JP2005162678A - リポソーム用脂質、リポソームおよびそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
リポソームの安定化と内包物質の保持安定性を図るとともにその効率的送達および良好なターゲティングを達成する、安全性の高いリポソーム用脂質、それを用いたリポソームおよびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
転移温度を有するリン脂質を少なくとも含有するリポソーム膜構成物質を、該リン脂質の転移温度以上に加熱した、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散し、これに水を加えた後に撹拌し、次いで大気圧まで減圧して、該リポソーム膜構成物質を含有する水性懸濁液を凍結乾燥することによりリポソーム用脂質を得る。このリポソーム用脂質を、薬剤水溶液に添加して混合することにより水溶性薬剤含有リポソームが得られる。
【選択図】なし













Description

本発明は、リポソーム用脂質、リポソームおよびそれらの製造方法に関し、詳しくは、相転移温度を有するリン脂質を少なくとも含有するリポソーム膜構成物質を、該リン脂質の相転移温度以上に加熱した、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散して製造する、リポソーム用脂質、リポソームおよびそれらの製造方法に関する。
特定物質の選択的かつ効率的な生体内送達を実現するために、生体膜類似の脂質から構成され、低い抗原性のために安全性が高いとされているリポソームに薬効物質、造影性化合物などを内包させる手法が検討されている。たとえば国際公開WO88/09165、同WO89/00988、同WO90/07491、特開平07-316079、特開2003-5596では、イオン性または非イオン性の造影剤を含有するリポソームが提案されている。これらの方法では、素材としての安全性が高く、生体内で適度な分解性を有するリポソームを用いるにもかかわらず、製造過程においてリポソーム膜を構成するリン脂質の溶剤として、有機溶媒、特にクロロホルム、ジクロロメタンといったクロル系溶剤を使用する。したがって、上記の方法はどうしても残存する溶剤の毒性があるという理由で実用化に至っていない(たとえば、特許文献1参照)。
他方、脂質可溶性の薬剤は容易にリポソーム中に封入されるが、その封入量は他の要因にも左右されることから必ずしもそれほど多くはない。また水溶性電解質である薬剤は、その薬剤の電荷と荷電した脂質の電荷との相互作用を通じてリポソーム内部の水相に封入できるが、薬剤が水溶性の非電解質である場合には、そうした手段を採ることはできない。さらに形成されたリポソームは多重層になりやすく、薬効物質などの内包率も低いために効率が悪くなる。このような水溶性の非電解質を効率的にリポソーム中に封入する手段として、逆相蒸発法、エーテル注入法が挙げられるが、有機溶剤を使用するためにやはり安全性の問題が残る。
特開2003-119120(特許文献2)では、リポソームを含有する化粧料、皮膚外用剤を、
超臨界二酸化炭素を用いて製造する方法が開示されており、親水性薬効成分や親油性薬効成分をリポソームに内包する皮膚外用剤の製造例が示されている。しかし、親水性薬効成分として、水溶性電解質の例は示されているが、同法により水溶性非電解質をリポソームに効率よく内包できるか不明であった。
さらに、リポソームそのものの安定性に関わる問題もある。リポソームが貯蔵中に凝集したり、崩壊する不安定性、あるいは生体内に投与された後、標的部位に到達する前に免疫系細胞に貪食される問題、封入物質が脂質膜外へ漏出するなどといった不安定性についても実用化のためには解決されねばならない。
特開平7-316079号公報 特開2003-119120号公報
本発明は、薬効物質、造影物質などのマイクロキャリヤーとしてその保持効率を高めたリポソームを作製するためのリポソーム用脂質、これを用いたリポソームおよびその製造方法を提供することを目的とする。より具体的には毒性のある有機溶媒を使用することなく狭い粒径範囲の一枚膜リポソーム内に水溶性薬物などを封入したリポソーム、その製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は、以下の構成を有する。
本発明のリポソーム用脂質の製造方法は、転移温度を有するリン脂質を少なくとも含有するリポソーム膜構成物質を、該リン脂質の転移温度以上に加熱した、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散し、これに水を加えた後に撹拌し、次いで大気圧まで減圧して、該リポソーム膜構成物質を含有する水性懸濁液を凍結乾燥することにより得られる製造方法である。
前記の凍結乾燥の前に、前記水性懸濁液を該リン脂質の“転移温度+10”℃以上に加温し、その後、細孔のある膜を通すことが好ましい。
本発明のリポソーム用脂質は、上記の製造方法により得られるリポソーム用脂質である。
本発明の方法は、上記のリポソーム用脂質を、薬剤水溶液に添加して混合することにより得られる水溶性薬剤含有リポソームの製造方法である。
本発明の水溶性薬剤含有リポソームは、上記の製造方法により得られるリポソームである。
〔発明の具体的説明〕
本発明のリポソーム用脂質は、転移温度を有するリン脂質を少なくとも含有するリポソーム膜構成物質を、該リン脂質の転移温度以上に加熱した、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散し、これに水を加えた後に撹拌し、次いで大気圧まで減圧して、該リポソーム膜構成物質を含有する水性懸濁液を凍結乾燥することにより得られるリポソーム用脂質である。リン脂質の「(相)転移温度」とは、リン脂質がとり得るゲルと液晶との両状態間の相転移を生じる温度である。その測定は、示差走査熱量計(DSC)を使用する示差熱分析による。
