JP4962931B2 - ポリアミドアミンデンドロン脂質を含む遺伝子等運搬媒体組成物 - Google Patents

ポリアミドアミンデンドロン脂質を含む遺伝子等運搬媒体組成物 Download PDF

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本発明は、遺伝子、薬物、生理活性物質、生理活性ペプチド類、タンパク質(本明細書を通じて「遺伝子等」という)を、目的とする細胞へ運搬するための運搬媒体と運搬媒体組成物および運搬方法に関する。
遺伝子治療は治療すべき細胞に治療用遺伝子を導入し、それを発現させることで治療を行う。細胞中に所定の遺伝子を投入するためのカプセルをベクターという。このベクターはもともと細胞に入り込む性質を持つ、ウィルスの「殻」や脂質の小胞(リポソーム)等が使われる。
ウィルスベクターは、ウィルスの「殻」を用いたベクターで病原性や毒性を持つ遺伝子(以下「DNA」ともいう。)を切り取り、代わりに薬となる遺伝子をはめ込んで作成される。ウィルスベクターは、もともと細胞内に入り込む能力を有しているので、細胞内に遺伝子を持ち込む能力には優れている。しかし、切り取ったとは言え、病原性や毒性、増殖性がないとは言い切れない場合もあり、安全面では課題が残る。
非ウィルスベクターは、リポゾームベクターとも呼ばれ、細胞膜に良く似た構造の脂質二重膜でできたミクロの球体で、この中に遺伝子を入れ、使用する。病原性や毒性はないものを作れるが、細胞中に外来の遺伝子を導入して発現させるトランスフェクション効率には課題が残る。すなわち、安全性の観点から非ウィルスベクターのトランスフェクション効率の向上が求められる。
また、遺伝子はリポソームの中に封入されても、あるいはリポソームと複合体を形成していても細胞内に取り込まれることができる。リポソームとDNAの複合体はリポプレックスと呼ばれる。
ベクターに包まれたDNAは、エンドサイトーシスという過程を経て細胞内に取り込まれる。取り込まれたベクターは、エンドソームという細胞小器官に保持され、やがてリソソームによって分解されてしまう。
従って、トランスフェクション効率を上げるには、ベクターは分解される前に、エンドソームから脱出し、DNAを細胞質内にリリースすることが必要である。非ウィルスベクターは、プロトンスポンジ効果やベクターとエンドソームの膜が一体となる膜融合という機能を保有することによって、エンドソームからDNAをリリースする。
本発明者はすでにデンドロンタイプの脂質が、上記のプロトンスポンジ効果と膜融合の機能を有し、効率の高いトランスフェクション効率を有する非ウィルスベクターとなりえる点を示した(特許文献1参照)。
特開2004−159504号公報
ベクターを遺伝子治療に用いるにはさらに標的とする細胞に特異的に吸着する能力が求められる。また、ベクター同士はお互いに凝集して大きくなる傾向があるが、一定の大きさより小さい方が投与方法の制限がなくなる点で望ましい。
本発明は上記の課題を解決するために先に示したデンドロンタイプの脂質を改良することで発想されたものである。
デンドロン脂質の極性基が有している多数の機能性分子導入サイトにリガンドを導入する。また、デンドロン脂質にPEG(ポリエチレングリコール)等の高分子を導入する。
デンドロン脂質にリガンドを導入することによって、リガンドが特異的に吸着するレセプターを表面に有する細胞に対して標的指向性のあるベクターを構築することができる。これは遺伝子導入効率が高く、かつ細胞毒性の低い遺伝子運搬媒体であるから、DDS(Drug Delivery System)として用いることができる。また、デンドロン脂質にPEG等の高分子を導入することで、ベクターの大きさが一定以下の大きさになり、イン・ビボ(in vivo)での使用が容易となる。
・基本となるデンドロン脂質
本発明に用いるデンドロン脂質としては、以下に示されるDL−G1〜DL−G8の化合物である。
DL−G1:R12NX(XH22
DL−G2:R12NX(X(XH222
DL−G3:R12NX(X(X(XH2222
DL−G4:R12NX(X(X(X(XH22222
DL−G5:R12NX(X(X(X(X(XH222222
DL−G6:R12NX(X(X(X(X(X(XH2222222
DL−G7:R12NX(X(X(X(X(X(X(XH22222222
DL−G8:R12NX(X(X(X(X(X(X(X(XH222222222
式中 R1及びR2は、同一または異なったアルキル基、アルコキシ基、アリール基またはアラルキル基を示す。Xは、−CH2CH2CONHCH2CH2N−を示す。
上記DL−G1〜DL−G8のいずれかのポリアミドアミンデンドロン脂質において、アルキル基としては、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコサデシル、2−エチルヘキシルなどの炭素数6〜20の直鎖または分枝を有するアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、エイコシルオキシ、2−エチルヘキシルオキシなどの炭素数6〜20の直鎖または文枝を有するアルコキシ基が挙げられる。
アリール基としては、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、フェナントリルなどが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル、フェネチルなどが挙げられる。
Xは、−CH2CH2CONHCH2CH2N−を表し、その末端のNは、通常2個の水素原子を有するが、1個の水素原子がロイシン、バリン、イソロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシンなどの疎水性アミノ酸で置換されていてもよい。
本発明に用いるポリアミドアミンデンドロン脂質は、例えば以下のようにして製造することができる。
Figure 0004962931
本発明に用いる好ましいポリアミドアミンデンドロン脂質を以下に示す。
Figure 0004962931
・導入するリガンド
標的指向性を持たせるために、ポリアミドアミンデンドロン脂質の機能性分子導入サイトに付加するリガンドとしては、ガラクトース等の糖類を用いる。癌細胞の表面に比較的多く存在するレセプターのリガンドと考えられるからである。しかし、付加するリガンドは標的とする相手側のレセプターに応じて変更することができ、糖類に限定されるものではない。
・導入するリガンドの割合
