明細書
ポリォキシアルキレン鎖含有脂質誘導体
及び該誘導体を含有する脂質膜構造体
技術分野
本発明は、 ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体及ぴ該誘導体を含有する脂 質膜構造体に関する。 背景技術
薬物等の生理活性物質の副作用を低減させ、 薬物の標的部位への選択的送達性 を向上させる目的で薬物送達システム (D D S ) の開発が行われている。 例えば 、 蛋白製剤等におけるポリペプチドを修飾する方法、 リボソームあるいは親水性 ポリマ と疎水性ポリマーとのコポリマーを用いた高分子ミセル等の微粒子で薬 剤等を包含する方法等がある。 初期のリボソーム製剤等においては、 静脈内に投 与した場合に血液中での滞留性が悪く、 肝臓、 脾臓等の細網内皮系組織 (Reticu lo - Endothelial System:以下 「R E S」 とレ、う。) に捕捉されやすいという問題 があった。 このため、 R E Sの存在は、 R E S以外の臓器へ医薬を送達させるタ ーゲッティング型製剤や、 長時間にわたって血液中に製剤を滞留させ、 医薬の放 出をコントロールする徐放型製剤としての微粒子性医薬キヤリァを利用する際に 大きな障害となっていた。
このような問題を解決すべく、 R E Sにおける捕捉の回避を意図して、 膜表面 を糖脂質、 糖タンパク質、 又はポリエチレングリコール脂質等で修飾し微小循環 性を付与したリボソームが提案されている (国際公開第 9 1 / 0 5 5 4 6号パン フレット)。 かかるリボソームによれば、血中での滞留性を向上させ、 E P R効果 (Enhanced Permeability and Retention Effect) を禾 U用しリボソーム粒子を癌 細胞の血管細胞からのみ透過させることで薬物を癌細胞の近くに集積させること が可能になる。 しかしながら、 かかるリボソームには、 内包された薬物が迅速に
放出されないという問題がある。
近年、 機能性リン脂質等を用いたリボソームが、 前述の受動的な薬物の標的部 位への到達ではなく、 能動的に効率よく薬物を標的部位に到達させ得るとの報告 がある (特開平 0 4— 3 4 6 9 1 8号公報)。 また、抗腫瘍剤等を標的部位に選択 的に移行させるベく、 抗腫瘍剤等の有効成分にアミノ酸からなるスぺーサーを介
アルコールを結合させた薬物複合体とする 方法が報告されている(特開平 1 1— 0 9 2 4 0 5号公報)。 発明の開示
しかしながら、 これらの方法によれば、 薬物の血中での滞留性や標的部位への 輸送性等が改善されるが、 薬物に多糖類等を直接共有結合させるため、 薬物によ つては活性の低下等の問題が生ずる。
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、 その解決しょうとする課 題はドラッグデリバリ一システムに適用した際の血中滞留性及び標的部位への選 択的送達性に優れる新規な脂質誘導体及び脂質膜構造体を提供することにある。 本発明者らは、 上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、 ポリオキシァ ルキレン鎖を導入した脂質誘導体を得、 これを含む脂質膜構造体をドラッグデリ バリーシステムに適用すると、 血中での長時間の滞留が可能になり、 また標的部 位においてポリオキシアルキレン鎖が効率的に切断されるため血中滞留性の調節 が可能になることを見出した。 更に詳細に研究を重ねた結果、 ポリオキシアルキ レン鎖の切断により脂質膜構造体の安定性が低下して内包された生理活性物質が 放出されるため、 標的部位への生理活性物質の効率的な送達及び放出が可能にな ることを見出した。 これらの知見に基づき、 本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は、 以下の内容を包含する。
[ 1 ] 下記一般式 (1 ) で表されるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
W— Y— L (1)
Lは、 アミノ基、 水酸基、 カルボキシル基及びマレイミ ド基のうちの少なくと も 1種の基を含有する脂肪族炭化水素、 グリセ口脂質、 スフインゴ脂質及びステ ロールからなる群より選ばれる脂質に由来する残基、
Yは、 一CONH—、 一 NHCO—、 一 OCONH—、 一NHOCO—、 一 C OO—、 一 OOC—、 一 CH2NH—、 一 NHCH2—、 一S— CHく、 >CH— S—、 及び一 O—からなる群より選ばれる基を含有する 2価の基、
Wは、 2〜1 0個のアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸残基、
X1は、 一 NHCO—、 又は一OOC—を含有する 2価の基、
X2は、 一 OCONH—、 一 CONH—、 —CH2NH—、 及び一 NHC (O) NH—からなる群より選ばれる基を含有する 2価の基、
X3は、 >CH— S—、 — NHCOO—、 — COO—、 —COS—、 及び—O— からなる群より選ばれる基を含有する 2価の基、
OAは、 炭素数 2〜4のォキシアルキレン基、
Zは、 水素原子又はメチル基、
ml、 1112及び1113は、 それぞれ独立して 0〜 5であり、 かつ、 l≤ml +m 2 +m 3≤ 9を満たす正数、
n 1、 n 2及び n 3は、 それぞれ独立して 4〜 800であり、 かつ、 4≤ (nl Xm 1 ) + (n 2 Xm 2) + ( n 3 X m 3 ) ≤ 2000を満たす正数、
をそれぞれ示す。
[2] 上記 X1がー OOC—を含有する 2価の基であり、 上記 X2がー OCONH 一、 又は一 CH2NH—を含有する 2価の基であり、 上記 X3が >CH—S―、 又 は一 O—を含有する 2価の基である、 上記 [1] 記載のポリオキシアルキレン鎖
含有脂質誘導体。
[3] 上記 ml が 0である、 上記 [2] 記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質 誘導体。
[4] 上記 OAがォキシエチレン基である、 上記 [1] 〜 [3] のいずれかに記 載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[5] 上記 ml、 m 2及ぴ m 3が 1 1 +m 2 +m 3≤ 6を満たす正数であり 、 かつ、 上記 n l、 11 2及び113が40≤ (nlXml) + (n 2 Xm 2) + (n 3 Xm 3) ≤ 1000を満たす正数である、 上記 [1] 〜 [4] のいずれかに記 載のポリォキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[6〕 上記 ml、 m 2及び m 3が 2≤m 1 +m2 +m 3≤ 6を満たす正数である 、 上記 [1] 〜 [5] のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導 体。
[7] 上記 ml及び m 3が 0であり、 上記 m 2が 1であり、 上記 X2がー O CON H—を含有する 2価の基であり、 上記 Yがー NHCO—を含有する 2価の基であ る、 上記 [1] 〜 [5] のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘 導体。
[8] 上記 Lがグリセ口リン脂質に由来する残基である、 上記 [1] 〜 [7] の いずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[9] 上記 Wが 2〜 8個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸残基である、 上 記 [1] 〜 [8] のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[10] 上記 Wが G l y— G l y、 G l y— G l y— G l y、 G l y— G l y— G l y_G l y、 G l y— G l y— G l y— G l y— G l y、 又は G 1 y— G 1 y -G 1 y -G 1 y -G 1 y -G 1 yで表される 2〜 6個のグリシン残基を含有 するポリアミノ酸残基である、 上記 [ 1] 〜 [9] のいずれかに記載のポリオキ シアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[1 1] 上記 Wが P h e— G l y、 L e u— G l y、 又は T y r -G 1 yで表さ れるジペプチドを含有するポリアミノ酸残基である、 上記 [1] 〜 [1 0] のい
ずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[1 2] 上記 Wが L y s残基、 A r g残基、 C y s残基、 A s 残基、 G 1 u残 基又は S e r残基を含有するポリアミノ酸残基である、 上記 [1] 〜 [1 1] の いずれかに記載のポリォキシアルキレン鎖含有脂質誘導体。
[1 3] _ fB [ 1 ] - [12] のいずれかに記載のポリオキシアルキレン鎖含有 脂質誘導体を含有する、 脂質膜構造体。
[14] 上記ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の含有率が当該脂質膜構造 体の総重量に対して 0. 1〜25重量%でぁる、 上記 [1 3] 記載の脂質膜構造 体。
[1 5] 脂質膜の構成成分としてホスファチジルエタノールアミンを含有する、 上記 [1 3] 又は [14] 記載の脂質膜構造体。
[ 16] 上記ホスファチジルエタノールァミンがジォレオイルホスファチジルェ タノールァミンである、 上記 [1 5] 記載の脂質膜構造体。
[1 7] リボソームの形態である、 上記 [1 3] 〜 [1 6] のいずれかに記載の 脂質膜構造体。
[1 8] 生理活性物質を内包する、 上記 [1 7] 記載の脂質膜構造体。
[1 9] 上記生理活性物質が pH 6以下で放出される、 上記 [1 8] 記載の脂質 膜構造体。
[20] 上記 [1] 記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体であって、 L がジォレオイルホスファチジルェタノールァミン残基であるポリオキシアルキレ ン鎖含有脂質誘導体と、 ジォレオイルホスファチジルェタノールァミンとを含有 してなる脂質膜を有する、 脂質膜構造体。
[2 1] Lがジォレオイルホスファチジルエタノールァミン残基である上記 [1 ] 記載のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体と、 ジォレオイルホスファチジ ルエタノールァミンとからなる脂質膜を有する、 脂質膜構造体。 図面の簡単な説明
図 1は、 実施例 5〜 7及び比較例 1のリボソームの p Hに対する内包蛍光色素 の放出割合を示す図である。
図 2は、 実施例 6のリボソームの血清中での安定性を示す図である。
図 3は、 実施例 5〜 6及び比較例 2〜 3のリポソ一ムのパパイン処理後の p H に対する内包蛍光色素の放出割合を示す図である。
図 4は、 実施例 8のリボソームの cathepsin Bへの感受性及びリボソームの崩 壌性を示す図である。
図 5は、 実施例 9及び比較例 4〜 5の抗癌剤 (ドキソルビシン) 封入リポソ一 ムの血中動態とリポソ一ムの抗癌剤保持率を示す図である。