以下、本発明のリポソーム用脂質、リポソーム用脂質の製造方法、リポソームの製造方法、リポソームおよびその利用について詳細に説明する。
リポソーム用脂質
リポソームは、二分子膜小胞体であり、一般には脂質膜で構成される。本発明の「リポソーム用脂質」およびその製造方法に用いられる「リポソーム膜構成物質」とは、膜構成物質として一般に使用されるものであれば特に限定されない。通常は、リポソーム形成能を有する脂質を必須の主要成分とし、それ以外に任意成分として共存させる物質がある。任意成分には、膜安定化剤としてのステロール類、荷電物質としての脂肪酸またはその塩、脂質混合乳化物など、従来から小胞体の形成成分として用いられているものも含まれる。リポソーム形成能を有する脂質としては、リン脂質および糖脂質があるが、特にリン脂質およびその誘導体が好ましい。
本発明方法に使用するリポソーム用の好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。
その他のリン脂質として、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジン酸等が挙げられ、さらに具体的な例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)
、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミ
トイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。この中でもホスファチジルコリンを主成分とすることが好ましい。
本発明のリポソーム用脂質は、リポソーム膜構成物質として、転移温度を有するリン脂質を少なくとも含むことを特徴としている。相転移点を有するリン脂質として、ジミリストイルホスファチジルコリン(転移温度、以下同じ、23〜24℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(41.0〜41.5℃)、水素添加大豆レシチン(53℃)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(54℃)、ジステアロイルホスファチジルコリン(54.1〜58.0℃)、などが例示される。
これらのリン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、重量比として通常、200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。また脂質を構成する脂肪酸のアルキル鎖長は同じであるか、炭素数の差が2以下であることが好ましい。
糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。
上記脂質の他にリポソームの膜構成成分として、必要に応じ他の物質を加えることもできる。たとえば、崩壊、凝集などの恐れのある不安定なリポソームのために膜安定化剤として作用するコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトコレステロール、スチグマコレステロール、カンペコレステロール、コレスタノール、ラノステロールまたは2,4−ジヒドロラノステロールなどのステロール類などが挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5−245357号公報)
ステロールの使用量は、リン脂質1モルに対して0.01〜0.5モル、好ましくは0.05〜0.1モルの割合が望ましい。0.01モルより少ないとステロールによる安定化が発揮されず、0.5
モルより多すぎるとリポソームの形成が阻害されるか、形成されても不安定となる。
リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。特開平09-3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、効率よく種
々の「機能性物質」を共有結合により固定化することができ、リポソームの形成成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。
他に添加できる化合物として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物としてステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。
リポソーム膜の一成分として高分子鎖のポリアルキレンオキシド鎖(PAO、ポリオキシアルキレン鎖)またはポリエチレングリコール(PEG)鎖、すなわち−(CH2CH2O)n−HPEG鎖をリポソーム外表面に付けることにより、新たな機能を該リポソーム
に付与することができる。たとえば、PEG化リポソームには免疫系(たとえば細網内皮系細胞)から認識されにくくなる(いわゆる「ステルス化」された状態である)効果が期待できる。あるいはリポソームが親水的傾向を有することにより血中安定性を増して、長時間にわたり血液中の濃度を維持できることが明らかになっている(Biochim. Biophys. Acta., 1066, 29-36(1991))。