これらのリガンドは、ポリアミドアミンデンドロン脂質のすべての導入サイトにあるのが望ましいが、すべての導入サイトになくても本件発明の効果は得ることができる。
・導入方法
基体となるポリアミドアミンデンドロン脂質のアミノ結合の部分が、機能性分子導入サイトとなる。従って、この部分に結合せさる方法であれば、特に限定されるものではない。例としてはリガンドの一部をエステル化したものを上記サイトと結合させたり、リガンドの糖の1部分を酸にして、ポリアミドアミンデンドロン脂質と直接結合させるなどの方法がある。
・PEGの修飾について
他に付加する機能性分子としてはPEGなどの高分子がある。これらをポリアミドデンドロン脂質の表面に付加することで、ベクターの凝集が抑制される。その他、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなど水溶性の高分子が使用可能である。
これらの高分子は末端にイソシアナートやカルボキシル基、スクシミジル基、イミダゾリルカーボネート基を持つように改変した後、デンドロン脂質の末端アミノ基と反応させる。なお、付加する分子や付加方法について、特に限定されるものではない。
なお、リガンドまたはPEG等の高分子を結合させたポリアミドアミンデンドロン脂質を修飾デンドロン脂質と呼ぶ。
遺伝子等運搬媒体組成物
本発明の遺伝子等運搬媒体組成物は、修飾デンドロン脂質の他、ポリアミドアミンデンドロン脂質やリン脂質を好適に含むことができる。このようなリン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、プラスズローゲンおよびホスファチジン酸等を挙げることができ、これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンをそれぞれ単独で、または組み合わせて用いるのが好ましい。これらのリン脂質の脂肪酸残基は、特に限定されるべきものではないが、炭素数12から18の飽和または不飽和の脂肪酸残基をあげることができ、具体的には、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オレオイル基、リノレイル基等をあげることができ、DOPE(ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン)が特に好ましい。
・リン脂質の配合量
リン脂質の配合量は特に限定されないが、リン脂質と修飾デンドロン脂質とポリアミドアミンデンドロン脂質の合計量を100重量部とした場合にリン脂質30〜90重量部、修飾デンドロン脂質とポリアミドアミンデンドロン脂質70〜10重量部、好ましくはリン脂質50〜80重量部、修飾デンドロン脂質とポリアミドアミンデンドロン脂質50〜20重量部、より好ましくはリン脂質60〜70重量部、修飾デンドロン脂質とポリアミドアミンデンドロン脂質40〜30重量部である。
・その他の添加剤
リン脂質の他に、遺伝子等運搬媒体組成物に含有され得る添加剤としては、コレステロールなどが例示される。
・デンドロン脂質と遺伝子の配合割合
修飾デンドロン脂質とポリアミドアミンデンドロン脂質を遺伝子等運搬媒体とした場合、遺伝子と遺伝子等運搬媒体の配合割合は、遺伝子1重量部に対して、遺伝子等運搬媒体を1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部、より好ましくは5〜7重量部使用する。また、遺伝子等運搬媒体とリン脂質の混合物を用いる場合、遺伝子と遺伝子等運搬媒体導の配合割合は、遺伝子1重量部に対し、遺伝子等運搬媒体導を1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部、より好ましくは10〜15重量部使用する。
・使用する遺伝子
遺伝子としては、オリゴヌクレオチド、DNAおよびRNAのいずれでもよく、特に形質転換等のイン・ビトロにおける導入用遺伝子や、イン・ビボで発現することにより作用する遺伝子、例えば、遺伝子治療用遺伝子、実験動物や家畜等の産業用動物の品種改良に用いられる遺伝子が好ましい。遺伝子治療用遺伝子としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、酵素、サイトカイン等の生理活性物質をコードする遺伝子、リポザイム、siRNAなどを挙げることができる。
・使われる細胞
遺伝子が導入される細胞としては、ヒトなどの動物細胞、植物細胞などの真核細胞、細菌などの原核細胞が例示できる。
・組成物の形態
本発明の組成物の形態としては、修飾デンドロン脂質のみが存在していてもよく、ポリアミドアミンデンドロン脂質とリン脂質のどちらか若しくは両方をさらに混合物として使用していてもよく、修飾デンドロン脂質とポリアミドアミンデンドロン脂質とリン脂質が組み合わさって脂質膜構造体を形成していてもよい。この脂質膜構造体の存在形態およびその製造方法は特に限定されるべきものではないが、例えば、存在形態としては、乾燥した脂質混合物形態、水系溶媒に分散した形態、さらにこれを乾燥させた形態や凍結させた形態等を挙げることができる。
・乾燥した混合物
乾燥した脂質混合物は、例えば、使用する脂質成分をいったんクロロホルム等の有機溶媒に溶解させ、次いでエバポレータによる減圧乾固や噴霧乾燥機による噴霧乾燥を行うことで製造することができる。
・分散した形態
脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態としては、一枚膜リポゾーム、多重層リポソーム、O/W型エマルション。W/O/W型エマルション、球状ミセル、ひも状ミセル、不定型の層状構造物などを挙げることができる。分散した状態の脂質膜構造体の大きさは、特に限定されるべきものではないが、例えば、リポソームやエマルションの場合には、粒子系が50nmから数μmであり、球状ミセルの場合、粒子系が5nmから50nmである。ひも状ミセルや不定型の層状構造物の場合は、その1層あたりの厚みが5nmから10nmでこれらが層を形成していると考えればよい。
・溶媒
水系溶媒(分散媒)の組成も特に限定されるべきものではないが、水のほかに、グルコース、乳糖、ショ糖などの糖水溶液、グリセリン、プロピレングリコールなどの多価アルコール水溶液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。この水系溶媒に分散した脂質膜構造体を安定に長期間保存するには、凝集などの物理的安定性の面から、水系溶媒中の電解質を極力なくすことが重要である。
