JP2005235589A - 非水電解質二次電池 - Google Patents

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Abstract


【課題】 本発明は、充電時の膨れが低減された非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】 負極活物質がケイ素含有粒子を炭素材料で被覆したものであり、ケイ素含有粒子の真比重が1.5以上2.2以下であることを特徴とする非水電解質二次電池である。ケイ素含有粒子の真比重が1.5以上2.2以下であることにより、Si微結晶の近傍に存在する微細なキャビティが、充電時におけるSi微結晶の膨張を吸収する結果、充電時の膨れが低減された非水電解質二次電池を得ることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、非水電解質二次電池に関する。
従来、非水電解質二次電池においては、リチウムのデンドライト析出を防止できることから負極活物質として炭素材料が広く用いられてきた。しかし、負極活物質として炭素材料を用いた場合、その放電容量を理論容量(372mAh/g)以上に増大させることはできないため、電池としての放電容量を10%以上増大させることは困難であるという問題点があった。
そこで、放電容量を増大させ、電池の高エネルギー密度化を図るために、リチウムと合金化しうる金属を活物質として用いる試みがなされている。このような金属としては、Siが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。このSiは、リチウムイオンと固溶体や金属間化合物を形成することにより、リチウムイオンを多量に貯蔵することができる。
特開平7−29602号公報
しかしながら、Siを負極活物質として用いた場合、充電時に電池が膨れることがあるという問題があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、充電時の膨れが低減された非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するための手段について説明する。
(手段1)
正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池において、
前記負極活物質は、ケイ素含有粒子を含有し、
前記ケイ素含有粒子の真比重は1.5以上2.2以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。
ここで、「真比重」とは、試料に含まれている液体及び気体を除いた部分の比重をいう(JIS Z8807参照)。そして比重とは、ある温度で、ある体積を占める物質の質量と、それと同体積の標準物質の質量との比をいい、普通は標準物質として4℃における水が採用される。なお、4℃における水の密度は0.999973g/cmであるから、比重の0.999973倍がCGS単位で示した密度に等しいが、実用上、多くの場合にはこの差異は無視して差し支えないとされる(長倉三郎ら編 「岩波理化学辞典 第5版」(株)岩波書店 2002年10月15日、p.1103参照)。
真比重は、粉末状に粉砕した固体試料を用いて、JIS Z8807に準拠した方法により測定可能であり、例えば、以下のようにして測定できる。
乾燥したピクノメータを室温になるまでデシケータ中で放置し、ピクノメータの質量W1を秤量する。十分に粉砕した試料をピクノメータに入れ、(ピクノメータ+試料)の質量W2を秤量する。更に、ピクノメータにn−ブタノールを試料が十分に浸るように入れ、十分に脱気する。n−ブタノールを更に加えてピクノメータに満たし、恒温水槽に入れて25℃にする。n−ブタノール及び試料が25℃になった後、n−ブタノールのメニスカスを標線に合わせ、よくふいた後、室温になるまで放置し、(ピクノメータ+試料+n−ブタノール)の質量W3を秤量する。ピクノメータにn−ブタノールだけを満たし、恒温槽に入れて25℃にし、n−ブタノールのメニスカスを標線に合わせ、よくふいた後、室温になるまで放置し、(ピクノメータ+n−ブタノール)の質量W4を秤量する。
真比重は、上記のようにして秤量した各質量W1,W2,W3,W4から、以下のように算出できる。
真比重={(W2−W1)×s}/{(W2−W1)−(W3−W4)}
ここで、sは、25℃におけるn−ブタノールの比重である。
(手段2)
前記負極活物質が、前記ケイ素含有粒子に炭素材料を被覆してなる粒子を含有することを特徴とする手段1記載の非水電解質二次電池。
(手段3)
前記負極活物質が、前記ケイ素含有粒子及び第1の炭素材料からなる複合粒子に、第2の炭素材料を被覆してなる粒子を含有することを特徴とする手段1記載の非水電解質二次電池。
(手段4)
前記ケイ素含有粒子は、SiO(但し、0<x<2)を、前記Siと、SiO(0<y≦2)とに不均化して得られたものであることを特徴とする手段1ないし3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
ここで、「不均化」とは、化学辞典(東京化学同人、1994年10月発行)によれば、「不均斉化、不均等化などと呼ばれる。同一種類の物質から異なる2種類の物質に変化すること」と定義される。本願発明において「不均化」とは、SiO(但し、0<x<2)を、熱処理等により、SiとSiO(0<y≦2)との2種類に変化させることを意味する。
(手段5)
前記ケイ素含有粒子は、リチウム錯体を含有する錯体溶液に、ケイ素含有粒子を接触させる工程と、前記錯体溶液と接触させた前記ケイ素含有粒子を、Liを脱離する液体と接触させる工程とを行うことにより、真比重を1.5以上2.2以下とされていることを特徴とする手段1ないし4のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
リチウム錯体としては、リチウムと多環式芳香族化合物とからなるリチウム錯体、リチウムとエーテルとからなるリチウム錯体、リチウムと多環式芳香族化合物とエーテルとからなるリチウム錯体などを用いることができる。リチウム錯体を含む錯体溶液は、例えば、多環式芳香族化合物とエーテルとを含む溶液に金属Liを加えて撹拌し、Liと多環式芳香族化合物又はエーテルとを配位結合させてリチウム錯体を形成させることにより得ることができる。錯体溶液が形成されたか否かは、溶液の色の変化により確認することができ、例えば、多環式芳香族化合物とエーテルと金属Liとを混合した時には無色透明だった溶液が、撹拌後、赤紫色に変わることにより確認できる。
Liと反応する液体としては、多環式芳香族化合物のエーテル溶液、アルコール又は水などが挙げられる。
(手段6)
リチウム錯体を含有する錯体溶液に、ケイ素含有粒子を接触させる工程と、前記錯体溶液と接触させた前記ケイ素含有粒子を、Li元素を脱離する液体と接触させる工程とを備えた、ケイ素含有粒子の製造方法。
(手段7)
前記負極は、導電用炭素材料を含むことを特徴とする手段1ないし5のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