図 6は、 実施例 9の抗癌剤 (ドキソルビシン) 封入リボソームの抗腫瘍効果を 示す図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体 (以下、 単に 「脂質誘導体」 という場合がある。) は、 上記一般式 (1 ) で表されるものである。
上記一般式 (1 ) において、 Lは脂質残基を示す。 かかる脂質残基は、 ァミノ 基、 水酸基、 カルボキシル基及びマレイミ ド基のうちの少なくとも 1種の基を含 有する脂肪族炭化水素、 グリセ口脂質、 スフインゴ脂質又はステロールに由来す る残基である。 ここで、 本発明における 「残基」 とは、 脂質構造に含まれるアミ ノ基、 水酸基、 カルボキシル基又はマレイミ ド基を除いた基をいう。
アミノ基、 水酸基、 力ルポキシル基及びマレイミ ド基のうちの少なく とも 1種 の基を含有する脂肪族炭化水素に由来する残基としては、 飽和又は不飽和でも、 また直鎖状、 分岐状又は環状のいずれであってもよい。 その炭素数は、 好ましく は 8〜2 4、 より好ましくは 1 2〜2 0である。 かかる脂肪族炭化水素に由来の 残基としては、 例えば、 ォクチル基、 ノ-ル基、 デシル基、 ゥンデシル基、 ドデ シル基、 トリデシル基、 テトラデシル基、 ペンタデシル基、 へキサデシル基、 へ
プタデシル基、 ォクタデシル基、 イソステアリル基、 ォクタデセ-ル基、 ォクタ デカジエニル基、 ナノデシノレ基、 エイコシル基、 ドコシル基、 ドコセニル基、 テ トラコシル基等が挙げられる。
アミノ基、 水酸基、 カルボキシル基及びマレイミ ド基のうちの少なく とも 1種 の基を含有する脂肪族炭化水素としては、 例えば脂肪酸、 脂肪族ァミン、 脂肪族 アルコール、 及びそれらの誘導体が挙げられる。 具体的には、 脂肪酸としては、 力プリル酸、 力プリン酸、 ラウリン酸、 ミリスチン酸、 パルミチン酸、 ステアリ ン酸、 イソステアリン酸、 ォレイン酸、 エライジン酸、 リノール酸、 リノレン酸 、 ァラキン酸、 ァラキドン酸等が挙げられ、 好ましくはモノカルボン酸である。 脂肪族ァミンとしては、 ォクチルァミン、 デシルァミン、 ドデシルァミン、 テト ラデシルァミン、 へキサデシルァミン、 ォクタデシルァミン、 ォクタデセニルァ ミン、 エイコシルァミン等が挙げられ、 これらの脂肪族モノアミンが好適である 。 脂肪族アルコールとしては、 ォクチルアルコール、 デシルアルコール、 ドデシ ルアルコーノレ、 テトラデシルアルコール、 へキサデシノレアルコール、 ォクタデシ ルァノレコーノレ、 ォクタデセエルアルコール、 エイコシノレアルコール等が挙げられ 、 これらの脂肪族モノアルコールが好適である。
また、 脂肪族ァミンあるいは脂肪族アルコールに下記 (e O ) のような二価性 試薬を反応させてマレイミ ド基含有脂質として用いることもできる。
上記式中、 Qは炭素数 1〜 9の炭化水素基 (例えば、 アルキレン基)、 Uは水素 原子又は一 S O
3 N aを示す。
グリセ口脂質としては、 グリセ口リン脂質、 ジァシルグリセロール等が挙げら れる。 グリセ口リン脂質しては、 ホスファチジルエタノールァミン、 ホスファチ ジン酸、 ホスファチジルグリセロール、 ホスファチジルセリン等が挙げられる。
ダリセロリン脂質の複数存在するァシル基の炭素数は、 それぞれ独立に好ましく は 8〜24、 より好ましくは 1 2〜20、 特に好ましくは 1 8である。 かかるァ シル基は、 同一でも異なっていてもよく、 また飽和又は不飽和でも、 直鎖状又は 分岐状のいずれであってもよい。 また、 ァシル基の種類は特に限定されることな く、 通常は脂肪酸に由来するァシル基を好適に用いることができる。 具体的には 、 力プリル酸、 力プリン酸、 ラウリン酸、 ミリスチン酸、 パルミチン酸、 パルミ トレイン酸、 ステアリン酸、 イソステアリン酸、 ォレイン酸、 リノール酸、 ァラ キン酸、 ベヘン酸、 エル力酸、 リグノセリン酸等の脂肪酸由来のァシル基が挙げ られる。 なお、 上記炭素数が 24を越える場合には、 水相への分散性が悪く反応 性が低下する傾向にある。 また、 上記炭素数が 8より少ない場合には、 精製工程 での結晶性が悪く、 目的物の純度が低下する傾向にある。 グリセ口脂質の残基は 、 脂質構造にアミノ基、 水酸基、 カルボキシル基、 マレイミ ド基が複数存在する 場合、 残基にアミノ基、 水酸基、 力ルポキシル基及びマレイミ ド基のうちの少な くとも 1種が残っていてもよい。
スフインゴ脂質としては、 スフインゴミエリンに代表されるスフインゴリン脂 質、 スフインゴ糖脂質等が挙げられる。 また、 それらの構成成分であるセラミド 、 スフインゴシン等には、 その誘導体等が含まれる。 その誘導体としては、 セラ ミ ドホスホリルエタノールアミン、 セラミ ドホスホリルグリセロール、 セラミ ド ホスホリルグリセロールホスファート等が挙げられる。 また、 スフインゴシンと 結合する脂肪酸としては、 力プリル酸、 力プリン酸、 ラウリン酸、 ミリスチン酸 、 ノ、 °ノレミチン酸、 パルミ トレイン酸、 ステアリン酸、 イソステアリン酸、 ォレイ ン酸、 リノール酸、 ァラキン酸、 ベヘン酸、 エル力酸、 リグノセリン酸等が挙げ られる。
ステロールとしては、 例えば、 コレステロ一ノレ、 コレスタノール等が挙げられ る。
Yは、 一 CONH—、 一 NHCO—、 一 OCONH—、 一 NHOCO—、 —C
OO—、 一 OOC—、 一 CH2NH—、 一 NHCH2—、 — S— CHく、 >CH-
S—、 又は一 O—を含有する 2価の基である。 好ましくは、 一CONH―、 一 N HCO—、 一 OCONH—、 一 NHOCO—、 一 COO—、 一 OOC—、 一 NH CH2—、 又は一 S— CHくを含有する 2価の基である。 かかる Yは、 例えば、 脂質のアミノ基、 水酸基、 カルボキシル基又はマレイミ ド基と、 ポリアミノ酸の アミノ基、 カルボキシル基、 水酸基又はチオール基との反応により形成される基 であり、 一般式 (1) における L及び Wの結合基として機能する。 また、 Yは前 述した基を含有していれば炭化水素基等を有してもよく、 特に限定されるもので はない。 以下、 Yで表される 2価の基を具体的に説明する。
例えば、 脂質がホスファチジルエタノールァミンである場合、 かかる脂質のァ ミノ基と、 ポリアミノ酸の C末端のカルボキシル基、 あるいはポリアミノ酸がグ ルタミン酸残基又はァスパラギン酸残基を含有する場合のカルボキシル基との反 応により形成される一 CONH—、 またかかる脂質に無水コハク酸、 無水グルタ ル酸等の 2塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入したものと、 ポリア ミノ酸の N末端のひーァミノ基、 あるいはポリアミノ酸がリジン等の塩基性ァミ ノ酸残基を含有する場合の ε—アミノ基との反応により形成される一 CO (CH 2) 2CONH―、 -CO (CH2) 3CONH―、 更にはかかる脂質に上記 (e 0 ) で表される試薬を反応させてマレイミ ド基を導入したものと、 ポリアミノ酸が システィン残基を含有する場合のチオール基との反応により形成される下記式(a 1) で表される 2価の基等が挙げられる。 なお、 下記式中、 Qは上記と同義である
また、 例えば、 脂質がコレステロール又はジァシルグリセロールである場合、 かかる脂質の末端水酸基と、 ポリアミノ酸の C末端、 あるいはポリアミノ酸がグ ルタミン酸残基又はァスパラギン酸残基を含有する場合のカルボキシル基との反
応により形成される一 COO—、 前述の末端水酸基を p—二トロフエュルカーボ ネート等でカーボネート化したものと、 ポリアミノ酸の N末端のひ一アミノ基、 又はポリアミノ酸がリジン等の塩基性ァミノ酸残基を含有する場合の ε —アミノ 基との結合により形成される一 OCONH—が挙げられる。 また、 前述の末端水 酸基をプロピルアミン又はェチルァミンに転換したものと、 ポリアミノ酸の C末 端の力ルポキシル基、 あるいはポリアミノ酸がグルタミン酸残基又はァスパラギ ン酸残基を含有する場合のカルボキシル基との反応により形成される一 C H
2 C H
2NHCO—、 一 CH
2CH
2CH
2NHCO—、更には前述の脂質にマレイミ ド 基を導入したものと、 ポリアミノ酸がシスティン残基を含有する場合のチオール 基との反応により形成される一 S— CHくが挙げられる。
Wは、 2〜1 0個のアミノ酸残基を含有するポリアミノ酸残基である。 かかる Wは、 生体内において加水分解酵素により切断される基として機能する。 加水分 解酵素としては、 例えば腫瘍細胞及び炎症部位周辺に存在する酵素、 プロテア一 ゼであれば特に限定されるものではない。 例えば、 カテブシン、 パパイン、 ぺプ シン、 トリプシン、 キモトリブシン等のエンドぺプチダーゼであってもよい。 W で表されるポリアミノ酸残基としては、 加水分解酵素によって切断されるもので あれば特に限定されるものではないが、 2〜 8個のグリシン残基を含有するポリ アミノ酸残基が好適である。 具体的には、 G l y—G l y、 G l y_G l y— G 1 y, G 1 y-G 1 y-G 1 y-G 1 y (配列番号 1)、 G l y— G l y— G l y -G 1 y -G 1 y (配列番号 2)、 G l y— G l y— G l y— G l y— G l y—G 1 y (配列番号 3) で表される 2〜6個のグリシン残基を含有するポリアミノ酸 残基が挙げられる。 更には、 P h e (フエ-ルァラニン) 一 G l y、 L e u (口 イシン) 一 G 1 y、 Ty r (チロシン) 一 G l y、 P h e— P h e、 A l a (ァ ラニン) 一 G l y、 P r o (プロリン) — G l y、 G l y— P h e、 S e r (セ リン) 一 G 1 yで表されるジペプチドを含有するポリアミノ酸残基や、 Ly s ( リジン) 残基、 Ar g (アルギニン) 残基、 Cy s (システィン) 残基、 A s p
(ァスパラギン酸) 残基、 G l u (グルタミン酸) 残基、 S e r (セリン) 残基
のいずれかを含有するポリアミノ酸残基が挙げられる。 また、 G l y— Ph e— G l y、 G l y-G l y-P h e -G l y (配列番号 4)、 G l y— P h e— G 1 y -G 1 y (配列番号 5)、 P h e _G l y— G l y— G l y (配列番号 6)、 P h e -Ph e -G l y—G l y (配列番号 7)、 G 1 y—G l y—G l y -P h e —G l y (配列番号 8)、 G 1 y-G 1 y-P h e -P h e (配列番号 9 )、 G 1 y— G l y— G l y— P h e (配列番号 1 0) を含有するポリアミノ酸残基が挙 げられる。
Wで表されるポリアミノ酸残基が酵素で切断されることにより、 リボソーム等 の脂質膜構造体表面のポリオキシアルキレン鎖が脱離する。 これにより、 脂質膜 構造体が環境に晒されて破壊し、 生理活性物質が体内に放出される。 例えば、 生 理活性物質を内包し、 かつ本発明の脂質誘導体を配合させたリボソームを血中に 投与した場合、 腫瘍部位周辺に該リボソームが到達すると、 ぺプチダーゼによつ てポリアミノ酸残基が加水分解を受けてポリオキシアルキレン鎖が脱離し、 リポ ソーム表面の水和層がなくなる。 これにより、 腫瘍部位での低い p H環境により 膜構造を安定に保てなくなり、 崩壌して内包された生理活性物質を遊離し得る、 pH感受性のリボソームを得ることができる。 また、 前述したポリアミノ酸を使 用することで、 生理活性物質の遊離速度を調整することができる。