また、脂質の化学的安定性の面から、水系溶媒中の電解質を極力なくすことが重要である。また、脂質の化学的安定性の面から、水系溶媒のpHを弱酸性から中性付近(pH3.0から8.0)に設定したり、窒素バブリングにより溶存酸素を除去することが重要である。さらに凍結乾燥保存や噴霧乾燥保存をする場合には、糖水溶液を、凍結保存する場合には、糖水溶液や多価アルコール水溶液をそれぞれ用いると効果的な保存が可能である。
・濃度
これらの水系溶媒の添加物の濃度は特に限定されるべきものではないが、例えば、糖水溶液においては、2から20%(W/V)が好ましく、5から10%(W/V)がさらに好ましい。また、多価アルコール水溶液においては、1から5%(W/V)が好ましく、2から2.5%(W/V)がさらに好ましい。緩衝液においては、緩衝剤の濃度が1から150mMが好ましく、10から50mMがさらに好ましい。
・脂質膜構造体の濃度
水系溶媒中の脂質膜構造体の濃度は、特に限定されるべきものではないが、本発明においては脂質膜構造体として用いるリン脂質の総量の濃度は、0.001mMから100mMが好ましく、0.01mMから20mMがさらに好ましい。
・脂質膜構造体の水に分散したときの形態
脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態は、上記の乾燥した脂質混合物を水系溶媒に添加し、さらにホモジナイザー等の乳化機、超音波乳化機、高圧噴射乳化機等により乳化することで製造することができる。また、リポソームを製造する方法としてよく知られた方法、例えば逆相蒸発法などによっても製造することもでき、特に限定されるべきものではない。脂質膜構造体の大きさを制御したい場合には、孔径のそろったメンブランフィルター等を用いて、高圧下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。
・水系溶媒に分散した脂質膜構造体をさらに乾燥させる
また、上記の水系溶媒に分散した脂質膜構造体をさらに乾燥させる方法としては、通常の凍結乾燥や噴霧乾燥を挙げることができる。このときの水系溶媒としては、上記したように、糖水溶液、好ましくはショ糖水溶液、乳糖水溶液を用いるとよい。ここで、水系溶媒に分散した脂質膜構造体をいったん製造した上でさらに乾燥すると、脂質膜構造体の長期保存が可能となるほか、この乾燥した脂質膜構造体に遺伝子水溶液を添加すると、効率よく脂質混合物が水和されるために遺伝子自身も効率よく、脂質膜構造体に保持されることができるといったメリットがある。
・その他
本発明の遺伝子等運搬媒体組成物は、遺伝子だけでなく、親水性の大きい薬物、高分子量の生理活性ペプチド類、蛋白質などの細胞内に導入されにくい薬物、生理活性物質、生理活性ペプチド、蛋白質などにも適用できる。本発明の組成物を用いれば、イン・ビトロ及びイン・ビボのいずれにおいても細胞内に遺伝子等を効率良く導入、送達することができる。
イン・ビトロでの遺伝子等導入は、標的とする細胞を含む懸濁液に本発明の遺伝子等運搬媒体組成物を添加したり、本発明の遺伝子等運搬媒体組成物を含有する培地で標的とする細胞を培養するなどの手段により、行うことができる。
イン・ビボでの遺伝子等の導入は、本発明の含有組成物を宿主に投与すればよい。宿主への投与手段としては、経口投与でもよく、非経口投与でもよいが、非経口投与が好ましい。剤形としては、通常知られたものでよく、経口投与の剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤などを上げることができる。
また、非経口投与の剤形としては、例えば注射剤、点眼剤、軟膏剤、坐剤等を挙げることができる。中でも注射剤が好ましく、投与方法としては、静脈注射、標的とする細胞や臓器に対しての局所注射が好ましい。
実施例1
本実施例では、DL−G3にラクトビオン酸を結合させることで、DL−G3の末端をガラクトースで修飾する。
1.DL−G3の合成
本実施例に用いるDL−G3は以下の手順で作成する。なお反応式は化1を参照のこと。
1−1.DL−G―0.5の合成
蒸留したアクリル酸メチル(14ml、0.156mol)にジーn−ドデシルアミン(2.00g、5.66mmol)を溶かし、窒素雰囲気において80℃で18時間還流した。その後、未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶媒は、石油エーテル:ジエチルエーテル=2:1)で精製した。基本となるデンドロン脂質のR1R2がジドデシルタイプのデンドロン脂質であるので、「−2C12」と付記する
1−2.DL−G0−2C12の合成
DL−G−0.5−2C12(2.162g、4.92mmol)をメタノール(50ml、1.23mol)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(0.048g、0.979mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(100ml、1.50mol)に徐徐(以下「徐々」と記す。)に加え、窒素雰囲気において45℃で50時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてメタノール)によって精製した。
1−3.DL−G0.5−2C12の合成
DL−G0−2C12(2.256g。4.82mmol)をメタノール(17.5ml、0.431mol)に溶かした。この溶液を、蒸留したアクリル酸メチル(43.5ml。0.431mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において35℃で50時間攪拌した。その後メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶液として石油エーテル:ジエチルエーテル=2:1 のち ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製した。
1―4.DL−G1−2C12の合成
DL−G0.5−2C12(0.714g、1.12mmol)をメタノール(20.5ml、0.505mol)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(0.011g、0.224mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(37.5ml、0.562mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において45℃で50時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてメタノール)によって精製した。