(手段1)
Siは各原子に4個の原子が配位して形成された四面体が連なったダイヤモンド型の結晶構造を有し、この結晶格子中にLiイオンが挿入されることにより極めて多量のリチウムイオンを吸蔵できる。しかしながら、Liイオンの吸蔵により結晶格子が膨張するために負極活物質が膨張し、この負極活物質を含む負極板が膨張する結果、電池が膨れてしまうのである。
発明者らが鋭意研究した結果、負極活物質に含まれるケイ素含有粒子の真比重を特定の値に制御することにより、充電後における電池の膨れが低減された非水電解質二次電池を得られることがわかった。これは、以下の理由によると考えられる。
ケイ素含有粒子においては、Si結晶と非晶質との境目に微小なキャビティが形成されていると考えられる。Siの結晶格子中にLiイオンが挿入されてSiの結晶格子が膨張した場合、このキャビティにより結晶格子の膨張が吸収される結果、電池の膨れが抑えられると考えられる。上述のように、真比重とは、試料に含まれている液体及び気体を除いた部分の比重をいう。すなわち、細孔のように比較的大きなキャビティを除いた部分の固体材料の比重が真比重である。この真比重は、上述した微小なキャビティの発生状態を示す指標と考えられるのである。
真比重が1.5よりも小さいと、微小なキャビティが多く発生することにより電池の膨れは減少するが、単位体積当たりの負極活物質が少なくなる結果、エネルギー密度が低下して好ましくない。一方、真比重が2.2よりも大きいと、ケイ素含有粒子中に含まれるSiOの結晶性が高くなって、絶縁性が高くなる結果、充電時に負極活物質に吸蔵されなかったLiイオンが金属Liとして析出して充放電サイクル特性が低下するため好ましくない。以上より、ケイ素含有粒子の真比重は、1.5以上2.2以下が好ましい。また、ケイ素含有粒子の真比重が1.98よりも小さいと、エネルギー密度が不足する傾向にあり、2.18よりも大きいと、充放電サイクル特性が低下する傾向にあることから、ケイ素含有粒子の真比重は、1.98以上2.18以下がより好ましい。
負極活物質が、Siを含有するケイ素含有粒子を含むことにより、高いエネルギー密度の非水電解質二次電池を得ることができる。これは、上述したように、Siは、リチウムイオンと固溶体や金属間化合物を形成することにより、リチウムイオンを多量に貯蔵することができるからである。
(手段2)
負極活物質が、ケイ素含有粒子の表面に炭素材料が被覆されてなる粒子を含有することにより、サイクル特性の向上した非水電解質二次電池を得ることができる。これは以下のように考えられる。Siはリチウムイオンを多量に貯蔵できるが、リチウムイオンの吸蔵に伴う体積膨張が大きく、充放電の繰り返しにより微粉化しやすい傾向にある。この微粉化により、ケイ素含有粒子からSiが脱落する結果、導電経路が断絶し、サイクル特性が低下することがある。ケイ素含有粒子の表面に炭素材料が被覆されると、ケイ素含有粒子からのSiの脱落を防止することができ、導電経路を維持することが可能となるので、サイクル特性が向上すると考えられる。
また、ケイ素含有粒子に含まれるSiにおいては、リチウムイオンとの反応性が他と比べて高い部分が存在し、リチウムイオンの吸蔵・放出反応が、この反応性の高い部分で集中的に進行するといういわゆる反応ムラが発生することがある。すると、反応性の高い部分では、リチウムイオンの吸蔵により負極活物質の体積が膨張するのに対し、反応性の低い部分では、負極活物質の体積膨張は小さなものとなる。このような体積変動のムラが発生することにより、Siの形状が崩れて周囲から孤立した部分が生じ、導電経路が断絶されることもある。
ケイ素含有粒子の表面が導電性を有する炭素材料で被覆されていることにより、上記のような反応ムラが緩和され、リチウムイオンと、Siとが均一に反応するようになる。これにより、Siは均一に体積膨張するから、孤立化が防止されて導電経路が維持される結果、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
(手段3)
負極活物質が、Siを含むケイ素含有粒子と、第1の炭素材料とからなる複合粒子を含むことにより、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。これは、以下の理由によると考えられる。上記したように、Siは多量のリチウムイオンを吸蔵することができるが、リチウムイオンの吸蔵に際して大きく体積膨張する傾向にある。このため、充放電を繰り返すと、体積の膨張、収縮によりケイ素含有粒子が微粉化する場合がある。負極活物質が第1の炭素材料を含むことにより、充放電に伴なってケイ素含有粒子が体積の膨張、収縮により微粉化したとしても、第1の炭素材料によって導電経路が維持されるので、集電力の低下が抑制されると考えられる。
第1の炭素材料としては、電子伝導性を有し、ケイ素含有粒子の導電経路を維持しうるものであれば特に限定されない。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、黒鉛化MCMB、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維、黒鉛ウイスカー、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。なかでも、導電性を充分に確保できることから数平均粒径が1〜15μmの鱗片状黒鉛を使用することが好ましい。なお、第1の炭素材料としては、リチウムイオンを吸蔵、放出する能力を有するものを用いてもよい。
負極活物質が、ケイ素含有粒子の表面に第2の炭素材料が被覆されてなる粒子を含有することにより、サイクル特性の向上した非水電解質二次電池を得ることができる。これは以下のように考えられる。Siはリチウムイオンを多量に貯蔵できるが、リチウムイオンの吸蔵に伴う体積膨張が大きく、充放電の繰り返しにより微粉化しやすい傾向にある。この微粉化により、ケイ素含有粒子からSiが脱落する結果、導電経路が断絶し、サイクル特性が低下することがある。ケイ素含有粒子の表面に第2の炭素材料が被覆されると、ケイ素含有粒子からのSiの脱落を防止することができ、導電経路を維持することが可能となるので、サイクル特性が向上すると考えられる。
また、ケイ素含有粒子に含まれるSiにおいては、リチウムイオンとの反応性が他と比べて高い部分が存在し、リチウムイオンの吸蔵・放出反応が、この反応性の高い部分で集中的に進行するといういわゆる反応ムラが発生することがある。すると、反応性の高い部分では、リチウムイオンの吸蔵により負極活物質の体積が膨張するのに対し、反応性の低い部分では、負極活物質の体積膨張は小さなものとなる。このような体積変動のムラが発生することにより、Siの形状が崩れて周囲から孤立した部分が生じ、導電経路が断絶されることもある。
ケイ素含有粒子の表面が導電性を有する第2の炭素材料で被覆されていることにより、上記のような反応ムラが緩和され、リチウムイオンと、Siとが均一に反応するようになる。これにより、Siは均一に体積膨張するから、孤立化が防止されて導電経路が維持される結果、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
