JP2005254508A - 積層フィルムおよび包装袋 - Google Patents

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Abstract

【課題】 容器内壁が内容品の有効成分を取込んだり、容器の構成材料自体に用いられている低分子量成分(残留モノマーやその多量体など)が内容品中に溶出して2〜5μm程度の微粒子を発生させたり、内容品の劣化や変性などを引き起こしたりすることがなく、更に、容器内壁のヒートシール性に優れ、しかも110℃以上の高圧蒸気滅菌処理によっても容器の変形や液漏れが発生しない包装袋、及び当該包装袋を形成可能な積層フィルムを提供する。
【解決手段】 基材層とシーラント層とを含む積層フィルムにおいて、前記基材層が融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、かつ、前記シーラント層がガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことを特徴とする積層フィルム、及び、前記積層フィルムを用いて形成した包装袋。
【選択図】 なし

Description

本発明は、内容物の成分が容器内壁に吸着したり、容器から内容物へ低分子量成分が溶出したりすることによる、内容物の組成変化や内容物汚染のおそれが可及的に低減され、しかも、110℃以上の高圧蒸気滅菌処理によっても容器の変形や液漏れが発生しない包装袋、及び当該包装袋を形成可能な積層フィルムに関する。
医療分野においてはプラスチック容器を用いて医薬品を保存・流通させることが一般的であり、また、該プラスチック容器の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が一般的である。内容液を容器に収容するに際しては、容器に内容液を充填・密封した後、110℃以上の温度にて高圧蒸気滅菌処理が通常行なわれる。
ここで、ポリエチレンやポリプロピレン等が容器内壁として用いられた容器に特定の内容物が収容されて上記高圧蒸気滅菌処理が施される場合には、内容物の成分組成が変化する場合がある。例えば微量の元素(例えばマンガンなど)、ビタミン類、硝酸イソソルビト等を有効成分として含有する投与薬剤が内容物となる場合、容器内壁にこれらの成分が吸着され使用の際に有効成分が完全には投与されないといった場合がある。
一方、プラスチック容器の材質には未反応モノマーや各種添加剤といった低分子量成分が含まれていることが多く、ポリエチレンやポリプロピレン等が容器内壁として用いられている場合には、容器の構成部材に含まれる上記低分子量成分が内容液中に溶出し、それらが内容液中の各種成分と反応して副生物が生成してしまう場合もある。
このような問題を解決するため、例えば特許文献1:再表99/039679号公報には、環状オレフィンコポリマーを使用した容器が提案されている。しかし、この容器は内側よりポリオレフィン、環状オレフィンコポリマー、ポリオレフィンの順の層構成となっており、内容液に直接接触するポリオレフィン自体の厚みを薄く設定することにより内容液成分の吸着や収着を少量に抑えることができるものの、内容液成分の吸着や収着が生じることに変わりはない。
また、特許文献2:特開2001−157704号公報、特許文献3:特開2001−157705号公報には、ポリエチレンやα−オレフィンポリマー、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・α−オレフィン・他オレフィン系モノマー三元共重合体と、環状オレフィンの開環重合体若しくはその水素添加体との混合物、又は、環状オレフィンの開環重合体若しくはその水素添加体を用いて中間層を構成する輸液用包装材料が提案されている。しかし、これらの包装材料においても容器を形成する際に内容物と接触する最内層としてはLDPEやLLDPEなどのオレフィン系樹脂を使用するものであり、内容液成分の吸着や収着が生じることに変わりはない。
更に、容器からの微量成分の内容物への溶出を解決することを目的として、特許文献4:特許第3227709号公報には最内層に熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーを使用する医療用または食品包装用容器が、また、特許文献5:特開平5−277154号公報には、α−オレフィンに由来する繰り返し単位と環状オレフィンに由来する繰り返し単位とを有し、且つガラス転移温度(Tg)が70℃以下である環状オレフィン系共重合体を用いて容器最内層を構成した医療用輸液バッグが提案されている。しかしながら、これらのいずれの容器においても、110℃以上の高圧蒸気滅菌への適性という点からはなお改善の余地があった。
再表99/039679号公報 特開2001−157704号公報 特開2001−157705号公報 特許第3227709号公報 特開平5−277154号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、容器内壁が内容品の有効成分を取込んだり、容器の構成材料自体に用いられている低分子量成分(残留モノマーやその多量体など)が内容品中に溶出して2〜5μm程度の微粒子を発生させたり、内容品の劣化や変性などを引き起こしたりすることがなく、更に、容器内壁のヒートシール性に優れ、しかも110℃以上の高圧蒸気滅菌処理によっても容器の変形や液漏れが発生しない包装袋、及び当該包装袋を形成可能な積層フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、シーラント層により内壁面が形成される包装袋を構成するに際し、前記シーラント層としてガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むシーラント層を採用し、かつ前記シーラント層に積層されて前記包装袋の外壁面を形成する基材層として融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として含む基材層を採用することにより、内容物の成分が容器内壁に吸着したり、容器から内容物へ低分子量成分が溶出したりする虞が可及的に低減され、しかも良好なヒートシール性と耐熱性とを具備した包装袋が実現可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、以下の包装袋、及び当該包装袋を形成可能な積層フィルムを提供する。
請求項1:
基材層と、基材層の一面側に積層されたシーラント層とを含む積層フィルムにおいて、前記基材層が融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、かつ、前記シーラント層がガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことを特徴とする積層フィルム。
請求項2:
前記ポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、または下記(A)成分を含むプロピレン系共重合体組成物である請求項1記載の積層フィルム。
