策として、種々の開示が為されている。エポキシ樹脂硬化物を溶解させる方法としては、プリント配線板の加工工程中で利用するエポキシ樹脂硬化物の粗化やエッチングがある。これらの処理は、表面粗化処理、デスミア処理、エッチバック処理などと称され、特許文献1や2においては、濃硫酸、クロム酸、アルカリ過マンガン酸塩などが処理液として使用されている。また、特許文献3では、エポキシ樹脂にアルカリに可溶なアクリル樹脂を添加して、エッチングする方法も検討されている。無機物と樹脂硬化物の分離を目的とする発明としては、特許文献4並びに特許文献5に示されるように、成形材料からシリカを分離回収するために900℃以上の温度で樹脂を熱分解させる方法がある。さらに、特許文献6には、熱硬化性樹脂の熱分解により無機物を回収する方法が示されている。エポキシ樹脂の熱分解法としては、特許文献7に示されるように、水酸基の供給源とともに熱分解する方法もある。
しかし、これらはどれもエポキシ樹脂硬化物の好ましい処理方法ではない。化学的に処理する方法は、腐食性の化学物質を使用するため人体への有害性、装置の安全性を考慮した場合好ましくない。すなわち、前述の濃硫酸、クロム酸、アルカリ過マンガン酸塩などを使用する方法は、特定化学物質に指定されている危険な薬品を用いるという問題があるばかりでなく、溶解速度が遅いという問題もあり、本発明の目的を果たすことは著しく困難である。しかしながら、腐食性の化学物質を使用しない場合には、処理速度が著しく遅くなるため、非効率で実用的ではない。
また、アクリル樹脂を添加する方法では、エポキシ樹脂の優れた耐熱性、電気特性等が、混合されたアクリル樹脂によって損なわれることが予想でき、好ましくない。
熱分解による従来方法は、必要な温度が、前述の特許文献7において「樹脂の熱分解は、樹脂が約340℃〜900℃の温度範囲内、特に350℃〜450℃前後となるように加熱するのが好ましい。」と記載されているように、一般的には370℃〜390℃とされている。したがって、酸素を含む雰囲気下での熱分解では、炭素原子並びに水素原子は酸化されてそのほとんどが二酸化炭素と水になり、樹脂の合成原料として再利用することは困難である。また、酸素を含まない雰囲気下での熱分解においては、炭素原子に結合した水素原子を脱離しやすく、主に炭素が生成し、これも樹脂原料として再利用することは難しい。
また、熱硬化性樹脂の熱分解により無機物を回収する方法は、樹脂を熱分解してガス化するため、エネルギーとしての再利用以外には、樹脂処理生成物を再利用することはできない。さらに、シリカ等の充填剤は変質して再利用できなくなる可能性がある。
本発明者らは、特許文献8〜12において、常圧下、200℃以下の低い温度で、エポキシ樹脂硬化物を分解除去し、プリント配線板の回路を形成するための処理液として、アルカリ金属化合物、アミド系溶媒、アルコール系溶媒からなるエッチング液を開示した。
しかし、これらの発明はいずれも樹脂硬化物の一部分をエッチング除去することにより、電気回路等を形成することを目的とするものであり、樹脂硬化物の分離あるいは剥離を目的とするものではない。
特開昭54−144968号公報 特開昭62−104197号公報 特開平5−218651号公報 特開平5−139715号公報 特開平6−87123号公報 特開平7−330946号公報 特開平8−85736号公報 特開平8−325436号公報 特開平8−325437号公報 特開平8−325438号公報 特開平9−316445号公報 特開平10−126052号公報
以上を鑑み、本発明は、通常熱分解に必要とされる温度以下で、効率的にエポキシ樹脂硬化物を処理でき、なおかつ腐食性を低減した処理液、およびこの処理液を用いた処理方法を提供し、これによりエポキシ樹脂硬化物の再利用を容易にしようとするものである。
この課題を解決するために、本発明では、下記(1)〜(8)をその特徴とする。
(1)エポキシ樹脂分解触媒、有機溶媒および水を含むことを特徴とするエポキシ樹脂硬化物用処理液。
(2)前記エポキシ樹脂分解触媒が、アルカリ金属化合物、リン酸類、リン酸類の塩、有機酸、有機酸の塩からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする上記(1)記載のエポキシ樹脂硬化物用処理液。
(3)前記有機溶媒が、アミド系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記(1)または(2)記載のエポキシ樹脂硬化物用処理液。
(4)処理対象となるエポキシ樹脂硬化物が、ハロゲン原子を含むものであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項記載のエポキシ樹脂硬化物用処理液。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか1項記載の処理液を用いて処理することを特徴とするエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
(6)処理中における処理液の温度が250℃以下であることを特徴とする上記(5)記載のエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
(7)大気圧下で処理することを特徴とする上記(5)または(6)記載のエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
(8)処理生成物が樹脂の合成原料として再利用可能な化合物を含むことを特徴とする上記(5)〜(7)のいずれか1項記載のエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