(手段4)
SiO(但し、0<x<2)を、Siと、SiO(0<y≦2)とに不均化して得られたケイ素含有粒子を用いることにより、充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。SiO(但し、0<x<2)の不均化により形成されたSiO(0<y≦2)はアモルファスであり、他方、Siは微結晶である。したがって、不均化された後のケイ素含有粒子は、アモルファスのSiO(0<y≦2)のマトリックス中に、Siの微結晶がドメインとして分散した形態であると考えられる。このように、ケイ素酸化物SiO(0<y≦2)のマトリックス中に分散した微結晶のSiにリチウムイオンが吸蔵された場合、Siの体積が膨張しても、アモルファスのSiO(0<y≦2)により体積の変化分が吸収される結果、ケイ素含有粒子の体積膨張が小さく抑えられると考えられる。このため、充放電に伴う負極活物質の体積変化が抑えられる結果、充放電サイクル特性が向上すると考えられる。
(手段5及び手段6)
錯体溶液にケイ素含有粒子を接触させると、理由は明らかではないが、Siの結晶中に錯体溶液中のLiイオンが導入されて、Siの結晶格子の大きさが変化する。Siの結晶内に導入されるLiイオンの量は、リチウム錯体を構成する配位子の種類、リチウム錯体の濃度、錯体溶液の溶媒の種類を変えることなどにより調節できる。例えば、多環式芳香族化合物の種類、多環式芳香族化合物の濃度、エーテルの種類又は錯体溶液とケイ素含有粒子との接触時間などを変化させることによりSiの結晶内に導入されるLiイオンの量を調節でき、Siの結晶格子の大きさを調節できる。
その後、上記の操作を行ったケイ素含有粒子を、Liを脱離する液体と接触させる。すると、ケイ素含有粒子に導入されたLiと液体とが反応し、LiがSiの結晶格子から引き抜かれる。この結果、非晶領域は変形した状態のままなので、Siの結晶格子と非晶領域との間に微小なキャビティが形成される。これにより、ケイ素含有粒子の真比重を調節することができる。
上述の操作を行った後、ケイ素含有粒子を洗浄溶媒により洗浄し、乾燥することによって、真比重が1.5以上2.2以下であるケイ素含有粒子を得ることができる(手段6)。
そして、このようにして調製されたケイ素含有粒子を負極に用いることにより、充電後における電池の膨れが低減された非水電解質二次電池を得ることができる(手段5)。
錯体溶液に使用されるエーテルの例としては、1−メトキシプロパン、1−メトキシブタン、2−メトキシブタン、1−メトキシペンタン、2−メトキシペンタン、1−メトキシヘキサン、2−メトキシヘキサン、3−メトキシヘキサン、1−エトキシプロパン、2−エトキシブタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,2−ジメチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシドなどを単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
錯体溶液に使用される多環式芳香族化合物の例としては、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、メチルナフタレン、エチルナフタレン、ナフタレン、ペンタセン、ピレン、ピセン、トリフェニレン、アンタンスレン、アセナフセン、アセナフチレン、ベンゾピレン、ベンゾフルオレン、ベンゾフェナンスレン、ベンゾフルオロアニセン、ベンゾペリレン、コロネン、クリセン、ヘキサベンゾペリレン又はこれらの誘導体を、単独で又は2種以上混合して使用することができる。多環式芳香族化合物の濃度は、0.005mol/l〜2mol/lが好ましい。より好ましくは0.005〜0.25mol/lであり、さらに好ましくは0.005〜0.01mol/lである。多環式芳香族化合物の濃度が0.005mol/lより小さいと、ドープ時間が長くなるという問題を生じ、濃度が2.0mol/lより大きいと、多環式芳香族化合物が析出するという問題が生じる。金属Liの濃度は、Si結晶へのLiイオンの導入が効率よく行われることから0.0005mol/l以上から飽和までの範囲が好ましい。ケイ素含有粒子と錯体溶液との接触時間は、1分〜70分が好ましい。錯体溶液の温度は、使用する溶媒の沸点以下の温度とすることが好ましいが、作業性の面からは25〜60℃の範囲とすることがより好ましい。
LiをSiの結晶中から除去する工程において多環式芳香族のエーテル溶液を用いる場合、LiをSiの結晶中に導入する際に用いたのと同じ多環式芳香族化合物、エーテルを使用してもよいし、異なった種類の多環式芳香族化合物、エーテルを使用してもよい。多環式芳香族化合物の濃度は、0.005mol/l〜2mol/lが好ましい。多環式芳香族のエーテル溶液を用いる場合、Siの結晶中のLiイオンは、多環式芳香族又はエーテルとリチウム錯体を形成することにより、Siの結晶中から引き抜かれる。
また、LiをSiの結晶中から除去する工程においては、アルコール又は水を用いることもできる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。アルコール又は水を用いる場合、Siの結晶中のLiイオンは、アルコール又は水と反応することにより、Siの結晶中から引き抜かれる。
ケイ素含有粒子を、Liを脱離する液体と接触させる時間は、1分〜70分が好ましい。そのときの温度は、使用する溶媒の沸点以下の温度とすることが好ましいが、作業性の面からは25〜60℃の範囲とすることがより好ましい。上記工程によりLiをSiの結晶中から除去した後、ケイ素含有粒子は、洗浄溶媒により洗浄し、乾燥することによって、後の工程に供することができる。洗浄溶媒については特に限定されず、水又は有機溶媒を用いることができる。
(手段7)
手段1ないし5のいずれかに記載の非水電解質二次電池において、前記負極が導電用炭素材料を含むものを用いることにより、負極の導電性を向上させることができる。導電用炭素材料としては、電子伝導性を有するものであれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、黒鉛化MCMB、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維、黒鉛ウイスカー、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維などからなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。導電用炭素材料の形状については、球状、繊維状、鱗片状など種々の形状のものを適宜使用できる。なかでも、導電性を十分に確保できることから、数平均粒径が1〜15μmの鱗片状黒鉛を使用することが好ましい。また、サイクル特性が向上することからメソカーボンマイクロビーズやメソカーボンファイバー、あるいはこれらの炭素材料にホウ素が添加された材料を使用することが好ましい。なお、導電用炭素材料としては、リチウムイオンを吸蔵、放出する能力を有するものを用いてもよい。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である角形非水電解質二次電池の概略断面図である。この角形非水電解質二次電池1は、アルミニウム箔からなる正極集電体に正極合剤を塗布してなる正極3と、銅箔からなる負極集電体に負極合剤を塗布してなる負極4とがセパレータ5を介して巻回された扁平巻状電極群2と、非水電解液とを電池ケース6に収納してなる。