(A)成分:プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であって、温度上昇溶離分別法(温度:0〜140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用いた場合に、0℃での溶出分の割合が全溶出量に対して15質量%以上50質量%以下、60℃以上90℃以下での溶出分の割合が全溶出量に対して5質量%以上15質量%未満であるプロピレン系共重合体。
請求項3:
前記プロピレン系共重合体組成物が、さらに下記(B)成分を含む請求項2記載の積層フィルム。
(B)成分:プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であって、温度上昇溶離分別法(温度:0〜140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用いた場合に、0℃での溶出分の割合が全溶出量に対して0質量%以上25質量%以下、60℃以上90℃以下での溶出分の割合が全溶出量に対して15質量%以上70質量%以下であるプロピレン系共重合体。
請求項4:
前記環状ポリオレフィン系樹脂が、ノルボルネン系モノマーを重合して得られるポリノルボルネン系樹脂の1種または2種以上の組合せである請求項1,2又は3記載の積層フィルム。
請求項5:
前記環状ポリオレフィン系樹脂が、ガラス転移温度100℃未満の環状ポリオレフィン系樹脂を30質量%以下含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
請求項6:
請求項1乃至5のいずれかに記載の積層フィルムを用いて形成した包装袋。
請求項7:
さらに、ガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むポート部材が設置された請求項6記載の包装袋。
請求項8:
輸液、薬液、X線造影剤、ホルモン剤、放射性医薬品、循環器官用剤、消化器系製剤、蛋白アミノ製剤、循環器系製剤、酵素製剤、代謝性医薬品、抗生物質、抗炎症薬、腫瘍薬、生物学的製剤等の医薬品又はビタミン剤、微量元素等を収容する医療用容器である請求項6又は7記載の包装袋。
本発明の包装袋は、内容物の成分が容器内壁に吸着する虞が可及的に低減され、また、容器から内容物へ低分子量成分等が溶出したりすることによる内容物の組成変化又は内容物汚染の虞が可及的に低減された包装袋である。しかも、本発明の包装袋は110℃以上の高圧蒸気滅菌処理によっても袋の変形や液漏れが発生しないため、特に輸液、薬液、X線造影剤、ホルモン剤、放射性医薬品、循環器官用剤、消化器系製剤、蛋白アミノ製剤、循環器系製剤、酵素製剤、代謝性医薬品、抗生物質、抗炎症薬、腫瘍薬、生物学的製剤等の医薬品又はビタミン剤、微量元素等を収容する医療用容器として好適である。さらに本発明の包装袋は、内容物の成分が容器内壁に吸着する虞が可及的に低減され、また、容器から内容物へ低分子量成分等が溶出したりすることによる内容物の組成変化又は内容物汚染の虞が可及的に低減された包装袋であるため、110℃以上の高圧蒸気滅菌処理を行わない内容液、あるいは粉末状、固形状、半固形状の内容物を包装する包装袋としても利用することが可能である。また、本発明の積層フィルムは、前記包装袋を形成するに際し好適に適用可能な積層フィルムである。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明の積層フィルムは、基材層と、基材層の一面側に積層されたシーラント層とを含む積層フィルムにおいて、前記基材層が融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、かつ、前記シーラント層がガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことを特徴とする積層フィルムであり、また、本発明の包装袋は、前記積層フィルムを用いて形成した包装袋である。
ここで、本発明の包装袋としては、前記積層フィルムのシーラント層により内壁面が形成される包装袋であって、かつ前記シーラント層に積層された基材層により外壁面が形成された包装袋であることが好適である。
本発明の積層フィルムは、シーラント層としてガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として採用しているため、包装袋滅菌(レトルト滅菌)時にも十分な耐熱性を有し、かつ内容物中の有効成分をシーラント層が吸着するといった不都合のおそれを可及的に低減することが可能である。
ここで、従来、ガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とするシーラント層を採用する場合、容器を形成するための積層フィルム同士あるいは積層フィルムとポート部材とのシール性に著しく劣る場合や、シール時にシール部が変形したり、シールエッジ部が破断したりするといった不都合が生じる場合があった。しかしながら、本発明においては基材層として融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として採用し、かつ当該基材を前記シーラント層と併用することにより、包装袋を形成するためのシール時にシール部が変形したり、シールエッジ部が破断したりするといった不都合を解消しているのみならず、詳細は明らかでないが、シーラント層のヒートシール性をも向上させている。このようなシーラント層と基材層とを組み合わせた積層フィルムにて形成される本発明の包装袋は、包装袋滅菌(レトルト滅菌)時にも十分な耐熱性を有し、しかも柔軟性及び落下強度にも優れる包装袋である。
本発明の積層フィルムにおいて、前記基材層を構成する材料としては、融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として含むものが用いられる。本発明において「主成分」とは、着目する成分が、当該成分が含まれるマトリックス全体に占める割合が50質量%以上であることを意味するものであり、上記の場合には、融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂が、前記基材層を構成する材料全体中に占める割合が50質量%以上であることを意味する。
本発明において、融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂が、前記基材層を構成する材料全体中に占める割合としては50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であっても良い。また、本発明において基材層に主成分として含まれるポリオレフィン系樹脂の融点としては、110℃以上、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、上限として220℃以下、好ましくは210℃以下である。融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂が、基材層中に占める割合が50質量%未満であったり、基材層に主成分として含まれる前記ポリオレフィン系樹脂の融点が110℃未満であったりすると、包装袋を形成するためのシール時にシール部が変形したり、シールエッジ部が破断する場合があり、また110℃以上の高圧蒸気滅菌を行った場合に包装袋が変形・破袋したり、あるいは液漏れして本願発明の目的を達成し得ない。