これらの性質を利用してリポソームに臓器特異性を与えることもできる。具体的には脂質成分は肝臓に貯まりやすいことから肝臓の選択的な集積を目的とする場合には、PEGを使用しないか、あるいはPEG含有量の少ないリポソームを用いるのがよい。また粒径を200nm以上に大きくすると、肝臓Kupffer細胞の食作用により速やかに取り込まれる可能性が高くなり、肝臓の該部位に集積する。反対に他臓器への送達の場合、PEGを導入すればリポソームをステルス化して肝臓などに集まりにくくすることができるため、PEG化リポソームの使用が推奨される。PEGの導入により水和層が形成されるためにリポソームは安定化し、血中滞留性も向上する。PEGのオキシエチレン単位の長さ、導入する割合を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。PEGとして、オキシエチレン単位が10〜3500のポリエチレングリコールが好適である。またPEGを使用する場合の使用量は、該リポソームを構成する脂質に対して0.1〜30質量%、好ましくは1〜15質量%程度含むのがよい。
リポソームのPEG化は、公知の技術を利用することができる。PEGが結合するアンカー(たとえばコレステロールなど)を膜構成物質としてリン脂質とともに混ぜてリポソームを作製し、そのアンカーに活性化PEGを結合させてもよい。なお、リポソーム表面に導入されたポリエチレングリコール基は「機能性物質」と反応しないため、そうしたリポソーム表面上に「機能性物質」を固定化することは困難である。代わりにPEG先端に何らかの修飾をさらに施したPEGをリン脂質に結合させ、これをリポソーム膜の構成成分としてリポソーム膜構成物質に含めてもよい。
上記PEGに代わり、公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Yをリポソーム外表面に導入してもよい。ここでAOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数で、1〜2000の正数である。Yは、水素原子
、アルキル基または機能性官能基を表す。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、たとえば
オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。これらのオキシアルキレン基は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシドを付加重合させた基である。
nは1〜2000、好ましくは10〜500、さらに好ましくは20〜200の正数である。
nが2以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖に親水性を付与する場合、AOとしてはエチレンオキシドが単独で付加したものが好ましく、この場合、nが10以上のものが好ましい。また種類の異なるアルキレンオキシドを付加する場合、エチレンオキシドが20モル%以上、好ましくは50モル%以上付加しているのが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖に親油性を付与する場合はエチレンオキシド以外の付加モル数を多くする。
Yは、水素原子、アルキル基または機能性官能基である。アルキル基として、炭素数1
〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基が挙げられる。機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、抗体、レクチン、細胞接着因子といった「機能性物質」を付するためのもので、たとえばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反応性に富む官能基が挙げられる。
ポリアルキレンオキシド基を有するリン脂質または化合物は、一種類を単独で使用することができ、あるいは二種以上のものを組み合わせて使用することもできる。その含有量は、リポソーム膜形成成分の合計量に対し、0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜30モル
%、より好ましくは0.1〜10モル%である。0.001モル%未満では期待される効果が小さくなる。
リポソームへのポリアルキレンオキシド鎖の導入は、公知の技術を利用することができる。たとえば、ポリアルキレンオキシドが結合するアンカー(たとえばコレステロールなど)をリポソーム膜構成物質としてリン脂質とともに混ぜてリポソームを作製し、そのアンカーに活性化ポリアルキレンオキシドを結合させる。このような方法では、リポソーム調製後にリポソーム膜表面上で多段階の化学反応を行なう必要があり、目的とする「機能性物質」の導入量が低く制限され、また反応による副生成物や不純物が混入し、リポソーム膜へのダメージが大きいなどの問題点がある。
これに代わる好ましい製造方法として、原料のリン脂質類の中に、予めリン脂質ポリアルキレンオキシド(PEO)誘導体などを含めてリポソームを作製するのがよい。これには、ホスファチジルエタノールアミンなどのポリエチレンオキシド(PEO)誘導体、たとえばジステアロイルホスファチルジルエタノールアミンポリエチレンオキシド(DSPE−PEO)などといった修飾リン脂質が提案された(特開平7−165770号公報)。さらに特開2002−37883号公報には、血中滞留性を高めた水溶性高分子修飾リポソームを作製するための高純度ポリアルキレンオキシド修飾リン脂質が開示されている。リポソームを作製する際にモノアシル体含量が低いポリアルキレンオキシド修飾リン脂質を使用すると、リポソーム分散液の経時安定性が良好であったことが記載されている。リポソーム用脂質の製造方法
従来技術において、リポソームは、リン脂質、ステロール、レシチンといった脂質成分をほとんど例外なく、まず溶媒、たとえばクロロホルム、ジクロロメタン、エチルエーテル、四塩化炭素、酢酸エチル、ジオキサン、THFなどとともに容器中で混合し、分散、溶