電池ケース6には、安全弁8を設けた電池蓋7がレーザー溶接によって取り付けられ、負極端子9は負極リード11を介して負極4と接続され、正極3は正極リード10を介して電池蓋7と接続されている。
正極活物質としては、リチウムイオンが可逆的に挿入・脱離することができる化合物を使用することができる。このような化合物の例としては以下の物質が挙げられる。無機化合物としては、組成式LiMO(Mは1種又は2種以上の遷移金属、0≦P≦1)、または組成式Li(Mは1種又は2種以上の遷移金属、0≦Q≦2)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、トンネル状の空孔を有する酸化物、層状構造の金属カルコゲン化物等を用いることができる。これらの具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMn、MnO、FeO、V、V13、TiO、TiS等が挙げられる。また、有機化合物としては、例えばポリアニリン等の導電性ポリマーなどが挙げられる。更に、無機化合物、有機化合物を問わず、上記各種正極活物質を混合して用いても良い。
正極板は、例えば、上記の正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤を金属箔からなる正極集電体に塗工することにより製造することができる。
導電剤としては、特に制限はなく、種々の材料を適宜使用できる。例えば、Ni、Ti、Al、Fe若しくはこれらの二種以上の合金又は炭素材料が挙げられる。なかでも、炭素材料を用いることが好ましい。炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、気相成長炭素繊維、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ニードルコークスなどの無定形炭素が挙げられる。
正極に用いられる結着剤としては、特に制限はなく、種々の材料を適宜使用できる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、またはこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。
正極集電体には、例えば、Al、Ta、Nb、Ti、Hf、Zr、Zn、W、Bi、およびこれらの金属を含む合金などを例示することができる。これらの金属は、電解液中での陽極酸化によって表面に不動態皮膜を形成するため、正極集電体と電解液との接触部分において非水電解質が酸化分解するのを有効に防止することができる。その結果、非水系二次電池のサイクル特性を有効に高めることができる。
本発明に係る負極活物質に用いられるケイ素含有粒子としては、Si、SiとB、N、O、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素との化合物、SiとLi、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge等の典型金属元素との合金、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素との合金、Si合金の酸化物等を、単独で又は二種以上を混合して用いることができる。これらのうち、Si、SiO(0<y≦2)、又はこれらの混合物が好ましく、特に、SiO(但し、0<x<2)をSiとSiO(0<y≦2)とに不均化したものが好ましい。
本発明に係るSiO(但し、0<x<2)粒子を熱処理したケイ素含有粒子が、Siと、SiO(0<y≦2)とに不均化しているか否かは、X線回折により確認できる。例えば、理学電機製、X−Ray Diffractometer、RINT2000を使用し、CuKα線を用いて測定できる。Siについては、回折角2θが28.5°付近のピーク、47.4°付近のピーク、55.9°付近のピークにより同定できる。また、SiOについては、回折角2θが21.5°付近のピークにより同定できる(図2参照)。
回折角2θが46°〜49°の範囲に現れる回折ピークの半値幅をBとすると、B<3°(2θ)であることが好ましい。これは、B≧3°(2θ)である物質を用いた場合には、サイクル特性が低下するからである。
また、ケイ素含有粒子をTEM観察することによってもケイ素含有粒子がSiと、SiO(0<y≦2)とに不均化していることを確認できる。TEM観察は、HITACHI社製HF−2200を用い、加速電圧200kV、計測時間80secで行うことができる(図3参照)。黒い点がSiであり、白い部分が、SiO、SiOなどである。
本発明に係る複合粒子は、ケイ素含有粒子と、第1の炭素材料とを、ミルを用いてミリングすることにより得ることができる。このとき、大気中でもよいが、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気下でミリングするのが好ましい。ミルの種類としては、ボールミル、振動ミル、衛生ボールミル、チューブミル、ジェットミル、ロッドミル、ハンマーミル、ローラーミル、ディスクミル、アトライタミル、遊星ボールミル、インパクトミルなどが挙げられる。また、メカニカルアロイ法を用いてもよい。ミリング温度は10℃〜300℃の範囲で行うことができる。また、ミリング時間は30秒から48時間の範囲で行うことができる。
ケイ素含有粒子又は複合粒子の表面に被覆用の炭素材料(請求項2における炭素材料、又は請求項3における第2の炭素材料)を被覆させるには、ケイ素含有粒子又は複合粒子の表面にピッチ、タール、又は熱可塑性樹脂(例えばフルフリルアルコール樹脂など)を被覆した後に焼成する方法、ケイ素含有粒子又は複合粒子と炭素材料との間に機械的エネルギーを作用させて複合体を形成するメカノケミカル反応を用いた方法、化学気相析出(CVD)法などを用いることができる。なかでも、均一に炭素材料を被覆できることから、CVD法が好ましい。
CVD法においては、反応ガスとしては、メタン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の有機化合物を用いることができる。反応温度は、700℃〜1300℃の範囲で、反応時間は30秒〜72時間の範囲で行うことができる。CVD法によると、上述した、ピッチ、タール、又は熱可塑性樹脂をケイ素含有粒子又は複合粒子に被覆した後に焼成する方法に比べて、低い反応温度で炭素材料を被覆できる。このため、Siの融点以下で被覆処理を行えるので好ましい。