なお、本発明において「融点」とは、JIS K7121(DSC)にて測定した融解ピーク温度の値を意味する。
前記融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、又は下記(A)成分を含むプロピレン系共重合体組成物であることが、耐熱性と柔軟性と透明性の観点から特に好適である。また、下記(B)成分を(A)成分と共に併用したプロピレン系共重合体組成物であることが、表面のべたつき感を低減させ、適度なコシを付与することができるため特に好適である。
(A)成分:プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であって、温度上昇溶離分別法(温度:0〜140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用いた場合に、0℃での溶出分の割合が全溶出量に対して15質量%以上50質量%以下、60℃以上90℃以下での溶出分の割合が全溶出量に対して5質量%以上15質量%未満であるプロピレン系共重合体。
(B)成分:プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であって、温度上昇溶離分別法(温度:0〜140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用いた場合に、0℃での溶出分の割合が全溶出量に対して0質量%以上25質量%以下、60℃以上90℃以下での溶出分の割合が全溶出量に対して15質量%以上70質量%以下であるプロピレン系共重合体。
ここで、温度上昇溶離分別法(Temperature Rising Elution Fractionation;TREF)とは、ポリマーの組成分布を分析する公知の方法であって、原理的には個々のポリマー成分が異なる結晶構造を有するため溶媒中での析出速度あるいは溶解速度が個々のポリマー毎に異なることを利用して、ポリマーの組成分布を分析する方法である。即ち、高温でポリマーを溶媒に完全に溶解させた後に不活性坦体の存在下で徐々に冷却すると、まず結晶化し易い高結晶性のポリマー成分が前記不活性担体の表面に先に析出してポリマー層が形成され、その後、結晶化しにくい低結晶性あるいは非晶性のポリマー成分が析出してポリマー層が形成されることとなる。次に、このようにポリマー層を形成後、連続的又は段階的に昇温すると、今度は低結晶性あるいは非晶性のポリマー成分から溶出し、最後に高結晶性ポリマー成分が溶出することとなる。つまり、この各温度での溶出量と溶出温度とによって描かれる溶出曲線から、ポリマーの組成分布を分析することが可能となる。本発明においては、温度上昇溶離分別法に用いる溶媒としてo−ジクロロベンゼンを使用し、温度範囲として0〜140℃を採用している。
本発明において、上記(A)成分の0℃での溶出量が全溶出量に対して占める割合としては15質量%以上、好ましくは18質量%以上、上限として50質量%以下、好ましくは40質量%以下である。当該割合が小さすぎると、プロピレン系共重合体組成物の柔軟性が低下し、内容液の排出を容易に行なうことができず、本願発明の効果が達成されない場合があり、しかも、作成された包装袋の感触が強ばり、落下強度が劣る傾向となる。一方、当該割合が大きすぎると、110℃以上の滅菌処理を施した場合に、包装袋の外面にべたつき感が発生する場合があり、滅菌処理時に他の包装袋とスティッキングを発生させる場合がある。この傾向は、121℃の滅菌処理を行なうとより顕著にあらわれる。
また、上記(A)成分の60℃以上90℃以下での溶出量が全溶出量に対して占める割合としては5質量%以上、好ましくは6質量%以上、上限として15質量%未満、好ましくは10質量%以下である。当該割合が小さすぎると、プロピレン系共重合体組成物の透明性に劣る場合があり、一方、当該割合が大きすぎると、プロピレン系共重合体組成物の耐熱性に劣り、得られた包装袋が110℃での滅菌処理時に変形してしまう場合がある。この傾向は、121℃の滅菌処理を行なうとより顕著にあらわれる。また包装袋を形成するためのシール時にシール部が変形したり、シールエッジ部が破断する場合がある。
本発明において、上記(B)成分の0℃での溶出量が全溶出量に対して占める割合としては0質量%以上、好ましくは2質量%以上、上限として25質量%以下、好ましくは15質量%以下である。当該割合が大きすぎると、110℃以上での滅菌処理を施した場合に包装袋が変形したり、包装袋表面にべたつき感が生じる場合がある。
また、上記(B)成分の60℃以上90℃以下での溶出量が全溶出量に対して占める割合としては15質量%以上、好ましくは20質量%以上、上限として70質量%以下、好ましくは60質量%以下である。当該割合が小さすぎると、包装袋に適度なコシを持たせることができない場合があり、一方、当該割合が大きすぎると、プロピレン系共重合体組成物の耐熱性が劣り、作成された容器が110℃以上の滅菌時に包装袋が変形する場合がある。この傾向は、121℃の滅菌処理を行なうとより顕著にあらわれる。
本発明における前記プロピレン系共重合体組成物としては、前記(A)成分を主成分(50質量%以上、好ましくは55質量%以上)として含むものであることが好適であり、前記(A)成分単独であっても良いが、前記(B)成分を前記(A)成分と併用することも好適である。(A)成分は、耐熱性と柔軟性に優れる成分であり、(B)成分は、耐熱性に優れ、かつ前記最外層に適度なコシを与えることが可能な成分であって包装袋の後工程での取り扱い性を向上させることができる。(B)成分を(A)成分に配合することにより、得られた包装袋を110℃以上で滅菌処理した後であってもべたつき感がなく、透明性と柔軟性、コシを合わせ持った状態を維持することが可能である。
なお、(B)成分が、前記プロピレン系共重合体組成物中に占める割合としては通常50質量%以下、好ましくは45質量%以下である。(B)成分の配合比率が50質量%を超えると、包装袋が硬くなり、内容液の排出性に劣り、医療用として適さない包装袋となる場合がある。
前記(A)成分と(B)成分との配合比としては、通常(A)成分:(B)成分=100:0〜50:50(質量比)、好ましくは98:2〜55:45、より好ましくは90:10〜60:40(質量比)の割合である。(A)成分の配合比が小さすぎると、得られた包装袋の柔軟性が低下し、搬送、外層包装などの後工程などで破袋の危険が高まったり、排出性に問題が発生する場合がある。
上記(A)成分および(B)成分のプロピレン系共重合体は、プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体である。