1―5.DL−G1.5−2C12の合成
DL−G1−2C12(1.539g。2.21mmol)をメタノール(86.5ml、2.13mol)に溶かした。この溶液を、蒸留したアクリル酸メチル(152ml。1.69mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において35℃で50時間攪拌した。その後メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶液としてジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製した。
1−6.DL−G2−2C12の合成
DL−G1.5−2C12(1.703g、1.64mmol)をメタノール(46ml、1.13mol)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(0.032g、0.655mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(134ml、2.00mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において45℃で50時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてメタノール)によって精製した。
1−7.DL−G2.5−2C12の合成
DL−G2−2C12(1.713g。1.49mmol)をメタノール(120ml、2.96mol)に溶かした。この溶液を、蒸留したアクリル酸メチル(100ml。1.12mol)に徐々に加え、30℃で25時間攪拌した。その後メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶液としてジクロロメタン:メタノール=85:15)で精製した。
1−8.DL−G3−2C12の合成
DL−G2.5−2C12(0.115g、0.063mmol)をメタノール(2.53ml、0.625mol)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(0.0012g、0.025mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(5.00ml、0.075mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において45℃で50時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてメタノール)によって精製した。以上の工程を繰り返して所定量のDL−G3−2C12を得た。
2.DL-G3−2C12とラクトビオン酸とからGal-DL-G3-2C12の合成
N−hydroxysuccinimide(0.24g、2.09mmol)とジシクロヘキシカルボジイミド(DCC)0.47g(2.26mmol)を、ジメチルホルムアミド(DFM)5mlに溶かしたLactobionic acid ラクトビオン酸(0.62g、1.73mmol)に加え、氷冷下で5時間攪拌しA液とした。
DL−G3−2C12(0.28g、0.137mmol)とトリエチルアミン(0.362ml、2.61mmol)をジメチルスルホキシド(DMSO)5mlに溶かし、これをA液に加えて室温で7日間攪拌した。その後反応液をろ過し、ろ液をエーテルで2回再沈殿させ、沈殿物を透析(Mw cutoff 1000)により精製した(3日間)。
以下に反応式を示す。
Figure 0004962931
図1および図2には、採取物のNMR分析結果を示す。図1は、(A)ラクトビオン酸、(B)DL−G3−2C12単体、(C)上記採取物のプロトンNMR(以下「1HNMR」と記す。)の結果を示す。またそれぞれのピーク位置を示す構造も記した。NMRのチャート上のアラビア数字は、構造式の水素番号と対応している。周波数は400MHzである。
図1を参照して、領域IIの部分を(B)DL−G3−2C12単体と(C)上記採取物
で比較するとアミノ基に結合している6番目の水素が低磁場側へシフトしているのがわかる。この領域IIの部分の積分値を(B)と(C)で比較すると、(C)の方が減少してい
た。この減少分は6番目の水素のシフトを考慮した全末端が置換された場合の理論値と非常によい一致を見た。この結果から、デンドロン脂質の全末端のプロトンが糖で修飾されたことがわかる。
図2は同じ採取物の13CのNMR(以下「13CNMR」と記す。)の結果を示す。(A)、(B)、(C)と構造およびチャート上のアラビア数字については図1と同じである。図2ではさらに22番および23番目のカーボン部分の拡大図も同時に示した。図2より、22番および23番目のカーボンが高磁場側へシフトしており、このことも全末端が糖で修飾されていることを示している。以上の結果より全末端にガラクトースを修飾したデンドロン脂質を合成したと確認した。
なお図1および図2のデータを示す。括弧中の番号はそれぞれの図に示した構造の番号に対応する。
1HNMR (DMSO): δ 0.85 (1), δ 1.23 and 1.42 (alkyl protons), δ 2.20-2.67 (dendron protons), δ 3.11-5.20 (2-6 and protons of galactosyl residue), δ 7.81 and 7.92 (protons of dendron amide and lactobionamide);
13CNMR (DMSO): δ 14.0 (1), δ 22.1, 26.5, 28.8, 29.0, 29.1 and 31.3 (2), δ 33.1 (5, 10, 15 and 20), δ 36.4 and 36.9 (7, 12 and 17), δ 38.3 and 38.4 (22 and 23), δ 49.5 (4, 9, 14 and 19), δ 52.2 and 52.6 (8, 13 and 18), δ 60.7 (35), δ 62.3 (29), δ 68.3-75.7 (25, 26, 28, 31-34), δ 104.6 (30), δ 171.4, 171.7 and 172.7 (6, 11, 16, 21 and 24).