解することにより混合脂質を得て調製されている。このようなリポソームの調製品は、必ず有機溶媒を含んでいる。残存する有機溶媒を除去するために、多段階の工程および長時間の処理を要しているのが現状である。また、保存安定性および均一性に優れたリポソームを工業規模で製造するには、リポソームの中間原料となるリポソーム用(混合)脂質を、工業生産に利用しやすい性状に均一化し、水分散性が良好な形態に加工する必要がある。そのための方法として、特開平9−87168号公報には、リポソーム膜構成物質を、水不溶性の揮発性有機溶媒を含む均一溶媒中に溶解せしめ、これに水または水溶液を加えた後、撹拌しながら有機溶媒を留去し、残留するリポソーム膜構成物質混合分散水相を凍結乾燥して得る方法が提案されている。そうした方法においても有機溶媒をほとんど留去する工程は必須であり、作業が煩雑となることは免れない。残存する有機溶媒の除去は、凍結乾燥の操作によるとしているが、使用されるクロル系有機溶媒の完全な除去は容易ではない。クロル系有機溶媒は、生体への悪影響、具体的には副作用が最も懸念されるものである。
リポソーム用脂質を調製するための本発明の製造方法は、リン脂質などのリポソーム膜構成物質を分散または溶解する際に有機溶媒を実質的に使用しない。代わりにリポソーム膜構成物質を分散、溶解する溶媒として、超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用することを特徴としている。二酸化炭素の臨界温度が31.1℃、臨界圧力が73.8 bar
と比較的扱いやすく、不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、高純度流体が安価で容易に入手できるなどといった理由により好適である。さらにこの方法により作製されたリポソームは、後記するように、薬効物質、X線造影剤のヨウド化合物を始めとする水溶性薬剤を内包するのに種々の好ましい特性および利点を有している。
超臨界もしくは亜臨界二酸化炭素を使用してリポソーム用脂質を作製する場合、リン脂質を中心とするリポソーム膜構成物質を、超臨界状態(亜臨界状態を含む)にある二酸化炭素に混合し、分散または溶解することが必要となる。かかる超臨界二酸化炭素は、物質中に浸透しやすいため溶解性に優れている。その際、低級アルコール、グリコール、グリコールエーテルなどのアルコールを溶解助剤(助溶媒)として1種または2種以上併用することは、上記脂質膜成分の溶解性が一層向上するために望ましい。たとえばアルコール類を超臨界二酸化炭素の0.1〜10質量%、好ましくは、1〜8質量%の割合で溶解助剤(助溶
媒)として使用するのがよい。このうち、より好ましい溶解助剤は、安全性の観点および除去の容易性から、低級アルコール、とりわけエタノールである。
本発明の製造方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の温度は、通常25〜100℃、好ましくは31〜80℃である。かかる温度範囲の中でも特に好適な温度は
、使用するリン脂質の相転移温度またはそれより上である。圧力は、通常50〜500気圧、
好ましくは100〜400 気圧の範囲である。具体的には上記温度が決まれば、二酸化炭素の
超臨界状態(亜臨界状態を含む)を確立するための圧力とする。また、高熱をかけて脂質類を水中で強制的に融和させる方法でないために、高熱による脂質類の変性、たとえばリン脂質が加水分解してリゾ体を生じたり、不飽和成分の過酸化が起きるといった問題もない。
本発明の方法に基づくリポソーム用脂質の作製は、具体的に次のように行なわれる。リポソーム膜構成物質の存在下に液体二酸化窒素を加え、上記のように転移温度を有するリン脂質の転移温度以上の温度、好適な圧力のもとにある超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素にする。リポソーム膜構成物質として、主成分である転移温度を有するリン脂質、その他のリン脂質のほか、好ましくはポリアルキレンオキシド修飾リン脂質、ポリアルキレンオキシド基を有する化合物、ポリエチレングリコール基を有する化合物、ステロール類から少なくとも1種選ばれた化合物とともに添加して、撹拌下に、分散または溶解
させる。その際、必要に応じて上記溶解助剤を併用することができる。続いて生成した脂質混合物に、水を添加して水相/二酸化炭素エマルジョンを形成させる。さらに撹拌を続けて水を連続的に添加する。水相の増大とともに系の相転移が起こり、水/炭酸ガスエマ
ルジョン+炭酸ガス/水エマルジョンの2相系を経て、過剰な炭酸ガスが炭酸ガス/水エマルジョンと分離すると考えられる。リポソーム膜構成物質は水相に転相していると推定されるため、系内を、最終的に大気圧まで減圧して二酸化炭素を排出すると、水を内包するリポソーム用脂質の水性懸濁液(脂質分散水相)が形成される。
生成した水性懸濁液は、そのまま液体窒素などを用いて凍結し、凍結乾燥してもよく、あるいは遠心分離により水相と分離してから凍結乾燥してもよい。このようにして得られた固体粉末のリポソーム用脂質は、リン脂質および共存物質の混合物であるが、リポソーム製造用中間原料として好適に用いられる。なお、上記のように固体粉末化せずに混合脂質の状態で保存した場合、相分離などを生じるために保存安定性もよくない。また、リポソーム内に封入したい薬液と混合する前に、すでにリポソーム用混合脂質に水を含有しているために、混合する水溶性薬剤を希釈してしまう。よって高濃度に薬剤を内包させたい場合には不利になる。
本発明の好ましい態様として、凍結乾燥の前にリポソーム用脂質の水性懸濁液を“転移温度+10”℃以上に加温して、細孔のある膜を透過させることが望ましい。具体的には0.