炭素材料がケイ素含有粒子又は複合粒子の表面に被覆されているか否かは、ラマン分光分析を行うことにより確認できる。ラマン分光分析は試料の表面部分の分析を行うから、ケイ素含有粒子又は複合粒子の表面に炭素材料が全体に被覆されている場合には、表面に被覆された炭素材料の結晶性を示すR値(強度比1580cm−1のピーク強度に対する1360cm−1のピーク強度)が、負極活物質粒子のどこで測定しても一定の値を示すことになる。このラマン分光分析には例えば、JOBIN,YVON製 T64000を使用することができる。
熱処理によるSiO粒子(但し、0<x<2)の不均化反応は、例えば、予めSiO粒子を焼成することにより行ってもよいし、SiO粒子(但し、0<x<2)にCVD法を用いて被覆用の炭素材料を被覆する際に、炭素被覆と不均化反応とを同時に行ってもよい。また、SiO粒子(但し、0<x<2)と第1の炭素材料とを混合する際に、不均化反応を同時に行ってもよいし、複合粒子にCVD法を用いて炭素材料を被覆する際に、炭素被覆と不均化反応とを同時に行ってもよい。SiO粒子(但し、0<x<2)としては、フッ酸、硫酸などの酸で洗浄されたものや、水素で還元されたものなども使用できる。
負極板は、例えば、上記のようにして得られた負極活物質と、導電用炭素材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を負極集電体に塗工することにより製造することができる。
負極集電体としては、鉄、銅、ステンレス、またはニッケルを用いることができる。その形状としては、シート、面状体、網状体、発泡体、焼結多孔体、エキスパンド格子が挙げられる。さらに、これらの集電体に任意の形状で穴を開けたものを用いることができる。
電解液の有機溶媒としては、特に制限はなく、種々の溶媒を適宜使用できる。例えば、エーテル類、ケトン類、ラクトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物、ハロゲン化炭化水素類、エステル類、カーボネート類、ニトロ化合物、リン酸エステル系化合物、スルホラン系炭化水素類などを用いることができるが、これらのうちでもエーテル類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、ハロゲン化炭化水素類、カーボネート類、スルホラン系炭化水素類が好ましい。
さらに、有機溶媒の例としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、アニソール、モノグライム、4−メチル−2−ペンタノン、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、1,2−ジクロロエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、メチルフォルメイト、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルチオホルムアミド、スルホラン、3−メチル−スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、およびホスファゼン誘導体およびこれらの混合溶媒などを挙げることができる。なかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、およびジエチルカーボネートを単独でまたは2種以上を混合して使用することが好ましい。
電解質の溶質としては、特に制限はなく、種々の溶質を適宜使用できる。例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCF(CF、LiCF(CF、LiCF(CF、LiCF(CF、LiCF(CF)、LiCF(C、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CCO)、LiI、LiAlCl、LiBCなどを単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なかでもLiPFを使用することが好ましい。さらに、これらのリチウム塩濃度は、0.50〜2.0mol/lとするのが好ましい。
また、電解質中に、ビニレンカーボネートやブチレンカーボネートなどのカーボネート類、ビフェニルやシクロヘキシルベンゼンなどのベンゼン類、プロパンスルトンなどの硫黄類、エチレンサルファイド、フッ化水素、トリアゾール系環状化合物、フッ素含有エステル類、テトラエチルアンモニウムフルオライドのフッ化水素錯体またはこれらの誘導体、ホスファゼンおよびその誘導体、アミド基含有化合物、イミノ基含有化合物、または窒素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有しても使用できる。また、CO、NO、CO、SOなどから選択される少なくとも1種を含有しても使用できる。
上記電解質には固体またはゲル状のイオン伝導性電解質を単独または組み合わせて使用することができる。複数のイオン伝導性電解質を組み合わせる場合、非水電解質電池は、例えば、正極と、負極と、セパレータと、有機または無機の固体電解質と、非水電解液とから構成できるし、また、正極と、負極と、セパレータとしての有機または無機の固体電解質膜と、非水電解液とからも構成できる。また、イオン伝導性電解質には有孔性高分子固体電解質膜も使用することができる。
イオン伝導性電解質としてはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレングリコールおよびこれらの誘導体、LiI、LiN、Li1+xTi2−x(PO(M=Al、Sc、Y、La)、Li0.5−3x0.5+xTiO(R=La、Pr、Nd、Sm)、またはLi4−xGe1−xに代表されるチオリシコンを使用することができる。さらに、LiI−LiO−B系、LiO−SiO系などの酸化物ガラス、またはLiI−LiS−B系、LiI−LiS−SiS系、LiS−SiS−LiPO系などの硫化物ガラスを使用することができる。
セパレータとしては、特に制限はなく、種々の材料を適宜使用できる。例えば、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜などが挙げられ、なかでも、合成樹脂微多孔膜が好ましい。合成樹脂微多孔膜の材質としては、ナイロン、セルロースアセテート、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、およびポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィンが用いられ、なかでもポリエチレンおよびポリプロピレン製微多孔膜、またはこれらを複合したポリオレフィン系微多孔膜が、厚み、膜強度、膜抵抗などの面で好ましい。
また、材料の異なる複数の微多孔膜を積層してなるものや、同じ材料であっても重量平均分子量や空孔率の異なる複数の微多孔膜を積層してなるものや、これらの微多孔膜に各種の可塑剤、酸化防止剤、難燃剤などの添加剤を適量含有しているものを使用することができる。