3.リポプレックスの調製
上記のGal−DL−G3−2C12のDMF溶液からロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去して、一晩真空乾燥した。その後、この薄膜にDL−G3−2C12のクロロホルム溶液(66.6μl)とDOPEのクロロホルム溶液(240μl)を加え、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を除去して、脂質薄膜を形成させた。これにPBS(0.5ml)を加え、バス型超音波照射装置を用いて超音波を2分間照射し、脂質分散液を調製した。この分散液を数種々の脂質濃度に調製し、次に、20mMTris−HCl溶液のプラスミドDNA溶液(1μg/50μl)をこれらの脂質分散液に加えて混合し、室温で30分インキュベートして種々のN/P比のGal−DL−G3−2C12リポプレックスを調整した。なお、ここでN/P比は、DNAと脂質膜との比率である。
4.遺伝子導入
ヒト肝ガン由来のHepG2細胞を24穴ディッシュ1穴当たり5.0x104個になるように撒き、10%FCS(ウシ胎児血清)含有DMEM(ダルコット改変イーグル培地)0.5ml中、37℃で2日間培養した。
その後、0.36mMCaCl2と0.42mMMgCl2を含むPBS(PBS(+))で2回洗浄した後、FCS非含有DMEM1mlを加え、1穴当たり1μgのプラスミドDNAを含むリポプレックスを細胞に加えたのち4時間インキュベーションした。その後PBS(+)で3回洗浄して細胞に取り込まれていないリポプレックスを除去し、10%FCS含有DMEM1mlを加えた。40時間培養後、ルシフェラーゼアッセイにて遺伝子導入活性を評価した。
5.ルシフェラーゼアッセイによる遺伝子導入の評価
遺伝子導入した40時間後、PBS(+)で3回洗浄し、さらにPBSで1回洗浄した後、細胞を1穴当たり50μlの細胞溶解剤に溶かし、エッペンドルフチューブに回収して12000rpmで2分間遠心分離し、その上澄みを回収した。まず、発光基質液を用いて、ルシフェラーゼ活性の定量を行った。ルシフェラーゼ活性の定量は細胞溶解液20μlを13.5μgのルシフェリンを含んだ発光基質液95μl、アルブミン溶液(5mg/ml)5μlと混合し、ルミノメーターLumat LB9507(ベルトールドジャパン)を使って20秒間の発光量を測定した。次に細胞溶解液5μlx3を用いて、細胞内のタンパク質の定量をCoomassie Protein Assay Reagentを用いて行った。定量は細胞溶解液5μlに対してCoomassie Reagentを250μlずつ加え、波長595nmの吸光度をプレートリーダーで測定することによってタンパク質濃度を求めた。そして、細胞のタンパク質当たりのルシフェラーゼ活性を求めた。図3にその結果を示す。
図3は、リガンド(本実施例の場合はガラクトース)を修飾したデンドロン脂質である、Gal−DL−G3−2C12と修飾していないデンドロン脂質であるDL−G3−2C12と溶媒のDOPEの混合比をX/1/10とし、N/P比(脂質膜とDNA(遺伝子)の比)毎にXの値を変えながら、遺伝子導入活性を測定した結果である。横軸はN/P比を、縦軸は遺伝子導入活性を示す。
遺伝子導入活性は、N/P比が2の時に最大値を有した。N/P比をそれ以上にすると、未修飾のリポプレックスよりも遺伝子活性が低下した。また、N/P比を2より小さくすると、遺伝子導入活性の絶対値は低下した。
しかし、N/P比が2の場合は、Gal−DL−G3−2C12を0.1含んでいる場合と含んでいない場合の比率が2:1程度であるのに対して、N/P比が1の場合は10:1程度になっている。
すなわち、Gal−DL−G3−2C12/DL−G3−2C12/DOPEの混合比が0.1/1/10の時の遺伝子導入の効率は、Gal−DL−G3−2C12を含んでいない場合より高くなった。