なお、本願発明中「処理」という用語は、エポキシ樹脂の結合を切断、分解またはエポキシ樹脂を溶解することを意味し、さらには、エポキシ樹脂から再利用可能なモノマーもしくはオリゴマー等の中低位分子化合物を得ることを意味する。特に、本発明の処理溶液中ではエポキシ樹脂硬化物が、その質量を減少させることも意味している。
本発明によれば、エポキシ樹脂硬化物を通常熱分解に必要とされる温度以下で、効率的かつ安全に処理することが可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
エポキシ樹脂は、末端に反応性のエポキシ基を持つ分子量が数百から約一万のオリゴマーであり、目的、用途に応じた硬化剤と組み合わせ硬化(橋かけ)することで上記特性を有するエポキシ樹脂硬化物となる。さらに、必要に応じて硬化促進剤、触媒、エラストマ、難燃剤などが添加されることもある。
本発明の処理対象となるエポキシ樹脂硬化物は、分子内にエポキシ基を有するものであればどのようなものでもよく、以下の例に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物などがある。これらは併用されていてもよく、エポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
このほかにも分子鎖の延長、末端エポキシ基の封止、末端エポキシ基の開環、他官能基の導入および末端基純度の調節等の変性された変性エポキシ樹脂でもよい。
本発明の処理対象となるエポキシ樹脂硬化物に添加されている硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させるために一般的に用いられているものであれば特に限定されず、多官能フェノール類、アミン類、イミダゾール化合物、酸無水物、有機リン化合物およびこれらのハロゲン化物などがある。
また、本発明の処理対象となるエポキシ樹脂硬化物には、硬化促進剤が配されていてもよい。代表的な硬化促進剤としては、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩等があるが、これに限定されるものではない。
さらには、エラストマ、難燃剤および触媒等これらに限定されない各種添加剤が、用途に応じて任意に添加されていてもよく、不純物等が含まれていてもよい。
本発明のエポキシ樹脂硬化物用処理液は、エポキシ樹脂分解触媒、有機溶媒および水を必須成分として含み、一般的に広く用いられているエポキシ樹脂を主原料とする成型品、もしくはエポキシ樹脂硬化物が絶縁材料、接着剤、塗料等として一部使用されている製品をその処理対象とし、これらの再利用を可能とするものである。
上記エポキシ樹脂分解触媒としては、アルカリ金属化合物、リン酸類、リン酸類の塩、有機酸、有機酸の塩からなる群より選択される1種以上を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂分解触媒の配合量は、有機溶媒中、好ましくは0.001〜80重量%、より好ましくは1〜30重量%の濃度で含まれる。エポキシ樹脂分解触媒の配合量が、0.001重量%未満では、エポキシ樹脂硬化物の分解速度が遅くなる傾向があり、80重量%を越えると処理液の調製が困難になる傾向がある。また、エポキシ樹脂分解触媒は必ずしもすべてが溶解している必要はなく、非溶解分が存在する飽和溶液においては、溶質は平衡状態にあり、溶解した触媒が失活した場合には非溶解分が溶解しそれを補うことになるので、そのような飽和溶液の使用も有用である。
上記アルカリ金属化合物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属を含む化合物であればどのようなものでもよく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等の水素化物、水酸化物、ホウ水素化物、アミド化合物、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩、アルコラート、フェノラートなどがある。中でもアルカリ金属塩は、有害性が少ないことから好ましい。これらの化合物は単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、不純物が含まれていてもかまわない。
上記リン酸類としては、リン酸、次リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ピロ亜リン酸などがある。また、上記リン酸類の塩は、前記リン酸類の陰イオンと、陽イオンとの塩であり、陽イオンの例としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、錫、アンモニウムなどのイオンがある。これらの塩は、1個の金属と2個の水素を有する第一塩、2個の金属と1個の水素を有する第二塩、3個の金属を有する第三塩のいずれでもよく、酸性塩、アルカリ性塩、中性塩のいずれでもよい。これらの化合物は単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、これらの化合物以外に、どのようなものを併用してもよく、不純物が含まれていてもかまわない。