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1>
SiO粒子を、アルゴン雰囲気中、1000℃、5時間焼成することにより、SiOからSiとSiO(0<y≦2)への不均化反応を生じさせて、ケイ素含有粒子を調製した。このケイ素含有粒子について、上述の方法によりX線回折を行った。回折角2θが28.5°付近のピーク、47.4°付近のピーク、55.9°付近のピークの存在によりSiの存在を確認できた。また、回折角2θが21.5°付近のピークによりSiOについても確認できた。このように、SiOを熱処理することにより、SiOがSiとSiOとに不均化したことを確認できた。また、回折角2θが46°〜49°の範囲に現れる回折ピークの半値幅をBとすると、B<3°(2θ)であった。
更に、上記のケイ素含有粒子についてTEM観察を行った。TEM観察によっても、SiOを熱処理することにより、SiOがSiとSiOとに不均化したことを確認できた。
1−メトキシブタンにナフタレンを0.25mol/l溶解させ、さらに金属リチウムを飽和量溶解させて25℃で3時間撹拌することにより、赤紫色のリチウム錯体溶液を調製した。この錯体溶液に、上記のように調製したケイ素含有粒子を25℃で1分間接触させた。その後、ケイ素含有粒子を、炭酸ジメチルで洗浄した後、1−メトキシブタンにナフタレンを0.25mol/l溶解させた溶液に25℃で48時間接触させた。その後、ケイ素含有粒子をアルコールで洗浄した後、乾燥した。
上記の操作を行ったケイ素含有粒子の真比重をピクノメータを用いた上述の方法により測定したところ、ケイ素含有粒子の真比重は2.2であった。
このようにして調製したケイ素含有粒子を、アルゴン雰囲気中、ベンゼンガスを1000℃で熱分解する方法(CVD)によって、その表面に炭素材料を被覆し、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子を得た。
上記のようにして得られた、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子について、上述の方法によりラマン分光分析を行い、R値を測定した。このR値は、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子のどの部分で測定しても約0.8であった。この結果から、ケイ素含有粒子は、炭素材料によりその表面が均一に被覆されていることが分かった。
上記のようにして得られた、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子の全質量に対する、炭素材料の割合は、20質量%(wt%)であった。また、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子の数平均粒径は1μmであった。
炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子(負極活物質)97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した。この負極ペーストを厚み15μmの銅箔上に塗布した後、150℃で乾燥させて水を蒸発させた。この作業を銅箔の両面に対して行った後、銅箔の両面をロールプレスで圧縮成型し、負極合剤層が両面に形成された負極板を作製した。
コバルト酸リチウム90重量部と、アセチレンブラック5重量部と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)5重量部とを、NMP中で分散させて正極ペーストを作製した。この正極ペーストを厚み20μmのアルミニウム箔上に塗布した後、150℃で乾燥させてNMPを蒸発させた。この作業を銅箔の両面に対して行った後、さらにアルミニウム箔の両面をロールプレスで圧縮成型し、正極合剤層が両面に形成された正極板を作製した。
セパレータとしては、厚み20μm、多孔度40%の連通多孔体であるポリエチレンセパレータを用いた。
上記のようにして得られた正極板と、セパレータと、負極板とを順に重ね合わせた後、長円渦状に巻回し、巻回型発電要素を作製した。この発電要素を高さ48mm、幅30mm、厚み4.2mmの容器内に挿入した後、この電池の内部に非水電解液を注入することにより定格容量700mAの角形非水電解質二次電池を得た。
非水電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを体積比1:1で混合した混合溶媒に、1mol/lのLiPFを溶解させたものを用いた。
(厚み測定)
上記のようにして作製した電池について、25℃において、1CmA(700mA)の定電流で4.2Vまで充電し、続いて4.2Vの定電圧で2時間充電した後の電池の中央部の厚みをノギスで測定した。電池の厚みは5.58mmであった。
<実施例2〜8及び比較例1,2>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表1に示したものとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8及び比較例1,2の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表1にまとめた。また、実施例2〜8及び比較例1,2のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表1にまとめた。
Figure 2005235589
<実施例9>
実施例1と同様にして得られた、炭素材料を被覆したケイ素含有粒子5重量部と、導電用炭素材料95重量部とを混合して、負極活物質を得た。導電用炭素材料としては、メソカーボンマイクロビーズ40重量部、天然黒鉛40重量部及び人造黒鉛20重量部の混合物を用いた。このようにして得られた負極活物質97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例9の非水電解質二次電池を作製した。この電池について実施例1と同様にして充電後の電池の厚みを測定したところ、4.54mmであった。
<実施例10〜16及び比較例3,4>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表2に示したものとした以外は、実施例9と同様にして、実施例10〜16及び比較例3,4の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表2にまとめた。また、実施例9〜16及び比較例3,4のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表2にまとめた。
Figure 2005235589
<実施例17>
ケイ素含有粒子30重量部と、人造黒鉛(第1の炭素材料)50重量部とを窒素雰囲気中、25℃、30分ボールミルにて混合することにより、複合粒子を調製し、このようにして調製した複合粒子を、アルゴン雰囲気中、ベンゼンガスを1000℃で熱分解する方法(CVD)によって、その表面に第2の炭素材料を被覆し、第2の炭素材料の被覆された複合粒子を得た。上記のようにして得られた、第2の炭素材料の被覆された複合粒子の全質量に対する、第2の炭素材料の割合は、20質量%(wt%)であった。