ここで、上記炭素数4〜8のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、3−メチルブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1、へキセン−1、オクテン−1等が挙げられ、これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することも可能である。
本発明における上記プロピレン系共重合体成分としてより具体的には、プロピレンとエチレンとからなる共重合体成分、又はプロピレンとエチレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であることが好ましく、炭素数4〜8のα−オレフィンとしてはブテン−1を採用することが好適である。
このような上記(A)成分および(B)成分のプロピレン系共重合体の製造方法としては、例えば下記(i)〜(iii)の方法、
(i)少なくとも二段以上の逐次重合を行なうに際し、一段目重合時においてプロピレン単独重合体、またはプロピレンと少量のエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンを導入してランダム共重合体を製造した後、二段目以降の重合時において、前段で得られた重合体の存在下、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンのランダム共重合体を製造する方法、
(ii)プロピレン単独重合体、またはプロピレンと少量のエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフインとのランダム共重合体と、エチレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとのランダム共重合体と、をブレンドする方法、
(iii)プロピレン単独重合体、またはプロピレンと少量のエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフインとのランダム共重合体と、エチレン及び/又は炭素数4〜8とプロピレンとのランダム共重合体と、をブレンドする方法、
を採用することができる。中でも、経済性の観点から上記(i)の方法を用いることが好適である。
上記(i)の逐次重合に用いる触媒としては、特に限定されるものではないが、有機アルミニウム化合物と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とからなるものが好ましい。
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば一般式R1 mAlX(3-m)(式中、R1は炭素原子数1〜12の炭化水素残基、Xはハロゲン原子を示し、mは1〜3の数である)で表される化合物が使用される。かかる有機アルミニウム化合物の具体例としては、例えばトリメチルアルミニウムクロリド、トリエチルアルミニウムクロリド等のトリアルキルアルミニウムハライド、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド、等が挙げられる。
また、上記チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子、及び電子供与性化合物を必須とする固体成分としては、この種の重合において公知のものが使用でき、チタン原子の供給源となるチタン化合物としては、例えば一般式Ti(OR2(4-n)n(式中、R2は炭素原子数1〜10の炭化水素残基、Xはハロゲン原子を示し、nは0〜4の数である)で表される化合物が使用される。中でも、四塩化チタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等が好ましく用いられる。
上記マグネシウム原子の供給源となるマグネシウム化合物としては、例えば、ジアルキルマグネシウム、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド等が挙げられ、中でもマグネシウムジハライド等が好ましい。ハロゲン原子としては、例えば弗素、塩素、臭素、沃素が挙げられ、中でも塩素が好ましい。ハロゲン原子は、通常、前記のチタン化合物やマグネシウム化合物から供給されるが、アルミニウムのハロゲン化物、珪素のハロゲン化物、タングステンのハロゲン化物などの他のハロゲン供給源から供給されてもよい。
上記電子供与性化合物としては、例えばアルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸およびその誘導体などの含酸素化合物、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類などの含窒素化合物などが挙げられ、中でも無機酸エステル、有機酸エステル、有機酸ハライドが好適であり、特に珪酸エステル、フタル酸エステル、酢酸セロソルブエステル、フタル酸ハライドが好適である。
ここで、上記の珪酸エステルとしては、例えば一般式R34 (3-p)Si(OR5p(式中、R3は炭素原子数3〜20(好ましくは4〜10)の分岐脂肪族炭化水素残基または炭素原子数5〜20(好ましくは6〜10)の環状脂肪族炭化水素残基を示し、R4は炭素原子数1〜20(好ましくは1〜10)の分岐または直鎖脂肪族炭化水素残基を示し、R5は炭素原子数1〜10(好ましくは1〜4)の脂肪族炭化水素残基を示し、pは1〜3の数である)で表される有機珪素化合物が挙げられる。かかる有機珪素化合物の具体例としては、例えばt−ブチル−メチル−ジメトキシシラン、t−ブチル−メチル−ジエトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジメトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジエトキシシラン等が挙げられる。
本発明における上記(A)成分および(B)成分のプロピレン系共重合体を製造するに際して上記(i)の製造方法を採用する場合には、一段目重合時においてプロピレン又はプロピレンと少量のエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンを供給し、上記のような触媒の存在下、重合温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃、プロピレンの分圧0.5〜4.5MPa、好ましくは1.0〜3.5MPaの条件で重合を実施し、引き続いて二段目重合時において、一段目重合で得られた重合体の存在下、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンを供給し、前記触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃で、プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンの分圧各0.3〜4.5MPa、好ましくは0.5〜3.5MPaの条件として、共重合を行なうことができる。