これは、N/P比が小さくなることで、リポプレックスの静電相互作用による非特異的な取り込みが抑えられ、リガンドの存在による細胞吸着の効果の違いが表れたためと考えられる。すなわち、N/P比が1という静電相互作用のない状態では、リガンドのついていないリポプレックスの細胞吸着力は低く、一方リガンドのついているデンドロン脂質を含むリポプレックスは細胞に特異的に吸着することができる。
なおここでは、リポプレックスを調製し遺伝子を細胞に導入することについて実施例を示したが、リポソームを作成し、比較的小さな薬物や生理活性物質を細胞へ送達し、また細胞内に導入することもできる。例えば、具体的なリポソームの調製方法は、以下のようである。
卵黄レシチンのクロロホルム溶液(10mg/ml)500μlをGal−DL−G0−2C12のクロロホルム溶液(0.5mg/ml)103μlと206μlにそれぞれ加えた。また同じく卵黄レシチンのクロロホルム溶液(10mg/ml)500μlをGal-DL-G3-2C12のDMF溶液(2mg/ml)29.9μl、75.2μl、137.3μlにそれぞれ加えた。これら5種類の溶液のそれぞれをロータリーエバポレーターで溶媒を除去し薄膜を形成させ、2時間真空乾燥させた。その後、63mMカルセイン水溶液 (pH7.4)500μlを加え、2分間超音波照射し、凍結融解を5回繰り返した後、エクストルーダーを用いて孔径100nmのフィルターを通すことによってリポソ―ム分散液を調製した。さらにセファロース4Bカラムに通すことによってリポソ―ムを精製した。このようにしてデンドロン脂質の異なる5種類のリポソームを実際に作成することができた。
実施例2
ラクトビオン酸(4g、1.18X10-2mol)をメタノールに溶解し、50℃にてメタノールの減圧留去を4回繰り返し、ラクトビオンラクトンを得た。これをDMSO5mlに溶解し、4mlのDMSOに溶解したDL−G0−2C12(0.45g、9.53X10-4mol)に滴下して加え、40℃で10時間反応させた。その後、透析(Mw cutoff2000)を2日間行い精製した。さらに、LH−20により精製した。次にシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水=60/35/5)による精製を行った。そして、透析(Mw cutoff2000)を2日間行い、再度LH−20により精製することによりGal−DL−G0−2C12を得た。以下に反応式を示す。
Figure 0004962931
図4には、上記で得たGal−DL−G0−2C12の1HNMRの結果と構造を示す。Gal−DL−G0−2C12とDL−G0−2C12のピークの違い、特に4.2〜4.6ppm付近のシグナルの有無からガラクトース修飾ができており、積分値を理論値と比較することで、ほぼ100%のDL−G0が修飾されたことがわかる。図5は、同じく13CNMRの結果であるが、やはり7と8のシグナルの変化より、糖での修飾がされていることを示している。このようにして作成したデンドロン脂質も実施例1のデンドロン脂質の代わりに利用することができる。図4および図5のデータを示す。括弧中の番号はそれぞれの図に示した構造の番号に対応する。
1HNMR (CD3OD): δ 0.90 (1), δ 1.30 (2), δ 1.49 (3), δ 2.37 (6), δ 2.49 (4), δ 2.81 (5), δ 3.30-3.94 (7-19);
13CNMR (CD3OD): δ 14.5 (1), δ 23.8, 27.4, 28.6, 30.5, 30.7, 30.8, 31.0 and 33.1 (2), δ 33.7 (5), δ 39.6 and 39.9 (7 and 8), δ 51.0 (4), δ 54.6 (3), δ 62.7 (20), δ 63.8 (14), δ 70.4-77.2 (10, 11, 13, 16-19), δ 83.3 (12), δ 105.7 (15), δ 175.2 (6), δ 175.5 (9).