第2の炭素材料の被覆された複合粒子(負極活物質)97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した。この負極ペーストを厚み15μmの銅箔上に塗布した後、150℃で乾燥させて水を蒸発させた。この作業を銅箔の両面に対して行った後、銅箔の両面をロールプレスで圧縮成型し、負極合剤層が両面に形成された負極板を作製した。このようにして調製した負極板を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。この電池について実施例1と同様にして充電後の電池の厚みを測定したところ、5.98mmであった。
<実施例18〜24及び比較例5,6>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表3に示したものとした以外は、実施例17と同様にして、実施例18〜24及び比較例5,6の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表3にまとめた。また、実施例17〜24及び比較例5,6のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表3にまとめた。
Figure 2005235589
<実施例25>
ケイ素含有粒子30重量部と、人造黒鉛(第1の炭素材料)50重量部とを窒素雰囲気中、25℃、30分ボールミルにて混合することにより、複合粒子を調製し、このようにして調製した複合粒子を、アルゴン雰囲気中、ベンゼンガスを1000℃で熱分解する方法(CVD)によって、その表面に第2の炭素材料を被覆し、第2の炭素材料の被覆された複合粒子を得た。上記のようにして得られた、第2の炭素材料の被覆された複合粒子の全質量に対する、第2の炭素材料の割合は、20質量%(wt%)であった。このようにして得られた、第2の炭素材料の被覆された複合粒子5重量部と、導電用炭素材料95重量部とを混合して、負極活物質を得た。導電用炭素材料としては、メソカーボンマイクロビーズ40重量部、天然黒鉛40重量部及び人造黒鉛20重量部の混合物を用いた。このようにして得られた負極活物質97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。この電池について実施例1と同様にして充電後の電池の厚みを測定したところ、4.86mmであった。
<実施例26〜32及び比較例7,8>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表4に示したものとした以外は、実施例25と同様にして、実施例26〜32及び比較例7,8の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表4にまとめた。また、実施例25〜32及び比較例7,8のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表4にまとめた。
Figure 2005235589
(結果)
ケイ素含有粒子の真比重が1.5以上2.2以下である実施例1〜8では、充電終了後の電池の厚みが5.58mm以下であったのに対し、ケイ素含有粒子の真比重が2.25であった比較例1では、充電終了後の電池の厚みは6.78mmと、大きく膨れていた。また、ケイ素含有粒子の真比重が1.4であった比較例2においても、充電終了後の電池の厚みは6.59mmと、大きく膨れていた。また、データは示さないが、比較例2については、単位体積当たりの放電容量が実施例1〜8に比べて大きく低下していた。
このように、負極活物質が、ケイ素含有粒子を含有し、ケイ素含有粒子の真比重は1.5以上2.2以下であることにより、充電時の膨れが低減された非水電解質二次電池を得ることができる。
表2ないし表4についても、ケイ素含有粒子の真比重と、充電終了後の電池の厚さとの関係について、上記と同様の傾向を示す結果が得られた。
<実施例33>
1−メトキシブタンにナフタレンを0.25mol/l溶解させ、さらに金属リチウムを飽和量溶解させて25℃で3時間撹拌することにより、赤紫色のリチウム錯体溶液を調製した。この錯体溶液に、SiO粒子(ケイ素含有粒子)を25℃で1分間接触させた。その後、ケイ素含有粒子を、炭酸ジメチルで洗浄した後、1−メトキシブタンにナフタレンを0.25mol/l溶解させた溶液に25℃で48時間接触させた。その後、ケイ素含有粒子をアルコールで洗浄した後、乾燥した。
上記の操作を行ったケイ素含有粒子の真比重をピクノメータを用いた上述の方法により測定したところ、ケイ素含有粒子の真比重は2.2であった。
このようにして調製したケイ素含有粒子を、アルゴン雰囲気中、ベンゼンガスを1000℃で熱分解する方法(CVD)によって、その表面に炭素材料を被覆し、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子を得た。
上記のようにして得られた、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子について、上述の方法によりラマン分光分析を行い、R値を測定した。このR値は、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子のどの部分で測定しても約0.8であった。この結果から、ケイ素含有粒子は、炭素材料によりその表面が均一に被覆されていることが分かった。
上記のようにして得られた、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子の全質量に対する、炭素材料の割合は、20質量%(wt%)であった。また、炭素材料の被覆されたケイ素含有粒子の数平均粒径は1μmであった。
上記のようにして得られたケイ素含有粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製し、これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定した。
<実施例34〜40及び比較例9,10>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表5に示したものとした以外は、実施例33と同様にして、実施例34〜40及び比較例9,10の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表5にまとめた。また、実施例33〜40及び比較例9,10のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表5にまとめた。
Figure 2005235589
<実施例41>