1〜0.4μの孔径を有する濾過膜を通す。この“転移温度+10”℃以上とは、用いるリン脂質の種類と組成にもよるが、大体35℃から65℃である。加圧押出し濾過の操作では、このように加温すると、転移温度を有するリン脂質は液晶状態であり、流動性が高まる。したがって、フィルターの目詰まりを生じることなく比較的低い圧力で濾過滅菌が可能となる。分散液の押し出し濾過は、各種の静圧式押出し装置、たとえば「エクストルーダー」(商品名、日油リポソーム製)、「リポナイザー」(商品名、野村マイクロサイエンス製)などにより、フィルターを強制的に透過させる。フィルターは、ポリカーボネート系、セルロース系などのタイプを適宜使用することができる。これにより脂質分子の配向が均一であり、水分散性が良好なリポソーム用脂質が得られる。
凍結乾燥の方法は、特に限定されない。たとえば、間接加熱凍結方法、冷媒直膨方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、重複冷凍方法などの方法が挙げられる。凍結乾燥の装置として、市販の任意の凍結乾燥機を用いることができる。さらに凍結乾燥の条件は、当業者が適宜選択でき、特に限定されない。たとえば凍結乾燥の温度は、-190〜-4℃、好ましくは-120〜-20℃、より好ましくは-80〜-60℃程度である。圧力は、0.1〜35Pa、好ましくは1〜15Pa、より好ましくは5〜10Pa程度である。凍結乾燥の時間は、たとえば2〜48時間、好ましくは6〜36時間、より好ましくは16〜26時間である。
水溶性薬剤を内包するリポソームの作製
本発明の製造方法において薬物送達システムなどに使用されるリポソームの作製方法について、以下に詳述する。
リポソームを作製する方法として、これまでに種々の方法が提案されている。作製方法が異なると、最終的に出来上がったリポソームの形態および特性もまた著しく異なることが多い(特開平6-80560号公報)。そのため所望するリポソームの形態、特性に応
じてその製造方法を適宜選択することが行なわれている。
本発明の製造方法は、上記の方法により得られたリポソーム用脂質を、水溶性薬剤を含有する水溶液に添加し混合することにより、水溶性薬剤を内包するリポソームの懸濁液を形成させる。必要であれば、封入する薬物とともに製剤助剤を水溶液に加えてもよい。リポソーム膜構成物質1gに対して、水溶性薬剤を含有する水溶液(薬剤水溶液)、1〜1000mlに添加して懸濁させる。この懸濁液を、乳化機、高速撹拌機などを用いて物理的な力
を加え、分散液とすることにより、水溶性薬剤を内包するリポソームが形成される。
上記薬剤水溶液を調製するための水性媒体には、蒸留水、局方注射用水、純水などの水のほか、生理食塩水、各種緩衝液、塩類などを含む水溶液などが挙げられる。上記の水溶性薬剤は、リポソームの膜内の水相に内包させる薬物類であり、薬効物質、造影物質、抗体、酵素、ホルモンなどの生理活性物質ならびに各種の製剤助剤などが含まれる。その中でも、薬効物質もしくは造影物質ならびに各種の製剤助剤が望ましい。薬効物質としては、各種の医薬物質が含まれ、好ましくは水溶性の非電解質物質である。具体的には抗癌剤、抗生物質、抗炎症剤、血栓溶解剤、抗狭心症薬、血行促進剤などが例示される。
「製剤助剤」とは、製剤化に際し、薬効物質とともに添加されるものであり、これまでの薬剤製造技術に基づいて各種の物質が適宜使用される。具体的には生理学的に許容される各種の緩衝剤、キレート化剤、さらに必要に応じて、浸透圧調節剤、安定化剤、粘度調節剤、α‐トコフェロールなどの抗酸化剤、パラオキシ安息香酸メチルといった保存剤などが挙げられる。
各種の緩衝剤には、水溶性アミン系緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、酢酸系緩衝剤などが含まれる。中でも、水溶性アミン系緩衝剤が望ましい。具体的には、トリス、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、モルホリン
などが例示される。特に、トリスが後述する理由により好ましい。キレート化剤として、製剤学的に使用が認められるEDTA、EDTANa2−Ca(エデト酸二ナトリウムカルシウム
)、EDTANa2、ヘキサメタリン酸などが挙げられる。結局、水溶性アミン系緩衝剤お
よびキレート化剤が特に好ましく使用される。
超臨界もしくは亜臨界二酸化炭素を使用する上記のリポソーム作製方法は、従来法に比べて、均一なリポソームの生成率、封入する物質の内包率、封入物質のリポソーム内残存率が高いことが示されている(上記特許文献2)。さらに一枚膜リポソームを一段階で短時間に作製することができるために、工業的スケールでの応用も可能である。したがって、実質的に有機溶剤を使用せずに、水溶性薬剤を効率よくリポソームに封入することができる本法は、上記特性を有するリポソーム製剤の製造に有用な方法である。
作製するリポソームの粒径分布をより狭い範囲に揃えるには、上記リポソームの懸濁液を一定サイズの孔径を有する濾過膜、好ましくはポリカーボネート膜またはセルロース膜に強制的に透過させてもよい。この場合、濾過膜として0.1〜0.4μの孔径のフィルターを装着した静圧式押出し装置に通すことにより、一枚膜の中心粒径として 100〜300nmの最
適寸法を有する均一なリポソームを効率よく調製することができる。具体的には、各種の静圧式押出し装置、たとえば「エクストルーダー」(商品名、日油リポソーム製)、「リポナイザー」(商品名、野村マイクロサイエンス製)などを使用する。本発明のリポソーム用脂質は、規則正しい配向を有する均一な脂質膜の構成であるため、水溶性薬剤を封入した粘度の高いリポソーム懸濁液であっても、フィルターの目詰まりを起こすことなく粒径の揃ったリポソームを作製することができる。押出しろ過法については、たとえばBiochim. Biophys.Acta 557巻,9ページ(1979)に記載されている。このような「押出し」操作
工程を取り入れることにより、上記サイジングに加えて、リポソーム分散液の交換、望ましくない物質の除去、濾過滅菌も併せて可能になるという利点もある。引き続きリポソームを、遠心分離、限外ろ過、ゲルろ過などの方法により未保持の薬剤を除去して精製してもよい。濃縮、希釈などの操作を任意に行ってもよい。