さらに、 L y s残基、 A r g残基、 C y s残基、 A s p残基、 G 1 u残基、 S e r残基を含有するポリアミノ酸は、 側鎖にアミノ基、 チオール基、 カルボキシ ル基、 水酸基を有する。 このため、 これらのポリアミノ酸は、 末端を変性したポ リオキシアルキレンと反応することができる。 これにより、 ポリアミノ酸の末端 (N末端及び C末端) だけでなく、 側鎖にもポリオキシアルキレン鎖を付与する ことができるため、 本発明の脂質誘導体に複数本のポリオキシアルキレン鎖を導 入することが可能になる。 よって、 かかる脂質誘導体をリボソームとした場合に は、 1本のポリオキシアルキレン鎖を有するリボソームに比べて、 2本以上のポ リォキシアルキレン鎖を有するリポソームの方が安定性等に優れるようになるだ けでなく、 ポリアミノ酸鎖が酵素により切断された際に複数本のポリォキシアル
キレン鎖がリボソーム表面から同時に外れるため、 生理活性物質の遊離を一層促 進することができる。
(OA) n l、 (OA) n 2、 (OA) n3は、 それぞれ独立して炭素数 2〜4のォ キシアルキレン基を構成単位とするポリォキシアルキレン基を示す。 ォキシアル キレン基は直鎖状でも分岐状でもよく、 またポリオキシアルキレン基が複数種類 のォキシアルキレン基を有する場合には、 ポリオキシアルキレン基はプロック状 でもランダム状でもよい。
ml、 m2、 m3は、 それぞれ独立して 0〜 5であり、 かつ、 m l +m2 +m 3が 1〜 9を満たす正数である。 ml、 m2、 m 3は、 リボソームの安定性及び 生理活性物質の遊離促進の点から、 111 1 +1112 +1113の値が1〜6でぁることが 好ましく、 2〜6であることがより好ましい。 なお、 m l、 m 2及び m 3の合計 数は、 脂質誘導体中のポリオキシアルキレン鎖の総数を示す。
nl、 11 2及ぴ11 3は、 アルキレンォキシドの平均付加モル数を意味する。 nl 、 n 2及び n 3は、 それぞれ独立して 4〜 800、 好ましくは 6〜227であり 、 かつ、 (nlXml) + ( n 2 X m 2 ) + ( n 3 X m 3 ) が 4〜2, 000、 好 ましくは 8〜1, 000、 より好ましくは 22〜 1 000、 更に好ましくは 40 〜1000、 特に好ましくは 40〜 500を満たす正数であることが望ましい。 nl、 n 2及ぴ n 3が 4よりも小さいと、脂質膜構造体に安定化を付与するための 水和層が充分に保たれず、 安定性が不充分となる。 また、 上記数式において上限 値が 2, 000よりも大きいと、 溶液にした場合に粘性が高く作業性が悪く取り 扱いが困難になる。 更に、 脂質誘導体の分子中における、 ポリオキシエチレン鎖 の親水性部分と脂質の疎水性部分とのバランスが悪く、 脂質膜構造体を形成した 場合に膜構造からポリォキシアルキレン鎖含有脂質誘導体が抜け落ちる可能性が ある。
Zは、 水素原子又はメチル基であり、 ポリオキシアルキレン基の末端基として 機能する。
X1は、 一 NHCO—、 又は一 OOC—を含有する 2価の基を示す。 かかる X1
は、 例えば、 ポリアミノ酸の C末端のカルボキシル基、 あるいはポリアミノ酸が グルタミン酸残基又はァスパラギン酸残基を含有する場合の側鎖のカルボキシル 基と、 末端にアミノ基又は水酸基を有するポリオキシアルキレン化合物との反応 により形成される 2価の基である。 X1としては、前述した結合基を含有していれ ば直鎖又は環状の炭化水素基等を含有してもよく、 特に限定されるものではない 。 X1としては、 下記式 (bl) 〜 (b3) で表される基が好適である。
-OCH2CH2CH2NHCO- (bl),
-OCH2CH2NHCO- (b2)、
-OO C- (b3)
X2は、 —OCONH—、 —CONH—、 —CH2NH—、 及び一 NHC (O) NH—からなる群より選ばれる基を含有する 2価の基を示す。 かかる X2は、 例 えば、 ポリアミノ酸の N末端のひーァミノ基、 又はポリアミノ酸がリジン残基若 しくはアルギニン残基を含有する場合の側鎖の ε—ァミノ基と、 末端にカーボネ ート基、 力ルポキシル基若しくはその活性エステル基、 イソシァネート基、 又は アルデヒ ド基を有するポリオキシアルキレン化合物との反応により形成される 2 価の基である。 X2としては、 前述した結合基を含有していれば直鎖又は環状の 炭化水素基等を含有してもよく、 特に限定されるものではない。 X2としては、 下記式 (cl) 〜 (c7) で表される基が好適である。
-OCONH- (cl)、
-OCOCH2CH2CONH- (c2)、
-OCOCH2CH2CH2CONH- (c3)、
一 OCH2CONH— (c4)、
-O (CH2) 5CONH- (c5)、
-OCONH (CH2) 6NHCONH— (c6)、
-OCH2CH2CH2NH- (c7)
3
X 3は、 > C H— S—、 — N H C O O—、 一 C O O—、 一 C O S—、 及ぴー O 一からなる群より選ばれる基を含有する 2価の基を示す。 かかる X 3としては、 例えば、 ポリアミノ酸がシスティン残基を含有する場合のチオール基、 又はポリ アミノ酸がセリ ン残基を含有する場合の水酸基と、 末端にマレイミ ド基を含有す るポリオキシアルキレン化合物との反応により形成される 2価の基、 あるいはィ ソシァネート基、 メタンスルホン酸基、 トリフルォロエタンスルホン酸基、 ρ— トルエンスルホン酸基、 カルボキシル基又はダリシジル基を含有するポリォキシ アルキレン化合物との反応により形成される 2価の基が挙げられる。 X 3として は、 下記式 (dl) 〜 (d4) で表される基が好適である。 なお、 下記式中、 aは 2 又は 3、 bは 2〜5である (
一。— (d4) 次に、 本発明のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の製造方法について説 明する。 本発明の脂質誘導体の製造方法は特に限定されないが、 例えば、 以下の 方法により製造することができる。
(i)ポリアミノ酸とポリオキシアルキレン化合物とを反応させた後に、更に脂質 を反応させる方法。
(ii) ポリアきノ酸と脂質とを反応させた後に、 更にポリオキシアルキレン化合 物を反応させる方法。
上記 (i) 及び (ii) のいずれの方法を採用してもよいが、 通常 (i) に記載の
方法の方が、 (ii) に記載の方法よりも反応性が高いことが多い。 また、 アミノ酸 とポリオキシアルキレン化合物とを反応させた後、 更に他のアミノ酸とぺプチド 結合させてポリアミノ酸を合成し、 次いで脂質との反応を行ってもよい。 なお、 ポリアミノ酸とポリオキシアルキレン化合物との反応は、 例えば、 以下の製法 1 〜6に記載の方法により行うことができる。 また、 製法 1〜6により得られるポ リォキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物と脂質との反応は、 以下の製法 7〜1 0に記載の方法により行うことができる。 なお、 ポリアミノ酸のアミノ基及び力. ルポキシル基は、 合成工程において、 「ペプチド合成の基礎と実験」 (泉屋信夫著 、 丸善株式会社発行、 1 98 5年 1月 20 ) に記載されるような保護基で保護 して使用することができる。
(製法 1 : X1がー NHCO—を含有する 2価の基である場合)
ポリオキ アルキレン化合物として、 例えば、 (〇A) n l、 (OA) n 2、 (OA ) n3で表されるポリオキシアルキレン基の末端が下記式 (el) 又は (e2) で表さ れるァミノ基であるポリオキシアルキレンァミン化合物を使用することができる 。
-OCH2CH2CH2NH2 (el)、
-OCH2CH2NH2 (e2) ポリアミノ酸としては、 例えば、 C末端にカルボキシル基を有するポリアミノ 酸、 あるいは側鎖にカルボキシル基を有するグルタミン酸残基又はァスパラギン 酸残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。 ポリアミノ酸のカルボ キシル基は、 脱水縮合剤と活性化剤とを用いて活性化エステルとして用いる力、 あるいは 1一ェチル一 3— (3—ジメチルァミノプロピル) カルボジイミ ド等の 水溶性カルボジィミ ドを用いて活性化してもよい。
脱水縮合剤としては、 ポリアミノ酸の力ルポキシル基同士を脱水縮合できるも のであれば特に制限なく使用できる。 このような脱水縮合剤としては、 ジシクロ へキシルカルポジイミ ド等のカルポジイミ ド誘導体が挙げられ、 特にジシクロへ
キシルカルポジイミ ドが好ましい。 脱水縮合剤の使用量としては、 ポリオキシァ ルキレンカルボン酸化合物の 1 . 0 5〜 5倍当量、 好ましくは 1 . 5〜 2 . 5倍 当量である。
活性化エステルは、 例えばポリアミノ酸と活性化剤とを脱水縮合剤の存在下で 反応させることにより得ることができる。 活性化剤の種類は特に限定されないが 、 例えば、 N—ヒ ドロキシコハク酸イミ ド、 Ν, Ν' ージコハク酸イミ ドカーボ ネート、 1ーヒ ドロキシベンゾトリァゾーノレ、 Ν—ヒ ドロキシ一 5—ノルボノレネ ン一 2, 3—ジカノレポキシイミ ド、 Ν—ヒ ドロキシフタノレイミ ド、 4ーヒ ドロキ シフエ二ルジメチルスルホニゥムメチノレサノレフエ一ト、 ィソプチルク口口ホルメ ート等が挙げられる。 これらの中では、 Ν—ヒ ドロキシコハク酸イミ ドが好まし レ、。 Ν—ヒ ドロキシコハク酸イミ ドの使用量は、 ポリアミノ酸に対して 0 . 1 〜 2倍当量である。 これにより、 収率を高めることができる場合がある。
ポリオキシアルキレンァミン化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存在下、 有機溶媒中で反応させることにより高純度で、 上記 2価の基を有するポリオキシ アルキレン一ポリアミノ酸化合物を製造することができる。 ポリオキシアルキレ ンァミン化合物の使用量は特に限定されるものではないが、 ポリオキシアルキレ ンァミン化合物 (Α) とポリアミノ酸 ( Β ) との当量比 (Α : Β ) が 1 : 1 〜 1 : 5であることが好ましい。
反応に使用する塩基性触媒の種類は特に限定されないが、 例えば、 トリェチル ァミン、 酢酸アンモニゥム等の窒素含有物質、 リン酸ナトリウム、 炭酸ナトリウ ム、 炭酸水素ナトリゥム、 ホウ酸ナトリゥム、 酢酸ナトリゥム等のナトリウム塩 が挙げられる。 塩基性触媒の使用量は、 例えば、 ポリアミノ酸に対して 1〜 1 0 倍当量、 好ましくは 1 . 2〜 5倍当量である。 反応温度は通常 1 0〜 9 0 °C、 好 ましくは 1 5〜 5 0 °C、 さらに好ましくは 2 0〜 4 5 °Cである。 1 0 °Cより低温 では反応率が低い場合があり、 9 0 °Cより高温では副反応物が生成する場合があ る。 反応時間は 1時間以上、 好ましくは 2〜 8時間である。
反応に使用する有機溶媒としてエタノール等の水酸基を有する有機溶媒を使用
すると、 ポリアミノ酸の末端のカルボキシル基と反応する場合がある。 このため 、 有機溶媒としては、 水酸基等の反応性官能基を有しないものであれば特に制限 なく使用することができる。 かかる有機溶媒としては、 例えば、 ァセトニトリル 、 ジメチルホルムァミ ド、 ジメチルスルホキシド、 又はこれらを含有する酢酸ェ チル、 ジクロロメタン、 クロ口ホルム、 ベンゼン及びトルエン等の混合溶媒が挙 げられる。 これらの中では、 ポリアミノ酸を溶解しやすい点で、 ァセトニトリル 、 ジメチルホルムアミ ドが好ましい。