なお、その際の重合方式としては回分式、連続式、半回分式のいずれであってもよいが、一段目及び二段目の重合は気相又は液相中で実施するのが好ましく、各段階の滞留時間は通常各々0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間とすることができる。又、このような方法により製造される組成物の粉体粒子にベタツキ等の間題が生じる場合は、粉体粒子に流動性を付与する目的で、一段目重合後であって二段目重合の開始前又は二段目重合の重合途中に、触媒の固体成分中のチタン原子に対して100〜1000倍モルで、かつ触媒の有機アルミニウム化合物に対して2〜5倍モルの範囲で活性水素含有化合物を添加することが好ましい。このような活性水素含有化合物としては、例えば、水、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、カルボン酸類、酸アミド類、アンモニア、アミン類等が挙げられる。
本発明における上記(A)成分および(B)成分としてのプロピレン系共重合体は、o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0〜140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分および60℃以上90℃以下での溶出分の割合がそれぞれ特定範囲となるように調整されたものであるが、このような条件を満たすようにポリマーの溶出割合を調整する方法としては、プロピレン以外のエチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフインを多段共重合することによりプロピレン系重合体の結晶性をコントロールする方法や、触媒を選択することによりプロピレン系重合体の立体規則性をコントロールする方法が挙げられる。
なお、本発明における上記基材層には上記ポリオレフィン系樹脂に加え、従来公知の酸化防止剤、光安定剤、中和剤、α晶核剤、β晶核剤、アンチブロッキング剤、滑剤等の各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。
本発明の積層フィルムにおけるシーラント層としては、内容物の有効成分を吸着することがなく、容器から内容物へ低分子量成分等が溶出したりすることによる内容物の組成変化又は内容物汚染が可及的に低減され、かつ適切なヒートシール性を発現し、しかも適度な耐熱性を有するシーラント層として、以下の(C)成分、
(C)ガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂、
を主成分として含むシーラント層が採用される。
本発明において、上記(C)成分が上記シーラント層中に占める割合としては50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であっても良い。また、本発明においてシーラント層を構成する材料中に主成分として含まれる環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度としては、100℃以上、好ましくは105℃以上、より好ましくは120℃以上、上限として170℃以下、好ましくは165℃以下である。ガラス転移温度100℃以上の環状ポリオレフィン系樹脂が、包装袋のシーラント層を構成する材料全体中に占める割合が50質量%未満であったり、シーラント層の主成分として含まれる上記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度が100℃未満であったりすると、110℃以上の高圧蒸気滅菌を行った場合に包装袋が変形・破袋して本願発明の目的を達成し得ない。
なお、本発明において「ガラス転移温度」とは、JIS K7121(DSC)にて測定した値を意味する。
また、本発明における上記シーラント層には、ヒートシール性の向上の観点から、上記(C)成分に加え、以下の(D)成分、
(D)ガラス転移温度100℃未満の環状ポリオレフィン系樹脂、
を併用することが好適である。本発明において、上記(D)成分が、シーラント層を構成する材料全体中に占める割合としては通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。(D)成分の配合量が多すぎると、シール性は向上するものの滅菌時に十分な耐熱性が保持できず、容器が変形して本発明の目的が達成し得ない。
前記(C)成分のガラス転移温度と前記(D)成分のガラス転移温度との、ガラス転移温度の温度差としては、特に限定されるものではないが、通常20℃以上、好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上である。前記(A)成分のガラス転移温度と(B)成分のガラス転移温度とのガラス転移温度の温度差が20℃未満であると、用時混合する複室容器とする場合に、十分な弱シール温度範囲が得られず、またシール温度も220℃以上の高温となり安定な弱シールが得られない場合がある。
前記(C)成分及び(D)成分は、環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られた環状ポリオレフィン系樹脂である。
環状オレフィンモノマーとしては、例えばノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリメチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シアノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ナヂック酸無水物、ナヂック酸イミドなどの二環シクロオレフィン;ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの三環シクロオレフィン;ジメタノヘキサヒドロナフタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアルキル、アルケニル、アルキリデン、アリール置換体などの四環シクロオレフィン;トリシクロペンタジエンなどの五環シクロオレフィン;ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環シクロオレフィンなどが挙げられる。また、ジノルボルネン、二個のノルボルネン環を炭化水素鎖またはエステル基などで結合した化合物、これらのアルキル、アリール置換体などのノルボルネン環を含む化合物が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用しても良い。2種以上使用する場合には、熱可塑性樹脂となる1つの二重結合を有するモノマーと、熱硬化性樹脂となる複数の二重結合を有するモノマーを適宜組み合わせると種々の物性を有する樹脂を入手することができ、また、単一モノマーを使用する場合と比較して、凝固点降下により、モノマーを液状として取扱える範囲が拡がる場合があるため好適である。
中でも、本発明において好適に用いられる環状オレフィンモノマーとしては、ジシクロペンタジエン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンといったノルボルネン系モノマー(ここで、「ノルボルネン系」とは、分子骨格中にノルボルネン骨格が含まれることを意味する。)が挙げられる。