本発明の方法により製造される水溶性薬剤含有リポソームでは、後述するように薬効物質または造影物質などといった水溶性薬剤を、保持安定性の観点からリポソーム膜脂質重量に対して適切な重量比でリポソーム内に封入している。さらにリポソーム中の水溶性薬剤の保持安定性は、リポソームが通常50〜300nmの中心粒径であり、実質的に一枚膜であ
ることによっても図られている。一枚膜のリポソームは、実質的にリン脂質二重層が1つ
の層としてなる膜(unilamellar vesicle)で構成されるリポソームである。ここで「実
質的に」とは、以下の凍結かつ断(Freeze fracture )レプリカ法による透過型電子顕微鏡(TEM)観察において、レプリカが概ね1つの層として認められるリン脂質二重層に
よりリポソームが構成されていることをいう。すなわち、観察したカーボン膜に残された粒子の跡について段差がないものを一枚膜と判定し、2つ以上の段差が認められるものを「多層膜」と判定した。本発明の製造方法によれば、一枚膜リポソームを、薬効物質または造影物質中に含まれる全リポソーム中、少なくとも80%、好ましくは90%以上含むものが得られる。
このような一枚膜リポソームは、脂質類の溶媒として上記超臨界二酸化炭素を使用し、水による相分離方法により効率よく作製できる。超臨界二酸化炭素を使用するリポソーム作製方法は、水溶性物質の保持効率の高い大きな一枚膜リポソーム(粒子径、0.1〜1.2μm)を調製できることが示されている(Pharm. Tech. Japan 19(5) 819-828(2003))。こ
れに対し、従来のリポソーム作製方法では、多重層膜(multilamellar vesicles; MLV)からなるリポソームがかなりの割合で存在することが多い。そのため、一枚膜リポソームの比率を高めるためには、超音波を照射するか、一定孔サイズのフィルターに何度も通すなどの操作をさらに必要としていた。一枚膜リポソームは、MLVと比較して、リポソ
ームの投与量、換言すると投与脂質量が大きくならないという利点もある。
一枚膜リポソーム、特に大きい一枚膜リポソームであるLUV(Large unilamellar veislcles)は、多重層リポソームに比べて、大きい封入容量を提供するという利点がある
。本発明の方法により製造される水溶性薬剤含有リポソームは、粒径が200〜1000nmのL
UVと、粒径が50nm未満の小さい一枚膜リポソームであるSUV(Small unilamellar vesicles)との中間に位置する。このため、保持容積もSUVより大きくなり、水溶性非電解質の薬効物質または造影物質のトラップ効率、換言すると内包効率も、後述するように格段に優れたものとなる。また、MLV、LUVと違い、細網内皮系細胞に取り込まれて急速に血流から消失することもない。
リポソーム粒子のサイズおよびその分布は、本発明の方法により製造される水溶性薬剤含有リポソームが目指す、高い血中滞留性、ターゲティング性、送達効率と密接に関わっている。粒径は凍結かつ断レプリカ法により測定することができる。ここで「中心粒径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径を指している。粒径の調整は、処方またはプロセス条件で行なうことができる。たとえば、上記の超臨界の圧力を大きくすると形成されるリポソーム粒径は小さくなる。
上記のように受動的ターゲティング能力をリポソームに持たせるには、その粒径のサイジングが重要である。特2619037号公報には、粒径3000nm以上のリポソームを排除することにより、肺の毛細血管における不都合な保持が回避されると記載されている。
本発明の方法により製造される水溶性薬剤含有リポソームの中心粒径は、通常50〜300nm、好ましくは50〜200nm、より好ましくは50〜130nmである。治療、診断、X線撮像の目
的に応じて、粒径を適切に設定することができる。たとえば腫瘍部分への選択的送達には、特に110〜130nmが好ましい。リポソームの粒径を100〜200nm、より好ましくは110〜130nmの範囲に均一に揃えることにより癌組織へ選択的に薬効物質または造影剤を集中させることが可能となる。これは「EPR効果」として知られている。固形癌組織にある新生血管壁の孔は、正常組織の毛細血管壁窓(fenestra)の孔サイズ、30〜80nm未満に比べて異常に大きく、約100nm〜約200nmの大きさの分子でも血管壁から漏れ出る。すなわちEPR効果は、癌組織にある新生血管壁では、正常組織の微小血管壁より透過性が高いことによるものである。
リポソームおよびその利用
本発明の方法により製造される水溶性薬剤含有リポソームは、狭い粒径範囲に揃えた、実質的に一枚膜のリポソームであり、特に生理食塩水中での安定性が向上している。本発明のリポソームは、医薬の運搬体、検査薬、診断薬、センサー、固定化触媒など各種の用途に利用できる。その特徴を発揮するのに好適な用途は、血中安定性および血中滞留性を利用した薬効物質の標的部位への送達である。上記用途に使用するための製剤であり、本発明の水溶性薬剤含有リポソームを含む態様の製剤を、本明細書では「リポソーム製剤」という。リポソーム製剤には、製剤技術としてこれまで用いられている製剤助剤もしくは添加剤、たとえば安定化剤、保存剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤なども含められる。その形態にも水性媒体(水をベースとして薬効物質、製剤助剤などを溶解する溶媒であり、蒸留水、局方注射用水、純水などの水のほか、生理食塩水、各種緩衝液、塩類などを含む水溶液などが挙げられる。)に分散または懸濁させた液体製剤などがある。