反応終了後、 以下の工程を行うことにより精製することができる。 反応溶液か ら不溶物を濾過後、 濾液を濃縮又は貧溶媒に投入して結晶化する等の方法により 、 ポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物の結晶を純度よく得ることができ る。 得られた結晶を溶解し、 冷却又は貧溶媒を加えてポリオキシアルキレン一ポ リアミノ酸化合物の結晶を析出させることにより、 遊離のポリアミノ酸、 脱水縮 合剤、 N—ヒ ドロキシコハク酸イ ミ ド、 ジシクロへキシルカルポジイミ ド等を除 去して精製することができる。 この工程で使用する溶媒としては、 得られた結晶 を溶解し、 冷却によってポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物の結晶を析 出させることのできる溶媒、 又は貧溶媒を加えることによりポリオキシアルキレ ンーポリァミノ酸化合物を結晶化させることのできる溶媒が好ましい。
得られた結晶を酢酸ェチル等の溶媒に溶解後、 吸着剤を添加して攪拌する等の 方法により塩等の不純物を除去することが望ましい。 吸着剤としては、 アルカリ 土類金属酸化物 (例えば、酸化マグネシウム)、 アルカリ土類金属水酸化物 (例え ば、 水酸化マグネシウム)、 アルミニウム又はケィ素を含有する吸着剤 (例えば、 酸化アルミニウム、 水酸化アルミニウム、 酸化ケィ素)、 活性炭等が挙げられる。 これらの吸着剤は商業的に入手することができ、 例えば、 キヨ一ワード 2 0 0、 キヨ一ワード 3 0 0、 キヨ一ワード 5 0 0、 キヨ一ワード 6 0 0、 キヨ一ワード 7 0 0、 キヨ一ワード 1 0 0 0、 キヨ一ワード 2 0 0 0 (以上、 協和化学工業 ( 株) 製、 商標)、 トミックス一 A D 3 0 0、 トミックス一 A D 5 0 0、 トミ ックス
- A D 7 0 0 (以上、 冨田製薬 (株) 製、 商標) 等が挙げられる。 吸着剤は、 単
独で又は 2種以上を組み合せて使用することができる。
吸着剤を用いて処理する温度は 1 0〜8 5 ° (、 好ましくは 4 0〜 7 0 °Cであり 、 処理時間は 1 0分〜 5時間、 好ましくは 3 0分〜 3時間である。 処理する温度 が 1 0 °C未満ではポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物の結晶が析出して しまい、 吸着剤を除去する場合にポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物も 一緒に除去されて収率が低下する傾向にある。 また、 8 5 °Cを超えると、 微量の 水分の存在によって吸着剤処理中にポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物 の加水分解等が起こる可能性がある。 吸着剤の使用量は、 処理する結晶 1 0 0重 量部に対して 0 . 1〜2 0 0重量部、 好ましくは 1〜5 0重量部である。 吸着剤 処理後、 濾過等の方法により吸着剤を除去した後、 冷却するか、 又は貧溶媒を用 いて結晶化させることができる。 好ましくは 1 o °c以下に冷却して結晶化を行え ば、 良好な収率で結晶が得られる。
上記工程で使用する溶媒量は結晶に対して 1〜 1 0 0容量倍であり、 好ましく は 2〜5 0容量倍である。 再結晶した後、 冷却するか、 又は貧溶媒を用いて結晶 化を行う。 具体的な結晶化方法としては、 以下の方法を挙げることができる。 酢 酸ェチル、 トルエン、 クロ口ホルム等の溶媒に溶解した後、 エーテル又は炭素数 5〜8の脂肪族炭化水素の溶媒を添加することでポリオキシアルキレン一ポリア ミノ酸化合物の結晶を析出させる。 具体的には、 酢酸ェチルを用いて溶解後、 へ キサンを添加し結晶化させる方法が好ましい。 炭素数 5〜 8の脂肪族炭化水素と しては特に制限はないが、 例えば、 ペンタン、 イソペンタン、 ネオペンタン、 へ キサン、 イソへキサン、 3—メチノレペンタン、 ネオへキサン、 2 , 3—ジメチノレ ブタン、 ヘプタン、 2—メチノレへキサン、 3—メチノレへキサン、 3—ェチノレペン タン、 2, 2—ジメチルペンタン、 2, 3—ジメチルペンタン、 3 , 3—ジメチ ノレペンタン、 2 , 3 , 3—トリメチルブタン、 オクタン、 2—メチノレヘプタン、 3—メチルヘプタン、 4 _メチルヘプタン、 3—ェチルへキサン、 2 , 2—ジメ チノレへキサン、 2 , 3—ジメチノレへキサン、 2, 4一ジメチルへキサン、 2 , 5 一ジメチノレへキサン、 3 , 3—ジメチルへキサン、 3 , 4—ジメチノレへキサン、
2—メチルー 3—ェチノレペンタン、 3—メチノレ一 3—ェチルペンタン、 2, 2, 3— トリメチルペンタン、 2, 2 , 4ー トリメチノレペンタン、 2 , 2, 3, 3— テトラメチルブタン等を挙げることができる。 これらの中では、 へキサン、 ヘプ タンが好ましい。 結晶の純度を更に向上させたい場合には、 同様の晶析工程を数 回繰り返すことにより、 純度の一層優れたポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸 化合物を得ることができる。
(製法 2 : X 2がー CO NH—を含有する 2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物として、 例えば、 前述したポリオキシアルキレン 基の末端が下記式 (Π) 〜 (f4) で表されるカルボン酸であるポリオキシアルキ レンカルボン酸化合物を使用することができる。
-OCOCH2CH2COOH (fl)、
-OCOCH2CH2CH2COOH (f2)、
-OCH2COOH (f3)、
一 O (CH2) 5CO〇H (f4) これらの末端のカルボキシル基は、 脱水縮合剤を用いて酸無水物としてもよく 、 また活性化剤を用いて活性化エステルとしてもよい。 脱水縮合剤及ぴ活性化剤 としては、 前述の製法 1と同様の化合物が挙げられる。
ポリアミノ酸としては、 例えば、 N末端に 一アミノ基を有するポリアミノ酸 、 又は ε—アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸が挙げられる。 上記ポリォキシアルキレンカルボン酸化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存 在下、 有機溶媒中で反応させることにより高い純度で、 上記 2価の基を有するポ リォキシアルキレンーポリァミノ酸化合物を製造することができる。 ポリォキシ アルキレンカルボン酸化合物の使用量は特に限定されるものではないが、 ポリオ キシアルキレンカルボン酸化合物 (C) とポリアミノ酸 (Β) との当量比 (C : Β) が 1 : 1〜1 : 5であることが好ましい。 なお、'その他反応条件、 精製工程 等については、 前述の製法 1と同様である。
(製法 3 : X 2がー O C O N H—を含有する 2価の基である場合) ポリオキシアルキレン化合物として、 例えば、 前述したポリオキシアルキレン 基の末端がカーボネート化されたポリオキシアルキレンカーボネート化合物を使 用することができる。 ポリオキシアルキレンカーボネート化合物としては、 例え ば、 ポリオキシアルキレン一 p—ニトロフエ二ノレカーボネートが挙げられる。 ポ リアミノ酸としては、 例えば、 N末端にひ一アミノ基を有するポリアミノ酸、 又 は ε —アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸を使用することがで きる。 ポリオキシアルキレンカーボネート化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒 の存在下、 有機溶媒中で反応させることにより高純度で、 上記 2価の基を有する ポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物を製造することができる。 ポリオキ シアルキレンカーボネート化合物の使用量は特に限定されるものではないが、 ポ リオキシアルキレンカーボネート化合物 (D ) とポリアミノ酸 (Β ) との当量比 (D : Β ) が 1 : 1〜 1 : 5であることが好ましい。 なお、 反応条件及び精製ェ 程については、 前述の製法 1と同様の方法により行うことができる。
(製法 4 : X 2がー C H 2 N H—を含有する 2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物としては、 例えば、 前述したポリオキシアルキレ ン基の末端がアルデヒ ド基であるポリオキシアルキレンアルデヒ ド化合物を使用 することができる。 ポリオキシアルキレンアルデヒ ド化合物としては、 例えば、 下記式 (gl) で表されるアルデヒ ド基を有するポリオキシアルキレンアルデヒ ド 化合物を使用することができる。 なお、 下記式中、 Pはメチレン基、 エチレン基
、 トリメチレン基、 テトラメチレン基等のアルキレン基を示す。
- O - P - C H O (gl) ポリアミノ酸としては、 例えば、 N末端に α—アミノ基を有するポリアミノ酸 、 又は ε—アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸を使用すること ができる。 ポリオキシアルキレンアルデヒ ド化合物とポリアミノ酸とを還元剤の 存在下、 緩衝液中で反応させることにより高純度で、 上記 2価の基を有するポリ
ォキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物を製造することができる。 ポリオキシァ ルキレンアルデヒ ド化合物の使用量は特に限定されるものではないが、 ポリオキ シアルキレンアルデヒ ド化合物 (E ) とポリアミノ酸 (B ) との当量比 (E : B ) が 1 : 1〜1 : 5であることが好ましい。
上記緩衝液としては、 酢酸緩衝液、 リン酸緩衝液、 トリス酸緩衝液等が好適に 使用される。 また、 反応に関与しないァセトニトリル、 ジメチルスルホキシド、 ジメチルホルムアミ ド、 ジメチルァセトアミ 'ド等の有機溶媒を更に添加してもよ い。 反応時の; Ηとしては p H 2〜8 . 5、 好ましくは p H 3 ~ 7である。 反応 温度は 0〜 9 0 °Cであり、 反応時間は 0 . 5〜 2 0時間、 好ましくは 0 . 5〜 4 時間である。 上記還元剤が存在しない場合は、 シッフ塩基が形成される。 シッフ 塩基が形成された場合には、 これをシァノ水素化ホウ酸ナトリゥム等の還元剤を 用いて還元処理を行い、 2級アミノ基を形成させる。 反応後は、 透析、 塩析、 限 外ろ過、 イオン交換クロマトグラフィー、 電気泳動、 抽出、 再結晶、 吸着処理、 再沈殿、 カラムクロマトグラフィ一等の精製手段にて精製することができる。
(製法 5 : X 1が一O O C _を含有する 2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物としては、 例えば、 前述したポリオキシアルキレ ン基の末端が水酸基であるポリオキシアルキレン化合物を使用することができる 。 ポリアミノ酸としては、 例えば、 C末端に力ルポキシル基を有するポリアミノ 酸、 あるいは側鎖にカルボキシル基を有するグルタミン酸残基又はァスパラギン 酸残基を含有するポリアミノ酸を使用することができる。 ポリアミノ酸のカルボ キシル基は、 前述の製法 2と同様の方法により活性化エステルとして使用するか 、 あるいは水溶性カルポジイミ ドを用いて活性化してもよい。 反応条件及ぴ精製 条件については、 前述の製法 2と同様である。
(製法 6 : X 3が > C H— S _を含有する 2価の基である場合)