なお、実施例1および2ではラクトビオン酸を用いて修飾デンドロンの末端がガラクトース残基で修飾されるようにしたが、五員環構造若しくは六員環構造を持つ糖類であれば、ラクトビオン酸以外でも容易に置き換えることができる。
実施例3
1.DL-G2-2C18とM-PEG550からPEG550−DL-G2-2C18を合成する。
リポプレックスのin vivoにおける使用には、血清タンパク質との相互作用が重要な問題である。これは、正に帯電したリポプレックスと負に帯電した血清タンパク質の静電相互作用が原因である。このことによってリポプレックスが崩壊したり、凝集が起こる。発明者がすでに開示したDL-G3-DOPE(特開2004−159504号)は、血清中での遺伝子導入が可能である。
しかし、その粒径は約800nmとin vivoで使用するには若干大きく、表面は正電荷で覆われている。そこで、ポリエチレングリコール(PEG)を結合させた脂質をリポプレックスに導入することによって、リポプレックスを安定化させた。このPEG脂質は主にPEの末端にPEGを結合させたPEG結合デンドロン脂質を合成することで得る。これにより、リポプレックスの安定化およびさらなる血清耐性の向上が期待できる。
実施例1および2では、ジドデシルジアミンを用いてデンドロン脂質のアルキル鎖の部分は炭素12個のジドデシルタイプのデンドロン脂質を用いたが、ここでは炭素が18個のジオクタデシルタイプのデンドロン脂質を用いる。以後このタイプのデンドロン脂質に「−2C18」をつけて呼ぶ。
本実施例に用いるDL−G3−2C18は以下の手順で作成する。なお反応式は実施例1,2と同じく化1に従う。
1−1.DL−G―0.5−2C18の合成
蒸留したアクリル酸メチル(35ml、0.39mol)にジオクタデシルアミン(2.00g、3.8mmol)を溶かし、窒素雰囲気において80℃で18時間還流した。その後、メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶媒は、石油エーテル:ジエチルエーテル=2:1)で精製した。
1−2.DL−G0−2C18の合成
DL−G−0.5(2.0g、3.4mmol)をメタノール(40ml)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(33mg、0.67mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(70ml、1.05mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において50℃で7日間攪拌した。その後、メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカ(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水=60/35/5)により精製した。
1−3.DL−G0.5−2C18の合成
DL−G0(1.2g、1.9mmol)をメタノール(20ml)に溶かした。この溶液を、アクリル酸メチル(34ml、0.38mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において35℃で50時間攪拌した。その後メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶液として石油エーテル:ジエチルエーテル=2:1 のち ジクロロメタン:メタノール=9:1)で精製した。
1―4.DL−G1−2C18の合成
DL−G0.5(1.5g、1.8mmol)をメタノール(50ml)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(18mg、0.37mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(65ml、0.92mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において45℃で60時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてクロロホルム)によって精製した。
1―5.DL−G1.5−2C18の合成
DL−G1(1.3g、1.5mmol)をメタノール(60ml)に溶かした。この溶液を、蒸留したアクリル酸メチル(110ml、1.23mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において35℃で52時間攪拌した。その後メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶液としてクロロホルム、後にクロロホルム:メタノール=9:1)で精製した。
1−6.DL−G2−2C18の合成
DL−G1.5(1.3g、1.1mmol)をメタノール(30ml)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(21mg、0.43mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(95ml、1.42mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において45℃で50時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてメタノール)によって精製した。
1−7.DL−G2.5−2C18の合成
DL−G2(0.94g、0.71mmol)をメタノール(60ml)に溶かした。この溶液を、蒸留したアクリル酸メチル(55ml、0.61mol)に徐々に加え、窒素雰囲気中、30℃で50時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のアクリル酸メチルを減圧留去し、シリカゲル(展開溶液としてクロロホルム:メタノール=95:5のち、クロロホルム:メタノール=80:20)で精製した。
1−8.DL−G3−2C18の合成
DL−G2.5(0.92g、0.46mmol)をメタノール(40ml)に溶かした。この溶液を、シアン化ナトリウム(8.9mg、0.18mmol)を含む蒸留したエチレンジアミン(60ml、0.9mol)に徐々に加え、窒素雰囲気において45℃で55時間攪拌した。その後、メタノールと未反応のエチレンジアミンを減圧留去し、Sephadax LH−20カラム(溶離液としてメタノール)によって精製した。以上の工程を繰り返して所定量のDL−G3−2C18を得た。
M−PEG5504−Nitrophenylcarbonate(NPC)の合成
ポリエチレングリコール(平均分子量550)の一方の末端をメチル基と置換したM−PEG550を用意する。M-PEG550を0.5g(0.91mmol)とトリエチルアミン0.252ml(1.82mmol)をテトラヒドロフタン(THF)10mlに溶解し、これにニトロフェニルクロロホルメイト(4−nitorophenylchroloformate)0.367g(1.82mmol)のTHF溶液(15ml)を氷冷下で加え2時間攪拌した。その後、室温で22時間攪拌した。得られた反応液をろ過し、ろ液を減圧留去後、LH−20(溶離液:メタノール)により精製した。これにより得た物質をM−PEG550−NPCと記す。以下に反応式を示す。
Figure 0004962931
M−PEG550−DL−G2−2C18の合成
DL−G2−2C18(0.1g、0.076mmol)をDMSO(5ml)に溶解し、これにM−PEG550−NPC(0.45g、0.63mmol)のDMSO溶液(7ml)を加え、室温で5日間攪拌した。その後、24時間透析(Mw Cutoff 1000)を行い、凍結乾燥したのち、LH−20(溶離液:メタノール)により精製した。
図6および図7に1HNMRと13CNMRの結果を示す。図6にはNMRのチャートと構造式を示し、図7には、構造式とPEGで修飾する前(A)と修飾後(B)のチャートを示す。また図7では、30から50ppmまでの拡大図も記載した。拡大図では図面上が(A)に対応し、図面下が(B)に対応する。図6および図7のデータを示す。括弧中の番号はそれぞれの図に示した構造の番号に対応する。
1HNMR (CDCl3): δ 0.88 (1), δ 1.25 (2) and 1.53 (3), δ 2.35 (4, 6, 11 and 16), δ 2.53 (9 and 14), δ 2.72 (5, 10 and 15), δ 3.28 and 3.33 (8, 13, 18 and 19), δ 3.38 (23), δ 3.64 (22), δ 4.18 (21), δ 6.19 (20), δ 7.66 (7, 12 and 17);
13C NMR (CDCl3): δ 14.1 (1), δ 22.7, 27.3, 29.3, 29.4, 29.6, 29.7 and 31.9 (2 and 3), δ 34.1 (6, 11 and 16), δ 37.5 and 37.7 (8 and 13), δ 39.5 (19), δ 40.8 (18), δ 50.1 and 50.4 (9, 10, 14 and 15), δ 52.6 and 52.9 (4 and 5), δ 59.0 (23), δ 61.6, 63.8, 69.6, 70.4, 70.5, 70.8 and 71.9 (21 and 22), δ 156.9 (20), δ 172.7 and 173.3 (7, 12 and 17).