なお、内容物中の微量成分等との相互作用をなるべく低減し、不透水性をより高める観点から、上記環状オレフィンモノマーとしては極性基をなるべく含まないもののみを用いることが好適であるが、内容物に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で一部極性基を有するモノマーを併用することも可能である。このようなモノマーとしては、例えば、上述したノルボルネン系モノマーに塩素や臭素などのハロゲン基やエステル基を導入した置換体を挙げることができる。但し、このような極性基を有するモノマーの、環状オレフィンモノマー総量中に占める割合としては通常30%以下である。30%を超えると、得られるポリマーの吸水性が大きくなり、本願発明の目的を達成し得ない場合がある。
また、上記モノマー組成物中には、本発明の目的を損なわない範囲で、上記環状オレフィンモノマーと共に他のモノマーを併用することも可能である。
このような他のモノマーとしては、炭素数2以上のα−オレフィン等が挙げられ、より具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセン等が挙げられる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらのうち、エチレンまたはプロピレンが好ましく、さらにエチレンが特に好ましい。
環状オレフィンモノマーと他のモノマーとを併用する場合の配合比としては、特に限定されるものではないが、(環状オレフィンモノマー)/(他のモノマー)(質量比)として通常98/2〜30/70、好ましくは95/5〜40/60である。環状オレフィンモノマーの配合量が多すぎると、十分なシール性が得られない場合があり、一方、少なすぎると、内容成分の非吸着性が損なわれる場合がある。
なお、複数種のモノマーを併用する場合の重合方法や重合機構としては、公知の方法を用いることができ、モノマー時に配合して共重合を行っても良いし、ある程度重合した後に配合してブロック共重合しても良い。また、開環重合であっても、付加重合であっても良い。
本発明において「環状ポリオレフィン系樹脂」とは、上述した環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られる樹脂、或いはその誘導体を意味する。ここで「誘導体」とは、環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られる樹脂の水素添加体などを意味する。
本発明における環状ポリオレフィン系樹脂としては、上記ノルボルネン系モノマーの1種又は2種以上を重合して得られるポリノルボルネン系樹脂の、1種又は2種以上の組合せであること、又は、上記ノルボルネン系モノマーの1種又は2種以上を重合して得られるポリノルボルネン系樹脂の水素添加体の、1種又は2種以上の組合せであることが、良好なヒートシール性を有し、しかも、輸液、薬液、X線造影剤、ホルモン剤、放射性医薬品、循環器官用剤、消化器系製剤、蛋白アミノ製剤、循環器系製剤、酵素製剤、代謝性医薬品、抗生物質、抗炎症薬、腫瘍薬、生物学的製剤等の医薬品又はビタミン剤、微量元素等を収容する医療用容器などの医療用途に使用可能な包装袋を実現する観点から好適である。
上記環状ポリオレフィン系樹脂の具体的な構造としては、例えば、下記一般式(1)又は(2)で表される構造式を示すことができる。
Figure 2005254508
(式中、R6,R7,R8,R9は互いに同一又は異種の炭素数1〜20の有機基を示し、また、R6とR7、及び/又はR8とR9は互いに環を形成していてもよい。m,pは0または1以上の整数を示す。l,nは1以上の整数を示す。)
上記炭素数1〜20の有機基として、より具体的には、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、i−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、t−オクチル(1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル)、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等のシクロアルキル基;1−メチルシクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル等のアルキルシクロアルキル基;アリル、プロペニル、ブテニル、2−ブテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル等のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ビフェニル基、フェノキシフェニル基、クロロフェニル基、スルホフェニル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基(フェネチル基)、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等のアラルキル基等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種を単独で、あるいは2種以上を併用しても良い。
このような環状ポリオレフィンのガラス転移温度は、上記一般式(1),(2)中のl、m、n、pの値、あるいは置換基を適宜選択することにより適宜調整することが可能である。上記一般式(1),(2)以外の環状ポリオレフィンのガラス転移温度についても、用いるモノマー種、モノマー種の配合割合、モノマー配列、置換基の種類などを適宜設定することにより、任意に調整することができる。
上記一般式(1)で示される環状ポリオレフィンとしては市販品を用いることができ、例えば日本ゼオン株式会社製のゼオネックス、ゼオノアを好適に用いることができる。
上記一般式(2)で示される環状ポリオレフィンとしては市販品を用いることができ、例えば三井化学株式会社製のアペル、TICONA社製のTOPASを好適に用いることができる。
なお、本発明における上記シーラント層には、更に必要に応じ種々の添加剤、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填剤等を添加することもできる。
内容物の有効成分を吸着することがなく、容器から内容物へ低分子量成分等が溶出したりすることによる内容物の組成変化又は内容物汚染が可及的に低減され、かつ適切なヒートシール性を発現し、しかも適度な耐熱性を有するシーラント層としては、上記環状ポリオレフィン系樹脂が最も好ましいが、ポリエステル系樹脂として、シーラブルポリエステルやポリエステル系エラストマーあるいは、PAN、PBT、EVOH系樹脂を用いても同様の効果が期待できるが、環状ポリオレフィン系樹脂に比べてその効果は劣る。