水溶性の非電解質物質、好ましくは薬効物質または造影物質をリポソームというマイクロキャリヤーに封入する場合には、送達物質の送達効率および保持安定性に加えて脂質の用量も考慮されねばならない。脂質量が多くなるとリポソーム製剤の粘度が大きくなる。リポソーム内への薬効物質または造影物質の封入量については、リポソーム内に封入された水溶液中に薬効物質または造影物質が、リポソーム膜脂質重量に対して、1〜10、好ま
しくは3〜8、より好ましくは5〜8の重量比で含有されていることが望ましい。
リポソーム内の水相へカプセル化された薬効物質または造影物質の重量比が1未満であると、比較的多量の脂質を注入することが必要となり、結果的に薬効物質などの送達効率が悪くなる。特許2619037号公報の記載によると、当該比が1でも当時の技術水準からは高い値とされていた。リポソーム製剤液の粘度は、リポソームの脂質量にも左右されるため、保持容積および内包効率に優れる一枚膜リポソームの優位性は明らかである。反対に、リポソーム膜脂質重量に対する薬効物質または造影物質の封入重量比が10を超えると、リポソームが構造的にも不安定となり、リポソーム膜外への薬効物質または造影物質の拡散、漏出は貯蔵中または生体内に注入された後でも避けられない。またリポソーム懸濁薬剤が製造され、単離した直後は100%の封入が達成されても、浸透圧効果による不
安定化に基づいて、早くも短時間に封入成分が減少していくことが記載されている(特表平9−505821号公報)。
リポソーム製剤液の粘度は、37℃で、6cPa以下、好ましくは0.9〜3cPaである。
さらには、投与後にリポソームが体内に安定に維持されるように、体内の浸透圧に対し、等張の溶液または懸濁液の形でリポソーム中に封入される。上記リポソーム製剤液の好ましいpH範囲は、室温で6.5〜8.5、さらに好ましくは6.8〜7.8である。リポソームの内包物質が、水溶性薬効物質または多ヒドロキシル基を有する造影物質である場合、好ましい緩衝液は、米国特許第4278654号に記載されているような負の温度係数を有する緩衝液で
ある。アミン系緩衝液はこのような要求を満たす性質を有しており、特に好ましくはトリス(トロメタモール)である。このタイプの緩衝液は、オートクレーブ温度で低いpHを有し、このことがオートクレーブ中のリポソーム製剤の安定性を増し、他方、室温では生理的に許容されるpHに戻る。この場合、濾過滅菌のようにリポソーム粒径の微小化という制約も受けない。したがって、注射用無菌製剤を製造するために、リポソーム調製物をオートクレーブ滅菌できることは極めて便利であり、貯蔵安定性なども確保できる。しかしオートクレーブ滅菌を適用できないリポソームには、濾過滅菌を行なうのがよい。
リポソーム製剤として等張の溶液または懸濁液を得るには、等張液を提供する濃度で、リポソームを媒質中に溶解もしくは懸濁させる。製剤が単独では等張液を提供できない場合、等張の溶液もしくは懸濁液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、たとえば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を水性媒体中に添加してもよい。
特に薬物送達性およびリポソームの内包物質の保持効率が改善された、より好ましいリポソーム製剤の実施態様の一例は、脂質膜にポリアルキレンオキシド鎖および/またはステロールを有し、中心粒径が50〜200nmである一枚膜リポソームを含み、該リポソームが
水溶性薬剤を脂質膜重量に対して3〜8の重量比で含有している。本発明の方法により製造されるリポソームは、リポソームの構造安定化と内包物質の保持安定性を図るとともに、リポソームの血中滞留性を高めている。これにより薬効物質もしくは造影物質の効率的送達ならびに良好なターゲティングを達成することができる。
本発明によるリポソーム用脂質の製造方法は、リン脂質などを超臨界二酸化炭素に溶解してリポソームを作製する方法を採用するため、有毒な溶媒、特に毒性の高いクロル系溶媒を使用する必要がない。
本発明のリポソーム用脂質は、リン脂質などのリポソーム膜構成成分の配向が均一であり、水分散性が良好である。
本発明の方法によるリポソームは、中心粒径を揃えた実質的に一枚膜のリポソームであ
るため、封入物質である水溶性薬剤の内包率を向上させている。さらにリポソーム構造の安定化および封入物質の保持安定性を改善させている。
〔実施例〕
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。本発明は、かかる実施例によりなんら限定されるものではない。
ジパルミトイルホスファチジルコリン(以下、DPPC)40mgと、アデカ社製「プルロニックF-68」1.2mg、オレイン酸0.4mgとをサフィアグラスののぞき穴を備え、可動式ピスト
ンのついたステンレス製圧力容器(内容積50ml)に撹拌子とともに入れて、蓋をした。圧力容器をマグネチックスターラー上に載せ、圧力容器の撹拌子を回転させながら、圧力容器内を60℃に加熱した。続いて5MPasの圧力の液体二酸化炭素13gを加えた。ピストン
でゆっくり内容積を小さくすることにより、液化二酸化炭素を超臨界状態の流体とさせ、さらに20MPasの圧力となるまでゆっくりと加圧した。その後しばらく撹拌子で圧力容器内を撹拌した後、局方注射用水、5mlを液体クロマトグラフィーのポンプを用いて、圧力容器内に、約50分間かけて投入した。その後系内の二酸化炭素を徐々に排出し、常圧までに戻して、リポソームの分散液を得た。この操作を4回繰り返した。
1回目のリポソームは、再度60℃に加熱した後、孔径1μmのアドバンテック社製の混合セルロースフィルターで濾過した後、孔径0.45μmのアドバンテック社製の混合セルロースフィルターで6回、濾過を行った。これを凍結乾燥した。その後、コニカミノルタエ
ムジー社製のX線用造影剤「オイパミドール150」を5ml加えて、数回転倒撹拌して、X線造影剤用ノリポソーム分散液1を得た。