上記有機酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、アジピン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アミノ安息香酸、アルギン酸、安息香酸、オレイン酸、ギ酸、クエン酸、グリコール酸、グルコン酸、グルタミン酸、ケイ皮酸、コハク酸、酢酸、サリチル酸、シュウ酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、ニコチン酸、乳酸、尿酸、ハロゲン置換酢酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、マロン酸、酪酸、リンゴ酸などがある。また、上記有機酸の塩は、前記有機酸の陰イオンと、水素以外の陽イオンとの塩であり、陽イオンの例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、パラジウム、亜鉛、アルミニウム、ガリウム、錫、アンモニウムなどのイオンがある。これらの塩は、1個の金属と2個の水素を有する第一塩、2個の金属と1個の水素を有する第二塩、3個の金属を有する第三塩のいずれでもよく、酸性塩、アルカリ性塩、中性塩のいずれでもよい。これらの化合物は単独で使用しても、数種類を混合して使用してもよい。また、これらの化合物以外に、どのようなものを併用してもよく、不純物が含まれていてもかまわない。
本発明の処理液に使用する有機溶媒としては、アミド系、アルコール系、ケトン系、エーテル系からなる群から選択される1種以上を好ましく用いることができる。そのほかにも、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、フェノール類、アセタール、脂肪酸、酸無水物、エステル、窒素化合物、硫黄化合物(ジメチルスルホキシド等)を用いることもできる。これら有機溶媒は単独で使用しても、数種類を組み合わせて使用してもよい。
上記アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、カプロラクタム、カルバミド酸エステル等がある。
上記アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、 1-ブタノール、2- ブタノール、iso -ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、iso -ペンチルアルコール、tert -ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール(分子量200〜400)、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ベンジルアルコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等がある。
上記ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ホロン、イソホロン等がある。
上記エーテル系溶媒としては、例えば、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセタール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等がある。
本発明の処理液には、溶媒としてさらに水が含まれる。水を添加することで処理中の処理液の温度を通常熱分解に必要とされる温度以下にすることが可能となる。処理液中の水の配合量は、0.01〜10重量%の範囲が好ましい。0.01重量%未満では水の効果が顕れず、10重量%を超えると処理温度を100℃以上とした場合に、温度の制御が難しくなる。水の添加方法としては、水そのものを添加する方法のほか、エポキシ樹脂分解触媒として、その水和物を用い、水の添加とすることもできる。処理液中の水の配合量の調製を容易にするためには、あらかじめ乾燥し含有水分を除去したエポキシ樹脂分解触媒を用い、水は別途添加することが好ましい。
本発明の処理液を調整する際の溶媒の温度はどのような温度で行っても良く、使用する溶媒の融点以上沸点以下が好ましい。また、処理溶液を調整する際の雰囲気は、大気中でも、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下、加圧下のいずれでもよい。
また、このようにして得られた処理溶液に界面活性剤等の添加物を任意に添加して使用してもかまわない。
本発明の処理方法は、好ましくは本発明の処理液に処理対象であるエポキシ樹脂硬化物を浸漬させる。もちろん、浸漬に限定されず、例えばスプレー等により処理溶液を噴霧、塗布することもできる。浸漬の場合には、処理液をゆっくり攪拌したり、超音波などにより振動を与えても良い。
処理する際の処理液の温度は、その時に使用される溶媒または処理溶液によって決定されるが、処理液の状態が液体であればよい。また、所望の処理速度の調整、処理のしやすさ等のために加温、加圧することも有効であり、この場合にも、処理液の状態を液体に保つ。処理後の回収材の品質低下を防ぐためには、250℃以下の温度で処理することが好ましく、220℃以下の温度で処理することがさらに好ましい。
処理時の雰囲気は、大気中でも、窒素、アルゴン、二酸化炭素等の不活性気体中でもよく、常圧下、減圧下、加圧下のいずれでもよいが、安全性、効率および処理の容易さを重視する場合には、常圧下である方が好ましい。
また、処理されるエポキシ樹脂硬化物の大きさは、特に制限されないが、処理効率、コスト等の点から0.1cm以上100cm以下にすることが好ましい。100cmを超える大きさの場合には、破砕等により処理対象物の大きさを調整し、上記範囲内とすることが好ましい。破砕には、たとえば、衝撃式破砕機、せん断式破砕機、圧縮式破砕機、スタンプミル、ボールミル、ロッドミルなどによって行うことができる。
本発明の主な処理対象の1つとして考えられる一般的なプリント配線板が処理対象物である場合、処理前に破砕等の調整を行わずに、そのままで本発明の処理溶液に浸漬、もしくは処理溶液を塗布することで処理することが可能である。もちろん、処理効率、処理のしやすさ等のために破砕を行ってから処理してもよい。
本発明の処理方法を用いて処理されたエポキシ樹脂硬化物の処理生成物は、工業的に有用な樹脂を得るための原料として有効に再利用されうる。