ポリオキシアルキレン化合物として、 例えば、 前述したポリオキシアルキレン 基の末端がマレイミ ド基であるポリオキシアルキレンマレイミ ド化合物を使用す ることができる。 ポリオキシアルキレンマレイミ ド化合物としては、 下記式-(hi
) 〜 (h3) で表されるマレイミ ド基を有するポリオキシアルキレンマレイ 合物が挙げられる。 なお、 下記式中、 aは 2又は 3、 bは 2 ~ 5である。
(hi)
( 3)
ポリアミノ酸としては、 例えば、 セリン残基由来のチオール基を有するポリア ミノ酸、 あるいはイミノチオラン等を用いてチオール基を導入したアミノ酸残基 を含有するポリアミノ酸を使用することができる。 上記ポリオキシアルキレンマ レイミ ド化合物とポリアミノ酸とを緩衝液中で反応させることによりスルフイ ド 結合が形成される。 上記緩衝液としては、 リン酸緩衝液、 ホウ酸緩衝液、 トリス 酸緩衝液、 酢酸緩衝液等の緩衝液が好ましい。 製法 4と同様に有機溶媒を添加し ても良い。 反応温度は特に限定されないが、 好ましくは 0〜8 0 °Cである。 反応 時間は 0 . 5〜7 2時間が好ましく、 更に好ましくは、 1〜2 4時間である。
(製法 7 : Yがー C O N H—を含有する 2価の基である場合)
脂質としては、 ホスファチジルエタノールァミン等のアミノ基を含有するリン 脂質を使用することができる。 このホスファチジルエタノールァミンと、 上記方 法で得られたカルボキシル基を含有するポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化 合物とを塩基性触媒の存在下、 有機溶媒中で反応させることにより、 上記 2価の 基を有するポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を製造することができる。 こ の反応は、 通常脱水縮合剤を用いて行う。 塩基性触媒の種類は特に限定されない 力 例えば、 トリェチルァミン、 ピリジン、 ジメチルァミノピリジン、 酢酸ァン
モニゥム等の窒素含有物質、 リン酸ナトリウム、 炭酸ナトリウム、 炭酸水素ナト リウム、 ホウ酸ナトリウム、 酢酸ナトリウム等のナトリウム塩が挙げられる。 塩 基性触媒の使用量は、 例えば、 ポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物の 1 . 5〜 1 0倍当量、 好ましくは 2〜5倍当量である。
有機溶媒としてエタノール等の水酸基を有する有機溶媒を使用すると、 ポリオ キシアルキレン一ポリアミノ酸化合物のカルボキシル基と反応する場合がある。 このため、 有機溶媒としては、 水酸基等の反応性官能基を有しないものであれば 特に制限なく使用することができる。 かかる有機溶媒としては、 例えば、 酢酸ェ チノレ、 ジクロロメタン、 クロロホノレム、 ベンゼン、 トノレェン、 又はこれらの混合 溶媒等を使用することができる。 これらの中では、 クロ口ホルム、 トルエンが好 ましい。 なお、 ポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物の種類によっては、 緩衝液等の水溶液中でも反応を行うことができる。 この場合、 水溶性の脱水縮合 剤として、 1ーェチルー 3— ( 3—ジメチルァミノプロピル) カルポジイミ ド等 を使用してもよい。 また、 有機溶媒中の反応においても脱水縮合剤を使用するこ とができる。 脱水縮合剤としては、 ポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物 のカルボキシル基と、 リン脂質のァミノ基とを脱水縮合できるものであれば特に 制限はない。 このような脱水縮合剤としては、 ジシク口へキシルカルポジィミ ド 等のカルボジイミ ド化合物が挙げられ、 特にジシクロへキシルカルボジイミ ドが 好ましい。 脱水縮合剤の使用量としては、 例えばポリオキシアルキレン一ポリア ミノ酸化合物に対して 1 . 0 5〜5倍当量、 好ましくは 1 . 5〜2 . 5倍当量で ある。 活性化剤を反応系中にポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物に対し て 0 . 1〜 2倍当量加えることで、 活性化エステル体として反応させることもで きる。 活性化剤の種類は特に限定されないが、 例えば、 N—ヒ ドロキシコハク酸 イミ ド、 N, Nへ 一ジコハク酸イミ ドカーボネート、 1—ヒ ドロキシベンゾトリ' ァゾール、 N—ヒ ドロキシ一 5—ノルボルネン一 2, 3—ジカルボキシイミ ド、
N—ヒ ドロキシフタノレイミ ド、' 4ーヒ ドロキシフエ-ノレジメチノレスノレホニゥムメ チルサルフエ一ト、 ィソプチルクロロホルメート等を使用することができる。
反応温度は、 通常 2 0〜9 0 °Cの範囲であり、 好ましくは 4 0〜 8 0 °Cである 。 反応時間は 1時間以上、 好ましくは 2〜 8時間である。 2 0 °Cより低温では反 応率が低く、 9 0 °Cより高温では反応に使用するリン脂質のァシル基が加水分解 する場合がある。
(製法 8 : Yがー N H C O—を含有する 2価の基である場合)
力ルポキシル基を含有するリン脂質と、 上記方法で得られたアミノ基を含有す るポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物とを塩基性触媒の存在下、 有機溶 媒中で反応させることにより、 上記 2価の基を有するポリオキシアルキレン鎖含 有脂質誘導体を製造することができる。 この反応は、 通常脱水縮合剤を用いて行 う。 力ルポキシル基を含有するリン脂質は、 リン脂質とジカルボン酸無水物とを 反応させることにより容易に製造することができる。 上記ジカルボン酸無水物と しては、 例えば、 シユウ酸、 マロン酸、 コハク酸、 ダルタル酸、 アジピン酸、 ピ メリン酸、 スベリン酸、 ァゼライン酸、 セバシン酸、 マレイン酸、 フマル酸、 フ タル酸、 テレフタル酸の無水物等を挙げることができる。 ジカルボン酸無水物と しては、 分子内無水物、 分子間無水物のいずれを用いてもよい。 これらの中では 、 コハク酸及ぴグルタル酸め無水物、 コハク酸又はダルタル酸の無水物が好まし い。
カルボキシル基を含有するリン脂質と活性化剤との反応は、 ポリオキシアルキ レン化合物とジカルボン酸無水物との反応と同様に脱水縮合剤の存在下、 カルボ ン酸と反応しない溶媒 (例えば、 クロ口ホルム、 トルエン) 中で反応温度 1 5〜
8 0 °C、 好ましくは 2 5〜5 5 °Cで行うことができる。 この場合、 例えば、 活性 化剤をポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物の溶液.に分散撹拌することに より行うことができる。 活性化剤としては、 上記活性化剤と同様のものを用いる ことができる。 リン脂質とポリオキシアルキレン一ポリアミノ酸化合物との反応 は、 製法 7と同様の条件で行うことができる。
(製法 9 : Yが> C H S—を含有する 2価の基である場合)
脂質として、 ホスファチジルエタノールァミンの末端に下記式 (j l ) 〜 (j 2)
で表されるマレイミ ド基を有するリン脂質化合物を使用することができる。 下記 式中、 bは 2〜 5である。
ポリアミノ酸としては、 セリン残基由来のチオール基を有するポリアミノ酸、 あるいはィミノチオラン等を用いてチオール基を導入したアミノ酸残基を含有す るポリアミノ酸等を使用することができる。 上記リン脂質とポリアミノ酸とを緩 衝液中で反応させることによりスルフィド結合が形成される。 上記緩衝液として は、 リン酸緩衝液、 ホウ酸緩衝液、 トリス酸緩衝液、 酢酸緩衝液等が好適である 。 また、 上記反応においては、 製法 4と同様に有機溶媒を添加してもよい。 反応 温度は特に限定されないが、 好ましくは 0〜 8 0 °Cである。 反応時間は好ましく は 0 . 5〜 7 2時間、 更に好ましくは 1〜 2 4時間である。
(製法 1 0 : Yが一 O C O N H—を含有する 2価の基である場合)
脂質としては、 例えば、 末端がカーボネート化されたコレステロールカーボネ ート化合物を使用することができる。 かかるコレステロールカーボネート化合物 としては、 例えば、 コレステリル一 p—エトロフエニルカーボネートが挙げられ る。 また、 ポリアミノ酸としては、 例えば、 N末端に 一アミノ基を有するポリ アミノ酸、 あるいは ε —アミノ基を有するリジン残基を含有するポリアミノ酸を 使用することができる。
上記コレステロールカーボネート化合物とポリアミノ酸とを塩基性触媒の存在 下、 有機溶媒中で反応させることにより高純度のコレステロールカーボネート一 ポリアミノ酸化合物を製造することができる。 コレステロールカーボネート化合
物の使用量は特に限定されるものではないが、 コレステロールカーボネート化合 物 (F ) とポリアミノ酸 ( B ) との当量比 (F : B ) が 1 : 1〜1 : 5であるこ とが好ましい。 反応条件及び精製工程については、 前述の製法 7と同様である。 上記製造方法により得られるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体の平均分 子量は、 1 0 0 0〜9 0 0 0 0が好ましく、 1 2 0 0〜9 0 0 0 0がより好まし く、 さらに好ましくは 2 5 0 0〜 9 0 0 0 0である。 分子量が 1 0 0 0より小さ い場合には、 脂質膜構造体に安定化を付与するための水和層が充分に保たれず、 安定性が不充分となる。 また、 9 0 0 0 0よりも大きいと、 溶液にした場合に作 業性が悪く取り扱いが困難になる。 更に、 脂質膜構造体を形成した場合に膜構造 からポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体が抜け落ちる可能性がある。
次に、 本発明の脂質膜構造体について説明する。 本発明の脂質膜構造体は、 上 記一般式 (1 ) で表されるポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を含有するも のである。 ここで、 本発明における 「脂質膜構造体」 とは、 両親媒性脂質の親水 基が界面の水相側に向かって配列した膜構造を有する粒子を意味する。 脂質膜構 造体の形態は特に限定されないが、 例えば、 乾燥した脂質混合物の形態、 水系溶 媒に分散した形態、 更にこれを乾燥させた形態や凍結させた形態等を挙げること ができる。 乾燥した脂質混合物の形態の場合には、 例えば、 脂質成分を一旦クロ 口ホルム等の有機溶媒に溶解させ、 次いでエバポレーターによる減圧乾固ゃ嘖霧 乾燥機による噴霧乾燥を行うことで製造することができる。 水系溶媒に分散した 形態としては、 一枚膜リボソーム、 多重層リボソーム、 O /W型エマルシヨン、 W/Oノ W型エマルシヨン、 球状ミセル、 ひも状ミセル、 不定型かつ層状の構造 物等を挙げることができる。 これらのなかでは、 リボソームが好ましい。 例えば 、 リボソームの場合、 脂質膜構造体であるリボソームの全重量に対して、 ポリオ キシアルキレン鎖含有脂質誘導体を 0 . 1〜2 5重量%、 好ましくは 0 . 1〜2 0重量。 /0配合して使用する。
また、 本発明における脂質膜構造体の構成成分の脂質としては、 ホスファチジ ルコリン等のリン脂質を単独で使用してもよく、 複数の脂質を含有する混合脂質