本発明の包装袋には、110℃以上の高圧蒸気滅菌処理を行なうことができ、かつ内容物の適切な排出を行なう観点から、ガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むポート部材を具備することが好適である。ここで、ポート部材の形成材料としては、ポート部材とシーラント層との良好な熱溶着性を発現させる観点から、上述したシーラント層と同一の構成材料であるか、または該シーラント層の構成材料よりもガラス転移温度の低い材料であることが好適である。
ここで、ポート部材の形成材料に主成分として含まれる上記環状ポリオレフィン系樹脂のガラス転移温度としては、通常100〜170℃であり、好ましくは100〜140℃、より好ましくは105〜120℃である。ガラス転移温度が100℃未満であると、シールすること自体は容易となるが110℃以上の高圧蒸気滅菌処理を行うことでポートが変形したり液漏れが発生したりする場合がある。一方、170℃を超えると、ポート自体が硬くなり軟化させにくく溶着することが困難となり、ポートの溶着を確実に行なうためには包装袋の外部から過度の熱を加える必要が生じ、フィルムが変形したり、フィルム自体がシールにより破断したり、ポート部の際が硬くなったり、ポートのシール部より液漏れが発生したりする場合がある。
なお、上記ガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂が、ポート部材を形成する組成物中に占める割合としては、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%であっても良い。
上記ポート部材の形成材料には、ポートに柔軟性を付与し、シートとのシール性を向上させる観点から、熱可塑性エラストマーが20%以下の混合比率で混合されていても良い。該熱可塑性エラストマーが上記ポート部材の形成材料中に占める割合としては通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。該割合が20質量%を超えると、内容成分がポートに吸着されてしまうおそれが大きくなったり、包装袋の高圧蒸気滅菌適性が劣ったりする場合がある。
なお、ポート部材としては、上記形成材料をポート部材内壁に使用し、外側をポリエチレン樹脂にて被覆した二色成形品を使用してもよい。この場合、包装袋内面のシーラント層とシールされるのは、二色成形ポートから一部出ているポート内壁に使用した環状ポリオレフィンであってもよいし、外側に被覆したポリエチレン樹脂であってもよい。前記ポリエチレン樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンを用いた場合、包装袋内面のシーラント層と好適にシールすることが可能となり、ポート部からの液漏れ発生などを防止することが可能となるため好適である。
本発明の積層フィルム構成としては、上述の基材層に、上述のシーラント層を直接積層した2層構成のシートであっても良いし、110℃以上の温度での滅菌適性、ポート部のシール性、液漏れ防止、ハンドリング性、基材層とシーラント層の接着性の観点に鑑み、シーラント層と基材層との間に1層又は2層以上の中間層を介在させた多層構成としても良い。なお、このような中間層としては特に制限はなく、ドライラミネーション用の接着剤にて接着層を形成しても良いが、溶剤を用いずに確実な積層構成を実現する観点から、上記シーラント層と上記基材層とを良好に接着させることが可能な接着性樹脂により中間層を構成することが好適である。
本発明の積層フィルムは、シーラント層としてガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として採用し、基材層として融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として採用していることから、包装袋を形成するためのシール時にシール部が変形したり、シールエッジ部が破断したりすることなく、シールすることが可能となる。この理由は明らかでないが、シール温度において、シーラント層である環状ポリオレフィン系樹脂の溶融粘度が大きく低下するのに対して、基材層であるポリオレフィン系樹脂は溶融粘度の低下が少なく、剛性を維持するためと考えられる。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〜9、比較例1〜3〕
表1,2に示す構成材料にて表面層、必要に応じて中間層、及びシーラント層を有する積層フィルムを多層共押出し法により作成した。また、表1,2に示す構成材料にてポート部を射出成形により作成すると共に、これらの多層シート及びポート部を用いて包装袋を作成した。包装袋外周シール部及びポートシール部のシール条件としては、表1,2に示すシール条件を採用した。なお、表1における構成材料欄中の「第一」、「第二」、「第三」、「第四」という表記については、表面層側から順に「第一中間層」、「第二中間層」、「第三中間層」、「第四中間層」が積層されていることを意味する。
得られた包装袋につき、外周シール部及びポートシール部のシール後の外観、外周シール部のヒートシール強度を測定すると共に、表1,2に示す所定の内容物を所定の内容量をもって充填密封後、同じく表1,2に示す所定の滅菌条件にて滅菌処理を行い、滅菌処理後に所定の圧力を印加した場合に液漏れが生ずるか否かについての評価した。更に、滅菌処理後の内容物につき、第14改正日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法(プラスチック製水性注射剤容器 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器)に準拠した方法で試験を行なった。結果を表1,2に併せて示す。
Figure 2005254508
Figure 2005254508
a:融点160℃のプロピレン系共重合体[(A)成分:o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0℃から140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して占める割合が23質量%であり、60℃以上90℃以下での溶出分が全溶出量に対して占める割合が8質量%である三菱化学(株)製重合型ポリプロピレン系TPO。]。
b:融点115℃のLLDPE(東ソー製:ペトロセン)。
c:融点160℃のプロピレン系共重合体[(A)成分:o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0℃から140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して占める割合が23質量%であり、60℃以上90℃以下での溶出分が全溶出量に対して占める割合が8質量%である三菱化学(株)製重合型ポリプロピレン系TPO。]85質量%、融点143℃のポリプロピレン系共重合体[(B)成分:プロピレン系共重合体成分の、o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0℃から140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して占める割合が7質量%であり、60℃以上90℃以下での溶出分が全溶出量に対して占める割合が50質量%である三菱化学(株)製重合型ポリプロピレン系TPO。]を15質量%の割合で混合した混合物。