実施例33と同様にして得られた、炭素材料を被覆したケイ素含有粒子5重量部と、導電用炭素材料95重量部とを混合して、負極活物質を得た。導電用炭素材料としては、メソカーボンマイクロビーズ40重量部、天然黒鉛40重量部及び人造黒鉛20重量部の混合物を用いた。このようにして得られた負極活物質97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した以外は、実施例33と同様にして、実施例41の非水電解質二次電池を作製した。この電池について実施例1と同様にして充電後の電池の厚みを測定した。
<実施例42〜48及び比較例11,12>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表2に示したものとした以外は、実施例41と同様にして、実施例42〜48及び比較例11,12の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表6にまとめた。また、実施例41〜48及び比較例11,12のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表6にまとめた。
Figure 2005235589
<実施例49>
SiO粒子(ケイ素含有粒子)30重量部と、人造黒鉛(第1の炭素材料)50重量部とを窒素雰囲気中、25℃、30分ボールミルにて混合することにより、複合粒子を調製し、このようにして調製した複合粒子を、アルゴン雰囲気中、ベンゼンガスを1000℃で熱分解する方法(CVD)によって、その表面に第2の炭素材料を被覆し、第2の炭素材料の被覆された複合粒子を得た。上記のようにして得られた、第2の炭素材料の被覆された複合粒子の全質量に対する、第2の炭素材料の割合は、20質量%(wt%)であった。
第2の炭素材料の被覆された複合粒子(負極活物質)97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した。この負極ペーストを厚み15μmの銅箔上に塗布した後、150℃で乾燥させて水を蒸発させた。この作業を銅箔の両面に対して行った後、銅箔の両面をロールプレスで圧縮成型し、負極合剤層が両面に形成された負極板を作製した。このようにして調製した負極板を用いた以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。この電池について実施例1と同様にして充電後の電池の厚みを測定した。
<実施例50〜56及び比較例13,14>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表7に示したものとした以外は、実施例49と同様にして、実施例50〜56及び比較例13,14の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表7にまとめた。また、実施例49〜56及び比較例13,14のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表7にまとめた。
Figure 2005235589
<実施例57>
SiO粒子(ケイ素含有粒子)30重量部と、人造黒鉛(第1の炭素材料)50重量部とを窒素雰囲気中、25℃、30分ボールミルにて混合することにより、複合粒子を調製し、このようにして調製した複合粒子を、アルゴン雰囲気中、ベンゼンガスを1000℃で熱分解する方法(CVD)によって、その表面に第2の炭素材料を被覆し、第2の炭素材料の被覆された複合粒子を得た。上記のようにして得られた、第2の炭素材料の被覆された複合粒子の全質量に対する、第2の炭素材料の割合は、20質量%(wt%)であった。このようにして得られた、第2の炭素材料の被覆された複合粒子5重量部と、導電用炭素材料95重量部とを混合して、負極活物質を得た。導電用炭素材料としては、メソカーボンマイクロビーズ40重量部、天然黒鉛40重量部及び人造黒鉛20重量部の混合物を用いた。このようにして得られた負極活物質97重量部と、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)2重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部とを、水中で分散させて負極ペーストを調製した以外は、実施例1と同様にして非水電解質二次電池を作製した。この電池について実施例1と同様にして充電後の電池の厚みを測定した。
<実施例58〜64及び比較例15,16>
ケイ素含有粒子と、ナフタレンの濃度が0.25mol/lである1−メトキシブタン溶液に金属リチウムを飽和量溶解させた錯体溶液とを接触させる時間を、表4に示したものとした以外は、実施例57と同様にして、実施例58〜64及び比較例15,16の非水電解質二次電池を作製した。これらについて、実施例1と同様にして充電後の厚みを測定し、結果を表8にまとめた。また、実施例57〜64及び比較例15,16のケイ素含有粒子の真比重についても測定し、表8にまとめた。
Figure 2005235589
表5〜表8の結果から、負極活物質が、ケイ素含有粒子を含有し、ケイ素含有粒子の真比重が1.5以上2.2以下であることにより、充電時の膨れが低減された非水電解質二次電池を得られることがわかった。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
上記した実施形態では、角形非水電解質二次電池1として説明したが、電池構造は特に限定されず、円筒形、袋状、リチウムポリマー電池等としてもよいことは勿論である。
本発明の一実施形態の角形非水電解質二次電池の縦断面図 本発明に係る負極活物質のX線回折チャート 本発明に係る負極活物質のTEM写真
符号の説明
1…角形非水電解質二次電池
2…電極群
3…正極
4…負極
5…セパレータ
6…電池ケース
7…電池蓋
8…安全弁
9…負極端子
10…正極リード
11…負極リード

Claims (4)

  1. 正極と、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質を含む負極と、非水電解質とを備えた非水電解質二次電池において、
    前記負極活物質は、ケイ素含有粒子を含有し、
    前記ケイ素含有粒子の真比重は1.5以上2.2以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。
  2. 前記負極活物質が、前記ケイ素含有粒子に炭素材料を被覆してなる粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
  3. 前記負極活物質が、前記ケイ素含有粒子及び第1の炭素材料からなる複合粒子に、第2の炭素材料を被覆してなる粒子を含有することを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
  4. 前記ケイ素含有粒子は、SiO(但し、0<x<2)を、前記Siと、SiO(0<y≦2)とに不均化して得られたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の非水電解質二次電池。
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