2回目のリポソームは、再度60℃に加熱した後、孔径1μmのアドバンテック社製の混合セルロースフィルターで濾過した後、孔径0.45μmのアドバンテック社製の混合セルロースフィルターで3回、孔径0.3μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで
6回濾過を行った。これを凍結乾燥した。その後、コニカミノルタエムジー社製のX線用造影剤「オイパミドール150」を5ml加えて、数回転倒撹拌して、X線造影剤用ノリポソーム分散液2を得た。
3回目のリポソームは、再度60℃に加熱した後、孔径1μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで濾過した後、孔径0.45μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3回、孔径0.3μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3回
、孔径0.2μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで6回、濾過を行った。
これを凍結乾燥した。その後、コニカミノルタエムジー社製のX線用造影剤「オイパミドール150」を5ml加えて、数回転倒撹拌して、X線造影剤用ノリポソーム分散液3を得た。
4回目のリポソームは、再度60℃に加熱した後、孔径1μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで濾過した後、孔径0.45μmのアドバンテック社製の混合セルロースフィルターで3回、孔径0.3μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3
回、0.2μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3回、0.1μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで6回濾過を行った。これを凍結乾燥した。その後、コニカミノルタエムジー社製のX線用造影剤「オイパミドール150」を5ml加えて、数回転倒撹拌して、X線造影剤用のリポソーム分散液4を得た。
上記リポソーム分散液1〜4をそれぞれ0.5g、透析膜中に入れ、生理食塩水中で3回透
析を行った後、エタノール/水、3/1の中に入れ、リポソームを壊し、内包していた造影剤濃度を分光光度計で測定したところ、薬剤の9〜15%が内包されていることがわかった。
水添大豆ホスファチジルコリン49mg、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミンのナトリウム
塩 15.95mg、コレステロール15.95mg、をサフィアグラスののぞき穴を備え、可動式ピストンのついたステンレス製圧力容器(内容積50ml)に撹拌子とともに入れて、蓋をした。圧力容器をマグネチックスターラー上に載せ、圧力容器の撹拌子を回転させながら、圧力容器内を75℃に加熱した。続いて5MPasの圧力の液体二酸化炭素13gを加えた。ピスト
ンでゆっくり内容積を小さくすることにより、液化二酸化炭素を超臨界状態の流体とさせ、さらに20MPasの圧力となるまでゆっくりと加圧した。その後しばらく撹拌子で圧力容器内を撹拌した後、局方注射用水、5mlを液体クロマトグラフィーのポンプを用いて、圧力容器内に、約50分間かけて投入した。その後系内の二酸化炭素を徐々に排出し、常圧までに戻して、リポソームの分散液を得た。
リポソームの分散液は、再度60℃に加熱した後、孔径1μmのアドバンテック社製の混合セルロースフィルターで濾過した後、孔径0.45μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3回、孔径0.3μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3
回、0.2μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで3回、0.1μmのアドバンテック社製混合セルロースフィルターで6回濾過を行った。これを凍結乾燥した。その後、コニカミノルタエムジー社製のX線用造影剤「オイパミドール150」を5ml加えて、数回転倒撹拌して、X線造影剤用のリポソーム分散液を得た。
上記リポソーム分散液0.5gを透析膜中に入れ、生理食塩水中で3回透析を行った後、エタノール/水、3/1の中に入れ、リポソームを壊し、内包していた造影剤濃度を分光光度計で測定したところ、薬剤の9〜15%が内包されていることがわかった。

Claims (5)

  1. 転移温度を有するリン脂質を少なくとも含有するリポソーム膜構成物質を、該リン脂質の転移温度以上に加熱した、超臨界または亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散し、これに水を加えた後に撹拌し、次いで大気圧まで減圧して、該リポソーム膜構成物質を含有する水性懸濁液を凍結乾燥することにより得られるリポソーム用脂質の製造方法。
  2. 前記の凍結乾燥の前に、前記水性懸濁液を前記リン脂質の“転移温度+10”℃以上に加温し、その後、細孔のある膜を通すことを特徴とする請求項1に記載のリポソーム用脂質の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の製造方法により得られるリポソーム用脂質。
  4. 請求項3に記載のリポソーム用脂質を、薬剤水溶液に添加して混合することにより得られる水溶性薬剤含有リポソームの製造方法。
  5. 請求項4に記載の製造方法により得られる水溶性薬剤含有リポソーム。
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