d:融点160℃のプロピレン系共重合体[(A)成分:o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0℃から140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して占める割合が23質量%であり、60℃以上90℃以下での溶出分が全溶出量に対して占める割合が8質量%である三菱化学(株)製重合型ポリプロピレン系TPO。]を70質量%、融点136℃のポリプロピレン系共重合体[(B)成分:プロピレン系共重合体成分の、o−ジクロロベンゼンを溶媒として用いた温度0℃から140℃の間の温度上昇溶離分別における0℃での溶出分が全溶出量に対して占める割合が6質量%であり、60℃以上90℃以下での溶出分が全溶出量に対して占める割合が40質量%であるチッソ製のランダムポリプロピレン。]30質量%の割合で混合した混合物。
e:融点105℃のLLDPE(日本ポリエチレン製:ハーモレックス)。
f:融点110℃のLLDPE(出光石油化学製:モアテック)
g:融点200℃のポリエステル系エラストマー(イーストマン製:ECDEL)
h:接着性樹脂(三菱化学製モディック)
i:接着性樹脂(三井化学製アドマー)
j:ポリエステル系ウレタン接着剤(三井武田製)
k:2軸延伸ナイロン(ユニチカ製)
l:LLDPE(出光石油化学製:モアテック) を85質量%、スチレン系エラストマー(JSR製:ダイナロン)を15質量%の比率で混合した混合物
I:ガラス転移温度(以下Tgとする)が136℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1420R)
II:Tgが105℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1020R)を20質量%、Tgが136℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1410R)を80質量%の比率で混合した環状ポリオレフィン混合物
III:Tgが75℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア750R)を20%、Tgが136℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1420R)を80%の比率で混合した混合物
IV:ガラス転移温度(以下Tgとする)が75℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア750R)
V:Tgが105℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1020R)
VI:Tgが105℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1020R)を90質量%、ポリスチレン系エラストマー(JSR製ダイナロン)を10質量%混合した混合物
VII:Tgが105℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア1020R)を85質量%、Tgが75℃の環状ポリオレフィン(日本ゼオン:ゼオノア750R)を15質量%の比率で混合した混合物
シール後外観
○:良好
×:変形が著しい、及び/又はシール部エッジより破断
外周シール部強度
JIS Z 0238に準拠したMD方向サンプルのヒートシール強度(180°剥離強度)。
内容物
水:注射用蒸留水
薬剤1:循環器系製剤(血管拡張剤:ニトログリセリン注射溶液)
薬剤2:X線造影剤(ヨウ素化合物製剤)
薬剤3:循環器系製剤(強心剤)
薬剤4:循環器系製剤(血管拡張剤:硝酸イソソルビト注射液)
日本薬局方試験
第14改正日本薬局方プラスチック製医薬品容器試験法(プラスチック製水性注射剤容器 1.ポリエチレン製又はポリプロピレン製水性注射剤容器)に準拠した方法で試験を行なった。

Claims (8)

  1. 基材層と、基材層の一面側に積層されたシーラント層とを含む積層フィルムにおいて、前記基材層が融点110〜220℃のポリオレフィン系樹脂を主成分として含み、かつ、前記シーラント層がガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むことを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記ポリオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレン、または下記(A)成分を含むプロピレン系共重合体組成物である請求項1記載の積層フィルム。
    (A)成分:プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であって、温度上昇溶離分別法(温度:0〜140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用いた場合に、0℃での溶出分の割合が全溶出量に対して15質量%以上50質量%以下、60℃以上90℃以下での溶出分の割合が全溶出量に対して5質量%以上15質量%未満であるプロピレン系共重合体。
  3. 前記プロピレン系共重合体組成物が、さらに下記(B)成分を含む請求項2記載の積層フィルム。
    (B)成分:プロピレンと、エチレン及び/又は炭素数4〜8のα−オレフィンとからなるプロピレン系共重合体成分であって、温度上昇溶離分別法(温度:0〜140℃、溶媒:o−ジクロロベンゼン)を用いた場合に、0℃での溶出分の割合が全溶出量に対して0質量%以上25質量%以下、60℃以上90℃以下での溶出分の割合が全溶出量に対して15質量%以上70質量%以下であるプロピレン系共重合体。
  4. 前記環状ポリオレフィン系樹脂が、ノルボルネン系モノマーを重合して得られるポリノルボルネン系樹脂の1種または2種以上の組合せである請求項1,2又は3記載の積層フィルム。
  5. 前記環状ポリオレフィン系樹脂が、ガラス転移温度100℃未満の環状ポリオレフィン系樹脂を30質量%以下含有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載の積層フィルムを用いて形成した包装袋。
  7. さらに、ガラス転移温度100〜170℃の環状ポリオレフィン系樹脂を主成分として含むポート部材が設置された請求項6記載の包装袋。
  8. 輸液、薬液、X線造影剤、ホルモン剤、放射性医薬品、循環器官用剤、消化器系製剤、蛋白アミノ製剤、循環器系製剤、酵素製剤、代謝性医薬品、抗生物質、抗炎症薬、腫瘍薬、生物学的製剤等の医薬品又はビタミン剤、微量元素等を収容する医療用容器である請求項6又は7記載の包装袋。


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