を使用してもよい。 ここで言う脂質膜構造体の構成成分とは、 ポリオキシアルキ レン鎖含有脂質誘導体以外の構成成分のことを示す。 脂質としては、 複合脂質 ( 例えば、 リン脂質、 糖脂質)、 ステロール類、 炭素数 8〜 2 4の飽和又は不飽和の ァシル基を有する化合物が挙げられる。 ここで、 リン脂質としてはグリセ口リン 脂質、 スフインゴリ ン脂質等が挙げられ、 糖脂質としてはグリセ口糖脂質等が挙 げられる。 ステローノレ類とは、 コレステロ一ノレ、 ジヒ ドロコレステロ一ノレ、 エル ゴステロール、 ラノステロール等を意味する。 グリセ口リン脂質としては、 炭素 数 4〜2 4、 好ましくは 1 2〜2 0の飽和又は不飽和の直鎖若しくは分岐のァシ ノレ基を有する、 ホスファチジルコリン、 ホスファチジルエタノー アミン、 ホス ファチジルグリセ口ール、 ホスプアチジノレイノシトール、 ホスファチジルセリン 等が挙げられる。 また、 卵黄レシチン又は大豆レシチンのような天然物由来の脂 質を混合してもよい。 炭素数 8〜 2 4のァシル基を有する化合物としては、 カブ リル酸、 力プリン酸、 ラウリン酸、 ミ リスチン酸、 ノ、。ノレミチン酸、 パルミ トレイ ン酸、 ステアリン酸、 イソステアリン酸、 ォレイン酸、 リノール酸、 ァラキン酸 、 ベヘン酸、 エル力酸、 リグノセリン酸等が挙げられる。
さらに、 例えば、 下記に示す組成比の混合脂質とすることもできる。 ホスファ チジルコリン /コレステロ一ノレ/ホスファチジノレグリセロールが 2 0〜 9 Ο Ζ 1 0〜6 θ Ζ 2〜4 0 (モノレ0 /0)、好ましくは 3 0〜 6 0 / 2 0〜 5 0 / 1 5〜2 5 (モル0 /0) である混合脂質。
リボソームの構成成分の脂質として、 酸性リン脂質、 例えば親水性基の末端に カルボキシル基を含有するリン脂質を用いる場合には、 低 ρ Η、 例えば ρ Η 6以 下、 好ましくは ρ Η 5以下であって、 カルボキシル基がプロトン化されるため、 脂質膜表面の電荷がなくなり安定でなくなる。 すなわち、 ρ Η感受性を示す。 酸 性リン脂質としては、 例えば、 リン脂質化合物とジカルボン酸無水物とを反応さ せることにより製造することができる。 リン脂質化合物としては、 天然リン脂質 でも合成リン脂質であってもよい。 天然リ ン脂質としては、 例えば、 大豆ホスフ ァチジルエタノールアミン、 卵黄ホスファチジルエタノールァミン等の天然ホス
ファチジルエタノールァミンが挙げられる。 合成リン脂質としては、 例えば、 水 素添加大豆ホスファチジルエタノールァミン、 水素添加卵黄ホスファチジルエタ ノールアミン等の水素添加天然ホスファチジルエタノールアミンが挙げられる。 さらに、 ポリォキシアルキレン鎖含有リン脂質誘導体のァミノ酸部分が加水分解 した時に、 リン脂質化合物の末端がカルボキシ基となるポリオキシアルキレン鎖 含有リン脂質誘導体を用いてリボソームを調製した場合、 ポリオキシアルキレン 鎖が切断されると、 リボソーム表面の水和層がなくなり、 リン脂質化合物の末端 はカルボキシル基となる。 このため、 上記酸性リ ン脂質を用いた場合と同様に、 リポソームは p H感受性を示し同等の効果が得られるようになる。
また、 リボソームの構成成分の脂質として、 ォレイン酸由来のァシル基を有す るリン脂質、 特にジォレオイルホスファチジルエタノールアミンを用いる場合に は、 ポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体として、 ジォレオイルホスファチジ ルエタノールァミンを原料化合物に用いて製造されたものを使用することが望ま しい。 リポソームの主要構成成分がジォレオイルホスファチジルエタノールァミ ンである場合、 ジォレオイルホスファチジルエタノールァミンが低 p H、 例えば p H 6以下、 好ましくは p H 5以下でへキサゴナル構造又は逆ミセル構造を形成 しゃすくなる。 このため、 リボソーム表面を覆っているポリオキシアルキレン鎖 が切断されることにより、 リボソーム表面の水和層がなくなり、 リボソームの性 質である p H感受性を示すようになる。 これにより、 腫瘍部位等の標的部位でリ ポソームに内包された生理活性物質等を効率的に放出することができる。
水系溶媒に分散した形態の脂質膜構造体の大きさは特に限定されないが、 例え ば、 リボソームやエマルシヨンの場合には粒子径が 5 0 n m〜 5 mであり、 球 状ミセルの場合には粒子径が 5 η π!〜 1 0 0 n mである。 また、 ひも状ミセルや 不定型かつ層状の構造物の場合には、 1層あたりの厚みが 5 η π!〜 1 0 n mであ り、 このような層が複数層形成されたものである。 なお、 本発明において粒子径 とは、 動的光散乱法により測定したものをいう。
水系溶媒 (分散媒) の種類は特に限定されず、 例えば、 リン酸緩衝液、 クェン
酸緩衝液、 リン酸緩衝化生理食塩液等の緩衝液、 生理食塩水、 細胞培養用の培地 等を使用することができる。 本発明のポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体を 水系溶媒に分散して用いる場合には、 安定に分散された脂質膜構造体を得ること ができるが、 水の他にグルコース、 乳糖、 ショ糖等の糖水溶液、 グリセリン、 プ ロピレングリコール等の多価アルコール等を加えてもよい。 水系溶媒に分散した 脂質膜構造体を安定に長期間保存するには、 凝集等の物理的安定性の面から、 水 系溶媒中の電解質を極力低減することが望ましく、 また窒素パブリングにより溶 存酸素を除去することが望ましい。 さらに、 凍結乾燥保存や噴霧乾燥保存をする 場合には、 例えば、 水系溶媒に分散した脂質膜構造体を凍結保存するに際に糖水 溶液や多価アルコール水溶液を用いると長期保存が可能になる。 水系溶媒の濃度 は特に限定されるものではないが、 例えば、 糖水溶液においては、 2〜2 0 % ( W/V ) が好ましく、 5〜1 0 % (W/V ) が更に好ましい。 また、 多価アルコ ール水溶液においては、 1〜 5 % (W/V ) が好ましく、 2〜 2 . 5 % (W/V ) が更に好ましい。 緩衝液においては、 緩衝剤の濃度が 5〜5 O mMが好ましく 、 1 0〜2 O mMが更に好ましい。 水系溶媒中の脂質膜構造体の濃度は特に限定 されないが、 水系溶媒中の脂質の合計濃度は、 0 . 1〜5 0 O mMが好ましく、 1— 1 0 O mMがさらに好ましい。
脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態は、 '前述の乾燥した脂質混合物を水系 溶媒に添加し、 更にホモジナイザー等の乳化機、 超音波乳化機、 高圧噴射乳化機 等により乳化することで製造することができる。 また、 リボソームを製造する方 法としては特に限定されるものではなく、 よく知られている方法、 例えば逆相蒸 発法等によっても製造することができる。 脂質膜構造体の大きさを制御したい場 合には、 均一な孔径のメンブランフィルタ一等を用いて、 高圧下でイクストルー ジョン (押し出し濾過) を行えばよい。
水系溶媒に分散した脂質膜構造体を更に乾燥させる方法としては、 通常の凍結 乾燥や噴霧乾燥を挙げることができる。 この場合、 水系溶媒として、 前述したよ うに糖水溶液、 好ましくはショ糖水溶液、 乳糖水溶液を用いることができる。 水
系溶媒に分散した脂質膜構造体を製造した後に更に乾燥すると、 脂質膜構造体の 長期保存が可能となる。 また、 この乾燥した脂質膜構造体に医薬水溶液を添加す ると、 効率よく脂質混合物が水和され、 医薬を効率よく脂質膜構造体に保持させ ることができる。
脂質膜構造体に保持可能な生理活性物質としては、 体の働きを調節する成分が 挙げられ、 その種類は特に限定されるものではない。 生理活性物質としては、 ビ タミン、 神経伝達物質、 タンパク質、 ポリペプチド、 薬剤、 遺伝子等が挙げられ る。 ビタミンと しては、 例えば、 ビタミン A、 ビタミン B、 ビタミン C、 ビタミ ン13、 ビタミン E、 ビタミン K等が挙げられる。 タンパク質、 ポリペプチドとし ては、 例えば、 ホルモン、 血清タンパク質、 免疫グロプリン、 インターロイキン 、 インターフェロン (一ひ、 — β、 - y 顆粒球コロニー刺激因子 (α及ぴ] 3型 )、 マクロファージコロニー刺激因子、 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、 血小板由来増殖因子、 ホスホリパーゼ活性化タンパク質、 インシュリン、 モノク ロナール、 ポリクロナール抗体及ぴそれらのフラグメント等が挙げられる。 薬剤 としては、 抗癌剤、 抗真菌剤等が挙げられる。 抗癌剤としては、 例えば、 パクリ タキセル、 アドリアマイシン、 ドキソ ビシン、 シスプラチン、 ダウノマイシン 、 マイ トマイシン、 ビンク リスチン、 ェピルビシン、 メ ト トレキセート、 5—フ ルォロウラシル等が挙げられる。 抗真菌剤の種類は特に限定されるものではない ,、 例えば、 アムホテリシン Β、 ナイスタチン、 フルシトシン、 ミコナゾール、 フルコナゾール、 イ トラコナゾール、 ケトコナゾール及びペプチド性抗真菌剤が 挙げられる。 遺伝子としては、 例えば、 オリゴヌクレオチド、 D N A、 R N A等 が挙げられる。
[実施例]
以下、 本発明の実施例についてさらに詳細に説明するが、 本発明はこれらの実 施例に限定されるものではない。
(実施例 1 )
メチルポリオキシエチレン力ルバミルーグリシルーグリシル一グリシル一ジォ
レオイルホスファジルェタノールァミン (DOPE- GGG-PEG2000) の合成
( 1 ) メチノレポリオキシェチレン力ルバミル一グリシノレーグリシル一グリシンの 合成
メ トキシポリエチレングリコール一 p—二トロフエニルカーボネート (商品名 : SUNBRIGHT MENP_20H、 重量平均分子量 2, 000、 日本油脂 (株) 製) 5 g (2 . 5mmo 1 ) をァセトニトリノレ 1 5 m Lに溶解した。 この溶液に 946m gの グリシルーグリシルーグリシンを水 1 0 m Lに溶解させた水溶液を添加して攪拌 し、 更にトリェチルァミン 0. 5 gを添加して室温で 3時間攪拌した。 反応終了 後、 ろ過にて不溶物を除去し、 続いてエバポレーターにて減圧で溶剤を除去した 。 次いで、 酢酸ェチル 5 OmLを加えて溶解し、 硫酸ナトリウムを添加して攪拌 した後、 ろ過して脱水を行った。 次いで、 ろ液にへキサン 1 0 OmLを加えて 0 °C以下に冷却後、 ろ過して粗結晶を得た。 粗結晶を酢酸ェチル 5 OmLに溶解し 、 吸着剤としてキヨ一ワード # 2000 (0. l g)、 キヨ一ワード # 700 ( 1 g) を加え、 60°Cにて 1時間攪袢した。 吸着剤をろ過後、 へキサン l O OmL を加えて冷却し、 結晶化させた。 結晶をろ過後、 上記と同様の晶析を更にもう一 回行い乾燥し、 目的化合物 3 g (収率 52. 2%) を得た。
なお、 反応の進行及び生成物の同定は、 シリカゲルプレートを用いた薄層クロ マトグラフィー (T LC) によって行った。 展開溶媒としては、 クロ口ホルムと メタノールとの混合比 (容量比) が.8 5 : 1 5の混合溶媒を用い、 ヨウ素蒸気に て発色させて、 標準物質との R f 値の比較により物質の定性を行った。 反応終点 は、 上記 TLCにて R f値 0. 6付近に検出されるメ トキシポリエチレングリコ 一ル—: —二トロフエニルカーボネートのスポットと、 R f i !O. 1付近に検出 されるグリシルーグリシルーグリシンのスポットと力 R f 0. 35付近に検出 されるスポットに変換したことにより確認を行った。 生成物の確認は、 1H— N MR (400MH z、 CD C 1 3) より、 メ トキシポリエチレングリコール由来 の末端メ トキシのメチル基が δ : 3. 3 p pm付近に、 エチレングリコーノレのェ チレン基が δ : 3. 5 p pm付近に、 またペプチド由来のメチレン基が δ : 1.