図6の1HNMRより、ジオクタデシル基末端のメチルに由来する0.88ppmのピークの積分値を基準として、3.4ppmPEG末端(23)のOCH3の積分値が理論値とほぼ一致したこと、さらに図7の13CNMRより、デンドロン末端のメチレンプロトン18,19が高磁場シフトしたことから、DL−G2の全末端にPEGが結合していると判断できる。また、ニンヒドリン反応が陰性であったことからも一級アミノ基は存在しないことがわかった。すなわち、PEG550−を4本結合したM―PEG−DL−G2が合成できた。
図8にはM―PEG−DL−G2単体であるリポソームと、DNAを加えたリポプレックスにした場合での粒径とPEG含有量の関係を示す。粒径は動的光散乱によって3回測定の平均値をプロットし、測定幅を縦線でしめした。縦軸は平均粒径、横軸はPEGの割合を示す。黒四角はリポプレックスを示し、白丸はリポソームを示す。リポプレックスはN/P比が4であり、DL−G3−2C12とDOPEとPEG550−DL−G2−2C18を用いたものである。またDNAはホタルのルシファーゼ遺伝子を含むpCMVLucを用いた。
図8より、リポソームの状態であるとPEGの含有量は、平均粒径に影響を与えないが、リポプレックスになると、PEG含有量が1.0mol%以上で粒径はほぼ200nm〜250nmに小さくなっていることがわかる。このようにPEGで修飾したデンドロン脂質を含有させることによって、リポプレックスにしたときの凝集を抑え、安定化させることができる。
本発明は、遺伝子治療において治療用のDNAを細胞内に送り込むベクターとして利用でき、特に末端にリガンドを付加するなどによって標的細胞に対する特異性を持たせることができるため、DDS(Drug Delivery System)として利用することができる。
DL−G3の末端がガラクトースで修飾されたことを示す1HNMR分析チャートと構造を示す図。 図1の13CNMR分析チャートと構造を示す図。 遺伝子導入効果を示すグラフ。 DL−G0の末端がガラクトースで修飾されたことを示す1HNMR分析チャートと構造を示す図。 図4の13CNMR分析チャートと構造を示す図。 M−PEG550−DL−2C18の1HNMR分析チャートと構造を示す図。 図6の13CNMR分析チャートと構造を示す図。 デンドロン脂質のPEGの修飾割合とそれを用いたリポプレックスの平均距離を示す図。

Claims (4)

  1. 下記式DL−G1〜DL−G8のいずれかで表される化合物のXH2の部分の少なくとも1箇所がXHR3またはXHR4のいずれかに置き換えられた化合物を含む、遺伝子、薬物、生理活性物質、生理活性ペプチド類およびタンパク質から選択される物質を運搬するための運搬媒体組成物。
    DL−G1:R12NX(XH22
    DL−G2:R12NX(X(XH222
    DL−G3:R12NX(X(X(XH2222
    DL−G4:R12NX(X(X(X(XH22222
    DL−G5:R12NX(X(X(X(X(XH222222
    DL−G6:R12NX(X(X(X(X(X(XH2222222
    DL−G7:R12NX(X(X(X(X(X(X(XH22222222
    DL−G8:R12NX(X(X(X(X(X(X(X(XH222222222
    (式中 R1及びR2は、同一または異なった炭素数12〜18のアルキル基を示す。Xは、−CH2CH2CONHCH2CH2N<を示す。R3は糖類の残基を示す。R4はポリオキシエチレン基またはポリビニルアルコール基または、ポリビニルピロリドン基を示す。)
  2. 前記R3は五員環構造若しくは六員環構造を含む糖類であることを特徴とする請求項1記載の運搬媒体組成物。
  3. さらにリン脂質を含む請求項1乃至2のいずれか1項に記載の運搬媒体組成物。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の運搬媒体組成物と、遺伝子、薬物、生理活性物質、生理活性ペプチド類およびタンパク質から選択される物質とからなるリポプレックスまたはリポソーム。
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