本発明による処理生成物は、有機化合物であれば特に限定されないが、樹脂の合成原料として再利用可能な化合物であればより好ましい。樹脂の合成原料として再利用可能な化合物としては、特に限定されないが、例えば、フェノール類、フェノール類のグリシジルエーテル化物、フェノール類の金属塩、アミン類、カルボン酸類及びこれらのハロゲン化物、水添化物がある。また、これらの化合物を工業的に生産する際の原料も含まれ、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノール、プロピルフェノール、エチルフェノール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、及びこれらのグリシジルエーテル化物、ハロゲン化物、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などがある。
さらに、一度以上使用された処理溶液は、必要とあれば必須成分であるエポキシ樹脂分解触媒、有機溶媒、水を補充添加することで、新たなエポキシ樹脂硬化物を処理するために繰り返し使用することが可能である。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
(実施例1)
臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量400)750gとビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量560)150gを併用し、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂230g、促進剤にイミダゾール5.7gを使用し、臭素含有量20%の樹脂板を作製した。樹脂板は、厚さ約1.0mmとし、真空プレスを用いて170℃、90分間加熱硬化して得た。これを、10mm×30mmに切断して試験片とし、この質量測定を行った。
処理液は、エポキシ樹脂分解触媒としてリン酸三カリウム水和物を乾燥処理したもの5.66g、有機溶媒としてN−メチルピロリドン80gおよび水0.8gを四つ口フラスコに秤量し、室温で穏やかに撹拌して調製した。なお、リン酸三カリウム水和物の乾燥処理は、300℃の乾燥機中で1時間加熱して行った。乾燥後の水分量をカールフィッシャー滴定法により測定した結果、1.2%であった。
処理に際しては、処理液が入ったフラスコにコンデンサ、温度計、窒素導入口を取り付け、窒素気流中で穏やかに撹拌しながら、オイルバスを使用して180℃に加温した。ついで、上記試験片を加温された処理液中に浸漬し、4時間後に取り出して再び質量を測定した。処理前後の質量変化から、樹脂硬化物の溶解率を算出した。表1に結果を示す。
(実施例2)
処理液を200℃に加温して処理を行った以外は、実施例1と同様にして試験片の処理を行い、その溶解率を測定した。結果を表1に示す。
参考例3)
処理液の有機溶媒として、N−メチルピロリドンに替えてジエチレングリコールモノメチルエーテルを用いて処理液を調製した以外は、実施例1と同様にして試験片の処理を行い、その溶解率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例1)
処理液中に水を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして試験片の処理を行い、その溶解率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
処理液中に水を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして試験片の処理を行い、その溶解率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例3)
処理液中に水を添加しなかった以外は、参考例3と同様にして試験片の処理を行い、その溶解率を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0004539130
表に示したように、エポキシ樹脂分解触媒、有機溶媒に加え、水を添加した処理液を用いた実施例1〜の溶解率は、それぞれの実施例の処理液において水を添加しなかった比較例1〜3の溶解率と比較して、いずれも高いことがわかる。

Claims (6)

  1. エポキシ樹脂分解触媒、有機溶媒および水を含むエポキシ樹脂硬化物用処理液であって、エポキシ樹脂分解触媒がリン酸三カリウム水和物の乾燥品であり、有機溶媒がN−メチルピロリドンであり、水の含有量が処理液の0.01〜10重量%となるように水を添加して製造されたものであることを特徴とするエポキシ樹脂硬化物用処理液。
  2. 処理対象となるエポキシ樹脂硬化物が、ハロゲン原子を含むものであることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂硬化物用処理液。
  3. 請求項1または2記載の処理液を用いて処理することを特徴とするエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
  4. 処理中における処理液の温度が250℃以下であることを特徴とする請求項記載のエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
  5. 大気圧下で処理することを特徴とする請求項または記載のエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
  6. 処理生成物が樹脂の合成原料として再利用可能な化合物を含むことを特徴とする請求項のいずれか1項記載のエポキシ樹脂硬化物の処理方法。
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