5 p p m付近に、 それぞれ検出されることにより、 モノメ トキシォキシエチレン 鎖及びぺプチド鎖の存在を確認した。
(2) メチルポリォキシェチレン力ルバミルーグリシル一グリシル一グリシルー ジォレオイノレホスフアジノレエタノールァミンの合成
上記 (1) で得られたメチルポリオキシエチレン力ルバミルーグリシルーダリ シノレーグリシン 2 g (0. 90 mm o 1 ) をクロロホノレム 10 m Lに力 tlえて 40 〜45 °Cで攪拌溶解した後、 ジォレオイルホスファチジルエタノールァミン 1. 34 g (1. 8 Ommo 1 ) を添加して攪拌した。 次いで、 ジシクロへキシルカ ルポジイミ ド 1. 86 g (9. 0 3m o 1 ) を添加し攪拌した後、 更にトリェチ ルァミン 27m g (0. 27 mm o 1 ) を添加し 4時間反応させた。 反応終了後 、 ろ過して不溶物を除去し、 続いてろ液をエバポレーターにてクロ口ホルムを除 去してクロ口ホルム 2 m Lに再溶解し、 以下の条件にてカラム分取し精製を行つ た。 固定相には Wa k o g e l C- 1 00 1 50 gを用い、移動相にはク口ロホ ルムとメタノールとの混合溶媒を用いた。 クロ口ホルム Zメタノールの混合比 ( 容量比) を 9 5/5〜8 5Z 1 5まで変化させ、 分画を行った。 得られた画分を 脱溶剤し、 へキサン 1 OmLを加えて結晶化し、 ろ過乾燥を行って標記化合物 4 00m gを得た。
なお、 反応の進行及び生成物の同定は、 展開溶媒としてクロ口ホルム、 メタノ ール及び水の混合比 (容量比) が 65 : 25 : 4の混合溶媒を用いたこと以外、 上記と同様の薄層クロマトグラフィー (TLC) によって行った。 反応の進行は 、 1 £値0. 5付近に検出されるメチルポリオキシエチレン力ルバミルーグリシ ルーグリシルーグリシンのスポッ トと、 R f teO. 6付近に検出されるジォレオ ィルホスファチジルエタノールァミンのスポットとが、 R f O. 7 5付近に検出 されるスポットに変換したことにより確認した。 生成物の確認は、 ifi— NMR ( 400MH z、 CD C 1 3) より、 メ トキシポリエチレングリコール由来の末端 メ トキシのメチル基が δ : 3. 4 p pm付近に、 ポリオキシエチレン基が δ : 3
. 5 p pm付近に、 またペプチド由来のメチレン基が δ : 1. 5 p pm付近に、
更にジォレオイルホスファチジルエタノールァミン由来のァシル基の末端メチル 基が δ : 0. 9 p pm付近に、 それぞれ検出されることにより、 モノメ トキシォ キシエチレン鎖、 ぺプチド鎖及びジォレオイルホスファチジルエタノールァミン の存在を確認した。 また、 MALDI- TOF/MS (BIFLEX III: BRUKER社製) 分析により 、 得られた化合物の平均分子量は 3 100であることが確認された。
(実施例 2 )
メチノレポリオキシエチレン力ルバミル一グリシノレーリジン (メチルポリオキシ ェチレン力ルバミノレ) ―グリシノレ一グリシノレ一グリシルージステアロイノレホスフ アジルエタノールァミン (DSPE - GGG - K(PEG2000)- G-PEG2000) の合成
(1) メチルポリオキシエチレン力ルバミノレーグリシル—リジン (メチノレポリオ キシェチレン力ルバミル) 一グリシル一グリシル一グリシルの合成
メ トキシポリエチレングリコール一 p—-トロフエニルカーボネート (SUNBRI GHT MENP_20H、 重量平均分子量 2000、 3本油脂 (株) 製) 1 0 g ( 5 mmo 1 ) をァセトニ トリル 3 OmLに溶解し、 この溶液に 1. 6 gのグリシル一リジ ンーグリシル—グリシルーグリシン (配列番号 1 1) を水 1 8 m Lに溶解させた 水溶液を添加して攪拌し、 更にトリェチルァミン 1 gを添加して室温で 3時間攪 拌した。 反応終了後、 ろ過にて不溶物を除去し、 続いてエバポレーターにて減圧 で溶剤を除去した。 次いで、 酢酸ェチル 5 OmLを加えて溶解し、 硫酸ナトリウ ムを添加して攪拌した後、 ろ過して脱水を行った。 次いで、 ろ液にへキサン 10 OmLを加えて 0°C以下に冷却後、 ろ過して粗結晶を得た。 粗結晶を酢酸ェチル 5 OmLに溶解し、 合成例 1と同様の方法により吸着剤処理を行い結晶化し、 更 に晶析を行って目的化合物 6. 2 g (収率 5 5%) を得た。
なお、 反応の進行及び生成物の同定は、 シリカゲルプレートを用いた薄層クロ マトグラフィー (TLC) によって行った。 展開溶媒としては、 クロ口ホルムと メタノールとの混合溶媒 (混合比 (容量比) が 8 5 : 1 5) を用い、 ヨウ素蒸気 にて発色させて、 標準物質との R f値の比較により物質の定性を行った。 反応終 点は、 上記 TLCにて R f値 0. 6付近に検出されるメトキシポリエチレングリ
コール一: —二トロフエ二ルカーポネートのスポッ トと、 R f ¾0. 1付近に検 出されるダリシルーリジン一ダリシルーグリシルーグリシンのスポットとが、 R f 0. 35付近に検出されるスポットに変換したことにより確認した。 生成物の 確認は、 一 NMR (40 OMH z、 CD C 13) より、 メ トキシポリエチレン グリコール由来の末端メ トキシのメチノレ基が δ : 3. 3 p pm付近に、 エチレン グリコールのエチレン基が δ : 3. 5 p pm付近に、 またペプチド由来のメチレ ン基が δ : 1. 5 p pm付近に、 それぞれ検出されたことにより、 モノメ トキシ ォキシエチレン鎖及びべプチド鎖の存在を確認した。 (2) メチルポリオキシエチレン力ルバミルーグリシルーリジン (メチルポリォ キシエチレンカノレバミノレ) 一グリシル一グリシルーグリシルージステア口ィルホ スファジルエタノーノレアミンの合成
上記 (1) で得られたメチルポリォキシエチレン力ルバミルーグリシルーリジ ン (メチルポリォキシエチレン力ルバミル) ーグリシルーグリシルーグリシル 4 g (0. 9 Ommo 1 ) をクロ口ホルム 20 m Lに加えて、 40〜45°Cで攪拌 溶解した後、 ジステアロイルホスファチジルエタノールァミン 1. 34 g (1. 8 Ommo 1 ) を添加して攪拌した。 次いで、 ジシクロへキシルカルポジイミ ド 1. 86 g (9. 0 3mo 1 ) を添加し攪拌した後、 更にトリェチルァミン 27 mg (0. 27mmo 1 ) を添加し 4時間反応させた。 反応終了後、 ろ過して不 溶物を除去し、 続いてろ液をエバポレーターにてクロロホルムを除去してク口口 ホルム 5m Lに再溶解し、 以下の条件にてカラム分取し精製を行った。 固定相に は Wa k o g e l C- 1 00 1 50 gを用い、移動相にはク口口ホルムとメタノ ールとの混合溶媒を用いた。 クロ口ホルム メタノールの混合比 (容量比) を 9 5/5〜8 5ノ 1 5まで変化させ、 分画を行った。 得られた画分を脱溶剤し、 へ キサン 2 OmLを加えて結晶化し、 ろ過乾燥を行って標記化合物 70 Omgを得 た。
なお、 反応の進行及び生成物の同定は、 展開溶媒としてクロ口ホルム、 メタノ 一ル及ぴ水の混合溶媒 (混合比 (容量比) が 65 : 2 5 : 4) を用いたこと以外
3.4
、 上記と同様の方法により薄層クロマトグラフィー (TLC) によって行った。 反応終点は、 R O. 5付近に検出されるメチルポリオキシエチレンカルバミ ルーグリシノレ一リジン (メチノレポリオキシエチレンカノレバミノレ) ーグリシ/レーグ リシルーグリ ルのスポッ トと、 1 値0. 6付近に検出されるジステアロイル ホスファチジルエタノールァミンのスポッ トとが、 R f O. 75付近に検出され るスポットに変換したことにより確認した。 生成物の確認は、 〗Η— NMR (4 O OMH z、 CDC 1 3) より、 メ トキシポリエチレングリコール由来の末端メ トキシのメチル基が δ : 3. 4 p pm付近に、 ポリオキシエチレン基が δ : 3. 5 p pm付近に、 またペプチド由来のメチレン基が δ : 1. 5 p pm付近に、 更 にジォレオイノレホスファチジルェタノールァミン由来のァシル基の末端メチル基 が δ : 0. 9 p pm付近に、 それぞれ検出されたことにより、 モノメ トキシォキ シエチレン鎖、 ぺプチド鎖及びジステアロイルホスファチジルエタノールァミン の存在を確認した。 また、 MALDI- TOF/MS (BIFLEX III: BRUKER社製) 分析により 、 得られた標記化合物の平均分子量は 5250であることを確認した。
(実施例 3 )
メチノレポリォキシエチレンカノレバミノレーシスティン (メチノレポリオキシェチレ ンマレイミ ド) 一グリシノレーグリシノレージステァロイノレホスファジノレエタノ一ノレ ァミン (DSPE- GGC(_PEG2000)- PEGSOOO) の合成
( 1 ) メチルポリオキシエチレンカルバミルーシスティンの合成
L—シスチン 2. 5 gに 0. 1M、 H 9. 5のホウ酸緩衝液 1 50 m Lを加 えて完全に溶解するまで攪拌を行った。 メ トキシポリエチレングリコール一 p— ュト口フエ二ノレカーボネート (商品名 : SUNBRIGHT MENP- 50H、 平均分子量 500 0、 日本油脂 (株) 製) 50 g (1 Ommo 1 ) を水 50 m Lに溶解し、 先の L —シスチン溶液に加え、 pHを 9. 5に保ち室温で 2時間反応を行った。 反応終 了後、 希塩酸にて pH5. 5に調整し、 2 °Cに冷却した。 次いで、 不溶物をろ過 して除去し、 ろ液を透析チューブを用いて 2 Lのイオン交換水に対して 5回透析 を行った。 透析終了後、 pH7. 5に調整し溶液を 2 °Cに冷却し、 1, 4ージチ
6 オスレィトール 2. 8 gを添加し還元を行った。 還元後、 1. 5%酢酸水溶^液を 用いて透析を行い、 凍結乾燥してメチルポリオキシエチレンカルバミルーシステ インの結晶 2 5 gを得た。
(2) メチノレポリオキシエチレンカノレバミノレーシスティン (メチノレポリォキシェ チレンマレイミ ド) の合成
上記 (1) で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミルーシスティン 5 g を生理食塩緩衝液 ( P B S ) 50 m Lに溶解し、 メ トキシポリエチレングリコー ループ口ピ/レマレイミ ド (商品名 : SUNBRIGHT ME- 020MA、 平均分子量 2, 000 、 日本油脂 (株) 製) 2 gを添加し、 室温で 8時間反応させた。 反応後、 p H2 に調整し、 更に食塩を添加して溶解し 20%wZw水溶液とした。 次いで、 クロ 口ホルム 5 OraLを加えて抽出した後、 エバポレーターにて脱溶剤し、酢酸ェチル で再溶解した。 次いで、 へキサンを加えて結晶化し、 ろ過にてメチルポリオキシ エチレンカノレバミル一システィン (メチノレポリオキシエチレンマレイミ ド) の結 晶 4. 5 gを得た。
(3) メチルポリオキシエチレンカルパミル一システィン (メチルポリオキシェ チレンマレイミ ド) ―グリシルーグリシルの合成
上記 (2) で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミルーシスティン (メ チノレポリオキシエチレンマレイミ ド) 4 gをクロロホノレム 8 OmLに溶角罕し、 N —ヒ ドロキシコハク酸イミド 0. 1 gを添加して 30分攪拌した。 更に DC Cを 0. 25 g添加して 2時間室温で攪拌した。 反応後、 ろ過にて生成した DC Uを 除去し、 エバポレーターで脱溶剤した。 次いで、 酢酸ェチルとへキサンを用いて 晶析を 3回行った後、 得られた結晶を乾燥した。 グリシルーグリシル 50 m gを 水 1 mLに加えて攪拌し、 更にトリェチルァミン 25 mgを添加した。 この溶液 に、上記結晶 2. 5 gをァセトニトリル 3mLに溶解した溶液を滴下しながら添加 し、 室温にて 3時間反応させた。 反応後、 濃縮脱水し、 酢酸ェチル及びへキサン を用いて晶析を行い乾燥して結晶 1. 7 5 gを得た。
(4) メチルポリオキシエチレンカルバミルーシスティン (メチルポリオキシェ
チレンマレイ ミ ド) 一グリシル一グリシル一ジステア口ィルホスファジルェタノ ールァミンの合成
上記 (3) で得られたメチルポリオキシエチレンカルバミルーシスティン (メ チルポリオキシエチレンマレイミ ド) ーグリシルーグリシル 1. 5 g (0. 2 m mo 1 ) をクロ口ホルム 1 OmLに加えて、 4◦〜 45 °Cで攪拌溶解した。 更に ジステアロイノレホスファチジノレエタノールァミン 0. 5 g (0. 675 mm o 1 ) を添加して攪拌した、 次いで、 ジシクロへキシルカルポジイミ ド 0. 7 g (3 . 4mmo 1 ) を添加し攪拌した後、 更にトリェチルァミン 10 m g (0. 1 m mo 1 ) を添加し 4時間反応させた。 反応後、 ろ過して不溶物を除去し、 ろ液を エバポレーターにてクロロホノレムを除去し、 続いてクロ口ホルム 5 mLに再溶解 し、 以下の条件にてカラム分取し精製を行った。 固定相には W a k o g e 1 C— 100を 100 g用い、 移動相にはクロ口ホルムとメタノールとの混合溶媒を用 いた。 クロ口ホルム/メタノールの混合比 (容量比) は95/5〜85 1 5ま で変化させ、 分画を行った。 得られた画分を脱溶剤し、 へキサン 2 OmLを加え て結晶化し、 ろ過乾燥を行つて標記化合物 50◦ m gを得た。
なお、 反応の進行及ぴ生成物の同定において、 展開溶媒としてクロ口ホルム、 メタノール及ぴ水の混合溶媒 (混合比 (容量比) が 65 : 25 : 4) を用いたこ と以外は、 上記と同様の方法により薄層クロマトグラフィー (TLC) によって 行った。 反応終点は、 R ;H O. 5付近に検出されるメチルポリオキシエチレン 力ルバミル一システィン (メチルポリオキシエチレンマレイミ ド) 一グリシノレ一 グリシルのスポットと、 1 £値0. 6付近に検出されるジステアロイルホスファ チジルエタノールァミンのスポッ トと力 R f 0. 75付近に検出されるスポッ トに変換したことにより確認した。 生成物の確認は、 1 H— NMR (40 OMH z、 CD C 13) より、 メ トキシポリエチレングリコール由来の末端メ トキシの メチル基が δ : 3. 4 p pm付近に、 ポリオキシエチレン基が δ : 3. 5 p p m 付近に、 またペプチド由来のメチレン基が 1. 5 p pm付近に、 更にジステア口 ィルホスファチジルエタノールァミン由来のァシル基の末端メチル基が S : 0.
9 p pm付近に、 それぞれ検出されたことにより、 モノメ トキシォキシエチレン 鎖、 ぺプチド鎖及びジステアロイルホスファチジノレエタノールァミンの存在を確 認した。 また、 MALDI- TOF/MS (BIFLEX III: BRUKER社製) 分析により、 得られた 標記化合物の平均分子量は 7 700であることを確認した。
(実施例 4)
メチルポリォキシエチレン力ルバミルーグリシルーク、'リシル一グリシル一ジス テアロイルホスファジルエタノールァミン (DSPE- GGG-PEG2000) の合成
実施例 1の (1) で得られたメチルポリオキシエチレン力ルバミルーグリシル 一グリシル—グリシン 2 gとジステア口ィルホスファチジルェタノールァミン 1. 35 gを用いて実施例 1と同様にして反応した後、 不溶物をろ過して除去し、 ェ バポレーターにてクロ口ホルムを除去した。 次いで、 酢酸ェチルに溶解し、 へキ サンを添加して氷水中で冷却して結晶化し、 ろ過して結晶を得た。 そして、 再度 同様の晶析を行い、 得られた結晶にへキサンを加えて攪拌し、 ろ過乾燥を行って 標記化合物 1. 5 gを得た。
なお、 反応の進行及び生成物の同定は、 実施例 1と同様に行った。
(実施例 5〜 7及び比較例 1〜 3 )
(リボソームの製造及ぴ膜安定性の評価)
以下の方法により、 リボソーム溶液を調製した後、 その膜安定性を評価した。
(1) リボソーム溶液の調製
実施例 1で得られたメチルポリオキシエチレン力ルバミルーグリシル一グリシ ルーグリシル一ジォレオイルホスファジルエタノールアミン (DOPE— GGG
— PEG 2000) と、 ジォレイルホスファチジノレエタノールァミン (DOPE
) と、 メチルポリオキシエチレン力ルバミル一ジォレオイルホスファジルェタノ ールァミン (DOPE— PEG2000) とを用いて、 表 1に示す配合割合の組 成物をナス型フラスコに測り取り、 クロ口ホルムに溶解した。 次いで、 ロータリ 一エバポレーターにて脱溶剤し、 フラスコの内壁に脂質の薄膜を形成させた。 減 圧下にて溶剤の除去を十分に行った後、 蛍光色素の HP T Sとそのクェンチヤ一
(消光剤) である D P Xをそれぞれ 1 5. 7 3 1 mg/mL、 1 2. 6 6 5 m g / Lとなるように T r i s緩衝液 ( p H 1 0 ) 2mLに溶解させ, この 2 m L を脂質薄膜に添加し、 ポルテックスミキサーで分散させた。 この分散液を種々の 孔径のポリカーボネートメンブレンフィルターを用いてサイジング (0. 4 μπι Χ 3回、 0. 2 /imX 3回、 0. l /x mX 3回、 0. Ι μ πι (2枚重ね) Χ 3回 ) を行い、 リボソーム溶液を得た。
(表 1)
リボソーム分散液をゲル濾過 (セフアデックス G— 5 0 ;移動相は生理食塩水 ) して、 ボイ ドボリュームに溶出したリボソーム画分を採取し、 リボソーム溶液 とした。 粒子径については、 上記リボソーム溶液を取って動的光散乱法 (粒度測 定装置: NICOMP Model 370、 Particle Sizing System製) にて測定した。 その結 果、 いずれのリボソームも、 その粒子径は 9 5〜1 1 5 nmであった。 得られた リポソーム溶液を室温にて 1か月間放置した。 1か月後のリポソーム溶液の分散 状態を確認したところ、 脂質である DOP Eのみを添加したリボソーム溶液 (比 較例 1) は安定ではなく沈降が見られたが、 その他のリボソーム溶液は目視では 変化が認められず、 均一なリポソーム溶液であった。
(2) リボソームの膜安定性試験
p H 5、 6、 7、 8、 9の各緩衝液中で、 実施例 5〜 7及び比較例 1のリポソ ーム溶液について 3 7°C、 1時間インキュベーションを行った。 インキュべーシ
ヨン後、一部を採取し P H I 0の緩衝液に添加して希釈し、 蛍光強度を測定器(F - 4500、 Hitachi社製) で測定した。 そして、 蛍光色素 (HPTS) のリボソームから の漏れ (リボソームの崩壌度) を測定し、 膜安定性を評価した。 その結果を図 1 に示す。 図 1に示したように、 DO P E— GGG— P EG 2000をリボソーム に添加することにより、 p Hの違いによるリボソームの崩壊が認められず、 pH 感受性が抑制されていることが確認された。 他方、 DOP Eのみを添加したリポ ソームは、 中性領域より低い pHでリボソームの崩壌が認められ、 pH感受性が 確認された。 このことから、 DOPE— GGG—PEG2000を添加したリポ ソームは、 通常の状態では、 その分子を構成するポリオキシアルキレン鎖によつ て水溶液中での安定性が増大されていることが確認された。
(3) 血液中での安定性試験
実施例 5〜 6及び比較例 2〜 3で得られたリボソームを、 血清中 3 7 °Cでィン キュベーシヨンし、 0、 1、 3、 4、 8、 24時間経過後にそれぞれの一部を採 取し、 pHl 0の緩衝液に添加して希釈した。 そして、 蛍光強度を測定すること により、 蛍光色素 (HPTS) のリボソームからの漏れ (リボソームの崩壌度) を測 定した。 実施例 6で得られたリボソームの測定結果を図 2に示す。 実施例 5及び 比較例 2〜3についても同様の結果が得られたことから、 ヒ ト、 ゥシの血清中で は安定であり、 リポソームの崩壊が見られないことが確認された。
(4) リポソーム溶液の酵素感受性及びリポソ一ムの崩壌性試験
実施例 5〜6及ぴ比較例 2〜3で得られたリボソームを、 p a p a i n (2m g/mL)、 r e d u c e d g l u t a t h i o n e (5 mM)、 E D T A (1 mM) 共存下、 3 7°Cで 1時間インキュベーションした。 インキュベーション終 了後、 一部を採取し p H I 0の緩衝液に添加して希釈し、 蛍光強度を測定するこ とにより蛍光色素 (HPTS) のリボソームからの漏れ (リボソームの崩壌度) を測 定した。 その結果を図 3に示す。 図 3に示したように、 実施例 5〜6のリポソ一 ムでは p Hに依存した内包蛍光色素の放出が観察されたが、 比較例 2〜 3のリポ ソームでは認められなかった。
(実施例 8 )
リボソーム溶液の異なる酵素への感受性及びリボソームの崩壊性の評価
DO P Eのみを用いて、 上記 (1) と同様の方法により粒子径を約 1 0 0 nm に揃えた蛍光色素封入リボソーム溶液を得た。 得られたリボソーム溶液に、 リポ ソームに対してモル比で 1. 5、 2. 5、 5. 0%となるように、 DO P E— G GG— P EG 2 0 0 0を T r i s緩衝液 (pH I O) に溶解させて添加し、 室温 で 1時間ィンキュベーションしリボソーム溶液とした。
上記のようにして得られた 0. 5 mMリボソーム溶液 ( 1 00 L) を cathep sin B (CB, 2.5units/raL, 6.4/ M) を含んだ 1 M酢酸ナトリウム緩衝液 (p H 5 . 5) と、 cathepsin B を含んでいない同緩衝液 (9 00 i L) に添カ卩し、 これ らを 3 7でで 1時間及び 24時間ィンキュベーションした。
反応液 1 00 /z Lを 2mLの T r i s緩衝液 ( p H 1 0 ) に添加し、 この溶液 中の蛍光強度を上記 (2) と同様の方法により測定し、 リボソームからの蛍光色 素の崩壊度を求めた。 その結果を図 4に示す。 図 4に示したように、 酵素非存在 下 (buffer) に比べ、 酵素存在下では顕著な内封物の放出が観察された。 また、 この放出はインキュベーション時間に依存して増加することが確認された。
(実施例 9及ぴ比較例 4〜 5 )
(1) 抗癌剤 (ドキソルビシン) 封入リボソームの血中動態とリボソームの抗癌 剤保持率の評価
実施例 5で得られたメチルポリオキシエチレン力ルバミル—ダリシル一グリシ ^^一グリシノレ一ジステアロイノレホスファジルエタノ一 ァミ ン (D S P E— GG G— P EG 2 0 0 0) 、 又はメチルポリオキシエチレン力ルバミル一ジステア口 ィルホスフアジノレエタノールァミン (D S PE— P E G 2 0 0 0) と、 卵黄ホス ファチジルコリン (E P C) 又は水素添加卵黄ホスファチジルコリン (HE P C ) と、 コレステロールとを用いて、 以下の表 2に示す配合割合の組成物をナス型 フラスコに測り取り、 蛍光色素の代わりにドキソルビシンを用いて上記 (1 ) と 同様の方法により実施例 9及ぴ比較例 4〜 5の各リポソ一ム溶液を得た。 リポソ
ーム自体の血中動態を追跡するために 40μ Ci/μπιοΐの 3H_cholesterylhexadecyle ther(¾-CHE)を添加した。 なお、 ドキソルビシンは硫酸アンモニゥム勾配法によ り封入した(0.2mg ドキソルビシン/ mg lipid)。
次いで、 雄性 ddYマウスに尾静脈から各リボソームを投与(25mg lipid/kg)し、 2分、 30分、 1時間、 2時間、 4時間、 8時間、 24時間後に血液を採取して、 血液 中の放射活性を測定することによりリポソーム自体の濃度を得、 また蛍光法によ り ドキソルビシンを測定することによりその時点でのドキソルビシン濃度を得た 。 リポソームから漏出したドキソルビシンは速やかに様々な組織に分布するため 、 本法で得られたドキソルビシン濃度は、 リボソーム中に保持されているドキソ ルビシン量を反映するものと考えられる。 よって、 各測定点におけるリボソーム 濃度及びドキソルビシン濃度を求めることにより、 ドキシルビシン保持率を求め た。 その結果を図 5に示す。 図 5に示したように実施例 8の D S PE— GGG— P EG 2000を配したリボソームは、 D S PE— P EG 2000を配合したリ ポソームと同等の血中動態を示すことが確認された。 また、 ドキソルビシン保持 に関しても、 比較例 5と同等であり、 添加された DS PE— GGG— PEG 20 00が血中でほとんど切断されず、 リボソームを十分保護していることが確認さ れた。 さらに、 この実験系では D S P E— GGG— P EG 2000は、 リポソ一 ムの薬物放出性に影響を与えないことが確認された。
(表 2)
(2) 抗癌剤 (ドキソルビシン) 封入リボソームの抗腫瘍効果
雄性 C57BL/6マウス背部皮下に Lewis lung cancer (5X105) を移植し、 移植 後 1 3日後に、 実施例 9、 比較例 4及び 5のドキソルビシン封入リボソームを尾
静脈より投与 (5mg ドキソルビシン/ k g) し、 がんの増殖をモニターした。 その結果を図 6に示す。 図 6に示したように DS PE— GGG— PEG 2000 配合したリボソームが最も高い抗腫瘍性を示した。 以上の結果から、 本発明のリボソームは、 通常状態では安定であるが、 腫瘍部 位等では酵素の働きを受けて、 ポリオキシアルキレン鎖が切断されることにより 、 リポソームに内包される生理活性物質が遊離することが確認された。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 新規なポリオキシアルキレン鎖含有脂質誘導体が提供される 。 また、 本発明の脂質膜構造体は、 上記脂質誘導体を含有することでドラッグデ リバリーシステムに適用した際の脂質膜構造体の安定性が向上し、 また標的部位 におけるポリオキシアルキレン鎖の効率的な切断が可能になるため血中滞留性を 調節することができる。 更に、 ポリオキシアルキレン鎖が切断されて脂質膜構造 体の表面を覆う水和層が喪失することにより脂質膜構造体の構造を安定に保てな くなり、 加えて pH感受性等の性質を示すことにより脂質膜構造体が崩壌し、 内 包された生理活性物質が放出される。 その結果、 生理活性物質の標的部位への選 択的送達性が向上し、 ひいては過剰投与による副作用の低減にも寄与することが できる。 なお、 本出願は、 日本で出願された特願 200 5-043 1 96を基礎として おり、 その内容は本明細書にすべて包含されるものである。